(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記クラッチを接続状態、前記回生トルクを0、および、前記補助ブレーキを前記第2作動状態に制御する非回生状態を有し、前記部分回生状態において前記バッテリー電圧が前記上限電圧に到達すると前記非回生状態に移行する
請求項1に記載の車両制御装置。
前記ハイブリッド自動車は、アクセルオフ時にエンジンブレーキによって得られる制動トルクをドライバーが選択するスイッチであって、操作位置として、前記補助ブレーキが非作動状態にあるときの通常のエンジンブレーキによる制動トルクである通常トルクを示す通常位置、前記第1トルクを示す第1位置、および、前記第2トルクを示す第2位置を
有する前記スイッチを備え、
前記車両制御装置は、前記操作位置を取得する操作位置取得部を備え、
前記制御部は、前記スイッチが前記第2位置に位置しているときに前記回生状態である第2回生状態から前記部分回生状態である第2部分回生状態へ前記回生トルクを0にする移行期間を経て移行するように構成されており、さらに、前記クラッチを切断状態、前記回生トルクを前記第1トルク、および、前記補助ブレーキを非作動状態に制御する第1回生状態と、前記クラッチを接続状態、前記回生トルクを前記第1トルクと前記通常トルクとの差分、および、前記補助ブレーキを非作動状態に制御する第1部分回生状態と、を有し、前記スイッチが前記第1位置に位置しているときに前記第1回生状態において前記バッテリー電圧が前記上限電圧に到達すると前記回生トルクを0にする移行期間を経て前記第1部分回生状態へ移行する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図9を参照して、車両制御装置の一実施形態について説明する。
図1を参照してハイブリッド自動車の概略構成について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド自動車である車両10は、動力源としてエンジン11とモータージェネレーター(以下、M/Gという)12とを備えている。エンジン11の回転軸13とM/G12の回転軸14とは、車両制御装置である制御装置30によって自動制御されるクラッチ15で断接可能に接続されている。M/G12の回転軸14は、トランスミッション16および駆動軸17などを介して駆動輪18に接続されている。
【0015】
エンジン11は、例えば複数の気筒を有するディーゼルエンジンであり、各気筒において燃料が燃焼することにより回転軸13を回転させるトルクを発生させる。エンジン11が発生させたトルクは、クラッチ15が接続状態にあるときに、M/G12の回転軸14、トランスミッション16、および、駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。
【0016】
エンジン11は、補助ブレーキとしてリターダ11aを備えている。リターダ11aは、アクセルオフ時の圧縮行程にてピストンが上死点付近に到達すると排気バルブを開放して作動ガスを排出し、直後の膨張行程において排気バルブを閉鎖する圧縮開放動作を行うことでエンジンブレーキによる制動トルクを増大させる。リターダ11aは、通常のエンジンブレーキと同様、エンジン回転数Neが高いほど大きな制動トルクを発生させる。
【0017】
リターダ11aは、非作動状態、第1作動状態、および、第2作動状態を有する。非作動状態は、複数の気筒の全てで圧縮開放動作が行われることがなく、通常のエンジンブレーキによる制動トルクである通常トルクT0が得られる状態である。第1作動状態は、複数の気筒の一部で圧縮開放動作が行われることで通常トルクT0よりも大きい制動トルクである第1トルクT1が得られる状態である。第2作動状態は、複数の気筒の全てで圧縮開放動作が行われることで第1トルクT1よりも大きい制動トルクである第2トルクT2が得られる状態である。通常トルクT0、第1トルクT1、および、第2トルクT2は、クラッチ15が接続状態にあるときに得られるものである。
【0018】
M/G12は、インバーター21を介してバッテリー20に電気的に接続されている。バッテリー20は、充放電可能な二次電池であり、互いに電気的に接続された複数のセルで構成されている。M/G12は、バッテリー20に蓄電された電力がインバーター21を介して供給されることにより、回転軸14を回転させるモーターとして機能する。M/G12がモーターとして機能する際に発生させる駆動トルクは、トランスミッション16および駆動軸17を介して駆動輪18に伝達される。また、M/G12は、例えばアクセルオフ時における回転軸14の回転を利用して発電した電力をインバーター21を介してバッテリー20に蓄電するジェネレーターとして機能する。M/G12がジェネレーターとして機能する際に発生させる制動トルクを回生トルクTrという。回生トルクTrは、モーター回転数Nmごとに設定された最大回生トルクTrmax以下の範囲において制御可能である。
【0019】
