特許第6791926号(P6791926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791926
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20201116BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20201116BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20201116BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20201116BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20201116BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C03C27/12 Z
   B32B17/10
   B32B27/18 Z
   B32B27/28 102
   G09F9/30 362
   G09F9/30 349Z
   G02B27/01
   B60K35/00 A
   B60J1/02 M
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-192725(P2018-192725)
(22)【出願日】2018年10月11日
(62)【分割の表示】特願2014-74805(P2014-74805)の分割
【原出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2019-38743(P2019-38743A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 康之
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−024312(JP,A)
【文献】 特開2014−024313(JP,A)
【文献】 特開2012−242409(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/111298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B32B 27/18
B32B 27/28
B60J 1/02
B60K 35/00
G02B 27/01
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール、可塑剤及び発光材料を含む発光層を有し、前記発光材料が青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料からなる群より選択される少なくとも2種を含有するものであり、前記青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料が、互いに異なる励起波長を有する合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスと、1以上のレーザー光線発生装置とを有し、前記レーザー光線発生装置から前記合わせガラスに向けてレーザー光線を照射することにより多色画像を表示するものであるディスプレイ装置であって、
前記発光材料は、ナフタルイミド骨格を有する発光材料又はクマリン骨格を有する発光材料以外の発光材料を少なくとも1種類以上含み、
前記レーザー光線発生装置は、前記少なくとも2種の発光材料を励起させる、波長が15nm以上異なる少なくとも2種のレーザー光線を照射可能である
ことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
合わせガラス用中間膜の発光層中のポリビニルアセタール100重量部に対する発光材料の合計の含有量が0.015〜2重量部であることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光線を照射することにより、高コントラストの多色画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラスを用いるディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス間に、例えば、液状可塑剤とポリビニルアセタール樹脂とを含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
近年、自動車用のフロントガラスについて、このフロントガラスと同じ視野内に自動車走行データである速度情報等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。
HUDとしては、これまでに数々の形態が開発されている。最も一般的なHUDとしてコントロールユニットから送信される速度情報等をインストゥルメンタル・パネルの表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより、運転者がフロントガラスと同じ位置、すなわち、同一視野内で速度情報等を視認できるHUDがある。
【0004】
HUD用の合わせガラス用中間膜として、例えば、特許文献1には、所定の楔角を有する楔形合わせガラス用中間膜等が提案されており、合わせガラスにおいて計器表示が二重に見えるというHUDの欠点を解決することが提案されている。
特許文献1に記載された合わせガラスは、合わせガラスの面内の一部の領域であれば、計器表示が二重に見えるというHUDの欠点を解決することができる。即ち、合わせガラスの面内の全面において、計器表示が二重に見えるという問題は解決されていない。
【0005】
特許文献2には、2枚の透明板の間に、ヒドロキシテレフタレートを含む中間層が積層された合わせガラスが開示されている。特許文献2に記載された合わせガラスは、光線が照射されることにより、コントラストが高い画像を表示することができる。しかしながら特許文献2に記載された合わせガラスでは、単色の画像しか表示できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平4−502525号公報
【特許文献2】国際公開第2010/139889号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、励起光線を照射することにより、高コントラストの多色画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラスを用いるディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリビニルアセタール、可塑剤及び発光材料を含む発光層を有する合わせガラス用中間膜であって、前記発光材料は、青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料からなる群より選択される少なくとも2種を含有するものであり、前記青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料は、互いに異なる励起波長を有する合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール、可塑剤及び発光材料を含む発光層を有する。
