(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伝動シャフト領域TSR(132)に沿って設けられた少なくとも1つの拘束点が、伝動シャフト領域TSR(132)の先端の半分に、または、伝動シャフト領域TSR(132)の先端において伝動シャフト領域TSR(132)の全長の10%に設けられ、伝動シャフト領域TSR(132)に沿って設けられた少なくとも1つの他の拘束点が、伝動シャフト領域TSR(132)の基端の半分に、または、伝動シャフト領域TSR(132)の基端において伝動シャフト領域TSR(132)の全長の10%に設けられる請求項1記載の機械的伝動システムMTS(100)。
各縦部材ガイドが、拘束点において架空チューブ(120)上の実質的に一定の円周位置に、前記複数の縦部材LM(110)を保持するようにさらに構成された請求項1〜3のいずれか1つに記載の機械的伝動システムMTS(100)。
伝動可撓性先端部TBDP(130)に少なくとも2つの縦部材ガイド(300、305、350)を、伝動可撓性基端部TBPP(134)に少なくとも2つの縦部材ガイドを備える請求項1又は4のいずれか1つに記載の機械的伝動システムMTS(100)。
縦部材LMの平面断面は、長方形の、文字「I」の、又は円弧状の輪郭を有し、場合によっては、それらの輪郭の1つ以上の隅は尖っているか、又は丸みを有する請求項1〜10のいずれか1つに記載の機械的伝動システムMTS(100)。
可撓性先端部BDP(530)と可撓性基端部BPP(534)は、少なくとも部分的に湾曲可能である請求項1〜11のいずれか1つに記載の機械的伝動システムMTS(100)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、直線の形態で分解された本発明の機械的伝動システム(MTS)の等角投影図を示す。
【
図2】
図2は、伝動可撓性先端部(TBDP)が湾曲し、伝動シャフト領域(TSR)が同じ直線形態のままである、
図1のMTSを示す。
【
図3】
図3は、
図1の位置112における縦部材(LM)の平面横断面である平面断面の2つの交差軸を示し、その断面は「I」形の輪郭を有する。
【
図4】
図4は、複数の固定LMガイドと複数の関節式につながれたLMガイドを備えた本発明のMTSの外観を示す。
【
図5】
図5は、TBPPが湾曲によって作動され、その動きがTBDPへ伝達された、
図4のMTSを示す。
【
図6】
図6は、LMの半円形の横断面(つまり平面断面)を示す。
【
図7】
図7は、LMの長方形の横断面(つまり平面断面)を示す。
【
図8】
図8は、LMの「I」の横断面(つまり平面断面)を示す。
【
図9】
図9は、LMの角に丸みのある長方形の横断面(つまり平面断面)示す。
【
図10】
図10は、LMの競争用トラックの横断面(つまり平面断面)示す。
【
図11】
図11は、縦部材の各々が円形の平面断面を有する、本発明でない機械的伝動手段の側面図を示す。
【
図12】
図12は、LMの各々が「I」形の平面断面を有する、本発明のMTSの側面図を示す。
【
図13】
図13は、縦部材の各々が円形の平面断面を有し、縦部材の望ましくない捩りを示す、本発明でない機械的伝動手段の等角投影図を示す。
【
図14】
図14は、LMの各々が「I」形の平面断面を有し、TBDPにおいてLMの捩りが著しく少ないことを示す、この発明の
図12のMTSの等角投影図を示す。
【
図16】
図16は、MTSのTBDPに設けられたLMの異なる湾曲半径を示すMTSの側面図である。
【
図17】
図17は、ディスク形状のLMガイドの平面図である。
【
図18】
図18は、関節式につながれるLMガイドであるLMガイドの側面図である。
【
図19】
図19は、本発明のMTSを組み込んだ操縦器具の等角投影図である。
【
図20】
図20は、複数の固定LMガイドと関節式につながれたLMガイドとによって半径位置に維持される4つのLMを備えた本発明のMTS100の等角投影図である。
【
図21A】
図21Aは、円形輪郭の縦部材を備える、本発明でない機械的伝動手段の可撓性先端部を示す。
【
図21B】
図21Bは、望ましくない固定したらせん状の運動上チェーン状態にある、本発明でない
図21Aの機械的伝動手段の可撓性先端部を示す。
【
図22】
図22は、LMガイドの通路とその中にあるLMの2つの代表的な方位を示す。
図22AとBは、LMガイドの通路の中にあるLMの2つの代表的な方位を示す。
【
図23】
図23は、架空チューブに沿って本質的に固定された相互の回転配列における分離した拘束点を示す。
【0026】
[発明の詳細な説明]
この発明において用いられる方法を説明する前に理解されるべきことであるが、この発明は、説明される特定の方法、構成要素又は装置に限定されない。それは、そのような方法、構成要素または装置は、勿論、変化してもよいからである。さらにまた、理解されるべきことであるが、ここで用いられる専門用語は限定することを意図するものではない。それは、この発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみによって限定されるからである。
【0027】
ここで用いられるように、単数形の語は「1つの(a、an)」を形成し、「その(the)」は、文脈が明確に別のものを指示しない場合、単数と複数の指示対象を含む。
【0028】
ここに用いられる「備える(comprising、comprises、comprised of)」は、「含む(including、includes、containing、contains)」と同義語であり、包括的又は非限定的で、追加される記載のない部材や要素や方法工程を除外しない。「備える(comprising、comprises、comprised of)」は「からまる(consisting of)」も含む。
【0029】
端点による数値範囲の記述は、記述される端点と同様に、各範囲内に含まれるすべての数と端数を含む。
【0030】
パラメータや量や時間的継続期間などのような測定可能な値を引用するときに、ここで用いられる用語「約」は、開示された発明においてその変動が実施に適当である限り、特定の値から土10%以下、好ましくは土5%以下、より好ましくは土1%以下、さらにより好ましくは土0.1%以下の変動を含むことを意味する。理解されるべきことであるが、修飾語「約」が引用する値は、それ自体も明確に、かつ、好んで開示される。
【0031】
他に定義されない場合、この発明の開示に使用される、技術的、かつ、科学的用語を含むすべての用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解される意味を有する。この明細書で使用される用語の定義は、この発明の開示をさらなるガイダンスによってさらに評価するために含まれる。ここの引用される全ての出版物は引用によってここに組み込まれる。ここに引用されるすべての米国特許および特許出願は、引用によって、図面を含んで完全に、ここに組み込まれる。
【0032】
この明細書を通して「1つの実施形態」への言及は、実施形態に関連して述べられる特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも実施形態に含まれることを意味する。従ってこの明細書を通じて様々な箇所における「或る実施形態において」や「実施形態において」という句の表現は、必ずしも同じ実施形態をすべて引用する必要はないが、引用してもよい。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、この開示から当業者に明らかなように、1つ以上の実施形態において適当な方法で組合わされてもよい。さらに、ここに記載されるいくつかの実施形態は、ほかの実施形態に含まれるほかの特徴ではないいくつかの特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者に理解されるように、この発明の範囲内にあり、他の実施形態を形成することを意味する。例えば、次の特許請求の範囲において、いずれの実施形態も、どのような組合せにおいても使用できる。
【0033】
「先端」および「基端」という用語は、この明細書を通じて使用され、装置の外科医側の方が(基端)、離れる方が(先端)を意味することを当該技術分野で一般的に理解された用語である。従って、「基端」は外科医側に近く、従って患者側から離れていることを意味する。逆に「先端」は患者側に近く、従って外科医側から離れていることを意味する。
【0034】
この発明は、操縦可能器具用の機械的伝動システム(MTS)に関する。操縦可能器具は、好ましくは縦の線に沿っており、一方向により長いことを意味する。線上(直線)の操縦可能器具はこの発明の範囲内であるが操縦可能器具が直線上であることを必ずしも意味しない。操縦可能器具は、直線状又は湾曲状で例えば、C又はS字形のシャフト領域を有してもよい。
【0035】
