(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィッシャー・トロプシュ生成物を炭化水素留分に分離するために、前記フィッシャー・トロプシュ生成物を分離システムへ通過させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【背景技術】
【0001】
本発明は、合成ガス供給材料のH
2/CO比が、一酸化炭素耐性パラジウム上金ガス分離膜システムを使用して制御される、合成ガス供給材料からフィッシャー・トロプシュ合成ステップへと、高分子量炭化水素を製造するための統合方法に関する。
【0002】
フィッシャー・トロプシュ法は、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスの処理を可能にし、高分子量炭化水素をもたらす。蒸気再形成は、天然ガス、低分子量炭化水素、またはナフサなどの脱硫炭化水素供給材料の処理を提供し、フィッシャー・トロプシュ合成工程に供給材料として使用されてもよい合成ガスを得るための一工程である。
【0003】
蒸気再形成工程において、脱硫炭化水素供給材料は蒸気と混合され、適切な触媒、例えばアルミナ担体上のニッケルを含む触媒上を通過させられ、高温及び高圧にて合成ガスを得る。合成ガスは、特定の水素対一酸化炭素モル比(H
2/CO比)を提供する濃度で水素及び一酸化炭素を含む。
【0004】
フィッシャー・トロプシュ法において、合成ガスは反応器に供給され、そこで適切な触媒、例えばアルミナ、シリカ、またはチタニア上に担持されたコバルトまたは鉄、好ましくはコバルトを通じて、高温及び高圧で、メタンから最大200個またはそれを超える炭素原子を含む高分子量分子に達するパラフィン系化合物に変換される。フィッシャー・トロプシュ合成の生成物分布は、フィッシャー・トロプシュ触媒の典型的な選択性特徴により、合成ガス供給材料のH
2/CO比によって影響を受ける。より低いH
2/CO比を用いる反応は、C5+炭化水素分子を得るためにより選択的であり、より高いH
2/CO比を用いる反応は、C5+炭化水素分子を得るための選択性が少ない。
【0005】
合成ガスを反応させて高分子量炭化水素を得るフィッシャー・トロプシュ合成ステップを用いて合成ガスを得る再形成ステップを統合する方法において、フィッシャー・トロプシュ合成ステップへの合成ガス供給材料のH
2/CO比を制御することが望ましくなり得る。フィッシャー・トロプシュ供給材料のH
2/CO比を制御することによって、フィッシャー・トロプシュ生成物の特性は、ある程度まで制御されることができ、所望のフィッシャー・トロプシュ生成物配合を提供する。
【0006】
このように、炭化水素供給材料を再形成する装置、及びフィッシャー・トロプシュ装置への合成ガス供給材料のH
2/CO比を制御する手段を含む工程を有することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
フィッシャー・トロプシュ法において、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスは、適切な反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒を通じて反応し、好ましくは炭化水素1分子当たり5個以上の炭素原子を有する炭化水素の範囲を得る。以下は、代表的なフィッシャー・トロプシュ反応方程式である。
nCO+(2n+1)H
2→H−(nCH
2)−H+nH
2O
【0010】
フィッシャー・トロプシュ反応生成物は、主に液体炭化水素を含むことが一般的には望ましく、これらのうち1分子当たり5個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む反応生成物が最も好ましい。ガソリン、灯油、ディーゼル、軽油及びより高い沸点範囲の沸点を有する炭化水素の収率が好ましい。溶融炭化水素の高収率が、しばしば特に好ましい。
【0011】
