(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル共重合体のモノマー成分の全量に対し、40〜84重量%の炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、10〜35重量%のヒドロキシ基含有モノマー、6〜9重量%のジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド、並びに0重量%超〜1重量%の(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含有するアクリル共重合体であって、重量平均分子量が50万〜250万であり、かつガラス転移温度が−30℃〜15℃であるアクリル共重合体を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
アクリル共重合体のモノマー成分の全量に対し、40〜84重量%の炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、10〜35重量%のヒドロキシ基含有モノマー、6〜9重量%のジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド、並びに0重量%超〜1重量%の(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含有するアクリル共重合体であって、重量平均分子量が50万〜250万であり、かつガラス転移温度が−30℃〜15℃であるアクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を指す。従って、例えば(メタ)アクリル酸には、アクリル酸とメタクリル酸が含まれ、(メタ)アクリル酸エステルにはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが含まれる。その他の「(メタ)アクリル」が用いられている化合物についても同様である。
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、該粘着剤組成物を構成するアクリル共重合体のモノマー成分の全量に対し、40〜84重量%の炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)、10〜35重量%のヒドロキシ基含有モノマー(B)、6〜9重量%のジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド(C)、並びに0重量%超〜1重量%の(メタ)アクリル酸(D)をモノマー成分として含有するアクリル共重合体であって、重量平均分子量が50万〜250万であり、かつガラス転移温度が−30℃〜15℃であるアクリル共重合体を含有することを特徴とする。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル(A)
炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系粘着剤におけるベースポリマーを構成するモノマー主成分であり、1種のみを使用することもできるし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて使用することもできる。(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた場合の各々の(メタ)アクリル酸エステルの割合は任意に選択し得る。
【0020】
炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコールなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸;などが挙げられる。
【0021】
ヒドロキシ基含有モノマー(B)
ヒドロキシ基を含有するモノマーとしてはヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられ、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキルの炭素数は2〜6であることが好ましい。ヒドロキシ基を含有するモノマーは、1種のみを使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
ヒドロキシ基を含有するモノマーの含有量は、アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、10〜35重量%である。この範囲にあることにより、粘着剤組成物に白化抑制性及び重合安定性が付与される。含有量が10重量%未満であると加熱及び加湿時の粘着剤組成物の白化が生じる可能性がある。また、含有量が35重量%を超えると、重合反応が急激に進行することで安定性が低下する。
【0023】
ジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド(C)
ジメチルアクリルアミド(DMAA)及びジエチルアクリルアミド(DEAA)は、モノマー主成分である炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマー成分である。ジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミドとは、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、又はジメチルアクリルアミド及びジエチルアクリルアミドの両方を意味する。
【0024】
ジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミドの含有量は、アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、6〜9重量%である。この範囲にあることにより、粘着剤組成物に発泡抑制性、重合安定性及び段差吸収性が付与される。含有量が6重量%未満であると、発泡を抑制できなくなる。含有量が9重量%を超えると、段差吸収性及び重合安定性が損なわれる。
【0025】
(メタ)アクリル酸(D)
本発明では、導電性材料の腐食を進行させない程度の少量の(メタ)アクリル酸を添加することで、耐発泡性を向上させている。
【0026】
(メタ)アクリル酸の含有量は、アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、0重量%超〜1重量%の(メタ)アクリル酸である。含有量が0重量%であると、耐発泡性が低下する。含有量が1重量%を超えると、導電性材料に対する耐腐食性(つまり耐劣化性、抵抗値上昇抑制性)が低下する。
【0027】
アクリル共重合体、粘着剤組成物、アクリル系粘着剤、及び粘着シート
上記のモノマー成分を重合して形成されたアクリル共重合体は、重量平均分子量が50万〜250万であり、かつガラス転移温度が−30℃〜15℃である。
【0028】
重量平均分子量が50万〜250万であると、耐発泡性が向上し、ガラス転移温度が−30℃〜15℃であると、段差吸収性が向上する。