典型的には、操縦可能器具は基端と先端とを有し、可撓性先端部(BDP)を備える。可撓性先端部(BDP)は手首(wrist)として知られることもあり、基端におけるMTSの作動に応じて動く。基端におけるMTSの作動はBDPにおける動きの反応を引き起こす。操縦可能器具はまた、シャフト領域(SR)を備え、シャフト領域(SR)は本質的に剛性又は半剛性であってもよく、その一端がBDPを備える。シャフト領域は、縦の線に沿っており、一方向に長いことを意味する。線上(直線)のシャフトはこの発明の範囲内であるが、シャフト領域が直線状であることを必ずしも意味しない。シャフト領域は、直線状または曲線状で、例えば、C又はS字形を有してもよい。BDPを制御するために、従部材(LMS)として知られる操縦ワイヤがMTSに使用される。それらは、引く又は押すことによってBDPを制御する。MTSは複数の従部材(LM)を備え、その各々は基端と先端とを有し、架空チューブの回りに縦方向に配列される。LMの少なくとも1つは、その平面断面が2つの交差軸に関して異方性断面二次モーメントを有する領域を含む。BDPの先端(先端の終端)は、どの方向にも等しい容易さで動くことができる、つまり特異性がない。動きの応答は、作動の程度に比例する。
【0036】
シャフト領域(SR)は、好ましくは本質的に剛性又は半剛性を有するか、又は可撓性で、剛性又は半剛性を有する外部チューブ又は外側チューブと協同するときに、剛性又は半剛性になってもよい。シャフト領域はBDPに隣接する。シャフト領域はBDPに接触してもよい。操縦可能器具は、操縦可能器具の基端に可撓性基端部(BPP)をさらに備えてもよい。BPPはシャフト領域に隣接する、つまりシャフト領域はBDPとBPPとの間に設けられる。シャフト領域はBPPに接触してもよい。BPPの動きは基端部においてMTSを作動させ、BPPに作動反応を引き起こす。BPPの異なる半径方向への異なる湾曲度の動きは、BDPへMTSを用いて伝達され、BDPの半径方向および/又はBDPの湾曲などにおける対応する変化に帰着する。操縦可能器具は、MTSに、例えば2つ以上のLM又は各および全LMに直接接続された電気機械装置を用いて基端で作動してもよい。典型的には、シャフト領域におけるLMが作動される。そのような場合には、器具はBPPを欠いてもよい。また、ロボットのような制御は、BPPを作動させる電気機械的装置を使用することによって実現することができる。電気機械的装置は、例えば、サーボモータであってもよい。電気機械的装置に結合することによって、外科手術ロボットへの直接的な一体化が助長される。
【0037】
BDPの動作反応は、
−シャフト領域に平行な平面内の湾曲の程度、シャフト領域の中心縦軸との接触の程度、およびシャフト領域からの延びの程度における変化、
−シャフト領域に直交する平面内の湾曲方向、シャフト領域の中心縦軸との接触方向、およびシャフト領域からの延びの方向の変化
であってもよい。
【0038】
操縦可能器具の動作の組合せは、BDPの湾曲姿勢にある間に、BDPへその先端において伝達されるシャフト領域の回転を、通常は助長する。しかしながら、発明者らは、BDPの先端はシャフト領域に同期して回転しないことを見出した。基端に加えられシャフト領域を介して伝達されるトルクが、とくに湾曲姿勢にあるときに、DBPの先端の回転につながらない「デッドゾーン」、バックラッシュ又は遊びがある。
【0039】
操縦可能器具は、例えば、腹腔鏡装置又は血管内カテーテルのような外科手術装置であってもよい。この発明は、血管内用途、外科手術器具、ロボット式遠隔操作の医療ロボット又は小型外科手術器具および工業的用途のような、しかしそれに限定されない関節式につながれた器具に使用できる。
【0040】
BDPは全方向に、つまり、いずれの半径方向にも動くように構成されている。BDPは、いずれの半径方向(シャフト領域の中心縦軸(A-A’)に対して約360°)にも動くように構成されることが好ましい。BDPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A-A’)に接触する少なくとも2つ(例えば、3、4、5、6、7、8又はそれ以上)の異なる平面内を移動するように構成されることが好ましい。好ましくは、BDPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A-A’)に接触する無数の異なる平面内を移動するように構成される。BDPの湾曲は、典型的には、少なくとも部分的には、曲線である、つまり、BDPは、曲がることができる。曲りは、当該技術分野で通常的に理解されるように、角ばった湾曲よりむしろ円滑な湾曲になることを意味する。曲りは典型的には、長さの少なくとも一部について、例えばヒンジ継手における、一定の勾配又は勾配の不連続で単一の変化を典型的に示す角張った湾曲に比べて、連続的に変化する(例えば、増大又は減少する)勾配を備える。BPPは直線の形態に偏ってもよいし、作動によって湾曲が引き起こされてもよいことが理解される。また、BDPは曲線に偏ってもよいし、作動によって湾曲が追加又は削減されてもよい。
【0041】
同様に、BPPは、存在する場合、全方向に、つまり、いずれの半径方向にも動くように構成されている。BPPは、いずれの半径方向(シャフト領域の中心縦軸(A-A’)に対して約360°)にも動くように構成されていることが好ましい。MTSは好ましくは、少なくとも8つの異なる方向にBPPを動かすように構成される。BPPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A-A’)に接触する少なくとも2つ(例えば、3、4、5、6、7、8又はそれ以上)の異なる平面内を移動するように構成されることが好ましい。好ましくは、BPPは、シャフト領域に平行にもうけられ、シャフト領域の中心縦軸に接触する無数の異なる平面内を移動するように構成される。BPPの湾曲は、典型的には、少なくとも部分的には、曲線である、つまり、BDPは曲がることができる。曲りによって当該技術分野で通常的に理解されるように、角ばった湾曲よりむしろ円滑な湾曲になることを意味する。曲りは典型的には、長さの少なくとも一部について、例えばヒンジ継手における、一定の勾配又は勾配の不連続で単一の変化を示す角張った湾曲に比べて、連続的に変化する(例えば、増大又は減少する)勾配を備える。BPPは直線の形態に偏ってもよいし、作動によって湾曲が引き起こされてもよいことが理解される。また、BPPは曲線に偏ってもよいし、作動によって湾曲が追加又は削減されてもよい。
【0042】
操縦可能器具は、グリップ、プライヤ、切断ハサミ等のような端部作動体を備えてもよい。その端部作動体は操縦可能器具の先端に備えられる。
【0043】
さらに、湾曲状態においてでさえ、器具の先端をそれ自体の軸の周りに、つまり軸方向に回転させることが可能であってもよい。従ってMTSはBDP(又はTBDP)の先端がBPP(又はTBPP)の補足的な回転によって湾曲位置で軸方向に回転可能である。操縦可能器具はBDPの先端に端部作動体を備えてもよい。その場合、MTSは、端部作動体がBDPに対して回転可能に固定され、BDPが回転姿勢にあるとき、端部作動体がBPPの補足的回転によって回転可能であるように構成される。端部作動体は、回転調整が可能で、BDPに端部作動体を回転可能に固定するように構成されたロック可能要素によって、BDPに対して回転可能に固定されてもよい。
【0044】
MTSは、ここに述べるように、基端と先端を有する。先端は、伝動可撓性先端部(TBDP)を備え、TBDPは基端におけるMTSの作動に応じて動き、操縦可能器具のBDPを動かす。TBDPはBDPに位置が対応する。基端は伝動可撓性基端部(TBPP)を備えてもよい。操縦可能器具のBPPの使用者による動きは、TBPPへ伝達される。TBDPはBPPに位置が対応する。TBPPは基端においてMTSを作動し、操縦可能器具のBDPへ伝達されるTBDPの動作の応答を誘発する。
【0045】
MTSはまた、操縦可能器具の対応するシャフト領域内に設けられる伝動シャフト領域(TSR)を備える。TSRは本質的に剛性又は半剛性であることが好ましいが、剛性又は半剛性の外側チューブ又は外部チューブと協同するときに剛性又は半剛性になってもよい。
【0046】
MTSは、MTSに、例えば2以上のLM又は各LMおよび全LMに、直接接続された電気機械装置を用いて基端において作動させてもよい。典型的には、LMシャフト領域におけるLMが作動される。その場合、器具は、TBPPを持っていなくてもよい。また、ロボット的な制御は、BPPを作動させる電気機械装置を用いて実現できる。電気機械装置は、例えばサーボモータであってもよい。これによって、外科手術ロボットへの直接的な一体化が助長される。
【0047】
MTS は好ましくは、BDPを全方向に動かすように構成される。MTSは好ましくは、BDPをいずれの方向(TSRの中心縦軸(A’-A)に関して約360°)にも、動かすように構成される。MTSは好ましくは、少なくとも8つの異なる方向にBDPを動かすように構成される。MTSは、TSRに平行に設けられTSRの中心縦軸(A’-A)に接触する少なくとも2つ(例えば、3、4、5、6、7、8又はそれ以上)の異なる平面内にBDPを動かすように形成されてもよい。好ましくは、MTSは、伝動シャフト領域に平行に設けられ、伝動シャフト領域の中心縦軸に接触する無数の異なる平面内でBDPを動かすように構成される。
