特許第6791824号(P6791824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社FTSの特許一覧

<>
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000002
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000003
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000004
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000005
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000006
  • 特許6791824-燃料タンク構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791824
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】燃料タンク構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20201116BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20201116BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F02M37/00 301T
   F02M37/10 H
   B60K15/03 B
   F02M37/00 301J
   F02M37/00 301L
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-183988(P2017-183988)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-60255(P2019-60255A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】天野 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 英樹
【審査官】 坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−243330(JP,A)
【文献】 特開2017−115793(JP,A)
【文献】 実開平6−58157(JP,U)
【文献】 特開2013−116673(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0075654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−37/22,
B60K 11/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上方側の部分を構成する上壁部と、車両下方側の部分を構成する下壁部と、を含んで構成されると共に、車両に搭載されたパワーユニットに供給される燃料を貯留可能とされた樹脂製の燃料タンクと、
前記燃料タンクの内側に設けられ、一端部が前記上壁部に溶着されると共に他端部が前記下壁部に溶着され、当該上壁部と当該下壁部とを車両上下方向に連結する樹脂製の支柱部と、
前記燃料タンクの内側に配置され、前記燃料の一部を貯留可能なサブカップと、
前記サブカップを前記下壁部側に付勢する付勢部と、
前記支柱部に設けられ、前記サブカップの前記燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を規制可能な規制部と、
を有する燃料タンク構造。
【請求項2】
前記燃料タンクには、前記規制部としての第1規制部が設けられた前記支柱部としての第1支柱部と、当該規制部としての第2規制部が設けられた当該支柱部としての第2支柱部とを備えており、
前記第1支柱部及び前記第2支柱部は、車両上下方向から見て前記サブカップを挟む位置に配置されている、
請求項1に記載の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記規制部は、前記支柱部と別体で構成されていると共に、
前記規制部は、前記サブカップに当接されることで前記相対変位を規制する当接部と、当該当接部を支持し、かつ前記支柱部に取り付け可能な支持部と、を含んで構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記第1規制部は、前記当接部としての一対の第1当接片部を備えていると共に、
前記第2規制部は、前記当接部としての一対の第2当接片部を備えている、
請求項2を引用する請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項5】
前記支持部には、燃料ゲージが取り付け可能とされている、
