特許第6791768号(P6791768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791768
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】潤滑油供給装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 29/00 20060101AFI20201116BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20201116BHJP
   F16N 13/22 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F16N29/00 E
   F16N29/00 Z
   F16N7/38 C
   F16N7/38 F
   F16N7/38 G
   F16N13/22
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-10144(P2017-10144)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-119568(P2018-119568A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195100
【氏名又は名称】株式会社 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大鷹 英雄
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−46296(JP,A)
【文献】 実開平6−65699(JP,U)
【文献】 特開平6−74392(JP,A)
【文献】 特開昭62−72998(JP,A)
【文献】 特開2004−66425(JP,A)
【文献】 米国特許第4976335(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 29/00
F16N 7/38
B23Q 11/12
B67D 7/00− 99/00
F01M 11/00− 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が貯留されその油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチおよび上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチを有する貯油タンクを含む潤滑油給油ポンプと、上記潤滑油給油ポンプからの給油を受け被給油箇所に所定量の潤滑油を吐出する定量分配器と、上記潤滑油給油ポンプに潤滑油を補給する潤滑油補給用ポンプとを含み、上記潤滑油給油ポンプは吐出・脱圧を1給油サイクルとして動作し、上記貯油タンク内の油面が所定レベルまで下がると、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに所定量の潤滑油が補給される潤滑油供給装置において、
上記潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに対し、上記1給油サイクルあたりの上記定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、
補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは上記上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過しても補給が終了しない場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させ、
上記上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過する前までに補給が終了する場合には、異常なしと判定する制御部を備えていることを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項2】
上記下限レベルと上記上限レベル間の油量を有効使用油量Dとして、上記補給量Cは上記有効使用油量Dよりも少なくC<Dであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記貯油タンク内の油面レベルが上記上限レベル以上であるとき、上記給油サイクル数のカウントを開始することを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記カウント値が所定のカウント閾値Aに達する前に上記下限検知用フロートスイッチがオンになった場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の潤滑油供給装置。
【請求項5】
潤滑油が貯留されその油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチおよび上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチを有する貯油タンクを含む潤滑油給油ポンプと、上記潤滑油給油ポンプからの給油を受け被給油箇所に所定量の潤滑油を吐出する定量分配器と、上記潤滑油給油ポンプに潤滑油を補給する潤滑油補給用ポンプとを含み、上記潤滑油給油ポンプは吐出・脱圧を1給油サイクルとして動作し、上記貯油タンク内の油面が所定レベルまで下がると、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに所定量の潤滑油が補給される潤滑油供給装置において、
上記潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記下限検知用フロートスイッチがオンである場合には、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに対し、上記1給油サイクルあたりの上記定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、その補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオンであれば異常なしと判定し、
