(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のようにシート下の収容部からバッテリを上方に持ち上げて取り出す構成では、バッテリの着脱時に、バッテリをシートよりも高い位置に持ち上げる必要がある。この場合、バッテリは重量物であるので、バッテリの着脱時における作業負荷が大きくなる可能性がある。したがって、従来技術にあっては、バッテリの着脱時における作業負荷を小さくして、バッテリの着脱を容易にする点で改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、着脱可能なバッテリを備える電動車両において、バッテリの着脱を容易にすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る電動車両は、前輪(2)と、後輪(3)と、前記前輪(2)を支持するとともに、車体フレーム(14)、および着座用のシート(12)を有する前車体(1
0)と、前記後輪(3)を駆動するモータ(61)を有し、前記後輪(3)を支持するとともに、前記前車体(1
0)に対して車幅方向に沿って延びるピボット軸線(P)回りに回動可能に設けられたスイングユニット(5
0)と、前記シート(12)よりも下方に配置され、前記モータ(61)の電源であるバッテリ(105)を前記シート(12)よりも下方の位置から前方に取り出し可能に保持するバッテリ収容部(102)と、前記前車体(10)を覆う前車体カバー(30)と、を備え、前記前車体カバー(30)は、前記シート(12)よりも下方において車両前後方向に延び、前記シート(12)に着座する乗員の足が載置されるステップフロア(33)と、前記ステップフロア(33)の後部から上方に延び、前記乗員の脚部が配置される空間を後方から画定するとともに、前記バッテリ収容部(102)を前方から覆うリアカバー(35)と、を備え、前記リアカバー(35)は、前記車体フレーム(14)にリンク機構(207)を介して接続され、上方に向けて変位可能に設けられている、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明に係る電動車両は、前輪(2)と、後輪(3)と、前記前輪(2)を支持するとともに、車体フレーム(14)、および着座用のシート(12)を有する前車体(1
0)と、前記後輪(3)を駆動するモータ(61)を有し、前記後輪(3)を支持するとともに、前記前車体(1
0)に対して車幅方向に沿って延びるピボット軸線(P)回りに回動可能に設けられたスイングユニット(5
0)と、前記シート(12)よりも下方に配置され、前記モータ(61)の電源であるバッテリ(105)を前記シート(12)よりも下方の位置から前方に取り出し可能に保持するバッテリ収容部(102)と、前記前車体(10)を覆う前車体カバー(30)と、を備え、前記前車体カバー(30)は、前記シート(12)よりも下方において車両前後方向に延び、前記シート(12)の着座する乗員の足が載置されるステップフロア(33)と、前記ステップフロア(33)の後部から上方に延び、前記乗員の脚部が配置される空間を後方から画定するとともに、前記バッテリ収容部(102)を前方から覆うリアカバー(35)と、を備え、前記リアカバー(35)は、下端部を上方に変位させるように、前記ステップフロア(33)に対して車幅方向に沿って延びる第1回動軸線(O1)回りに回動可能に設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明に係る電動車両は、前記バッテリ収容部(102)は、前記スイングユニット(5
0)に支持されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項
4に記載の発明に係る電動車両は、前記バッテリ収容部(102)を車幅方向の少なくとも一方から覆うバッテリ収容部カバー(38)をさらに備える、ことを特徴とする。
【0009】
請求項
5に記載の発明に係る電動車両は、前記車体フレーム(14)は、前記シート(12)よりも下方に設けられ、車幅方向に間隔をあけて配置された一対のシートフレーム(23)を備え、前記バッテリ収容部(102)は、前記一対のシートフレーム(23)の間に配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項
6に記載の発明に係る電動車両は
、前記バッテリ収容部(102)は、前記バッテリ(105)を前方に向けて引き出し可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項
7に記載の発明に係る電動車両は、前記バッテリ収容部(102)は、前記バッテリ(105)を前方かつ上方に向けて引き出し可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明に係る電動車両は、前記後輪(3)は、一対設けられ、前記スイングユニット(5
0)は、前記モータ(61)を含み前記一対の後輪(3)を支持するパワーユニット(51)と、車幅方向に直交する方向に延びるローリング軸線(R)回りで前記前車体(1
0)と前記パワーユニット(51)とを揺動可能に連結する揺動機構部(5
3)と、を備える、ことを特徴とする。
【0018】
請求項
9に記載の発明に係る電動車両は、前記バッテリ収容部(102)は、前記パワーユニット(51)に対して前記ローリング軸線(R)回りで回動する箇所に支持されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載した発明によれば、重量物であるバッテリをシートよりも高い位置に持ち上げることなく車両から取り出すことができる。よって、バッテリの着脱時における作業負荷が小さくなる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
また、シート下カバーを上方に向けて変位させることによって、シートの下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、ステップフロアおよびシート下カバーを備える電動車両において、バッテリ収容部の前方でバッテリの着脱を行うことが可能となる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
また、シート下カバーの下端部が上方に変位するので、ステップフロアとバッテリ収容部との間からシート下カバーが退避する。このため、バッテリ収容部からバッテリを取り出す際に、バッテリ下カバーを回避することなくバッテリをそのままステップフロアに載置することができる。バッテリ収容部にバッテリを装着する際も同様である。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
請求項2に記載した発明によれば、重量物であるバッテリをシートよりも高い位置に持ち上げることなく車両から取り出すことができる。よって、バッテリの着脱時における作業負荷が小さくなる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