【0048】
TBDPは全方向に、つまり、いずれの半径方向にも動くように構成されている。TBDPは、いずれの半径方向(シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に対して約360°)にも動くように構成されることが好ましい。TBDPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に接触する少なくとも2つ(例えば、3、4、5、6、7、8又はそれ以上)の異なる平面内を移動するように構成されることが好ましい。好ましくは、TBDPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に接触する無数の異なる平面内を移動するように構成される。TBDPの湾曲は、典型的には、少なくとも部分的には、曲線である、つまり、TBDPは、曲がることができる。曲りによって、当該技術分野で通常的に理解されるように、角ばった湾曲よりむしろ円滑な湾曲になることを意味する。曲りは典型的には、長さの少なくとも一部について、例えばヒンジ継手における、一定の勾配又は勾配の不連続で単一の変化を示す角張った湾曲に比べて、連続的に変化する(例えば、増大又は減少する)勾配を備える。TBDPは直線の形態に偏ってもよいし、作動によって湾曲が引き起こされてもよいことが理解される。また、TBDPは曲線に偏ってもよいし、作動によって湾曲が追加又は削減されてもよい。
【0049】
TBPPは全方向に、つまり、いずれの半径方向にも動くように構成されている。TBPPは、いずれの半径方向(シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に対して約360°)にも動くように構成されることが好ましい。TBPPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に接触する少なくとも2つ(例えば、3、4、5、6、7、8又はそれ以上)の異なる平面内を移動するように構成されることが好ましい。好ましくは、TBPPは、シャフト領域に平行に設けられ、シャフト領域の中心縦軸(A’-A)に接触する無数の異なる平面内を移動するように構成される。TBPPの湾曲は、典型的には、少なくとも部分的には、曲線である、つまり、TBPPは、曲がることができる。曲りによって、当該技術分野で通常的に理解されるように、角ばった湾曲よりむしろ円滑な湾曲になることを意味する。曲りは典型的には、長さの少なくとも一部について、例えばヒンジ継手における、一定の勾配又は勾配の不連続で単一の変化を示す角張った湾曲に比べて、連続的に変化する(例えば、増大又は減少する)勾配を備える。TBPPは直線の形態に偏ってもよいし、作動によって湾曲が引き起こされてもよいことが理解される。また、TBPPは曲線に偏ってもよいし、作動によって湾曲が追加又は削減されてもよい。
【0050】
さらに、湾曲状態においてでさえ、それ自体の軸の周りに器具の先端を回転することが、可能であってもよい。MTSはTBDPの先端に端部作動体を備えてもよいが、その場合には、MTSは端部作動体がTBDPに対して回転可能に固定されるように構成され、端部作動体はTBDPが湾曲姿勢にあるときにTBPPの補足的な回転により回転可能である。端部作動体は、TBDPの回転調整ができてTBDPに対して端部作動体を回転可能に固定するように構成されたロック可能要素によってTBDPに対して回転可能に固定されてもよい。
【0051】
MTS は、各々が基端と先端とを有しかつ、架空チューブの周りに縦方向に配列された複数の縦部材(LM)を備える。架空チューブは、その周りにLMが位置決めされた幾何学的形状である。好ましくは、それは縦長である。それは、好ましくは、円形の横断面を有し、横断面は本質的に縦軸に直交している。架空チューブの中心軸(A’-A)は、好ましくは、操縦可能器具の中心軸と同軸である。架空チューブは好ましくは、円筒形である。架空チューブは、対応する姿勢において、操縦可能器具の直径より小さい直径を有する。
【0052】
ここに述べるLMは、基端と先端とを有する。先端はMTSのTBDPに設けられるLM可撓性先端部(LMBDP)を備える。LMは、MTSの対応するTSRに設けられるLMシャフト領域(LMSR)を備える。LMSRはLMBDPの近くに隣接する。基端はMTSのTBPPに設けられるLM可撓性基端部を備えてもよい。
【0053】
LMの先端は、MTSにおいて、お互いに固定された関係に維持される。LMの先端が、さらに好ましくは、LMの先端の終端が、先端LM固定要素に接続されてもよい。好ましくは、先端LM固定要素がそれらの各演習位置でLMを維持する、例えば、それはLMの先端の終端を環状の輪の中に維持してもよい。先端LM固定要素は、例えば、MTSの先端に設けられたディスク又は環状体であってもよい。
【0054】
同様に、LMの基端、さらに好ましくはLMの基端の終端は、MTSにおいて互いに固定された関係で維持されてもよい。LMの基端は基端LM固定要素に接続されてもよい。好ましくは、基端LM固定要素が、LMをそれらの各円周位置で維持する、例えば、それはLMの基端の終端を環状の輪の中に維持してもよい。基端LM固定要素はMTSの基端に設けられたディスク又は環状体であってもよい。
【0055】
LMは、LM固定要素によって動きが制限される範囲まで、互いに摺動可能である。MTSの基端において押すおよび引くという力の印加は、LMSRに沿ってLMBDPまでLMを介して伝達され、例えば、前術の固定要素を引く又は押すことによるTBPPの動きを引き起こす。MTSにおけるLMの数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上であってもよい。全方向操縦のためには、少なくとも4さらに好ましくは少なくとも6又は8のLMが存在することが好ましい。
【0056】
LMの寸法は、操縦可能器具の直径と長さおよび利用されるLMの数に依存する。一般的には、LMは、一方向の厚みが40μm、50μm、60μm、80μm、100μm、200μm、400μm、又は500μm、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲にある値を有してもよい。LMは幅が80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μm、1200μm、1300μm、1400μm、又は1500μm、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲にある値を有してもよい。当業者であれば、MTSの直径によって適当な厚さと幅を選ぶ方法を理解するであろう。10mmの直径のMTSに対しては、LMBDP、LMSR、場合によってはLMBPPにおいて、好ましい厚さは、280μm〜320μm、好ましくは約300μm、そして好ましい幅は480μm〜520μm、好ましくは約500μmである。MTSの長さは、操縦可能器具の長さとその用途に依存する。上記の好ましい寸法は、長さが37〜40cmのMTSに適用する。
【0057】
LMは適当な伸張性を有し、当業者によって推定可能な適当な材料から作られる。その例は、ステンレス鋼、ニチノール、ベータチタニウム、バネ鋼又はポリマーを含む。
【0058】
LMは材料の単一のストランド、例えば、ステンレス鋼の単一ストリップから作られてもよい。また、それは縦並びに接続された材料の複数のストランドから作られてもよい。
【0059】
LMは架空チューブの周りに縦に配置される。LMは架空チューブの周りに等しく配分されてもよく、例えば、隣接するLM間の距離は本質的に同じであってもよい。LMは架空チューブの周りに対称的に配分されてもよく、例えば架空チューブの縦断面について対称の平面が存在してもよい。LMは架空チューブの周りに不均等に配分されてもよく、例えば、隣接するLMの少なくとも2対面の距離が異なってもよい。
【0060】
LMは好ましくは、本質的にMTSおよび操縦可能器具の長さに沿って設けられる。それは、TBDPをわたり、TSRと、存在する場合のTBPPとの中に延びる。
【0061】
LMは、それらの縦軸が互いに平行になるように配置されることが好ましい。LMは好ましくは、それらの縦軸が架空チューブの縦軸(A-A’)に平行になるように配置される。LMは好ましくは、それらの縦軸が縦方向の操縦可能器具の縦軸に平行になるように配置される。
【0062】
LMの少なくとも1つの平面断面は、異方性断面二次モーメントを示す。平面断面は、典型的には、LMの縦中心軸(z)に直交する横断面である(
図3参照)。
異方性は、平面断面の重心で交差する互いに直交する軸(x、y)に関する。重心は、平面断面特に平面断面の外輪郭の幾何学的中心であると理解される。平面断面が本質的に長方形の輪郭を有するとき、x、y軸は長方形の直線の辺に平行に配列され、x軸に関する断面二次モーメントが最大になるようにx軸が位置決めされる。平面断面が不規則な輪郭を有するとき、断面二次モーメントがx軸に関して最大になるように、x軸が位置決めされる。LMの平面断面の重心を横切るx軸(I
