特許第6791777号(P6791777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791777
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】地熱タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/04 20060101AFI20201116BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20201116BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20201116BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20201116BHJP
   F01K 21/00 20060101ALI20201116BHJP
   F03G 4/00 20060101ALI20201116BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F01D11/04
   F01D25/00 M
   F01D9/02 102
   F01D9/04
   F01K21/00 Z
   F03G4/00 531
   F16J15/447
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-22699(P2017-22699)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-127985(P2018-127985A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】土屋 光由
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佑
【審査官】 沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第00929103(GB,A)
【文献】 国際公開第2015/104695(WO,A1)
【文献】 実開昭59−184301(JP,U)
【文献】 特開2015−031174(JP,A)
【文献】 特開昭60−069214(JP,A)
【文献】 特開昭58−202301(JP,A)
【文献】 実開昭52−138103(JP,U)
【文献】 特開2015−031175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/04
F01D 9/02
F01D 9/04
F01D 25/00
F01K 21/00
F03G 4/00
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータを収容するケーシングと、
前記ロータの周りに設けられた複数の動翼と、
前記ケーシングに支持された複数の静翼と、
前記複数の静翼における初段静翼と前記複数の動翼における初段動翼との間から前記ロータの径方向内側へ流出する漏洩蒸気をシールするように、前記初段動翼よりも上流側にて前記ロータと前記ケーシングとの隙間に設けられた少なくとも一つのシール部と、
を備える地熱タービンであって、
前記初段静翼を通過した蒸気の一部を抽出し、前記初段静翼の内部を通って前記隙間に排出するよう構成された蒸気通路が設けられ、
前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、
前記蒸気通路の蒸気出口は、前記ケーシングと前記初段静翼の前記内輪との境界に有する、
地熱タービン。
【請求項2】
ロータと、
前記ロータを収容するケーシングと、
前記ロータの周りに設けられた複数の動翼と、
前記ケーシングに支持された複数の静翼と、
前記複数の静翼における初段静翼と前記複数の動翼における初段動翼との間から前記ロータの径方向内側へ流出する漏洩蒸気をシールするように、前記初段動翼よりも上流側にて前記ロータと前記ケーシングとの隙間に設けられた少なくとも一つのシール部と、
を備える地熱タービンであって、
前記初段静翼を通過した蒸気の一部を抽出し、前記初段静翼の内部を通って前記隙間に排出するよう構成された蒸気通路が設けられ、
前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、
前記地熱タービンは、前記ロータと前記初段静翼の前記内輪との間に設けられた内輪シール部をさらに備え
前記内輪シール部は、前記ロータと対向するロータ対向面と、前記ロータ対向面よりも前記漏洩蒸気の流れ方向における上流側に位置する上流面と、前記ロータ対向面よりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に位置する下流面とを含み、
前記蒸気通路の蒸気出口は、前記下流面に設けられた、
地熱タービン。
【請求項3】
