特許第6791876号(P6791876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6791876強化用繊維を用いて非晶質の化学的に改質されたポリマーから作られる繊維複合体を生成するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791876
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】強化用繊維を用いて非晶質の化学的に改質されたポリマーから作られる繊維複合体を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/08 20060101AFI20201116BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20201116BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   C08J5/08CET
   B29B15/08
   B29K25:00
【請求項の数】18
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-555276(P2017-555276)
(86)(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公表番号】特表2018-513259(P2018-513259A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016059069
(87)【国際公開番号】WO2016170148
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】102015207362.9
(32)【優先日】2015年4月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516008383
【氏名又は名称】イネオス・スタイロリューション・グループ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ニースナー
(72)【発明者】
【氏名】アイケ・ヤーンケ
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/023541(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/110539(WO,A1)
【文献】 特開平01−266143(JP,A)
【文献】 特開平07−026030(JP,A)
【文献】 特開平03−167240(JP,A)
【文献】 特公昭49−026294(JP,B1)
【文献】 特公昭49−041096(JP,B1)
【文献】 特開平06−238658(JP,A)
【文献】 特公昭49−019097(JP,B1)
【文献】 特開平08−120158(JP,A)
【文献】 特公昭47−038856(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0059109(US,A1)
【文献】 特表2008−516062(JP,A)
【文献】 特開平06−116454(JP,A)
【文献】 特開2002−201323(JP,A)
【文献】 特開平04−335040(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/058971(WO,A1)
【文献】 米国特許第06673452(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B29C 70/00−70/88
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスMとしての熱可塑性成形用コンパウンドA、および強化用繊維Bを含む、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、以下の工程:
i)シランサイズで処理した強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fを用意する工程、
ii)成分Aに対して、少なくとも0.3mol%の1つまたはそれ以上の化学的に反応性の官能基を有する熱可塑性成形用コンパウンドA中に、シート状構造物Fを導入する工程、
iii)ポリマーマトリックスM中の熱可塑性成形用コンパウンドA中の1つまたはそれ以上の化学的に反応性の官能基を、処理した強化用繊維Bの表面における極性基と反応させる工程、
iv)繊維複合材料を団結させる工程、および
v)冷却する工程、
を含み、
ポリマーマトリックスMとして使用される熱可塑性成形用コンパウンドAは非晶質であり、1つまたはそれ以上の化学的に反応性の官能基を付与する1つまたはそれ以上のモノマーA−Iを含み、
熱可塑性成形用コンパウンドAは、スチレン−アクリロニトリル(A−I)コポリマー、ポリスチレン(A−I)コポリマー、耐衝撃性改良ポリスチレン(A−I)コポリマー、α−メチルスチレンアクリロニトリル(A−I)コポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレン(A−I)コポリマー、および挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンドからなる群より選択され、
少なくとも200℃の温度での繊維複合材料の生成における滞留時間は、10分間以下である、前記方法。
【請求項2】
繊維複合材料は、
a)30重量%から95重量%のポリマーマトリックスとしての熱可塑性成形用コンパウンドA、
b)5重量%から70重量%の強化用繊維Bで構成されるシート状構造物F、および
c)0重量%から40重量%の添加剤C
から生成される、請求項1に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項3】
ポリマーマトリックスMとして使用される熱可塑性成形用コンパウンドAは非晶質であり:スチレン−アクリロニトリルコポリマー、アルファ−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレンコポリマー、および、挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンドをベースとする、化学的に反応性の官能基により改質されたコポリマーの群から選択される、請求項1または2に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項4】
熱可塑性成形用コンパウンドAは、化学的に反応性の官能基により改質されたスチレン−アクリロニトリルコポリマーおよびアルファ−メチルスチレンアクリロニトリルコポリマーからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項5】
熱可塑性成形用コンパウンドAの化学的に反応性の官能基は、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される成分をベースとする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項6】
強化用繊維Bの表面は、ヒドロキシル、エステルおよびアミノ基の群からの1つまたはそれ以上の官能基を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項7】
成形用コンパウンドAは、化学的に反応性の官能基を有する成分Aに対して0.5重量%から5重量%のモノマーA−Iを使用して生成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項8】
成分Aは、65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、19.7重量%から32重量%のアクリロニトリルおよび0.3重量%から3重量%の無水マレイン酸から製造され、シート状構造物Fは、スクリム、織物、マット、不織物または編物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項9】
強化用繊維Bは、化学的に反応性の官能基として表面にシラノール基を含むガラス繊維からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項10】
繊維複合材料は、リブ構造またはサンドイッチ構造を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項11】
繊維複合材料は、層状構造を有し、2つ超の層を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項12】
繊維複合材料の生成における温度は、少なくとも200℃である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項13】
成分Aは、
65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、
19.9重量%から32重量%のアクリロニトリル、および
0.1重量%から3重量%の無水マレイン酸
から生成され、
シート状構造物Fは、スクリム、織物、マット、不織物または編物であり、
少なくとも200℃の温度にて繊維複合材料を生成するための滞留時間は、10分間以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項14】
成形物を生成するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により生成された繊維複合材料の使用方法。
【請求項15】
フィルムを生成するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により生成された繊維複合材料の使用方法。
【請求項16】
コーティングを生成するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により生成された繊維複合材料の使用方法。
【請求項17】
ポリマーマトリックスMとして用いられる熱可塑性成形用コンパウンドAは、非晶質であり、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーおよびアクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステルコポリマーから選択される耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレンコポリマーに対して、化学的に反応性の官能基により改質されたコポリマーの群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【請求項18】
熱可塑性成形用コンパウンドAは、化学的に反応性の官能基の無水マレイン酸(MA)により改質されたスチレン−アクリロニトリルコポリマーおよびアルファ−メチルスチレンアクリロニトリルコポリマーからなる群から選択されるコポリマーからなる、請求項1〜13または17のいずれか1項に記載の熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形用コンパウンドAおよび強化用繊維Bの少なくとも1つのプライを含む繊維複合材料(オルガノシートとも呼ばれる)を生成するための方法であって、強化用繊維Bの少なくとも1つのプライが、熱可塑性成形用コンパウンドAと共にマトリックス中に埋め込まれ、熱可塑性成形用コンパウンドAが、少なくとも1つの化学的に反応性の官能基を有し、強化用繊維Bの表面がシランサイズで処理されており、官能基(化学的に反応性の基)の濃度が、少なくとも0.3mol%を有する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維複合材料またはオルガノシートは、通常、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた多数の強化用繊維からなる。繊維複合材料を使用する分野は、多種多様である。例えば、繊維複合材料は、自動車および航空宇宙部門に使用される。この場合には、繊維複合材料は、マトリックスの破断または他に分裂を防ぐように、ひいては、分布した成分の小片から生じる事故の危険性を低下させるように意図されている。多くの繊維複合材料は、全体的に破損が生じる前に応力下で比較的高い力を吸収することが可能である。同時に、繊維複合材料は、従来の強化されていない材料と比較しての密度の低さ、およびさらに有利な性質、例えば良好な耐老化性および腐食耐性と併せた、強度および剛性の高さを特徴とする。
【0003】
