(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791842
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】第X因子の活性化
(51)【国際特許分類】
C07K 14/745 20060101AFI20201116BHJP
C12N 9/64 20060101ALI20201116BHJP
C07K 1/18 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
C07K14/745
C12N9/64 Z
!C07K1/18
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-507847(P2017-507847)
(86)(22)【出願日】2015年8月12日
(65)【公表番号】特表2017-526669(P2017-526669A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015044863
(87)【国際公開番号】WO2016025601
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年8月13日
(31)【優先権主張番号】62/036,402
(32)【優先日】2014年8月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315010787
【氏名又は名称】バクスアルタ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515351758
【氏名又は名称】バクスアルタ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ハッスラッハー,マインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ガターニグ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファイドラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,エムスト
(72)【発明者】
【氏名】ドチカル,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ホーリング,フランチスカ
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−110715(JP,A)
【文献】
特表2010−528096(JP,A)
【文献】
特表2001−514516(JP,A)
【文献】
特開2007−055899(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/053887(WO,A1)
【文献】
特表2007−507419(JP,A)
【文献】
HIMMELSPACH M,THROMBOSIS RESEARCH,米国,2000年,VOL:97,PAGE(S):51 - 67,URL,http://dx.doi.org/10.1016/S0049-3848(99)00145-0
【文献】
日本血栓止血学会誌,1999, Vol.10, No.2/3, pp.181-188
【文献】
Biochemistry, 1972, Vol.11, No.26, pp.4882-4891
【文献】
Biotechnology and Bioengineering, 2002, Vol.79, No.7, pp.724-732
【文献】
Cytotechnology, 2004, Vol.44, pp.93-102
【文献】
Protein Science, 2008, Vol.17, pp.1354-1361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/64
C07K 14/745
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固第X因子(FX)を活性化する方法であって、
a)少なくとも10時間の接触期間の間、カルシウムイオンの存在下で陰イオン交換物質と単離されたFXを含む水溶液とを接触させて、前記FXを前記陰イオン交換物質に結合させることと、
ここで、前記FXは、哺乳動物の血漿または組織培養系の細胞上清から単離されたものであり、
b)カルシウムイオンを含む溶出バッファーを用いて、前記陰イオン交換物質から活性化FX(FXa)を溶出することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記接触期間が少なくとも20時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記a)の結合条件が、8mS/cm以下の伝導率を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記a)の結合条件が、pHが8〜10であることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記FXを、陰イオン交換物質1mLあたり0.5mg超で充填する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記a)の接触ステップおよび前記b)の溶出ステップを8℃超の温度で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶出バッファーが、対アニオンをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対アニオンが、塩素イオン、酢酸イオン、または硫酸イオンのうちの少なくとも1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶出バッファー中のカルシウムイオンまたは対アニオンまたはその両方の濃度が経時的に増加する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルシウムイオンの濃度が、1mMから100mMに増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カルシウムイオンの濃度が、1mMから10mMに増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対アニオンの濃度が、1mMから1000