トランスミッション16は、M/G12の回転軸14が有する駆動トルクを変速し、その変速したトルクを駆動軸17を介して駆動輪18に伝達する。トランスミッション16は、複数の変速比Rtを設定可能に構成されている。
【0020】
インバーター21は、M/G12をモーターとして機能させる場合、バッテリー20からの直流電圧を交流電圧に変換してM/G12に電力を供給する。また、インバーター21は、M/G12をジェネレーターとして機能させる場合、M/G12からの交流電圧を直流電圧に変換してバッテリー20に供給し、バッテリー20を充電する。
【0021】
図2に示すように、バッテリー20は、充電率SOCが高くなるほど各セルにおける開放電圧Vocvが高くなる特性を有している。また、各セルにおける電圧は、充電中には開放電圧Vocvよりも高くなり放電中には低くなる。なお、バッテリー20を構成する複数のセルのうちで最も高い電圧をバッテリー電圧Vbatといい、バッテリー電圧Vbatにはバッテリー20の保護を目的の1つとして上限電圧Vmaxが設定されている。
【0022】
図1に示すように、車両10は、ドライバーによって操作されるスイッチSWを備えている。スイッチSWは、アクセルオフ時にドライバーが要求する制動トルクの大きさを示している。スイッチSWは、操作位置として、通常位置(SW=0)、第1位置(SW=1)、および、第2位置(SW=2)を有している。通常位置は通常トルクT0を示す操作位置であり、第1位置は第1トルクを示す操作位置である。また第2位置は、第2トルクT2を示す操作位置である。スイッチSWは、スイッチSWが操作されるたびに操作位置を示す操作信号を後述するハイブリッドECU31に出力する。
【0023】
上述したエンジン11、リターダ11a、クラッチ15、インバーター21、および、トランスミッション16は、車両10を統括制御する制御装置30によって制御される。
制御装置30は、ハイブリッドECU31、エンジンECU32、インバーターECU33、バッテリーECU34、トランスミッションECU35、情報ECU36などで構成されており、各ECU31〜36は、例えばCAN(Control Area Network)を介して互いに接続されている。
【0024】
各ECU(Electric Control Unit)31〜36は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコントローラーを中心に構成されている。各ECU31〜36は、車両10の状態に関する情報である状態情報を入力インターフェースを介して取得し、その取得した状態情報、および、メモリに格納された制御プログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。
【0025】
ハイブリッドECU31は、各ECU32〜36が出力した各種の情報を入力インターフェースを介して取得する。例えば、ハイブリッドECU31は、エンジンECU32からの信号に基づいて、アクセルペダル51の開度であるアクセル開度ACC、エンジン11の回転軸13の回転数であるエンジン回転数Ne、エンジン11における燃料噴射量Gfなどを取得する。ハイブリッドECU31は、インバーターECU33からの信号に基づいてM/G12の回転軸14の回転数であるモーター回転数Nm、および、バッテリーECU34からの信号に基づいてバッテリー電圧Vbatなどを取得する。ハイブリッドECU31は、トランスミッションECU35からの信号に基づいて、クラッチ15の断接状態、トランスミッション16における変速比Rtなどを取得する。ハイブリッドECU31は、情報ECU36からの信号に基づいて、車速vなどを取得する。ハイブリッドECU31は、操作位置取得部として、スイッチSWからの信号に基づいてスイッチSWの操作位置を取得する。
【0026】
ハイブリッドECU31は、取得した情報に基づいて各種制御信号を生成し、その生成した制御信号を出力インターフェースを介して各ECU32〜36に出力する。
ハイブリッドECU31は、エンジン11への指示トルクであるエンジン指示トルクTerefを演算し、その演算したエンジン指示トルクTerefを示す制御信号をエンジンECU32に出力する。
【0027】
ハイブリッドECU31は、リターダ11aを第1作動状態で作動させる第1作動信号、および、リターダ11aを第2作動状態で作動させる第2作動信号を制御信号としてエンジンECU32に出力する。ハイブリッドECU31は、その時々のアクセル開度ACCやエンジン回転数Ne、モーター回転数Nmなどに基づいてリターダ11aに制御信号を出力する。また、ハイブリッドECU31は、アクセルオンなどの停止条件が成立するとリターダ11aを停止させる停止信号をエンジンECU32に出力する。
【0028】
ハイブリッドECU31は、M/G12に対する指示トルクであるモーター指示トルクTmrefを演算し、その演算したモーター指示トルクTmrefを示す制御信号をインバーターECU33に出力する。
【0029】