請求項3又は請求項4に記載の燃料タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、燃料タンク構造に関する発明が開示されている。この燃料タンク構造では、燃料タンクの内側にサブカップを備えており、このサブカップの内側に所定量の燃料を貯留することが可能となっている。このため、燃料タンクが傾いて、燃料タンクの内側に貯留された燃料が偏在した状態になっても、サブカップに貯留された燃料を用いることでエンジン等のパワーユニットに安定して燃料を供給することができる。
【0003】
また、下記先行技術では、サブカップがコイルスプリングによって付勢されて燃料タンクの下壁部に押し付けられるようになっている。このため、サブカップと燃料タンクの下壁部との相対変位が抑制され、サブカップの姿勢の変化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−116673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術では、モジュールカップと燃料タンクの下壁部との相対変位が、これらの間に作用する摩擦力のみによって抑制されている。このため、車両の加減速時等の燃料の移動によって、モジュールカップの燃料タンクに対する姿勢や位置が変化することが考えられる。つまり、上記先行技術は、サブカップの燃料タンクに対する位置や姿勢を安定した状態で維持するという点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、サブカップの燃料タンクに対する位置や姿勢を安定した状態で維持することができる燃料タンク構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、車両上方側の部分を構成する上壁部と、車両下方側の部分を構成する下壁部と、を含んで構成されると共に、車両に搭載されたパワーユニットに供給される燃料を貯留可能とされた樹脂製の燃料タンクと、前記燃料タンクの内側に設けられ、一端部が前記上壁部に溶着されると共に他端部が前記下壁部に溶着され、当該上壁部と当該下壁部とを車両上下方向に連結する樹脂製の支柱部と、前記燃料タンクの内側に配置され、前記燃料の一部を貯留可能なサブカップと、前記サブカップを前記下壁部側に付勢する付勢部と、前記支柱部に設けられ、前記サブカップの前記燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を規制可能な規制部と、を有している。
【0008】
請求項1に記載の本発明によれば、車両に搭載されたパワーユニットに供給される燃料を貯留可能な樹脂製の燃料タンクを備えており、当該燃料タンクは、その車両上方側の部分を構成する上壁部と、その車両下方側の部分を構成する下壁部とを含んで構成されている。また、燃料タンクの内側には、樹脂製の支柱部が設けられている。この支柱部の一端部は、燃料タンクの上壁部に溶着されていると共に、当該支柱部の他端部は、燃料タンクの下壁部に溶着されており、当該上壁部と当該下壁部とは、当該支柱部で車両上下方向に連結されている。このため、本発明では、燃料タンクの上壁部と下壁部との相対変位を抑制し、ひいては燃料タンクの形状を安定した状態で維持することができる。
【0009】
さらに、本発明では、燃料タンクの内側にサブカップが配置されており、当該サブカップは、燃料タンクに貯留されている燃料の一部を貯留可能とされている。このため、燃料タンクが傾いて、燃料タンクの内側に貯留された燃料が偏在した状態になっても、サブカップに貯留された燃料を用いることでパワーユニットに安定して燃料を供給することができる。
【0010】
加えて、本発明では、サブカップを燃料タンクの下壁部側に付勢する付勢部を備えており、サブカップが付勢部によって付勢されて当該下壁部に押し付けられるようになっている。このため、サブカップと燃料タンクの下壁部との相対変位が抑制され、サブカップの姿勢の変化を抑制することができる。
【0011】
ところで、車両の加減速時等において燃料タンク内の燃料が移動すると、サブカップが移動した燃料から力を受けて、当該サブカップの当該燃料タンクに対する位置や姿勢が変化することが考えられる。
【0012】
ここで、本発明では、支柱部に規制部が設けられており、当該規制部によってサブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位が規制可能とされている。このため、車両の加減速時等において、燃料タンク内の燃料が移動してサブカップが当該燃料から力を受けることで当該サブカップが燃料タンクに対して車両上下方向と直交する方向に相対変位しようとしても、規制部によって当該相対変位が規制される。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、請求項1に記載の発明において、前記燃料タンクには、前記規制部としての第1規制部が設けられた前記支柱部としての第1支柱部と、当該規制部としての第2規制部が設けられた当該支柱部としての第2支柱部とを備えており、前記第1支柱部及び前記第2支柱部は、車両上下方向から見て前記サブカップを挟む位置に配置されている。