前記蒸気通路の蒸気出口は、前記シール部のうち少なくとも一つよりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に設けられた、請求項1又は2に記載の地熱タービン。
【請求項4】
前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、
前記地熱タービンは、前記ロータと前記初段静翼の前記内輪との間に設けられた内輪シール部をさらに備え
前記蒸気通路の蒸気出口は、前記内輪シール部よりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に設けられた、請求項3に記載の地熱タービン。
【請求項5】
前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪と、前記径方向において前記翼本体部の外側に位置する外輪とを含み、
前記初段静翼の前記内輪及び前記初段静翼の前記外輪の少なくとも一方は、内部に環状の空洞部を有する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の地熱タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地熱タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地熱源(生産井)から得られた蒸気により地熱タービンを駆動して発電を行う地熱フラッシュ発電が利用されている。
【0003】
地熱源から噴出する高温の熱水は、カルシウムやシリカ等の物質を多く含むため、これらの物質がセパレータで除去しきれないミストとともにタービンへ運ばれてタービンの初段静翼に付着すると、初段静翼上に炭酸カルシウムや非晶質シリカなどのスケールが析出する。スケールが析出すると、初段静翼間の流路が狭くなり、タービン性能の低下を招く。
【0004】
特許文献1には、初段静翼におけるスケールの析出を抑制することを目的とした地熱タービンが開示されている。特許文献1に記載の地熱タービンでは、初段静翼と、初段静翼よりも下流側の後段静翼との間で冷却媒体をポンプによって循環させて初段静翼を冷却することで、初段静翼におけるスケール析出の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−31174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の地熱タービンでは、初段静翼におけるスケール析出を抑制できるものの、初段静翼と後段静翼との間で冷却媒体を循環させるためにポンプ等を設ける必要があるため、タービン構成が複雑化してしまう。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、簡素な構成で初段静翼におけるスケール析出を抑制できる地熱タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る地熱タービンは、ロータと、前記ロータを収容するケーシングと、前記ロータの周りに設けられた複数の動翼と、前記ケーシングに支持された複数の静翼と、前記複数の静翼における初段静翼と前記複数の動翼における初段動翼との間から前記ロータの径方向内側へ流出する漏洩蒸気をシールするように、前記初段動翼よりも上流側にて前記ロータと前記ケーシングとの隙間に設けられた少なくとも一つのシール部と、を備え、前記初段静翼を通過した蒸気の一部を抽出し、前記初段静翼の内部を通って前記隙間に排出するよう構成された蒸気通路が設けられる。
【0009】
本願発明者の知見によれば、初段静翼を軸方向に通過した蒸気は、初段静翼よりも温度が低い。これは、蒸気の主流(静翼と動翼とを交互に通過する軸方向の蒸気流れ)の温度が下流側に進むにつれて下がるのに対して、初段静翼は、翼本体部が主流からの入熱を受けるとともに初段静翼の外輪及び内輪がケーシングとの接触部からの入熱を受けるためであると考えられる。
【0010】
したがって、上記(1)に記載のように、初段静翼を通過した蒸気の一部を抽出し、初段静翼の内部を通って上記隙間に排出するように構成された蒸気通路を設けることにより、初段静翼の内部を通る蒸気を冷却用蒸気として機能させ、初段静翼を冷却することができる。これにより、初段静翼の表面の乾燥を抑制し、初段静翼の乾湿の繰り返しに起因するスケールの析出を抑制することができる。
【0011】
また、典型的な地熱タービンでは、上記隙間の圧力は、ケーシング内における初段動翼と第2段静翼の間の空間部の圧力よりも小さいため、ポンプ等を新たに設けなくとも、初段静翼を軸方向に通過した蒸気の一部を抽出して初段静翼の内部を通って(貫通孔を通って)上記隙間に排出することができる。よって、簡素な構成で、初段静翼を冷却して初段静翼におけるスケール析出を抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の地熱タービンにおいて、前記蒸気通路の蒸気出口は、前記シール部のうち少なくとも一つよりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に設けられる。
