特許第6791753号(P6791753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791753
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20201116BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201116BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C03C27/12 N
   B32B3/30
   B32B17/10
   B60J1/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-531722(P2016-531722)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2016061456
(87)【国際公開番号】WO2016163486
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-79355(P2015-79355)
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛 美智子
(72)【発明者】
【氏名】川手 洋
(72)【発明者】
【氏名】廣田 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】木戸 浩二
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−201667(JP,A)
【文献】 特開2007−223883(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168793(WO,A1)
【文献】 特開昭61−061835(JP,A)
【文献】 特開2013−006729(JP,A)
【文献】 特表2014−501641(JP,A)
【文献】 特開2007−055822(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/016366(WO,A1)
【文献】 特表2005−530627(JP,A)
【文献】 特開平08−026789(JP,A)
【文献】 特開2003−221261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00−43/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
少なくとも、合わせガラス用中間膜の最表面に配置される一方の表面に多数の凹部を有する表層と、着色剤を含有する着色層とを有し、
前記凹部は、底部が連続した溝形状を有するものであって、隣接する前記凹部が平行して形成されており、
前記着色層の前記表層側の表面と、前記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値が150μm以上である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
JIS B 0601(1994)に準拠して測定した表層の多数の凹部を有する表面の十点平均粗さ(Rz)が15〜60μmであることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
3層以上の積層構造を有することを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
4層以上の積層構造を有することを特徴とする請求項2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)、遮音層、着色層及び第2の保護層がこの順に積層された4層構造を有することを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤を含有し、前記ポリビニルアセタールXの水酸基量が26モル%以下であることを特徴とする請求項5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスの製造工程において優れた脱気性を有し、かつ、着色部の外観不良の発生を防止できる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板の間に、熱可塑性樹脂を含有する合わせガラス用中間膜を挟み、互いに接着させて得られる合わせガラスは、自動車、航空機、建築物等の窓ガラスに広く使用されている。
【0003】
合わせガラス用中間膜は、ただ1層の樹脂層により構成されているだけではなく、2層以上の樹脂層の積層体により構成されていてもよい。2層以上の樹脂層として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。
例えば特許文献1には、遮音層と該遮音層を挟持する2層の保護層とからなる3層構造の遮音性合わせガラス用中間膜が開示されている。特許文献1の合わせガラス用中間膜では、可塑剤との親和性に優れるポリビニルアセタール樹脂と大量の可塑剤とを含有する遮音層を有することにより優れた遮音性を発揮する。一方、保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして中間膜とガラスとの接着性が低下することを防止している。
【0004】
一方、特許文献2には、車輌用合わせガラスの上辺部に沿って帯状の着色層を配置した合わせガラス用中間膜が記載されている。このような着色層を設けることにより、太陽光線が直接運転者の視界に入るのを防止し、高い防眩性を付与することができる。
しかしながら、多層構造の合わせガラス用中間膜に着色層を配置した場合、着色部に線状の色ムラが生じ、外観不良が発生することがあるという問題があった。このような外観不良は、とりわけ、特許文献1に記載されたような遮音性に優れた合わせガラス用中間膜に着色層を配置した場合に顕著に見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331959号公報
【特許文献2】国際公開第2009/001856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜を用いた場合の外観不良の発生の原因を検討した。その結果、合わせガラス用中間膜の表面に形成された凹部に原因があることを見出した。
【0007】
合わせガラスの製造では、通常、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を、ニップロールを通して扱くか(扱き脱気法)、又は、ゴムバッグに入れて減圧吸引し(真空脱気法)、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら圧着する。次いで、上記積層体を、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して圧着することにより合わせガラスが製造される。合わせガラスの製造工程においては、ガラスと合わせガラス用中間膜とを積層する際の脱気性が重要である。合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面には、合わせガラス製造時の脱気性を確保する目的で、微細な凹凸が形成されている。とりわけ、該凹凸における凹部を、底部が連続した溝形状(以下、「刻線状」ともいう。)を有し、隣接する該刻線状の凹部が平行して規則的に形成される構造とすることにより、極めて優れた脱気性を発揮することができる。
