(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軌道上の障害物を排除する排障板と、前記排障板の後方に配置される緩衝板と、前記緩衝板を後方から支持し、車体台枠に固定する支持装置とを備える鉄道車両用排障装置において、
前記緩衝板は、枕木方向の軸を中心に湾曲させて形成されていること、
前記緩衝板は、湾曲部を車両前方に向けた姿勢で配置され、枕木方向に位置する縁部が前記排障板に沿って車両前後方向に配置されていること、
を特徴とする鉄道車両用排障装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、複数の板バネの両端部を排障板に沿って配置することで、側方からの力に対する剛性を確保し、軌道上の障害物を排除する性能を確保していた。しかし、特許文献1の技術は、複数の板バネが、各々、鉛直方向の軸を中心に湾曲した厚板により構成されていたため、緩衝板の総質量が大きかった。つまり、特許文献1の技術では、鉄道車両用排障装置の質量が大きかった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題とするところは、側方からの力に対する剛性を維持しつつ、鉄道車両用排障装置を軽量化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の鉄道車両用排障装置は、軌道上の障害物を排除する排障板と、前記排障板の後方に配置される緩衝板と、前記緩衝板を後方から支持し、車体台枠に固定する支持装置とを備える鉄道車両用排障装置において、前記緩衝板は、枕木方向の軸を中心に湾曲させて形成されていることを特徴とする。緩衝板は、複数の板バネを重ね合わせて構成しても良いし、1枚で構成しても良い。また、枕木方向に分割して構成しても良い。
【0008】
この構成では、緩衝板が、枕木方向の軸を中心に湾曲した状態で排障板の後方に配置されている。そのため、緩衝板は、鉛直方向の軸を中心に湾曲した板バネを複数枚重ね合わせて一組の板バネ・アッセンブリとして構成する従来の緩衝板と比較して、使用する板の枚数が少なく、軽量である。
【0009】
上記構成の鉄道車両用排障装置は、緩衝板として使用する板の枚数が従来の緩衝板より少なくても、排障板に側方から作用する力に対して、従来の緩衝板を使用する場合と同等の剛性を確保できる。従来の緩衝板は、1枚の板バネだけで構成すると、排障板に側方から力が作用した場合に撓むおそれがあったため、複数枚の板バネの端部を重ね合わせて剛性を確保していた。しかし、上記構成の緩衝板は、枕木方向の軸を中心に湾曲しているため、軌道上の障害物が排障板に対して側方から衝突した場合には、緩衝板の縁部全体で側方からの力を受け、排障板を支持することができる。つまり、上記構成の緩衝板は、従来の板バネと曲げ方向を変えたことによって、従来の緩衝板よりも少ない板の枚数で、従来の緩衝板と同程度の剛性を確保することが可能になった。
【0010】
もっとも、上記構成の緩衝板は、従来の緩衝板と比較して、衝突時のエネルギー吸収量が低下する問題が生じる。そこで、上記構成の鉄道車両用排障装置は、更に、前記排障板と前記緩衝板との間に配設され、前記排障板から前記緩衝板に向かって作用するエネルギーを吸収するエネルギー吸収材を有することが好ましい。この構成の鉄道車両用排障装置は、排障板が障害物に衝突したときに発生するエネルギーを、緩衝板とエネルギー吸収材とが共同して吸収する。よって、上記構成の鉄道車両用排障装置では、従来は緩衝板にて吸収していた衝突時のエネルギーを、エネルギー吸収材にて吸収することで、衝突時のエネルギー吸収量を確保している。
【0011】
上記構成の鉄道車両用排障装置は、前記排障板が、鉛直方向の軸を中心に湾曲した山形形状に形成されていること、前記緩衝板は、前記排障板の一方の側部に沿って配置される第1緩衝板と、前記排障板の他方の側部に沿って配置される第2緩衝板とに、分割されていること、前記第1緩衝板と前記第2緩衝板とを連結する連結部材を有すること、が好ましい。この構成によれば、緩衝板を第1緩衝板と第2緩衝板に分割することにより、排障板の一方の側部と他方の側部に接触しない部分を省くので、緩衝板全体を軽量化できる。また、第1緩衝板と第2緩衝板との間に空間を設けることで、その空間にエネルギー吸収材を配置することができる。この場合において、第1緩衝板と第2緩衝板を連結部材を介して結合することで、排障板の一方の側部と他方の側部との間に、第1緩衝板と連結部材と第2緩衝板とを梁のように配置する。これにより、上記構成の鉄道車両用排障装置は、緩衝板が第1緩衝板と第2緩衝板に分割されても、側方からの力に対する剛性を確保できる。