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、第1規制部が設けられた第1支柱部と、第2規制部が設けられた第2支柱部とを備えており、当該第1支柱部及び当該第2支柱部は、車両上下方向から見てサブカップを挟む位置に配置されている。このため、本発明では、サブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を車両上下方向から見て2方向から規制することができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記規制部は、前記支柱部と別体で構成されていると共に、前記規制部は、前記サブカップに当接されることで前記相対変位を規制する当接部と、当該当接部を支持し、かつ前記支柱部に取り付け可能な支持部と、を含んで構成されている。
【0016】
請求項3に記載の本発明によれば、規制部は、燃料タンクの支柱部と別体で構成されており、当該規制部は、当接部と支持部とを含んで構成されている。そして、当接部は、サブカップに当接されることで当該サブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を規制するようになっている。一方、支持部は、当接部を支持すると共に、支柱部に取り付け可能とされている。このため、本発明では、規制部を支柱部と一体に設ける構成と比し、当該規制部におけるサブカップの変位を規制する部分の位置を容易に設定することができる。
【0017】
ところで、規制部と支柱部とが一体とされて一つの部材で構成されている場合、車種に応じた燃料タンクの形状の変更等によって支柱部とサブカップとの位置関係が変更されると、当該部材の形状も当該位置関係に対応するように変更する必要がある。つまり、規制部と支柱部とが一体の部材とされた構成では、異なる形状の燃料タンクにおいて、当該部材の共通化を図ることができない。
【0018】
一方、本発明では、車種に応じた燃料タンクの形状の変更等によって支柱部とサブカップとの位置関係が変更されても、支柱部及び規制部の何れか一方の形状を変更することで、当該位置関係に対応することができ、支柱部及び規制部の何れか他方の形状を維持することができる。
【0019】
請求項4に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、請求項2を引用する請求項3に記載の発明において、前記第1規制部は、前記当接部としての一対の第1当接片部を備えていると共に、前記第2規制部は、前記当接部としての一対の第2当接片部を備えている。
【0020】
請求項4に記載の本発明によれば、第1規制部が一対の第1当接片部を備えていると共に、第2規制部が一対の第2当接片部を備えている。このため、本発明では、サブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を、第1規制部側の2箇所で支持することができると共に、第2規制部側の2箇所で支持することができる。
【0021】
請求項5に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記支持部には、燃料ゲージが取り付け可能とされている。
【0022】
請求項5に記載の本発明によれば、規制部の一部を構成する支持部に燃料ゲージが取り付け可能とされており、燃料ゲージの取り付け用の部材を別に設ける場合と比し、燃料タンク内に配置される部品点数を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、サブカップの燃料タンクに対する位置や姿勢を安定した状態で維持することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項2に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、サブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位が規制される確度を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項3に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、規制部とサブカップとの位置決めの簡易化を図りつつ、形状が異なる燃料タンクにおいて支柱部又は規制部の共通化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項4に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、サブカップの燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を安定した状態で規制することができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項5に記載の本発明に係る燃料タンク構造は、燃料タンクの容量の確保を確保しつつ、燃料タンクの内部の構成の簡略化を図ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る燃料タンクの要部周辺の構成を示す拡大平面図(図3の1方向矢視図)である。