ハイブリッドECU31は、クラッチ15の断接を指示する制御信号、および、トランスミッション16における変速比Rtを示す制御信号をトランスミッションECU35に出力する。
【0030】
エンジンECU32は、開度取得部としてアクセル開度ACCを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたエンジン指示トルクTerefの分のトルクが回転軸13に作用するように、燃料噴射量Gfや噴射タイミングなどを制御することによりエンジン11の出力を制御する。また、エンジンECU32は、ハイブリッドECU31から入力された制御信号に基づいてリターダ11aの作動状態を制御する。エンジンECU32は、ハイブリッドECU31から第1作動信号が入力されると、ハイブリッドECU31から停止信号あるいは第2作動信号が入力されるまでリターダ11aを第1作動状態に制御する。エンジンECU32は、ハイブリッドECU31から第2作動信号が入力されると、ハイブリッドECU31から停止信号あるいは第1作動信号が入力されるまでリターダ11aを第2作動状態に制御する。
【0031】
インバーターECU33は、回転数取得部としてモーター回転数Nmを取得するとともに、ハイブリッドECU31から入力されたモーター指示トルクTmrefの分のトルクが回転軸14に作用するようにインバーター21を制御する。
【0032】
バッテリーECU34は、バッテリー20の充放電電流を監視し、該充放電電流の積算値に基づきバッテリー20の充電率SOCを演算する。バッテリーECU34は、電圧取得部として、バッテリー20を構成する各セルの電圧値を監視し、各セルの電圧値のうちで最も高い電圧値をバッテリー電圧VbatとしてハイブリッドECU31に出力する。
【0033】
トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からのクラッチ15の断接要求に応じてクラッチ15の断接を制御する。また、トランスミッションECU35は、ハイブリッドECU31からの変速比Rtを示す制御信号に基づいてトランスミッション16の変速比Rtを制御する。
【0034】
情報ECU36は、例えば車速センサーなどで構成された情報取得部53からの信号に基づいて車両10の車速vなどの情報を取得し、その取得した情報をハイブリッドECU31に出力する。
【0035】
こうした構成の制御装置30において、ハイブリッドECU31は、エンジン11が駆動状態にあり、かつ、アクセル開度ACCが0(アクセルオフ)にあるとき、スイッチSWの操作位置に応じて各種の制動処理を実行する。ハイブリッドECU31は、各種の制動処理として、スイッチSWが通常位置にあるときに実行される通常処理、スイッチSWが第1位置にあるときに実行される第1制動処理、スイッチSWが第2位置にあるときに実行される第2制動処理を有する。ハイブリッドECU31は、各制動処理の実行中にアクセルがオン状態に操作されること、また、各制動処理の実行中にスイッチSWが操作されることを停止条件として有する。ハイブリッドECU31は、停止条件が成立すると実行中の制動処理を強制的に終了するとともに、その停止条件がスイッチSWの操作に基づくものである場合には操作後のスイッチSWの操作位置に応じた制動処理を開始する。
【0036】
各種の制動処理について説明するにあたり、
図3を参照して、リターダ11aの作動状態に応じたエンジンブレーキによる制動トルクとM/G12の回生による制動トルクとの関係について説明する。
【0037】
図3に示すように、通常トルクT0、第1トルクT1(>T0)、および、第2トルクT2(>T1)は、エンジン回転数Ne、すなわちモーター回転数Nmが高いほど大きくなる。また、回生トルクTrは、各モーター回転数Nmに最大回生トルクTrmaxが設定されている。最大回生トルクTrmaxは、モーター回転数Nmが回転数N1以下の範囲では第2トルクT2よりも大きい一定の値である。最大回生トルクTrmaxは、モーター回転数Nmが回転数N1よりも大きい範囲ではモーター回転数Nmが大きくなるほど小さい値である。最大回生トルクTrmaxは、回転数N2において第2トルクT2と等しくなり、回転数N3において第1トルクT1と等しくなり、回転数N4において通常トルクT0と等しくなる。回生トルクTrは、インバーター21を通じて各モーター回転数Nmにおいて最大回生トルクTrmax以下の大きさに制御することが可能である。
【0038】
図4に示すように、通常処理は、制動トルクとして通常トルクT0が得られる制動処理である。通常処理において、ハイブリッドECU31は、まず、クラッチ15を切断状態、回生トルクTrを通常トルクT0、および、リターダ11aを非作動状態に制御する各種制御信号を出力する(ステップS101)。ステップS101の状態を通常回生状態という。なお、バッテリー電圧Vbatは、回生トルクTrが大きいほど充電電流が大きくなることにともない開放電圧Vocvに対する上昇幅が大きくなる。
【0039】