繊維複合材料の強度および剛性は、この場合、応力の方向性および応力のタイプに対して適合できる。この場合、繊維複合材料の強度および剛性に主に関与するのは繊維である。さらに、それらの配置は、それぞれの繊維複合材料の機械的性質も決定する。マトリックスは、それに反して、主に、吸収された力を個別の繊維に誘導する役割、および、繊維の三次元配置を望ましい配向で保持する役割を果たす。繊維およびマトリックス材料はいずれも可変要素なので、繊維およびマトリックス材料の考えられる組合せは数多くある。
【0004】
繊維およびポリマーマトリックスがお互いに結合することは、繊維複合材料の生成において不可欠な役割を果たす。
【0005】
繊維のポリマーマトリックス中への埋め込み(繊維−マトリックス接着)の強度は、繊維複合材料の性質にかなりの影響を与え得る。
【0006】
繊維−マトリックス接着を最適化するために、また、繊維の表面と周囲のポリマーマトリックスとの間の「化学的類似性の低さ」を補うために、通例、強化用繊維は、前処理される。この目的のために、接着促進剤は、通例、サイズと呼ばれるものに添加される。この種のサイズ(サイズ剤)は、通例、繊維のさらなる加工性を改善するために生成中に繊維(例えば織物、撚物、縫物)に適用される。その後のさらなる加工に対してサイズが望ましくなければ、最初に、追加のプロセス工程で、例えばサイズを燃焼させることにより、除去しなければならない。場合によっては、サイズを用いない形態でガラス繊維も使用される。
【0007】
次いで、繊維複合材料を生成するために、さらなる接着促進剤は、追加のプロセス工程で適用される。サイズおよび/または接着促進剤は、繊維の表面に層を形成し、これは、繊維と環境の相互反応を本質的に決定できる。最近、利用できる様々な接着促進剤は多数ある。当業者は、使用される分野に応じたマトリックスおよび繊維と適合する適切な接着促進剤、使用されるマトリックス、ならびに使用される繊維を選択できる。
【0008】
技術的な難題の1つは、全体に破損が発生した場合、繊維複合材料は脆性破壊を受ける恐れがあるということである。結果として、例えば、高度な応力に曝露した構造物の成分において、成分が分離することによる事故の、かなりの危険性が生じ得る。
【0009】
したがって、全体に破損が起きにくい状態で、繊維複合材料に応力を広範にかけることが望ましい。同時に望ましいものは、さらに良好な光学的性質、例えば、繊維複合材料によって、平滑な表面を有する様々な構成要素を生成することができる選択肢である。
【0010】
特許文献1は、強化用繊維の群を使用する成形用コンパウンドについて記載している。強化用繊維の各群は、様々な繊維−マトリックス接着を引き起こす様々な接着促進剤の成分を用いて得られる。第2の繊維−マトリックス接着は、第1の繊維−マトリックス接着より弱く、第1の群からの強化用繊維で構成される強化用繊維の表面近くのプライは、より強固な繊維−マトリックス接着により形成される。目的とされているマトリックス材料は、熱硬化性樹脂、例えばポリエステル、および熱可塑性樹脂、ポリアミドおよびポリプロピレンである。
【0011】
特許文献2は、ガラス繊維−強化スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)について記載しており、その機械的性質は、無水マレイン酸基を含有するスチレンコポリマーおよび細断したガラス繊維を使用することにより改善される。したがって、短い繊維の使用が教示されている。しかし、繊維複合材料についての指針は示されていない。
【0012】
特許文献3は、細断したガラスと混合し、次いで、相対的に高強度を得るスチレン−無水マレイン酸コポリマーの混合物について記載している。しかし、そのような材料の応力亀裂耐性は、溶剤に対してきわめて低い。ガラス繊維複合体に関しての強度もまた、きわめて低い。
【0013】
特許文献4は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ガラス繊維、無水マレイン酸含有ポリマーおよびエポキシ樹脂の混合物について記載している。生成する際には、まずエポキシ樹脂を添加するために、ABSおよび無水マレイン酸含有ポリマーが最初に入れられ、次いでガラス繊維が入れられる。(熱硬化性)エポキシ樹脂を含むそのような混合物の流動性は、きわめて限定される。
【0014】
特許文献5は、SAN、無水マレイン酸−およびN−フェニルマレイミド含有コポリマー、細断したガラス繊維ならびにアミノシラン系カップリング剤の混合物について教示している。そのようなカップリング剤を使用すると、追加のプロセス工程が生じ、したがって、生成コストが増加する。
【0015】
特許文献6は、例えば、高度に自由流動性のポリカーボネート成分で構成される、ハイブリッド設計を有するオルガノシート成分について記載している。これは、適切な添加剤によって、例えば多分岐ポリエステル、エチレン/(メタ)アクリレートコポリマーまたは低分子量ポリアルキレングリコールエステルによってポリカーボネート(PC)に自由流動性を付与することに関与する。
【0016】
特許文献7は、個々の繊維または繊維ロービングに基づくオルガノシートについて記載している。
【0017】
従来技術における(ガラス)繊維は、サイズで処理されることが多く、サイズは、詳細には繊維を互いから保護する。摩損によって相互に損傷することは避けられるべきである。機械的な相互接触が、横断的分裂(崩壊)をきたすことは想定されていない。
【0018】
さらに、詳細には、積層の長さを等しくするために繊維を切断する作業はサイズによって促進できる。さらに、サイズは、繊維の集合を防ぐことができる。水中における短い繊維の分散性は、改善できる。したがって、ウェットレイ法により均一なシート状構造物を得ることは可能である。
【0019】
サイズは、ガラス繊維とポリマーマトリックスとの間における密着の改善の達成に寄与でき、ここにおいて、ガラス繊維は強化用繊維として作用する。この原理は、特にガラス繊維−強化プラスチック(GFRP)の場合に用いられる。
【0020】
今まで、ガラス繊維のサイズは、一般的に、多数の構成成分、例えばフィルム形成剤、滑剤、湿潤剤および接着促進剤からなっていた。
【0021】
フィルム形成剤は、相互摩擦からガラスフィラメントを保護し、ひいては、複合材料の強度および密着を増進させるために、合成樹脂の親和性をさらに向上できる。サイズの合計に対して比率が0.5重量%から12重量%のデンプン誘導体、酢酸ビニルおよびアクリル酸エステルのポリマーおよびコポリマー、エポキシ樹脂エマルション、ポリウレタン樹脂ならびにポリアミドが挙げられるべきである。
【0022】
滑剤は、ガラス繊維およびそれらの生成物に柔軟性を付与し、生成物を含めてガラス繊維の相互摩擦を低下させる。しかし、ガラスと合成樹脂との間の接着は、滑剤の使用により損なわれることが多い。サイズの合計に対して0.01重量%から1重量%の量での、脂肪、油およびポリアルキレンアミンが挙げられるべきである。
【0023】
湿潤剤は、表面張力を低下させ、サイズを用いたフィラメントの湿潤性を改善する。水性サイズに関しては、例えば、サイズの合計に対して0.1重量%から1.5重量%の量で、ポリ脂肪酸アミドが挙げられるべきである。
【0024】
ポリマーマトリックスとガラス繊維との間の適切な親和性はないことが多い。このギャップは、繊維表面におけるポリマーの接着を向上させる接着促進剤により埋めることができる。大半の有機官能性シラン、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるべきである。
【0025】
水性サイズに添加されるシランは、通常、シラノールに加水分解される。これらのシラノールは、次いで、反応性の(ガラス)繊維表面と反応でき、したがって、接着促進剤層(約3nmの厚さを有する)を形成できる。
【0026】
結果として、シラノール基を有する低分子量の機能剤は、ガラス表面において反応でき、この場合には、次いで、これらの低分子量の作用剤は、さらに(例えばエポキシ樹脂中で)反応し、その結果ガラス繊維のポリマーマトリックスへの化学的結合を確実にする。しかし、そのような生成物は、時間がかかり、ポリマー(例えば上述のエポキシ樹脂)の完全な硬化には約30分から1時間超かかる。
【0027】
したがって、改善された方法において、あらかじめ重合した溶融物をガラス繊維または他の強化用繊維と組み合わせることが望ましいと思われる。
【0028】
ポリマーとの反応による官能基化は、同様に公知である。例えば、低分子量のポリカーボネートタイプを使用することにより、ガラス繊維織物またはスクリムに効率的に含浸させること、また、官能基をガラス繊維表面において、ポリカーボネートと反応させて「グラフト」を実施し、これによりポリマーに対する適合性を向上させることが可能である。しかし、この手順は、ポリカーボネート(PC)が、きわめて高い粘度を有し、この含浸工程には、低分子量の、すなわち低粘度のPCを使用することが必須という欠点を有し、低分子量のPCは、使用するための適合性がきわめて乏しく、例えば、応力亀裂を誘発する作用剤、例えば極性溶剤に対する耐性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】WO2008/058971
【特許文献2】WO2008/119678
【特許文献3】CN102924857
【特許文献4】CN101555341
【特許文献5】KR100376049
【特許文献6】US2011/0020572
【特許文献7】EP−A2251377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の技術的な目的の1つは、成形体、フィルムおよびコーティングの生成に適切な性質を有する繊維複合材料(オルガノシート)を生成するための方法を提供することである。繊維複合材料は、加工しやすく、従来の溶剤に対して実質的に不活性であり、良好な応力亀裂耐性を有し、平滑な表面を有する固体複合材料をベースとするべきである。理想的には、繊維複合材料は、いかなる接着促進剤も必要としない。本発明は、同様に、本発明の方法から得られた、または得られる繊維複合材料も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
驚くべきことに、マトリックスとして少なくとも1種の特定の熱可塑性成形用コンパウンドA、前処理した強化用繊維Bの少なくとも1つのプライ、および場合により少なくとも1種の添加剤Cを含む繊維複合材料により、良好な強度を有し、応力亀裂および溶剤に耐性となる材料が得られることが見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一態様は、ポリマーマトリックスMとしての熱可塑性成形用コンパウンドA、強化用繊維Bおよび場合により少なくとも1種の添加剤Cを含む熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、以下の工程:
i)シランサイズで処理した強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fを用意する工程、
ii)成分Aに対して、少なくとも0.3mol%の化学的に反応性の官能基(官能モノマーの形態で)を有する熱可塑性成形用コンパウンドA中に、シート状構造物Fを導入する工程、
iii)ポリマーマトリックスM中の熱可塑性成形用コンパウンドA中の化学的に反応性の基を、処理した強化用繊維Bの表面における極性基と反応させる工程、
iv)場合により、少なくとも1種の添加剤Cを組み入れ、繊維複合材料を団結させる工程、
v)冷却する工程および場合によりさらなるプロセス工程
を含む、方法に関する。
【0033】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、繊維複合材料は:
a)30重量%から95重量%、多くは38重量%から75重量%の、ポリマーマトリックスとしての熱可塑性成形用コンパウンドA、
b)5重量%から70重量%、多くは24.9重量%から61.9重量%の、強化用繊維Bで構成されるシート状構造物F、および
c)0重量%から40重量%、多くは0.1重量%から25重量%の添加剤C
から生成される、方法を提供する。
【0034】
当業者は、本発明による熱可塑性成形用コンパウンドAが、繊維複合材料を生成するための方法において強化用繊維成分Bの表面における化学基と反応する少なくとも1つの化学的に反応性の官能基を有する少なくとも1種の(コ)ポリマーを含むことを認識するであろう。そのような(コ)ポリマーは、少なくとも1種の官能モノマーA−Iを含み、その官能基は、繊維複合材料を生成するための方法において、強化成分Bの表面における化学基と反応する。モノマーA−Iを含む(コ)ポリマーは、本明細書では、ポリマー成分(A−a)とも呼ばれる。
【0035】
熱可塑性成形用コンパウンドAは、そのような化学的に反応性の官能基を場合により一切含まず(したがって、官能モノマーA−Iを一切含有せず)、したがって、繊維複合材料を生成するための方法において強化用繊維成分Bの表面で化学基と反応しない1種またはそれ以上の(コ)ポリマーも場合により含み得る。そのような(コ)ポリマーは、本明細書では、ポリマー成分(A−b)とも呼ばれる。