mMに増加する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対アニオンの濃度が、9mMから200mMに増加する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶出バッファーが、25℃で1〜100mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶出バッファーが、25℃で10〜90mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶出バッファーが、25℃で20〜80mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶出バッファーが、25℃で30〜70mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶出バッファーが、25℃で40〜60mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶出バッファーが、25℃で50〜60mS/cmの伝導率を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の存在下で、前記FXを含む水溶液を前記陰イオン交換物質と接触させる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対アニオンの濃度が、1mMから少なくとも500mMに増加する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対アニオンの濃度が、1mMから少なくとも800mMに増加する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記陰イオン交換物質が、第四級アンモニウム[Q]、ジエチルアミノエチル[DEAE]、ジエチルアミノプロピル[ANX]、または第一級アミンのうちの少なくとも1つを含むリガンドを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記陰イオン交換物質が、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(polymethylmetaacrylate)、ポリビニルベンゼン、ポリビニルピリジン、架橋ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)、セファロース、および架橋アガロースのうちの少なくとも1つに由来するマトリックスを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物の血漿または前記組織培養系の細胞上清から前記FXを単離して水溶液を作製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記FXが、前記哺乳動物の血漿または前記組織培養系の細胞上清から沈殿、限外ろ過、またはクロマトグラフィーによって単離される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
凝固第X因子は、FX、F10、スチュアート-プラウアー因子という名称、およびトロンボキナーゼとしても知られている、トロンビンを活性化するビタミンK依存性の血漿プロテアーゼである。FXは、まず単鎖の前駆体として肝臓で合成され、内因系経路および外因系経路の両方により活性化され、ジスルフィド結合で結合した軽鎖および重鎖からなる活性化FX(FXa)を形成する。この軽鎖はγ−カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインおよび2つの上皮増殖因子様(EGF様)ドメインを含み、重鎖はセリンプロテアーゼドメインに対応する。FXaは、プロトロンビン複合体濃縮製剤の作用に寄与しており、ファイバ(FEIBA:第VIII因子バイパス活性(factor eight bypassing activity))の活性成分として同定されている。FEIBAは、FVIIIまたはFIXに対する阻害抗体を発達させる血友病患者を治療するために使用することができる。
【0002】
FXは、ヒトの血漿から精製でき、または組み換え技術を使用して生成できるが、活性化状態(FXa)でのみ血液凝固プロセスに影響を与える。この活性化は、FXの重鎖のArg52−Ile53ペプチド結合の切断からもたらされ、これにより活性化ペプチドが放出される。FXの活性化の標準的な方法は、典型的には、プロテアーゼなどの外因性の薬剤を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書中開示される態様は、外因性の薬剤を添加することなく第X因子(FX)を活性化する方法を含む。一実施形態では、クロマトグラフィーの樹脂とFXの結合を介して、FXを活性化する。
【0004】
さらなる態様は、FXを活性化するシステムを含む。一実施形態では、このシステムは、液体培地中のFXおよび陰イオン交換クロマトグラフィーの樹脂を含む。一実施形態では、液体培地は水性である。
【0005】
態様は、クロマトグラフィーの樹脂上にFXを充填するステップを開始してから2時間後に活性化FXを溶出することを含む。
【0006】
態様は、クロマトグラフィーの樹脂上にFXを充填するステップを開始してから5時間後に活性化FXを溶出することを含む。
【0007】
態様は、クロマトグラフィーの樹脂上にFXを充填するステップを開始してから10時間後に活性化FXを溶出することを含む。
【0008】
態様は、クロマトグラフィーの樹脂上にFXを充填するステップを開始してから20時間後に活性化FXを溶出することを含む。
【0009】
本明細書中開示されるさらなる態様は、8mS/cm以下の伝導率でFXを結合させることを含む。
【0010】
本明細書中開示されるさらなる態様は、pH8〜10でFXを結合させることを含む。
【0011】
本明細書中開示されるさらなる態様は、陰イオン交換樹脂1mLあたり0.5mg超でFXを充填することを含む。特定の態様では、結合ステップおよび溶出ステップを、8℃超の温度で行う。
【0012】
本明細書中開示される方法は、二価の陽イオンまたは対イオンを含む溶出バッファーを含む。特定の方法では、対イオンは、塩素イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、硫酸イオン、またはリン酸イオンのうちの少なくとも1つである。本明細書中開示される特定の方法では、溶出バッファー中の二価の陽イオンまたは対イオンまたはその両方の濃度が経時的に増加する。