x)とy軸(I
y)に関する断面二次モーメントの比(Ir)が、1より大きいか、約1.1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲の値であることが好ましい。一般的なガイダンスとしては、発明者らが見出した侵襲の外科手術器具のためには、Irは1.1と4との間、好ましくは2と3との間であり、それによって、回転力に抵抗するが容易に湾曲に従順で、なおかつ、望ましくないらせんの運動学上チェーン状態を避ける安定したTBDPが提供される。
【0063】
少なくとも1つの平面断面はLMBDPの中にあってもよい。LMBDPは、多数の平面断面において、好ましくは、LMBDPの長さに沿った大多数の、又はほぼすべての位置において、異方性の特性を示すことが好ましい。LMBPPは、多数の平面断面において、好ましくは、LMBPPの長さに沿った大多数の、又はほぼすべての位置において、異方性の特性を示すことが好ましい。LMSRは、多数の平面断面において、好ましくは、LMSRの長さに沿った大多数の、又はほぼすべての位置において、異方性の特性を示すことが好ましい。1つの観点によれば、LMBDPとTSRの先端からの長さの1〜10%とが、大多数の、又はほぼ全ての平面断面において、異方性の特性を示す。LMBDPとTRSの先端からの長さの1〜10%、LMBPPと、TSRの先端からの1〜10%は、大多数の、又はほぼ全ての平面断面において、異方性の特性を示す。
【0064】
好ましくは、LMは、MTS又は操縦可能器具において、より高い断面二次モーメントを有する軸(典型的にはx軸)がMTSの、又は操縦可能器具の架空チューブの中心軸(A-A')の方へ延びるように、方向付けられる。
そのような軸が中央軸(A-A')の方へ延びる一方、それは中心軸A-A'と交差してもよいし、しなくてもよい。それは中心軸から逸れて、例えば、X軸は、MTSの架空チューブの中心軸(A-A')と平面断面の重心(
図22参照)との間に引かれた仮想線に対して10度、20度、30度、60度までの角度(アルファ)を取ってもよい。換言すれば、LMは、より低い断面二次モーメントを有する軸(典型的にはy軸)が、MTSの、又は操縦可能器具の架空チューブの中心軸(A-A')に本質的に向き合うように方向付けられることが好ましい。
【0065】
前述の異方性断面二次モーメントを示す平面横断面の代表的な輪郭(外形)は、長方形、文字「I」、扇形(例えば、半円形、四分の一の円形)を含む。その輪郭の角の1つ以上、好ましくは全ては、とがっている(例えば、四角)か、丸味を有することが好ましい。長方形のLMの場合には、かどの半径は、長方形の短辺の長さの10%、20%、30%、40%、50%までであってもよい。典型的には、それは10μm、20μm、30μm又はそれ以上、例えば10μmと200μmとの間である。
【0066】
断面二次モーメントは、第2慣性モーメト、平面領域慣性モーメント、領域極モーメント又は第2領域モーメントとしても知られている。均一材料のLMに対しては、異方性の特性は、必然的に、平面断面の外形によって決定される。それは、当該技術分野でよく知られた技術を用いて、平面断面の形状から算出される。例えば、I
xとI
yは、式1と式2を用いて算出できるが、ここでは、xとyはdAの異なる要素の座標であり、Aは平面断面の面積、xとy軸は平面断面の重心で交差する。
【0067】
I
x =∫y
2dA [式1]
I
y =∫x
2dA [式2]
【0068】
等方性断面二次モーメントを有するLMは、TBDPとTBPPにおける全方向の動きを助長するが、それは、LMがTBDPにおいて湾曲する引く力や押す力を加えるために円周方向に向い合って作動するLM(腹側と背側のLM)のみならず、作動するLMの間に配置されたLM、つまり横のLMに関しても、すべての方向に湾曲し得ることを必要とするからである。等方性断面二次モーメントを有するLMはこれらの横のLMの湾曲抵抗を低減するので、当該技術分野では好まれる。これとは逆に、発明者らは、異方性断面二次モーメントを有し、TBDPとTBPPにおいて横のLMを湾曲させるために大きい力を必要とするLMを、横のLMは湾曲の内側に位置するLMに比べて大きい半径で湾曲するので、MTSが許容することを見出した。
【0069】
さらに、発明者らは、異方性断面二次モーメントを有するLMを用いた場合、TSRの軸回転がTBDPへ同時に伝達されることを見出した。これは、等方性断面二次モーメントを有するLMが使用されると、動作がTBDPの先端に伝達される前に、バックラッシュや遊びとしても知られる回転遅れを生じるということがなくなるということである。例えば、機械的伝動手段が円形の横断面輪郭を有する縦部材を備える場合、端部作動体のシャフトに対する軸回転は、個々の縦部材の捩れになり、それは操縦可能器具の一端に加えられたトルクが、円形輪郭縦部材によって吸収されるので、他端まで伝達されないことを意味する(
図13参照)。捩れの長さに反比例する反対の回転力が誘発される。20mmの可撓性先端部と400mmのシャフト領域を有する操縦可能器具の場合、円形輪郭縦部材の45°の捩れは、420mmの距離にわたって広がり、著しいバックラッシュ又は遊びを与える。外科医はその緩みが生じる前に追加のトルクを与えなければならない。
【0070】
同じ機械的伝動システムに対して、異方性LMが使用されている場合には、異方性が捩じれに対する高抵抗を各LMに与えるので、個々のLMにおいて捩じれが減少する。この効果は、各LMを拘束して軸回転を防止又は抑制する、以下に述べるLMガイドと組合わる時に、高められる。従って、バックラッシュの量が減少する。
【0071】
好ましい観点において、複数のLMにおいて全てのLMが、MTSの架空チューブの縦軸に沿って1つ以上の拘束点(又は領域)において、それぞれ軸方向に回転するように拘束されることが好ましい。
【0072】
好ましくは、少なくとも1つの拘束点がTBDP又はTSRに沿って存在することである。TSRに沿って設けられた少なくとも1つの拘束点は、TSRの先端半分に、好ましくは、TSRの先端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの先端の終端に設けられてもよい。TSRに沿って備えられる拘束点は、TSRの先端半分に、好ましくは、TSRの先端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの先端の終端に限定されてもよい。好ましくは、少なくとも2つの拘束点が存在し、少なくとも1つがTSRに設けられ、少なくとも1、2、3又は4つがTBDPに沿って設けられる。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つの拘束点がTBPP又はTSRに沿って存在することである。
TSRに沿って設けられた少なくとも1つの拘束点は、TSRの基端半分に、好ましくは、TSRの基端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの基端の終端に設けられてもよい。TSRに沿って備えられる拘束点は、TSRの基端半分に、好ましくは、TSRの基端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの基端の終端に限定されてもよい。好ましくは、少なくとも2つの拘束点が存在し、少なくとも1つがTSRに設けられ、少なくとも1,2,3又は4つがTBPPに沿って設けられる。
【0074】
少なくとも4つの拘束点が存在し、少なくとも1つがTBDPに沿って設けられ、少なくとも1つがTSRの先端半分に、好ましくはTSRの先端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの先端の終端に、TSRに沿って設けられ、少なくとも1つがTBPPに沿って設けられ、少なくとも1つがTSRの基端半分に、好ましくはTSRの基端に設けられるTSRの全長の25%又は10%に、場合によってはTSRの基端の終端に、TSRに沿って設けられる。
【0075】
TBDP又はBDP(又はTBPP又はBPP)において、拘束点は分離している。分離ということは、それが架空チューブの中心縦軸(A-A')の方向に間隔を有して分離されていることを意味する。分離した拘束点は、TBDP、BDP、TBPP(又は存在するBPP)における架空チューブの中心縦軸(A-A')の方向に間隔を有して分離されている。
【0076】
TSR又はSRにおいて、拘束点は分離していてもよいし、していなくてもよい。分離していないとき、それらは、例えば、TSR又はSRの架空チューブの中心縦軸(A-A‘)の方向に連続した縦の通路として設けられてもよい。
【0077】
前述の拘束は、LM固定要素によって与えられるどのような拘束効果とも異なっていることが認識される。LM固定要素はLMの位置を固定し、LMを互いに摺動させない(例えば