【0036】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、繊維複合材料は:
a)30重量%から70重量%の熱可塑性成形用コンパウンドA、
b)29重量%から69重量%の、強化用繊維Bで構成されるシート状複合体F、およびc)1重量%から20重量%の添加剤C
から生成される、方法も提供する。
【0037】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、マトリックスMとして使用される熱可塑性成形用コンパウンドAが非晶質である、方法も提供する。
【0038】
この方法は、(部分的に)半透明および/または印刷可能な繊維複合材料の生成に使用できる。
【0039】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、ポリマーマトリックスMとして使用される熱可塑性成形用コンパウンドAは、非晶質であり、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、アルファ−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレンコポリマー、とりわけアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)およびアクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステルコポリマー(ASA)ならびに、挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンドをベースとする、化学的に反応性の官能基により改質されたコポリマーの群から選択される、方法も提供する。
【0040】
本発明によれば、熱可塑性成形用コンパウンドAの少なくとも1種の(コ)ポリマー成分は、本明細書に記載されている少なくとも1つの化学的に反応性の官能基を有する(コ)ポリマー(ポリマー成分(A−a))であることが認識されるであろう。したがって、先行する段落で挙げられている各コポリマー成分は、明確に挙げられているモノマーに加えて、繊維複合材料の生成中に、繊維Bの表面と反応できる反応性官能基も有し得る。したがって、前述の各(コ)ポリマーに対しても、ポリマー成分(A−a)とすることが可能である。
【0041】
したがって、前述のポリマー成分は、それらをポリマー成分(A−a)として使用する際に、一般的に、化学的に反応性の官能基を付与する(したがって、繊維Bと反応する)少なくとも1種のモノマーA−Iも含むであろう。その場合には、これらは、例えば:ポリスチレン(A−I)コポリマー、スチレン−アクリロニトリル(A−I)コポリマー、α−メチルスチレンアクリロニトリル(A−I)コポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレン(A−I)コポリマー、とりわけアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(A−I)コポリマー(ABS−(A−I))およびアクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(A−I)コポリマー(ASA−(A−I))とも呼ばれる。挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンドも可能である。
【0042】
場合により、前述のポリマー成分に関しては、それらをポリマー成分(A−a)として使用する際に、さらに、化学的に反応性の官能基を付与する第2のモノマー(またはさらに第3のモノマー)を含むことも可能である。
【0043】
したがって、例として、前述のポリマー成分(それらをポリマー成分(A−a)として使用する際に)、無水マレイン酸(MA)をモノマーA−Iとして使用する場合には、例えば:ポリスチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー、α−メチルスチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー、とりわけアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−無水マレイン酸コポリマー(ABS−MA)およびアクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマー(ASA−MA)とも呼ばれる。挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンドも可能である。他のモノマーA−Iにも同じことが当てはまると認識されるであろう。
【0044】
1種またはそれ以上のポリマー成分(A−a)に加えて、そのような官能基(ポリマー成分(A−b)として)を有さない、1種またはそれ以上の任意の他の(コ)ポリマーを使用することが場合により可能である。この場合も、例として、前述の(コ)ポリマー(したがってポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー、耐衝撃性改良アクリロニトリル−スチレンコポリマー、とりわけアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)およびアクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステルコポリマー(ASA)、また、挙げられたコポリマーとポリカーボネートまたはポリアミドのブレンド)を使用することも可能であるが、その場合には、官能基を伴わない(したがって反応性モノマーA−Iを伴わない)。
【0045】
より好ましくは、熱可塑性成形用コンパウンドAのポリマー成分(A−a)は、SANコポリマーをベースとする。
【0046】
その場合には、SANコポリマーは、生成方法において繊維Bの表面と反応するモノマーA−Iをさらに含むことは当業者に明らかであろう。したがって、SANコポリマーは、ポリマー成分(A−a)として使用する際は、SAN−(M−I)コポリマー(=SAN−(M−I)ターポリマー)、例としてSAN−MAコポリマー(=SAN−MAターポリマー)であってもよい。
【0047】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、ポリマーマトリックスMとして使用される熱可塑性成形用コンパウンドAが、ポリスチレン(無色明澄「PS」または耐衝撃性、例えば「HIPS」)である、方法も提供する。
【0048】
「化学的に反応性の官能基により改質される」という特徴は、この場合、例えば、無水マレイン酸モノマーをポリマー鎖中に組み入れることにより、コポリマーが、コポリマー中で反応性の化学基を引き起こす(成分としての)モノマーも含むことを意味する。
【0049】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、熱可塑性成形用コンパウンドAが、化学的に反応性の官能基、とりわけ無水マレイン酸(MA)により改質されたスチレン−アクリロニトリルコポリマーおよび/またはアルファ−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマーからなる、方法も提供する。
【0050】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、熱可塑性成形用コンパウンドAの化学的に反応性の官能基が、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される成分、好ましくは:無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される成分をベースとする、方法も提供する。
【0051】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、強化用繊維Bの表面が、ヒドロキシル、エステルおよびアミノ基の群からの1つまたはそれ以上の官能基を含む、方法も提供する。
【0052】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、成形用組成物Aが、成分Aに対して0.5重量%から5重量%の、化学的に反応性の官能基を有するモノマーA−Iを使用することにより生成される、方法も提供する。
【0053】
好ましくは、繊維Bは、シート状構造物F(織物、マット、不織物、スクリムまたは編物)の形態、および/または連続繊維(単一繊維の撚糸の生成物である繊維を含む)の形態を取る。
【0054】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、シート状構造物Fが、織物、スクリム、マット、不織物または編物である、方法も提供する。
【0055】
したがって、繊維Bは、好ましくは短い繊維(「チョップドファイバー」)ではなく、繊維複合材料は、好ましくは、短いガラス繊維−強化材料ではない。少なくとも50%の繊維Bは、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも10mm、または100mm超の長さを有する。繊維Bの長さも、繊維複合材料から生成される成形物Tのサイズによって決まる。
【0056】
好ましい実施形態において、繊維Bは、層中の繊維複合材料中に埋め込まれ、好ましくは、織物またはスクリムの形態、とりわけ織物の形態の繊維複合材料中に埋め込まれる。
【0057】
当業者は、前者の場合には、一般的に5mmより長くなる、より大きい切れ目のないシート状構造物Fが形成されるので、織物、マット、不織物、スクリムまたは編物が短い繊維とは異なることに気付くであろう。当業者は、この場合、シート状構造物Fは、好ましくは、それらが繊維複合材料に(大量に)浸透するような形態で存在することに気付くであろう。したがって、シート状構造物Fは、好ましくは、それらが繊維複合材料に(大量に)浸透するような形態である。「大量に浸透する」は、この場合、シート状構造物Fまたはエンドレスファイバーが、繊維複合材料の長さの50%超、好ましくは少なくとも70%、とりわけ少なくとも90%浸透することを意味する。この場合、繊維複合材料の長さは、3つの空間方向のいずれかの最大限である。より好ましくは、シート状複合体Fまたは連続繊維は、繊維複合材料の面積の50%超、好ましくは少なくとも70%、とりわけ少なくとも90%に浸透する。この場合、面積は、2つまたは3つの空間方向での最大限の面積である。繊維複合材料は、好ましくは(広大な)二次元である。
【0058】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、成分Aが、65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、19.7重量%から32重量%のアクリロニトリルおよび0.3重量%から3重量%の無水マレイン酸から生成され、シート状構造物Fは、織物、スクリム、マット、不織物または編物である、方法も提供する。
【0059】
より好ましくは、成分Aにおける無水マレイン酸の含有量は、実験例から明らかなように、0.2重量%から2重量%、より一層好ましくは0.33重量%から(約)1重量%、とりわけ(約)1重量%(0.5重量%から1.49重量%)である。
【0060】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、強化用繊維Bが、化学的に反応性の官能基として表面にシラン基を含むガラス繊維からなる、方法も提供する。
【0061】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、強化用繊維Bが、化学的に反応性の官能基として表面にシラノール基を含むガラス繊維からなる、方法も提供する。
【0062】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、繊維複合材料が、リブ構造またはサンドイッチ構造を有する、方法も提供する。リブ構造を形成するためのプロセス工程は、当業者に公知であり、そのようにする理由の1つは、成形の際に壁に大きい厚みがあることから生じる問題を避けるためである。リブ構造により、剛性を向上させ、同時に壁の厚みを抑える適切な手法が得られる。リブ構造により成分の剛性が改善される理由は、慣性モーメント領域が増加するためである。一般に、リブの寸法の改善も、生成物に関連した要因、および構造的要因を含む。
【0063】
本発明は、繊維複合材料が、層状構造を有し、2つまたはそれ以上の層を含む、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法も提供する。
【0064】
例として、さらなる層は、上に記載したものに関して同一であっても、あるいは異なっていてもよい構造物である。好ましい実施形態において、本発明は、上に記載した熱可塑性繊維複合材料の使用に関し、繊維複合材料は、層状構造および2つ超、多くは3つ超の層を含む。例として、すべての層は、同一かつ本発明に従っていてもよく、層の一部が本発明のものと異なる構造物を有していてもよい。