【0008】
合わせガラス用中間膜の表面に形成された凹部は、通常は合わせガラス製造工程における圧着の際に潰されることから、得られた合わせガラスにおいてはほとんど問題になることはなかった。
しかしながら本発明者らは、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜の場合には、合わせガラス製造工程を経て得られた合わせガラスにおいて、着色層に凹部の影響が残存し、外観不良の発生の原因になっていたことを見出した。
【0009】
即ち、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜の表面にエンボスロール等を用いて凹部を形成した場合、中間膜の表面にのみ凹部が形成されるのみならず、加工時の圧力によって樹脂層の層間の界面にまで凹部が転写され、界面が平滑ではなくなってしまうと考えられる。特に表面に刻線状の凹部を形成すると、該刻線状の凹部が層間の界面にも強く転写されると考えられる。合わせガラス製造工程における圧着の際に中間膜の表面の凹部は潰されるものの、樹脂層の層間の界面に転写された凹凸は残存する。このような、樹脂層の界面に残存する凹凸は透明な部分においては肉眼ではほとんど認識されないが、着色部では線状の色ムラとなって認識され、外観不良となるものと考えられる。とりわけ、特許文献1に記載されたような遮音性に優れた合わせガラス用中間膜では、硬い保護層の表面に凹部を形成したときに、該保護層と柔らかい遮音層との層間に配置された着色層に凹凸が転写されやすいことから、特に外観不良が発生し易いと考えられる。
【0010】
外観不良の発生は、合わせガラス用中間膜の表面に凹部を形成しなければ防止できる。しかしながら、凹部を形成しないと、合わせガラスの製造時に充分に脱気することができず、ガラスと中間膜との間に気泡が発生し、合わせガラスの外観を損ねてしまう。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑み、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスの製造工程において優れた脱気性を有し、かつ、着色部の外観不良の発生を防止できる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、少なくとも、合わせガラス用中間膜の最表面に配置される一方の表面に多数の凹部を有する表層と、着色剤を含有する着色層とを有し、前記着色層の前記表層側の表面と、前記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値が150μm以上である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜の最表面に配置される表層の表面の凹部と、着色層の表面との距離を一定以上とすることにより、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラスの製造時における優れた脱気性と、外観不良の発生の防止とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜は、合わせガラス用中間膜の最表面に配置される表層と、着色剤を含有する着色層との、少なくとも2層以上の積層構造を有する。これにより、合わせガラスの製造時における優れた脱気性と防眩性とを発揮できる。
【0015】
上記表層は、一方の表面に多数の凹部を有する。これにより、合わせガラスの製造時における脱気性を確保することができる。
上記凹部の形状は、少なくとも溝形状を有すればよく、例えば、刻線状、格子状等の、一般的に合わせガラス用中間膜の表面に付与される凹部の形状を用いることができる。上記凹部の形状はエンボスの形状であってもよい。
なかでも、上記凹部が底部が連続した溝形状(刻線状)を有するものであって、隣接する前記凹部が平行して形成されていることが好ましい。一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。上記表層の一方の面の凹部の形状を刻線状の凹部が平行して形成された形状とすることにより、上記の底部の連通性はより優れ、著しく脱気性が向上する。
図1及び図2に、刻線状の凹部が等間隔に平行して形成されている表層を有する合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
図3に、刻線状の凹部が等間隔ではないが平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。図3において、凹部1と凹部2との間隔Aと、凹部1と凹部3との間隔Bとは異なる。
【0016】
上記表層の多数の凹部を有する表面は、JIS B 0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さ(Rz)の好ましい下限が15μm、好ましい上限が60μmである。この範囲内であると、合わせガラスの製造時において優れた脱気性を発揮することができる。上記十点平均粗さRzのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は45μmである。
【0017】
本発明の合わせガラス用中間膜において、上記表層の一方の表面に多数の凹部を形成する方法としては、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法等が挙げられる。なかでも、エンボスロール法が好適である。
【0018】
上記エンボスロール法で用いられるエンボスロールとしては、例えば、金属ロール表面に酸化アルミニウムや酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削などを用いてラッピングを行うことにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール、彫刻ミル(マザーミル)を用い、この彫刻ミルのエンボス模様(凹凸模様)を金属ロール表面に転写することにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール、エッチング(蝕刻)によりロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を形成したエンボスロール等が挙げられる。
【0019】
上記着色層は、着色剤を含有するものであり、例えば本発明の合わせガラス用中間膜を車輌用合わせガラスとしたときに、太陽光線が直接運転者の視界に入るのを防止し、高い防眩性を付与する役割を有する。
【0020】