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0010】
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が35モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。水酸基量が35モル%以下であると、合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0011】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0012】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0013】
上記発光層は、可塑剤を含有する。上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0014】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0015】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0016】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0017】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0018】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することが更に好ましい。
【0020】
上記発光層における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が80重量部である。上記可塑剤の含有量が20重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなるため、合わせガラス用中間膜を容易に成形できる。上記可塑剤の含有量が80重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部、更に好ましい下限は35重量部、更に好ましい上限は63重量部である。
【0021】
上記発光層は、発光材料を含有する。
上記発光材料は、青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料からなる群より選択される少なくとも2種を含有する。これにより、多色の画像表示が可能となる。
本明細書において青色系発光材料とは、励起波長の光線を照射することにより380nm以上、495nm未満の波長域の光を発光する発光材料を意味し、緑色系発光材料とは、励起波長の光線を照射することにより495nm以上、590nm未満の波長域の光を発光する発光材料を意味し、赤色系発光材料とは、励起波長の光線を照射することにより590nm以上、750nm以下の波長域の光を発光する発光材料を意味する。
【0022】
上記青色系発光材料は、例えば、ナフタルイミド系材料(例えば、BASF社製「Violet 570」、励起波長405nm)、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン(セントラルテクノ社製「B−800」、励起波長405nm)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル(Aldrich社製、励起波長、励起波長405nm)、トリス(3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリナート)イリジウム(III)(励起波長405nm)、トリス(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリナート)イリジウム(III)六フッ化リン酸三塩(励起波長405nm)等が挙げられる。
【0023】
上記緑色系発光材料は、例えば、2−(3−オキソインドリン−1−イリデン)メチルキノリン(セントラルテクノ社製「G−3300」、励起波長380nm)、トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)テルビウム(III)(励起波長380nm)、トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)モノ(1,10−フェナントロリナート)テルビウム(III)(励起波長380nm)等が挙げられる。
【0024】
上記赤色系発光材料は、例えば、トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオネート−O,O’)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド−O−)ユーロピウム)(セントラルテクノ株式会社製、励起波長340nm)、トリス[4,4,4−トリフロロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオナト−O,O’](安息香酸)ユウロピウム(セントラルテクノ社製、励起波長340nm)、トリス[1,1,5,5,5−ヘキサフロロ−1,3−ペンタンジオナト−O,O’]ビス(トリフェニルホスフィンオキシド−O−)ユウロピウム(セントラルテクノ社製、励起波長340nm)、トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)モノ(1,10−フェナントロリナート)ユーロピウム(III)(励起波長340nm)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)モノ(1,10−フェナントロリナート)ユーロピウム(III)(励起波長340nm)等が挙げられる。
【0025】
上記群より選択される2種以上発光材料は、互いに異なる励起波長を有するものを用いる。これにより、各々の励起波長の光線を照射することにより、対応する発色の表示を行うことができ、複数の波長の光線を組み合わせて照射することにより多色の画像表示が可能となる。
【0026】
上記発光層における上記ポリビニルアセタール100重量部に対する各々の発光材料単独の含有量の好ましい下限は0.005重量部、好ましい上限は2重量部である。上記各々の発光材料単独の含有量が0.005重量部以上であると、光線が照射されることにより、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。上記各々の発光材料単独の含有量が2重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0027】