【0065】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、(とりわけ工程(iii)における)繊維複合材料の生成における温度が、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも300℃である、方法も提供する。
【0066】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、少なくとも200℃の温度での繊維複合材料の生成における滞留時間が、10分間以下、好ましくは5分間以下、より好ましくは2分間以下、とりわけ1分間以下である、方法も提供する。熱処理は、多くは10秒間から60秒間かかる。
【0067】
本発明は、上に記載した生成された繊維複合材料にも関する。本発明は、成形体、フィルムおよびコーティングを生成するための、上に記載した生成された繊維複合材料の使用にも関する。
【0068】
成分A
繊維複合材料は、繊維複合材料の合計重量に対して、少なくとも20重量%、一般的に少なくとも30重量%の熱可塑性マトリックスMまたは熱可塑性成形用コンパウンドAを含む。
【0069】
成形用コンパウンドAを含む熱可塑性マトリックスMは、繊維複合材料に対して好ましくは30重量%から95重量%、より好ましくは32重量%から90重量%、より一層好ましくは35重量%から80重量%、多くは38重量%から75重量%、およびとりわけ38重量%から70重量%で、繊維複合材料に存在する。好ましくは、熱可塑性マトリックスMは、熱可塑性成形用コンパウンドAに相当する。
【0070】
好ましくは、熱可塑性成形用コンパウンドAは、主に、ポリスチレンまたはコポリマー(A−1)からなる(50%超の範囲まで)。一実施形態において、熱可塑性成形用コンパウンドAは、少なくとも75重量%の範囲まで、好ましくは少なくとも90重量%の範囲までのコポリマーA−1からなる。熱可塑性成形用コンパウンドAは、コポリマーA−1のみからなっていてもよい。
【0071】
いかなる熱可塑性樹脂も、本発明の繊維複合材料に対する熱可塑性成形用コンパウンドAとして有用であるが、とりわけスチレンコポリマー、とりわけSAN、SMMA(スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー)、ABSおよびASA、また、ポリスチレン(無色明澄=「PS」)あるいは耐衝撃性ポリスチレン(=高衝撃ポリスチレン、「HIPS」)が使用される。
【0072】
既に上で明記されているように、当業者は、本発明に従って、熱可塑性成形用コンパウンドAの少なくとも1種の(コ)ポリマー成分が、本明細書に記載されている少なくとも1つの化学的に反応性の官能基を有する(コ)ポリマー(ポリマー成分(A−a))であることを認識するであろう。したがって、少なくとも1種の前述のポリマー成分(したがって、少なくとも1種の(場合により改質された)ポリスチレンおよび/または少なくとも1種のコポリマーA−1(スチレンコポリマー、とりわけSAN、SMMA、ABSおよびASA))は、少なくとも1種のモノマーA−Iを含むことが好ましい。
【0073】
例として、モノマーA−Iとして無水マレイン酸(MA)を使用する場合には、したがって、ポリスチレンは、ポリスチレン−無水マレイン酸コポリマー(S−MA)であってよく;コポリマーA−1は、例として、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー(SAN−MA)、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸コポリマー(SMMA−MA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−無水マレイン酸コポリマー(ABS−MA)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸コポリマー(ASA−MA)であってよい。
【0074】
場合により、少なくとも1種のポリマー成分(A−a)に加えて、任意のそのような官能基なしで、任意の1種またはそれ以上のさらなる(コ)ポリマーを(ポリマー成分(A−b)として)使用することが可能である。これは、場合により、ポリスチレン、SAN、SMMA、ABSおよび/またはASAであってもよいことが認識されるであろう(いずれの場合にも、いかなるモノマーA−Iも含まない)。
【0075】
熱可塑性成形用コンパウンドA(成分A)は、好ましくは非晶質成形用コンパウンドであり、熱可塑性成形用コンパウンド(熱可塑性樹脂)の非晶質状態は、高分子が、規則的な配置および配向なしで、すなわち一定の区別なしで、完全に無作為に配置されていることを意味する。
【0076】
好ましくは、全体の熱可塑性成形用コンパウンドAは、非晶質の熱可塑性を有し、したがって、可融性であり、(実質的に)非結晶性である。
【0077】
結果として、熱可塑性成形用コンパウンドAの縮小、ひいては、全体の繊維複合材料の縮小も、相対的に少ない。詳細には、成形の際に平滑な表面を得ることが可能である。
【0078】
代替法として、成分Aは、成分Aの合計重量に対して、60重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満の半結晶性成分を含む。半結晶性熱可塑性樹脂は、化学的に規則的な領域および幾何学的な領域の両方を形成するが、これは、結晶子が形成される領域が存在することを意味する。結晶子は、分子部分または分子鎖の折り畳みが平行に束ねられた配置である。個々の鎖分子は、結晶性または非晶質領域に部分的に横断してよい。これらは、多くは、2つ以上の結晶子に同時に属することさえできる。
【0079】
熱可塑性成形用コンパウンドAは、非晶質熱可塑性ポリマーおよび半結晶性ポリマーのブレンドであってもよい。
【0080】
熱可塑性成形用コンパウンドAは、例えば、(場合によりA−Iが存在する)スチレンコポリマー(例えば改質されたSAN)と1種もしくはそれ以上のポリカーボネートおよび/または1種もしくはそれ以上の半結晶性ポリマー(例えばポリアミド)のブレンドであってよく、合計の成分Aにおける半結晶性ブレンド成分の比率は、50重量%未満、好ましくは40重量%未満であるべきである。
【0081】
本発明によれば、使用される熱可塑性成形用コンパウンドAは、埋め込まれている強化用繊維Bの官能基B−Iとの共有結合に加わるモノマーA−Iを含む、少なくとも1種のコポリマーA−1を含む。熱可塑性成形用コンパウンドAにおけるモノマーA−Iの比率は、変化可能な手段で選択できる。モノマーA−Iおよび官能基(B−I)の比率が高いほど、熱可塑性成形用コンパウンドAと強化用繊維Bとの間の結合に関して、強固にすることが可能である。モノマーA−Iは、コポリマーA−1にモノマーとしてなお存在することができ、または、コポリマーA−1中に統合できる。好ましくは、モノマーA−Iは、コポリマーA−1中に統合される。
【0082】
好ましい実施形態において、コポリマーAは、コポリマーAに対して、少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、例えば0.5重量%から5重量%、とりわけ少なくとも1重量%、例えば1重量%から3重量%の比率のモノマーA−Iで形成される。
【0083】
官能基の濃度(化学的に反応性の官能基)は、熱可塑性成形用コンパウンドAを生成するために使用される100mol%のモノマーに対して、少なくとも0.3mol%、好ましくは0.5mol%、とりわけ1mol%、例えば1から3mol%である。
【0084】
好ましい実施形態において、熱可塑性成形用コンパウンドA中の官能基は、無水物、エステル、カルボキシル、アミド、イミド、アクリレートおよびグリシジル基からなる群から選択される。
【0085】
繊維Bの官能基B−Iとの共有結合に加わることができる有用なモノマーA−Iは、この種の性質を有するモノマーすべてを含む。この場合、好ましいモノマーA−Iは、ヒドロキシルまたはアミノ基との反応により共有結合に加わることができるものである。
【0086】
好ましくは、モノマーA−Iは:
(a)繊維Bの表面における官能基B−Iとの共有結合に加わることが可能である(例えばヒドロキシルおよび/またはアミノ基との反応により)、少なくとも1つの官能基;ならびに
(b)コポリマーA−1に組み入れることが可能である、少なくとも1つの第2の官能基、例えば、フリーラジカル重合によってコポリマーA−1中に組み入れられる二重結合、好ましくは末端二重結合
を有する。
【0087】
場合により、熱可塑性成形用コンパウンドAに存在するコポリマーA−1あるいは別の(コ)ポリマーは、繊維Bとの共有または非共有結合に加わることが可能な1種またはそれ以上のさらなるモノマーを含有し得る。
【0088】
好ましい実施形態において、モノマーA−Iは:
無水マレイン酸(MA)、
N−フェニルマレイミド(PM)、
tert−ブチル(メタ)アクリレート、および
グリシジル(メタ)アクリレート(GM)
からなる群から選択される。
【0089】
より好ましい実施形態において、モノマーA−Iは、無水マレイン酸(MA)、N−フェニルマレイミド(PM)およびグリシジル(メタ)アクリレート(GM)からなる群から選択される。
【0090】
これらのモノマーA−Iの2種がコポリマーA−1に存在することも可能である。
【0091】
熱可塑性成形用コンパウンドAのコポリマーA−1は、場合により、さらなる官能モノマーA−IIを含み得る。コポリマーA−1の例は、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸、スチレン/メタクリル酸グリシジル、スチレン/N−フェニルマレイミド、スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル/無水マレイン酸、メタクリル酸メチル/無水マレイン酸/N−フェニルマレイミド、アクリロニトリル/スチレン/tert−ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン/tert−ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/スチレン/tert−ブチル(メタ)アクリレートであり;コポリマーA−1の例は、とりわけ:スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸、スチレン/メタクリル酸グリシジル、スチレン/N−フェニルマレイミド、スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル/N−フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル/無水マレイン酸/N−フェニルマレイミドである。
【0092】
マトリックス成分Mは、少なくとも1種の熱可塑性成形用コンパウンドA、とりわけ繊維複合材料の生成に適しているものを含む。成形用コンパウンドAに非晶質熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。例えば、スチレンコポリマー、例としてスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)またはα−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー(AMSAN)、耐衝撃性改良スチレン−アクリロニトリルコポリマー、例としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー(SMMA)、メタクリレートアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(MABS)またはアクリル酸エステル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー(ASA)、モノマー(A−I)で改質されているスチレンコポリマーが使用される。
【0093】
前述のコポリマーと、ポリカーボネートまたは半結晶性ポリマー、例えばポリアミドのブレンドも適切であるが、但し、成分Aにおける半結晶性ブレンド成分の比率は、50重量%未満であることが条件である。きわめて詳細には、ABSコポリマー(モノマーA−Iにより改質)を、熱可塑性成形用コンパウンドAとして使用することが好ましい。
【0094】
この場合、熱可塑性成形用コンパウンドAにおける少なくとも1種のポリマー成分は、モノマーA−I(ポリマー成分(A−a))で改質されていること;好ましくは、1種またはそれ以上の前述のスチレンコポリマーが、モノマーA−Iで改質されていることが認識されるであろう。場合により、モノマーA−I(ポリマー成分A−b))で改質されていない他の任意のポリマー成分(例えばスチレンコポリマー、好ましくは上で指定されているもの)は、場合によりさらに、熱可塑性成形用コンパウンドAに存在し得る。
【0095】