【0012】
上記構成の鉄道車両用排障装置は、前記排障板が、鉛直方向の軸を中心に湾曲した山形形状に形成され、一方の側部と他方の側部とを結合する横梁を有すること、前記エネルギー吸収材は、前記横梁の前側に配置される第1エネルギー吸収材と、前記横梁の後側に配置される第2エネルギー吸収材を含んでいること、が好ましい。横梁を有することで、衝突時の排障板の変形によるエネルギー吸収量が増加する。また、衝突時に、横梁によって緩衝板を加圧し、変形させることで、エネルギーを吸収できる。この構成では、衝突時に、第1エネルギー吸収材が変形してエネルギーを吸収した後、第2エネルギー吸収材が変形してエネルギーを吸収するので、衝突時のエネルギーを安定して吸収できる。
【0013】
更に、本発明の緩衝板は、鉄道車両用排障装置に用いられる緩衝板において、枕木方向の軸を中心に湾曲した姿勢で、軌道上の障害物を排除する排障板の後方に配置されることを特徴とする。
【0014】
かかる構成の緩衝板は、枕木方向の軸を中心に湾曲した状態で排障板の後方に配置され、枕木方向の縁部が排障板に沿って配置される。そのため、排障板が側方から力を受けた場合には、緩衝板が縁部全体でその力を受け、変形しにくい。よって、上記構成の緩衝板は、1枚の板を湾曲させて構成することで軽量化しつつ、排障板の側方からの力に対する剛性を維持できる。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明によれば、側方からの力に対する剛性を維持しつつ、鉄道車両用排障装置を軽量化する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用排障装置の平面図である。
【
図7】本発明例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量0の状態を示す。
【
図8】本発明例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量1の状態を示す。
【
図9】本発明例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量2の状態を示す。
【
図10】本発明例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量3の状態を示す。
【
図11】本発明例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量4の状態を示す。
【
図12】従来例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量0の状態を示す。
【
図13】従来例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量1の状態を示す。
【
図14】従来例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量2の状態を示す。
【
図15】従来例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量3の状態を示す。
【
図16】従来例の排障装置をある速度で軌道上の障害物に衝突させた場合の変形状態をシミュレーション解析した結果を示す図であって、衝突開始後の車両変位量4の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る鉄道車両用排障装置及び緩衝板の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用排障装置1(以下「排障装置1」とする。)の平面図である。
図2は、
図1の正面図である。
図3は、
図1のAA断面図である。排障装置1は、例えば高速車両に適用される。排障装置1は、軌道R上の障害物を排除して、車両の脱線を防止する。
【0019】
図1及び
図3に示すように、排障装置1は、軌道上の障害物を排除する排障板3と、排障板3の後方に配置される第1緩衝板41及び第2緩衝板42と、第1及び第2緩衝板41,42を後方から支持し、鉄道車両の車体台枠8に固定する支持装置5などを備える。第1緩衝板41と第2緩衝板42は、緩衝板になる。
【0020】
