特許第6791811号(P6791811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6791811二次燃焼用気体供給構造及び廃棄物焼却炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791811
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】二次燃焼用気体供給構造及び廃棄物焼却炉
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20201116BHJP
   F23L 9/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F23G5/44 FZAB
   F23L9/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-125056(P2017-125056)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-7701(P2019-7701A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦士
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
(72)【発明者】
【氏名】下川 達之
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−182922(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/044341(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第205424984(CN,U)
【文献】 特開平07−332626(JP,A)
【文献】 実開平04−129640(JP,U)
【文献】 特開2019−007705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 9/00−9/06
F23G 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次燃焼と、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、を燃焼室で行う廃棄物焼却炉に対して、二次燃焼で用いられる酸素を含有した気体である二次燃焼用気体を供給するために設けられる二次燃焼用気体供給構造において、
前記二次燃焼用気体供給構造は、二次燃焼用気体の流れ方向に垂直な平面で切った断面において、
二次燃焼用気体が流れない中空空間を常に形成するための閉鎖部と、
前記中空空間の外側に位置しているとともに当該中空空間を囲んでおり、二次燃焼用気体が流れる供給空間を形成するための供給部と、
を備え、
前記中空空間の周囲に前記供給空間が形成された状態の二次燃焼用気体を前記燃焼室に常に供給することを特徴とする二次燃焼用気体供給構造。
【請求項2】
一次燃焼と、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、を燃焼室で行う廃棄物焼却炉であって、
二次燃焼で用いられる酸素を含有した気体である二次燃焼用気体を供給する二次燃焼用気体供給構造を複数備えており、
前記二次燃焼用気体供給構造の少なくとも1つが、請求項に記載の二次燃焼用気体供給構造であることを特徴とする廃棄物焼却炉。
【請求項3】
請求項に記載の廃棄物焼却炉であって、
前記廃棄物焼却炉は、
前記燃焼室での燃焼に関するデータを検出する燃焼センサと、
複数の前記二次燃焼用気体供給構造により供給される二次燃焼用気体の種類、及び、供給量の少なくとも一方を調整可能な機構を有する調整部と、
前記燃焼センサが検出した燃焼に関するデータに基づいて、複数の前記二次燃焼用気体供給構造の前記供給空間からそれぞれ供給される二次燃焼用気体の種類、及び、供給量の少なくとも一方を調整する制御を行う制御装置と、
を備えることを特徴とする廃棄物焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、二次燃焼で用いられる二次燃焼用気体を適切に供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一次燃焼と、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、を燃焼室で行う廃棄物焼却炉が知られている。特許文献1及び2では、二次燃焼用気体の供給に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1は、二次燃焼室の周壁に取り付けられた二次空気吹込用ノズルの吹込口を扁平状とし、この二次空気吹込用ノズルを回転可能とした構成を開示する。この構成により、吹き込まれる二次空気(二次燃焼用気体)が扁平状になるため拡散し易いので、二次空気と燃焼ガス(一次燃焼ガス)に含まれる未燃焼ガスとの混合性を高めることで、二次空気との十分な接触反応がなされない場合に二次燃焼室出口から排出される燃焼ガス(二次燃焼ガス)中に残留する二次空気によって酸化されずに残る未燃焼ガスであるCOの濃度をより低くすることができる。