【0013】
本明細中開示される態様は、25℃で1〜100mS/cmの伝導率の溶出バッファーを含む。さらなる態様は、第四級アンモニウム[Q]、ジエチルアミノエチル[DEAE]、ジエチルアミノプロピル[ANX]、または第一級アミンのうちの少なくとも1つであるイオン交換リガンドを含む。さらなる態様は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(polymethylmetaacrylate)、ポリビニルベンゼン、ポリビニルピリジン、架橋ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)、セファロース、および架橋アガロースのうちの少なくとも1つに由来するマトリックスであるイオン交換物質を含む。特定の態様では、イオン交換物質は陰イオン交換物質である。
【0014】
実施形態では、イオン交換物質は、POROS(登録商標)50HQ(第四級化ポリエチレンイミン(polyetheyleneimine)官能基に基づく強力な陰イオン交換担体;Life Technologies)、POROS(登録商標)PI(ポリエチレンイミン官能基に基づく弱い陰イオン交換担体;Life Technologies)、POROS(登録商標)D(弱い陰イオン交換担体;Life Technologies)、Q SEPHAROSE(登録商標)FF(Q Sepharose Fast Flow、第四級アンモニウムの強力な陰イオン交換基を伴う6%の架橋アガロースビーズ、GE Healthcare Life Sciences)、Q SEPHAROSE(登録商標)HP(第四級の強力な陰イオン交換基で修飾した平均直径34μmの架橋アガロースビーズ、GE Healthcare Life Sciences)、ESHMUNO(登録商標)Q(強固な表面グラフトポリビニルエーテル親水性ポリマーに架橋したトリメチルアンモニウムメチル官能基を含む強力な陰イオン交換体、Merck Millipore)、FRACTOGEL(登録商標)TMAE(トリメチルアンモニウムメチル官能基を含むメタクリレートベースのポリマー性ビーズの強力な陰イオン交換体合成物質、EMD Millipore)、FRACTOGEL(登録商標)EMD DEAE(DEAE官能基を含むメタクリレートベースのポリマー性ビーズの弱い陰イオン交換体合成物質、EMD Millipore)、FRACTOGEL(登録商標)EMD DMAE(ジメチルアミノエタノール官能基を含むメタクリレートベースのポリマー性ビーズの弱い陰イオン交換体合成物質、EMD Millipore)、Q Ceramic HYPERD(登録商標)F(第四級アンモニウム官能基を含む強固なセラミック性ビーズのgigaporeの中で重合化された高性能のハイドロゲル、Pall Corporation)、MUSTANG(登録商標)Q(孔径0.8ミクロンの膜上の架橋ポリマーコーティングにおけるペンダント第四級アミン官能基を含む陰イオン交換担体、Pall Corporation)、DEAE SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow(DEAEの弱い陰イオン交換基を含む6%の架橋アガロースビーズ、GE Healthcare Life Sciences)、ANX SEPHAROSE(登録商標)4 Fast Flow(弱い陰イオン交換第三級アミン基を含む高度に架橋した4%のアガロース誘導体、GE Healthcare Life Sciences)、Q SEPHAROSE(登録商標)XL(デキストラン鎖がアガロースマトリックスと共有結合しており、第四級アンモニウムの強力な陰イオン交換基で修飾された、高度に架橋したビーズ形態の6%のアガロースマトリックス、GE Healthcare Life Sciences)、Q SEPHAROSE(登録商標)big beads(強力なスルホン酸陽イオン交換基で修飾した架橋アガロースビーズ(100〜300μm)、GE Healthcare Life Sciences)、DEAE SEPHADEX(登録商標)(DEAE官能基を含む架橋デキストランマトリックスの弱い陰イオン交換体、GE Healthcare Life Sciences)、QAE SEPHADEX(登録商標)(ジエチル−(2−ヒドロキシ−プロピル)アミノエチル官能基を含む架橋デキストランマトリックスの強力な陰イオン交換体、GE Healthcare Life Sciences)、SOURCE(商標)15Q(第四級アンモニウム官能基で修飾した15μmの単一粒径の強固なポリスチレン/ジビニルベンゼンポリマーマトリックスに基づく強力な陰イオン交換体、GE Healthcare Life Sciences)、Source 30Q(第四級アンモニウム官能基で修飾した30μmの単一粒径の強固なポリスチレン/ジビニルベンゼンポリマーマトリックスに基づく強力な陰イオン交換体、GE Healthcare Life Sciences)、Capto Q(デキストラン表面増量剤(dextran surface extender)および強力な第四級アンモニウム陰イオン交換体で修飾した強固なhigh−flowアガロースのマトリックス、GE Healthcare Life Sciences)、Capto DEAE(デキストラン表面増量剤および弱いDEAE陰イオン交換体で修飾した強固なhigh−flowアガロースのマトリックス、GE Healthcare Life Sciences)、Mono Q(強力な第四級アンモニウム陰イオン交換体に結合したモノビーズの強力な陰イオン交換体、GE Healthcare Life Sciences)、TOYOPEARL(登録商標)Super Q(強力な陰イオン交換体官能基を含むヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TOYOPEARL(登録商標)DEAE(弱い陰イオン交換体官能基を含むヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TOYOPEARL(登録商標)QAE(強力な陰イオン交換体官能基を含むヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TOYOPEARL(登録商標)Q(強力な陰イオン交換体官能基を含むヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TOYOPEARL(登録商標)GigaCap