また、シート下カバーを第1回動軸線回りに回動させることによって、シートの下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、ステップフロアおよびシート下カバーを備える電動車両において、バッテリ収容部の前方でバッテリの着脱を行うことが可能となる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
また、シート下カバーの下端部が上方に変位するので、ステップフロアとバッテリ収容部との間からシート下カバーが退避する。このため、バッテリ収容部からバッテリを取り出す際に、バッテリ下カバーを回避することなくバッテリをそのままステップフロアに載置することができる。バッテリ収容部にバッテリを装着する際も同様である。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
【0020】
請求項
3に記載した発明によれば、バッテリ収容部からモータに延びる配線が、互いに相対回動する前車体およびスイングユニットを跨ぐことを回避できる。これにより、配線に負荷がかかることを抑制でき、電気的な安全性を確保できる。また、スイングユニットにバッテリ収容部を組み付けた上で、スイングユニットを前車体に取り付けることが可能となるので、車両の組み立て性を向上させることができる。
【0021】
請求項
4に記載した発明によれば、バッテリ収容部における車幅方向からの被水を抑制できる。また、バッテリ収容部がスイングユニットに支持されている場合には、前車体に対してバッテリ収容部がピボット軸線回りで回動する様子を隠すことができる。よって、電動車両の外観を向上させることができる。
【0022】
請求項
5に記載した発明によれば、バッテリ収容部への車幅方向からの物体の接触をシートフレームによって防ぐことができる。したがって、バッテリ収容部およびバッテリの保護性能を向上させることができる。
【0023】
請求項
6に記載した発明によれば、ステップフロアに沿ってバッテリ収容部からバッテリを引き出すことができる。これにより、バッテリ収容部からバッテリを引き出した際に、乗員等が重量物であるバッテリを直ちに支える必要がない。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
【0024】
請求項
7に記載した発明によれば、バッテリ収容部へバッテリを装着する際のバッテリの移動方向は、後方かつ下方に向く。このため、バッテリに作用する重力を利用して、バッテリをバッテリ収容部に装着することができる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
【0030】
請求項
8に記載した発明によれば、電動車両が一対の後輪を備える三輪車なので、車両が傾いた状態で駐車される二輪車と比較して、車両が直立した状態で安定して駐車することができる。このため、バッテリの着脱を容易に行うことができる。
【0031】
請求項
9に記載した発明によれば、ローリング軸線回りにおいてバッテリ収容部が前車体に追従して回動するので、前車体の傾きに応じてバッテリ収容部と前車体との位置関係が大きく変化することを抑制できる。このため、前車体の車体フレーム等によって、バッテリの着脱が阻害されることを抑制できる。したがって、バッテリの着脱を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後上下左右の向きは、車両における前後上下左右の向きと同一とする。すなわち、上下方向は鉛直方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。また、以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0034】
[第1実施形態]
最初に、
図1から
図5を参照して、第1実施形態の電動車両について説明する。本実施形態では、電動車両の一例として、一対の後輪を有する鞍乗り型の電動三輪車を例に挙げて説明する。
【0035】
図1は、第1実施形態の電動車両の左側面図である。
図1に示すように、第1実施形態の電動車両1は、単一の前輪2と、左右一対の後輪3と、前輪2を操向可能に支持する前車体10と、前車体10を覆う前車体カバー30と、一対の後輪3を支持するとともに前車体10に対して上下揺動可能に設けられたスイングユニット50と、駆動源であるモータ61(
図4参照)等に電力を供給する電力供給部100と、前車体10とスイングユニット50との間に介装されたリアクッション4(クッション)と、を主に備える。電動車両1は、一対の後輪3を接地させた状態で、乗員が乗車した前車体10を左右方向に揺動(ローリング動)可能としている。
【0036】
前車体10は、前輪転舵用のバーハンドル11と、乗員着座用のシート12と、低床フロア13と、前車体10の骨格をなす車体フレーム14と、前輪2を懸架する前輪懸架装置15と、を備える。バーハンドル11とシート12との間は、乗員の脚部が配置される跨ぎ空間16とされている。低床フロア13は、跨ぎ空間16の下方に配置されている。
【0037】
車体フレーム14は、前端部に設けられ上下方向に対して後傾するヘッドパイプ20と、ヘッドパイプ20の後側から斜め後下方へ延びた後に後方へ湾曲する単一の前部フレーム21と、前部フレーム21の湾曲部両側から左右に分岐して後方へ延びる左右一対の下部フレーム22と、左右それぞれの下部フレーム22の後端部から斜め後上方へ湾曲して延びる左右一対の後部フレーム23(シートフレーム)と、左右それぞれの後部フレーム23の後端部から後方へ湾曲して延びる左右一対の荷台フレーム24と、を有する。ヘッドパイプ20には、前輪懸架装置15が操向可能に支持されている。前輪懸架装置15におけるヘッドパイプ20を貫通するステムパイプ25の上端部には、バーハンドル11が固定されている。前部フレーム21の後端部は、左右の下部フレーム22間に渡るロアクロスパイプ27の中間部に結合されている。一対の後部フレーム23は、シート12の下方に設けられ、左右方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0038】
左右それぞれの下部フレーム22の後部には、ピボットプレート28が設けられている。左右一対のピボットプレート28は、それぞれ下部フレーム22の後部から後方に向かって延出している。一対のピボットプレート28には、スイングユニット50が上下揺動可能に接続されている(詳細は後述)。
【0039】
バーハンドル11には、左右一対のグリップそれぞれに隣接して、ブレーキレバー45が設けられている。左側のブレーキレバー45には、終端部において左右一対のリアブレーキ5(
図3参照)に接続されたリアブレーキケーブル(不図示)が接続されている。左側のブレーキレバー45を操作することによって、リアブレーキケーブルを牽引し、左右一対のリアブレーキ5を作動させる。右側のブレーキレバー45には、終端部においてフロントブレーキに接続されたフロントブレーキケーブル(いずれも不図示)が接続されている。右側のブレーキレバー45を操作することによって、フロントブレーキケーブルを牽引し、フロントブレーキを作動させる。また、バーハンドル11近傍には、パーキングロックレバー46が配置されている。パーキングロックレバー46には、パーキングロックケーブル(不図示)が接続されている。パーキングロックケーブルの終端部は、リアブレーキ5に接続されている。パーキングロックレバー46を操作することによって、パーキングロックケーブルを牽引し、リアブレーキ5を作動させる。