【0013】
上記(2)に記載の地熱タービンによれば、シール部のうち少なくとも一つの前後で圧力差がつくため、ケーシング内の空間のうち初段動翼と第2段静翼との間の空間部の圧力と上記隙間の圧力との差を大きくすることができる。このため、運転条件が変化しても蒸気通路に安定的に蒸気を流して初段静翼を効果的に冷却することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の地熱タービンにおいて、前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、前記少なくとも一つのシール部は、前記ロータと前記初段静翼の前記内輪との間に設けられた内輪シール部を含み、前記蒸気通路の蒸気出口は、前記内輪シール部よりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に設けられる。
【0015】
上記(3)に記載の地熱タービンによれば、内輪シール部の前後で圧力差がつくため、ケーシング内の空間のうち初段動翼と第2段静翼との間の空間部の圧力と上記隙間の圧力との差を大きくすることができる。このため、運転条件が変化しても蒸気通路に安定的に蒸気を流して初段静翼を効果的に冷却することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の地熱タービンにおいて、前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、前記蒸気通路の蒸気出口は、前記ケーシングと前記初段静翼の前記内輪との境界に有する。
【0017】
上記(4)に記載の地熱タービンによれば、ケーシングと初段静翼の内輪との境界部分(結合部分)を利用して初段静翼の内部を通った蒸気を上記隙間に排出することができるため、蒸気通路の構成を簡素化することができ、低コストで初段静翼におけるスケール析出を抑制することができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の地熱タービンにおいて、前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪とを含み、前記少なくとも一つのシール部は、前記ロータと前記初段静翼の前記内輪との間に設けられた内輪シール部を含み、前記内輪シール部は、前記ロータと対向するロータ対向面と、前記ロータ対向面よりも前記漏洩蒸気の流れ方向における上流側に位置する上流面と、前記ロータ対向面よりも前記漏洩蒸気の流れの下流側に位置する下流面とを含み、前記蒸気通路の蒸気出口は、前記下流面に設けられる。
【0019】
上記(5)に記載の地熱タービンによれば、内輪シール部の前後で圧力差がつくため、ケーシング内の空間のうち初段動翼と第2段静翼との間の空間部の圧力と上記隙間の圧力との差を大きくすることができる。このため、運転条件が変化しても蒸気通路に安定的に蒸気を流して初段静翼を効果的に冷却することができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の地熱タービンにおいて、前記静翼は、翼本体部と、前記径方向において前記翼本体部の内側に位置する内輪と、前記径方向において前記翼本体部の外側に位置する外輪とを含み、前記初段静翼の前記内輪及び前記初段静翼の前記外輪の少なくとも一方は、内部に環状の空洞部を有する。
【0021】
上記(6)に記載の地熱タービンによれば、初段静翼の内輪及び外輪の少なくとも一方の内部に環状の空洞部を設けることにより、ケーシングから初段静翼の翼本体部への入熱を抑制することができる。これにより、初段静翼の温度上昇を抑制し、初段静翼におけるスケール析出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、簡素な構成で初段静翼におけるスケール析出を抑制できる地熱タービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る地熱タービン2の適用例としての地熱発電システム100を示す図である。
図2】地熱タービン2の概略構成を示す断面図である。
図3】一実施形態に係る地熱タービン2(2A)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。
図4】一実施形態に係る地熱タービン2(2A)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。
図5】一実施形態に係る地熱タービン2(2B)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。
図6】一実施形態に係る地熱タービン2(2C)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。