【0029】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物(過酸化物系開始剤)又はアゾ系化合物(アゾ系開始剤)などが挙げられる。なかでも、ITOなどの金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とする場合に該金属薄膜に与える影響を考慮すると、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましい。
【0030】
上記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0031】
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレートなどが挙げられる。
【0032】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどが挙げられる。
【0033】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、単量体成分の総量に対して(100モル%に対して)0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%程度である。
【0034】
本発明では、各モノマー成分を用いて重合させて得られたアクリル共重合体はそのまま乾燥させて用いてもよく、また、アクリル共重合体をさらに架橋剤で架橋させることにより硬化させて用いてもよい。アクリル共重合体を架橋させることにより、剥離ライナーなどの)基材の剥離性及び粘着性に加えて、アクリル共重合体に耐熱性などの耐久性も付与される。なお、アクリル共重合体の架橋は、アクリル系粘着剤層の形成の際や、形成後に行うことができる。
【0035】
上記の架橋剤としては、従来公知のものを用いることができるが、ポリイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物が好ましく、特にポリイソシアネート系化合物が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。なお、ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネート系化合物の使用量は、例えば、アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対して0.01〜20重量%(好ましくは0.05〜15重量%)程度である。一実施形態では、上記アクリル共重合体を含有する本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含む。別の実施形態では、上記アクリル共重合体を含有する本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含まない。
【0036】
アクリル共重合体のモノマー成分の全量は、粘着剤組成物の量に対し通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%である。一実施形態では、特にアクリル共重合体のモノマー成分は、 (メタ)アクリル酸エステル(A)、ヒドロキシ基含有モノマー(B)、ジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド(C)、及び(メタ)アクリル酸(D)からなり、これら(A)〜(D)の合計量が上記の割合を満たす。
【0037】
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて各種添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)、熱安定剤、酸化防止剤、静電気防止剤、増粘剤、充填剤、着色剤(顔料又は染料など)、紫外線吸収剤、界面活性剤などの公知の各種添加剤が挙げられる。このような添加剤は、添加される場合、通常、粘着剤組成物の質量に対して0.01〜10重量%程度である。
【0038】
本発明の粘着剤組成物からなるアクリル系粘着剤としては、その調製過程でいかなる形態も取りうるが、取り扱い性の面で、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系、光重合系などの形態で用いることが好ましい。アクリル系粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、40〜84重量%の炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、10〜35重量%のヒドロキシ基含有モノマー、6〜9重量%のジメチルアクリルアミド及び/又はジエチルアクリルアミド、及び0重量%超〜1重量%の(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含有するアクリル共重合体であって、重量平均分子量が50万〜250万であり、かつガラス転移温度が−30℃〜15℃であるアクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する光学透明粘着シートも、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
本発明の粘着シートは、上記のアクリル共重合体を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層から形成される。粘着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。粘着剤層の厚みとしては、高透明性などを損なわない範囲であれば特に制限されないが、例えば、1〜数千μm程度の範囲から選択することができる。
【0041】
なお、粘着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、慣用のコーター(グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いて、アクリル系粘着剤を所定の面(例えば、基材表面など)に塗布することにより、粘着剤層を形成することができる。
【0042】
粘着シートとしては、前記粘着剤層を有していれば、その構成は特に制限されない。具体的には、粘着シートとしては、例えば、(1)粘着剤層のみから形成された構成の基材レス両面粘着シート、(2)基材の少なくとも一方の面に粘着剤層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の基材付き両面粘着シート、(3)基材の一方の面に粘着剤層が形成された構成の基材付き粘着シートなどが挙げられる。なお、粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、基材の両面に形成された粘着剤層(粘着剤層)が粘着剤層であってもよく、基材の一方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層であり且つ基材の他方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層以外の粘着剤層(「非粘着剤層」と称する場合がある)であってもよい。
【0043】