【0040】
前車体カバー30は、ヘッドパイプ20および前部フレーム21周辺を前方から覆うフロントカバー31と、ヘッドパイプ20および前部フレーム21周辺を後方から覆うインナカバー32と、インナカバー32の下端部の後方に連なるフロアボード33(ステップフロア)と、フロアボード33の左右側縁部の下方に連なる左右のフロアサイドカバー34と、フロアボード33の後方に連なるリアカバー35と、左右のフロアサイドカバー34の後端部の斜め上後方に連なり後部フレーム23および荷台フレーム24を左右方向の外側から覆う左右のリアサイドカバー37と、左右のリアサイドカバー37における後部フレーム23を覆う部分から後方に延出し後述するバッテリボックス102(
図2参照)を左右方向の外側から覆うバッテリボックスカバー38(バッテリ収容部カバー)と、を有する。
【0041】
フロントカバー31およびインナカバー32は、乗員の脚部を前方から覆うレッグシールドを構成する。フロアボード33は、左右の下部フレーム22と共に低床フロア13を構成する。フロアボード33には、シート12に着座する乗員の足が載置される。フロアボード33の上面は、シート12よりも下方において前後方向に延びている。リアカバー35は、フロアボード33の後部から上方に延びている。リアカバー35は、跨ぎ空間16を後方から画定している。リアカバー35は、バッテリボックス102を前方から覆っている。リアカバー35の具体的な構造については、後述する。
【0042】
左右のリアサイドカバー37間には、物品収納ボックス6を搭載する荷台39が設けられている。荷台39の前端部からは、荷台前壁部40が起立している。荷台前壁部40の上方には、左右一対の支柱41が起立している。フロントカバー31の上端部からは、ウインドスクリーン42が起立している。ウインドスクリーン42の上端部と左右の支柱41の上端部との間には、ルーフ43が架設されている。
【0043】
ここで、リアカバー35について詳述する。
図2は、第1実施形態の電動車両の後部を示す左側面図である。
図2に示すように、リアカバー35は、フロアボード33の左右後方に連なる左右の後部フロア35aと、左右の後部フロア35a間で立ち上がりシート12を下方から支持するシート下カバー35bと、を備える。後部フロア35aおよびシート下カバー35bは、例えば一体化されて、互いに固定されている。リアカバー35は、フロアボード33およびリアサイドカバー37とは別体として形成されている。リアカバー35は、フロアボード33に対して第1回動軸線O1回りに回動可能に設けられている。第1回動軸線O1は、左右方向に沿って延びている。第1回動軸線O1は、例えば左右方向から見たシート12の後上端部と荷台前壁部40との間に設けられている。この場合、シート12は、荷台前壁部40にヒンジ等の連結部材を介して連結されている。リアカバー35は、シート12と共に第1回動軸線O1回りに回動することによって、リアカバー35の下端部を上方に変位させるように跳ね上がる。
【0044】
図3は、第1実施形態の電動車両の後部を示す左側面図である。
図4は、第1実施形態の電動車両の後部を示す底面図である。なお、
図3では、前車体カバー30の一部や左側の後輪3等を取り外した状態を示している。
図3および
図4に示すように、スイングユニット50は、前車体10に対して左右方向に沿って延びるピボット軸線P回りに回動可能に設けられ、前車体10に対して上下揺動可能とされている。スイングユニット50は、一対の後輪3の間に設けられたパワーユニット51と、前車体10の左右一対のピボットプレート28に支持されたスイングアーム52と、パワーユニット51とスイングアーム52との間に介在する揺動機構部53と、を備える。
【0045】
図5は、第1実施形態のパワーユニットの概略構成を示す図である。
図5に示すように、パワーユニット51は、一対の後輪3を支持する。パワーユニット51は、ユニットケース60と、モータ61と、減速機構66と、差動機構71と、左右一対の車軸78と、を備える。パワーユニット51は、減速機構66および差動機構71を介してモータ61の出力を一対の車軸78に伝達させる。一対の車軸78は、後輪3の車軸である。左側の車軸78は、左側の後輪3に結合されている。右側の車軸78は、右側の後輪3に結合されている。一対の車軸78は、互いに同軸に設けられている。一対の車軸78は、左右方向に延び、軸端を互いに対向させて配置されている。
【0046】
ユニットケース60は、モータ61、減速機構66および差動機構71を収容する。ユニットケース60は、車軸78を左右両側に突出させるように設けられている。ユニットケース60は、一対の車軸78を回転可能に支持している。なお、以下の説明では、ユニットケース60内の左側の空間にモータ61が配置され、モータ61よりも右側の空間に差動機構71が配置される場合を例に挙げて説明する。
【0047】
モータ61は、一対の後輪3を駆動する。モータ61は、例えばVVVF(Variable Voltage Variavle Frequency)制御による可変速駆動がなされる。モータ61は、車軸78と同軸に設けられている。モータ61は、ユニットケース60に固定された円筒状のステータ62と、ステータ62と同軸かつステータ62の内側に配置された円筒状のロータ63と、ロータ63に結合された円筒軸64と、を備える。円筒軸64は、車軸78と同軸に配置され、左側の車軸78に相対回転可能に外挿されている。
【0048】
減速機構66は、モータ61の駆動回転を減速する。減速機構66は、円筒軸64の右端に形成されたギヤ67と、ユニットケース60に支持された大径ギヤ68および小径ギヤ69と、を備える。ギヤ67および大径ギヤ68は、互いに噛み合う。小径ギヤ69は、大径ギヤ68よりも小径に形成され、大径ギヤ68と一体的に回転する。減速機構66においては、モータ61の円筒軸64の回転がギヤ67および大径ギヤ68を介して小径ギヤ69に伝達されることで減速される。
【0049】
差動機構71は、減速機構66を介して出力されたモータ61の駆動力を左右の車軸78に分配する。差動機構71は、車軸78と同軸に設けられている。差動機構71は、差動キャリア72と、一対のサイドギヤ73と、シャフト74と、一対のピニオンギヤ75と、を備える。差動キャリア72は、一対の車軸78の互いに対向し合う軸端を囲うように配置されている。差動キャリア72は、ユニットケース60に対して車軸78の軸線回りに回転可能となるように、車軸78に外挿されている。差動キャリア72には、減速機構66の小径ギヤ69に噛み合うギヤ76が形成されている。これにより、差動キャリア72は、減速機構66の出力を受けて回転する。
【0050】