図12の先端LM固定要素113)。
【0078】
複数のLMのために、それはLMを各拘束点において互いに摺動可能にさせる。後述するように、拘束点はLMガイド特に、TBDP又はBDP(および存在するTBDP又はBDP)又はSR又はTSRにおける固定されたLMガイドによって与えられてもよい。
【0079】
他の観点であるが、拘束点は本質的に固定された相互回転配列にあってもよい。それらは架空チューブに沿った、本質的に相互固定された軸回転配列にある。本質的に相互固定せれた回転配列又は本質的に固定された相互軸回転配列によって、架空チューブに沿った隣接する(近隣の)拘束点間の軸(A-A')回転角が本質的に固定又は制限されることを意味する。架空チューブに沿って縦に配置される複数の拘束点に対して、架空チューブの中心縦軸(A-A')に対するLMの半径角度は、作動又は非作動状態にある各拘束点において同じ状態のままである。拘束点は、MTS又は操縦可能器具に作業負荷がかけられない時には、本質的に固定された配列にあってもよい。
【0080】
この発明の1つの観点によれば、TBDPの先端の終端における分離した拘束点を横切る半径方向の線が、TBDPの基端の終端又はTSRの先端における拘束点を横切る半径方向の線と比較して、架空チューブの縦軸に沿って30度以下、好ましくは25度の偏向角、イプシロンを示すように、拘束点は本質的に固定された相互回転配列にある(
図23の1-A、1-E参照)。半径方向の線は、架空チューブの中心縦軸(A-A')から放射状に広がると共に、それの中心縦軸と直交する。問題の拘束点(例えば、通路)に対して、交差点は、比較を容易にするために同じになっている。
【0081】
この発明の1つの観点によれば、TBPPの先端の終端における分離した拘束点を横切る半径方向の線が、TBPPの基端の終端又はTSRの基端における拘束点を横切る半径方向の線と比較して、架空チューブの縦軸に沿って30度以下、好ましくは25度の偏向角、イプシロンを示すように、拘束点は本質的に固定された相互回転配列にある。半径方向の線は、架空チューブの中心縦軸(A-A')から放射状に広がると共に、その中心縦軸と直交する。問題の拘束点(例えば、通路)に対して、交差点は、比較を容易にするために同じになっている。
【0082】
他の観点によれば、分離した拘束点に交差する半径方向の線は、架空チューブの縦軸に沿った隣接する(最も近隣の)分離した拘束点と比較して10度以下、好ましくは5度の偏向角、イプシロンを示す。(
図23のI-CとI-D参照)。半径方向の線は架空チューブの中心縦軸(A-A’)から放射状に広がると共に、其の中心縦軸と直交する。隣接する拘束点(例えば、通路)の間では、交差点は、比較を容易にするために同じになっている。その上、TBDP又はBDP(およびTBPP又はBPP)における分離した拘束点は、架空チューブに沿って相互に本質的に軸方向に回転するように固定されているので、それらはSR又はTSRにおける拘束点に関しても、本質的に軸方向に回転するように固定されてもよい。
【0083】
TBDP又はBDP(およびTBPP又はBPP)における本質的に固定された相互回転配列は、例えば、隣接するLMガイド間の回転量を制限するLMの存在によって与えられてもよい。
【0084】
TBDP又はBDP(およびTBPP又はBPP)における本質的に固定された相互か移転配列は、例えば、隣接する関節式につながられたLMガイド間の偏揺が後述するように制限又は阻止される場合に、関節式につながれたLMガイドによってあたえられてもよい。
【0085】
SR又はTSRにおける本質的に固定された相互回転配列は、例えば、隣接して固定されるLMガイドの偏揺が後述するように制限又は阻止される場合に、固定されたLMガイドによって与えられてもよい。
【0086】
TBDP又はBDP(およびTBPP又はBPP)における分離した拘束点は、本質的に固定された相互回転配列されるので、バックラッシュの減少にさらに寄与することができる。
【0087】
DBPにおいて得られる継手の剛性は、LMの異方性断面二次モーメント(I
y)に大きく依存する。弾性率、剪断弾性率、LMの数、LMのMTSの中心軸までの距離、LMの長さ、断面二次極モーメントを含む他の要素が、その剛性に影響することが可能である。
【0088】
逆方向に働く力は、断面二次モーメント(I)に比例する。断面二次モーメントは、第3の力に対するLMの平面断面の長辺の長さに関連する。これは、例えば長短辺を有する「I」形の輪郭のLMを使用することがなぜ有利かという理由を説明している。平面断面の長辺は、同じ断面積に対して、標準の丸い操縦ワイヤに比べて高い断面二次モーメントを生み出す。我々はこれを「平定規」効果と呼ぶ。そのような平定規は、一方向には容易に曲げることができる。しかし、他の方向には、それは非常に剛い。それが、このシステムにおいて、軸回転変形を阻止し、バックラッシュを滅じる、後者の剛性である。
【0089】
LMの輪郭によれば、LMは拘束点において自由に回転できない。LMが通路の壁に接触すると(例えば、
図22B)、回転は阻止され、第2の効果によってZ-軸の回りにその帯材を捩るという作用が生じる(
図3参照)。その捩り定数(捩りに対する抵抗の基準)は、断面二次極モーメントと呼ばれ、I
xとI
y(断面二次モーメント、湾曲に対する抵抗の基準)の合計に等しい。X-方向のみにおいてLMがLMガイドの壁を打つときに生じる第3の効果がある(
図22A、例えば、LMが左へ動くと、LMはLMガイドの壁に接触する)。この状態は、LMの厚さよりも十分に大きい半径方向の距離において、LMガイドは器具の外面の近くに配置されるので、非常に早く遭遇される。LMガイドは最も湾曲抵抗(異方性断面二次モーメント)が大きい側を超えて湾曲する(
図14の110参照)。この効果に対する捩り定数は、器具の半径(LMの中心の器具の中心軸までの距離)の2乗、I
yに依存し、LMの長さ(2つの拘束点間の距離)の2乗に反比例する。拘束点間の距離は器具の半径に比べて同じオーダーであり、I
yが異方性により高く、半径が断面の寸法に比べて大きいので、この第3の効果は非常に重要である。第3の効果は、第2の効果よりもはるかに大きいが、それはLMの異方性の特徴の利点を説明する。
【0090】
300μmの厚さと530μmの幅を有する長方形の輪郭のLMは、例えば、直径437μmの丸ワイヤの同じ断面積を有する。しかしながら、長方形の帯材の(器具の外周の平行な方向の)長辺の断面二次モーメントは、丸ワイヤの断面二次モーメントの2倍であり、TBPPやBPPの回転剛性が2倍に増大する。
【0091】
異方性断面二次モーメントが軸回転、従ってバックラッシュを減らすのみならず、LMBDP(TBDPとBDP)内、又はLMBPP(TBPPとBPP)内のらせん運動学上チェーンの形成も減少させる。らせん運動学上チェーンはLMBDP又はLMBPPにおいて望ましくない形態であるが、そこでは、関節式につながれたLMガイドは、相互に回転するように拘束されているにもかかわらず、最も来たんのLMガイドが最も先端のLMガイドに比べて反った状態で中心線をはずれた、機械的に固定した形態を取る(
図21A、21B参照)。そのような固定した形態は、LMガイドがらせん軌道にならった運動学上のチェーンを構成するときに現われる(
図21Aと21B参照)。
一連の関節式につながれたLMガイドに基づく全方向器具はすべて、この減少の傾向がある。外科手術器具の場合、これは、シャフトと端部の可撓性先端部との間の回転に帰着する。外科手術において、反った状態の伝動によるこの損失は、きわめて望ましくない。この発明の発明者らは、異方性断面二次モーメントを有するLMが、この固定した形態の形成を避けることを見出した。その効果は、SR(TSR)とTBDP(BDP)とTBDPとBDPにおける拘束点が、本質的に固定された相互回転配列された時に、高くなる。
【0092】
湾曲したTBPP又はBPPの曲がり目の内側と外側におけるLMであって、力の伝動に携わる主要なLMは、最もちいさな断面二次モーメントを有する軸上で湾曲する。側面に設けられた、又は横のLMであって、力の伝動に直接携わらないLMは、剛性のより高い軸上を湾曲しなければならない(
図12参照)。10mmの直径の場合、TBPP又はBPPは90°に屈曲し、内側湾曲半径5mm、中央湾曲半径10mmである。従って、異方性LMの長辺上の好ましくない湾曲は、湾曲半径を増大することによって補償可能である。
【0093】
MTSは架空チューブの周りにLMの配列を支持して維持するように構成された複数(例えば、2〜30、3〜20)のLMガイドを備えてもよい。特に複数のLMガイド多数の、好ましくはすべてのLMを架空チューブ上の一定の円周位置に維持する。一定の円周位置に維持することは、架空チューブの中心長軸(A-A’)に対してLMのなす半径方向の角度が本質的に一定となり、架空チューブの中心長軸(A-A’)からのLMの半径方向の距離が本質的に一定になることを意味する。TMガイドは、作動および非作動状態において本質的に一定の円周位地を維持するように構成される。
【0094】