【0004】
特許文献2は、炉壁に炉内側に突出させて設けられる空気ノズルと、その炉内側の突出端部の外周に配置される噴流形成筒と、を備える燃焼空気供給装置を開示する。この燃焼空気供給装置では、空気ノズルから噴流形成筒の内部に燃焼空気(二次燃焼用気体)を吹き出させることにより、エジェクタ効果を生じさせ、噴流形成筒の周囲に存在している炉内ガス(一次燃焼ガス)を吸入し、炉内ガスが混合された燃焼空気を、噴流形成筒の開口より噴流として吹き出させる。この構成により、燃焼空気と炉内ガスとの混合の促進を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−149519号公報
【特許文献2】特開2016−90189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、吹込口が扁平状であるため、吹込口には、開口長さが長い長径方向と、開口長さが短い短径方向と、が存在する。ここで、燃焼ガスの流れ方向と吹込口の短径方向とが平行となる場合、二次空気の厚みが薄いため、二次空気が燃焼ガスによって曲げられ易くなるので、二次空気と燃焼ガスとを十分に混合できない。また、燃焼ガスの流れ方向と吹込口の長径方向とが平行となる場合、二次空気と燃焼ガスとが接触しにくくなるため、二次空気と燃焼ガスとを十分に混合できない。
【0007】
特許文献2では、空気ノズルから吹き出す燃焼空気に適切なエジェクタ効果を生じさせるには、燃焼空気の吐出速度を十分に大きくする必要がある。しかし、燃焼空気の吐出速度を大きくした場合、供給される燃焼空気の供給量が過剰になる可能性がある。その結果、炉内ガスの温度が過剰に低下してしまう可能性がある。以上の事情により、特許文献2の構成では、炉内ガスの温度を過剰に低下させない適切な範囲の「燃焼空気」量の範囲では、当該空気ノズルから吹き出す燃焼空気の吐出速度をエジェクタ効果が発揮させるほどには高速化させることができないため、所定のエジェクタ効果を十分発揮させることができず、燃焼空気と炉内ガスとを十分に混合できない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、一次燃焼ガスと二次燃焼用気体とを十分に混合させるための二次燃焼用気体供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の二次燃焼用気体供給構造が提供される。即ち、二次燃焼用気体供給構造は、一次燃焼と、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼と、を燃焼室で行う廃棄物焼却炉に対して、二次燃焼で用いられる酸素を含有した気体である二次燃焼用気体を供給するために設けられる。前記二次燃焼用気体供給構造は、二次燃焼用気体の流れ方向に垂直な平面で切った断面において、二次燃焼用気体が流れない中空空間を常に形成する閉鎖部と、前記中空空間の外側に位置しているとともに当該中空空間を囲んでおり、二次燃焼用気体が流れる供給空間を形成する供給部と、を備える。前記二次燃焼用気体供給構造は、前記中空空間の周囲に前記供給空間が形成された状態の二次燃焼用気体を前記燃焼室に常に供給する。
【0011】
これにより、同量の二次燃焼用気体を中空空間を設けずに供給する場合と比較して、二次燃焼用気体が通過する空間容積が広がるため、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスを十分に混合できる。また、同量の二次燃焼用気体を中空空間を設けずに供給する場合と比較して、二次燃焼用気体の厚みを小さくすることができるので、一次燃焼ガスとの接触において生じる渦流による撹拌及び拡散を効果的に活用して、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスを十分に混合できる。更に、二次燃焼用気体は、中空空間を囲むようにして供給されるため、同じ厚さの扁平状として供給する場合と比較して、一次燃焼ガスによって曲げられにくい。以上により、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスとを十分に混合できるので、一次燃焼ガスを十分に燃焼できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一次燃焼ガスと二次燃焼用気体とを十分に混合させるための二次燃焼用気体供給方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の焼却炉の概略構成図。