図7】空洞部48の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0025】
図1は、本発明に係る地熱タービン2の適用例としての地熱発電システム100を示す図である。
地熱発電システム100は、地下深部の熱源により高温高圧の熱水及び蒸気を発生する生産井4と、生産井から得られた熱水と蒸気とを分離するセパレータ6と、セパレータ6で分離された熱水が戻される還元井8と、セパレータ6で分離された蒸気により駆動する地熱タービン2と、地熱タービン2に接続された発電機10と、地熱タービン2を通過した蒸気を温水化する復水器12と、復水器12で生じた温水を冷却する冷却塔14とを備える。
【0026】
図2は、地熱タービン2の概略構成を示す断面図である。
図2に示すように、地熱タービン2は、ロータ16と、ロータ16を収容するケーシング18と、ロータ16の周りに設けられた複数の動翼20と、ケーシング18に支持された複数の静翼22とを備える。
【0027】
静翼22の各々は、翼本体部24と、ロータ16の径方向において翼本体部24の内側に位置する内輪26と、ロータ16径方向において翼本体部24の外側に位置する外輪28とを含む。複数の静翼22における初段静翼22fでは、内輪26及び外輪28がケーシング18に結合されており、複数の静翼の22のうち初段静翼22f以外の静翼22では、外輪28のみがケーシング18に結合されている。
【0028】
以下では、特記しない限り、ロータ16の径方向を単に「径方向」といい、ロータ16の軸方向を単に「軸方向」といい、ロータ16の周方向を単に「周方向」という。また、特記しない限り、ケーシング18内を流れる主流f(静翼22と動翼20とを交互に通過する軸方向の蒸気流れ)の流れ方向における上流側と下流側をそれぞれ単に「上流側」「下流側」という。
【0029】
図3は、一実施形態に係る地熱タービン2(2A)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。
図3に示すように、地熱タービン2は、複数の静翼22における初段静翼22fと複数の動翼20における初段動翼20fとの間からロータ16の径方向内側へ流出する漏洩蒸気Grをシールするように、初段動翼20fよりも軸方向における上流側にてロータ16とケーシング18との隙間gに設けられた少なくとも一つのシール部30(30A)を含む。シール部30は環状構造を有しており、シール部30の内周面とロータ16の外周面との間にラビリンス構造を形成している。
【0030】
また、地熱タービン2には、初段静翼22fを通過した蒸気の一部を抽出し、初段静翼22fの内部を通って隙間gに排出するよう構成された蒸気通路32が設けられている。図示する例示的形態では、初段静翼22fは、翼本体部24を径方向に貫通する貫通孔34を有しており、蒸気通路32の蒸気入口36は、初段静翼22fの外輪28に設けられており、蒸気通路32の蒸気出口38は、初段静翼22fの内輪26の内周面40に設けられている。蒸気通路32は、ケーシング18内の空間Sのうち、複数の動翼20における初段動翼20fと複数の静翼22における第2段静翼22sとの間の空間部S1の蒸気を蒸気入口36から抽出し、貫通孔34を通って蒸気出口38から隙間gに排出するよう構成されている。
【0031】
本願発明者の知見によれば、初段静翼22fを軸方向に通過した蒸気は、初段静翼22fよりも温度が低い。これは、主流fの温度が下流側に進むにつれて下がるのに対して、初段静翼22fは、翼本体部24が主流fからの入熱を受けるとともに初段静翼22fの外輪28及び内輪26がケーシング18との接触部からの入熱を受けるためであると考えられる。
【0032】
したがって、初段静翼22fを軸方向に通過した蒸気の一部を抽出し、初段静翼22fの内部を通って隙間gに排出するように構成された蒸気通路32を設けることにより、初段静翼22fの内部を通る蒸気を冷却用蒸気として機能させ、初段静翼22fを冷却することができる。これにより、初段静翼22fの表面の乾燥を抑制し、初段静翼22fの乾湿の繰り返しに起因するスケールの析出を抑制することができる。
【0033】
また、典型的な地熱タービンでは、隙間gの圧力は、ケーシング18内における初段動翼20fと第2段静翼22sの間の空間部S1の圧力よりも小さいため、ポンプ等を新たに設けなくとも、初段静翼22fを軸方向に通過した蒸気の一部を初段静翼22fの内部を通って(貫通孔34を通って)隙間gに導くことができる。よって、簡素な構成で、初段静翼22fを冷却して初段静翼22fにおけるスケール析出を抑制することができる。
【0034】
なお、図4に示す形態では、ロータ16は、初段動翼20fが固定されるディスク部21を含み、ディスク部21は、軸方向に貫通するバランスホール23を有する。本願発明者の知見によれば、図4に示すように、シール部30Aを通過する漏洩蒸気Gの流量は、バランスホール23を介して隙間gに流入する漏洩蒸気GBの流量と、漏洩蒸気Grの流量と、初段静翼22fの内部を通って隙間gに導かれる蒸気Gt(以下、「冷却用蒸気Gt」という。)の流量との合計に等しくなるが、漏洩蒸気Gの流量は、冷却用蒸気Gtの有無によってはほとんど変化しないため、冷却用蒸気Gtを上記空間部S1から抽出することによる地熱タービンの性能低下はほとんど起きない。