図1に示すように、排障板3は、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲する山形形状に形成されている。すなわち、排障板3は、枕木方向(左右方向)Yの中心部に前頭部31が設けられ、その前頭部31から車両左斜め後方に向かって左面板部32が延設され、前頭部31から車両右斜め後方に向かって右面板部33が延設されている。左面板部32が一方の側部になり、右面板部33が他方の側部になる。
【0021】
排障板3は、前頭部31付近に、第1梁板36と第2梁板37が枕木方向Yに沿って配置され、左面板部32と右面板部33に固定されている。第2梁板37は横梁になる。これにより、排障板3は、前頭部31付近の剛性が高められており、衝突時の排障板によるエネルギー吸収量が高められている。また、前頭部31は、鋭角に設けられ、障害物を切り裂く切り刃として機能する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、排障板3の前頭部31には、リップ部2が取り付けられている。リップ部2は、軌道上の障害物を軌道から持ち上げて車両側方に案内し、障害物が車両の下に潜り込むことを防止する。
【0023】
図1〜
図3に示すように、左面板部32と右面板部33には、車体台枠8に固定される吊り金具34,35が取り付けられている。つまり、排障板3は、車体台枠8に吊り下げられた状態で鉄道車両に取り付けられる。
【0024】
図1に示すように、第1緩衝板41と第2緩衝板42は、排障板3の後方において、平行に配置されている。第1緩衝板41は、左面板部32の内側面に沿って配設され、第2緩衝板42は、右面板部33の内側面に沿って配設されている。
【0025】
図1及び
図3に示すように、第2緩衝板42は、枕木方向Yの軸を中心に剛板を湾曲させたものである。すなわち、第2緩衝板42は、湾曲部421と、湾曲部421の上側に位置する端部から車両後方に延びる第1平板部422と、湾曲部421の下側に位置する端部から車両後方に延びる第2平板部423とを備える。
【0026】
図3に示すように、第1平板部422と第2平板部423との鉛直方向Zの間隔は、第2梁板37の鉛直方向Zの幅より大きく設けられ、湾曲部421が第2梁板37に加圧されて後方に変形できるようになっている。
【0027】
図1に示すように、第2緩衝板42は、枕木方向Yの外側に位置する外側縁部424が、右面板部33が前頭部31から後方にいくにつれて車両右外側に変位しているのに沿うように、車両前後方向Xに対して斜めに形成されている。尚、第1緩衝板41は、第2緩衝板42と同様に形成されている。
【0028】
図1に示すように、第1及び第2緩衝板41,42は、支持装置5の左右支持部材51,52と左右取付金53,54を介して、車体台枠8に吊り下げられた状態で取り付けられる。支持装置5は、第1及び第2緩衝板41,42の外側縁部414,424を左右面板部32,33に近接させるように、第1及び第2緩衝板41,42を保持する。また、支持装置5は、湾曲部411,421の先端部を第2梁板37に近接させるように第1及び第2緩衝板41,42を配置し、第2梁板37から湾曲部411,421に均等に力が作用するようにしている。
【0029】
図3に示すように、右取付金54は、第1平板部422の上面に取り付けられ、車体台枠8に固定される。右支持部材52は、右箱体521と、右軸部材522と、取付座523とを結合して構成されている。なお、左支持部材51と左取付金53は、これらと同様に設けられているので、説明を省略する。
【0030】
図6は、緩衝板補強構造を示す図である。第2緩衝板42は、第1平板部422と第2平板部423との間に右箱体521と補強板9が取り付けられている。右箱体521は、第2緩衝板42の車両前後方向Xの中央部に配設され、湾曲部421との間に車両前後方向Xに沿って空間を設けている。右箱体521は、平面視においてd形状に形成され、後側面521aが幅広に設けられている。また、後側面521aは、枕木方向Yの幅が第2緩衝板42と同一にされ、補強板9は、外側縁部424の後方位置に配置されている。よって、第2緩衝板42は、後側面521aと補強板9により右面板部33から受ける荷重に対する剛性が高められている。
【0031】
ここで、
図3及び
図6に示すように、右箱体521は、後側面521aに取り付けられた結合部521bに右軸部材522が結合され、取付座523に連結される。尚、第1緩衝板41も、第2緩衝板42と同様に補強されている。
【0032】