フィッシャー・トロプシュ反応生成物の組成は、フィッシャー・トロプシュ装置への合成ガス供給材料の水素対一酸化炭素比(H
2/CO比)によって影響を受けることが認識されている。一般に、より低いH
2/CO比は、より重い炭化水素生成物の生成を促し、より高いH
2/CO比はより軽い炭化水素生成物の生成をもたらす傾向がある。この関係により、フィッシャー・トロプシュ反応生成物の組成は、所望のフィッシャー・トロプシュ反応生成物の組成を提供するために、ある程度まで、合成ガス供給材料のH
2/CO比を変更または調整することにより影響または制御されることができる。
【0012】
蒸気再形成装置とフィッシャー・トロプシュ装置との統合で生じる1つの問題は、フィッシャー・トロプシュ装置に加えられた蒸気再形成装置から得られる合成ガス流のH
2/CO比は容認できないほど高くなる恐れがあり、その結果、フィッシャー・トロプシュ反応生成物がより重い炭化水素の所望の特性を含むことができない。本発明の方法は、フィッシャー・トロプシュ装置供給材料のH
2/CO比を
下げるために合成ガス流から水素を分離することを提供するように、蒸気再形成装置とフィッシャー・トロプシュ装置との間に作動的に接続される貴金属ガス分離膜システムを提供することによって、この問題を解決する。
【0013】
高分子膜などの様々な他のタイプの膜が、合成ガス流から水素を分離することに使用するために提案されてきた。しかし、ほとんどが適用には不適切である。なぜなら、これらの膜は所望の高温または高圧、若しくは両方では使用できず、容認できないほどの低選択性及び透過性を有するからである。
【0014】
特定の貴金属膜も、合成ガスから水素を分離することに使用するために提案されてきた。なぜなら、貴金属膜は、かなりの高温及び高圧で作用することに耐えることができ、代替膜よりも高温及び高圧でより選択的で浸透する傾向があるからである。
【0015】
それは予期せず発見されたが、一酸化炭素も含むガス流から水素を分離することに使用される場合のパラジウムのみの膜の性能は、比較的低濃度の一酸化炭素の存在下では不安定である。パラジウムのみの膜の分離効率は、工程ガスの一酸化炭素濃度が7.5体積パーセント超のレベルに達した場合、急速に減少する傾向がある。この性能喪失特徴は、合成ガスが高い一酸化炭素濃度であるため、合成ガス流から水素を分離するためにパラジウムのみの膜の使用が不可能になる。
【0016】
さらに予期しなかったが、パラジウムのみの膜とは異なり、2014年5月13日発行の米国特許第8721773号にて開示されたもの、及びその中で引用されている参考文献のように、パラジウム上金ガス分離膜の水素分離性能は一酸化炭素の有意な濃度レベルの存在下において安定する。高濃度の一酸化炭素によってもたらされる性能低下に対するパラジウム上金ガス分離膜の一酸化炭素耐性特徴は、合成ガスの一酸化炭素が高濃度であるため、合成ガスから水素を分離することにおいて膜の使用が有利になる。
【0017】
したがって、本発明の方法のある重要な態様は、ガス状炭化水素をより高い分子量の炭化水素に変換する統合方法において、パラジウム上金膜を含む一酸化炭素耐性パラジウム上金ガス分離膜システムの適用及び使用である。統合方法は、合成ガスを得る蒸気再形成装置、及びフィッシャー・トロプシュ合成生成物への変換用合成ガスから誘導されるフィッシャー・トロプシュ装置供給材料を受け取るフィッシャー・トロプシュ装置を含む。パラジウム上金膜を含む一酸化炭素耐性パラジウム上金ガス分離膜システムは、膜システム供給材料として合成ガスを受け取るような蒸気再形成装置と、フィッシャー・トロプシュ装置供給材料として一酸化炭素耐性パラジウム上金ガス分離膜システムから排出される残余分を受け取るフィッシャー・トロプシュ装置との間に作動的に接続される。
【0018】
膜システム供給材料として一酸化炭素耐性パラジウム上金担持ガス分離膜システムへ通過する合成ガス流は、水素及び一酸化炭素を含み、合成ガス流の水素対一酸化炭素比を有する合成ガス流を製造するための任意の適切な方法またはシステムによって提供される。炭化水素の蒸気再形成は、当業者に既知の合成ガスを製造するための一工程である。
