(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
剥離ライナーの第2基準線を挟んで第1谷折り部とは正反対の位置に第2谷折り部を有するとともに、該第2谷折り部を挟んで、第2基準線と正反対の位置に第2山折り部を有し、
該第2谷折り部と第2基準線との間隔が、該第2山折り部と第2谷折り部との間隔に略等しく、
剥離ライナー上にその中央線が第2山折り部の折り線上に位置するように配設された平面形状を有する第3層を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の経皮吸収型製剤前駆物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の経皮治療システムは、具体的には、プラスチックフィルム等の支持体上に活性物質(薬物)を含有する粘着剤層を形成したシート(真のコンパートメント)を活性物質不浸透フィルムでラミネートして保存する一方、液状浸透促進剤が貯蔵された、外面に粘着性を付与したバック(促進剤コンパートメント)を作製して保存し、使用時に、液状浸透促進剤の浸透性をコントロールするプラスチックフィルム(コントロール膜)を介して両者を接着した多層構造体(
図1a−1bs参照)に組み立てて、皮膚に適用するというものであり、2つのコンパートメントを個別に作製しなければならない。また、目的の活性物質の過飽和状態での送達が可能となるシステムとするためには、多層構造体における両方のコンパートメントの積層位置や密着状態が適切な位置や状態となるように組み立てなければならず、使用者(患者)自身がシステムを組み立てるには作業が極めて煩雑であり、また、正確に組み立てられないことも多く生じることが考えられる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、互いに混合状態若しくは接触した状態で保存されると悪影響を及ぼし合うことが懸念される経皮吸収型製剤の構成成分を互いに分離した状態で保存でき、使用時には、所定の積層構成の経皮吸収型製剤を簡便に得ることができる、経皮吸収型製剤前駆物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、谷折り部と山折り部が所定の間隔で形成された剥離ライナー上に、製造すべき所定の経皮吸収型製剤において上下に積層される関係にある2つの層を分離して配設しておけば、互いに悪影響を及ぼし合うことが懸念される経皮吸収型製剤の構成成分を互いに分離した状態で保存でき、しかも、使用時には使用者(患者)が剥離ライナーを谷折り及び山折りするだけで、簡単に所定の積層構成からなる経皮吸収型製剤を各層の位置ずれを生じることなく組み立てることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 1つの第1谷折り部と、1つまたは2つの第1山折り部を有する剥離ライナーであって、該第1谷折り部を境に離反する一方側と他方側の該第1谷折り部から略等間隔の位置に第1基準線と第2基準線を有し、該第1基準線および第2基準線の少なくとも一方が第1山折り部の折り線である剥離ライナーと、
該剥離ライナー上に、その中央線が第1基準線上に位置するように配設された平面形状を有する第1層、および、その中央線が第2基準線上に位置するように配設された平面形状を有する第2層とを有し、
該第1層および/または第2層が薬物を含む
ことを特徴とする経皮吸収型製剤前駆物。
[2] 第1層および第2層のうちの一方が薬物含有層であり、他方が粘着剤層である、上記[1]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[3] 粘着剤層が添加剤を含有する、上記[2]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[4] 粘着剤層上に制御層が積層されている、上記[2]または[3]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[5] 粘着剤層が薬物を含有する、上記[2]または[3]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[6] 薬物含有層上に基材層および/またはカバー層が積層されている、上記[2]〜[5]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[7] 剥離ライナーの第2基準線を挟んで第1谷折り部とは正反対の位置に第2谷折り部を有するとともに、該第2谷折り部を挟んで、第2基準線と正反対の位置に第2山折り部を有し、
該第2谷折り部と第2基準線との間隔が、該第2山折り部と第2谷折り部との間隔に略等しく、
剥離ライナー上にその中央線が第2山折り部の折り線上に位置するように配設された平面形状を有する第3層を有する、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[8] 第3層がカバー層である、上記[7]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
[9] 第3層が薬物含有層である、上記[7]記載の経皮吸収型製剤前駆物。
【0010】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、「中央線」とは層を鉛直上方から見たときの層表面(すなわち、平面)の中心点を通って該表面の面積を略等しい2つの面積に分割する線を意味する。
また、「剥離ライナー上」とは、基本的に、剥離ライナーの離型処理された面上を意味する。