前述のコポリマー(1種またはそれ以上のポリマー成分(A−a)および場合により(A−b))と、ポリカーボネートまたは半結晶性ポリマー、例えばポリアミドのブレンドも適切であるが、但し、成分Aにおける半結晶性ブレンド成分の比率が50重量%未満であることが条件である。きわめて詳細には、SAN−(M−I)コポリマー(モノマーA−Iにより改質)を、熱可塑性成形用コンパウンドAの構成成分として(場合により、単体のポリマー性構成成分としてでさえも)使用することが好ましい。
【0096】
本発明に従って、熱可塑性成形用コンパウンドAとして使用される、改質された(α−メチル)スチレン−アクリロニトリルコポリマーは、(α−メチル)スチレン−アクリロニトリルコポリマーに対して、58重量%から85重量%、好ましくは65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、14.7重量%から37重量%、好ましくは19.7重量%から32重量%のアクリロニトリル、および0.3重量%から5重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%の無水マレイン酸から製造される。
【0097】
より好ましくは、成分Aにおける無水マレイン酸の含有量は、実験例から明らかなように、0.2重量%から2重量%、より一層好ましくは0.33重量%から(約)1重量%、とりわけ(約)1重量%(0.5重量%から1.49重量%)である。
【0098】
スチレン−アクリロニトリルコポリマーとα−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマーの混合物も挙げられるべきである。
【0099】
熱可塑性成形用コンパウンドAとしての本発明のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーは、スチレン、アクリロニトリル、ブタジエンおよびさらなる官能モノマーA−I、例えばメタクリル酸メチルから公知の方法により製造される。
【0100】
改質されたABSコポリマーは、例えば:70重量%まで(例えば35重量%から70重量%)のブタジエン、99.9重量%まで(例えば20重量%から50重量%)のスチレン、および38重量%まで(例えば9重量%から38重量%)のアクリロニトリル、また、0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から10%、より好ましくは0.1重量%から5重量%、とりわけ0.1重量%から3重量%のモノマーA−I、例えば無水マレイン酸を含有し得る。成分Aは、3%から70重量%まで(例えば35重量%から70重量%)の少なくとも1種の共役ジエン、99.9重量%まで(例えば20重量%から50重量%)の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および38重量%まで(例えば9重量%から38重量%)のアクリロニトリル、および0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.1重量%から5重量%、とりわけ0.1重量%から3重量%のモノマーA−I、例えば無水マレイン酸からも製造できる。
【0101】
強く好ましい実施形態において、改質されたABSコポリマー(ポリマー成分(A−a)として)は、:35重量%から70重量%のブタジエン、20重量%から50重量%のスチレン、および9.7重量%から38重量%のアクリロニトリル、ならびにまた0.3重量%から5重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%のモノマーA−1、例えば無水マレイン酸を含み得る。成分Aは、35重量%から70重量%の少なくとも1種の共役ジエン、20重量%から50重量%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および9.7重量%から38重量%のアクリロニトリル、また、0.3重量%から5重量%、好ましくは0.3重量%から3重量%のモノマーA−I、例えば無水マレイン酸からも製造できる。
【0102】
熱可塑性成形用コンパウンドAとしての本発明の(α−メチル)スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー(ポリマー成分(A−a)として)は、(α−メチル)スチレン−メタクリル酸メチルコポリマーに対して、少なくとも50重量%、好ましくは55重量%から95重量%、より好ましくは60重量%から85重量%の(α−メチル)スチレン、4.9重量%から45重量%、好ましくは14.9重量%から40重量%のメタクリル酸メチル、および0.1重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から3重量%のモノマーA−I、例えば無水マレイン酸から製造される。(α−メチル)スチレン−メタクリル酸メチルコポリマーは、ランダムコポリマーであってよく、またはブロックポリマー構造物を有していてよい。成分Aは、成分Aに対して、少なくとも50重量%、好ましくは55重量%から95重量%、より好ましくは60重量%から85重量%のビニル芳香族モノマー、および、4.9重量%から45重量%、好ましくは14.9重量%から40重量%のメタクリル酸メチル、および0.1重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から3重量%のモノマーA−I、例えば無水マレイン酸からも製造できる。
【0103】
さらなる好ましい実施形態において、本発明の成分Aは、スチレン/ブタジエンコポリマー(各場合において、場合によりさらにモノマーM−Iが存在する)、例えば耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、例えばStyrolux(登録商標)、Styroflex(登録商標)、K−Resin、Clearen、Asaprene、ポリカーボネート、非晶質ポリエステルまたは非晶質ポリアミドである。
【0104】
当業者は、本発明によれば、熱可塑性成形用コンパウンドAの少なくとも1種の(コ)ポリマー成分は、本明細書に記載されている少なくとも1つの化学的に反応性の官能基を有する(コ)ポリマー(ポリマー成分(A−a))であることを認識するであろう。これは、前記成形用コンパウンド中に少なくとも1種の官能モノマーA−Iを含む、上に記載したポリマー成分であってよい。場合により、そのような官能基を有さない、1種またはそれ以上の任意のさらなる(コ)ポリマーを(ポリマー成分(A−b)として)使用することが可能である。
【0105】
さらなる実施形態において、マトリックスMは、少なくとも2種の異なる熱可塑性成形用コンパウンドAからなっていてよい。これらの異なるタイプの成形用コンパウンドは、例えば、異なるメルトフローインデックス(MFI)、および/または異なるコモノマーまたは添加剤を有していてよい。
【0106】
本発明によれば、「分子量」(Mw)という用語は、広い意味において、g/mol(Da)およびkg/mol(kDa)で報告できる、分子またはある範囲の分子(例えばポリマーらせん構造、ブロックポリマーまたは小分子)の質量を意味すると理解できる。好ましくは、分子量(Mw)は、従来技術で公知の方法によって判定できる重量平均である。
【0107】
好ましくは、熱可塑性成形用コンパウンドAは、60000から400000g/mol、より好ましくは80000から350000g/molの分子量Mwを有し、Mwは、テトラヒドロフラン中での光散乱(UV検出器を伴うGPC)により判定できる。熱可塑性成形用コンパウンドAの分子量Mwは、+/−20%の範囲内で異なる。
【0108】
好ましくは、熱可塑性成形用コンパウンドAは、「通常のスチレンコポリマー」と同一のモノマーから本質的に形成される、モノマーA−Iの添加とは別に化学的に反応性の官能基により改質されたスチレンコポリマーを含み、モノマーの含有量は、+/−5%、分子量は+/−20%、およびメルトフローインデックス(ISO Method 1133により220℃の温度、10kgの負荷で判定される)は+/−20%の偏差である。ISO Method 1133は、好ましくは、DIN EN ISO 1133−1:2012−03を意味すると理解される。
【0109】
好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスとして使用される熱可塑性ポリマー組成物Aのメルトボリュームレート(MVR)は、220℃/10kgで、10から70cm/10分、好ましくは12から70cm/10分、とりわけ15から55cm/10分である(ISO1133に従って測定)。
【0110】
特に好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスとして使用される熱可塑性ポリマー組成物Aのメルトボリュームレート(MVR)は、220℃/10kg(ISO1133に従って測定)で、10から35cm/10分、好ましくは12から30cm/10分、とりわけ15から25cm/10分である。
【0111】
あるいは、ポリマーマトリックスとして使用される熱可塑性ポリマー組成物Aのメルトボリュームレート(MVR)は、220℃/10kg(ISO1133に従って測定)で、35から70cm/10分、好ましくは40から60cm/10分、とりわけ45から55cm/10分である。
【0112】
あるいは、またはさらに、毛細管粘度計によって判定され、ジメチルホルムアミドに溶解したペレットについて室温(20℃)にて測定される、ポリマーマトリックスとして使用される熱可塑性ポリマー組成物Aの粘度数(J=(η/η−1)・1/c)は、50から100mL/g、好ましくは55から85mL/gになり得る。好ましい実施形態において、粘度数は、55から75mL/g、好ましくは60から70mL/g、とりわけ61から67mL/gである。好ましい代替実施形態において、粘度数は、60から90mL/g、好ましくは65から85mL/g、とりわけ75から85mL/gである。
【0113】
成分Aの適切な製造プロセスは、エマルション、溶液、バルクまたは懸濁重合であり、溶液重合(GB1472195を参照されたい)が好ましい。
【0114】
本発明の好ましい実施形態において、成分Aは、当業者に公知の方法により製造した後で単離され、好ましくは、ペレットに加工される。これに続いて、繊維複合材料を生成できる。
【0115】
成分B
繊維複合材料(オルガノシート)は、繊維複合材料に対して、少なくとも5重量%の強化用繊維B(成分B)を含有する。強化用繊維Bは、繊維複合材料に対して、好ましくは5重量%から70重量%、より好ましくは多くは10重量%から68重量%、より一層好ましくは20重量%から65重量%、多くは24.9重量%から61.9重量%、とりわけ29重量%から61重量%で、繊維複合材料に存在する。
【0116】
強化用繊維Bは、シート状構造物Fとして使用される。強化用繊維Bは、成分AのモノマーA−Iと共有結合に加わることができる官能基B−Iを有する表面を有する、任意の繊維であってよい。
【0117】
本発明によれば、強化用繊維Bの表面は、シランサイズで処理されている。このサイズは、例えば、製織の際に滑剤としての役割を果たし、製織後に化学的に除去できる。
【0118】
より好ましい実施形態において、強化用繊維Bは、ヒドロキシル基を、化学的に反応性の官能基B−Iとして、シラノール基の形態で表面に有するガラス繊維である。
【0119】
さらに、強化用繊維Bの表面は、さらなる官能基B−II、例えばヒドロキシル、エステルまたはアミノ基を有し得る。
【0120】
強化用繊維Bは、任意の配向および配置で、シート状構造物Fとして繊維複合材料中に埋め込むことができる。
【0121】
強化用繊維Bは、ランダムな均一分布としてではなく、シート状構造物として、すなわちより高い比率を有する平面、およびより低い比率を有する平面(したがって、事実上分離しているプライ)として、繊維複合材料に存在する。開始点は、好ましくは繊維複合材料の積層状または層構造物である。
【0122】
強化用繊維Bのシート状構造物Fは、例えば、織物、マット、不織物、スクリムまたは編物の形態を取り得る。このようにして形成された平坦積層体は、層ごとに組み立てられた(強化用繊維Bの)シート状強化プライ、および、少なくとも1種の熱可塑性成形用コンパウンドAを含むこれらを湿らせ、密着させるポリマーマトリックスのプライの複合体を含有する。好ましい実施形態において、強化用繊維Bは、層ごとに繊維複合材料中に埋め込まれる。強化用繊維Bは、好ましくは、シート状構造物Fの形態を取る。
【0123】
スクリムでは、繊維は理想的には、平行かつ伸縮可能な形態である。通常、エンドレスファイバーが使用される。織物は、例えばロービングのエンドレスファイバーを織ることにより形成される。繊維のうねりに付随して、繊維を織ることは必要である。うねりは、とりわけ、繊維の平行圧縮強度の低下をもたらす。マットは、通常、結合剤によって緩く結合した短い繊維および長い繊維からなる。短い繊維および長い繊維を使用するため、マットから作られた部品の機械的性質は、織物のものには及ばない。不織物は、限定された長さの繊維、エンドレスファイバー(フィラメント)または任意の長さに切った糸、ならびに、何らかの方法で不織物を形成するために加えられた、および何らかの方法で互いに結合された任意の起源から形成される構造物である。編物は、編み目の形成から生じる糸の組立てである。