【0019】
本発明の方法の蒸気再形成装置により、合成ガス流を得、その少なくとも一部が膜システム供給材料として一酸化炭素耐性パラジウム上金担持ガス分離膜システムへ通過する。蒸気再形成工程は、適切な蒸気再形成条件下で、炭化水素供給材料と蒸気との混合物を再形成触媒を用いて接触させ、合成ガス流を得ることを含む。以下は、膜再形成のための代表的な蒸気再形成の平衡反応方程式である。
【数1】
【0020】
蒸気再形成装置への炭化水素供給材料は、天然ガス(メタン)、エタン、プロパン、及びブタンなどの低分子量炭化水素、さらにナフサもあり得る。蒸気再形成装置への好ましい炭化水素供給材料は、メタンまたは天然ガスである。蒸気は、炭化水素供給材料と混合され、再形成装置の触媒と接触させる再形成装置の供給材料混合物を提供する。使用される蒸気の量は、例えば0.5:1〜2:1の範囲内で再形成装置の供給材料混合物の蒸気対炭化水素モル比を提供する。再形成反応の蒸気の過剰流量を制限することが好ましい。したがって、蒸気対炭化水素モル比は、好ましくは1.5:1未満、より好ましくは1.25:1未満である。そのため、蒸気対炭化水素モル比は、0.5:1〜1.5:1または0.5:1〜1.25:1の範囲内があり得る。
【0021】
蒸気再形成装置に使用される再形成触媒は、当業者に既知の任意の触媒でよく、炭化水素の再形成に適切に提供され、本発明の方法の膜システム供給材料として使用され、対応する合成ガスを得る。一般に、再形成触媒は、適切な耐熱性担体上に担持される触媒的活性金属を含む。耐熱性担体は、環などの形状、または押出形成品、またはボール、または任意の他の形状でよく、アルミナ若しくはアルミン酸カルシウムセメント、チタニア、ジルコニアなどの耐熱性材料、または耐熱性材料を含む。ニッケルが、再形成触媒の適切な触媒金属となり得るが、ロジウム、ルテニウム及び白金などの貴金属も単独またはニッケルなどの他の金属と組み合わせて使用されてよい。
【0022】
再形成反応条件には、600〜950℃の範囲内の蒸気再形成反応温度、及び25atm〜100atmの範囲内の蒸気再形成反応圧力が含まれ得る。
【0023】
蒸気再形成装置から得られる合成ガス流は、水素及び一酸化炭素を含む。蒸気及び炭化水素は蒸気再形成反応の反応物であるため、合成ガス流は、蒸気の有意濃度及びメタンなどの少なくとも1つの炭化水素も含み得る。
【0024】
典型的には、合成ガス流は、30〜70体積%の範囲内の量で水素を含む。より典型的には、合成ガス流中の水素濃度は40〜60体積%、より典型的には45〜55体積%の範囲内である。合成ガス流中のメタン量は、1〜10体積%の範囲内で、または2〜8体積%、または4〜6体積%の範囲内であり得る。
【0025】
合成ガス流中の水素及び一酸化炭素の相対量は、その結果、合成ガス流中の水素対一酸化炭素(H
2/CO)モル比は、1.5:1〜10:1の範囲内となる。しかしより典型的には、H
2/COモル比は、1.6:1〜4:1の範囲内である。H
2/COモル比は、1.7:1〜3:1の範囲内になることが望ましく、より望ましくは1.8:1〜2.5:1の範囲内である。
【0026】
フィッシャー・トロプシュ装置と統合されたシステムにおいて、フィッシャー・トロプシュ装置に加えられる合成ガス流のH
2/COのモル比は、時々不必要に高く、より好ましくないフィッシャー・トロプシュ合成生成物の組成を提供する恐れがある。
【0027】
一酸化炭素耐性パラジウム上金担持分離膜システムは、本発明の方法のシステムに統合され、その結果、フィッシャー・トロプシュ装置への供給材料のH
2/COモル比の制御に使用され、改善または最適化されたフィッシャー・トロプシュ合成生成物配合を提供する。このことは、高いH
2/COモル比の供給材料をフィッシャー・トロプシュ装置に導入することに伴う問題に対処する助けとなる。
【0028】