また、「剥離ライナー」における「基準線」とは、基準線が山折り部の折り線でないときは、剥離ライナーに、着色、型押し等で付した少なくとも視覚または触覚によって認識できる直線のことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物によれば、経皮吸収型製剤を構成する上下に積層される関係にある2つの層を分離して保管することができるので、例えば、薬物と反応性を有する化合物を薬物とは別の層に含有させて保管することができる。このため、保管中における薬物の安定性を維持することができる。そして、経皮吸収型製剤による薬物投与を行う際は、剥離ライナーに形成された山折り部を山折りし、谷折り部を谷折りすることで、簡単に、所定の積層構成からなる経皮吸収型製剤を各層の平面方向の位置ずれを起こすことなく組み立てることができる。従って、例えば、使用者(患者)自身が、経皮吸収型製剤による薬物投与を行う際に、所期の性能が得られる経皮吸収型製剤を簡単かつ確実に組み立てて、皮膚に貼付することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施態様に即して説明するが、それらの詳細な説明および特定の例は、単に例示的な性質のものであり、決して本発明、その応用、または用途を限定することが意図されるわけではない。なお、以下の説明中、「略等間隔」や「間隔が略等しい」とは、発明の目的に照らして2つの間隔を等しくすべきことを意味しており、発明の目的を達成できる範囲内であれば、2つの間隔が若干相違していても許容される。
【0014】
1.第1実施態様
図1は本発明の経皮吸収型製剤前駆物の第1実施態様の一例の概略図である。
本態様の経皮吸収型製剤前駆物50は、剥離ライナー10が、一つの第1谷折り部1と、一つの第1山折り部2を有し、第1谷折り部1を境に離反する一方側と他方側の第1谷折り部1から略等間隔の位置に第1基準線L1と第2基準線L2を有しており、第1基準線L1に第1山折り部2の折り線を充当させている。そして、この剥離ライナー10上に、その中央線が第1基準線L1上に位置するように平面形状を有する薬物含有層3が配設され、その中央線が第2基準線L2上に位置するように平面形状を有する粘着剤層4が配設されている(
図1(A))。なお、第1基準線L2は、山折り部の折り線ではなく剥離ライナーに、着色、型押し等で付した少なくとも視覚または触覚によって認識できる直線である。
【0015】
本第1態様の経皮吸収型製剤前駆物50であれば、薬物含有層3と粘着剤層4とを分離して保存できる。そして、経皮吸収型製剤の皮膚への投与を行う際は、第1山折り部2を山折りし(
図1(B))、第1谷折り部1を谷折りして(
図1(C))、薬物含有層3を粘着剤層4上に重ね合わせつつ、薬物含有層3から剥離ライナー10を引き剥がすと、剥離ライナー10上に、薬物含有層3/粘着剤層4の積層構成を有する経皮吸収型製剤が完成する。
【0016】
薬物含有層3から剥離ライナー10を完全に引き剥がした後、薬物含有層3に基材層5を積層することができ、そうすることで、基材層5/薬物含有層3/粘着剤層4の積層構成の経皮吸収型製剤(
図1(D))を得ることができる。また、剥離ライナー10上に配設された薬物含有層3にあらかじめ基材層5を積層しておけば、第1山折り部2を山折りし、第1谷折り部1を谷折りし、薬物含有層3を粘着剤層4上に重ね合わせつつ、薬物含有層3から剥離ライナー10を引き剥がすことにより、基材層5/薬物含有層3/粘着剤層4の積層構成の経皮吸収型製剤(
図1(D))を得ることができる。
【0017】
なお、剥離ライナー10の第1山折り部2を山折りする前、すなわち、経皮吸収型製剤前駆物の保管期間では、薬物含有層3および粘着剤層4の最表面に保護層(保護用の剥離ライナー)(図示せず)を設けておくことが好ましい。すなわち、経皮吸収型製剤を完成させて経皮吸収型製剤を皮膚へ貼付する前は、薬物含有層3および粘着剤層4は保護層(保護用の剥離ライナー)で保護しておくのが好ましい。
【0018】
また、
図1の例(経皮吸収型製剤前駆物50)では、第2基準線L2は、着色、型押し等で剥離ライナー10に付した直線であるが、該直線の代わりに第2基準線L2にその折り線が充当する第1山折り部2を形成してもよい。こうすることで、剥離ライナー10上で完成させた経皮吸収型製剤から剥離ライナー10が剥がしやすくなり(すなわち、
図1(C)の状態の後、剥離ライナー10が剥がしやすくなり)、経皮吸収型製剤の皮膚への貼付作業をより簡単に行うことができる。
【0020】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、剥離ライナー10は、特に限定されず、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、あるいは、これらから選ばれる二種以上をラミネートしたラミネートフィルム等が用いられる。剥離ライナー10には所定の折曲げ加工を施して谷折り部および山折り部を形成する。シートの折曲げ加工は公知の方法で行えばよく、例えば、特開平6−166463号公報、特開2006−282314号公報等に記載の方法が挙げられる。シートの折曲げ加工は、シートに折れ癖(曲げ癖)を付与する加工であり、通常、加工後のシートに山折り部の頂線となる折り線及び谷折り部の底線となる折り線が形成される。
【0021】
剥離ライナー10の厚さは、特に限定されないが、谷折り部及び山折り部を形成するための加工のしやすさ、剥離ライナー上で経皮吸収型製剤を完成させるための山折り作業および谷折り作業のしやすさ、経皮吸収型製剤前駆物の保管時における剥離ライナーの形状安定性等の観点から、一般的には、10〜200μm程度であり、好ましくは、25〜100μm程度である。