上記所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記下限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオフの場合には異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項6】
上記下限レベルと上記上限レベル間の油量を有効使用油量Dとして、上記補給量Cは上記有効使用油量Dよりも多くC>Dであることを特徴とする請求項5に記載の潤滑油供給装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記貯油タンク内の油面レベルが上記上限レベル以上であるとき、上記給油サイクル数のカウントを開始することを特徴とする請求項5または6に記載の潤滑油供給装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記カウント値が所定のカウント閾値Aに達する前に上記下限検知用フロートスイッチがオンになった場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の潤滑油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に関し、さらに詳しく言えば、潤滑油漏れや配管詰まり等の異常を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、大型の工作機械の場合、1台の工作機械に複数台の潤滑油給油ポンプが取り付けられることがある。また、同じ工場内に複数台の工作機械が並べられている場合にも、その台数分(もしくはそれ以上)の潤滑油給油ポンプが用いられることがある。
【0003】
潤滑油給油ポンプは貯油タンク(オイルタンク)を有し、その貯油量が下限レベルにまで減少した場合には適宜潤滑油を補給する必要がある。この補給作業を人手で行うとすると、潤滑油給油ポンプの台数に比例して労力と時間がかかるばかりでなく、補給し忘れと言った問題も生ずる。
【0004】
そこで、各潤滑油給油ポンプに自動で潤滑油を補給するシステムが提案されており(例えば、特許文献1参照)、その一例を図4に示す。この例においては、潤滑油給油ポンプ10が3台で、その各々に2台の定量分配器20が並列に接続されている。3台の潤滑油給油ポンプ10(10a,10b,10c)に対して、補給用として1台の潤滑油補給用ポンプ30を備えている。
【0005】
潤滑油給油ポンプ10の貯油タンク11内には、油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチ11aと、油面の上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチ11bとが設けられている。潤滑油補給用ポンプ30は、電磁弁40a,40b,40cを介して潤滑油給油ポンプ10a,10b,10cと接続されている。なお、図示が省略されているが、潤滑油給油ポンプ10b,10cの貯油タンク11内にも下限検知用フロートスイッチ11aと上限検知用フロートスイッチ11bとが設けられている。
【0006】
例えば、潤滑油給油ポンプ10aの貯油タンク11内の油面が下がって下限検知用フロートスイッチ11aがオンになると、潤滑油補給用ポンプ30が起動するとともに電磁弁40aが「開」となり、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10aに潤滑油が補給され、油面が上昇して上限検知用フロートスイッチ11bがオンになると、潤滑油補給用ポンプ30が停止し電磁弁40aが「閉」となる。他の潤滑油給油ポンプ10b,10cについても、同様にして潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油が補給される。
【0007】
これによれば、人手によることなく、各潤滑油給油ポンプ10に潤滑油を補給することができるが、定量分配器20の詰まりや潤滑油漏れ等の異常までは検知することができない。定量分配器20の詰まりが生ずると、被給油箇所が潤滑油不足となり、最悪、摺動部分等がかじり付いてしまうことがある。また、潤滑油漏れも被給油箇所に潤滑油不足を招く一因となるが、潤滑油の流出による汚染が問題となる。
【0008】
このような異常を検知するため、特許文献2に記載された発明では、下限検知用フロートスイッチ11aによって検知される下限レベルと、上限検知用フロートスイッチ11bによって検知される上限レベルとの間の油量を有効使用油量とし、正常状態で有効使用油量を使い切る吐出回数を計数し、1回目の吐出回数を初期値とし、2回目以降の各回ごとの吐出回数を初期値と比較し、その吐出回数に増減が生じた場合に、潤滑油漏れや配管詰まり等の異常があると判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−46296号公報
【特許文献2】特開平06−74329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2による有効使用油量を使い切る吐出回数には、下限検知用フロートスイッチ11aがオンするまでの時間が反映されていないため、なおも解決すべき課題が残されている。
【0011】
すなわち、潤滑油給油ポンプ10から定量分配器20に至る配管、定量分配器20から被給油箇所に至る配管もしくは定量分配器20自体の詰まり等が生じている場合には、貯油タンク11内の潤滑油の減りが遅くなるため、下限検知用フロートスイッチ11aがオンするまでの時間が長くなる。このことは、被給油箇所が長時間にわたって潤滑油不足状態に放置されることを意味する。
【0012】
したがって、本発明の課題は、特に定量分配器の詰まりや潤滑油漏れ等の異常をより確実に検知することができる潤滑油供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明は、潤滑油が貯留されその油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチおよび上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチを有する貯油タンクを含む潤滑油給油ポンプと、上記潤滑油給油ポンプからの給油を受け被給油箇所に所定量の潤滑油を吐出する定量分配器と、上記潤滑油給油ポンプに潤滑油を補給する潤滑油補給用ポンプとを含み、上記潤滑油給油ポンプは吐出・脱圧を1給油サイクルとして動作し、上記貯油タンク内の油面が所定レベルまで下がると、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに所定量の潤滑油が補給される潤滑油供給装置において、