一対のサイドギヤ73は、ベベルギヤである。一対のサイドギヤ73は、差動キャリア72に収容されている。一対のサイドギヤ73は、一対の車軸78の互いに対向し合う軸端に固定されている。シャフト74は、車軸78の軸線と直交する軸線を有する。シャフト74は、一対のサイドギヤ73の間に配置され、両端を差動キャリア72に支持されている。一対のピニオンギヤ75は、それぞれ一対のサイドギヤ73に噛み合うベベルギヤである。一対のピニオンギヤ75は、それぞれ一対のサイドギヤ73に挟まれ、シャフト74に回転可能に支持されている。
【0051】
差動機構71においては、減速機構66の出力を受けて差動キャリア72が回転すると、車軸78の軸線回りをシャフト74が回転する。この際、一対のピニオンギヤ75は、車軸78の軸線回りを公転する。ここで、左右の車軸78にかかる抵抗が等しい場合には、シャフト74と共に公転する一対のピニオンギヤ75が自転することなく、一対のサイドギヤ73、および一対の車軸78が同一速度で回転する。左右の車軸78にかかる抵抗に差が生じる場合には、一対のピニオンギヤ75が適宜自転して一対のサイドギヤ73、および一対の車軸78の間に回転速度差を生じさせる。このように、差動機構71は、モータ61の駆動力を車軸78を介して一対の後輪3に分配する。
【0052】
図3に示すように、パワーユニット51と各後輪3との間には、リアブレーキ5が配置されている。例えば、リアブレーキ5は、後輪3のホイールに一体形成されたブレーキドラムと、パワーユニット51のユニットケース60に支持されたブレーキシューと、を有する。ブレーキシューは、リアブレーキケーブルおよびパーキングロックケーブル(いずれも不図示)のうち少なくともいずれか一方が牽引されることによってブレーキドラムに摺接するように構成されている。
【0053】
スイングアーム52は、パワーユニット51の前方に配置されている。スイングアーム52は、左右一対のピボットプレート28によって、ピボット軸線P回りに回動可能に支持されている。スイングアーム52は、左右一対のサイドアーム80と、一対のサイドアーム80の間に架設されたバッテリ支持部81と、を備える。一対のサイドアーム80は、それぞれピボットプレート28に支持されている。サイドアーム80は、ピボット軸線Pよりも前方の位置から、ピボット軸線Pよりも後方の位置に亘って延びている。例えば、サイドアーム80は、ピボット軸線Pから前方に向かって水平に延びるとともに、ピボット軸線Pから後方に向かうに従い僅かに下方に傾斜して延びている(
図2参照)。サイドアーム80のうち少なくともピボット軸線Pの近傍は、略水平に延びている。例えば、一対のサイドアーム80は、後端部において互いの間隔が狭まるように屈曲または湾曲している。バッテリ支持部81は、水平に延びる上面を有し、電力供給部100を下方から支持する。バッテリ支持部81は、電力供給部100の少なくとも一部を下方から覆っている。
【0054】
揺動機構部53は、前部においてスイングアーム52に固定され、後部においてパワーユニット51に固定されている。これにより、揺動機構部53は、パワーユニット51およびスイングアーム52と共に、前車体10(
図1参照)に対して上下揺動可能に設けられている。揺動機構部53は、スイングアーム52を介して前車体10とパワーユニット51とをローリング軸線R回りで揺動可能に連結している。ローリング軸線Rは、左右方向における車体中央において、左右方向に直交する方向に延びている。例えば、ローリング軸線Rは、ピボット軸線Pに直交している。揺動機構部53は、スイングアーム52に固定されたジョイントケース90と、ジョイントケース90に回転可能に支持されるとともにパワーユニット51に固定されたジョイント軸91と、ジョイントケース90およびジョイント軸91の相対回転にダンパ効果を付与するナイトハルト92と、ジョイントケース90およびジョイント軸91の相対回転を制止可能なロック機構93と、を備える。
【0055】
図3に示すように、揺動機構部53の少なくとも一部は、左右方向から見て後輪3と重なっている。具体的に、揺動機構部53のうち、ローリング軸線Rに直交する方向から見てジョイントケース90とジョイント軸91とが重なる部分の少なくとも一部は、左右方向から見て後輪3と重なっている。
【0056】
ジョイントケース90は、揺動機構部53の前部を構成している。ジョイントケース90の前端部は、スイングアーム52の一対のサイドアーム80の後端部の間に配置され、各サイドアーム80に締結されている(
図4参照)。ジョイントケース90の上部には、リアクッション4が接続されるクッション接続部98(接続部)が設けられている。クッション接続部98は、左右方向から見て後輪3と重なっている。
【0057】
ジョイント軸91は、ローリング軸線Rを中心軸線とする円柱状に形成されている。ジョイント軸91の前部は、ジョイントケース90に挿入されている。ジョイント軸91は、適宜配置された軸受を介して、ジョイントケース90にローリング軸線R回りで回転可能に支持されている。ジョイント軸91の後端部は、パワーユニット51のユニットケース60に結合されている。これにより、ジョイント軸91は、パワーユニット51に対してローリング軸線R回りで回転不能に設けられている。例えば、ジョイント軸91の後端部は、ユニットケース60の下面に結合されている。
【0058】
ナイトハルト92は、ジョイントケース90とジョイント軸91の前端部との間に介在している。ナイトハルト92は、左右方向から見て後輪3と重なっている。
【0059】
図6は、
図4のVI−VI線における断面図である。
図6に示すように、ナイトハルト92は、ジョイント軸91に固定されたナイトハルトカム95と、ナイトハルトカム95とジョイントケース90の内面との間に介在するナイトハルトラバー96と、を備える。ナイトハルトラバー96は、複数設けられ、それぞれジョイントケース90の内面に係合している。ナイトハルトカム95は、ローリング軸線R回りの周方向の両側からナイトハルトラバー96に対向するカム面95aを有する。ナイトハルトカム95は、ジョイントケース90に対してローリング軸線R回りに回転しようとすると、ジョイントケース90の内面に係合したナイトハルトラバー96を押圧して、ナイトハルトラバー96を弾性変形させる。ナイトハルトラバー96は、弾性変形した際の復元力によって、ナイトハルトカム95を初期位置に向けて付勢する。これにより、ナイトハルト92は、ジョイント軸91に結合されたパワーユニット51に対し、ジョイントケース90に固定されたスイングアーム52を介して前車体10を起立方向に付勢する(
図3参照)。
【0060】
図3に示すように、ロック機構93は、パーキングロックレバー46(
図1参照)の操作に応じて、ジョイントケース90に対するジョイント軸91の回転を制止する。ロック機構93は、ジョイントケース90内に設けられている。ロック機構93には、パーキングロックケーブル(不図示)の中間部分が連係されている。これにより、ロック機構93は、パーキングロックレバー46が操作されることで、リアブレーキ5と共に作動する。ロック機構93は、ジョイントケース90およびジョイント軸91の相対回転を制止することで、ジョイントケース90に固定されたスイングアーム52を介して、前車体10のパーキング姿勢を安定させる。