図2】焼却炉の機能ブロック図。
図3】二次燃焼用気体供給構造を示す断面図。
図4】燃焼室内において二次燃焼用気体と一次燃焼ガスとが接触する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
初めに、図1を参照して、本実施形態の焼却炉(廃棄物焼却炉)10について説明する。図1は、本発明の一実施形態の焼却炉10の概略構成図である。なお、以下の説明では、単に上流、下流と記載したときは、廃棄物、燃焼用気体、燃焼ガス、排ガス等が流れる方向の上流及び下流を意味するものとする。
【0015】
本発明は、様々な構成の焼却炉に適用可能である。従って、例えば焼却炉10は、火格子式焼却炉であってもよいし、流動床式焼却炉であってもよいし、固定床式焼却炉であってもよい。
【0016】
焼却炉10は、燃焼室20と、気体供給装置50と、を備える。初めに、燃焼室20について説明する。燃焼室20には、一次燃焼ゾーン11と、二次燃焼ゾーン12と、が形成されている。以下、一次燃焼ゾーン11で行われる一次燃焼と、二次燃焼ゾーン12で行われる二次燃焼と、について説明する。
【0017】
<一次燃焼と二次燃焼>一次燃焼ゾーン11は、一次燃焼のための空間である。一次燃焼とは、投入された廃棄物を一次燃焼用気体(gas for primary combustion)と反応させて燃焼(乾燥、火炎燃焼、オキ燃焼)させることである。一次燃焼用気体とは、一次燃焼のために供給される酸素を含んだ気体である。一次燃焼用気体としては、一次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。一次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。従って、一次空気には、外部から取り込んだ空気を加熱等した気体も含まれる。また、一次燃焼により、CO等の未燃焼ガスを含む一次燃焼ガス(flue gas after primary combustion)が発生する。
【0018】
一次燃焼について更に説明する。例えば焼却炉10が火格子式焼却炉であって、乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段で構成されているとする。この場合、乾燥段では、廃棄物が乾燥するとともに熱分解ガスが発生する。燃焼段では、乾燥段で乾燥した廃棄物が主に火炎燃焼を起こし、灰と、燃焼しきれなかった固体の未燃物と、未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスと、が主に発生する。また、後燃焼段では、燃焼段で燃焼しきれなかった固体の未燃物がオキ燃焼し、灰と、未燃焼ガスを含む一次燃焼ガスと、が主に発生する。ここで、乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段では、廃棄物が乾燥・火炎燃焼・オキ燃焼して一次燃焼ガスが発生しているため、一次燃焼が行われていることとなる。なお、上述のように、本発明は様々な構成の焼却炉に適用可能であるため、焼却炉10は、乾燥段及び後燃焼段の少なくとも一方が存在しない構成であってもよいし、各構成段が明確に区分されていない構成であってもよい。
【0019】
二次燃焼ゾーン12は、二次燃焼のための空間である。二次燃焼とは、一次燃焼ガスに含まれる未燃焼ガスを二次燃焼用気体と反応させて燃焼させることである。二次燃焼用気体とは、二次燃焼のために供給される酸素を含んだ気体である。二次燃焼用気体としては、二次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。二次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。従って、二次空気には、外部から取り込んだ空気を加熱等した気体も含まれる。二次燃焼を行うことにより、燃焼完結性を進めることができる。
【0020】
また、図1では、一次燃焼ゾーン11の真上に二次燃焼ゾーン12が形成されているが、一次燃焼ガスが供給される空間であれば、一次燃焼ゾーン11の真上以外に二次燃焼ゾーン12が形成されていてもよい。また、例えば二次燃焼用気体を上流側と下流側で供給することにより、一次燃焼ガスに含まれる未燃焼ガスを複数回に分けて燃焼させる構成の焼却炉であってもよい。この場合であっても、上記の二次燃焼の定義を考慮すると、複数回の燃焼の全てが二次燃焼に該当する。
【0021】
<一次燃焼用気体と二次燃焼用気体の供給>気体供給装置50は、燃焼室20内に気体(一次燃焼用気体、二次燃焼用気体)を供給する装置である。本実施形態の気体供給装置50は、一次空気供給部51と、二次空気供給部52と、排ガス供給部53と、を有している。それぞれの供給部は、気体を誘引又は送出するための送風機によって構成されている。
【0022】