特に、複数のLMガイドは、特にPBDP(とTBPP)において、又TSRにおいて、多数の、好ましくは全てのLMを軸方向に回転するように拘束してもよい。LMを軸方向に回転可能に拘束することは、LMの長軸の周りの回転が、例えば拘束点において拘束されることを意味する。LMガイドは作動又は非作動状態において、本質的に一定の軸回転角度を維持するように構成される。軸回転角、ベータ(
図22Aと
図22B参照)は、例えば拘束点内でLMの平面断面によって取られる角度を示している。平面断面は、典型的には、LMの縦の中心軸(Z)に直交する横断面である(
図22A、
図22B参照)。軸回転角、ベータは、平面断面の重心で直交する相互直交軸(x、y)のx軸に関し、その軸は平面断面に平行で、かつ、その上に存在する平面を形成する。その重心は平面断面の、特に平面断面の外部輪郭の幾何学的中心であると理解される。平面断面が本質的に長方形の輪郭を有するとき、xとy軸は長方形の直線状の辺に平行に整列され、x軸は、x軸に関する断面二次モーメントが最大になるように整列される。平面断面が不規則な輪郭を有するときには、x軸は、断面二次モーメントがx軸に関して最大になるように整列される。ベータはx軸の角度における変化である(例えば、x’は
図22Bにおいてxと比較される)。本質的一定の軸回転角に対して、つまり、LMが軸中心に回転するように拘束されるとき、ベータは、典型的には±45度の間で偏向する。
【0095】
BDP/TBDP(及びBPP/TBPP)におけるLMガイドは、LMを軸に沿って回転するように拘束するために、また、架空チューブ上の本質的に一定の円周上の位置にLMをさらに推持するために、LM用の前述の分離した拘束点を備え、LMは各分離した拘束点に関して縦方向に摺動可能である。複数のLMのために、それはLMが分離した拘束点の各々において互いに対して摺動できるようにする。
【0096】
同様に、シャフト領域又はTSRにおけるLMガイドは、LMを軸に沿って回転するように拘束するために、また、架空チューブ上の本質的に一定の円周上の位置にLMをさらに維持するために、LM用の前述の分離した拘束点を備え、LMは各分離した拘束点に関して縦方向に摺動可能である。複数のLMのために、それはLMが分離した拘束点の各々において互いに対して摺動できるようにする。
【0097】
いくつかのLMガイド(ここでは「関節式につながれたガイド」)は、互いに関節式につながれ、とくに互いに枢着されてもよく、それによってリスト継手と同様に、LMの湾曲を支持する。関節式につながれたLMガイドは、操縦可能器具のBDPとBPPに対応してTBDPとTBPPに設けられてもよい。関節式につながれたLMガイドは、片側又は両側で関節式につながれてもよい。
【0098】
1つ以上のLMガイド(ここでは「固定LMガイド」)は、互いに対して回転するように固定されてもよく、それによって、LMの固定された(湾曲しない)進路を維持する。それらはTBDPの可撓性に比べて、TSRの可撓性を減らすように、互いに対して回転するように固定されてもよい。回転するように固定することは、3つの軸(例えば、ローリング、ピッチング、ヨーイング)のいずれにおいても相互の回転を阻止する。固定LMガイドが操縦可能器具のSRに対応してTSRに設けられ、本質的に剛性又は半剛性のTSRを生み出してもよい。
【0099】
上述のように、TSRは、剛性の、又は半剛性の外側チューブ又は外部チューブと協同するときには、剛性又は半剛性になることができる。つまり、TSRは可撓性である。剛性の、又は半剛性のチューブに挿入することによるか、又はTSRの回りに剛性の、又は半剛性のチューブを装着することによって、剛性を与えることができる。従って、関節式につながれたLMガイドは、操縦可能器具のSRに対応して、TSR内に設けることができる。
【0100】
LMガイドは、先端側と基端側、および先端側と基端側を接続する外側エッジ又は表面を有する本体を備える。
【0101】
関節式につながれたLMガイドにおいて、本体は、例えば
図18に示すように、実質的にディスク形状であることが好ましい。そのディスクは先端側にソケットを、基端側に隣接するLMガイドとかみ合うための突起(例えば、ボール)を備えてもよい。従って、隣接する関節式につながれたLMガイドは相互枢着するためのボールとソケットを形成する。外科手術器具のような器具のための一般的なガイダンスとしては、ディスクは、0.1cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.8cm、1cm、1.2cm、1.4cm、1.6cm、1.8cm、2cm又はこれらの値のいずれか2つの間の値、好ましくは、0.2cmと1.6cmの間の値の直径を有することができる。突起を含まないディスクは、0.02cm、0.15cm、0.2cm、0.4cm、又はこれからの値のいずれか2つの間の値、好ましくは、0.1cmと0.2cmの間の厚さを有することができる。
【0102】
固定されたLMガイドにおいて、本体は好ましくは実質的に円筒形で、円筒の両端が先端側と基端側である。外科手術器具のような器具に対する一般的なガイダンスとしては、円筒は、0.1cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.8cm、1cm、1.2cm、1.4cm、1.6cm、1.8cm、2cm、それ以上、又は、これらの値のいずれか2つの間の値、好ましくは0.2cmと1.6cmの間の値の直径を有することができる。関節式につながれたLMガイドと固定LMガイドの直径は同じであってよい。
【0103】
円筒の長さは、例えば、0.5cm、0.6cm、0.8cm、1cm、2cm、3cm、それ以上、又は、これらの値のいずれか2つの間の値、好ましくは、1cmと3cmとの間の値であってもよい。複数の前後に並んで配置された固定LMが存在することが好ましいが、操縦可能器具のSRに対応して、単一の長い固定LMガイドがTSRに設けられることは、この発明の範囲内である。
【0104】
LMガイドの本体は、それが関節式につながれたLMガイド、又は固定ガイドのいずれのものであっても、複数の要素を組合わせことを避けるために、例えば一体ものとして成型加工又は機械加工で作られた一品素子であることが好ましい。
【0105】
その本体は、2以上、例えば、2、3、4、5の通路の配列を備える。通路の数は、器具のサイズに依存することができる。18〜40又はそれ以上の通路が予見される。通路は関節式につながれたLMガイドの本体に中空の空間を備える。通路は、本体の先端側から基端側へ通じる。通路は好ましくは、LMガイドの中心軸に平行な、本体の先端側から基端側への中心軸を有する。1つの通路は、1、2、又はそれ以上のLMを、好ましくは唯一のLMを収容することができる。通路は拘束点として働く。通路は、LMを拘束する、とくに、本体の中心軸に対する半径方向の動きを阻止する寸法に作られている。通路は、LMを拘束する、とくに、軸回転、つまりLMの中心(Z)軸の周りの回転を阻止する寸法に作られている。各通路はさらに、架空チューブ上の本質的に一定の円周位置にLMを維持するように構成されている。通路は、LMの通路を介しての縦方向の摺動動作を助長する寸法に作られている。通路は、架空チューブの周りに配置されてもよい。その架空チューブは、MTSの架空チューブに対応する。通路は互いに間隔を置いて分離される。通路は、収容されるLMの輪郭を補足する横断輪郭を備えることができる。横断輪郭は通路の中心軸に直交する。例えば、LMが長方形の輪郭を有する場合、通路は長方形の輪郭を備えることができる。通路の輪郭はLMの輪郭を正確に反映する必要はなく、例えば、競走用トラックのLMの輪郭が長方形の通路によって閉じ込められてもよい。
【0106】
複数のLMガイドは前後に並んで配置される、つまり、1つのLMガイドの先端側が隣接するLMガイドの基端側に対面する。前後に並んで配置された、関節式につながれたLMガイドの例が、
図20に示されている。関節式につながれたLMガイドの前後に並ぶ配置は、MTSの架空チューブの縦軸に沿った多数の分離した拘束位置において、LMを拘束するために働く。2以上(例えば、3,4,5,6,7,8,9,10又はそれ以上)の分離した拘束点を与える2以上(例えば、3,4,5,6,7,8,9,10又はそれ以上)の前後に並ぶように配置された、関節式につながれたLMガイドあってもよい。好ましくは、7以上の分離した拘束点を与える7以上の前後に並ぶように配置された、関節式につながれたLMガイドがあることである。
【0107】
複数の関節式につながれたLMガイドは、互いに(対になって)関節式につながれている。好ましくは、複数の関節式につながれたLMガイドは互いに(対になって)接触する。隣接する関節式につながれたLMガイドの相対的回転(つまり、隣接する関節式につながれたLMガイド間の偏揺又は軸回転)が阻止又は制限されることが好ましい。偏揺の阻止又は制限することが、分離した拘束点を架空チューブに沿った本質的に固定された相互回転整列にさせる。1つの観点によれば、1つの関節式につながれるLMガイドの分離した拘束点(例えば、通路)に交差する半径方向の線は、隣接する関節式につながるLMガイドのそれに比べて、10度以下、好ましくは5度の偏向角、イプシロンを示す(