【0061】
電力供給部100は、前車体10とスイングユニット50との間に設けられている。電力供給部100は、スイングアーム52に支持されている。電力供給部100は、PCU(Power Control Unit)101と、バッテリボックス102(バッテリ収容部)と、ジャンクションボックス103と、ダウンレギュレータ104と、を備える。
【0062】
PCU101は、モータドライバであるPDU(Power Drive Unit)や、PDUを制御するECU(Electric Control Unit)等を含む制御ユニットである。PCU101は、揺動機構部53の前方に配置されている。PCU101は、上下方向から見てピボット軸線Pと重なる位置に配置されている。PCU101は、スイングアーム52によって下方から支持されている。PCU101は、スイングアーム52のバッテリ支持部81(
図3参照)に載置され、バッテリ支持部81に固定されている。これにより、PCU101は、バッテリ支持部81によって下方から覆われている。
【0063】
バッテリボックス102は、モータ61(
図5参照)の電源であるバッテリ105を収容して保持する。また、バッテリボックス102は、バッテリ105の充放電等を管理する図示しないBMU(Battery Managing Unit)を内部に備えている。バッテリボックス102は、一対設けられ、シート12の下方において左右に並んで配置されている。一対のバッテリボックス102は、左右一対の後部フレーム23の間に配置されている。一対のバッテリボックス102は、PCU101上に載置され、揺動機構部53の前方に配置されている。一対のバッテリボックス102は、PCU101を介してスイングアーム52によって下方から支持されている。バッテリボックス102は、リアカバー35によって前方から覆われ、バッテリボックスカバー38によって左右両側から覆われている(
図1参照)。
【0064】
バッテリ105は、長手方向に延びる直方体状に形成されている。バッテリ105のうち長手方向の一方側に向く面には、ハンドル105aが設けられている。バッテリボックス102は、バッテリ105の外形に対応する直方体状を呈している。バッテリボックス102は、バッテリ105を挿脱可能とするバッテリ挿脱口102aを有する。バッテリ挿脱口102aは、前方に向かって開口している。バッテリボックス102は、バッテリ105の長手方向が前後方向に沿うように、かつバッテリ105のハンドル105aが前方に向くように、バッテリ105を収容する。これにより、バッテリボックス102は、バッテリ105を前方(側方)に向けて引き出し可能とされている。
【0065】
図2に示すように、バッテリ105は、リアカバー35を跳ね上げてバッテリボックス102が配置されたシート12の下方の空間を前方に開放することによって、シート12の下方の位置から前方に取り出し可能となる。バッテリ105は、バッテリボックス102から前後方向に移動して引き出されると、フロアボード33上に載置される。
【0066】
ジャンクションボックス103は、バッテリボックス102から延びる配線を集約する。ジャンクションボックス103からは、PCU101やダウンレギュレータ104等に接続される配線が延びている。ジャンクションボックス103は、バッテリボックス102の後部に取り付けられている。
【0067】
図3に示すように、ダウンレギュレータ104は、バッテリ105から供給される直流電流の電圧を降圧する。ダウンレギュレータ104は、ジャンクションボックス103の後部に取り付けられている。ダウンレギュレータ104の後部には、複数の放熱フィンが立設されている。
【0068】
リアクッション4は、前車体10と揺動機構部53とを連結している。リアクッション4は、圧縮コイルばねを有する緩衝器およびダンパを一体に備えたものである。リアクッション4の下端部は、揺動機構部53におけるジョイントケース90のクッション接続部98に連結されている。リアクッション4の上端部は、前車体10の荷台フレーム24に連結されている。
【0069】
以上に詳述したように、本実施形態の電動車両1は、前輪2を支持するとともに車体フレーム14および着座用のシート12を有する前車体10と、後輪3を駆動するモータ61を有し、後輪3を支持するとともに前車体10に対して左右方向に沿って延びるピボット軸線P回りに回動可能に設けられたスイングユニット50と、シート12よりも下方に配置され、モータ61の電源であるバッテリ105をシート12よりも下方の位置から前方に取り出し可能に保持するバッテリボックス102と、を備える。
【0070】
この構成によれば、重量物であるバッテリ105をシート12よりも高い位置に持ち上げることなく車両から取り出すことができる。よって、バッテリ105の着脱時における作業負荷が小さくなる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
さらに、本実施形態のようにシート12の後方に荷台39が設けられる場合には、荷台39に搭載した物品収納ボックス6等を荷台39から降ろすことなくバッテリ105を取り出すことができる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、バッテリボックス102がスイングユニット50に支持されている。この構成によれば、バッテリボックス102からモータ61に延びる配線(不図示)が、互いに相対回動する前車体10およびスイングユニット50を跨ぐことを回避できる。これにより、配線に負荷がかかることを抑制でき、電気的な安全性を確保できる。また、スイングユニット50にバッテリボックス102を組み付けた上で、スイングユニット50を前車体10に取り付けることが可能となるので、車両の組み立て性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、電動車両1がバッテリボックス102を左右方向の両側から覆うバッテリボックスカバー38を備える。この構成によれば、バッテリボックス102における左右方向からの被水を抑制できる。さらに、本実施形態のように、バッテリボックス102がスイングユニット50に支持されている場合には、前車体10に対してバッテリボックス102がピボット軸線P回りで回動(上下揺動)する様子を隠すことができる。よって、電動車両1の外観を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、バッテリボックス102が一対の後部フレーム23の間に配置されている。この構成によれば、バッテリボックス102への左右方向からの物体の接触を後部フレーム23によって防ぐことができる。したがって、バッテリボックス102およびバッテリ105の保護性能を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、前車体カバー30がシート12よりも下方において前後方向に延びシート12の着座する乗員の足が載置されるフロアボード33を備え、バッテリボックス102がバッテリ105を前方に向けて引き出し可能に形成されている。この構成によれば、フロアボード33に沿ってバッテリボックス102からバッテリ105を引き出すことができる。これにより、バッテリボックス102からバッテリ105を引き出した際に、乗員等が重量物であるバッテリ105を直ちに支える必要がない。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、リアカバー35は、下端部を上方に変位させるように、フロアボード33に対して左右方向に沿って延びる第1回動軸線O1回りに回動可能に設けられている。この構成によれば、リアカバー35を第1回動軸線O1回りに回動させることによって、シート12の下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、フロアボード33およびリアカバー35を備える電動車両1において、バッテリボックス102の前方でバッテリ105の着脱を行うことが可能となる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