Q(強力な陰イオン交換体官能基を含むより多くの陰イオン性結合部位を提供するよう修飾されたヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TSKgel(登録商標)SuperQ(強力な陰イオン交換体官能基を含む高度の架橋を伴うヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、TSKgel(登録商標)DEAE(弱い陰イオン交換体官能基を含む高度の架橋を伴うヒドロキシル化メタクリレートポリマー樹脂、Tosoh Bioscience)、MACROPREP(登録商標)High Q(第四級アミン官能基に結合したメタクリレートコポリマービーズを含む強力な陰イオン交換樹脂、Bio−Rad)、MACROPREP(登録商標)DEAE(DEAE官能基に結合したメタクリレートコポリマービーズを含む弱い陰イオン交換樹脂、Bio−Rad)、UNOSPHERE(商標)Q(第四級アミン官能基に結合した親水性ポリマー担体を含む強力な陰イオン交換樹脂、Bio−Rad)、およびNUVIA(商標)Q(第四級アミン官能基に結合した表面増量剤を含む親水性ポリマー担体を含む強力な陰イオン交換樹脂、Bio−Rad)のうちの少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】FX試料のSDS−PAGEゲルを示す。活性化のための組み換え(rFX)出発物質(レーン「rFX」)、活性化ステップ後のrFXa(活性化組み換えFX)を含む試料番号1−4および1−8(レーン「rFX+rFXa #1−4」および「rFX+rFXa #1−8」)、ならびに血漿由来(pd)のFXa(レーン「pdFXa」)が示されている。電気泳動の後、クーマシー染色によりタンパク質のバンドを可視化させた。最も左のレーンには、分子量マーカーが示されている。FXおよびFXaに対応するバンドがマークされている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中開示される様々な実施形態は、FXの生成、精製、保存、および活性化の方法を含む。特定の実施形態では、FXは、外因性の薬剤を添加することなく活性化することができる。たとえば、接触期間の間FXをクロマトグラフィー物質に結合させてFXを活性化させることができる。一実施形態では、FXは、イオン交換樹脂に結合することができる。結合の後、FXを活性化させてFXaを生成し、次に樹脂から溶出することができる。
【0017】
この明細書にわたり、整数は便宜上使用されており、限定を意図するものではない。たとえば「pH4」は、限定するものではないが、3.8、3.9、4.1、4.2などの4に近いpHを含むことができる。用語「約」は、これらの固有の小さな範囲およびすべての整数からの偏差が本明細書中記載および請求される実施形態の一部と考慮されることを示すために使用されている。ある範囲が使用される場合、たとえば限定を意図するものではないが約10〜15mS/cmには、介在する値に関連するすべての端数が含まれている。
【0019】
特定の実施形態では、FXは、哺乳類のFX、たとえば野生型のFXまたはFXの保存的変異体などのFX変異体を含むことができる。保存的変異体は、例示的な参照ペプチド由来の本来のアミノ酸と類似する少なくとも1つの特性を有する別のアミノ酸もしくはアミノ酸類似体により置換された少なくとも1つのアミノ酸を有するタンパク質またはポリペプチドを表す。特性の例として、限定するものではないが、類似する大きさ、トポグラフィー、電荷、疎水性、親水性、親油性、共有結合の性質、水素結合の性質、物理化学的な特性など、またはそれらの組み合わせが挙げられる。保存的置換は、たとえば置換されたアミノ酸の物理的な特性(表1)、または本来のアミノ酸がどの程度置換を容認するか(表2)などの様々な要因により評価することができる(表1および2では、IUPACアミノ酸コードが使用されている)。本明細書中開示されるペプチドにおいてどのアミノ酸を、別のアミノ酸と置換できるかの選択は、当業者に知られている。保存的変異体は、例示的な参照タンパク質またはポリペプチドと実質的に同一の様式で機能でき、本明細書のいずれかの態様の例示的な参照タンパク質またはポリペプチドと置換することができる。
【表1】
【表2】
【0020】
様々な実施形態では、FXは、ヒトの血漿などの血漿から単離することができ、または、たとえばヒトの細胞(HEK293細胞など)もしくはベビーハムスター腎臓細胞(BHK細胞)もしくはチャイニーズハムスター卵巣(細胞)(CHO細胞)を含む哺乳類の組織培養系から組み換え技術を使用して生成することができる。たとえばヒトのFXをコードするcDNAおよび抗体物質選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドベクターを使用して、CHO細胞において組み換えFX(rFX)を発現する細胞株を発達させることができる。次に、rFX産生細胞のクローンを、限界希釈クローニングにより単離することができる。特定の実施形態は、VKORまたはフューリンなどの「ヘルパー」タンパク質を含むことができる。本明細書中開示される特定の実施形態は、昆虫細胞の発現系、たとえばバキュロウイルスに感染した昆虫細胞の発現系を含むことができる。実施形態は、酵母細胞系における組み換えFXの発現を含むことができる。一部の実施形態では、FXは、「タグ化」タンパク質、たとえばC末端にポリヒスチジンタグを含むタグ化タンパク質として発現することができる。一部の実施形態では、産生されたFXは、組織培養系の細胞上清に存在することができる。
【0022】
様々な実施形態では、FXは、沈殿、限外ろ過、クロマトグラフィーなどを含む多くの技術を使用して、哺乳類の血漿または組織培養物の細胞上清から単離または精製することができる。たとえば、FXは、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、またはゲルろ過クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法を使用して精製することができる。特定の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィー法は、強力な陰イオン交換樹脂、弱い陰イオン交換樹脂、強力な陽イオン交換樹脂、弱い陽イオン交換樹脂などを含むことができる。たとえば陰イオン交換樹脂は、Q−SEPHAROSE(登録商標)(G.E. Healthcare(ミシガン州ケントウッド)の登録商標)Fast Flowなどとすることができる。