図23参照)。半径方向の線は架空チューブの中心縦軸(A-A')から出て、それに直交する。隣接するLMガイド間では、分離した拘束点(例えば、通路)についての交差点は比較を容易にするため同じにしている。
【0108】
好ましくは、関節式につながれるLMガイドは、隣接する(隣り合う)LMガイドにボール・ソケット型継手のような旋回継手を用いて接触する。一対の関節式につながれたLMガイドに対して1つのボール・ソケット型継手が存在してもよい。旋回継手は、関節式につながれたLMガイドを、隣接する関節式につながれたLMガイドに対して旋回させる。旋回継手は、隣接する関節式につながれたLMガイドに対して2つの動きの自由度、つまりロールとピッチを許すことができる。旋回継手は、隣接する関節式につながれたLMガイドのいくつかの相対回転(つまり、隣接する関節式につながれたLMガイド間の偏揺や軸回転)を許すことができる。偏揺の阻止や制限は好ましいが、すでに述べたように、異方性断面二次モーメントを有するLMの使用によって回転の遊びが阻止されるという観点から見ると、必ずしも必要ではない。しかしながら、それもまた、この発明の範囲内にある。旋回継手が、隣接する関節式につながれたLMガイドの相対的回転(つまり隣接する関節式につながれたLMガイド間の偏揺や軸回転)を許さないということは好ましい。偏揺の阻止や制限は、例えば、隣接する関節式につながれたLMガイドの本体に設けられたが凹部によって受入れられる、1つの関節式につながれたLMガイドの本体に設けられた突起である回転リミッタを用いることによって達成できる、つまり連結によって、1つのLMガイドの、隣接LMガイドに対する軸回転を阻止する。
【0109】
複数の固定LMガイドは互いに(対で)固定関係にある。それらは、固定された回転関係にあることが好ましい。それらは、固定された距離関係にあることが好ましい。好ましいことに、複数の固定LMガイドは互いに(対で)接触している。複数の固定LMガイドは、TBDPの可撓性に比較して、TSRの可撓性を低減するように構成される。
【0110】
隣接する関節式につながれるLMガイドに対して、隣接する固定LMガイドの相対的回転(つまり、隣接する固定LMガイド間の偏揺や軸回転)は阻止される。偏揺の阻止によって、分離した拘束点が、架空チューブに沿った本質的に固定される相互回転配列になることができる。
【0111】
複数のLMガイドは、円形に配置された通路が一列になるように前後に並んで配置されるので、各々が1つの(場合によっては2つ以上の)LMを受入れることができる。
【0112】
好ましくは、関節式につながれたLMガイドは、実質的にディスク形であり10〜20の通路を備え、各通路は唯一のLMを収容するように構成され、各通路は長方形の輪郭を備え、長方形の長辺がLMガイドの中心軸に向い合うように方向付けられ、通路は架空円の周りに配置される。
【0113】
好ましくは、固定LMガイドは、実質的に円筒形であり、10〜20の通路を備え、各通路は唯一のLMを収容するように構成され、各通路は長方形の輪郭を備え、長方形の長辺がLMガイドの中心軸へ向い合うように方向付けられ、通路は架空円の周りに配置される。
【0114】
各通路はLMを拘束して、軸回転を低減又は阻止し、LMガイドの中心軸(A-A’)に対して半径方向の位置を維持するように構成される。
【0115】
MTSは、端部作動体を備え、その端部作動体がLMBDPに対して回転するように固定され、
LMBDPが湾曲姿勢にあるときにLMBPPの補足的回転により端部作動体が回転可能であるように構成されてもよい。従って、操縦可能器具は、端部作動体がBDPに対して回転するように固定され、BDPが湾曲姿勢にあるときにBPPの補足的回転により端部作動体が回転可能であるように構成されてもよい。回転するように固定される作動体端部は、LMBPP又はBDPの先への恒久的な接合によって、例えば溶接又は接着によって実現できるか、その場合端部作動体は、正しい位置に固定されるときに、回転するように固定される。
【0116】
以下の説明において、この発明の特定の実施形態を示す図面が引用されるが、それらの図面はこの発明を全く限定するものではない。当業者であれば、その通常の技量により、装置を改造し、構成要素および機能を置換できることは、理解される。
【0117】
図1は、基端20及び先端40と、中心縦軸A-A’とを有する本発明の機械的伝動システム(MTS)100を、分解して示す。MTS100は、円筒形の縦長の架空チューブ120の周りに縦方向に配列され等間隔に分散された複数の(つまり4つの)縦長部材(LMs)110を備える。MTS100は、伝動可撓性先端部(TBDP)130と、操縦可能器具のシャフト領域において本質的に剛性又は半剛性を有するか、又は外側チューブと協同して操縦可能器具のシャフト領域において剛性又は半剛性を維持する伝動シャフト領域(TSR)132とを備える。
【0118】
図2は、TBDP130が湾曲し、TSR132が同じ直線形態のままである
図1のMTS100を示す。
【0119】
図3は、
図1の位置112におけるLM110の平面横断面である平面断面114上の2つの交差軸116(x軸)、118(y軸)を示し、その断面は「I」形の輪郭を有する。それらの軸は、平面横断面114の輪郭(外形)の重心である点111で交差している。軸116、118は互いに直交している。LMがその周りにより高い断面二次モーメントを有する軸116(x軸116)は、軸116がMTSの中心軸(A-A’)へ本質的に半径方向に向くように方向付けられる。x軸116とy軸118の両方に直交するz軸もまた示されている。
【0120】
図4は、基端および先端20,40と、伝動可撓性先端部(TBDP)130と、伝動シャフト領域(TSR)132と、伝動可撓性基端部(TBPP)134とを備える本発明のMTS100の外観を示す。伝動シャフト領域(TSR)132は、複数の固定されたLMガイド305, 350', 350"を備え、各LMガイドはLMの軸回転用の拘束点を備え、各LMは各LMガイド305, 350', 350"に対して縦方向に摺動可能である。TBDP130とTBPP134は、関節式につながれた複数のLMガイド305, 350', 350", 305a, 350a', 350a"を備え、各LMガイドは、LMの分離した軸回転拘束点を備え、各LMは各LMガイド305, 350', 350" , 305a, 350a', 350a"に対して縦方向に摺動可能である。
【0121】
図5は
図4のMTS100を示し、
図5では、TBPP134が湾曲するように作動され、その動きがMTSによってTSR132に沿ってTBDP130に伝達され、TBDP130がそれに応答して湾曲している。
【0122】
図6は、LMの半円形の横断面(つまり平面断面114)と、その周りの断面二次モーメントが測定される交差したxおよびy軸とを示し、それらの軸は、断面の重心である点111で交わる。式1と式2により算出される比は、I
x/I
y = 3.57である。
【0123】
図7は、LMの長方形の横断面(つまり平面断面114)と、その周りの断面二次モーメントが測定される交差したxおよびy軸とを示し、それらの軸は、断面の重心である点111で交わる。式1と式2により算出される比は、I
x/I
y = 4である。
【0124】
図8は、LMの「I」形の横断面(つまり平面断面114)と、その周りの断面二次モーメントが測定される交差したxおよびy軸とを示し、それらの軸は、断面の重心である点111で交わる。式1と式2により算出される比は、I
x/I
y = 9.2である。
【0125】
図9は、LMの丸み角付き長方形の横断面(つまり平面断面114)と、その周りの断面二次モーメントが測定される交差したxおよびy軸とを示し、それらの軸は、断面の重心である点111で交わる。式1と式2により算出される比は、I
x/I
y = 4である。
【0126】
図10は、LMの競走用トラック形の横断面(つまり平面断面114)と、その周りの断面二次モーメントが測定される交差したxおよびy軸とを示し、それらの軸は、断面の重心である点111で交わる。式1と式2により算出される比は、I
x/I
y = 4である。
【0127】
図11は、本発明ではない機械的伝動手段50の側面図を示し、機械的伝動手段50は基端20と先端40とを有し、先端で先端縦部材固定要素55に接続される縦部材52,52',52"を用いて形成されている。伝動シャフト領域は、固定された縦部材ガイド64を備える。縦部材52,52',52"の横断面は、それぞれ、円形平面断面56,56',56"で示される。縦部材52,52',52"の各湾曲は、特に、湾曲動作を行わせる縦部材52',52"から離れたこれらの縦部材、例えば52に関して、等方性断面二次モーメントを有する円形輪郭の縦部材によって明らかに助長される。従って、全ての縦部材52,52',52"は、各縦部材、例えば52,52',52"は異なる相対方向に湾曲するけれども、等しい抵抗で湾曲する(方位印60,60',60"に対する矢印58,58',58"の方向を参照)。