また、リアカバー35の下端部が上方に変位するので、フロアボード33とバッテリボックス102との間からリアカバー35が退避する。このため、バッテリボックス102からバッテリ105を取り出す際に、リアカバーを回避することなくバッテリ105をそのままフロアボード33に載置することができる。バッテリボックス102にバッテリ105を装着する際も同様である。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、スイングユニット50は、モータ61を含み一対の後輪3を支持するパワーユニット51と、左右方向に直交する方向に延びるローリング軸線R回りで前車体10とパワーユニット51とを揺動可能に連結する揺動機構部53と、を備える。この構成によれば、電動車両1が一対の後輪3を備える三輪車なので、車両が傾いた状態で駐車される二輪車と比較して、車両が直立した状態で安定して駐車することができる。このため、バッテリ105の着脱を容易に行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、バッテリボックス102は、パワーユニット51に対してローリング軸線R回りで回動するスイングアーム52に支持されている。この構成によれば、ローリング軸線R回りにおいてバッテリボックス102が前車体10に追従して回動するので、前車体10の傾きに応じてバッテリボックス102と前車体10との位置関係が大きく変化することを抑制できる。このため、バッテリ105の着脱時に、前車体10の車体フレーム14等によって、バッテリ105の着脱が阻害されることを抑制できる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、
図7を参照して、第2実施形態の電動車両201について説明する。第2実施形態は、リアカバー35がリンク機構207によって下端部を上方に変位させるように跳ね上がる点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0079】
図7は、第2実施形態の電動車両の後部を示す左側面図である。
図7に示すように、リアカバー35は、車体フレーム14等のフロアボード33に対して変位不能な部位に対して、リンク機構207を介して接続している。リンク機構207は、例えば平行リンク機構である。リンク機構207は、左右方向から見て互いに平行に延びる一対のリンク207aを備える。一対のリンク207aは、互いに同じ長さに形成されたステー等の部材である。各リンク207aの一端部は、車体フレーム14等に、左右方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されている。各リンク207aの他端部は、リアカバー35またはシート12に、左右方向に延びる軸線回りに回動可能に支持されている。これにより、リアカバー35は、リンク機構207によって、リアカバー35の下端部を上方に変位させるようにシート12と共に跳ね上がり、シート12の下方の空間を前方に開放する。そして、バッテリボックス102に対してバッテリ105を挿脱可能な状態とすることができる。
【0080】
このように、本実施形態では、リアカバー35が車体フレーム14にリンク機構207を介して接続され、上方に向けて変位可能に設けられている。この構成によれば、リアカバー35を上方に向けて変位させることによって、シート12の下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
なお、第2実施形態では、リンク機構207が平行リンク機構であるが、これに限定されず、長さが相違する一対のリンクによって構成されたリンク機構であってもよい。
【0082】
[第3実施形態]
次に、
図8を参照して、第3実施形態の電動車両301について説明する。第3実施形態は、リアカバー35が上端部を前方かつ下方に変位させるように回動可能に設けている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0083】
図8は、第3実施形態の電動車両の後部を示す左側面図である。
図8に示すように、リアカバー35は、フロアボード33に対して第2回動軸線O2回りに回動可能に設けられている。第2回動軸線O2は、左右方向に沿って延びている。第2回動軸線O2は、例えば左右方向から見たリアカバー35の下端部とフロアボード33の後端部との間に設けられている。この場合、リアカバー35は、フロアボード33にヒンジ等の連結部材を介して連結されている。リアカバー35は、シート12と共に第2回動軸線O2回りに回動することによって、リアカバー35の上端部を前方かつ下方に変位させるように、前方へ引き倒される。これにより、シート12の下方の空間が斜め前上方に開放される。
【0084】
電力供給部100は、バッテリボックス102のバッテリ挿脱口102aが前方かつ上方に向くように、スイングアーム52に支持されている。これにより、バッテリボックス102は、バッテリ105を前方かつ上方に向けて取り出し可能とされている。この場合、スイングアーム52のバッテリ支持部81は、上面が前端から後端に向かうに従って下方に向けて延びるように形成されている。バッテリ105は、リアカバー35を前方へ引き倒してバッテリボックス102が配置された空間を斜め前上方に開放することによって、シート12の下方の位置から前方に取り出される。
【0085】
このように、本実施形態では、バッテリボックス102がバッテリ105を前方かつ上方に向けて引き出し可能に形成されている。この構成によれば、バッテリボックス102へバッテリ105を装着する際のバッテリ105の移動方向は、後方かつ下方に向く。このため、バッテリ105に作用する重力を利用して、バッテリ105をバッテリボックス102に装着することができる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0086】