基材としては、紙などの紙系の基材、布、不織布、ネットなどの繊維系の基材;金属箔、金属板などの金属系の基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系の基材;ゴムシートなどのゴム系の基材;などの適宜な薄層体を用いることができる。基材として、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。基材には剥離ライナーが含まれ、剥離ライナーは、粘着シート又はテープ用の公知の剥離ライナーを用いることができる。
【0044】
粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の粘着シートは、テープ状、シート状などの形態を有することができる。従って、粘着シートには、粘着シート又は粘着テープが含まれる。
【0045】
本発明の光学透明粘着シートを製造する方法は特に限定されない。基材レスの光学透明粘着シートを製造する方法として、例えば、上記粘着剤組成物を離型材の離型処理面に塗工することによって塗膜を形成し、得られた塗膜の上に、離型処理面が塗膜に接するようにして新たに用意した離型材を重ね合わせて積層体を得た後、得られた積層体をゴムローラなどにより加圧する方法などが挙げられる。
【0046】
また、本発明の光学透明粘着シートを製造する方法として、上記(メタ)アクリル共重合体の原料となる上記混合モノマーを、塊状重合によってラジカル重合させ、上記(メタ)アクリル系共重合体を製造すると同時にシート化まで行う方法も好適である。
【0047】
上記塊状重合は、重合熱の除去がしやすく、反応制御がしやすいことから、光重合であることが好ましい。
【0048】
特に、本発明の光学透明粘着シートを製造する方法として、上記混合モノマー、光重合開始剤、及び、必要に応じて添加剤などを含有し、かつ、溶剤を含有しないモノマー組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成した後、このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせ、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射などの光照射を行うことにより、上記混合モノマーをラジカル重合させる方法が好適に用いられる。なお、上記透明な合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。
【0049】
本発明の光学透明粘着シートを光重合によって製造する場合には、重合と同時に架橋構造を形成できることから、上記混合モノマーは、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0050】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、得られる光学透明粘着シートの応力分散性の低下が小さく粘着性能に優れる点から、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。
【0051】
上記混合モノマーが上記多官能(メタ)アクリレートを含有する場合、上記多官能(メタ)アクリレートの配合量としては、上記混合モノマー中の好ましい下限が0.02重量%、好ましい上限が5重量%である。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が0.02重量%以上であると、上記(メタ)アクリル共重合体の架橋が充分であり、得られる光学透明粘着シートは、凝集力が得られ加工性が良好である。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が5重量%以下であると、得られる光学透明粘着シートは、被着体に対する粘着力及び初期接着性が得られ、信頼性が維持される。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量のより好ましい下限は0.05重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0052】
上記光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(メルク社製、商品名「ダロキュア2959」)などのケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチル−アセトフェノン(メルク社製、商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア184」)などのアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0053】
上記光重合開始剤の配合量としては、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の配合量が0.01重量部以上であると、上記混合モノマーの重合が進行し、得られる光学透明粘着シートは、凝集力を有し必要な物性が得られる。上記光重合開始剤の配合量が5重量部以下であると、光照射時にラジカル発生量が低く維持され、得られる(メタ)アクリル共重合体の分子量が良好となる。上記光重合開始剤の配合量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0054】
上記光照射に用いられるランプとしては、例えば、波長400nm以下に発光分布を有するランプなどが挙げられる。上記波長400nm以下に発光分布を有するランプとしては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達して上記混合モノマーを効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。
【0055】
上記光照射における光照射強度および照射時間は、(メタ)アクリル共重合体の重合度又は光学透明粘着シートの性能などに合わせて、当業者により適宜選択することができる。
【0056】
本発明の粘着シートは、前処理、各種製造プロセス段階、製品使用中などで高温下及び/又は高湿度下にさらされても、高透明性を維持することができる。好ましくは、粘着シートにおける粘着剤層としては、80℃かつ相対湿度(RH)85%で240時間の加湿処理した各処理の前後で、240時間加湿処理した後のヘイズ値(%)から加湿処理開始前のヘイズ値(%)を引いた値(Δヘイズ値)が、10%以下、好ましくは5%以下である。粘着シートが、このような特性を有していると、高温下や高湿度下に晒されても、透明性が維持(保持)される。
【0057】
本発明の粘着シートは、白化抑制性、発泡抑制性、導電性材料の耐腐食性、段差吸収性、及び重合安定性に優れている。
【0058】
本発明の粘着シートは、光学的に透明な部材を備えた電気製品、電子製品、若しくは光学機器、例えば携帯電話、スマートフォン、パソコン、電子ペーパー、タブレット型パーソナルコンピューターおよびゲーム機などの画像表示装置(例えば液晶ディスプレイ、OECDディスプレイ、エレクトロウェッティング方式ディスプレイ)を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着したり、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる。上記粘着シートはこれら以外の光学フィルムなどの光学用途にも適用可能である。