【0023】
特定の実施形態では、精製または部分的に精製したFXは、Q−SEPHAROSE(登録商標)の陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに充填することができる。適切なクロマトグラフィーの樹脂は、樹脂がフラスコまたは容器などのレセプタクルに含まれている「バッチ」技術にも利用することもできる。
【0024】
特定の実施形態では、精製後(活性化の前)にFXを保存することができる。
【0025】
FXの乾燥保存を含む特定の実施形態では、活性化ステップの前にFXを再懸濁することができる。
【0026】
実施形態では、いずれかの適切な形態のFX、たとえば単離または精製したFXを、本明細書中記載の方法により活性化することができる。
【0028】
溶出の後に、精製または部分的に精製したFXを、クロマトグラフィー用の樹脂、たとえばイオン交換樹脂に充填することができる。一実施形態では、ローディングバッファーを使用して、陰イオン交換樹脂、たとえば強力な陰イオン交換樹脂の上に精製したFXを充填することができる。一実施形態では、この強力な陰イオン交換樹脂は、Q−SEPHAROSE(登録商標)Fast Flowである。特定の実施形態では、この充填は陰イオン交換樹脂へFXを結合させることができる。特定の実施形態では、ローディングバッファーのpHは、たとえば、6、7、8、9、10、11、またはそれ以上などとすることができる。一部の実施形態では、ローディングバッファーのpHは、たとえば6〜9、または7〜8などとすることができる。一実施形態では、ローディングバッファーのpHは、25℃で8である。
【0029】
一部の実施形態では、充填ステップは、1〜10mS/cm、または2〜8mS/cm、または3〜6mS/cmなどの伝導率を有するローディングバッファーでクロマトグラフィーの樹脂を平衡化することを含むことができる。特定の実施形態では、ローディングバッファーの伝導率は、たとえば4mS/cm、または5mS/cm、または6mS/cm、または7mS/cm、または8mS/cm、または9mS/cm、または10mS/cm、または11mS/cm、または12mS/cmなどとすることができる。一実施形態では、ローディングバッファーの伝導率は、25℃で7mS/cmである。
【0030】
特定の実施形態では、ローディングバッファーは二価の陽イオンを含むことができる。実施形態では、二価の陽イオンは、
Ca2+、
Mg2+、
Zn2+などとすることができる。特定の実施形態では、バッファー中の二価の陽イオンの濃度は、1〜50mM、または2〜40mM、または3〜30mM、または4〜20mM、または5〜15mM、または10〜12mMなどとすることができる。実施形態では、バッファー中の二価の陽イオンの濃度は、5mM、または6mM、または7mM、または8mM、または9mM、または10mM、または11mM、または12mM、または13mM、または14mM、または15mMなどとすることができる。一実施形態では、ローディングバッファーは、2.5mMの濃度の
Ca2+を含む。特定の実施形態では、目的とした樹脂の充填は、5〜25mgFX/mL樹脂、または10〜20mg/mL、または15〜18mg/mL、または14〜16mg/mLである。実施形態では、目的とした樹脂の充填は、0、1〜5mg/mL、または0.5〜2mg/mLである。実施形態では、目的とした樹脂の充填は、0.1〜1mg/mL、たとえば0.5mg/mLである。
【0031】
一部の実施形態では、充填ステップの後に、結合したFXを、pH約8の洗浄バッファーで洗浄する。この洗浄ステップは、複数のカラム容量(CV)の洗浄バッファー、たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、または10CVの洗浄バッファーを含むことができる。特定の実施形態では、洗浄バッファーの伝導率は、たとえば1mS/cm、または2mS/cm、または3mS/cm、または4mS/cm、または5mS/cm、または6mS/cm、または7mS/cm、または8mS/cm、または9mS/cmなどとすることができる。
【0032】
一実施形態では、洗浄バッファーの伝導率は、25℃で4mS/cmとすることができる。特定の実施形態では、洗浄バッファーの伝導率は、たとえば0.5mS/cm〜7mS/cm、または1mS/cm〜6mS/cm、または2mS/cm〜5mS/cm、または3mS/cm〜4mS/cmなどとすることができる。
【0033】
様々な実施形態では、洗浄バッファーは二価の陽イオンを含むことができる。一部の実施形態では、二価の陽イオンは、
Ca2+、
Mg2+、
Zn2+などとすることができる。実施形態では、洗浄バッファー中の二価の陽イオンの濃度は、0.1〜50mM、または0.2〜40mM、または0.3〜30mM、または0.4〜20mM、または0.5〜15mM、または1〜12mMなどとすることができる。実施形態では、洗浄バッファー(was buffer)中の二価の陽イオンの濃度は、0.5mM、または0.6mM、または0.7mM、または0.8mM、または0.9mM、または1mM、または1.1mM、または1.2mM、または1.3mM、または1.4mM、または1.5mMなどとすることができる。一実施形態では、洗浄バッファーは、1mMの濃度の
Ca2+を含むことができる。
【0034】
洗浄ステップの後、FXは、接触期間の間、クロマトグラフィー樹脂に結合したままとすることができる。特定の実施形態では、接触期間の間、FXは自己活性化し、FXaを生成する。一部の実施形態では、接触期間は、少なくとも1時間、または少なくとも2時間、または少なくとも3時間、または少なくとも4時間、または少なくとも5時間、または少なくとも6時間、または少なくとも7時間、または少なくとも8時間、または少なくとも9時間、または少なくとも10時間、または少なくとも11時間、または少なくとも12時間、または少なくとも13時間、または少なくとも14時間、または少なくとも15時間、または少なくとも16時間、または少なくとも17時間、または少なくとも18時間、または少なくとも19時間、または少なくとも20時間、または少なくとも21時間、または少なくとも22時間、または少なくとも23時間、または少なくとも24時間、または少なくとも25時間、または少なくとも26時間、またはそれ以上などとすることができる。特定の実施形態では、接触期間は、1〜5時間、または2〜6時間、または3〜7時間、または4〜8時間、または5〜9時間、または6〜10時間、または7〜11時間、または8〜12時間、または9〜13時間、または10〜14時間、または11〜15時間、または12〜16時間、または13〜17時間、または14〜18時間、または15〜19時間、または16〜20時間、または17〜21時間、または18〜22時間、または19〜23時間、または20〜24時間などとすることができる。