また、リアカバー35は、上端部を下方に向けて変位させるように、フロアボード33に対して左右方向に沿って延びる第2回動軸線O2回りに回動可能に設けられている。この構成によれば、リアカバー35を第2回動軸線O2回りに回動させることによって、シート12の下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、フロアボード33およびリアカバー35を備える電動車両301において、バッテリボックス102の前方でバッテリ105の着脱を行うことが可能となる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0087】
なお、第3実施形態では、リアカバー35がシート12と共に回動するように構成されているが、これに限定されず、リアカバー35がシート12から独立して第2回動軸線O2回りに回動するように構成されていてもよい。
【0088】
[第4実施形態]
次に、
図9を参照して、第4実施形態の電動車両401について説明する。第4実施形態では、前後方向から見てリアカバー435を左右方向の一方に向けて回動可能に設けられている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0089】
図9は、第4実施形態の電動車両におけるリアカバー周辺を前方から見た正面図である。
図9に示すように、リアカバー435の一部は、フロアボード33に対して第3回動軸線O3回りに回動可能に設けられている。第3回動軸線O3は、左右方向に交差する方向に延びている。例えば、第3回動軸線O3は、左側の後部フロア435a(不図示)とシート下カバー435bとの境界部に設けられている。この場合、シート下カバー435bは、後部フロア435aとは別体として形成され、左側の後部フロア435aにヒンジ等の連結部材を介して連結されている。シート下カバー435bは、シート12と共に第3回動軸線O3回りに回動することによって、前後方向から見てフロアボード33に対して左右方向の一方(図示の例では左方)に回動する。これにより、シート12の下方の空間が前方に開放され、バッテリボックス102に対してバッテリ105を挿脱可能な状態とすることができる。
【0090】
このように、本実施形態では、リアカバー435が前後方向から見てフロアボード33に対して左右方向の一方に向けて回動可能に設けられている。この構成によれば、前後方向から見てリアカバー435を左右方向の一方に向けて回動させることによって、シート12の下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、フロアボード33およびリアカバー435を備える電動車両401において、バッテリボックス102の前方でバッテリ105の着脱を行うことが可能となる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
また、リアカバー435が左右方向に変位するので、フロアボード33とバッテリボックス102との間からリアカバー435が退避する。このため、バッテリボックス102からバッテリ105を取り出す際に、リアカバー435を回避することなくバッテリ105をそのままフロアボード33に載置することができる。バッテリボックス102にバッテリ105を装着する際も同様である。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0091】
なお、第4実施形態では、リアカバー435のうちシート下カバー435bのみが回動可能に設けられているが、これに限定されない。シート下カバー435bが後部フロア435aと共に回動可能に設けられていてもよい。
【0092】
また、第4実施形態では、リアカバー435は、シート12と共に回動可能に設けられているが、これに限定されない。すなわち、
図10に示すように、リアカバー435は、シート12から独立して回動可能に設けられていてもよい。なお、
図10に示すようにリアカバー435がシート12から独立して左右方向に回動する場合、シート12を車体フレーム14によって支持する。
【0093】
[第5実施形態]
次に、
図11を参照して、第5実施形態の電動車両501について説明する。第5実施形態では、前後方向から見てリアカバー535の第1部分を左方に向けて回動可能に設け、リアカバー535の第2部分を右方に向けて回動可能に設けている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0094】
図11は、第5実施形態の電動車両におけるリアカバー周辺を前方から見た正面図である。
図11に示すように、シート下カバー535bは、左右一対に分割されている。シート下カバー535bは、前後方向から見て車体の左右中心線に直交する分割線に沿って分割されている。シート下カバー535bの左半部は、シート12から独立してフロアボード33に対して第4回動軸線O4回りに回動可能に設けられている。第4回動軸線O4は、左右方向に交差する方向に延びている。例えば、第4回動軸線O4は、左側の後部フロア535aとシート下カバー535bとの境界部に設けられている。シート下カバー535bの右半部は、シート12から独立してフロアボード33に対して第5回動軸線O5回りに回動可能に設けられている。第5回動軸線O5は、左右方向に交差する方向に延びている。例えば、第5回動軸線O5は、右側の後部フロア535aとシート下カバー535bとの境界部に設けられている。例えば、第4回動軸線O4および第5回動軸線O5は、左右対称に設けられている。
【0095】
シート下カバー535bの左半部は、第4回動軸線O4回りに回動することによって、前後方向から見てフロアボード33に対して左方に回動する。シート下カバー535bの右半部は、第5回動軸線O5回りに回動することによって、前後方向から見てフロアボード33に対して右方に回動する。これにより、シート12の下方の空間が前方に開放され、バッテリボックス102に対してバッテリ105を挿脱可能な状態とすることができる。
【0096】
このように、本実施形態では、リアカバー535が前後方向から見てフロアボード33に対して左右方向の両側に向けて回動可能に設けられている。この構成によれば、前後方向から見てリアカバー535を左右方向の両側に向けて回動させることによって、シート12の下方の空間を前方に向けて開放することができる。このため、第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
なお、第5実施形態では、リアカバー535のうちシート下カバー535bのみが回動可能に設けられているが、これに限定されない。シート下カバー535bが後部フロア535aと共に回動可能に設けられていてもよい。
【0098】
また、第5実施形態では、シート下カバー535bの左半部および右半部が、シート12から独立して回動可能に設けられているが、これに限定されない。シート下カバー535bの左半部および右半部の一方が、シート12と共に回動可能に設けられていてもよい。
【0099】
[第6実施形態]
次に、
図12を参照して、第6実施形態の電動車両601について説明する。第3実施形態は、リアクッション604が前車体610に対してローリング軸線R回りで揺動する部材同士の間に介在している点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0100】