【0124】
シート状構造物Fは、好ましくはスクリム、織物、マット、不織物または編物である。特に好ましいシート状構造物Fは、スクリムまたは織物である。
【0125】
成分C
さらなる成分Cとして、使用される繊維複合材料は、場合により、成分AからCの総計に対して、成分AおよびB(助剤および添加剤)とは異なる、0重量%から40重量%、好ましくは0重量%から30重量%、より好ましくは0.1重量%から25重量%、多くは1重量%から20重量%、の1種またはそれ以上の添加剤を含有する。
【0126】
粒子状ミネラルフィラー、加工助剤、安定剤、酸化防止剤、熱分解安定剤および紫外線分解安定剤、滑剤および離型補助剤、難燃剤、染料および顔料、ならびに可塑剤も挙げられるべきである。
【0127】
低分子量化合物としてエステルも挙げられるべきである。本発明によれば、これらの化合物の2種以上を使用することも可能である。一般に、化合物は、3000g/mol未満、好ましくは150g/mol未満のモル質量で存在する。
【0128】
粒子状ミネラルフィラーは、例えば、非晶質シリカ、炭酸塩、例として炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(チョーク)、粉末石英、マイカ、幅広い様々なケイ酸塩、例としてアルミナ、白雲母、黒雲母、スゾライト、スズマレタイト(tin maletite)、滑石、緑泥石、金雲母、長石、ケイ酸カルシウム、例として珪灰石またはカオリン、とりわけ焼成したカオリンにより得られる。
【0129】
UV安定剤は、例えば、様々な置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンを含み、これらは、一般的に、2重量%までの量で使用できる。
【0130】
本発明によれば、酸化防止剤および熱安定剤は、熱可塑性成形用コンパウンドに添加できる。立体障害フェノール、ヒドロキノン、この基の置換された代表的なもの、場合によりリン酸またはその塩と合わせた第二級芳香族アミン、およびこれらの化合物の混合物は、好ましくは、混合物の重量に対して1重量%までの濃度で使用できる。
【0131】
さらに、本発明によれば、滑剤および離型剤を添加することが可能であり、これらは、一般的に、熱可塑性組成物の1重量%までの量である。この場合、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキルおよびステアルアミド、好ましくはIrganox(登録商標)、長鎖脂肪酸を有するペンタエリトリトールのエステルが挙げられるべきである。ステアリン酸のカルシウム、亜鉛、アルミニウム塩、また、ジアルキルケトン、例えばジステアリルケトンを使用することが可能である。さらに、酸化エチレン−酸化プロピレンコポリマーを滑剤および離型剤として使用することも可能である。さらに、天然のおよび合成ワックスを使用することも可能である。これらは、PPワックス、PEワックス、PAワックス、グラフトPOワックス、HDPEワックス、PTFEワックス、EBSワックス、モンタンワックス、カルナウバワックスおよびビーズワックスを含む。
【0132】
難燃剤は、ハロゲン化化合物であっても、ハロゲンフリー化合物であってもよい。適切なハロゲン化合物は、臭素化化合物が塩素化化合物よりも好ましい場合、本発明の成形用コンパウンドの生成および加工の経過中に安定なままであり、その結果、腐食性ガスは放出されず、それにより効能は損なわれない。ハロゲンフリー化合物は、例えばリン化合物、とりわけホスフィンオキシドおよびリン酸誘導体、ならびにリン酸塩およびリン酸誘導体を使用することが好ましい。より好ましくは、リン化合物は、エステル、アルキル、シクロアルキルおよび/またアリール基を含有する。例えば、EP−A0363608に記載されている2000g/mol未満の分子量を有するオリゴマー性リン化合物は、同様に適切である。
【0133】
顔料および染料も存在してよい。これらは、一般的に、成分AからCの総計に対して0重量%から15重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%、とりわけ0.5重量%から8重量%の量で存在する。熱可塑性樹脂を着色するための顔料は、一般的に知られたものである;例えば、R.GachterおよびH.Muller、Taschenbuch der Kunststoffadditive [Handbook of Plastics Additives]、Carl Hanser Verlag、1983年、494から510頁を参照されたい。顔料の好ましい群の筆頭として、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白(2PbCO.Pb(OH))、リトポン、アンチモンホワイトおよび二酸化チタンが挙げられるべきである。二酸化チタンの最も一般的な結晶多形体の2つ(金紅石およびアナターゼ型)のうち、金紅石形態は、詳細には本発明の成形用コンパウンドの白色化に使用される。
【0134】
本発明に従って使用できる黒色顔料は、四三酸化鉄(Fe)、ブラックスピネル(Cu(Cr,Fe))、マンガン黒(二酸化マンガン、酸化ケイ素および酸化鉄の混合物)、コバルトブラックおよびアンチモンブラック、より好ましくは、ファーネスブラックまたはガスブラックの形態で通常使用される(この点に関してはG.Benzing, Pigmente fur Anstrichmittel [Pigments for Paints], Expert−Verlag (1988年)、78頁以降を参照されたい)カーボンブラックである。もちろん、本発明に従って、無機有彩顔料、例えば酸化クロム緑または有機有彩顔料、例えばアゾ顔料およびフタロシアニンを使用することにより、特定の色彩を確立することも可能である。この種の顔料は、一般的に市販されている。挙げられている顔料または染料、例えばカーボンブラックと銅フタロシアニンの混合物として使用することも、一般的に熱可塑性樹脂において色分散が促進されるので、有利になり得る。
【0135】
繊維複合材料を生成するための方法
好ましくは、繊維複合材料(オルガノシート)は、射出成形またはプレス法により加工される。したがって、官能基の統合、例えば、射出成形または圧縮による官能構成要素の付着により、さらなるアセンブリ工程、例えば、溶接による官能構成要素の付着に分けることが可能なので、コスト上のさらなる利点を生むことが可能である。
【0136】
ポリマーマトリックスMとしての熱可塑性成形用コンパウンドA、強化用繊維Bおよび場合により少なくとも1種の添加剤Cを含む熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法は、以下の工程:
i)シランサイズで処理した強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fを用意する工程、
ii)成分Aに対して、少なくとも0.3mol%の化学的に反応性の官能基を有する熱可塑性成形用コンパウンドA中に、シート状構造物Fを導入する工程、
iii)ポリマーマトリックスM中の熱可塑性成形用コンパウンドA中の化学的に反応性の基を、処理した強化用繊維Bの表面における極性基と反応させて、共有結合を形成する工程、
iv)場合により、少なくとも1種の添加剤Cを組み入れ、繊維複合材料を団結させる工程、
v)冷却工程および場合によりさらなるプロセス工程
を含む。
【0137】
生成方法は、複合材料の生成において慣例となっている含浸、団結および凝固の相を含み得、この作業は、認められる温度、圧力および時間を選択することで影響を受ける。
【0138】
好ましい実施形態において、繊維複合材料は:
a)30から95重量%の少なくとも1種の熱可塑性成形用コンパウンドA、
b)5重量%から70重量%の少なくとも1種の強化用繊維B、および
c)0重量%から40重量%、多くは0.1重量%から25重量%の少なくとも1種の添加剤C
を含む(またはそれらからなる)。
【0139】
サイズは、さらなる加工、例えば製織の前に、例として噴霧または浸し塗りにより、強化用繊維Bに適用される含浸用液体である。サイズ処理繊維は、より柔軟であり、機械的応力に耐性である。サイズ処理がないと、縦糸が容易に脆性になり、最終的に、横糸との定期的な摩擦の結果として破断する恐れがある。
【0140】
例えば、ガラス繊維の生成において、これらは溶融物から高速で引き込まれる。この場合、繊維の厚さは、ダイのサイズおよび引取速度により決定する。高温の繊維は、水を噴霧し、浸漬ロールでサイズを湿らせることにより冷却し、次いで、個々のフィラメントを束ねて、ロービングを形成する。サイズは複数の機能を有する。ロービングは、サイズ結合剤により結合し、ひいては輸送の過程での摩損および個々の繊維の引き抜きまたは破損に対する十分な安定性が得られる。サイズは、通常、希釈剤として水を含むので、ロービングは、乾燥していなければならない。この目的のために、これらは、湿った形態で巻き上げられ(ケーキと呼ばれるものを得るため)、次いで乾燥させ、または湿った形態で加工し、後の段階で乾燥させる。このようにして得られたガラス繊維は、強化のために熱可塑性樹脂中に組み入れることができる。一般に、乾燥したガラス繊維におけるサイズの重量に対する比率は、0.1%から10%の間である。
【0141】
工程(ii)における、少なくとも1つのシート状構造物Fの、熱可塑性マトリックスM中への組み入れは、好ましくは、熱可塑性成形用コンパウンドAの溶融、および、それらと、工程(i)からの強化用繊維Bで構成される少なくとも1つのシート状構造物Fの接触により達成される。
【0142】
方法の工程(ii)である、熱可塑性成形用コンパウンドAの溶融、およびこの溶融物と強化用繊維Bの接触は、目的に適している任意の手段で達成できる。そのような含浸において、少なくとも1種の熱可塑性成形用コンパウンドAからなるマトリックスMは、自由流動状態に変換でき、強化用繊維Bは、湿らせて界面層を形成できる。
【0143】
工程(ii)および(iii)も同時に実施できる。その場合には、熱可塑性成形用コンパウンドAと強化用繊維Bの接触の直後に化学反応が続き、そこで、モノマーA−Iが強化用繊維Bの表面と共有結合を形成する(一般的に、官能基B−Iへの結合による)。これは、例として、エステル化であってよい(例えば、ガラス繊維のシラノール基を用いた無水マレイン酸モノマーのエステル化)。あるいは、共有結合の形成は、別々の工程でも開始することができる(例えば温度を上昇させ、フリーラジカル開始剤を増加させ、および/または光開始を向上させることにより)。これは、任意の適切な温度で実施してよい。
【0144】
工程(ii)および/または(iii)は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも300℃、とりわけ300℃〜340℃の温度にて実施する。
【0145】
この場合、好ましくは、熱分解の発生は最少レベルにし、使用される成分は熱分解を受けないようにすることが確実にされるべきである。
【0146】
したがって、好ましい実施形態において、工程(ii)および/または(iii)を実施する際に、200℃以上の温度での滞留時間は、10分間以下、好ましくは5分間以下、より一層好ましくは2分間以下、とりわけ1分間以下である。多くは、10から60秒間は、熱処理に十分である。
【0147】
この方法、とりわけ工程(ii)および(iii)は、原則として、任意の圧力(好ましくは大気圧または高圧)で、成分の圧着の有無にかかわらず実施できる。高圧での圧着の場合には、繊維複合材料の性質を改善することが可能である。
【0148】
したがって、好ましい実施形態において、工程(ii)および/または(iii)は、10〜60秒間のプレス時間で5〜100barの圧力にて、好ましくは15〜40秒間のプレス時間で10〜30barの圧力にて実施した。
【0149】
少なくとも1つの化学的に反応性の官能基(A−I)を備えたスチレンコポリマー、すなわち熱可塑性成形用コンパウンドAとしての非晶質熱可塑性マトリックスを使用することが好ましい。したがって、この種の直線状部材に対して、半結晶性熱可塑性樹脂と比較して、本明細書で後述する用途のための表面の性質を著しく向上させることが可能であるが、その理由は、非晶質熱可塑性樹脂の縮小がわずかなことにより、繊維が多い領域(織物の場合には通過点)および繊維が少ない領域のおかげで、表面トポロジーが著しく改善されるためである。
【0150】
工程(iv)において、団結させる際に、繊維複合材料のエアポケットが減少し、良好な結合が、熱可塑性成形用コンパウンドAと強化用繊維Bとの間に確保される(とりわけ、これらが層状に埋め込まれた強化用繊維Bである場合)。含浸および圧密化の後で、細孔を(実質的にほとんど)含まない材料の複合体を得ることが好ましい。添加剤も、場合により工程(iv)で組み入れることができる。