上記潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに対し、上記1給油サイクルあたりの上記定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、
補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは上記上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過しても補給が終了しない場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させ、
上記上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過する前までに補給が終了する場合には、異常なしと判定する制御部を備えていることを特徴としている。
【0014】
上記第1の発明において、上記下限レベルと上記上限レベル間の油量を有効使用油量Dとして、上記補給量Cは上記有効使用油量Dよりも少なくC<Dであることを特徴としている。
【0015】
また、上記制御部は、上記貯油タンク内の油面レベルが上記上限レベル以上であるとき、上記給油サイクル数のカウントを開始することを特徴としている。
【0016】
また、上記制御部は、上記カウント値が所定のカウント閾値Aに達する前に上記下限検知用フロートスイッチがオンになった場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴としている。
【0017】
本願には第2の発明も含まれ、第2の発明は、潤滑油が貯留されその油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチおよび上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチを有する貯油タンクを含む潤滑油給油ポンプと、上記潤滑油給油ポンプからの給油を受け被給油箇所に所定量の潤滑油を吐出する定量分配器と、上記潤滑油給油ポンプに潤滑油を補給する潤滑油補給用ポンプとを含み、上記潤滑油給油ポンプは吐出・脱圧を1給油サイクルとして動作し、上記貯油タンク内の油面が所定レベルまで下がると、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに所定量の潤滑油が補給される潤滑油供給装置において、
上記潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記下限検知用フロートスイッチがオンである場合には、上記潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに対し、上記1給油サイクルあたりの上記定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、その補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオンであれば異常なしと判定し、
上記所定のカウント閾値Aに達した時点で、上記下限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオフの場合には異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴としている。
【0018】
上記第2の発明において、上記下限レベルと上記上限レベル間の油量を有効使用油量Dとして、上記補給量Cは上記有効使用油量Dよりも多くC>Dであることを特徴としている。
【0019】
また、上記制御部は、上記貯油タンク内の油面レベルが上記上限レベル以上であるとき、上記給油サイクル数のカウントを開始することを特徴としている。
【0020】
上記制御部は、上記カウント値が所定のカウント閾値Aに達する前に上記下限検知用フロートスイッチがオンになった場合には、異常ありとして所定の警報手段を動作させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1の発明によれば、潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、潤滑油補給用ポンプから上記潤滑油給油ポンプに対し、1給油サイクルあたりの定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、補給後に上限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過しても補給が終了しない場合には異常あり、これに対して、上限検知用フロートスイッチがオンになった時点から所定時間Tが経過する前までに補給が終了する場合には異常なしと判定するようにしたことにより、下限検知用フロートスイッチが下限を検知する前に、当該潤滑油供給装置に含まれるポンプ、定量分配器、配管等の異常を検知することができる。
【0022】
また、本願の第2の発明においても、潤滑油給油ポンプの給油サイクル数をカウントし、そのカウント値が予め設定された所定のカウント閾値Aに達した時点で、下限検知用フロートスイッチがオンである場合には、潤滑油補給用ポンプから潤滑油給油ポンプに対し、1給油サイクルあたりの定量分配器の吐出量をBとしてA×Bにより算出される補給量Cの潤滑油を補給し、その補給後に上限検知用フロートスイッチがオンであれば異常なしと判定し、所定のカウント閾値Aに達した時点で、下限検知用フロートスイッチがオフである場合もしくは補給後に上記上限検知用フロートスイッチがオフの場合には異常ありと判定するようにしたことにより、下限検知用フロートスイッチによる下限検知ごとではなく、給油サイクル数が所定のカウント閾値Aに達するたびに、当該潤滑油供給装置に含まれるポンプ、定量分配器、配管等の異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による潤滑油供給装置を示す模式図。