図2】第1実施形態に係る燃料タンクの要部の構成を示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係る燃料タンクにおけるサブカップ周辺の構成を示す拡大断面図(図1の3−3線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図4】第1実施形態に係る燃料タンクの支柱部周辺の構成を示す拡大断面図(図1の4−4線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図5】第1実施形態に係る燃料タンクの構成を示す車両後方側から見た断面図である。
図6】第2実施形態に係る燃料タンクの要部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下、図1図5を用いて、本発明に係る燃料タンク構造の第1実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印LHは車両幅方向左側を示している。
【0030】
まず、図5を用いて、本実施形態に係る燃料タンク構造が適用された「燃料タンク10」が搭載された「車両12」の車体14の構成について説明する。なお、本実施形態では、車体14及び燃料タンク10は、基本的に左右対称の構成とされているため、以下では、車体14及び燃料タンク10の車両幅方向左側の部分の構成について主に説明し、車両幅方向右側の部分の構成については、適宜説明を省略することとする。
【0031】
車体14は、車体14のフロア部の一部を構成するフロアパネル16を備えており、当該フロアパネル16は、鋼板がプレス加工されて形成されていると共に車両上下方向から見て車両前後方向及び車両幅方向に延在している。
【0032】
また、フロアパネル16の車両下方側には、フロアパネル16の車両幅方向外側の周縁部に沿って左右一対の鋼製のリヤサイドメンバ18が配置されている。このリヤサイドメンバ18は、車両前後方向から見た断面が略矩形状とされた閉断面構造とされており、フロアパネル16と図示しない溶接等による接合部で接合されている。
【0033】
一方、燃料タンク10は、フロアパネル16の車両下方側、より具体的には、車両上下方向から見て、図示しないリアシートと重なる位置に配置されていると共に、その主な部分がリヤサイドメンバ18間に納まっている。
【0034】
燃料タンク10は、その車両上方側の部分を構成する「上壁部10A」と、その車両下方側の部分を構成する「下壁部10B」と、その外周部を構成すると共に上壁部10Aと下壁部10Bとを繋ぐ周壁部10Cとを含んで、高密度ポリエチレン樹脂で構成されている。
【0035】
上壁部10A及び下壁部10Bは、図1に示されるように、それぞれ車両上下方向から見て車両後方側に向かうに従って縮幅された略台形の板状とされていると共に、その車両幅方向中央部が車両上方側に向かって膨出されている。つまり、燃料タンク10は、その車両幅方向中央部における車両下方側の部分にプロペラシャフト等を配置するための凹部が設けられた所謂鞍型に形成されている。
【0036】
上記のように構成された燃料タンク10の内側には閉空間が形成されており、当該燃料タンク10に車両12に搭載された図示しないエンジン等のパワーユニットに供給されるガソリン等の燃料を貯留することが可能となっている。なお、以下では、燃料タンク10における車両幅方向左側の部分を第1タンク室10Dと称し、当該燃料タンク10の車両幅方向右側の部分を第2タンク室10Eと称することとする。そして、図3及び図4にも示されるように、燃料タンク10は、その内側に、複数の「支柱部20」と燃料ポンプモジュール22とを備えている。なお、図4では、支柱部20の構成を理解し易くするために、支柱部20の周辺に配置された部材や機器を図示していない。
【0037】
支柱部20は、図示しないものも含めて、第1タンク室10Dと第2タンク室10Eとのそれぞれに2つずつ、合計で4つ配置されている。そして、第1タンク室10Dに配置された支柱部20のうち一方は、第1タンク室10Dの車両前方外側の部分に配置されており、当該支柱部20のうち他方は、一方の支柱部20に対して車両後方内側となる位置に配置されている。
【0038】
より詳しくは、図2にも示されるように。支柱部20は、その主な部分を構成する本体部20Aと、「上側フランジ部20B」と、「下側フランジ部20C」とを含んで、燃料タンク10と同様の材質、すなわち高密度ポリエチレン樹脂で構成されている。
【0039】
本体部20Aは、車両上下方向に延びる円筒状とされており、その車両上方側の端部に上側フランジ部20Bが設けられており、その車両下方側の端部には、下側フランジ部20Cが設けられている。つまり、上側フランジ部20Bは、支柱部20の一端部と見なすことができると共に、下側フランジ部20Cは、支柱部20の他端部と見なすことができる。
【0040】