上記着色層は、本発明の合わせガラス用中間膜の全面に配置されていてもよいが、一部にのみ配置されていてもよい。例えば本発明の合わせガラス用中間膜を車輌用合わせガラスとしたときに、該車輌用合わせガラスの上辺部に沿って帯状になるように配置されてもよい。
図4に、上辺部に沿って帯状になるように着色層が配置された車輌用合わせガラスを示す模式図を示した。
【0021】
上記着色層は、断面形状が矩形であってもよく、楔形、台形、三角形であってもよい。例えば本発明の合わせガラス用中間膜を車輌用合わせガラスとしたときに、上記着色層の断面形状が楔形、台形、三角形である場合には、該車輌用合わせガラスの上辺部から下辺部に向かって着色にグラデーションを付与することができる(図4)。
【0022】
本発明の合わせガラス用中間膜では、上記着色層の表層側の表面と、上記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値が150μm以上である。これにより、合わせガラスの製造工程における優れた脱気性を確保しながら、着色部の外観不良の発生を防止することができる。上記着色層の表層側の表面と、上記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値は200μm以上であることが好ましく、240μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが更に好ましい。
なお、本発明の合わせガラス用中間膜が、一方の表面に多数の凹部を有する表層を両面に有する少なくとも3層以上の積層体からなる場合には、上記着色層の表層側の表面と、いずれもの表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値が150μm以上でなくてはならない。
【0023】
図5に上記着色層の表層側の表面と、上記表層の多数の凹部を有する表面との距離の測定方法を説明する模式図を示した。図5は、合わせガラス用中間膜の着色層及び表層を含む部分の断面を示す。
図5(a)において、合わせガラス用中間膜51は、断面が矩形の着色層511上に、一方の表面に多数の凹部を有する表層512が積層されている。図5(a)においては、表層512の凹部の底部から着色層511の表層側の表面までの距離aが、上記着色層の表層側の表面と、上記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値となる。
図5(b)において、合わせガラス用中間膜52は、断面が楔形の着色層521上に、一方の表面に多数の凹部を有する表層522が積層されている。図5(b)においては、表層522の凹部の底部から着色層521の表層側の表面までの距離bが、上記着色層の表層側の表面と、上記表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値となる。
【0024】
本発明の合わせガラス用中間膜は、合わせガラス用中間膜の最表面に配置される表層と、着色剤及び熱可塑性樹脂を含有する着色層との、少なくとも2層以上の積層構造を有するが、3層以上の積層構造を有するものであってもよく、4層以上の積層構造を有するものであってもよい。性質の異なる複数の層を積層することにより、単層構造では実現できない種々の性能を発揮することが可能となる。
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する各層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する各層は、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。
【0026】
図6に、本発明の合わせガラス用中間膜の好ましい態様の1例を示す模式図を示した。図6は、合わせガラス用中間膜の断面を示す。以下、図6をもとに、本発明の合わせガラス用中間膜についてより詳しく説明する。
図6の合わせガラス用中間膜6は、一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61、遮音層62、着色層63及び第2の保護層64がこの順に積層された4層構造を有する。
【0027】
上記合わせガラス用中間膜6において、上記遮音層62は遮音性を付与する役割を有する。上記遮音層62は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0028】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0029】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0031】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0032】
特に、上記遮音層62に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0033】
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0034】
上記遮音層62における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。
【0035】
上記遮音層62の厚み方向の断面形状が矩形状である場合には、上記遮音層62の厚さの好ましい下限は50μmである。上記遮音層62の厚さを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層62の厚さのより好ましい下限は80μmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。
【0036】
上記遮音層62は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していてもよい。この場合、上記遮音層62の最小厚みの好ましい下限は50μmである。上記遮音層62の最小厚みを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層62の最小厚みのより好ましい下限は80μmであり、更に好ましい下限は100μmである。なお、上記遮音層62の最大厚みの上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。上記遮音層62の最大厚みのより好ましい上限は220μmである。
【0037】
上記合わせガラス用中間膜6において、一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61は、合わせガラスの製造工程において優れた脱気性を発揮させるとともに、遮音層62に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記合わせガラス用中間膜6において、第2の保護層64は、遮音層62に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。第2の保護層64も、一方の表面に多数の凹部を有する表層であってもよい。これにより、合わせガラス用中間膜の両方の表面に多数の凹部を有することとなり、合わせガラスの製造工程においてより優れた脱気性を発揮することができる。