【0035】
接触期間の後、溶出バッファーを使用して、FXaをカラムから溶出することができる。特定の実施形態では、溶出バッファーは、二価の陽イオン、または対イオン、またはその両方を含むことができる。特定の実施形態では、二価の陽イオンは、
Ca2+、
Mg2+、
Zn2+などとすることができる。実施形態では、対イオンは、たとえば塩素イオン、または酢酸イオン、または硫酸イオン、またはリン酸イオンなどとすることができる。一部の実施形態では、溶出バッファー中の二価の陽イオンまたは対イオンの濃度は、経時的に変化し得、たとえばこの濃度は経時的に増加し得る。たとえば一部の実施形態では、二価の陽イオンの濃度は、一定してまたは段階的に、1から40mM、または1から30mM、または1から20mM、または1から15mM、または1から10mM、または1から9mM、または1から8mM、または1から7mM、または1から6mM、または1から5mMなどに増加し得る。一実施形態では、二価の陽イオンの濃度は、1から10mMに段階的に増加し得る。特定の実施形態では、対イオンの濃度は、一定してまたは段階的に、1から300mM、または2から280mM、または3から260mM、または4から240mM、または6から230mM、または7から220mM、または8から215mM、または9から200mM、または10から180mM、または11から160mM、または12から140mM、または13から120mM、または14から100mM、または15から80mM、または16から60mM、または17から40mM、または20から30mMなどに増加し得る。一実施形態では、対イオンの濃度は、9から200mMに段階的に増加し得る。実施形態では、溶出バッファーのpHは、たとえば6、7、8、9、10、またはそれ以上などとすることができる。一実施形態では、溶出バッファーのpHは8とすることができる。一部の実施形態では、溶出バッファーは、25℃で10〜100mS/cm、または20〜90mS/cm、または30〜80mS/cm、または40〜70mS/cm、または50〜60mS/cmなどの伝導率を有することができる。一実施形態では、溶出バッファーは、50〜60mS/cmの伝導率を有する。溶出したFXaは分画に回収することができ、FXaの存在および活性に関して試験することができる。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書中開示される方法は8℃〜30℃で行われるが、特定の開示される実施形態は、他の温度で行うことができる。一実施形態では、本明細書中開示される方法は、8℃超、たとえば22℃〜25℃、20℃〜25°C、18℃〜22℃、16℃〜25℃、20℃〜25℃などの温度で行われる。
【0037】
本明細書中開示される特定の実施形態は、クロマトグラフィーの樹脂に結合した酵素の使用を特に除外する。
【0038】
本明細書中開示される特定の実施形態は、活性化工程における外来性酵素の添加を特に除外する。
【0040】
本明細書中開示される実施形態は、活性化FX、たとえば本明細書中開示される工程により作製されたFXaを含むものである。
【0041】
実施例
以下の非限定的な実施例は、代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするためにのみ例示として提供されている。これらの実施形態は、本明細書中記載される実施形態を限定するように解釈すべきではない。
【0042】
実施例1
ヒトのFXをコードするcDNAおよび抗生物質の選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドベクターを使用して、組み換え第X因子(rFX)発現細胞株を、CHO−S細胞株において発達させた。rFX産生細胞のクローンを、限界希釈クローニングにより単離し、エンドペプチダーゼのフューリンをコードするベクターでトランスフェクトした。フューリンによりトランスフェクトしたrFXを産生する細胞を、2回クローニングした。産生株のクローンを、増殖パラメーター、ならびに外因性テナーゼおよびラッセル蛇毒(RVV)による活性化の後の高活性のrFXの生産性に基づき選択し、FX欠損血漿の凝固アッセイ(プロトロンビン時間(PT)凝固アッセイ)における外因性経路により活性化した。FXaに特異的な発色アッセイにより不純物を測定することにより、ならびに低カルボキシル化rFX、未処理のrFX形態(単鎖またはプロペプチド含有)、および分解産物に関するドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、タンパク質の質を検証した。すべての質の基準と一致したクローンを使用して、市販のPOWERCHO(商標)(Lonza Group(スイスバーゼル)の商標)培地中10LのバイオリアクターでrFXを生成し、培養槽から出る流れを回収することにより、上清を48時間にわたり定期的に回収した。
【0043】
無細胞の培養上清を、中性のpH条件および約10〜15mS/cmの伝導率(25℃)下で陰イオン交換カラム(Q−SEPHAROSE(登録商標))上に充填した。使用したカラムの充填は、約1.5mgのFX抗原/ml樹脂であった。充填が完了した後、約19mS/cm(25°C)の伝導率を有する5CVの酸性洗浄バッファー(pH=6.0)で樹脂を洗浄した。その後、10mMのカルシウムを含み、約8.0のpH(25℃)および約19mS/cmの伝導率(25°C)を有する溶出バッファーで生成物を溶出した。この生成物を5CVの容量で回収した。使用した流速はすべてのステップで50cm/h超であり、工程の温度は2〜8℃であった。
【0044】
精製したFX調製物を、約7mS/cmの伝導率(25℃)および約8のpH(25℃)の強力な陰イオン交換カラム(Q−SEPHAROSE(登録商標)FFまたはPOROS(登録商標)[Life Technologies(ニューヨーク州グランド・アイランド)の登録商標]50HQ)の上へ、20時間にわたり充填した。目的としたカラムの充填は、2〜10mgFX/ml樹脂の範囲であった。
【0045】
充填の間、カルシウム濃度は約2.5mMであり、NaClの濃度は40mMであった。充填の後、カラムを、約4mS/cmの伝導率(25°C)、pH8.0、および1mMのカルシウム濃度を有する5CVの洗浄バッファーで洗浄した。約24mS/cm(25°C)の伝導率およびpH8で、溶出バッファー中1から10mMへの