上側フランジ部20B及び下側フランジ部20Cは、本体部20Aと一体に形成されており、車両上方側から見て中央部が円形に切り取られた円板状とされている。そして、支柱部20は、上側フランジ部20Bが燃料タンク10の上壁部10Aに溶着されると共に下側フランジ部20Cが燃料タンク10の下壁部10Bに溶着されることで、上壁部10Aと下壁部10Bとを車両上下方向に連結している。
【0041】
なお、支柱部20の本体部20Aには、複数の図示しない貫通部が形成されており、支柱部20の内側に燃料を入れることが可能となっている。
【0042】
一方、燃料ポンプモジュール22は、図3に示されるように、第1タンク室10D側に配置されていると共に、「サブカップ24」と、図示しない燃料ポンプと、同じく図示しないジェットポンプとを含んで構成されている。なお、図3では、燃料ポンプモジュール22の構成を理解し易くするために、燃料ポンプモジュール22の周辺に配置された部材や機器を図示していない。
【0043】
サブカップ24は、車両上方側が開放された有底円筒状の樹脂材で構成されており、その内側に燃料の一部を貯留可能とされている。このサブカップ24は、燃料タンク10の上壁部10Aに形成された貫通部26から燃料タンク10の内側に挿入可能とされている。また、サブカップ24は、図1に示されるように、車両上下方向から見て第1タンク室10D側に配置された2つの支柱部20に挟まれる位置に配置されている。換言すれば、車両幅方向左側に配置された2つの支柱部20は、車両上下方向から見てサブカップ24を挟む位置に配置されている。そして、サブカップ24の内側には、燃料ポンプ及びジェットポンプが配置されている。なお、サブカップ24には、図示しない流入口部が設けられており、当該流入口部を介して燃料タンク10と連通された状態となっている。
【0044】
燃料ポンプは、その車両下方側の部分に燃料を吸引可能な図示しない燃料吸引口が設けられており、当該燃料ポンプは、駆動されることで、サブカップ24内の燃料を燃料吸引口から吸引するようになっている。そして、燃料ポンプで吸引された燃料は、図示しない燃料送出配管を介して、サブカップ24内からパワーユニットに向かって送り出されるようになっている。
【0045】
ジェットポンプは、図5に示されるように、燃料移送配管28を介して第2タンク室10Eと接続されている。詳しくは、燃料移送配管28の一端部28Aは、第2タンク室10E側の支柱部20に取り付けられたブラケット30に設けられた吸入口部32に接続されている。なお、吸入口部32は、燃料タンク10の下壁部10Bに近接して配置されている。一方、燃料移送配管28の図示しない他端部は、ジェットポンプに接続されている。
【0046】
また、ジェットポンプには、燃料ポンプによって送り出される燃料の一部が導入されるようになっており、当該燃料が導入されることでジェットポンプの内部に生じた負圧を利用して、第2タンク室10E内の燃料を吸引するようになっている。そして、ジェットポンプによって第2タンク室10Eから吸引された燃料は、移送配管を介してサブカップ24内に送り込まれるようになっている。
【0047】
図3に戻り、上述した燃料タンク10の貫通部26は、燃料タンク10の外側から円盤状の蓋部材34で閉じられており、当該蓋部材34からは、一対の円柱状のガイド棒36が車両下方側に延出されている。一方、サブカップ24には、ガイド棒36に対応する一対のガイド筒部24Aが設けられており、当該ガイド筒部24Aには、ガイド棒36が挿入可能とされている。そして、蓋部材34が燃料タンク10に取り付けられた状態において、ガイド棒36は、ガイド筒部24Aに挿入された状態となっている。
【0048】
また、それぞれのガイド棒36には、付勢部としての「コイルスプリング38」が装着されている。このコイルスプリング38は、蓋部材34が燃料タンク10に取り付けられた状態において、蓋部材34とサブカップ24との間に介在しており、ガイド筒部24A、ひいてはサブカップ24を蓋部材34側から燃料タンク10の下壁部10B側に付勢している。
【0049】
ここで、本実施形態では、図1に示されるように、燃料タンク10の内側に第1規制部としての「規制部40」及び第2規制部としての「規制部42」が設けられており、規制部40、42でサブカップ24の燃料タンク10に対する相対変位が規制可能とされている点に特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成する規制部40、42の構成について詳細に説明する。
【0050】
規制部40は、第1タンク室10Dに配置された2つの支柱部20のうち車両前方外側に配置された一方の支柱部20に設けられており、当該支柱部20は、第1支柱部として機能している。一方、規制部42は、第1タンク室10Dに配置された2つの支柱部20のうち他方の支柱部20に設けられており、当該支柱部20は、第2支柱部として機能している。なお、規制部40、42は、高密度ポリエチレン樹脂で構成されている。
【0051】
図2にも示されるように、規制部40は、支柱部20に取り付け可能な構成、換言すれば支柱部20と別体とされており、「当接部44」と当該当接部44を支持する「支持部46」とを含んで構成されている。より詳しくは、当接部44は、第1当接片部としての一対の「当接片部44A」と、延出片部44Bとを含んで構成されている。