【0038】
上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0039】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0040】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0041】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0042】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0043】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールYの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0044】
上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。合わせガラスの遮音性がよりいっそう向上することから、上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64における可塑剤の含有量は、上記遮音層62における可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0045】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層62及び上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層62のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層62におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層62のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0046】
上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64の厚さは、保護層としての役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。上記保護層の断面形状が矩形状である場合、上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64の厚さの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層62の厚さを確保するためには、実質的には500μm程度が上限である。
【0047】
上記保護層は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していてもよい。上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の最小厚みの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の最大厚みの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には1000μm程度が上限であり、800μmが好ましい。
【0048】
本発明の合わせガラス用中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有していてもよい。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。本発明の合わせガラス用中間膜では、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きいことが好ましい。このような一端と他端の厚みが異なる形状を有することで、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスをヘッドアップディスプレイとして好適に用いることができ、その際に、二重像の発生を効果的に抑制できる。本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形であってもよい。合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であれば、合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、ヘッドアップディスプレイにおいて二重像の発生を防止した画像表示が可能となる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mradであり、更に好ましい下限は0.3mrad、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有し、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。
【0049】
上記着色層63は、合わせガラス用中間膜に高い防眩性を付与する役割を有する。
上記着色層63は、例えば、着色剤とポリビニルアセタールと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記着色層63に用いるポリビニルアセタール、可塑剤については特に限定されず、上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61、遮音層62及び第2の保護層64に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0050】
上記着色剤は、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、酸化チタン等の誘導体やアゾ加工物、カーボンブラック等の染料又は顔料を、界面活性剤を用いて可塑剤に分散させたものを用いる。具体的には例えば、住化カラー社製の商品名「SG−8E905」、「SG−4E408」、「SG−100N」、「SG−5A1251」、「SG−4A1053」等の市販品を用いることができる。上記着色剤はこれらの市販品に限定されず、2種類以上の混合物を用いてもよい。
【0051】
上記着色層63中の着色剤の濃度は特に限定されず、求められる防眩性、着色剤の種類、着色層の厚み等に基づいて、適宜選択すればよい。
上記着色層63の厚みは特に限定されず、求められる防眩性、着色剤の種類、着色剤の濃度等に基づいて、適宜選択すればよい。また、上記着色層63は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有していてもよく、厚み方向の断面形状が楔形であってもよい。
【0052】