次に、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したか否かを判断する(ステップS102)。ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達するまで通常回生状態を維持する。バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した場合(ステップS102:YES)、ハイブリッドECU31は、クラッチ15を接続状態、M/G12を回生停止状態(Tr=0)、および、リターダ11aを非作動状態に制御する各種制御信号を出力し(ステップS103)一連の処理を終了する。ステップS103の状態を通常非回生状態という。
【0040】
図5に示すように、第1制動処理は、制動トルクとして第1トルクT1が得られる制動処理である。第1制動処理において、ハイブリッドECU31は、まず、クラッチ15を切断状態、回生トルクTrを第1トルクT1、および、リターダ11aを非作動状態に制御する各種制御信号を出力する(ステップS201)。ステップS201の状態を第1回生状態という。
【0041】
次にハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したか否かを判断する(ステップS202)。ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達するまで第1回生状態の状態を維持する。バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した場合(ステップS202:YES)、ハイブリッドECU31は、クラッチ15を接続状態、回生トルクTrを第1トルクT1と通常トルクT0との差分である第1部分回生トルクΔTr1(=T1−T0)、および、リターダ11aを非作動状態に制御する各種制御信号を出力する(ステップS203)。ステップS203の状態を第1部分回生状態という。
【0042】
次にハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したか否かを判断する(ステップS204)。ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達するまで第1部分回生状態を維持する。バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した場合(ステップS204:YES)、ハイブリッドECU31は、クラッチ15を接続状態、M/G12を回生停止状態、および、リターダ11aを第1作動状態に制御する各種制御信号を出力し(ステップS205)、一連の処理を終了する。ステップS205の状態を第1非回生状態という。
【0043】
図6に示すように、第2制動処理は、制動トルクとして第2トルクT2が得られる制動処理である。第2制動処理において、ハイブリッドECU31は、まず、クラッチ15を切断状態、回生トルクTrを第2トルクT2、および、リターダ11aを非作動状態に制御する各種制御信号を出力する(ステップS301)。ステップS301の状態を第2回生状態という。
【0044】
次に、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したか否かを判断する(ステップS302)。ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達するまで第2回生状態を維持する。バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した場合(ステップS302:YES)、ハイブリッドECU31は、クラッチ15を接続状態、回生トルクTrを第2トルクT2と第1トルクT1との差分である第2部分回生トルクΔTr2(=T2−T1)、および、リターダ11aを第1作動状態に制御する各種制御信号を出力する(ステップS303)。ステップS303の状態を第2部分回生状態という。
【0045】
次に、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したか否かを判断する(ステップS304)。ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達するまで第2部分回生状態を維持する。バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した場合(ステップS304:YES)、ハイブリッドECU31は、クラッチ15を接続状態、M/G12を回生停止状態、リターダ11aを第2作動状態に制御する各種制御信号を出力し(ステップS305)、一連の処理を終了する。ステップS305の状態を第2非回生状態という。
【0046】