図12は、第6実施形態の電動車両の左側面図である。
図12に示すように、第6実施形態の電動車両601は、前輪2を操向可能に支持する前車体610と、前車体610を覆う前車体カバー630と、一対の後輪3を支持する後車体650と、前車体610と後車体650とを連結する揺動機構部653と、電力供給部100と、を主に備える。前車体610は、第1実施形態の前車体10(
図1参照)から荷台フレーム24を省略した構成を有する。前車体カバー630は、第1実施形態の前車体カバー30(
図1参照)から荷台フレーム24を覆う部分、およびバッテリボックスカバー38を省略した構成を有する。
【0101】
後車体650は、後車体650の骨格をなす後車体フレーム654と、後車体フレーム654に対して上下揺動可能に連結されたスイングユニット658と、後車体フレーム654とスイングユニット658との間に介装されたリアクッション604と、を備える。
【0102】
後車体フレーム654は、後車体650の前部において左右方向に延びる前部クロスメンバ655と、前部クロスメンバ655の左右両端部から後方へ延びる左右一対のサイドフレーム656と、左右方向に延びて一対のサイドフレーム656の後端部に結合する後部クロスメンバ657と、を備える。サイドフレーム656は、前部クロスメンバ655との結合部から後方へ延びる第1部分656aと、左右方向から見て後輪3の前方に設けられ、第1部分656aの後端部から上方へ屈曲して延びる第2部分656bと、左右方向から見て後輪3の上方に設けられ、第2部分656bの上端部から後方へ屈曲して延びる第3部分656cと、を備えている。左右のサイドフレーム656の第3部分656cの上部には、物品を搭載する荷台39が設けられている。
【0103】
スイングユニット658は、後車体フレーム654に上下揺動可能に支持されている。スイングユニット658は、パワーユニット51と、スイングアーム652と、を備える。
【0104】
スイングアーム652は、左右一対のサイドフレーム656の第1部分656aの間に配置されている。スイングアーム652は、前部において後車体フレーム654に接続され、後部においてパワーユニット51に固定されている。スイングアーム652は、左右一対のサイドフレーム656によって、左右方向に沿って延びるピボット軸線P回りに回動可能に支持されている。スイングアーム652は、左右一対のサイドアーム680と、一対のサイドアーム680の間に架設されたバッテリ支持部(不図示)と、を備える。
【0105】
一対のサイドアーム680は、後車体フレーム654の一対のサイドフレーム656にそれぞれ支持されている。サイドアーム680は、ピボット軸線Pよりも前方の位置から、ピボット軸線Pよりも後方の位置に亘って延びている。サイドアーム680のうち少なくともピボット軸線Pの近傍は、略水平に延びている。一対のサイドアーム680の後端部は、それぞれパワーユニット51に固定されている。例えば、一対のサイドアーム680の後端部は、それぞれパワーユニット51のユニットケース60(
図2参照)に結合されている。バッテリ支持部は、第1実施形態のバッテリ支持部81(
図3参照)と同様に構成されている。すなわち、バッテリ支持部は、電力供給部100を下方から支持する。バッテリ支持部は、電力供給部100の少なくとも一部を下方から覆っている。
【0106】
リアクッション604は、後車体フレーム654とスイングユニット658とを連結している。リアクッション604の下端部は、パワーユニット51のユニットケース60に連結されている。なお、リアクッション604の下端部は、スイングアーム652に連結されていてもよい。リアクッション4の上端部は、後車体フレーム654の後部クロスメンバ657に連結されている。
【0107】
揺動機構部653は、前部において前車体610の下部に固定され、後部において後車体650の前部に接続されている。揺動機構部653は、ジョイントケース90と、ジョイント軸91と、ナイトハルト92と、ロック機構93と、を備える。ジョイントケース90は、ジョイント軸91の後方に配置され、後車体フレーム654の前部クロスメンバ655に固定されている。ジョイント軸91の前端部は、前車体610の前部フレーム21の下部に固定されている。これにより、揺動機構部653は、前車体610と後車体650とをローリング軸線R回りで揺動可能に連結している。
【0108】
電力供給部100は、前車体610と後車体650との間に設けられている。
PCU101は、スイングアーム652によって下方から支持されている。PCU101は、スイングアーム652のバッテリ支持部に載置され、バッテリ支持部に固定されている。これにより、PCU101は、バッテリ支持部によって下方から覆われている。
【0109】
バッテリボックス102は、シート12の下方に配置されている。バッテリボックス102は、PCU101上に載置されている。バッテリボックス102は、PCU101を介してスイングアーム652によって下方から支持されている。バッテリ挿脱口102aは、左右のいずれか一方(図示の例では左方)に向かって開口している。バッテリボックス102は、バッテリ105の長手方向が左右方向に沿うように、かつバッテリ105のハンドル105aがバッテリ挿脱口102aの開口方向(図示の例では左方)に向くように、バッテリ105を収容する。これにより、バッテリボックス102は、バッテリ105を左方(側方)に向けて引き出し可能とされている。
【0110】
このように、本実施形態では、バッテリボックス102がバッテリ105を左方に向けて引き出し可能に形成されている。この構成によれば、乗員等が車両の横に立った状態で、バッテリボックス102からバッテリ105を手前に引き出すことができる。したがって、バッテリ105の着脱を容易にすることができる。
【0111】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態では、電動車両の例として、単一の前輪2および一対の後輪3を有する屋根付きの鞍乗り型の電動三輪車を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本発明は、屋根なしの電動三輪車や、自動二輪車、一対の前輪および単一の前輪を有する電動三輪車にも適用可能である。
【0112】
また、上記実施形態では、バッテリボックス102がバッテリ105を前方または左方に取り出し可能に保持するように構成されているが、これに限定されない。バッテリボックス102は、バッテリ105を右方に取り出し可能に保持してもよいし、バッテリ105を斜め前左方または斜め前右方に取り出し可能に保持してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、パーキングロックケーブルの終端がリアブレーキ5に接続されているが、これに限定されない。パーキングロックケーブルの終端は、例えばパワーユニット内でギヤをロックして後輪3の回転を制止する機構に接続されていてもよい。
【0114】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。