【0022】
剥離ライナー10の平面形状は谷折り作業および山折り作業のしやすさから、一般的には、
図1(A)に示す矩形が好ましいが、これに限定されない。また、剥離ライナー10の平面面積は製造すべき経皮吸収型製剤の平面面積および経皮吸収型製剤を構成する層の数等を考慮して決定されるが、例えば、平面形状が矩形の剥離ライナーの場合、好ましくは30〜400cm
2程度であるが、これに限定されない。
【0023】
なお、剥離ライナー10には、谷折り部の谷折り作業および山折り部の山折り作業が容易になるように、谷折り部および山折り部をその他の部分よりも柔軟にしたり、厚さを薄くしてもよい。
【0024】
また、剥離ライナー10における、略等間隔とされる、第1谷折り部1と第1基準線L1との間隔、および、第1谷折り部1と第2基準線L2との間隔(
図1(A)参照)は、製造すべき経皮吸収型製剤の平面面積に応じて決定され、特に限定はされないが、一般的には、2〜20cmの範囲から選択される。
【0025】
薬物含有層
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、薬物含有層3は、通常、薬物とマトリクスポリマーを必須成分とする。マトリクスポリマーは特に限定されないが、例えば、薬物含有層を、薬物が非晶質の状態で存在する層にする場合、マトリクスポリマーとしては、ガラス転移温度が30℃〜200℃のポリマーが好ましい。ガラス転移温度が30℃〜200℃のポリマーは剛直であり、薬物含有層中での薬物の移動、凝集が抑制され、非晶質状態で存在する薬物の結晶化が抑制される。ガラス転移温度が30℃〜200℃のポリマーは、ガラス転移温度が50℃〜200℃であることが好ましく、60℃〜180℃であることがより好ましい。
【0026】
ここで、「ガラス転移温度」とは、非晶質の固体を加熱した場合に、急速に剛性と粘度が低下し流動性が増す現象の認められる温度をいう。ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)等により測定することができる。
【0027】
ガラス転移温度が30℃〜200℃であるポリマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体;アクリル樹脂、メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー(メタクリル酸コポリマーS(「オイドラギット(EUDRAGIT) S100」)、メタクリル酸コポリマーL(「オイドラギット(EUDRAGIT) L100」)、エボニック ローム社製)、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー(乾燥メタクリル酸コポリマーLD(「オイドラギット(EUDRAGIT) L100−55」、エボニック ローム社製))、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(「オイドラギット(EUDRAGIT) EPO」、エボニック ローム社製))、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニオエチルエステルコポリマー(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(「オイドラギット(EUDRAGIT) RSPO」、オイドラギット(EUDRAGIT) RLPO」、エボニック ローム社製))、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(「オイドラギット(EUDRAGIT) NE30D」、エボニック ローム社製))等のアクリル系ポリマー;ポリビニルピロリドン;ビニルピロリドン・酢酸ビニルコポリマー;ポリカーボネート;シクロオレフィンコポリマー;ポリビニルカプロラクタム・ポリ酢酸ビニル・ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(「ソルプラス」(Soluplus)、BASF社製);ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
薬物含有層3に含有させる薬物は、特に限定されず、ヒト等の哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、精神刺激薬、睡眠薬、抗不安薬、抗癲癇薬、片頭痛治療薬、制吐薬、鎮暈薬、局所麻酔薬、筋弛緩薬、自律神経作用薬、鎮痙薬、パーキンソン病治療薬、副腎皮質ステロイド、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛・解熱薬、抗認知症薬、抗リウマチ薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、血管収縮薬、血管拡張薬、狭心症治療薬、呼吸促進薬、気管支拡張薬、気管支喘息治療薬、鎮咳薬、去痰薬、ホルモン薬、造血薬、止血用薬、抗血栓薬、痛風・高尿酸血症治療薬、糖尿病治療薬、高脂血症治療薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、抗菌薬、化学療法薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、麻薬、禁煙補助薬等が挙げられる。
【0029】
薬物含有層3中の薬物の含有量は、薬物の種類、目的の経皮吸収型製剤が使用される患者の年齢、性別、症状等により異なるが、一般的には、薬物含有層3の全体に対して、30〜95重量%、好ましくは50〜90重量%である。
【0030】