【0059】
本発明の光学透明粘着シートを介して基材同士が積層された光学積層体もまた、本発明に包含される。
【0060】
本発明に係る光学積層体は、光学透明粘着シートと、光学透明粘着シートの第1の表面に積層された第1の被着体と、光学透明粘着シートの第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の被着体とを備える。第1の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。第2の被着体が、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、偏光板、タッチパネルモジュール、または、ディスプレイパネルモジュールであることが好ましい。
【0061】
カバーパネルが、カバーガラス、ポリカーボネート板、または、ポリメチルメタクリレート板であり、第1の被着体が、カバーガラス、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。
【0062】
光学積層体の具体例としては、光学透明粘着シートを介してカバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体や、光学透明粘着シートを介してカバーパネルとディスプレイパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−ディスプレイパネルモジュール積層体や、光学透明粘着シートを介してタッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとが接着されたタッチパネルモジュールディスプレイパネルモジュール積層体などが挙げられる。上記カバーパネルとしては、ガラス板や樹脂板が好適に用いられる。上記光学透明粘着シートは、カバーパネルがポリカーボネート板またはアクリル板である場合に特に好適である。
【0063】
また、上記光学透明粘着シートを介して金属または金属酸化物により形成された透明電極層付フィルムの2つが積層された透明電極層付フィルム積層体も、光学用積層体として好ましい。
【0064】
上記光学積層体と画像表示部とを備える画像表示装置に、上記光学積層体は好適に用いられる。
【0065】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を含む画像表示装置1を示す斜視図およびその一部の分解斜視図である。
【0066】
画像表示装置10は、表面を保護するためのカバーパネル13が、タッチパネルモジュール14上に、光学透明粘着シート12を介して貼り合わされた構造を有する。タッチパネルモジュール14は、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、支持体18とがこの順で積層された構造を有する。光学透明粘着シート12と、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、金属薄膜付フィルム16とがこの順で積層された部分は、金属薄膜付フィルム積層体19である。この金属薄膜付フィルム積層体19と、光学透明粘着シート17と、支持体18とがこの順で積層された部分は、タッチパネルモジュール20である。
【0067】
図1において、上記タッチパネルモジュールは、光学透明粘着シート17を介してディスプレイパネルモジュールに貼り合わされるが、その際には、タッチパネルモジュールから支持体18を剥離した状態で貼り合わされる。
【0068】
上記画像表示装置10としては、携帯電話および携帯情報端末などが挙げられる。上記支持体18としては、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体溶液の製造
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器内に、2−エチルヘキシルアクリレート39.5重量部と、4−ヒドロキシブチルアクリレート22重量部と、イソボルニルアクリレート30重量部と、ジメチルアクリルアミド8重量部と、アクリル酸0.5重量部と、これらモノマー100重量部に対して酢酸エチル60重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、反応器を70℃に加熱した。30分間後、モノマー100重量部に対して0.12重量部の重合開始剤としてのt−ヘキシルパーオキシピバレートを40重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤含有溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、70℃にて、重合開始剤の添加開始から8時間反応させて、固形分50重量%の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体溶液を得た。
【0071】
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体について、熱分解装置(フロンティア・ラボ社製、ダブルショットパイロライザー)、GC−MS装置(日本電子社製、Q−1000GC)、FT−IR(Thermo Fisher Scientific社製、NICOLET6700)及びNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)を用いて、アクリル共重合体を構成する各モノマー由来の構成単位の割合(重量%)を測定した。得られた構成単位の割合(重量%)を表1に示した。
【0072】
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表1に示した。
(2)透明粘着シートの製造
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体溶液に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100重量部に対して、架橋剤としてマイテックNY260A(三菱化学社製)を固形分換算で3重量部、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)を固形分換算で0.5重量部となるように添加し、攪拌し、真空脱法して、粘着剤組成物を調製した。
【0073】
得られた粘着剤組成物を、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に塗工し、100℃で10分間乾燥させて粘着剤組成物溶液中の酢酸エチルを除去して、厚み150μmの粘着剤層を形成し、更に得られた粘着剤層の上に、離型処理面が粘着剤層に接するようにして新たに用意した剥離シートとしての離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体をゴムローラにより加圧することにより、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムが両面に貼り付けられた透明粘着シート(粘着シート部分の厚み150μm)を得た。
【0074】
得られた透明粘着シートのガラス転移温度(DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用いてせん断方向に10Hzで振動させたときの挙動で評価した。