上記合わせガラス用中間膜6を構成する各層は、接着力調整剤を含有することが好ましい。特に、合わせガラスを製造するときに、ガラスと接触する上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64は、接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。合わせガラスを製造するときに、ガラスと樹脂層との接着力を容易に調製できることから、ガラスと接触する上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61及び第2の保護層64は、接着力調整剤として、マグネシウム塩を含むことが好ましい。
【0053】
上記合わせガラス用中間膜6を構成する各層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変成シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0054】
上記合わせガラス用中間膜6を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)61、遮音層62、着色層63及び第2の保護層64を、押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜した後、積層する方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の合わせガラス用中間膜は、車両用途に好適に用いることができ、車両用のフロントガラスに特に好適に用いることができる。
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層を有する紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスの製造工程において優れた脱気性を有し、かつ、着色部の外観不良の発生を防止できる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図2】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図3】合わせガラス用中間膜の表面に形成された刻線状の凹部のパターンの一例を表す模式図である。
図4】上辺部に沿って帯状になるように着色層が配置された車輌用合わせガラスを示す模式図である。
図5】本発明の合わせガラス用中間膜における着色層の表層側の表面と表層の多数の凹部を有する表面との距離の測定方法を説明する模式図である。
図6】本発明の合わせガラス用中間膜の好ましい態様の1例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0059】
(表層・保護層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB1:アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、表層、保護層用樹脂組成物を得た。
【0060】
(着色層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB1:アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、着色剤としてSG−8E905(住友カラー社製)3質量部又は4質量部、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)36質量部又は37質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、着色層用樹脂組成物を得た。
【0061】
(遮音層用樹脂組成物の調製)
平均重合度が2400のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(PVB2:アセチル基量12モル%、ブチラール基量65モル%、水酸基量23モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、遮音層用樹脂組成物を得た。
【0062】
(実施例1〜6、比較例1、2)
(1)積層体の調製
表1及び表2に従い、得られた表層・保護層用樹脂組成物、着色層用樹脂組成物及び遮音層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出することにより、表層(保護層)1、遮音層、保護層3、着色層及び表層(保護層)2の順(表の記載順)に積層された3〜5層構造の積層体を得た。
なお、実施例5及び6においては着色剤として、「SG−5A1251」と「SG−4A1053」をそれぞれ用いた。
【0063】
(2)凹部の付与
得られた積層体について、以下の方法により表面に凹部を付与して、合わせガラス用中間膜を得た。
第1の工程として、下記の手順により積層体の両面にランダムな凹凸形状を転写した。まず、鉄ロール表面に、ブラスト剤を用いてランダムな凹凸を施した後、該鉄ロールをバーチカル研削し、更に、より微細なブラスト剤を用いて研削後の平坦部に微細な凹凸を施すことにより、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつ同形状の1対のロールを得た。該1対のロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた積層体の両面にランダムな凹凸形状を転写した。この時の転写条件として、積層体の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、プレス線圧を50〜100kN/mとした。
【0064】
第2の工程として、下記の手順により積層体の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与して合わせガラス用中間膜を得た。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程でランダムな凹凸形状を転写した積層体をこの凹凸形状転写装置に通し、一方の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に並列した凹部を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を常温、ロール温度を130℃、線速を10m/min、膜幅を1.5m、プレス圧を500kPaとした。
次いで、合わせガラス用中間膜の他方の表面に、凹凸形状の異なる金属ロールを用いた以外は上記と同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。
【0065】
(3)合わせガラス用中間膜の表層のRz、Smの測定
得られた合わせガラス用中間膜の表面を、JIS B 0601(1994)に準拠し、高精度形状測定システム(キーエンス社製、「KS−1100」先端ヘッド型番「LT−9510VM」)を用いて測定し、十点平均粗さRz及び凹部の平均間隔Smを測定した。なお、測定条件は、ステージ移動速度は1000μm/s、X軸の測定ピッチを10μm、Y軸の測定ピッチを10μmとし、測定視野を横2.5cm、縦1cmとして評価した。得られたデータを解析ソフトKS−Analyzer(キーエンス社製)にて解析した。解析ソフトにて水平線を使用し、線粗さ(1994JIS)を計測した。カットオフ2.50mm、単純平均±12の高さスムージング補正を実施し、線粗さを計測した。Rz、Smは画像の垂直方向に、1mm以上離れた任意の3点の平均値を使用した。