なお、回生状態から部分回生状態への移行に際して、ハイブリッドECU31は、上限電圧Vmaxに到達したバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下してから部分回生状態へ移行する。例えば、ハイブリッドECU31は、単位時間におけるバッテリー電圧Vbatの変化率が、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下したと判断される閾値以下になってから部分回生状態へ移行する。また、回生状態から部分回生状態への移行に際して、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下していなくとも、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達してから予め定めた設定期間だけ経過すると部分回生状態へ移行する。この設定期間は、バッテリー電圧Vbatを開放電圧Vocvに近づけるうえで、ドライバビリティの変化が抑えられる期間のうちで最も長い期間に設定されることが好ましい。
【0047】
すなわち、ハイブリッドECU31は、設定期間経過する前にバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下すると部分回生状態に移行する。また、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下しなくとも設定期間経過すると部分回生状態へ移行する。この回生状態と部分回生状態との間を移行期間という。
【0048】
図7を参照して、上述した第1および第2制動処理の各制動処理におけるバッテリー電圧Vbatの推移について説明する。
図7に示すように、時刻t1において回生状態に制御されるとバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvよりも上昇幅ΔVaだけ上昇した状態でバッテリー20の充電が行われる。そして、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達した時刻t2において回生状態から部分回生状態へと移行する。部分回生状態におけるバッテリー電圧Vbatの上昇幅ΔVbは、回生状態におけるバッテリー電圧Vbatの上昇幅ΔVaよりも小さい。そのため、再びバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxよりも高くなるまで部分回生状態が継続する。このように回生状態から部分回生状態へと移行することで、回生状態においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したとしても続けてバッテリー20の充電を行うことができる。
【0049】
図8および
図9を参照してアクセルオフ時における動作態様の一例について説明する。
図8に示すように、スイッチSWが第1位置に位置しているとき、ドライバーは、アクセルオフ時の制動トルクとして第1トルクT1を要求している。そして、時刻t10においてアクセルがオフ状態に操作されると第1制動処理が開始され、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxよりも小さいと第1回生状態に制御される。
【0050】
上述したように第1回生状態においては、クラッチ(C/L)15が切断状態(OFF)、リターダ11aが非作動状態、M/G12の回生トルクTrが第1トルクT1に制御されることで、第1トルクT1が回生トルクTrによって実現される。このとき、エンジンブレーキによる制動トルクTaは0にある。そして、バッテリー20の充電率SOCとともにバッテリー電圧Vbatが上昇し、やがて時刻t11においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると、第1回生状態から第1部分回生状態へと移行する。時刻t11では、バッテリー20は充電率SOC11にある。
【0051】
時刻t11から時刻t12までの移行期間においては、クラッチ15が切断状態から接続状態へと制御される。また、M/G12による回生が停止されてバッテリー電圧Vbatがその時々の開放電圧Vocvまで低下する。この移行期間が存在することにより、移行時にバッテリー電圧Vbatを開放電圧Vocvまで低下させない場合に比べて、第1部分回生状態への移行直後におけるバッテリー電圧Vbatを低くすることができる。
【0052】
第1部分回生状態においては、クラッチ15が接続状態(ON)、リターダ11aが非作動状態、および、M/G12の回生トルクTrが第1部分回生トルクΔTr1に制御される。すなわち、第1部分回生状態では、通常のエンジンブレーキによる制動トルクTaである通常トルクT0とM/G12による回生トルクTrとによって第1トルクT1が実現される。また、バッテリー20の充電は、充電率SOC11から開始される。そして、バッテリー20の充電率SOCとともにバッテリー電圧Vbatが上昇し、やがて時刻t13においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると第1部分回生状態から第1非回生状態へと移行する。このとき、充電率SOCは、最大充電率SOCmaxに近い充電率SOC13まで高められる。