薬物含有層3には、酢酸、乳酸、オクタン酸、レブリン酸、オレイン酸、デカン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸等の有機酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ピリジン、アルギニン等の有機塩基;オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油等の植物性油脂;液状ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール等の直鎖脂肪族アルコール、2−ヘキシル−1−デカノール、2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−テトラデカノール等の分岐鎖脂肪族アルコール等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
薬物含有層3は平面形状を有する。すなわち、剥離ライナーの表面(離型処理面)上に島状に存在する。薬物含有層3の平面形状及び平面面積は、製造すべき所定の経皮吸収型製剤の平面形状(例えば、略正方形、略矩形、楕円形、円形等)及び平面面積に踏襲される。従って、平面面積は一般的には4〜100cm
2の範囲から選択されるが、これに限定されない。薬物含有層3の厚さは、含有させる薬物の種類等に応じて適宜設定され、特に限定はされないが、一般的には、10〜300μmであり、好ましくは50〜200μmである。
【0032】
粘着剤層
本発明の経皮吸収型製剤前駆物における粘着剤層4は、経皮吸収型製剤を皮膚に接着させるための層であり、主成分として感圧粘着性ポリマーを含む、常温(25℃)で皮膚接着性を有する層である。
【0033】
感圧粘着性ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含むアクリル系ポリマー;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系ポリマー;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系ポリマー;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系ポリマー;酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系ポリマー;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるエステル系ポリマー等が挙げられる。
【0034】
感圧粘着性ポリマーにゴム系ポリマーを用いる場合、粘着剤層には、粘着剤層の常温での皮膚粘着性の向上のためにタッキファイヤーをさらに含有させることが好ましい。タッキファイヤーは、例えば、石油系樹脂(例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂等)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂(例えば、スチレン樹脂、ポリ(α−メチルスチレン)等)、水添石油樹脂(例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂等)等が挙げられる。タッキファイヤーの量はゴム系ポリマーの総重量に対して、通常33〜300重量%、好ましくは50〜200重量%である。
【0035】
粘着剤層4に含有させることができるタッキファイヤー以外の添加剤としては、薬物含有層3との積層状態にあるときに、薬物含有層3から浸透してくる薬物の粘着剤層中での拡散性を向上させ、薬物の皮膚透過性を促進させる皮膚透過性促進剤が挙げられる。また、賦形剤、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、防腐剤等も挙げることができる。
【0036】
皮膚透過性促進剤としては、例えば、酢酸、乳酸、オクタン酸、レブリン酸、オレイン酸、デカン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸等の有機酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ピリジン、アルギニン等の有機塩基;オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油等の植物性油脂;液状ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール等の直鎖脂肪族アルコール、2−ヘキシル−1−デカノール、2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−テトラデカノール等の分岐鎖脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0037】
皮膚透過性促進剤は1種または2種以上が使用され、皮膚透過性促進剤の粘着剤層中の含有量は特に限定はされないが、一般的には、粘着剤層全体当たり10〜70重量%程度、好ましくは粘着剤層全体当たり20〜40重量%程度である。含有量が10重量%未満のときは、十分な薬物の皮膚透過性促進効果が得られないおそれがあり、逆に含有量が70重量%を超えると、粘着剤層表面に皮膚透過性促進剤がブルーミングするおそれがある。
【0038】