図2】(a)第1実施形態の動作を示すフローチャート、(b)貯油タンクの補給量を示す模式図。
図3】(a)第2実施形態の動作を示すフローチャート、(b)貯油タンクの補給量を示す模式図。
図4】潤滑油供給装置の従来例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
図1を参照して、この実施形態に係る潤滑油供給装置1は、先に説明した図4の従来装置と同じく、例えば3台の潤滑油給油ポンプ10(10a,10b,10c)を備え、その各々に2台の定量分配器20が並列に接続されている。
【0026】
潤滑油給油ポンプ10は貯油タンク11を含み、貯油タンク11内には、油面の下限レベルを検知する下限検知用フロートスイッチ11aと、油面の上限レベルを検知する上限検知用フロートスイッチ11bとが設けられている。なお、図示が省略されているが、給油ポンプ10b,10cの貯油タンク11内にも、同じく下限検知用フロートスイッチ11aと、上限検知用フロートスイッチ11bとが設けられている。
【0027】
3台の潤滑油給油ポンプ10(10a,10b,10c)に対して、補給用として1台の潤滑油補給用ポンプ30を備えている。潤滑油補給用ポンプ30は、電磁弁40a,40b,40cを介して潤滑油給油ポンプ10a,10b,10cと接続されている。なお、電磁弁40a,40b,40cを区別する必要がない場合には、総称として電磁弁40という。
【0028】
この潤滑油供給装置1は、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10に供給される補給量を計量する流量計41と、制御部51とをさらに備えている。
【0029】
この実施形態において、流量計41は、各潤滑油給油ポンプ10に対して共通に用いられるように、潤滑油補給用ポンプ30と電磁弁40との間の吐出側配管に設けられているが、電磁弁40と潤滑油給油ポンプ10との間の配管内に設けられてもよい。
【0030】
制御部51には、マイクロコンピュータやCPU(中央演算処理ユニット)が好ましく用いられる。制御部51は、潤滑油給油ポンプ10、潤滑油補給用ポンプ30および電磁弁40を制御する。
【0031】
潤滑油給油ポンプ10は容積式で、吐出・脱圧を1給油サイクルとして動作する。制御部51は、その給油サイクル数をカウントするカウンタ52を備えている。なお、潤滑油給油ポンプ10の給油サイクルタイムは、潤滑油給油ポンプごとに異なるため、カウンタ52には、潤滑油給油ポンプ10a用のカウンタ52a,潤滑油給油ポンプ10b用のカウンタ52b,潤滑油給油ポンプ10c用のカウンタ52cとが含まれている。
【0032】
定量分配器20は内部に計量室を有し、1給油サイクルごとに計量室で計量された一定量の潤滑油を被給油箇所に間欠的に吐出する。1給油サイクルあたりの定量分配器20の吐出量をBとして、給油サイクル数がn回の場合の油消費量はB×nと予測できる。
【0033】
本発明において、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10への補給は、下限検知用フロートスイッチ11aによる下限レベルの検知時ではなく、給油サイクル数が所定回数(カウント閾値)に達した時点で行われる。その第1実施形態を図2のフローチャートに沿って説明する。
【0034】
なお、貯油タンク11内の下限レベルと上限レベル間の油量を有効使用油量Dとし、この例では、有効使用油量Dは2L(リットル)である。定量分配器20の1給油サイクルあたりの吐出量は2台分で0.1Lである(1台あたり0.05L)。また、給油サイクル数のカウント閾値Aを15カウントとしている。
【0035】
制御部51は、上限検知用フロートスイッチ11bがオン、すなわち貯油タンク11内に上限レベル以上の潤滑油が蓄えられている状態(初期状態)にあるとき、ステップST201として、カウンタ52(52a,52b,52c)をリセットして計数をスタートさせるとともに、ステップST202として、潤滑油給油ポンプ10に対して給油サイクルをスタートさせる。
【0036】
制御部51は、給油サイクル数がカウント閾値の15カウントに達するまで潤滑油給油ポンプ10を運転させるが、その間にステップST203として、15カウント未満で下限検知用フロートスイッチ11aがオンになったかどうかを判定する。
【0037】
その結果がYESで、下限検知用フロートスイッチ11aがオンになった場合には、ステップST203aでランプ、ブザー等の警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。この場合の異常の原因は、潤滑油漏れによる油面の早期低下が考えられる。
【0038】
ステップST203での判定結果がNOで、15カウント未満で下限検知用フロートスイッチ11aがオンにならず、ステップST204で、給油サイクル数のカウント値nがカウント閾値Aの15カウントに達すると、次段のステップST205で、潤滑油補給用ポンプ30から15カウント分と同量の潤滑油を潤滑油給油ポンプ10に補給する。
【0039】
上記したように、この例において、定量分配器20の1給油サイクルあたりの吐出量は2台分で0.1Lであるから、潤滑油の補給量Cは0.1L×15サイクル=1.5Lである。
【0040】
潤滑油補給用ポンプ30から例えば潤滑油給油ポンプ10aに潤滑油を補給する場合には、電磁弁40aを「開」、電磁弁40b,40cを「閉」として、流量計41で補給量Cの1.5Lが計量されるまで補給が続けられる。
【0041】
続くステップST206で、補給後に上限検知用フロートスイッチ11bがオンになったかどうかを判定する。その結果がNOで、補給が完了しても上限検知用フロートスイッチ11bがオンにならない場合(図2(b)のAの状態参照)には、ステップST206aを実行して、警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。
【0042】
この場合の異常の原因には、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10に至る配管、潤滑油給油ポンプ10から定量分配器20に至る配管、定量分配器20から被給油箇所に至る配管等での漏れが含まれる。
【0043】