一次空気供給部51は、一次供給経路71を介して燃焼室20に一次空気を供給する。一次供給経路71には第1ダンパ81が設けられており、燃焼室20に供給する一次空気の供給量を調整することができる。図2に示すように、第1ダンパ81は制御装置90によって制御されている。
【0023】
また、一次供給経路71にヒータを設け、燃焼室20に供給する一次空気の温度を調整できるようにしてもよい。また、上述のように、一次燃焼用気体には、循環排ガス及び混合ガスも含まれるため、それらが燃焼室20に供給される構成であってもよい。また、本実施形態では、一次燃焼用気体は、一次燃焼ゾーン11に下方から供給されるが、一次燃焼ゾーン11の側方等から供給されてもよい。また、一次燃焼用気体は、一次燃焼に用いられるのであれば、一次燃焼ゾーン11よりも上流側に供給されてもよい。
【0024】
二次空気供給部52は、上流側二次供給経路72及び/又は下流側二次供給経路73を介して、二次空気(二次燃焼用気体)を燃焼室20に供給する。排ガス供給部53は、上流側二次供給経路72及び/又は下流側二次供給経路73を介して、循環排ガス(二次燃焼用気体)を燃焼室20に供給する。
【0025】
更に詳細に説明すると、二次空気供給部52と上流側二次供給経路72とを接続する経路には、第2ダンパ82が設けられており、制御装置90の制御に応じて、上流側二次供給経路72に供給する二次空気の供給量を調整することができる。また、排ガス供給部53と上流側二次供給経路72とを接続する経路には、第3ダンパ83が設けられており、制御装置90の制御に応じて、上流側二次供給経路72に供給する循環排ガスの供給量を調整することができる。この構成により、上流側二次供給経路72から供給される二次空気の供給量、循環排ガスの供給量、及びそれらの割合を制御することができる。
【0026】
同様に、二次空気供給部52と下流側二次供給経路73とを接続する経路には、第4ダンパ84が設けられており、排ガス供給部53と下流側二次供給経路73とを接続する経路には、第5ダンパ85が設けられている。この構成により、制御装置90の制御に応じて、下流側二次供給経路73から供給される二次空気の供給量及び循環排ガスの供給量、及びそれらの割合を制御することができる。また、第2ダンパ82から第5ダンパ85により調整部80が構成されている。従って、調整部80は、複数の経路を介して供給される二次燃焼用気体の種類(二次空気、循環排ガス、又は混合ガス)及び供給量を調整可能である。
【0027】
本実施形態では、二次燃焼用気体は、二次燃焼ゾーン12に供給される。しかし、二次燃焼用気体は、二次燃焼に用いられるのであれば、二次燃焼ゾーン12よりも上流側(例えば一次燃焼ゾーン11)に供給されてもよい。
【0028】
本実施形態では、二次燃焼用気体は上流側と下流側に分けて供給されるが、何れか一方のみから二次燃焼用気体が供給される構成であってもよい。また、本実施形態では、上流側と下流側のそれぞれ1箇所から二次燃焼用気体が供給されるが、それぞれ複数箇所から二次燃焼用気体が供給される構成であってもよい。また、本実施形態では、上流側と下流側の両方において、二次空気と循環排ガスの混合ガスがそれぞれ供給可能であるが、上流側と下流側の少なくとも一方について、二次空気のみ、又は、循環排ガスのみが供給される構成であってもよい。
【0029】
<電気的な構成及び自動燃焼制御>焼却炉10には、図1及び図2に示すように、燃焼状態等を把握するための複数のセンサが設けられている。具体的には、焼却炉10には、燃焼室ガス温度センサ(燃焼センサ)91と、COガス濃度センサ(燃焼センサ)92と、NOxガス濃度センサ(燃焼センサ)93と、が設けられている。
【0030】
燃焼室ガス温度センサ91は、燃焼室20内に配置されており、燃焼室20内のガス温度である燃焼室ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。燃焼室ガス温度センサ91は、気体流れ方向における位置が異なる箇所に複数設けられていてもよい。この場合、上流側の燃焼室ガス温度と、下流側の燃焼室ガス温度と、を個別に取得できるので、燃焼状態をより的確に推測できる。また、燃焼室ガス温度センサ91は、気体流れ方向における位置が同じ箇所(例えば一方の側壁と、同じ高さの他方の側壁)に複数設けられていてもよい。この場合、気体流れ方向における位置が同じ箇所の温度をより正確に測定できるので、燃焼状態をより的確に推測できる。
【0031】
COガス濃度センサ92は、燃焼室20の下流であって図略の集じん器よりも更に下流に配置されており、排ガスに含まれるCOガス濃度(焼却炉排出COガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。COガス濃度センサ92が検出する焼却炉排出COガス濃度からは、燃焼室20で二次燃焼によって二次燃焼用気体と反応させたものの、二次燃焼用気体との十分な接触反応がなされなかったことで、燃焼室20の出口から排出される燃焼ガス(二次燃焼ガス)中に残留してしまった未燃焼ガスであるCOの濃度(未燃焼ガスがどれだけ生じているか)を把握することができる。