【0053】
第1非回生状態においては、クラッチ15が接続状態、リターダ11aが第1作動状態、および、回生トルクTrが0に制御されることで、第1トルクT1がリターダ11aにより実現される。そして、時刻t14において、スイッチSWが通常位置(SW=0)に操作されると、リターダ11aが非作動状態に制御されることで、エンジンブレーキによる通常トルクT0が制動トルクTaとして作用する。
【0054】
図9に示すように、スイッチSWが第2位置に位置しているとき、ドライバーは、アクセルオフ時の制動トルクとして第2トルクT2を要求している。そして、時刻t20においてアクセルがオフ状態に操作されると第2制動処理が開始され、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxよりも小さいと第2回生状態に制御される。
【0055】
上述したように第2回生状態においては、クラッチ(C/L)15が切断状態(OFF)、リターダ11aが非作動状態、M/G12の回生トルクTrが第2トルクT2に制御されることで、第2トルクT2が回生トルクTrによって実現される。このとき、エンジンブレーキによる制動トルクTaは0にある。そして、バッテリー20の充電率SOCとともにバッテリー電圧Vbatが上昇し、やがて時刻t21においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると、第2回生状態から第2部分回生状態へと移行する。時刻t21では、バッテリー20は充電率SOC21にある。
【0056】
時刻t21から時刻t22までの移行期間においては、クラッチ15が切断状態から接続状態へと制御される。また、M/G12による回生が停止されてバッテリー電圧Vbatがその時々の開放電圧Vocvまで低下する。
【0057】
第2部分回生状態においては、クラッチ15が接続状態(ON)、リターダ11aが第1作動状態、および、M/G12の回生トルクTrが第2部分回生トルクΔTr2に制御される。すなわち、第2部分回生状態では、リターダ11aによる第1トルクT1とM/G12による回生トルクTrとによって第2トルクT2が実現される。また、バッテリー20の充電は、充電率SOC21から開始される。そして、バッテリー20の充電率SOCとともにバッテリー電圧Vbatが上昇し、やがて時刻t23においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると第2部分回生状態から第2非回生状態へと移行する。このとき、充電率SOCは、最大充電率SOCmaxに近い充電率SOC23まで高められる。
【0058】
第2非回生状態においては、クラッチ15が接続状態、リターダ11aが第2作動状態、および、回生トルクTrが0に制御されることで、第2トルクT2がリターダ11aによって実現される。そして、時刻t24において、スイッチSWが第1位置に操作されると、第1制動処理が開始されて第1非回生状態に制御される。すなわち、リターダ11aによる第1トルクT1が制動トルクTaとして作用する。その後、時刻t25にて、スイッチSWが通常位置に操作されると、通常処理が開始されて通常非回生状態に制御される。すなわち、エンジンブレーキによる通常トルクT0が制動トルクTaとして作用する。
【0059】
上記実施形態の制御装置30によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1および第2制動処理では、回生状態にあるときにバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると部分回生状態へと移行する。部分回生状態では、バッテリー電圧Vbatの上昇幅ΔVbが回生状態での上昇幅ΔVaよりも小さいことから、回生状態においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したあともバッテリー20の充電を続けて行うことができる。その結果、スイッチSWの操作位置に応じた制動トルクを得つつ、バッテリー20を効果的に充電することができる。
【0060】
(2)第1および第2制動処理では、部分回生状態においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると非回生状態へ移行する。こうした構成によれば、非回生状態に移行するまでにバッテリー20をより高い充電率SOCまで充電できるとともに、バッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxを超えることを抑えつつ、要求されている制動トルクを得ることができる。
【0061】