【0035】
図5は、一実施形態に係る地熱タービン2(2B)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。地熱タービン2(2B)に係る基本構成は、地熱タービン2(2A)に係る基本構成と同様であるため、前述の符号と同一の符号を付して説明を省略する。地熱タービン2(2B)は、蒸気通路32の蒸気出口38の構成が地熱タービン2(2A)と異なる。
【0036】
図5に示す地熱タービン2(2B)では、少なくとも一つのシール部30は、シール部30Aと、初段静翼22fと初段動翼20fとの間からロータ16の径方向内側へ流出する漏洩蒸気Grをシールするように初段静翼22fの内輪26とロータ16との間に設けられた内輪シール部30Bとを含む。そして、蒸気通路32の蒸気出口38は、内輪シール部30Bよりも漏洩蒸気Grの流れの下流側に設けられている。
かかる構成によれば、内輪シール部30Bの前後で圧力差がつくため、初段動翼20fと第2段静翼22sとの間の空間部S1の圧力と隙間gの圧力との差を大きくすることができる。このため、運転条件が変化しても蒸気通路32に安定的に蒸気を流して初段静翼22fを効果的に冷却することができる。
【0037】
また、図5に示す形態では、蒸気通路32の蒸気出口38は、ケーシング18と初段静翼22fの内輪26との境界に設けられている。
かかる構成によれば、ケーシング18と初段静翼22fの内輪との境界部分(結合部分)を利用して初段静翼22fの内部を通った蒸気を隙間gに排出することができるため、蒸気通路32の構成を簡素化することができ、低コストで初段静翼22fにおけるスケール析出を抑制することができる。
【0038】
図6は、一実施形態に係る地熱タービン2(2C)におけるシール部30近傍の構成を示す断面図である。地熱タービン2(2C)に係る基本構成は、地熱タービン2(2A,2B)に係る基本構成と同様であるため、前述の符号と同一の符号を付して説明を省略する。地熱タービン2(2C)は、蒸気通路32の蒸気出口38の構成が地熱タービン2(2A,2B)と異なる。
【0039】
図6に示す地熱タービン2(2C)では、少なくとも一つのシール部30は、シール部30Aと、初段静翼22fと初段動翼20fとの間からロータ16の径方向内側へ流出する漏洩蒸気Grをシールするように初段静翼22fの内輪26とロータ16との間に設けられた内輪シール部30Cとを含む。内輪シール部30Cは、ロータ16と対向するロータ対向面42と、ロータ対向面42よりも漏洩蒸気Grの流れの上流側に位置する上流面44と、ロータ対向面42よりも漏洩蒸気Grの流れの下流側に位置する下流面46とを含む。内輪シール部30Cは、ロータ対向面42においてロータ16との間にラビリンス構造を有しており、蒸気通路32の蒸気出口38は、下流面46に設けられている。
【0040】
かかる構成においても、内輪シール部30Cの前後で圧力差がつくため、初段動翼20fと第2段静翼22sとの間の空間部S1の圧力と隙間gの圧力との差を大きくすることができる。このため、運転条件が変化しても蒸気通路32に安定的に蒸気を流して初段静翼22fを効果的に冷却することができる。
【0041】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0042】
例えば、幾つかの実施形態では、図7に示すように、上述した地熱タービン2(2A〜2C)において、初段静翼22fの内輪26及び初段静翼22fの外輪28の少なくとも一方(図示する形態では両方)は、内部に環状の空洞部48を有していてもよい。
【0043】
かかる構成によれば、初段静翼22fの内輪26及び外輪28の少なくとも一方の内部に環状の空洞部48を設けることにより、ケーシング18から初段静翼の翼本体部24への入熱を抑制することができる。これにより、初段静翼22fの温度上昇を抑制し、初段静翼22fにおけるスケール析出を抑制することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 地熱タービン
4 生産井
6 セパレータ
8 還元井
10 発電機
12 復水器
14 冷却塔
16 ロータ
18 ケーシング
20 動翼
20f 初段動翼
22 静翼
22f 初段静翼
22s 第2段静翼
24 翼本体部
26 内輪
28 外輪
30 シール部
30A シール部
30B 内輪シール部
30C 内輪シール部
32 蒸気通路
34 貫通孔
36 入口開口
38 出口開口
40 内周面
42 ロータ対向面
44 上流面
46 下流面
48 空洞部
100 地熱発電システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7