(実施例2〜11、比較例1〜5)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を構成するモノマー種及び比率などを表1のようにした以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル酸エステル系共重合体及び透明粘着シートを得た。また、実施例1と同様にして、分子量、ガラス転移温度(Tg)などを測定した。
(評価)
実施例及び比較例で得られた透明粘着シート及びフィルム積層体について、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0075】
(1)耐白化性の評価
得られた厚さ150μmの透明粘着シートを45mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された透明粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面を厚みが1mmの樹脂板(商品名「MR−58」、(三菱ガス化学社製)上に貼り合わせた。更に、透明粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面をガラス板(商品名「S−9112」、MATSUNAMI社製)に貼り合わせて、樹脂板/粘着剤層/ガラス板の層構造を有する試験片を作製した。この試験片を85℃かつ相対湿度(RH)85%の高温高湿下に放置した。放置開始前及び240時間放置後の試験片のヘイズ値(%)を、ヘイズメーター(商品名「NDH2000」、日本電色工業社製)を用いて測定し、下記式によりΔヘイズ値を算出した。
【0076】
Δヘイズ値(%)
={240時間放置後のヘイズ値(%)}−{放置開始前のヘイズ値(%)}
【0077】
Δヘイズ値が、3未満であった場合を「○(白化なし)」とし、3以上であった場合を「×(白化あり)」として評価した。
(2)耐発泡性の評価
得られた厚さ150μmの透明粘着シートを45mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された透明粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面を樹脂板(商品名「MR−58」、(三菱ガス化学社製)上に貼り合わせた。更に、透明粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面をガラス板(商品名「S−9112」、MATSUNAMI社製)上に貼り合わせることにより、樹脂板上に、透明粘着シートとガラス板とがこの順で積層されているモジュール積層体を得た。
【0078】
その後、得られたモジュール積層体を45℃、0.45MPaのオートクレーブにて15分間処理を行った後、23℃、50%RHの環境下で一晩放置し、翌日から温度85℃かつ85%RHの条件で1000時間静置し、カバーパネル−タッチパネルモジュール積層体を得た。得られたカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体の接着界面における気泡発生状態を目視により観察した。
【0079】
0.01mm以上の大きさの気泡が全く観察されなかった場合を「○」、0.01mm以上の大きさの気泡が1つのカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体当たり1個以上観察された場合を「×(耐発泡性なし)」として、気泡発生状態を評価した。
(3)耐腐食性の評価
得られた厚さ150μmの透明粘着シートを45mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された透明粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面を、向かい合う両端部(45×15mm)に銀ペーストを予め塗布しておいた、45mm×80mmの平面形状を有する厚みが0.1mmの透明導電フィルム(ITOフィルム)の透明導電層(具体的にはITO層の表面上)に貼り合わせた。更に、透明粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、透明粘着シートの露出した面を樹脂板(商品名「MR−58」、(三菱ガス化学社製)に貼り合わせることにより、ITO面上に、透明粘着シートと樹脂板とがこの順で積層されている導電性フィルム積層体を得た。
【0080】
得られた導電性フィルム積層体の初期抵抗値を測定した。また、導電性フィルム積層体を45℃、0.45MPaのオートクレーブにて15分間処理を行った後、23℃、50%RHの環境下で一晩放置した後、翌日から導電性フィルム積層体を85℃及び相対湿度85%RHの高温高湿下で1000時間放置し、放置後の導電性フィルム積層体の抵抗値を測定した。なお、抵抗値の測定は、銀ペーストを塗布した部分に対して、端子と端子との間を透明粘着シートが遮る形となるように2端子抵抗値測定器の端子を当てることによって抵抗値の測定を行った。下記式より算出される抵抗値変化率を用いて、ITO膜の劣化レベルを評価した。
【0081】
抵抗値変化率(%)=(R
1−R
0)/R
0×100
式中、R
0は初期抵抗値を表し、R
1は高温高湿下で1000時間放置した後の抵抗値を表す。
【0082】
なお、抵抗値変化率は20%以下である場合を○(腐食なし)、抵抗値変化率が20%を超えると×(耐腐食性なし)と評価した。ITO面に形成されたタッチパネルの認識部位に誤った電気信号が入力され、応答に弊害を引き起こすことがある。
(4)段差追従性の評価
粘着層の厚みが10μmの基材レス粘着シートに厚み15μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、総厚25μmの段差形成用シーを作製した。得られた段差形成用シーを50mm×50mmのサイズにカットし、中心部分に30mm×40mmの穴を開けた矩形シーを作製した。得られた矩形シーを厚さ1mmのポリカーボネート板上に貼付け、25μmの段差付きポリカーボネート板を得た。
【0083】
得られた光学粘着シートを50mm×50mmの平面形状を有するように裁断し、一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、厚さ75μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム上に貼り合わせた。更に、もう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、上記段差付きポリカーボネート板の段差形成用シーを貼付した面に室温環境下で貼り付けた。オートクレーブ処理(0.45MPa、45℃、15分間)を行った後、段差部分を顕微鏡にて観察して、段差のエッジ部分からの光学用粘着シートの剥離が観察される距離(剥離長さ)を測定し、剥離長さが50μm未満であった場合を「○(段差吸収性あり)」と、50μm以上であった場合を「×(段差吸収性なし)」と評価した。
(5)重合安定性の評価
アクリル共重合体溶液製造過程での反応温度、反応時間を測定し、安定性を評価した。反応が30分間以内に終了した場合は×、それよりも長くかかった場合を○とした。
【0084】
【表1】