【0032】
NOxガス濃度センサ93は、COガス濃度センサ92と同様に集じん器よりも更に下流に配置されており、排ガスに含まれるNOxガス濃度(焼却炉排出NOxガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。NOxガス濃度センサ93が検出する焼却炉排出NOxガス濃度からは、燃焼室20から排出されるNOxガスの濃度と目標NOxガス濃度との差が把握できる。
【0033】
制御装置90は、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、焼却炉10全体を制御する。以下、制御装置90が行う制御のうち、自動燃焼制御について説明する。
【0034】
自動燃焼制御とは、上述した複数のセンサから得られる焼却炉10の燃焼に関するデータ(炉内検出データ)を総合的に判断し、燃焼室20の燃焼状態を長期間にわたって安定的に維持させるための制御である。具体的には、制御装置90は、図2に示すように、第1ダンパ81〜第5ダンパ85を調整することで、各部に供給される気体の供給量を調整する。また、気体の供給量以外の制御項目が調整される構成であってもよい。
【0035】
このような調整を行うことにより、燃焼室20の燃焼状態を長期間にわたって安定的に維持させることができる。また、焼却炉10で生じる燃焼は、焼却炉10の形状や構造、投入される廃棄物によって大きく異なる。また、自動燃焼制御で目標とする値についても、焼却炉10の耐久性、要求される処理量、排ガスに関する法規制等により大きく異なる。制御装置90は、それらを総合的に判断して自動燃焼制御を行う。
【0036】
例えば、燃焼室ガス温度センサ91が検出した燃焼室ガス温度が低い場合、燃焼室20での燃焼が不十分である可能性が高いので、一次燃焼用気体及び/又は二次燃焼用気体に含まれる酸素量を増やす(供給量を増やす、又は、空気の供給割合を増やす)制御が行われる可能性がある。また、例えばCOガス濃度センサ92が検出した焼却炉排出COガス濃度が高い場合、二次燃焼が不十分である可能性が高いので、二次燃焼用気体に含まれる酸素量を増やす(供給量を増やす、又は、空気の供給割合を増やす)制御が行われる可能性がある。また、例えばNOxガス濃度センサ93が検出した焼却炉排出NOxガス濃度が高い場合、これを減らすために、循環排ガスの供給量又は供給割合を増やす制御が行われる可能性がある。なお、上記で示した制御は、他の炉内検出データの値によっては行われないこともある。
【0037】
<二次燃焼用気体の具体的な供給構造>次に、燃焼室20に二次燃焼用気体を供給するための構造である二次燃焼用気体供給構造30について図3を参照して説明する。図3(a)は、二次燃焼用気体供給構造30を示す断面図である。図3(b)は、供給管32及び閉鎖軸部33を二次燃焼用気体の流れ方向で見た図(図3(a)のA−A断面図)である。
【0038】
なお、本実施形態では、二次燃焼用気体は上流側二次供給経路72と下流側二次供給経路73の二箇所から供給されるが、何れも同じ構造の二次燃焼用気体供給構造30が採用される。二次燃焼用気体供給構造30は、中継管31と、供給管(供給部)32と、閉鎖軸部(閉鎖部)33と、固定部34と、を備える。
【0039】
中継管31は、管状(筒状)の部材であり、二次空気供給部52及び/又は排ガス供給部53が供給した二次燃焼用気体が流れる部分である。中継管31は、供給管32の外周面に接続される。なお、中継管31は円筒であるが異なる形状であってもよい。また、中継管31は、供給管32の外周面以外に接続される構成であってもよい。
【0040】
供給管32は、中継管31よりも二次燃焼用気体の流れ方向の下流側に位置している。供給管32は、管状(筒状)の部材であり、中継管31を介して導入された二次燃焼用気体が流れる。また、供給管32の下流側の端部は、燃焼室20の壁部20aに形成された孔に取り付けられることで、燃焼室20の二次燃焼ゾーン12に接続されている。この構成により、燃焼室20に二次燃焼用気体を供給できる。また、供給管32は円筒であるが異なる形状であってもよい。また、供給管32は壁部20aに垂直に取り付けられているが、傾斜させて取り付けられていてもよい。
【0041】
閉鎖軸部33は、供給管32の内側に配置されている円柱状(中実状)の部材である。閉鎖軸部33の下流側の端部は、供給管32と同様に壁部20aに形成された孔を通っている。また、閉鎖軸部33は円柱であるが、異なる形状であってもよい。また、閉鎖軸部33は円柱状であるが内部に二次燃焼用気体が通らないように構成されていれば円筒状であってもよい。また、円筒状であって、内部に耐火物等が充填されている構造であってもよい。また、当該二次燃焼用気体供給構造30内(特に供給管32内)を通過する間に当該二次燃焼用気体を接触加熱する目的で閉鎖軸部33を外部熱源での加熱が可能な構造としてもよい。閉鎖軸部33の反対側(上流側)の端部は、固定部34に固定されている。また、閉鎖軸部33の下流側の端部は、燃焼室20の壁部20aの内側面と同一面位置とするが、二次燃焼ゾーン12内部での二次燃焼用気体の流れ形状を適切化するために、閉鎖軸部33の下流側の端部を、燃焼室20の壁部20aの内側面と同一面位置から、炉外側方向に引っ込んだ位置又は炉内側方向に突き出た位置としてもよい。