【0151】
あるいは、前記工程は、別々の順序で遂行できる。したがって、例えば強化用繊維Bのプライを、別に製造した強化用繊維Bと共に製造することが可能であり、この場合には、強化用繊維Bの、熱可塑性成形用コンパウンドAのマトリックスの含浸が行われる。その後、異なる繊維−マトリックス接着を有する強化用繊維Bを備えた含浸させたプライを生じさせることができ、これは、さらなる作業工程において団結させて、繊維複合材料として材料の複合体を得ることができる。
【0152】
強化用繊維Bのプライを、熱可塑性成形用コンパウンドAのマトリックスと積層する前に、強化用繊維Bの少なくとも一部に前処理を施すことが可能であり、その工程中、繊維−マトリックス接着が後に影響を受ける。前処理は、例えば、コーティング工程、エッチング工程、加熱処理工程または機械的表面処理工程であってよい。より詳細には、例えば、強化用繊維Bの一部を加熱することにより既に適用されている接着促進剤を部分的に除去することができる。
【0153】
強化プライは、生成方法(積層)において、互いに完全に結合できる。この種の繊維複合材料マットにより、最適化した強度および繊維方向における剛性が得られ、特に有利な手段でさらに加工できる。
【0154】
この方法は、成形物Tの生成も含んでよい。
【0155】
好ましい実施形態において、この方法は、さらなる工程(v)として、三次元造形して、成形物Tを得る工程を含む。
【0156】
これは、任意の望ましい手段で、例えば、エンボスローラであってもよい造形体(shaping body)による機械的造形によって達成できる。熱可塑性成形用コンパウンドAは、なお(部分的に)溶融形態である、形成可能な余地を残した繊維複合材料を造形することが好ましい。あるいは、またはさらに、硬化した繊維複合材料に関しては、低温で造形することも可能である。
【0157】
好ましくは、方法の終わりに、(大量に)固体成形物Tが得られる。
【0158】
したがって、好ましくは、この方法は、さらなる工程(v)として、成形物Tまたは工程(iv)から得られた生成物を硬化する工程を含む。この工程は、凝固とも呼ばれる。一般的に、熱を除去することより起こる凝固は、続いて即時使用できる成形物Tを生じ得る。
【0159】
場合により、成形物Tは、まださらなる加工(例えばバリの除去、研磨、着色など)を施すことができる。
【0160】
この方法は、連続的に、半連続的にまたはバッチ式で進行させてよい。
【0161】
好ましい実施形態において、この方法は、連続法、とりわけ平滑なフィルムまたは三次元エンボス加工フィルムを生成するための連続法として実施される。
【0162】
あるいは、半連続的にまたはバッチ式で、成形物Tを生成することも可能である。
【0163】
オルガノシートは、非晶質熱可塑性マトリックスMを有する。これらは、射出成形法によりリブ構造に付着でき、外層として発泡熱可塑性核またはハニカム核に積層される(溶接される)。
【0164】
リブ構造(リブ構造の形成)により成分の剛性が改善される理由は、慣性モーメント領域が増加するためである。一般に、リブ構造の理想的な寸法は、生成物に関連した、美的および構造的外観を含む。
【0165】
特に好ましい実施形態において、本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための、本発明の方法であって、
成分Aが、
65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、
19.9重量%から32重量%のアクリロニトリル、および
0.1重量%から3重量%の無水マレイン酸
から生成され、
シート状構造物Fが、スクリム、織物、マット、不織物または編物であり、
少なくとも200℃の温度での繊維複合材料を生成するための滞留時間が、10分間以下である、
方法に関する。
【0166】
特に好ましい実施形態において、本発明は、熱可塑性繊維複合材料を生成するための方法であって、熱可塑性繊維複合材料が、
a)30重量%から95重量%のポリマーマトリックスとしての熱可塑性成形用コンパウンドAであって、
成分Aが65重量%から80重量%の(α−メチル)スチレン、19.7重量%から32重量%のアクリロニトリルおよび0.3重量%から3重量%の無水マレイン酸から生成され、シート状構造物Fが織物、スクリム、マット、不織物または編物である、熱可塑性成形用コンパウンドA、
b)5重量%から70重量%の強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fであって、強化用繊維Bの表面が、ヒドロキシル、エステルおよびアミノ基の群から1つまたはそれ以上の官能基を含む、シート状構造物F、および
c)0重量%から40重量%、多くは0.1重量%から25重量%の添加剤C
を含み、前記方法が、
以下の工程:
i)シランサイズで処理した強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fを用意する工程、
ii)少なくとも200℃にて、成分Aに対して、少なくとも0.3mol%の化学的に反応性の官能基を有する熱可塑性成形用コンパウンドA中に、シート状構造物Fを導入する工程、
iii)ポリマーマトリックスM中の熱可塑性成形用コンパウンドA中の化学的に反応性の基を、処理した強化用繊維Bの表面における極性基と反応させる工程であって、少なくとも200℃の温度での滞留時間が10分間以下である、工程、
iv)場合により、少なくとも1種の添加剤Cを組み入れ、繊維複合材料を団結させる工程、
v)冷却する工程および場合によりさらなるプロセス工程、
を含み、繊維複合材料は、好ましくはリブ構造またはサンドイッチ構造を有し、ならびに/または繊維複合材料は層状構造を有し、2つ超の層を含む、方法に関する。
【0167】
より一層好ましくは、この方法は、本明細書に記載されている1つまたはそれ以上のさらなる性質も有する。
【0168】
強化用繊維Bは、強化用繊維Bで構成されるシート状構造物Fとして、単一のプロセス工程で、熱可塑性成形用コンパウンドAを含むマトリックスMを含浸させ、団結させることができる。繊維複合材料は、詳細にはこのような効率的な手段で生成できる。
【0169】
さらなる実施形態において、強化用繊維Bのさらなる基は、さらに別の繊維−マトリックス接着によりマトリックスMと連結する。
【0170】
異なる繊維−マトリックス接着を伴う強化用繊維Bの群が3つ以上使用される場合、繊維複合材料の挙動は、調整され、きわめて個別的な手段で、個々にさらに影響を受ける。この場合、各場合に、異なるタイプの繊維または同一のタイプの繊維を使用することが可能である。
【0171】
同様に、縦糸および横糸に関しては、異なる強化用繊維からなること、および/または厚さの点で異なることが可能である。さらに、縦糸および横糸は、異なるサイズまたは異なるサイズの濃度で処理される。
【0172】
強化用繊維Bの各群は、様々な繊維−マトリックス接着を引き起こす様々な接着促進剤組成物を用いて得られる。様々な組成物は、濃度のみ異なっていてよく、あるいは、異なる組成を有していてよい。不可欠なことは、様々な接着促進組成物が、有意に異なる繊維−マトリックス接着を確立することである。
【0173】
早ければ強化用繊維Bの生成の際に、接着促進剤は、サイズの一部として適用してよい。しかし、熱デサイジング、または、既に適用されているサイズを壊す、もしくは除去する他のある種のデサイジング作業も追加することが可能である。その後、次いで、強化用繊維は、接着促進剤を含み、それぞれのマトリックスおよび望ましい繊維−マトリックス接着に適合する仕上げ剤でコーティングすることが可能である。あるいは、ポリマー層を使用することも可能である。例えば、本発明の繊維複合材料において、アミノシラン接着促進剤と共に、フィルム形成剤として作用する架橋性ポリエーテルウレタンおよびポリエステルウレタンポリマーを含む接着促進剤を使用することが可能である。
【0174】
好ましくは、仕上げた強化用繊維(例えば織物)は、改質されたシランサイズ(例えばFinish FK 800)で仕上げられている。これらは、手触りがきわめて柔らかく、裁断する際にまったくほつれない。
【0175】
本発明は、後続する実施例、図および特許請求の範囲で詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1-1】実験番号1に従って得られた繊維複合材料Wを示す図である。図1Aは、視覚的な資料を示す図である。図1Bは、水平の並びで配置した積層繊維複合材料W(左側:25倍の倍率、右側:50倍の倍率)を通る顕微鏡断面図を示す図である、繊維は、熱可塑性成形用コンパウンドの明色層の間における水平の暗色層としてはっきりと明らかである。図1Cは、200倍の倍率を示す図である。含浸は、一部の箇所で不完全なことが明らかである。
図1-2】図1−1の続き。
図2-1】実験番号2に従って得られた繊維複合材料Wを示す図である。図2Aは、視覚的な資料を示す図である。図2Bは、水平の並びで配置した積層繊維複合材料W(左側:25倍の倍率、右側:50倍の倍率)を通る顕微鏡断面図を示す図である。繊維は、熱可塑性成形用コンパウンドの明色層の間における水平の暗色層としてはっきりと明らかである。図2Cは、200倍の倍率を示す図である。含浸は、部分的に不十分なことが明らかである。
図2-2】図2−1の続き。
図3-1】実験番号3に従って得られた繊維複合材料Wを示す図である。図3Aは、視覚的な資料を示す図である。図3Bは、水平の並びで配置した積層繊維複合材料W(左側:25倍の倍率、右側:50倍の倍率)を通る顕微鏡断面図を示す図である。繊維の層は明らかではない。図3Cは、200倍の倍率を示す図である。含浸は、実質的に十分なことが明らかである。
図3-2】図3−1の続き。
図4-1】実験番号4に従って得られた繊維複合材料Wを示す図である。図4Aは、視覚的な資料を示す図である。図4Bは、水平の並びで配置した積層繊維複合材料W(左側:25倍の倍率、右側:50倍の倍率)を通る顕微鏡断面図を示す図である。繊維の層は明らかでない。図4Cは、200倍の倍率を示す図である。含浸は、個々の箇所で不完全なことが明らかである。
図4-2】図4−1の続き。
図5-1】実験番号5に従って得られた繊維複合材料を示す図である。図5Aは、視覚的な資料を示す図である。図5Bは、水平の並びで配置した積層繊維複合材料W(左側:25倍の倍率、右側:50倍の倍率)を通る顕微鏡断面図を示す図である。繊維の層は明らかではない。図5Cは、200倍の倍率を示す図である。含浸は、数カ所で不完全なことが明らかである。
図5-2】図5−1の続き。
図6】プレスの取入口V25−V28における繊維複合材料W(この場合:ガラス繊維織物)の生成を示す図である。この種の生成方法により、連続した生成が可能になることが、はっきりと明らかになる。さらに、パターンのエンボス加工により、繊維複合材料Wも三次元的に形成可能であることが明らかである。
図7】望ましくない表面の波(テクスチャ)の形成が発現したことを、概略的形態として示す図である。
【実施例】
【0177】
後続する実験は、繊維強化熱可塑性樹脂半製品、積層体およびサンドイッチ状シートを準連続生成するために、ポリマーフィルム、溶融物または粉末から繊維/フィルム複合体を生成することが可能な、間欠的な熱プレスで実施した。
シート幅:660mm
積層体の厚さ:0.2から9.0mm
積層体の許容誤差:半製品に相当する最大±0.1mm
サンドイッチ状シートの厚さ:最大30mm
産出量:性質および成分の濃度に応じて約0.1〜60m/時
名目進行速度:5m/時
成形圧力:圧縮単位5〜25bar、(場合による)最小および最大成形サイズに無限に調整可能
成形温度調整:3箇所の加熱域および2箇所の冷却域
成形温度:400℃まで
成形長さ:1000mm
プレスの開口部距離:0.5から200mm
【0178】
溶融物の樹脂加工の技術的データは:
繊維強化熱可塑性樹脂半製品を生成するための中央の位置で、断続的に溶融物を放出するスクリュー直径:35mm
最大シリンダ容積:192cm
最大スクリュー速度:350rpm
最大放出流量:108cm/秒
最大放出圧力:2406bar(単位圧)
【0179】
曲げ応力および曲げ係数は、DIN 14125:2011−05に従って判定した。成分:
A1:以下の組成のスチレン−アクリロニトリル(S/AN)コポリマー:75重量%のスチレン(S)および25重量%のアクリロニトリル(AN)、粘度数60、Mw250000g/mol(単分散ポリスチレン較正標準を用いた標準カラムでの、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した)
A2:組成(重量%):74/25/1;官能基の濃度:74重量%のスチレン(104.2g/mol)および25重量%のAN(53.1g/mol)中の1重量%のMA(98.1g/mol)、Mw250000g/molのS/AN/無水マレイン酸(MSA)コポリマー(単分散ポリスチレン較正標準を用いた標準カラムでの、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した)