また、粘着剤層4は、紫外線照射や電子線照射等の放射線照射による物理的架橋、三官能性イソシアネート等のイソシアネート系化合物や有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、多官能性化合物(多官能性外部架橋剤やジアクリレートやジメタクリレート等の多官能性内部架橋用モノマー)等の各種架橋剤を用いた化学的架橋処理を施して、架橋された粘着剤層とすることができる。
【0039】
また、粘着剤層4には薬物を含有させることができる。薬物は薬物含有層3に含有される薬物と同じ薬物であっても異なる薬物であってもよい。薬物含有層3に含有される薬物と同じ薬物を粘着剤層4中に含有させる態様としては、例えば、薬物含有層3のみでは十分な投与量を確保できない場合に、薬物含有層3中の薬物と粘着剤層4中の薬物にて十分な投与量を確保する態様がある。なお、薬物含有層3に含有される薬物と異なる薬物を粘着剤層4中に含有させる場合、同一層に含有させると薬物同士の相互作用や変性が懸念される2つの薬物であっても、本発明の経皮吸収前駆物であれば、そのような2つの薬物を相互作用や変性を生じさせることなく保存でき、これらを実際に投与する際には、剥離ライナー上で経皮吸収型製剤を完成させ(すなわち、薬物含有層3を粘着剤層4に積層し)、皮膚に貼付することで、2つの薬物を同時に投与することができる。
【0040】
粘着剤層4中の薬物の含有量は、薬物の種類、投与目的、薬物含有層3中の薬物含量等に応じて適切に設定され、特に限定はされないが、一般的には、粘着剤層全体に対して1〜40重量%程度である。
【0041】
粘着剤層4の厚さは、粘着剤層に用いる粘着剤の種類等に応じて適宜設定されるが、一般的には、50〜200μmであり、好ましくは50〜100μmである。50μm未満では皮膚への接着性が十分に発揮できない恐れがある。また、200μmを超えると、接着性の向上が頭打ちになり、かえって材料コストが高くつく恐れがある。
【0042】
基材層
本発明の経皮吸収型製剤前駆物における基材層5は、完成した経皮吸収型製剤において、支持体として薬物含有層を保持する層である。基材層の材質は、特に限定はされないが、薬物含有層に含有される薬物が基材層を透過して背面から失われ、含有量の低下を起こすことのないもの、すなわち薬物を透過しない材質で構成されるものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂等のビニル系樹脂;エチレン−アクリル酸エチルコポリマー等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂;金属箔などの単独フィルム、およびこれらのラミネートフィルムなどが挙げられる。なお、基材層の厚さは、通常10μm〜200μm、好ましくは15μm〜150μm、より好ましくは20μm〜100μmである。
【0043】
さらに、基材層5と薬物含有層3との間の接着性(投錨性)を向上させるため、基材を上記材質からなる無孔フィルムと、多孔フィルムよりなるラミネートフィルムとし、多孔フィルム側と薬物含有層とを接着させるように積層することが好ましい。前記多孔フィルムとしては、基材層と薬物含有層との間の投錨性を向上させるものであれば特に限定されないが、たとえば、紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したフィルムなどが挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔フィルムの厚さは、投錨性向上および薬物含有層の柔軟性を考慮すると、10μm〜100μmとするのが好ましい。また、多孔フィルムとして織布や不織布を用いる場合、目付量を3g/m
2〜50g/m
2、好ましくは5g/m
2〜30g/m
2とすることが、投錨性向上の点からは好ましい。
【0044】
保護層(保護用剥離ライナー)
本発明の経皮吸収型製剤前駆物には、薬物含有層3および粘着剤層4を保護するための保護層(保護用剥離ライナー)を設けることができる。保護層(保護用剥離ライナー)は、薬物含有層3および粘着剤層4に対して十分に軽い剥離性を確保できれば特に限定はされない。具体例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。保護層(剥離ライナー)の厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0045】
粘着剤層4、基材層5および保護層(保護用剥離ライナー)の平面形状は、基本的には、薬物含有層3の平面形状(例えば、略正方形、略矩形、楕円形、円形等)と同じである。また、その大きさ(平面面積)も基本的に薬物含有層3と同じである。なお、粘着剤層4、基材層5および保護層(保護用剥離ライナー)は、薬物含有層3よりも若干大きくしてもよい。即ち、薬物含有層3の全周において周縁から20mm程度以下の範囲ではみ出す大きさとすることもあるが、はみ出し長さ(寸法)はこれに制限されない。
【0046】
2.第2実施態様
図2(A)〜
図2(C)は本発明の経皮吸収型製剤前駆物の第2実施態様の一例の概略図であり、
図2(D)は当該経皮吸収型製剤前駆物を用いて組み立てられた経皮吸収型製剤の概略断面図であり、
図2(E)は
図2(D)の経皮吸収型製剤を皮膚に貼付した状態を示す概略図である。これらの図において、
図1(A)〜
図1(D)と同一符号は同一または相当する部分を示す。
図2(E)中の符号20は皮膚面を示す。
【0047】
本第2実施態様の経皮吸収型製剤前駆物は、第1実施態様の経皮吸収型製剤前駆物50とは、薬物含有層3にカバー層6が積層されている点において異なる。
【0048】
なお、
図2の例(経皮吸収型製剤前駆物51)では、第2基準線L2は、着色、型押し等で剥離ライナー10に付した直線であるが、第2基準線L2も、第1山折り部2の折り線で形成してもよい。こうすることで、剥離ライナー10上で完成させた経皮吸収型製剤から剥離ライナー10を剥がしやすくなるので、経皮吸収型製剤の皮膚への貼付作業をより簡単に行うことができる。