Ca2+の濃度および9から200mMへのNaClの濃度の同時段階増加を使用して、溶出を行った。すべてのステップを、樹脂のベッド高約10cmで、37cm/hの線形流速で行った。活性化の温度は室温(20〜25℃)であった。
【0046】
充填および溶出物の集合分画に解析試験を行った。表3では、カラムに充填したrFXの体積および量、ならびにカラムにおける活性化時間が列挙されている。活性化ステップからの各試料由来の生成物のすべてを、RVVの活性化を伴うFX発色性アッセイにより解析して、試料中の溶出したFX+FXaの総量を測定し、FXaに特異的な発色アッセイによりFXaを選択的に測定した。活性化の後に存在する総FXのパーセントでのFXaの含有量を計算した。これもまた表3に列挙されている。ワンステップ精製後および活性化後の試料を、SDS−PAGEによっても解析した。電気泳動のパターンは
図1に示されている。
【0047】
結論として、FXのFXaへの活性化は、この手法により両方の試料に関して成功し、FXaの収率は、両方とも、溶出した総FXのうち約5%のFXaであった。試料番号1−8を作製するために、試料番号1−4よりも5倍多くのrFXを充填したが、溶出物中のFXおよびFXaの絶対量および相対量は、両試料で類似する量であった。血漿由来FXaα由来の重鎖と同様の大きさのバンドを、活性化した両試料の電気泳動図で見ることができる。FXaβに対応するバンドと比較されたこのバンドは、主要なFXa形態として存在したと考えることができる。
【表3】
【0048】
表3:FXの活性化により作製された2つの試料からのデータ:ELISAおよびPT凝固アッセイにより測定された抗原および活性に基づき充填されたFXの量、ならびに活性化カラムでの接触期間が示されている。また、溶出物中測定された総FX/FXa、およびFXaのみの量も示されている。FXaの収率を、総FX/FXaのパーセントで計算した。
【0049】
図1は、FX試料のSDS−PAGEを示す:活性化のためのrFX出発物質(レーン「rFX」)、活性化ステップ後のrFXaを含む試料番号1−4および1−8(レーン「rFX+rFXa #1−4」および「rFX+rFXa #1−8」)、ならびに血漿由来(pd)のFXa(レーン「pdFXa」)が示されている。電気泳動の後、クーマシー染色によりタンパク質のバンドを可視化させた。最も左のレーンには、分子量マーカーが示されている。FXおよびFXaに対応するバンドがマークされている。
【0050】
実施例2
ヒトFXをコードするcDNAおよび抗生物質選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドベクターを使用して、組み換え第X因子(rFX)を発現する細胞株をBHK細胞株で発達させる。rFX産生細胞のクローンを、限界希釈クローニングにより単離し、エンドペプチダーゼのフューリンをコードするベクターでトランスフェクトする。フューリンによりトランスフェクトしたrFXを産生する細胞を、2回クローニングする。産生株のクローンを、増殖パラメーターならびに外因性テナーゼおよびRVVによる活性化の後の高活性のrFXの生産性に基づき選択し、FX欠損血漿の凝固アッセイ(プロトロンビン時間(PT)凝固アッセイ)の外因性経路により活性化する。FXaに特異的な発色アッセイにより不純物を測定することによって、ならびに低カルボキシル化rFX、未処理のrFX形態(単鎖またはプロペプチド含有)、および分解産物に関するSDS−PAGEにより、タンパク質の質を検証する。すべての質の基準と一致したクローンを使用して、市販の培地中100LのバイオリアクターでrFXを生成し、バイオリアクターから出る流れを回収することにより、72時間にわたり定期的に上清の収集を行う。
【0051】
培養上清を、pH5.0および約35mS/cmの伝導率(25℃)で疎水性相互作用カラム(TOYOPEARL(登録商標)SuperButyl−550)上に充填する。使用したカラムの充填は、約1.5mgのFX抗原/ml樹脂である。充填が完了した後、樹脂を、約35mS/cmの伝導率(25℃)の5CVの洗浄バッファー(pH=5.0)を用いて洗浄する。その後、10mMのカルシウムを含み、約8.0のpH(25℃)および約10mS/cmの伝導率(25℃)を有する溶出バッファーを用いてFXを溶出する。この生成物を8CVの容量で回収する。
【0052】
精製したFX調製物を、約7mS/cmの伝導率(25℃)および約8のpH(25℃)で強力な陰イオンカラム(Q−SEPHAROSE(登録商標)FFまたはPOROS(登録商標)50HQ)上に充填する。目的とするカラムの充填は、2〜10mgFX/ml樹脂の範囲である。
【0053】
充填の間、カルシウムの濃度は約2.5mMである。充填の後、約6mS/cmの伝導率(25℃)、pH8.2および1mMのカルシウム濃度を伴う7CVの洗浄バッファーを用いてカラムを洗浄する。FXを10時間樹脂と接触させた後に溶出を行う。
【0054】
1から10mMへの溶出バッファー中の
Ca2+の濃度の同時の段階的な増加を使用して溶出を行い、NaClの対イオンの濃度は、約20mS/cmの伝導率(25℃)およびpH8で9から165mMに増加する。すべてのステップを、樹脂のベッド高約15cmで50cm/hの線形流速で行う。活性化の温度は室温(20〜25℃)である。
【0055】
実施例3
ヒトFXをコードするcDNAおよび抗生物質選択のためのアンピシリン耐性遺伝子を有するプラスミドベクターを使用して、293細胞株から組み換え第X因子(rFX)を発現する細胞株を発達させる。rFX産生細胞株を、限界希釈クローニングにより単離し、エンドペプチダーゼのフューリンをコードするベクターを用いてトランスフェクトする。フューリンでトランスフェクトしたrFXを産生する細胞を2回クローニングする。産生株のクローンを、標準的な増殖パラメーター、ならびに外因性テナーゼおよびRVVによる活性化後の高活性のrFXの生産性に基づき選択し、FX欠損血漿の凝固アッセイ(プロトロンビン時間(PT)凝固アッセイ)における外因性経路により活性化する。FXaに特異的な発色アッセイにより不純物を測定することにより、ならびに低カルボキシル化rFX、未処理のrFX形態(単鎖またはプロペプチド含有)、および分解産物に関するSDS−PAGEにより、タンパク質の質を検証する。すべての質の基準と一致するクローンを使用して、市販の培地中、50LのバイオリアクターでrFXを生成し、バイオリアクターから流れを回収することによって、36時間にわたり定期的に上清を回収する。