A3:A2:A1の混合物=2:1、官能基の濃度:0.67重量%のMA
A4:A2:A1の混合物=1:2、官能基の濃度:0.33重量%のMA
B1:二方向ガラス繊維スクリム 0/90°、坪量=およそ590g/m
縦+横=1200tex(=1200g/1000m)[例えばP−D Glasseiden GmbHのKN G 590.1]
B2:ガラス繊維綾織2/2、坪量=およそ576g/m、縦+横=1200tex[例えばP−D Glasseiden GmbHのGW 123−580K2]
【0180】
請求項1に記載されている方法の組合せおよびパラメータ設定は、以下の表に一覧表示されている:
【0181】
【表1】
【0182】
表1は、実施した実験における条件を示す。
この状況では、反応物および温度およびプレス時間は変動した。一連の試験すべてにおける圧力は約20barであった。
【0183】
【表2】
【0184】
表2で示されている値は、各場合における9回の測定の平均値である。
表2は、本発明のオルガノシートV5、V7、V9、V12、V13およびV14が、75重量%のスチレン(S)および25重量%のアクリロニトリル(AN)を含むマトリックスを有するオルガノシート(比較10および比較15)より高い平均最大曲げ応力を有することを示す。V9と比較10の比較も、同一条件下(T=320℃およびt=30秒)で、本発明のオルガノシートが縦方向および横方向の両方で、より高い曲げ応力を有することを示す。
【0185】
熱可塑性成形用コンパウンドAおよび強化用繊維Bを伴う、繊維複合材料を生成するための方法により、改善した生成物が得られることを見出した。
【0186】
多層繊維複合材料のさらなる検査
間欠的な熱プレス(IVHP)の技術的データ:
繊維で強化した半製品、積層体およびサンドイッチ状シートの準連続生成
シート幅:660mm
積層体の厚さ:0.2から9.0mm
積層体の許容誤差:半製品に相当する最大±0.1mm
サンドイッチ状シートの厚さ:最大30mm
産出量:性質および成分の厚さに応じて約0.1〜60m/時
名目進行速度 5m/時
成形圧力:圧力単位、5〜25bar、(場合による)最小および最大成形サイズに無限に調整可
成形温度調整:3箇所の加熱域および2箇所の冷却域
成形温度:400℃まで
成形長さ:1000mm
プレスの開口部距離:0.5から200mm
生成方向:右から左
【0187】
溶融物の樹脂加工の技術的データ:
繊維強化熱可塑性樹脂半製品を生成するための中央の位置で、断続的に溶融物を放出する:
スクリュー直径:35mm
最大シリンダ容積:192cm
最大スクリュー速度:350rpm
最大放出流量:108cm/秒
最大放出圧力:2406bar(単位圧)
この場合:
溶融体積:22ccm
等圧=圧力−調整したプレス操作
等積=体積−調整したプレス操作
T[℃]=温度域の温度プレスは3箇所の加熱域および2箇所の冷却域を有し、生成方向で特定されている)
p[bar]=サイクルごとの圧力:等積 20
s[mm]=圧縮厚さに対する距離の限定:1.1mm
温度プロファイル:(i)210から245℃、約220℃
(ii)300から325℃、約300℃
(iii)270から320℃、約280から320℃
(iv)160から180℃
(v)80℃
t[秒]=サイクルごとのプレス時間:20〜30秒
構造物/積層:中間の溶融層を有する6−プライ構造物;生成方法:ダイレクトメルト(SD)
【0188】
マトリックス成分A:
M1(SANタイプ):スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸(SAN−MA)ターポリマー(S/AN/MA:74/25/1)、1重量%のMA含有量および220℃/10kgで22cm/10分のMVR(ISO1133に対して測定した);
M1bは、前述の成分M1に相当し、インダストリアルブラック(industrial
black)をさらに2重量%マトリックス中に混合した。
M2(SANタイプ):スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸(SAN−MA)ターポリマー(S/AN/MA:73/25/2.1)、2.1重量%のMA含有量、220℃/10kgで22cm/10分のMVR(ISO1133に対して測定した);M2bは、前述の成分M2に相当し、インダストリアルブラックをさらに2重量%マトリックス中に混合した。
M3(SANタイプ):33重量%のM1および67重量%のSANコポリマーLuran VLNのブレンド、したがって、ブレンド全体に0.33重量%の無水マレイン酸(MA);
M3bは、前述の成分M3に相当し、インダストリアルブラックをさらに2重量%マトリックス中に混合した。
PA6:半結晶性自由流動ポリアミドDurethan B30S
PD(OD):光学的ディスク用光学グレードの自由流動性の非晶質ポリカーボネート;繊維成分B:
ガラスフィラメントの綾織(略称GF−KG(LR)またはLR)、2/2綾織、坪量 290g/m、EC9 68texロービング、TF−970仕上げ、供給幅1000mm(タイプ:01102 0800−1240; 製造:Hexcel:Lange+Ritterから得た)
ガラスフィラメントの綾織(略称GF−KG(PD)またはPD)、2/2綾織、坪量 320g/m、320texロービング、350仕上げ、供給幅635mm(タイプ:EC14−320−350、製造および供給業者:PD Glasseide GmbH Oschatz)
ガラスフィラメントスクリム(略称GF−GE(Sae)またはSae) 0°/45°/90°/−45°、坪量 313g/m、主に300texロービング、PAサイズ仕上げ、供給幅655mm(タイプ:X−E−PA−313−655、番号7004344、製造および供給業者:Saertex GmbH&Co.KG)
Sae n.s.=300g/m、ガラスフィラメントスクリム、製造者の名称:Saertex new sizing、+45°/−45°/+45°/−45°
ガラス繊維不織物(略称GV50)、坪量50g/m、繊維直径10μm、供給幅640mm(タイプ:Evalith S5030、製造および供給業者:Johns Manville Europe)
【0189】
視覚的評価
生成されたすべての繊維複合材料は、各場合において、連続法で、平坦なオルガノシートとして(大面積で)生成可能であり、何の問題もなく、これらを所定の大きさ(積層可能な場合、慣例的に輸送される寸法、例えば1m×0.6m)に裁断することが可能であった。透明な繊維複合材料の場合には、埋め込まれている繊維材料は、詳細なバックライト観察でもようやく明らかになった。(黒い)着色マトリックスを有する繊維複合材料の場合には、埋め込まれた繊維材料は、より近くでのバックライトの視覚的観察でさえ、明らかでなかった/ほとんど明らかでなかった。
【0190】
顕微鏡的評価
この場合には、エピルミネセンス顕微鏡法(epiluminescence microscopy)により、欠損(へこみ、くぼみなど)を、また、共焦点レーザー顕微鏡法(LSM)により表面性質を評価した。LSMによって、局所測定領域の三次元(3D)測量の上面図(7.2mm×7.2mm)、ならびに、様々なプロファイルフィルタのスケーリングおよび使用の後で、高さにおける差の二次元(2D)表現を作成した。プロファイルフィルタ(騒音フィルタおよびティルトフィルタ)を使用することにより、測定の誤差および試料の一般的なひずみ/ゆがみを調整した。2Dプロファイルが高い画像を、統合ソフトウェアにより定義されている測定ラインによりラインプロファイルに変換し、コンピューター支援で評価した。
【0191】
それぞれのマトリックス中に埋め込まれた繊維の適切なシート状構造物4プライ(この場合GF−KG(PD)(4)またはSae(4))を有する各繊維複合材料を生成した。試料の比較可能性をさらに向上させるために、薄いガラス繊維不織物(GV50、上記参照)を、生成された繊維複合材料の各面に適用した。これは、機械的性質に対して顕著な効果を有さなかった。
【0192】
多数の繊維複合材料で、平均の波の深さ(MW Wt)および粗さの中央値(Ra)を確かめた。マトリックスが、繊維と反応できる官能成分を含むすべての繊維複合材料に対する、MW Wtは、明瞭に10μm未満であり、一方、PA6およびPD(OD)マトリックスと同等の繊維複合材料の場合には、明瞭に10μm未満であった。確かめられた粗さの中央値も、本発明の繊維複合材料よりはるかに少なかった。これは、以下の測定値により例として示される。
【0193】
【表3】
【0194】
これは、織物の代わりにスクリム(例えばSae)が使用された場合、同様に明白になる:
【0195】
【表4】
【0196】
さらなる試験において、縦方向および横方向における強度を別々に検査した。繊維複合材料は、縦方向および横方向の両方できわめて安定であることが示された。繊維複合材料は、一般的に、横方向より縦方向で一層安定である。
【0197】
機械的性質
マトリックス成分A
マトリックス成分Aは、上に記載されている通りである。
繊維成分B(上記でない場合)
FG290=ガラスフィラメント織物、290g/m、製造者の名称:Hexcel HexForce(登録商標) 01202 1000 TF970
FG320=ガラスフィラメント織物、320g/m、製造者の名称:PD Glasseide GmbH Oschatz EC14−320−350
Sae=MuAx313、ガラスフィラメントスクリム、300g/m、製造者の名称:Saertex X−E−PA−313−655
Sae n.s.=ガラスフィラメントスクリム、300g/m、製造者の名称:Saertex new sizing、+45°/−45°/+45°/−45°
層の数(例えば4×=各繊維スクリムまたは各繊維4層)
【0198】
続いて、透明な繊維複合材料を生成し、そのそれぞれの中に、平坦な繊維材料を導入した。生成された各繊維複合材料は、約1.1mmの厚さを有していた。試料の比較可能性をさらに向上させるために、薄いガラス繊維不織物(GV50、上記参照)を、生成された繊維複合材料の各面に適用した。これは、機械的なまたは光学的性質に対して顕著な効果を有さない。試料に関しては、DIN EN ISO 14125に従って、以下の曲げ強度を確かめた:
【0199】
【表5】
【0200】
続いて、2重量%のインダストリアルブラックがマトリックス中に混合されている黒色繊維複合材料をさらに生成し、そのそれぞれの中に平坦な繊維材料を導入した。生成された各繊維複合材料は、約1.1mmの厚さを有していた。試料の比較可能性をさらに向上させるために、薄いガラス繊維不織物(GV50、上記参照)を、生成された繊維複合材料の各面に適用した。これは、機械的または光学的性質に対して顕著な効果を有さない。試料に関しては、DIN EN ISO 14125に従って、以下の曲げ強度を確かめた:
【0201】
【表6】
【0202】
要約すれば、使用される織物(FG290およびFG320)は、加工して、特に高い曲げ強度を有する繊維複合材料を得ることができると見出した。マトリックスが繊維と反応する成分(この場合:無水マレイン酸(MA))を含む、本発明の繊維複合材料は、そのような成分がなくても、比較の成形用コンパウンド、例えばPC(OD)またはPA6より有意に高い曲げ強度を有する。
【0203】
短いガラス繊維で強化された、本発明によらないLuran 378P G7繊維複合材料に関する比較では、わずか150MPaの曲げ強度、したがって、はるかに低い曲げ強度しか見出せなかった。
【0204】
さらに、本繊維複合材料に関しては、耐衝撃性または浸透特性(ISO 6603に従うダート試験)を確かめた。この場合も、本繊維複合材料は、Fm>3000Nの高い安定性を示した。
【0205】
任意のさらなる加工
得られた繊維複合材料は、良好な成形性を有して、三次元半製品が得られる、例えば半シェル形態での半製品が得られることも実験的に示した。さらに、得られた本繊維複合材料は、印刷可能かつ積層可能であることも示した。
【0206】
実験結果の要約
繊維複合材料(オルガノシート)を得るための、様々なマトリックス系を用いた、様々なガラス繊維系テキスタイル系の評価により、良好な繊維複合材料(オルガノシートおよびそこから生成される半製品)が再現可能な手段で生成できることが示された。これらは、無色または有色形態で生成できる。繊維複合材料は、良好からきわめて良好な光学的性質、触質性および機械的性質(例えば曲げ強度および耐破壊性に関して)を示した。機械的な観点では、織物は、スクリムよりやや高い強度および剛性を示した。スチレンコポリマー系マトリックス(SANマトリックス)は、メカニカルインデックスの観点では、代わりのマトリックス、例えばPCおよびPA6よりも良好な繊維複合材料を生じる傾向があった。本発明の繊維複合材料は、連続法によって半自動的にまたは完全自動的に生成できた。本発明の繊維複合材料(オルガノシート)は、三次元半製品を得るために良好な形成性を有する。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7