【0066】
(4)合わせガラス用中間膜の着色層の表層側の表面と、表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値の測定
得られた合わせガラス用中間膜を、室温23℃、湿度40%の雰囲気下に24時間以上保管した。次いで、同条件下にて、はさみ(林刃物社製 型番15101)を用いて着色部を含む合わせガラス用中間膜をMD方向2mm、TD方向20mmの直方体にカットした。カットする位置は合わせガラスを作製して外観確認を行うサンプルの端部よりMD方向に50mm以内の位置とした。カットした合わせガラス用中間膜の断面を、デジタルマイクロスコープ(ナカデン社製、型式FS1400)を用いて倍率270倍で観察し、表層の多数の凹部を有する表面と着色層の表層側の表面との最少距離を測定した。サンプルを乗せるステージとしては、ナカデン社より入手した低倍率用透過照明を用いた。
【0067】
(5)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜をJIS R3202(1996)に準拠した二枚のクリアガラス板(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、得られた合わせガラス構成体をゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−60kPa(絶対圧力16kPa)の減圧下で10分間保持し、合わせガラス構成体の温度(予備圧着温度)が70℃となるように加熱した後、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された合わせガラス構成体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で20分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
【0068】
(実施例7〜11、比較例3)
得られた表層・保護層用樹脂組成物、着色層用樹脂組成物及び遮音層用樹脂組成物を、凹凸付与後に得られる表層(保護層)1、遮音層、着色層、表層(保護層)2及び中間膜全体の断面形状、最大厚み、最小厚み及び幅方向の長さが表3及び表4記載の値となるように、共押出の条件を変更し、膜幅を1.5mから1.0mに変更した以外は、実施例1と同様にして3〜4層構造の積層体を得た。また、共押出の条件は、リップ金型の温度を100℃から280℃の範囲で幅方向に中間膜全体の厚みが薄い方の端部が低温に、中間膜全体の厚みが厚い方の端部が高温側となるように温度勾配を設けて調整し、金型の温度に調整かつ、リップ金型としてリップの間隙を1.0〜4.0mmの範囲で調整した。
また、実施例1と同様の方法により、Rz、Sm及び着色層の表層側の表面と、表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値を測定した。また、実施例7〜11及び比較例3において、保護層1、遮音層、着色層、表層は幅方向に厚みが変化するため、着色部が存在する側の端部を着色側、着色部が存在しない側の端部を透明側として、着色側端部と、透明側端部における各層の厚みを測定した。また、実施例10においては、着色剤として「SG−5A1251」を用いた。
【0069】
得られた積層体について、表面の粗さRz及び凹部の間隔Smが表3及び表4に記載の値となるように、凹凸付与の条件を変更した以外は、実施例1と同様の方法により積層体に凹凸を付与し、合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜のうち、着色層の厚みが最大となる領域が含まれるように、JIS R3202(1996)に準拠した二枚のクリアガラス板(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、得られた合わせガラス構成体をゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−60kPa(絶対圧力16kPa)の減圧下で10分間保持し、合わせガラス構成体の温度(予備圧着温度)が70℃となるように加熱した後、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された合わせガラス構成体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で20分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
【0070】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラスについて、以下の方法により着色層部の外観の評価を行った。結果を表1〜表4に示した。
【0071】
(目視による外観の評価)
得られた合わせガラスを、ライトテーブル(綾瀬工業社製、型番122062)の上に乗せ、目視にて色ムラが発生しているか否かを判定した。10名の判定者のうち、4名以上が色ムラ有りと判断した場合を外観不良品として「×」と判定し、色ムラ有りと判断した判定者が3名以下の場合を外観良品として「○」と判定した。
【0072】
(可視光線透過率の測定)
合わせガラスの可視光線透過率は、指標Tv(全可視光線透過率)で評価した。この指標Tvは、JIS R3212(1998)およびJISZ8 722に準拠して、波長380〜780nmにおける透過率を加重平均化して算出した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、着色層を含む2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスの製造工程において優れた脱気性を有し、かつ、着色部の外観不良の発生を防止できる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスを提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 任意に選択した一の凹部
2 任意に選択した一の凹部に隣接する凹部
3 任意に選択した一の凹部に隣接する凹部
A 凹部1と凹部2との間隔
B 凹部1と凹部3との間隔
4 車両用合わせガラス
41 上辺部に沿って帯状になるように配置された着色層
51 合わせガラス用中間膜
511 断面が矩形の着色層
512 一方の表面に多数の凹部を有する表層
a 着色層の表層側の表面と表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値
52 合わせガラス用中間膜
521 断面が楔形の着色層
522 一方の表面に多数の凹部を有する表層
b 着色層の表層側の表面と表層の多数の凹部を有する表面との距離の最小値
6 合わせガラス用中間膜
61 一方の表面に多数の凹部を有する表層(第1の保護層)
62 遮音層
63 着色層
64 第2の保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6