【0052】
当接片部44Aは、サブカップ24の軸線側から見て車両幅方向に延びる矩形の板状とされていると共に、車両上下方向から見て車両前方側に凸となるV字状となるように配置されている。そして、一対の当接片部44Aは、車両前後方向及び車両幅方向の何れの方向から見てもサブカップ24の一部又は全部と重なるように、かつサブカップ24と近接して配置されている。一方、延出片部44Bは、当接片部44A同士の境界部から車両前方側に延出し、かつ板厚方向を車両幅方向とされた板状とされており、当接片部44Aと支持部46とを接続している。
【0053】
支持部46は、当接部44と一体とされた支持板部48Aと当該支持板部48Aと一体に設けられた半筒部48Bとを含んで構成された第1支持部48と、第1支持部48と別体とされた第2支持部50とを備えている。
【0054】
第1支持部48の支持板部48Aは、当接部44の延出片部44Bにおける車両前方側の端部に接続されている。この支持板部48Aは、板厚方向を車両前後方向とされると共に車両前後方向から見て延出片部44Bから車両幅方向外側及び車両幅方向内側に延びる矩形の板状とされている。
【0055】
また、支持板部48Aの車両幅方向内側の端部における車両前方側の面には、「燃料ゲージ52」の取付部54を取り付け可能な図示しない被取付部が設けられており、当該被取付部に取付部54が取り付けられることで、支持部46に燃料ゲージ52が取り付けられている。なお、燃料ゲージ52は、第2タンク室10E側の支柱部20に取り付けられたブラケット30にも取り付けられている。そして、支持板部48Aの車両幅方向外側の端部には、半筒部48Bが設けられている。
【0056】
半筒部48Bは、車両上下方向から見て車両後方側に凸とされた円弧状とされていると共に支柱部20の本体部20Aの外周を車両後方側から覆うのに十分な大きさとされた半円筒状とされている。そして、半筒部48Bの車両上下方向の寸法は、支持板部48Aの車両上下方向の寸法と同程度の寸法に設定されている。
【0057】
この半筒部48Bの車両幅方向両側の端部には、それぞれ係止部48B1が設けられており、当該係止部48B1は、後述するように半筒部48Bと第2支持部50とを接続するのに用いられている。また、半筒部48Bの長手方向中央部には、車両幅方向に離間して配置された一対の被嵌合部48B2が設けられており、当該被嵌合部48B2は、軸線方向を車両前後方向とされた円筒状とされている。一方、支柱部20の本体部20Aには、被嵌合部48B2に対応する一対の円柱状の嵌合部20A1が設けられており、当該嵌合部20A1が被嵌合部48B2に嵌合されることで、第1支持部48が支柱部20に取り付けられるようになっている。
【0058】
第2支持部50は、車両上下方向から見て車両前方側に凸とされた円弧状とされていると共に支柱部20の本体部20Aの外周を車両前方側から覆うのに十分な大きさとされた半円筒状とされている。そして、第2支持部50の車両上下方向の寸法は、支持板部48Aの車両上下方向の寸法と同程度の寸法に設定されている。つまり、第2支持部50は、支柱部20の本体部20Aの軸線に対して、基本的に第1支持部48の半筒部48Bの構成と対称な構成とされている。
【0059】
また、第2支持部50の車両幅方向両側の端部には、それぞれ第1支持部48の係止部48B1に対応する被係止部50Aが設けられている。そして、係止部48B1が被係止部50Aに係止されることで、第1支持部48の半筒部48Bと第2支持部50とが接続されて、半筒部48B及び第2支持部50が、支柱部20の本体部20Aの外周面に沿う円筒状を成すようになっている。
【0060】
図1に戻り、規制部42は、基本的に規制部40と同様の構成とされており、車両上下方向から見て規制部40とサブカップ24の軸線に対して対称となるように配置されている。詳しくは、規制部42は、「当接部56」と「支持部58」とを含んで構成されており、当該当接部56は、第2当接片部としても一対の「当接片部56A」と延出片部56Bとを含んで構成されている。一方、支持部58は、支持部46と同様に、支持板部60Aと半筒部60Bとを含んで構成された第1支持部60と、第1支持部60と別体とされた第2支持部62とを備えているものの、支持板部60Aには、燃料ゲージ52が取り付けられていない点で支持部46と異なっている。
【0061】
また、規制部42の当接片部56Aも規制部40の当接片部44Aと同様に、サブカップ24と近接して配置されている。このため、サブカップ24に外力が入力されて、サブカップ24が燃料タンク10に対して相対変位しようとしても、当該相対変位、特に車両上下方向と直交する方向のサブカップ24の燃料タンク10に対する相対変位を規制することが可能となっている。加えて、サブカップ24に外力が入力されることによる当該サブカップ24の燃料タンク10に対する姿勢変化も規制部40、42で規制することが可能となっている。
【0062】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0063】