このようにして支持装置5を介して車体台枠8に取り付けられる第1及び第2緩衝板41,42は、
図1に示すように、中間ブロック7を介して、枕木方向Yに結合されている。尚、中間ブロック7と、左支持部材51の図示しない左箱体と、右支持部材52の右箱体521が、連結部材になる。
【0033】
図3及び
図6に示すように、中間ブロック7は、前板71と上板72と下板73と後板74を結合して構成されている。中間ブロック7は、内部板75が内部に取り付けられ、補強されている。中間ブロック7は、左支持部材51の図示しない左箱体と、右支持部材52の右箱体521に結合されている。よって、第1及び第2緩衝板41,42は、図示しない左箱体と、右箱体521と、中間ブロック7により、側方からの力に対する剛性を確保している。
【0034】
図1に示すように、排障装置1は、中間ブロック7を介して結合された第1及び第2緩衝板41,42の間に空間S1が形成されている。そこで、排障装置1は、その空間S1にエネルギー吸収装置6を配置している。エネルギー吸収装置6は、エネルギー吸収材になる。
【0035】
エネルギー吸収装置6は、第2梁板37の前側に配置される第1エネルギー吸収ユニット61と、第2梁板37の後側に配置される第2エネルギー吸収ユニット62を有する。第1エネルギー吸収ユニット61は、第1エネルギー吸収材になり、第2エネルギー吸収ユニット62は、第2エネルギー吸収材になる。第2梁板37の車両前後方向Xの位置を変えることで、第1及び第2エネルギー吸収ユニット61,62の車両前後方向Xの長さを調整でき、変形時の安定性をコントロールできる。
【0036】
図4は、
図1のBB断面図である。第1エネルギー吸収ユニット61は、車両前後方向に変位してエネルギーを吸収する吸収部材611を備える。吸収部材611は、固定プレート612に固定されている。吸収部材611は、例えば、パイプや、箱体や、枠体や、コイル等の弾性部材や、エアクッションや、エアダンパ等により構成される。固定プレート612は、ボルト613を介して第2梁板37に固定されている。尚、例えば、特開2010−125858号公報には、パイプにより構成されたエネルギー吸収ユニットが具体的に開示されている。
【0037】
図5は、
図1のCC断面図である。第2エネルギー吸収ユニット62は、車両前後方向に変位してエネルギーを吸収する吸収部材621を備える。吸収部材621は、固定プレート622に固定されている。吸収部材621は、例えば、パイプや、箱体や、枠体や、コイル等の弾性部材や、エアクッションや、エアダンパ等により構成される。固定プレート622は、ボルト623を介して中間ブロック7の前板71に固定されている。尚、例えば、特開2010−125858号公報には、パイプにより構成されたエネルギー吸収ユニットが具体的に開示されている。
【0038】
上記の通り、エネルギー吸収装置6については、様々な形状や材料のものが選択可能である。また、従来の緩衝板を搭載した排障装置においては、エネルギー吸収量を変更する場合に、板バネの板厚や枚数の変更が必要であったが、上記構成の排障装置1においては、エネルギー吸収装置6の変更で調整可能である。つまり、要求された排障装置1のエネルギー吸収性能に応じて、搭載するエネルギー吸収装置6を変更することで、容易に性能調整することが可能である。
【0039】
続いて、上記構成の排障装置1の障害物衝突時の動作について説明する。
【0040】
排障装置1は、排障板3の後方に配置される緩衝板を、第1緩衝板41と第2緩衝板42に分割している。第1緩衝板41と第2緩衝板42は、枕木方向Yの軸を中心に湾曲させて形成され、それぞれ1枚の板で形成されている。よって、第1及び第2緩衝板41,42の総質量は、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した板バネを複数枚重ね合わせて構成する従来の緩衝板や、分割せずに1枚の板で構成される緩衝板と比較して、軽量になる。
【0041】
分割された第1及び第2緩衝板41,42は、図示しない左箱体と、右箱体521と、中間ブロック7を介して枕木方向Yに結合され、一体化されている。図示しない左箱体と右箱体521と中間ブロック7は、第1及び第2緩衝板41,42を車体台枠8に固定する支持装置5としても機能する。図示しない左箱体と、右箱体521と、中間ブロック7は、内部が空洞である。
【0042】