【0128】
図12は、本発明のMTS100の側面図を示し、MTS100は基端20と先端40とを有し、先端で先端LM固定要素113に接続されるLM110,110',110"を用いて形成されている。伝動シャフト領域(TSR)は、固定されたLMガイド350を備える。LM110,110',110"の平面断面114,114',114"は、「I」形の輪郭で示される。LM110,110',110"の各々の湾曲は、特に、湾曲動作を行わせる縦部材110',110"から離れたこれらのLM、例えば110に関して、異方性断面二次モーメントを有する平面断面を備えた「I」形輪郭のLMによって驚くほど妨げられない。従って、各縦部材、例えば110,110',110"は相対的に異なる方向(矢印158,158',158"方向参照)に湾曲し、離れた縦部材、例えば110はより大きい断面二次モーメントを有する方向に湾曲するけれども、全ての縦部材110,110',110"は、ゆがみや捩じれなしに湾曲する。
【0129】
図13は、本発明ではない
図11の機械的伝動手段50の概略図であり、
図13はトルク62がシャフト領域66に加えられた時の、先端湾曲可能部64における縦部材52,52',52"の捩じれを示す。各縦部材52,52',52"は、円形輪郭、従って、等方性断面二次モーメントを有する。それ故、円形縦部材の使用は、シャフト領域66を介して湾曲可能先端部64へトルク伝達する際に、バックラッシュを招く。
【0130】
図14は、本発明の
図12のMTS100の概略図であり、
図14はトルク162がTRS132に加えられた時の、伝動可撓性先端部(TBDP)130におけるLM110,110',110"の捩じれが著しく少ないことを示す。各縦部材110,110',110"は、「I」形平面断面、従って、異方性断面二次モーメントを有する。それ故、「I」輪郭LMの使用は、LMシャフト領域132を介してTBDP130へトルク伝達する際に、バックラッシュを低減又は除去する。
【0131】
図15は、分離した単一のLM110を示す本発明の
図14のMTS100の概略図である。同図は、LM110への力(164)の印加と、異方性断面2次モーメントに起因する湾曲に対する抵抗を示す。
【0132】
図16は、TBDP130においてMTS100に設けられた前方LM110"、後方LM110'及び側方LM110の異なる湾曲半径を示す。湾曲の内側に位置する
前方LM110"の湾曲半径117aは、側方LM110の湾曲半径117bに比べて小さく、側方LM110は、LM110の異方性断面二次モーメントのために曲げ方向においてより大きい剛性を有する。
【0133】
図17は、ディスク形のLMガイド300の平面図である。LMガイド300は、架空チューブ320の周りに配置された4つの分離通路310を備えた本体302を有する。架空チューブ320は
図1の架空チューブ120に対応する。各通路310はLM110を拘束する。各通路は分離した拘束点とみなされる。
【0134】
図18は、先端側40と基端側20とを有しディスク形の関節式につながれたLMガイド305であるLMガイド300の側面図である。関節式につながれたLMガイド300は本体302を有し、本体302は先端側40に、ピボット継手を形成する一対の構成要素の一方の要素、つまりボール・ソケット継手のボールに類似したドーム形突出部330を備える。本体302はさらに、基端側20に、ピボット継手を形成する一対の構成要素の他の要素、つまりボール・ソケット継手のソケットに類似した凹部340を備える。さらに、ドーム形突起330に固定された一対の回転リッミッター(332, 332')が示され、その回転リッミッターはドーム形突起330から放射状に突出している。これらは、隣接する関節式につながれたLMガイド(図示しない)の凹部340に接続された一対の溝340,340'に結合し、隣接する関節式につながれたLMガイドの相互軸回転を防止する。隣接する関節式につながれたLMガイドの各々は、分離した拘束点(つまり、通路)を備え、対の回転リッミッターは、架空チューブに沿って、分離拘束点の本質的に固定された相互回転配列を与える。
図19は、本発明のMTSを組み込んだ操縦可能器具500を示す。操縦可能器具500は、基端20と先端40を有する。先端40は、グリッパーである端部作動体(540)を備え、基端20は、そのチューブを操縦してグッリパーを制御するハンドル550を備える。また、可撓性先端部(BDP)530と、シャフト領域(SR)532と、可撓性基端部(BPP)534が示されている。
【0135】
図20は、基端20と先端40とを有し、架空チューブの周りに配列された4つのLM110を備え、各々が一列に並べられた複数の通路(channels)を備える複数の関節式につながれたLMガイド305, 305', 305" によってTBDP130に正しく維持された、本発明のMTS100の概略図である。ピボット継手の補完対の要素の1つ(ドーム形突出部330)が、最も先端のLMガイド300" に示されている。TSR132は、TSR132においてLM110の位置を維持する複数の前後に並ぶ固定LMガイド305, 305', 305"を備える。
【0136】
図21Aは、基端20と先端40を有する、本発明でない機械的伝導手段50の可撓性先端部を示す。機械的伝導手段50は、各々が等方性断面2次モーメントを有する円形輪郭の縦部材52, 52' 52" を備え、縦部材52, 52' 52"は、複数の関節式につながれた縦部材ガイド54, 54' 54" によって、放射状の円周位置に拘束されている。関節式につながれた隣接する縦部材ガイド54, 54' 54"は、各縦部材ガイド54, 54' 54"上の回転リッミッター(図示しない)の存在によって、相互の軸回転が阻止れる。
【0137】
図21Bは、本発明でない
図21Aの機械的伝導手段50の可撓性先端部を示し、その可撓性先端部は望ましくない運動学上の堅固ならせんチェーン状態に陥ってしまっており、それによって、基端20における円形輪郭の縦部材
52, 52' 52"が、回転リミッターの存在にもかかわらず先端40に対して捩じられている。
【0138】
図22は、LMガイドの通路310又は310'の中に存在する縦部材110a,110bの2つの典型的な向きを示し、1つの縦部材110bの平面断面114のx軸は、縦部材110bがLMガイド通路310'によって拘束される時、中心軸(A-A')と平面断面114の重心111との間に引かれた仮想線115から角度アルファだけ逸れることが示されている。他方の縦部材110aは、LMガイド通路310によって拘束される時、そのように逸れることはない、つまり、アルファはゼロである。
【0139】
図22Aと
図22Bは、LM110の軸回転角の変化である角度ベータを示す。
図22Aは、軸(x)の始動方位を示し、
図22Bは、通路310内の回転限度の1つにおける軸(x')を示す。LM110の軸回転角は本質的に一定であるため、つまり、LMは分離した拘束点において軸回転が拘束されるため、角度ベータは、或る限界の間で偏向する。
【0140】
図23のIとIIは、複数の関節式につながれたLMガイド(305B〜E)を備えるTBDP(130)と、架空チューブの中心軸(A-A')と、固定されたLMガイド(305A)を備えるTSR(132)を示す。Iでは、TBDP(130)はまっすぐ(非作動中)であり、IIでは、TDBP(130)は湾曲している(作動中である)。
図23YとXは、偏向角イプシロンを示す分離LMガイドの概略平面図を表す。
図23Xは、架空チューブの中心縦軸(A-A')から突出し通路310Xを横切る1つのLMガイド(305X)の半径方向の線(312X)を示し、
図23Yは、通路310Yを横切る他のLMガイド(305Y)の半径方向の線(312Y)を示す。XとYは、その間でイプシロンが測定されるLMガイドを示す。例えば、イプシロンが隣接する関節式につながれた2つのLMガイドの間の偏向角の測定値である場合には、XはI-Cであり、YはI-Dである。イプシロンがTBDP(130)において、最も基端の関節式につながれたLMガイドと、最も先端の関節式につながれたLMガイドとの間の偏向角の測定値である場合には、XはI-Bであり、YはI-Eである。イプシロンがTSR(132)の固定LMガイドと、最も先端の関節式につながれたLMガイドとの間の偏向角の測定値である場合には、XはI-Aであり、YはI-Eである。
【0141】
これらの各LMガイドの半径方向の線(312Xと312Y)の間の角度差、偏向角が、イプシロンとして示される。
図23のI-A〜I-Eは、
図23の分離したLMガイドの概略平面図であり、これらの図は、TDBP(130)がまっすぐの時(非作動時)において、隣接するLMガイド間に偏向がない(イプシロンがゼロ)ことを示している。
図23のII-A〜II-Eは、
図23-IIの分離したLMガイドの概略平面図であり、これらの図は、TDBP(130)の湾曲時(作動時)において、隣接するLMガイド間に偏向がない(イプシロンがゼロ)ことを示している。