本実施形態では、車両12に搭載されたパワーユニットに供給される燃料を貯留可能な樹脂製の燃料タンク10を備えており、当該燃料タンク10は、その車両上方側の部分を構成する上壁部10Aと、その車両下方側の部分を構成する下壁部10Bとを含んで構成されている。また、燃料タンク10の内側には、樹脂製の支柱部20が設けられている。この支柱部20の上側フランジ部20Bは、燃料タンク10の上壁部10Aに溶着されていると共に、当該支柱部20の下側フランジ部20Cは、燃料タンク10の下壁部10Bに溶着されており、上壁部10Aと下壁部10Bとは、当該支柱部20で車両上下方向に連結されている。このため、本実施形態では、燃料タンク10の上壁部10Aと下壁部10Bとの相対変位を抑制し、ひいては燃料タンク10の形状を安定した状態で維持することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、燃料タンク10の内側にサブカップ24が配置されており、当該サブカップ24は、燃料タンク10に貯留されている燃料の一部を貯留可能とされている。このため、燃料タンク10が傾いて、燃料タンク10の内側に貯留された燃料が偏在した状態になっても、サブカップ24に貯留された燃料を用いることでパワーユニットに安定して燃料を供給することができる。
【0065】
加えて、本実施形態では、サブカップ24を燃料タンク10の下壁部10B側に付勢するコイルスプリング38を備えており、サブカップがコイルスプリング38によって付勢されて下壁部10Bに押し付けられるようになっている。このため、サブカップ24と燃料タンク10の下壁部10Bとの間に発生する摩擦力によって、サブカップ24と下壁部10Bとの相対変位が抑制され、サブカップ24の姿勢の変化を抑制することができる。
【0066】
ところで、車両12の加減速時等において燃料タンク10内の燃料が移動すると、サブカップ24が移動した燃料から力を受けて、サブカップ24の燃料タンク10に対する位置や姿勢が変化することが考えられる。
【0067】
ここで、本実施形態では、燃料タンク10におけるサブカップ24側に配置された2つの支柱部20のうち一方の支柱部20に規制部40が設けられており、他方の支柱部20に規制部42が設けられている。そして、規制部40、42によってサブカップ24の燃料タンクに対する車両上下方向と直交する方向の相対変位が規制可能とされている。このため、車両12の加減速時等において、燃料タンク10内の燃料が移動してサブカップ24が当該燃料から力を受けることでサブカップ24が燃料タンク10に対して車両上下方向と直交する方向に相対変位しようとしても、規制部40、42によって当該相対変位が規制される。したがって、本実施形態では、サブカップ24の燃料タンク10に対する位置や姿勢を安定した状態で維持することができる。
【0068】
また、本実施形態では、規制部40が設けられた一方の支柱部20と、規制部42が設けられた他方の支柱部20とを備えており、これらの支柱部20は、車両上下方向から見てサブカップ24を挟む位置に配置されている。このため、本実施形態では、サブカップ24の燃料タンク10に対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を車両上下方向から見て2方向から規制することができる。したがって、本実施形態では、サブカップ24の燃料タンク10に対する車両上下方向と直交する方向の相対変位が規制される確度を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、規制部40、42が、燃料タンク10の支柱部20と別体で構成されており、規制部40は、当接部44と支持部46とを含んで構成されており、規制部42は、当接部56と支持部58とを含んで構成されている。そして、当接部44、56は、サブカップ24に当接されることで当該サブカップ24の燃料タンク10に対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を規制するようになっている。一方、支持部46は、当接部44を支持すると共に支柱部20に取り付け可能とされており、支持部58は、当接部56を支持すると共に支柱部20に取り付け可能とされている。このため、本実施形態では、規制部40、42を支柱部20と一体に設ける構成と比し、当該規制部40、42におけるサブカップの変位を規制する部分の位置、すなわち当接部44、56の位置を容易に設定することができる。
【0070】
ところで、規制部40、42と支柱部20とが一体とされて一つの部材で構成されている場合、車種に応じた燃料タンク10の形状の変更等によって支柱部20とサブカップ24との位置関係が変更されると、当該部材の形状も当該位置関係に対応するように変更する必要がある。つまり、規制部40、42と支柱部とが一体の部材とされた構成では、異なる形状の燃料タンク10において、当該部材の共通化を図ることができない。
【0071】