パラジウム上金担持分離膜システムは、典型的には管形状の多孔性担体を含み、その表面上にパラジウムの膜層が析出され、その上部に金の膜被覆層が析出され、パラジウム層上に金層を含む膜を含むガス分離膜システムを提供する。パラジウム上金担持分離膜システムは、膜システム供給材料を受け取るための吸入手段、残余流を排出するための流出手段、及び水素を含む透過流を膜システムから除去するための除去手段を含む。
【0029】
本発明のシステム及び方法において適切に使用され得る、より明確に定義されたパラジウム上金担持分離膜システムとしては、米国特許第8,721,773号に記載されるもの、及び米国特許第8,721,773号に記載される方法で製造されるものが挙げられ、この特許は参考により本明細書に組み込まれる。
【0030】
水素を含む透過流、及び合成ガス流のH
2/COモル比未満である残余流のH
2/COモル比を有する残余流から、合成ガス流が、一酸化炭素耐性パラジウム上金担持ガス分離膜システムに導入される。
【0031】
一酸化炭素耐性パラジウム上金担持ガス分離膜システムは、300〜500℃の範囲内の温度で作用する。好ましくは、作用温度は、325〜450℃、より好ましくは350〜400℃の範囲内である。膜システムの作用圧力は、10〜100barの範囲内である。好ましくは、作用圧力は、7〜70bar、より好ましくは10〜50barの範囲内である。
【0032】
上記の高温及び高圧で作用可能であることが、膜システムの重要な特徴である。これらの条件下で作用する能力により、より著しい膜浸透が提供される。
【0033】
透過流中の水素濃度は、95体積%超、好ましくは97体積%超である。より好ましくは、透過物中の水素濃度は、98体積%超である。
【0034】
本発明の方法またはシステムの典型的な作用において、透過流は、膜システムに導入される合成ガス流中に含有される1体積%〜20体積%の総水素を含むことができる。透過流が、膜システムに導入される合成ガス流中に含有される3体積%〜12体積%の水素を含むことは、本発明の方法の一般に望ましい態様であり、好ましくは、合成ガス流から除去される水素量は3体積%〜12体積%の範囲内である。合成ガス流から水素を除去することにより、1.4:1〜2.3:1、好ましくは1.5:1〜2.2:1の範囲内でH
2/COモル比を有する残余流を提供することを可能にする。
【0035】
上記で論じられるように、フィッシャー・トロプシュ法は、当技術分野において既知であり、一酸化炭素と水素との反応を提供し、好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を有する炭化水素を形成する。本発明の方法またはシステムのフィッシャー・トロプシュ装置から得られる合成生成物は、したがって、合成生成物の少なくとも60重量%、好ましくは合成生成物の少なくとも70重量%のC5+炭化水素量を含む。最も好ましくは、フィッシャー・トロプシュ合成生成物は、少なくとも85重量%の合成生成物を含む。CO変換量は、好ましくは、フィッシャー・トロプシュ装置供給材料に含有される少なくとも50重量%のCOである。
【0036】
フィッシャー・トロプシュ装置において使用されるフィッシャー・トロプシュ触媒は、当業者に既知の任意の触媒でよく、それがフィッシャー・トロプシュ反応に提供され、合成生成物を得る。典型的には、フィッシャー・トロプシュ触媒は、VIII族金属成分、好ましくはコバルト、若しくは鉄のどちらか、またはルテニウム、またはこれらの組み合わせを含む。コバルトが、特に好ましい触媒である。金属は、通常、好ましくはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアまたはこれらの組み合わせから成る群から選択される、多孔性無機耐熱性酸化物などの多孔性担体によって担持される。
【0037】
フィッシャー・トロプシュ触媒に存在する触媒的活性金属に加えて、1つ以上の助触媒または共触媒も含むことができる。助触媒金属は、金属としてまたは金属酸化物として存在してよい。予想される適切な助触媒金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、マンガン及び/またはバナジウムが挙げられる。