【0049】
カバー層
かかる第2実施態様の経皮吸収型製剤前駆物51に示されるように、本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、薬物含有層3上にカバー層6が積層されていてもよい。また、カバー層6は、基材層5の機能を有していてもよい。或いは、薬物含有層3にあらかじめ基材層5が積層され、さらに基材層5上にカバー層6が積層されていてもよい。
【0050】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、カバー層6は、薬物含有層3を保護するための層であり、
図2(A)では、平面形状が略正方形の薬物含有層3に対して薬物含有層3よりも大きいサイズの平面形状が略正方形のシート状に形成されている。
【0051】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、カバー層6の平面面積は、薬物含有層3を被覆できれば特に限定されないが、例えば、薬物含有層3の全周において、周縁から0.5cm以上、5cm以下の範囲ではみ出す大きさが好ましい。
【0052】
カバー層6の材質は、基本的に、基材層の材質と同様であり、カバー層6としては、例えば、樹脂による単層フィルムやラミネートフィルム、あるいは、これらのフィルムに織布や不織布等をさらに積層したものを用いることができる。中でも、皮膚追従性が妨げられないもの、すなわち、皮膚面の伸長に従って伸縮しやすいものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチルコポリマーおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される1種または2種以上の熱可塑性樹脂から作られた単層フィルムやラミネートフィルム、およびこれらのフィルムに織布や不織布を積層したものが好ましく用いられる。
【0053】
織布や不織布を構成する繊維としては、好ましくは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる樹脂繊維が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂繊維、またはセルロース樹脂繊維等が挙げられる。これらの樹脂繊維はいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0054】
カバー層6の厚さは、特に限定されず、例えば、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜100μmである。
【0055】
図2(E)に示されるように、カバー層6は経皮吸収型製剤を皮膚に貼付した状態において、皮膚表面20に対して薬物含有層3および粘着剤層4を包み込むように配設される。従って、通常、カバー層6の下面(薬物含有層3または基材層5と接する面)はその少なくとも周縁部にアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の皮膚用粘着剤が塗布される。
【0056】
カバー層6には、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔が形成されていてもよく、また、貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0057】
3.第3実施態様
図3(A)〜
図3(C)は本発明の経皮吸収型製剤前駆物の第3実施態様の一例の概略図であり、
図3(D)は当該経皮吸収型製剤前駆物を用いて組み立てられた経皮吸収型製剤の概略断面図であり、
図3(E)は
図3(D)の経皮吸収型製剤を皮膚に貼付した状態を示す概略図である。これらの図において、
図2(A)〜
図2(E)と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0058】
本第3実施態様の経皮吸収型製剤前駆物は、第2実施態様の経皮吸収型製剤前駆物51とは、粘着剤層4上に制御層7が積層されている点において異なる。
【0059】
なお、
図3の例(経皮吸収型製剤前駆物52)では、第2基準線L2は、着色、型押し等で剥離ライナー10に付した直線であるが、該直線の代わりに第2基準線L2にその折り線が充当する第1山折り部2を形成してもよい。こうすることで、剥離ライナー10上で完成させた経皮吸収型製剤から剥離ライナー10を剥がしやすくなるので、経皮吸収型製剤の皮膚への貼付作業をより簡単に行うことができる。
【0060】
制御層
かかる第3実施態様の経皮吸収型製剤前駆物52に示されるように、本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、粘着剤層4上に制御層7が積層されていてもよい。
【0061】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、制御層7は、製造すべき所定の経皮吸収型製剤において、薬物含有層3に含有される薬物が拡散移動によって薬物含有層3表面から粘着剤層4に放出される際の、その放出量および放出速度を制御するための層であり、自由拡散に対するバリア機能を発揮するものである。
【0062】