(3)ハイブリッドECU31は、第1および第2制動処理において、回生状態においてバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達すると、そのバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下してから部分回生状態に移行する。また、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下していなくとも、予め定めた設定期間だけ経過すると部分回生状態に移行する。こうした構成によれば、移行期間においてバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocv付近まで低下することから、部分回生状態への移行直後におけるバッテリー電圧Vbatをその時々の開放電圧Vocvから上昇幅ΔVbだけ上昇した電圧にすることができる。その結果、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocv付近まで低下する前に部分回生状態に移行する場合に比べて、部分回生状態への移行直後のバッテリー電圧Vbatが低くなることでより高い充電率SOCまでバッテリー20を充電することができる。また、この移行期間を利用してクラッチ15を切断状態から接続状態へと切り替えることもできる。
【0062】
(4)ハイブリッドECU31は、スイッチSWの操作位置に応じて、通常処理、第1制動処理、第2制動処理を行う。これにより、ドライバーが要求する制動トルクを得つつ、バッテリー20を効果的に充電することができる。
【0063】
(5)バッテリー20の開放電圧Vocvは、その時々の温度条件や劣化状態などに応じて異なることがある。この点、各制動処理では、回生状態がいったん行われてから部分回生状態が行われるように構成されている。そのため、その時々の開放電圧Vocvに応じてどのような状態で回生を行うかを簡易な構成のもとで判断することができる。
【0064】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・ハイブリッドECU31は、スイッチSWを備えていない車両10、すなわちアクセルオフ時にリターダ11aによるエンジンブレーキの増大が常に行われる車両10には、第2制動処理のみを実行するように構成されていてもよい。
【0065】
・回生状態から部分回生状態への移行に際して、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下してから部分回生状態へ移行すればよい。そのため、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatの変化率に限らず、バッテリー電圧Vbatそのものの値に基づき部分回生状態へ移行してもよい。こうした構成において、ハイブリッドECU31は、
図2に示したバッテリー20の特性に基づき、バッテリー電圧Vbatとその時々の充電率SOCに対応する開放電圧Vocvとを比較することによりバッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下したか否かを判断する。
【0066】
・設定期間は、バッテリー電圧Vbatが開放電圧Vocvまで低下したとみなされる期間であってもよい。この場合の設定期間は、充電後のバッテリー電圧Vbatの推移について行った実験やシミュレーションの結果に基づいて設定されることが好ましく、また、ドライバビリティの変化が抑えられる期間に設定されることが好ましい。なお、ハイブリッドECU31は、バッテリー電圧Vbatに基づくことなく、設定期間だけ経過したら部分回生状態に移行する構成であってもよい。
【0067】
・
図10に示すように、リターダ11aは、第1トルクT1よりも大きく、かつ、第2トルクT2よりも小さい第3トルクT3が制動トルクとして得られる第3作動状態を有していてもよい。この場合、ハイブリッドECU31は、第2制動処理において、第2部分回生状態でバッテリー電圧Vbatが上限電圧Vmaxに到達したときに、クラッチ15を接続状態、M/G12の回生トルクTrを第2トルクT2と第3トルクT3との差分である第3部分回生トルクΔTr3(=T2−T3)、および、リターダ11aを第3作動状態に制御する第3部分回生状態に移行するとよい。こうした構成によれば、第3部分回生状態におけるバッテリー電圧Vbatの上昇幅が第2部分回生状態における上昇幅よりも小さくなることから、バッテリー20をさらに充電することが可能である。このようにスイッチSWの操作位置に応じた制動トルクのうちで回生トルクTrが占める割合を段階的に小さくすることにより、バッテリー20の充電をさらに効果的に行うことができる。
【0068】
・補助ブレーキは、アクセルオフ時にエンジンブレーキによる制動トルクを増大させるものであればよい。そのため、補助ブレーキは、圧縮開放動作を行うリターダ11aに限らず、例えば、エンジン11の排気通路における流路断面積を小さくすることでエンジンブレーキによる制動トルクを増大させる排気ブレーキであってもよい。
【0069】
・制御装置30は、1つのECUによって構成されてもよい。