【0038】
本発明の方法の残余流は、フィッシャー・トロプシュ装置供給材料としてフィッシャー・トロプシュ装置へ通過させられ、フィッシャー・トロプシュ装置において、それが好適な合成反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒と接触させられて、フィッシャー・トロプシュ合成生成物を得る。フィッシャー・トロプシュ反応温度は、一般に150〜500℃、好ましくは175〜450℃、より好ましくは200〜400℃の範囲内である。フィッシャー・トロプシュ反応圧力は、一般に1.4MPa〜4.1MPa、好ましくは2MPa〜3.5MPaの範囲内である。空間速度は、50hr
−1〜500hr
−1、好ましくは150hr
−1〜350hr
−1の範囲内であり得る。
【0039】
所望のH
2/COモル比のために、フィッシャー・トロプシュ装置供給材料のH
2/COモル比の良好な制御を提供する、いくつかの異なる本発明の実施形態が存在する。これらの実施形態の1つは、フィッシャー・トロプシュ装置に供給するために、所望のH
2/COモル比を有する残余流を提供するためにパラジウム上金膜にわたる圧力差を制御することを含む。合成ガス流から分離する水素量は、分離膜にわたる圧力差によって影響を受けるため、圧力差を調整することによって残余流のH
2/COモル比の調節が可能になる。圧力差がより高ければ、残余分のH
2/COモル比はより低くなる傾向があり、圧力差がより低ければH
2/COモル比の残余分を増加させる傾向がある。
【0040】
所望のH
2/COモル比は、必要とされる特定のフィッシャー・トロプシュ合成生成物配合によって決めることができるが、典型的には、2.1:1未満1.4:1超である。所望のH
2/COモル比は、1.6:1〜2:1の範囲内でもあり得る。
【0041】
フィッシャー・トロプシュ装置供給材料の所望のH
2/COモル比の良好な制御を提供する本発明の方法の別の実施形態には、所望のH
2/COモル比を提供するような量で、透過流の一部と残余流とを組み合わせることが含まれる。透過流は、大部分が水素である。透過流と残余流とを任意で加えることは、得られるH
2/COモル比の増加をもたらすだろう。したがって、残余流のH
2/COモル比が所望のものより低い場合は、フィッシャー・トロプシュ装置に供給材料の所望のH
2/COモル比を提供するような量で、透過流の一部と残余流とを混合することができる。
【0042】
フィッシャー・トロプシュ装置供給材料に所望のH
2/COモル比の良好な制御を提供する本発明の方法のさらに別の実施形態は、蒸気再形成装置から得られる合成ガス流の一部のみを供給すること、フィッシャー・トロプシュ装置に供給材料の所望のH
2/COモル比を提供するような量で、合成ガス流の残り部分と残余流とを組み合わせることを含む。合成ガス流のH
2/COモル比は、残余流のH
2/COモル比よりも大きいため、合成ガス流の残り部分と残余流とを加えることにより、H
2/COモル比の増加をもたらすだろう。
【0043】
合成ガス供給材料から高分子量炭化水素を製造するための、本発明の統合方法10の代表的なプロセスフロー図が
図1に示される。
【0044】
方法10において、典型的には、メタンなどの1つ以上の低分子量ガス状炭化水素を含む炭化水素供給材料の混合物は、蒸気が導管12を通って通過し、蒸気再形成装置14に導入される。
【0045】
蒸気再形成装置14において、混合物は、適切な再形成条件下で蒸気再形成触媒と接触し、合成ガスを得る。合成ガスは、水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)を含む。合成ガス流は、蒸気再形成装置14から導管16を通って通過し、一酸化炭素耐性パラジウム上金担持ガス分離膜システム(膜システム)18に導入される。合成ガス流は、特定の合成ガスのH
2/COモル比を有する。
【0046】
膜システム18は、合成ガスから水素を分離することを提供し、通常98体積%超の濃度で、主に水素を含む透過流、及び合成ガス流のH