【0042】
供給管32及び固定部34は、フランジ構造であり、互いに接続される。この構成により、閉鎖軸部33を供給管32から浮かせた状態(閉鎖軸部33が供給管32に接触しない状態)で固定することができる。また、固定部34を供給管32から取り外すだけで(即ち、供給管32を壁部20aから取り外すことなく)、閉鎖軸部33を焼却炉10から取り外すことができる。従って、供給管32が壁部20aに取外し不能に固定されている場合においても、閉鎖軸部33を交換することができる。
【0043】
また、二次燃焼用気体供給構造30は、以上の構成により、一次燃焼ガスと十分に混合されるように、二次燃焼用気体を供給できる。以下、詳細に説明する。供給管32は、閉鎖軸部33を囲むように配置されている。また、閉鎖軸部33が存在している部分には、二次燃焼用気体が流れない。そのため、二次燃焼用気体は、図4に示すように、閉鎖軸部33によって二次燃焼用気体が流れない中空空間と、中空空間の外側に位置しているとともに当該中空空間を囲んでおり、供給管32によって二次燃焼用気体が流れる供給空間と、が形成されるようにして燃焼室20へ供給される。
【0044】
ここで、二次燃焼用気体が一次燃焼ガスと接触した場合、異質気体の混合であるので、一次燃焼ガス中に投入された二次燃焼用気体の周囲には、一次燃焼ガスが微小渦流れを形成しながら、混合・攪拌されていく。ここで、二次燃焼用気体は、中空状で供給されるので、二次燃焼用気体の厚みを小さくすることができるので、一次燃焼ガスとの接触において生じる渦流による撹拌及び拡散を効果的に活用して、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスを十分に混合できる。更に、同量の二次燃焼用気体を中空状ではなく中実状に供給する場合と比較して、二次燃焼用気体が通過する空間容積が広がるため、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスを十分に混合できる。更に、二次燃焼用気体は、中空空間を囲むようにして供給されるため、同じ厚さの扁平状として供給する場合と比較して、一次燃焼ガスによって曲げられにくい。従って、燃焼室20内に広がり易くなるため、この点においても、二次燃焼用気体と一次燃焼ガスを十分に混合できる。
【0045】
従って、本実施形態では、二次燃焼が十分に行われるため、燃焼完結性を進めることができる。特に、本実施形態では、上記の自動燃焼制御が行われているため、燃焼完結性を更に進めることができる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の二次燃焼用気体供給方法は、一次燃焼と、二次燃焼と、を燃焼室20で行う焼却炉10に対して行われる。二次燃焼用気体供給方法は、二次燃焼で用いられる酸素を含有した気体である二次燃焼用気体を供給する供給工程を含む。供給工程では、中空空間と、供給空間と、が形成されるようにして二次燃焼用気体が燃焼室20へ供給される。二次燃焼用気体の流れ方向で見たときに、中空空間は、二次燃焼用気体が流れない領域であり、供給空間は、中空空間の外側に位置しているとともに当該中空空間を囲んでおり、二次燃焼用気体が流れる領域である。
【0047】
これにより、上述したように、一次燃焼ガスと二次燃焼用気体を十分に混合させることができるので、燃焼完結性を進めることができる。
【0048】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0049】
上記実施形態では、焼却炉10が備える2つの二次燃焼用気体供給構造30は、ともに中空状の二次燃焼用気体を供給する構成である。これに代えて、二次燃焼用気体供給構造30の一方が中実状の二次燃焼用気体を供給する構成であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、燃焼センサとして、燃焼室ガス温度センサ91、COガス濃度センサ92、及びNOxガス濃度センサ93を挙げて説明したが、何れか1つの燃焼センサを用いて自動燃焼制御を行ってもよいし、上記とは別の燃焼センサを加えて自動燃焼制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 焼却炉(廃棄物焼却炉)
20 燃焼室
30 二次燃焼用気体供給構造
31 中継管
32 供給管(供給部)
33 閉鎖軸部(閉鎖部)
34 固定部
72 上流側二次供給経路
73 下流側二次供給経路
80 調整部
90 制御装置
91 燃焼室ガス温度センサ(燃焼センサ)
92 COガス濃度センサ(燃焼センサ)
93 NOxガス濃度センサ(燃焼センサ)
図1
図2
図3
図4