これに対して、ステップST206の判定がYESで、補給後に上限検知用フロートスイッチ11bがオンになっている場合には、ステップST207で、さらに上限検知用フロートスイッチ11bがオンになってから、例えば2秒以内に補給が完了したかどうかを判定する。
【0044】
この2秒は、フロートスイッチの信頼性、補給スピード等の誤差を考慮したマージン的な時間で、上限検知用フロートスイッチ11bがオンになってから2秒以内に補給が完了すれば、正常に運転されているとのYES判定となり、当初のステップST201に戻る。以後、これを繰り返す。
【0045】
これに対して、上限検知用フロートスイッチ11bがオンになってから2秒経過しても補給が終了しないNO判定の場合には、補給後の油面が上限レベルを大きく超えた状態となる((図2(b)のBの状態参照))。
【0046】
この現象の場合は、潤滑油の消費量が1.5Lよりも少なく、配管詰まりや定量分配器20の詰まりが発生していることを意味するため、ステップST207aを実行して、警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。
【0047】
このように、第1実施形態によれば、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10への補給を下限検知用フロートスイッチ11aによる下限レベルの検知時ではなく、給油サイクル数が所定回数(カウント閾値)に達した時点で行うようにしたことにより、被給油箇所が長時間にわたって潤滑油不足状態に放置されることはない。
【0048】
なお、カウント閾値Aおよび補給量Cは、補給量C<有効使用量Dであることを条件として、任意に決められてよい。また、上記第1実施形態において、下限検知用フロートスイッチ11aは省略されてもよい。
【0049】
次に、図3のフローチャートに沿って、制御部51の動作の第2実施形態について説明する。
【0050】
この第2実施形態において、貯油タンク11内の下限レベルと上限レベル間の有効使用油量Dは2L(リットル)である。定量分配器20の1給油サイクルあたりの吐出量は2台分で0.105Lである(1台あたり0.0525L)。また、給油サイクル数のカウント閾値Aを20カウントとしている。したがって、補給量Cは、0.105L×20=2.1Lである。
【0051】
制御部51は、上限検知用フロートスイッチ11bがオン、すなわち貯油タンク11内に上限レベル以上の潤滑油が蓄えられている状態(初期状態)にあるとき、ステップST301として、潤滑油給油ポンプ10の給油サイクルをスタートさせるとともに、カウンタ52(52a,52b,52c)をスタートさせる。
【0052】
制御部51は、給油サイクル数がカウント閾値の20カウントに達するまで潤滑油給油ポンプ10を運転させるが、その間にステップST302として、20カウント未満で下限検知用フロートスイッチ11aがオンになったかどうかを判定する。
【0053】
その結果がYESで、下限検知用フロートスイッチ11aがオンになった場合には、ステップST302aでランプ、ブザー等の警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。この場合の異常の原因は、潤滑油漏れによる油面の早期低下が挙げられる。
【0054】
ステップST302での判定結果がNOで、20カウント未満で下限検知用フロートスイッチ11aがオンにならず、ステップST303で、給油サイクル数のカウント値nがカウント閾値Aの20カウントに達すると、次段のステップST304で、下限検知用フロートスイッチ11aがオンであるかどうかを判定する。
【0055】
その結果がNOで、給油サイクル数が20カウントに達しても、下限検知用フロートスイッチ11aがオンしない場合には、潤滑油の消費量が予定よりも少なく、配管詰まりや定量分配器20の詰まりが原因と考えられるから、ステップST304aを実行して、警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。
【0056】
これに対して、ステップST304での判定がYESで、下限検知用フロートスイッチ11aがオンである場合には、ステップST305で、潤滑油補給用ポンプ30から20カウント分と同量の潤滑油2.1L分を潤滑油給油ポンプ10に補給する。
【0057】
潤滑油補給用ポンプ30から例えば潤滑油給油ポンプ10aに潤滑油を補給する場合には、電磁弁40aを「開」、電磁弁40b,40cを「閉」として、流量計41で補給量Cの2.1Lが計量されるまで補給が続けられる。
【0058】
続くステップST306で、補給後に上限検知用フロートスイッチ11bがオンになったかどうかを判定する。その結果がNOで、上限検知用フロートスイッチ11bがオンにならない場合には、ステップST304aを実行して、警報器53を動作させ、オペレータに異常であることを知らせる。
【0059】
この場合の異常の原因は、潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10に至る配管からの潤滑油漏れ、もしくは潤滑油補給用ポンプ30から潤滑油給油ポンプ10に至る配管の詰まりや電磁弁40(40a,40b,40c)の異常が考えられる。
【0060】
これに対して、ステップST306の判定がYESで、補給後に上限検知用フロートスイッチ11bがオンになっている場合には、ステップST307で、カウンター52(52a,52b,52c)をリセットして初期のステップST301に戻る。以後、これを繰り返す。
【0061】
このように、第2実施形態においても、給油サイクル数が所定回数(カウント閾値)に達した時点で異常検知モードとなるため、被給油箇所が長時間にわたって潤滑油不足状態に放置されることはない。
【0062】
なお、第2実施形態では、カウント閾値Aおよび補給量Cは、有効使用量D<補給量Cであることを条件として、任意に決められてよい。また、本発明は、潤滑油給油ポンプ10が1台である態様を含む。潤滑油給油ポンプ10に接続される定量分配器20の台数も任意に決められてよい。
【符号の説明】
【0063】
10(10a〜10c) 潤滑油給油ポンプ
11 貯油タンク
11a 下限検知用フロートスイッチ
11b 上限検知用フロートスイッチ
20 定量分配器
30 潤滑油補給用ポンプ
40(40a〜40c) 電磁弁
41 流量計
51 制御部
52(52a,52b,52c) カウンタ
53 警報器
図1
図2
図3
図4