2/COモル比よりも少ない残余流のH
2/COモル比を有する残余流を得る。透過流は、膜システム18から導管20を通り通過する。残余流は、膜システム18から導管22を通って通過し、フィッシャー・トロプシュ供給材料としてフィッシャー・トロプシュ装置24に導入される。
【0047】
フィッシャー・トロプシュ装置24において、残余流は、適切な合成反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒と接触し、フィッシャー・トロプシュ合成生成物を得る。フィッシャー・トロプシュ合成生成物は、典型的には1分子当たり5つ以上の炭素を有する液化炭化水素の混合物、好ましくは溶融炭化水素を含む。
【0048】
フィッシャー・トロプシュ生成物は、フィッシャー・トロプシュ装置24から導管26を通って通過し、分離システム30へ導入される。分離システム30は、ワックス(C19+)、ディーゼル(C12〜C18)、ガソリン(C5〜C11)、及びより軽い炭化水素などの様々な沸点範囲の様々な炭化水素成分にフィッシャー・トロプシュ合成生成物を分離するまたはさらに処理するための手段を提供する。ワックスは、分離システム30から導管32を通って通過する。ディーゼルは、分離システム30から導管34を通って通過する。ガゾリンは、分離システム30から導管36を通って通過する。軽質炭化水素は、分離システム30から導管38を通って通過する。
【0049】
方法10のある実施形態において、フィッシャー・トロプシュ24への供給材料のH
2/COモル比は、残余流と混合される透過流の通過部分によって制御される。この実施形態において、導管を通って導管20を通過する透過流の一部は、導管22を通過する残余流と混合される。残余流と混合される透過流量は、例えば、所望のH
2/COモル比を有するフィッシャー・トロプシュ装置24への供給材料を提供する。導管20を通過する透過流の残り部分は、導管40を通る部分として取り込まれず、導管42を通って下流へ通過する。
【0050】
方法10の別の実施形態において、フィッシャー・トロプシュ装置24への供給材料のH
2/COモル比は、導管44を通って膜システム18へ向かう導管16を通過する合成ガス流の一部のみを通過させることによって制御される。合成ガス流の残り部分は、次に導管46を通って通過し、導管22からフィッシャー・トロプシュ装置24へ通過する残余流と組み合わされる。残余流と組み合わされた合成ガス流の残り部分の量は、所望のH
2/COモル比を有するフィッシャー・トロプシュ装置24への供給材料を提供するための方法で調整または制御される。
【0051】
以下の実施例は、本発明をさらに示すために提供されるが、本発明の範囲が制限されると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0052】
実施例1(純パラジウム膜)
本実施例1は、一酸化炭素も含むガス混合物から水素を分離することにおける性能、ならびに一酸化炭素濃度及び時間の関数として、実施例3に示される通りに試験した、パラジウムのみの水素分離膜システムの調製について記載している。
【0053】
管状多孔性支持体の初期調製
2.54cm(1インチ
)OD×
38.1cm(15インチ
)長×
2.54mm(0.1インチ
)の壁厚多孔性ハステロイX裏表プレスステンレススチール管状支持体が、Mott Corporationから供給された。管の両端を、一層のテフロンテープを用いて巻いた。管の片端を閉じた。
【0054】
それぞれに1ミクロン中央分布の0.20〜0.25gの卵殻触媒を含む2つの500mlの三角フラスコに、250mLの脱イオン水を混合した。次に、得られたスラリーを、5Lのガラスビーカー内の4Lの脱イオン水と4Lのガラスビーカー内の3.5Lの脱イオン水との間で均等に分けた。スラリーを十分に混合した。
【0055】
多孔性管組立体を、
63.5〜76.2cm(25〜30インチ