薬物含有層に制御層が積層された積層構造を有する経皮吸収型製剤を保管すると、薬物含有層に含まれる薬物の制御層への移行・吸着が進行し、投与時における薬物放出性に影響を及ぼす。しかし、本発明の経皮吸収型製剤前駆物では、薬物含有層3と制御層7とが剥離ライナー10上で分離されており、薬物含有層3と制御層7が別々に保存(保管)されるため、薬物含有層に含まれる薬物の制御層への移行・吸着を防止できる。そして、薬物を皮膚に対して投与するときに、剥離ライナー10上で薬物含有層3に制御層7を積層して所定の積層構成からなる経皮吸収型製剤を完成させることで、薬物保管状況によらず安定的な薬物の放出性が得られる。
【0063】
制御層7としては、紙、不織布、織布、有孔プラスチック膜等が挙げられ、薬物が溶け込むような材質からなるものであれば、無孔プラスチック膜(例えば、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、エチレン/酢酸ビニル共重合体膜)であってもよい。しかしながら、無孔プラスチック膜を用いた場合には、薬物の薬物含有層からの放出速度が低下して、薬物含有層中の薬物の有効利用率が低下するおそれがある。従って、好ましくは、有孔プラスチック膜、特にプラスチック多孔質膜を用いることがよい。また、プラスチック多孔質膜の厚さは特に限定されないが、皮膚面への貼付時の違和感(ごわごわ感)を少なくするためには、100μm以下の厚さのものを用いることが好ましい。
【0064】
プラスチック多孔質膜としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、可塑性塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等の材質からなるものが挙げられる。
【0065】
プラスチック多孔質膜は、薬物の放出制御性の点から、その平均孔径が0.01〜2.0μmのものが好ましい。また、気孔率は一般的には20〜95%であるが、これに限定されない。
【0066】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物において、粘着剤層4上に制御層7が積層されていることによって、薬物含有層3からの薬物の放出量の制御および放出速度の制御を行ない、薬物を持続的に体内に経皮吸収させると共に、薬物による皮膚刺激が抑制される経皮吸収型製剤を簡単に得ることができる。
【0067】
制御層7の平面面積は、特に限定されず、粘着剤層4と同じでも、粘着剤層4の全周において、粘着剤層4の周縁から3cm以下の範囲内ではみ出すような、粘着剤層4の平面面積よりも大きい平面面積でも、或いは、粘着剤層4の平面面積よりも小さい平面面積であってもよい。
【0068】
制御層7の厚さは、良好な薬物放出性の観点から、1μm以上、100μm以下が好ましい。
【0069】
4.第4実施態様
図4−1(A)、
図4−1(B)、
図4−2(A)、
図4−2(B)、
図4−3(A)及び
図4−3(B)は本発明の経皮吸収型製剤前駆物の第4実施態様の一例の概略図であり、
図4−3(C)は当該経皮吸収型製剤前駆物を用いて組み立てられた経皮吸収型製剤の概略断面図である。これらの図において、
図2(A)〜
図2(E)と同一符号は同一または相当する部分を示す。
【0070】
本態様の経皮吸収型製剤前駆物53は、第1〜第3態様の経皮吸収型製剤前駆物に対し、剥離ライナー10に第2谷折り部8および第2山折り部9をさらに追加し、製造すべき所定の経皮吸収型製剤(完成させるべき経皮吸収型製剤)に含まれる3つ層を剥離ライナー10上に分離して配設できるようにしたものである。剥離ライナー10の、第2基準線L2を挟んで第1谷折り部1とは正反対の位置に第2谷折り部8を形成するとともに、該第2谷折り部8を挟んで、第2基準線L2と正反対の位置に第2山折り部9をさらに有し、該第2谷折り部9と第2基準線L2との間隔が、該第2山折り部9と第2谷折り部8との間隔に略等しい構成としている。なお、本態様の経皮吸収型製剤前駆物53では、第2基準線L2は着色、型押し等で付した少なくとも視覚または触覚によって認識できる直線である。
【0071】
本態様の経皮吸収型製剤前駆物53であれば、薬物含有層3と粘着剤層4とを分離して保存できる(
図4−1(A))。そして、経皮吸収型製剤の皮膚への投与を行う際は、第1山折り部2を山折りし(
図4−1(B))、第1谷折り部1を谷折りして(
図4−2(A))、薬物含有層3を粘着剤層4上に重ね合わせつつ、薬物含有層3から剥離ライナー10を引き剥がすと、薬物含有層3が粘着剤層4に積層される(
図4−2(B))。その後、第2山折り部9を山折りし(
図4−3(A))、第2谷折り部8を谷折りして(
図4−3(B))、カバー層6を薬物含有層3上に重ね合わせつつ、カバー層6から剥離ライナー10を引き剥がすと、カバー層6が薬物含有層3上に積層され、カバー層6/薬物含有層3/粘着剤層4の積層構成を有する経皮吸収型製剤が完成する(
図4−3(C))。
【0072】
なお、上記一例の経皮吸収型製剤前駆物53では、薬物含有層3が1つであるが、カバー層6の下にも薬物含有層を配設してもよい(
図2(A)の薬物含有層3をカバー層6が覆った状態参照)。或いは、カバー層6に代えて薬物含有層を配設してもよい。こうすることで、剥離ライナー上で、薬物含有層が単層の経皮吸収型製剤を組み立てたり、薬物含有層が2層の積層からなる経皮吸収型製剤を組み立てることができ、患者の症状に応じて薬物含有量の異なる経皮吸収型製剤を簡単に得ることができる。なお、粘着剤層4にも薬物を含有させておけば、薬物含有量が異なる3パターンの経皮吸収型製剤を簡単に得ることができる。
【0073】