【0056】
無細胞の培養物の上清を、5.0のpHおよび約35mS/cmの伝導率(25℃)で「バッチ」技術を使用して、疎水性樹脂(TOYOPEARL(登録商標)[Tosoh Bioscience(ベルギー)の登録商標]SuperButyl−550)上に充填する。使用するタンパク質の充填は、約1.5mgのFXの抗原/ml樹脂である。充填が完了した後、樹脂を、約35mS/cmの伝導率(25℃)の洗浄バッファー(pH=5.0)を使用して洗浄する。その後、10mMのカルシウムを含み、約8.0のpH(25℃)および約10mS/cmの伝導率(25℃)を有する溶出バッファーで、樹脂からFXを溶出する。
【0057】
次に、回収したFXを、記載される比率での以下の成分:100μgのFX/30mgのグリシン/20mgのNaCl/10mgのHEPESと共に凍結乾燥する。
【0058】
−70℃で2カ月間保存した後、FXを再構成し、約8mS/cmの伝導率(25℃)および約8.1のpH(25℃)での強力な陰イオン交換カラム(Q−SEPHAROSE(登録商標)FFまたはPOROS(登録商標)50HQ)上に充填する。目的とするカラムの充填は、2〜10mgのFX/ml樹脂の範囲である。
【0059】
充填の間、カルシウムの濃度は約2.5mMである。FXを樹脂と16時間接触させた後、溶出を行う。
【0060】
溶出を、2.5から20mMへの溶出バッファー中の
Ca2+濃度の同時の段階的な増加を使用して行い、NaCl対イオンの濃度は、約30mS/cmの伝導率(25℃)およびpH8.5で、9から250mMに増加する。すべてのステップを、樹脂のベッド高約25cmで、20cm/hの線形流速で行う。活性化の温度は室温である(20〜25℃)。
【0061】
最後に、本明細書の態様は特定の実施形態を表すように強調されているが、当業者が、これら開示された実施形態が単に本明細書中開示される対象物の原則を表すことを容易に認識していることが、理解されている。よって、開示される対象物は、本明細書中記載される特定の方法、プロトコル、および/または試薬などに全く限定されないことを理解すべきである。同様に、開示される対象物の様々な修正もしくは変更、または代替的な構成が、本明細書の趣旨から逸脱することなく本明細書中の教示にしたがい作製できる。最後に、本明細書中使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本開示の範囲を限定するようには意図されてはいない。よって本開示の実施形態は、示され記載される実施形態に正確に限定されるものではない。
【0062】
本明細書中記載される方法および装置を行うため本発明者に知られているベストモードを含む特定の実施形態が、本明細書中に記載されている。当然、これら記載される実施形態の変更は上記の説明を読むことにより当業者に明白である。よってこの開示は、該当する法律によって認められる限り本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される対象物のすべての修正および均等物を含む。さらに、それらの可能なすべての変形における上述の実施形態のいずれかの組み合わせは、本明細書中特段他の記載がなく、または文脈と明確に矛盾しない限り、本開示に含まれている。
【0063】
本開示の代替的な実施形態、要素、またはステップのグループ分けは、限定するよう解釈すべきではない。各グループのメンバーは、個々に、または本明細書中開示される他のグループのメンバーとのいずれかの組み合わせで、記載かつ請求されてもよい。あるグループの中の1つまたは複数のメンバーは、簡便性および/または特許適格性のため、グループに含まれてもよく、グループから削除されてもよいことが予想される。このようないずれかの包有または削除が起こる場合、明細書は修正された群を含むとされ、よって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記載される説明を満たすものである。
【0064】
他の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴、項目、量、パラメーター、特性、用語などを表すすべての数は、用語「約」によりすべての場合で修正されると理解されている。本明細書中使用されるように、用語「約」は、定量化された特徴、項目、量、パラメーター、特性、または用語が、記載される特徴、項目、量、パラメーター、特性、または用語の値の上下±10%の範囲を含むことを意味する。よって、特段他の記載がない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値のパラメーターは、変動し得る近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲と等価の教義の使用を限定する試みとしてではなく、各数値の記載は、少なくとも、報告される有意な桁の数の観点から、および通常の丸めの技術を使用することにより、解釈されるべきである。開示の広い範囲に記載される数値の範囲および値が近似値であるにも関わらず、特定の実施例に記載される数値の範囲および値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれかの数値の範囲または値は、本来、それぞれの試験測定値で見いだされる標準偏差からもたらされる特定の誤差を必然的に含む。本明細書中の値の数値の範囲の記載は、単に、当該範囲内の数値をそれぞれ分離するように個別に表す簡潔な方法として作用するよう意図されている。本明細書中特段他の記載がない限り、数値の範囲のそれぞれ個々の値は、本明細書中個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0065】
本開示を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「a」、「an」、「the」、および類似の記載は、本明細書中特段他の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈される。本明細書中記載されるすべての方法は、本明細書中特段他の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中提供されるいずれかおよびすべての例、または例示的な言語(たとえば「など」)の使用は、単に、本開示を良好に例示するように意図されており、請求される範囲に限定を課すものではない。本明細書中の用語は、本明細書中開示される実施形態の実行に重要ないずれかの請求されていない要素を示すように解釈されるものではない。