)Hgに調整された真空を用いる真空ポンプに接続した。真空を用いる多孔性金属支持体組立体を、予備溶液がなくなるまで加えられたスラリー溶液を用いてスラリーに浸漬させた。
【0056】
以下のスラリーの適用では、真空を切り離し、テフロンテープ及び管内の余分な水を除去した。次に、管状支持体を少なくとも2時間にわたって140℃で、空気循環オーブンで乾燥させ、続いて
63.5〜76.2cm(25〜30インチ
)Hgの真空に管状支持体を再接続した。真空下中に、余分な触媒の除去に関わる多孔性部分の表面上の粉末が平滑化された。
【0057】
表面平滑を第2の析出作業で省略したことを除いて、上記の工程を、0.5ミクロンの中央分布を有する卵殻触媒を使用して繰り返した。
【0058】
めっき作業
パラジウム膜を形成するために使用しためっき溶液は、250グラムの脱イオン水、198mlの28〜30%水酸化アンモニウム溶液、4.0グラムの塩化テトラアミンパラジウム(II)(Pd(NH
3)
4Cl
2H
2O)、40.1グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(Na
2EDTA
2H
2O)及び1Lの総体積をつくるのに十分な脱イオン水を含み、約4g/LのPd金属イオン濃度を有する溶液を提供する。支持体に真空を適用中に、支持体周囲に溶液を循環させるために、蠕動ポンプを利用した。めっきは、50℃の温度で5〜10分間、
10.2〜15.2cm(4〜6インチ
)Hg真空下で行われ、その後、連続的に90分間行った。毎分1.4Lの速度で浴を循環させた。膜組立体をめっき浴から除去し、導電率が5μS未満になるまで脱イオン水で洗浄した。少なくとも2時間140℃で空気循環オーブンで膜を乾燥させ、40℃に冷却した。
【0059】
アニーリング作業
窒素中で毎分2℃、温度を40℃から400℃に上昇させることによって、膜組立体をアニーリングした。ガス混合物は、1時間にわたって100%窒素から100%水素に5変化し、520℃まで加熱を続けた。膜組立体を、この温度で一晩保持した。次に、膜組立体を400℃まで冷却し、純窒素に逆変化させ、室温まで冷却する前に2時間保持した。
【0060】
研磨作業
膜組立体を、研磨表面に所望の研磨及び表面特性を提供するように設定された条件下で、SCOTCH BRITE(登録商標)のサテンバフ(商品統一分類コード00048011645339、3M Corporation)を用いてAcme manufacturingのロボット研磨機で研磨した。SCOTCH BRITEの回転繊維バフ及びその使用方法は、2014年4月10日に出願された米国特許出願第61/977796号、表題「A Method of Making a Supported Gas Separation Membrane」に詳細に記載されている。この開示は、公開時に参考により本明細書に組み込まれる。
【0061】
作業の繰り返し
漏出防止性膜システムが達成されるまで、めっき、洗浄、乾燥、アニーリング及び研磨作業のステップを繰り返した。この一連のステップを4回繰り返し、
689kPa(100psi
)で漏出防止性の密閉膜を提供した。膜は、40Nm
3/m
2/hr/barの水素浸透を有した。
【0062】
実施例2(パラジウム上金膜)
本実施例2は、一酸化炭素も含むガス混合物から水素を分離することにおける性能、ならびに一酸化炭素濃度及び時間の関数として、実施例4に示される通りに試験した、パラジウム上金水素分離膜システムの調製について記載している。
【0063】
管状多孔性支持体の初期調製
本実施例2の
2.54cm(1インチ
)OD×
38.1cm(15インチ
)長×
2.54mm(0.1インチ
)の壁厚多孔性ハステロイXプレスステンレススチール管状支持体の初期調製は、実施例1に記載されていることと同じである。
【0064】
パラジウムめっきステップ
本実施例2のパラジウム上金膜の調製におけるパラジウムめっきステップは、実施例1に記載されていることと同じである。
【0065】
アニーリングステップ
本実施例2のパラジウム上金膜の調整におけるアニーリングステップは、実施例1に記載されていることと同じである。