一方、本実施形態では、車種に応じた燃料タンク10の形状の変更等によって支柱部20とサブカップ24との位置関係が変更されても、支柱部20及び規制部40、42の何れか一方の形状を変更することで、当該位置関係に対応することができる。このため、支柱部20及び規制部40、42の何れか他方の形状を維持することができ、その結果、規制部40、42とサブカップ24との位置決めの簡易化を図りつつ、形状が異なる燃料タンク10において支柱部20又は規制部40、42の共通化を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、規制部40が一対の当接片部44Aを備えていると共に、規制部42が一対の当接片部56Aを備えている。このため、本実施形態では、サブカップ24の燃料タンク10に対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を、規制部40側の2箇所で支持することができると共に、規制部42側の2箇所で支持することができる。また、サブカップ24を燃料タンク10の内側に挿入するときに、当接片部44A、56Aをガイドとして用いることができ、サブカップ24の位置決めが容易となる。したがって、本実施形態では、サブカップ24の燃料タンク10に対する車両上下方向と直交する方向の相対変位を安定した状態で規制することができると共に、燃料タンク10へのサブカップ24の取り付け作業を簡易なものとすることができる。
【0073】
加えて、本実施形態では、規制部40の一部を構成する支持部46に燃料ゲージ52が取り付け可能とされており、燃料ゲージ52の取り付け用の部材を別に設ける場合と比し、燃料タンク10内に配置される部品点数を低減することができる。したがって、本実施形態では、燃料タンク10の容量の確保を確保しつつ、燃料タンク10の内部の構成の簡略化を図ることができる。
【0074】
<第2実施形態>
以下、図6を用いて、本発明に係る燃料タンク構造の第2実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係る燃料タンク構造では、支柱部20と、規制部40に対応する「規制部70」とが一体化されていると共に、支柱部20と、規制部42に対応する図示しない規制部が一体化されている点に特徴がある。
【0076】
具体的には、規制部70は、当接片部44Aに対応する第1当接片部としての一対の「当接片部70A」と、延出片部44Bに対応する延出片部70Bと、支持板部48Aに対応する支持板部70Cとを含んで構成されている。そして、規制部70は、支持板部70Cの車両幅方向外側の端部において、支柱部20の本体部20Aと接続された状態とされている。なお、規制部42に対応する規制部も、規制部70と同様の構成とされている。
【0077】
このような構成によれば、規制部40、42が支柱部20と別体とされていることによる作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、本実施形態では、規制部70と支柱部20とが一体に構成されていることで、燃料タンク10内の部品点数を減らし、燃料タンク10内の構成を簡略化することができる。
【0078】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、規制部に一対の当接片部を設ける構成としたが、これに限らず、例えば、規制部に車両幅方向又は車両前後方向に一様に延びる当接片部を一つ設ける構成としてもよい。また、上述した実施形態では、複数の支柱部20に規制部が設けられていたが、1つの支柱部20に規制部を設ける構成としてもよい。なお、この場合には、規制部を車両上下方向に延びる筒状としてもよい。
【0079】
(2) また、上述した実施形態では、燃料タンク10の第1タンク室10D側にサブカップ24を配置し、当該第1タンク室10D側の支柱部20に規制部を設ける構成としたが、これに限らない。例えば、燃料タンク10の第2タンク室10E側にサブカップ24を配置し、当該第2タンク室10E側の支柱部20に規制部を設ける構成としてもよい。なお、この場合には、規制部に燃料ゲージ52や吸入口部32を取り付ける構成としてもよい。
【0080】
(3) さらに、上述した実施形態では、各実施形態に係る燃料タンク構造を鞍型の燃料タンク10に適用したが、これに限らず、樹脂製でかつ支柱部を有する燃料タンクであれば、鞍型以外の燃料タンクに各実施形態に係る燃料タンク構造を適用してもよい。
【0081】
(4) 加えて、上述した実施形態では、燃料タンク10、支柱部20及び規制部が高密度ポリエチレン樹脂で構成されていたが、仕様に応じてこれ以外の樹脂で燃料タンク10、支柱部20及び規制部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 燃料タンク
10A 上壁部
10B 下壁部
12 車両
20 支柱部
20B 上側フランジ部(一端部)
20C 下側フランジ部(他端部)
24 サブカップ
38 コイルスプリング(付勢部)
40 規制部(第1規制部)
42 規制部(第2規制部)
44 当接部
44A 当接片部(第1当接片部)
46 支持部
52 燃料ゲージ
56 当接部
56A 当接片部(第2当接片部)
58 支持部
70 規制部
70A 当接片部(第1当接片部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6