かかる第1及び第2緩衝板41,42は、外側縁部414,424が排障板3の左右面板部32,33に沿って配置される。そのため、例えば、排障板3の右面板部33に軌道上の障害物が衝突した場合には、第2緩衝板42が外側縁部424全体で右面板部33を支持する。さらに、第2緩衝板42と、右箱体521と、中間ブロック7と、図示しない左箱体と、第1緩衝板41が、横梁のようにして左右面板部32,33の間に存在し、右面板部33の変形を抑制する。つまり、第2緩衝板42は、排障板3を支持する。これにより、排障装置1は、右面板部33に衝突した障害物を、右面板部33を殆ど変形させることなく右側後方へはじき飛ばすことができる。なお、障害物が左面板部32に衝突した場合も同様である。よって、上記構成の排障装置1は、板を枕木方向Yの軸を中心に湾曲させて第1及び第2緩衝板41,42を構成することで緩衝板の総質量を軽量化しつつ、側方からの力に対する剛性が維持される。
【0043】
ここで、第1及び第2緩衝板41,42は、それぞれ1枚の板で構成される。そのため、第1及び第2緩衝板41,42だけでは、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した板バネを複数枚重ね合わせて構成する従来の緩衝板と比較して、衝突時のエネルギー吸収量が小さくなる恐れがある。
【0044】
そこで、排障装置1では、排障板3と第1及び第2緩衝板41,42との間に、エネルギー吸収装置6を配設し、排障板3から第1及び第2緩衝板41,42に向かって作用するエネルギーをエネルギー吸収装置6によって吸収するようにしている。よって、上記構成の排障装置1は、第1及び第2緩衝板41,42とエネルギー吸収装置6とが共同してエネルギーを吸収する。つまり、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した板バネを複数枚重ね合わせて構成する従来の緩衝板を使用する場合では、緩衝板にて吸収していた衝突時のエネルギーを、排障装置1では、エネルギー吸収材にて吸収することで、衝突時のエネルギー吸収量を確保している。
【0045】
排障装置1は、第1緩衝板41と第2緩衝板42に分割することによって、空間S1が枕木方向Yに設けられている。また、第1及び第2緩衝板41,42が、枕木方向Yの軸を中心に湾曲していることで、排障板3の前頭部31と第1及び第2緩衝板41,42の湾曲部411,421との間に空間S2が車両前後方向Xに設けられている。排障装置1は、車両前後方向Xに沿って形成された空間S1,S2にエネルギー吸収装置6を配置している。よって、排障装置1は、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した板バネを複数枚重ね合わせて構成する従来の緩衝板を使用する場合と同程度の大きさで、第1及び第2緩衝板41,42とエネルギー吸収装置6を排障板3の後方に配置できる。
【0046】
そして、排障装置1は、排障板3の左右面板部32,33を第2梁板37により結合し、当該第2梁板37の前側に第1エネルギー吸収ユニット61を配置し、当該第2梁板37の後側に第2エネルギー吸収ユニット62を配置することによって、エネルギー吸収装置6を構成している。つまり、エネルギー吸収装置6は、車両前後方向Xに沿って、第1及び第2エネルギー吸収ユニット61,62を2段階で配置している。そのため、衝突時には、第1エネルギー吸収ユニット61が変形してエネルギーを吸収した後、第2エネルギー吸収ユニット62が変形し始めてエネルギーを吸収するので、第1及び第2エネルギー吸収ユニット61,62が車両前後方向Xに沿って安定して変形する。よって、上記構成の排障装置1によれば、衝突時のエネルギーをエネルギー吸収装置6によって効率良く吸収でき、単位質量あたりのエネルギー吸収量を大きくできる。
【0047】
上述の障害物衝突時の動作を解析結果に基づいて説明する。障害物衝突時の動作の解析は、上記構成の排障装置1と,従来例の排障装置1001について行った。
図7〜
図11は、上記構成の排障装置1の解析結果である。
図12〜
図16は、従来例の排障装置1001の解析結果である。
【0048】
図12に示すように、排障装置1001の排障板1003は、第2梁板37を備えない点を除き、排障装置1の排障板3と同様に設けられている。排障板1003の後方には、緩衝板1004が配置されている。緩衝板1004は、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した4枚の板バネ1005,1006,1007,1008の両端部を重ね合わせることにより、一組の板バネ・アッセンブリとして構成されている。緩衝板1004は、前方の板バネ1005が第1梁板36のすぐ後ろに位置するように、配設されている。緩衝板1004は、後方の板バネ1008の内側面に支持装置5が結合されている。