以上説明した実施態様の経皮吸収型製剤前駆物では、山折りおよび谷折りする順序を指示する情報を剥離ライナーに付していないが、このような情報を付しておくことで、経皮吸収型製剤の組み立てをより確実かつ効率よく行うことができる。このような情報としては、たとえば、少なくとも視覚または触覚によって認識できる文字や記号またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0074】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物の製造方法は特に限定されないが、例えば、当該前駆物用の基準線、山折り部、谷折り部を形成した剥離ライナーとは別途用意した剥離ライナー上に目的の経皮吸収型製剤前駆物に具備させるべき層(薬物含有層、粘着剤層等)を形成し、それらの層を当該前駆物用の剥離ライナーに転写することで作製することができる。
【0075】
本発明の経皮吸収型製剤前駆物は、剥離ライナーの山折りおよび谷折りする順序等を記載した記載物とともに包装体中に内包したパッケージとすることもできる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下において、「部」は特に記載しない限り「重量部」を意味する。
【0077】
[実施例1]
(トラマドールオクタン酸塩の調製)
塩酸トラマドール及びオクタン酸ナトリウムを等モルになるように超純水に溶解し、さらに酢酸エチルを加えて撹拌した。分液ロートを用いて酢酸エチル層を回収し、超純水にて洗浄した。洗浄後の酢酸エチル層より、エバポレーターを用いて酢酸エチルを除去し、さらにメタノールを加えた後、溶媒を除去した。溶媒除去後の残渣を、真空ポンプを用いて約16時間乾燥させて、トラマドールオクタン酸塩の結晶を得た。
【0078】
(アクリル系コポリマーの調製)
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル95部、アクリル酸5部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を、酢酸エチル中で60℃にて溶液重合させて、上記コポリマーの酢酸エチル溶液を調製した。
【0079】
(経皮吸収型製剤前駆物の製造)
メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー(「オイドラギット L100」(エボニック ローム社製)、ガラス転移温度:150℃)20部およびトラマドールオクタン酸塩80部を、二軸の溶融押出し機を用いて加熱しながら混練し、押し出して混合物を得た。該混合物の適量を、PET製ライナー(厚さ=75μm)の剥離処理面に載せ、さらにPET製フィルム(厚さ=25μm)で覆い、加熱プレス機を用いて、混合物の厚さが250μmのシート状になるように圧縮成形した後、4つの角部に半径5.3mmの円弧を充当させた平面面積が10cm
2(縦32mm×横32mm、R=5.3mm)の略正方形に打抜き、薬物含有層を含む第1積層体を得た。
【0080】
次に、アクリル系コポリマーの酢酸エチル溶液34.7部(固形分として)、ミリスチン酸イソプロピル65部、および架橋剤として三官能性イソシアネート(「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業株式会社製))0.3部(固形分として)を、適量の酢酸エチルに添加し、十分に混合撹拌を行って均一に溶解して塗工液を得た。得られた塗工液を、PET製ライナー1(厚さ=75μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが約100μmとなるように塗布して乾燥し、接着面にさらにPET製ライナー2(厚さ=75μm)の剥離処理面を貼り合わせた後、4つの角部に半径5.3mmの円弧を充当させた平面面積が10cm
2(縦32mm×横32mm、R=5.3mm)の略正方形に打抜き、皮膚接着層を含む第2積層体を得た。
【0081】
長辺が16cm、短辺が6cmの平面形状が矩形の紙製ライナー(厚さ100μm)を用意し、該剥離ライナーの長辺を2等分する位置を第1谷折り部とし、第1谷折り部(の折り線)から一方の短辺に向かって4cm離間した位置を第1山折り部(=第1基準線)、第1谷折り部(の折り線)から他方の短辺に向かって4cm離間した位置を第2基準線とした。
第1積層体のPET製剥離ライナーを剥がした後、薬物含有層の中央線と第1基準線とを合わせるように紙製ライナーの剥離処理面に薬物含有層を貼り合わせた。次に、第2積層体のPET製剥離ライナー2を剥がした後、皮膚接着層の中央線と第2基準線とを合わせるように紙製ライナーの剥離処理面に皮膚接着層を貼り合わせて、経皮吸収型製剤前駆物Iを得た。
【0082】
(薬物状態の評価)
経皮吸収型製剤前駆物Iを室温で保存し、保存後1日、2日、1か月、6か月および8か月経過した時点の薬物含有層を目視および偏光顕微鏡(DP71 OLYMPUS製)で観察した。その結果、いずれの保存時点においても薬物含有層中には薬物の結晶が見られず、非晶状態であることを確認した。
【0083】
(操作性評価)
経皮吸収型製剤前駆物Iにおいて、皮膚接着層を覆うPET製剥離ライナー1を剥離した後、第1山折り部を山折りして薬物含有層の一部を紙製剥離ライナーから剥離し、第1谷折り部にて紙製剥離ライナーを谷折りしながら、第2基準線に第1基準線(=第1山折り部の折線)を合わせるように皮膚接着層上に薬物含有層を積層することにより、経皮吸収型製剤を得た。
【0084】
上記得られた経皮吸収型製剤前駆物Iは、室温で8か月間保存しても、薬物含有層中の薬物は非晶状態で維持され、薬物の結晶化を防止することができることが確認された。さらに、操作性評価において、経皮吸収型製剤前駆物Iは、薬物含有層と皮膚接着層とを貼りずれ(貼り位置のズレ)が生じることなく、且つ、簡便に積層することができ、所定の経皮吸収型製剤を容易に得ることができた。