【0066】
研磨ステップ
研磨表面に所望の研磨及び表面特性を提供するように設定された条件下で、3MのTrizact A3ベルトを用いてAcme manufacturingのロボット研磨機で、膜を研磨した。Trizactベルト及び他の関連する研磨手段ならびにそれらの使用方法は、2014年4月10に出願された米国特許出願第61/977790号、表題「A Method of Making a Supported Gas Separation Membrane」に詳細が記載されている。この開示は、公開時に参考により本明細書に組み込まれる。
【0067】
セットの繰り返し
漏出防止膜が得られまで、パラジウムめっき、洗浄、乾燥、アニーリング及び研磨工程のステップを繰り返した。一連のステップを4回繰り返し、
689kPa(100psi
)で漏出防止性の密閉膜を提供した。膜は、41Nm
3/m
2/hr/barの浸透を有した。
【0068】
金めっきステップ
パラジウムめっき膜を、研磨し、1300mlの0.08%四塩化金酸を含む金めっき浴中に置いた。浴温度を、20℃に維持した。膜組立体を、約50rpmの速度でオーバーヘッド攪拌モータを用いて回転させた。1mlの30%過酸化水素(H
2O
2)を、ピペットによって金めっき浴の中央に加えた。2時間後、0.25mlの30%過酸化水素を、同様に加えた。
【0069】
金めっきステップが完了した後、膜を総体積(1300ml)の脱イオン水中に1時間置き、脱イオン水で完全にゆすぎ、140℃で乾燥させた。金めっき膜を水素アニーリングオーブンへ移し、それによって、純H
2の雰囲気下において6時間550℃の温度でアニーリングした。金めっき膜の水素アニーリングに続いて、実施例1に記載される通りに、洗浄、乾燥及び研磨した。結果として得られる膜が7.8ミクロンの厚さを有する8%の金を含有するまで、金めっき工程を繰り返した。
【0070】
実施例3(実施例1のパラジウムのみの膜の試験)
本実施例3は、様々な濃度の一酸化炭素を含むガス混合物から水素を分離することにおける実施例1のパラジウムのみの水素分離膜の性能データを示す。パラジウムのみの水素分離膜の性能は、一酸化炭素濃度の関数として表される。
【0071】
以下の表1は、試験においてパラジウムのみの水素分離膜によって処理された様々な供給材料流の組成を表す。パラジウムのみの水素分離膜を、15barで450℃の条件下で試験した。
【表1】
【0072】
表2は、時間の関数として透過物の組成、及び供給材料ガス混合物中の一酸化炭素濃度を表す。
【0073】
図1は、一酸化炭素濃度が10体積パーセントに近づく場合、膜性能が急速に減少する現象をさらに示す同一のデータを表す。データは、パラジウムのみの膜選択の性能に及ぼす供給材料ガス混合物中の一酸化炭素の悪影響及び一酸化炭素濃度の影響に対するパラジウムのみの膜の低耐性を実証している。
【表2】
【0074】
実施例4(実施例2のパラジウム上金膜の試験)
本実施例4は、様々な濃度の一酸化炭素を含むガス混合物から水素を分離することにおける実施例2のパラジウム上金水素分離膜の性能データを表す。パラジウム上金水素分離膜の性能は、一酸化炭素濃度及び時間の関数として表わされる。
【0075】
以下の表3は、試験においてパラジウム上金水素分離膜によって処理された様々な供給材料流の組成を表す。パラジウム上金水素分離膜を、15barで450℃の条件下で試験した。
【表3】
【0076】
表4は、時間の関数として透過物の組成、及び供給材料ガス混合物中の一酸化炭素濃度を表す。
【0077】
図3は、供給材料ガス混合物中の高濃度の一酸化炭素濃度が、水素分離の膜性能にほとんど影響しないことをさらに示す表4に表されているものと同一のデータを表す。データは、パラジウム上金膜は、水素の分離においてその性能に及ぼす一酸化炭素の負の影響に対して耐性があることを示す。
図2から確認できるように、供給材料ガス混合物中の非常に高濃度の一酸化炭素でさえ、透過物の高水素純度は維持される。
【表4】