【0049】
まず、排障装置1と排障装置1001を、ある速度で、それぞれ、軌道上の障害物Tに衝突させた場合の変化状態について解析した結果を説明する。
図7〜
図11に排障装置1の解析結果を示す。
図12〜
図16に排障装置1001の解析結果を示す。
図7〜
図11と
図12〜
図16は、それぞれ、衝突開始後の車両変位量0、車両変位量1、車両変位量2、車両変位量3、車両変位量4の変形図である。
【0050】
図7〜
図11及び
図12〜
図16に示すように、排障装置1,1001は、何れも、前頭部31の右側、すなわち、右面板部33の前方に障害物Tが衝突すると、右面板部33を変形させることなく、障害物Tを車両右側後方にはじき飛ばす。
【0051】
すなわち、排障装置1001は、緩衝板1004が、鉛直方向Zの軸を中心に湾曲した4枚の板バネ1005〜1008を車両前後方向Xに沿って重ね合わせ、その重ね合わせた部分を右面板部33の内側に配置することによって、側方からの力に対する剛性を確保している。よって、排障装置1001は、排障板1003を変形させることなく、右面板部33に衝突した障害物Tを排除できる。
【0052】
これに対して、排障装置1は、第2緩衝板42が、板バネ1005〜1008と曲げ方を変えて形成されている。すなわち、枕木方向Yの軸を中心に湾曲するように形成されている。そのため、排障装置1は、右面板部33に側方からの力が作用した場合には、第2緩衝板42が、その力を外側縁部424の全体で受け、撓み変形したり圧縮変形したりしない。つまり、排障装置1は、第2緩衝板42を枕木方向Yの軸を中心に曲げることにより、剛性を確保している。よって、排障装置1は、排障板3を変形させることなく、右面板部33に衝突した障害物Tを排除できる。
【0053】
よって、排障装置1は、第2緩衝板42の1枚だけでも、側方から作用する力に対する剛性を、従来例の緩衝板1004と同等以上に確保できる。
【0054】
尚、障害物Tが右面板部33の下方に当たった場合においても、第2緩衝板42は、右箱体521と補強板9により第1平板部422と第2平板部423が結合されており、剛性が高められているため、下方の第2平板部423のみが押し込められるような変形の発生が抑制される。つまり、第2緩衝板42は、右面板部33から受けた力を外側縁部424全体で受け、右面板部33の変形を抑制できる。
【0055】
排障装置1001は、衝突時に、緩衝板1004の板バネ1005〜1008を外側に配置される板バネ1005から順に変形させることで、エネルギーを吸収している。そのため、板バネ1005〜1008の湾曲部分の間に空間S1002〜S1004を形成する必要がある。排障装置1001は、必要なエネルギー吸収量を確保するために、板バネ1005〜1008のサイズや板厚が大きくなり、質量が大きくなる。よって、排障装置1001は、単位質量あたりのエネルギー吸収量が小さい。これに対して、排障装置1は、第1及び第2緩衝板41,42をそれぞれ1枚の板で構成しても、第1及び第2緩衝板41,42の間の空間S1にエネルギー吸収装置6を配置することによりエネルギー吸収量を確保している。よって、排障装置1は、単位質量あたりのエネルギー吸収量を大きくできる。
【0056】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、緩衝板は、第1緩衝板41と第2緩衝板42に分割せずに、1枚で構成しても良い。また、緩衝板の板厚を変えたり、複数の板バネを重ね合わせて緩衝板を構成しても良い。
【0057】
例えば、エネルギー吸収装置6を省略して軽量化しても良い。
【0058】
例えば、図示しない左箱体と、右箱体521と、中間ブロック7とを一つの箱体により、構成しても良い。
【0059】
例えば、第2梁板37を省き、エネルギー吸収装置6を1段で構成しても良い。
【0060】
例えば、排障装置1は、高速車両以外で使用される鉄道車両に適用しても良い。また、排障装置1は、鉄道車両の外部に露出していても良い。また、排障装置1は、床下に格納されていても良い。
【0061】
例えば、排障板3は、前頭部が円弧状に湾曲したものであっても良い。また、排障板3は、リップ部2が取り付けられていなくても良い。