上記発光層における上記ポリビニルアセタール100重量部に対する発光材料の合計の含有量の好ましい下限は0.015重量部、好ましい上限は2重量部である。上記発光材料の合計の含有量が0.015重量部以上であると、光線が照射されることにより、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。上記発光材料の合計の含有量が2重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0028】
上記発光層は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、上記発光材料の凝集を抑制でき、より均一な発光が得られる。
上記分散剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸構造を有する化合物や、ジエステル化合物、リシノール酸アルキルエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル等のエステル構造を有する化合物や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールやアルキルフェニル−ポリオキシエチレン−エーテル等のエーテル構造を有する化合物や、ポリカルボン酸等のカルボン酸構造を有する化合物や、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンの2級アミン、ポリオキシエチレンの3級アミン、ポリオキシエチレンのジアミン等のアミン構造を有する化合物や、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド等のポリアミン構造を有する化合物や、オレイン酸ジエタノールアミド、アルカノール脂肪酸アミド等のアミド構造を有する化合物や、ポリビニルピロリドン、ポリエステル酸アマイドアミン塩等の高分子量型アミド構造を有する化合物等の分散剤を用いることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)や高分子ポリカルボン酸、縮合リシノール酸エステル等の高分子量分散剤を用いてもよい。なお、高分子量分散剤とは、その分子量が1万以上である分散剤と定義される。
【0029】
上記分散剤を配合する場合に、上記発光層中における上記発光材料の合計100重量部に対する上記分散剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分散剤の含有量がこの範囲内であると、上記発光材料を発光層中に均一に分散させることができる。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は25重量部である。
【0030】
上記発光層は、更に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上記発光層が紫外線吸収剤を含有することにより、上記発光層の耐光性が高くなる。
上記紫外線吸収剤は、例えば、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0031】
上記発光層中における上記ポリビニルアセタール100重量部に対する上記紫外線吸収剤の含有量の好ましい上限は1重量部である。この範囲内であれば、コントラストが高い画像を表示できる。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい上限は0.5重量部である。
【0032】
上記発光層は、更に、酸化防止剤を含有することが好ましい。上記発光層が酸化防止剤を含有することにより、優れた耐光性を発揮することができる。
上記酸化防止剤は、例えば、フェノール構造を有する酸化防止剤、硫黄を含む酸化防止剤及びリンを含む酸化防止剤等が挙げられる。
上記フェノール構造を有する酸化防止剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記発光層は、必要に応じて、接着力調整剤、光安定剤、帯電防止剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の添加剤を含有してもよい。
【0034】
上記発光層の厚さの好ましい下限は300μm、好ましい上限は2000μmである。上記発光層の厚さがこの範囲内であると、特定の波長の光線を照射したときに充分にコントラストの高い発光が得られる。上記発光層の厚さのより好ましい下限は350μm、より好ましい上限は1000μmである。
【0035】
上記発光層は、合わせガラス用中間膜の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよく、合わせガラス用中間膜の厚み方向とは垂直の面方向の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよい。上記発光層が一部にのみ配置されている場合には、該一部を発光エリア、他の部分を非発光エリアとして、発光エリアにおいてのみ情報を表示できるようにすることができる。
【0036】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記発光層のみを含む単層中間膜であってもよく、上記発光層と、他の機能を発揮する樹脂層、例えば、紫外線吸収層、熱線吸収層、遮音層等を含む多層中間膜であってもよい。
また、上記発光層に含まれる発光材料を励起させる波長の光線を吸収する光吸収剤を含有する光吸収層を積層することも好ましい。このような光吸収層を積層することにより、画像表示のために照射した光線が外部に漏れるのを防止することができる。
【0037】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができるが、特定の波長の光線を照射する側とは反対のガラス板として用いることが好ましい。更に、上記ガラス板として、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【0038】
本発明の合わせガラスは、上記発光材料の各々の励起波長の光線を照射することにより、対応する発色の表示を行うことができ、複数の波長の光線を組み合わせて照射することにより多色の画像を表示することができる。
上記発光材料の各々の励起波長の光線を照射するための装置は、レーザータイプの集中光線(レーザー光線)の発生装置が好ましい。このようなレーザー光線発生装置を用いることにより、より高いコントラストの画像を表示することができる。
本発明の合わせガラスと、1以上のレーザー光線発生装置とを有し、上記レーザー光線発生装置から合わせガラスに向けてレーザー光線を照射することにより多色画像を表示するものであるディスプレイ装置もまた、本発明の1つである。
【0039】
上記レーザー光線発生装置は、波長410nm未満の紫外線レーザー光線を照射可能なレーザーダイオードを少なくとも1つ有することが好ましい。
上記レーザー光線発生装置は、レーザー光線の照度調整手段を有することが好ましい。これにより、昼夜等の外部条件にあわせて、表示する多色画像の輝度を調整することができる。
【0040】
上記レーザー光線発生装置は、例えば、スポット光源(例えば、浜松ホトニクス社製「LC−8」)、キセノン・フラッシュランプ(例えば、ヘレウス社製「CWランプ」や朝日分光社製「REX−250」)、ブラックライト(例えば、井内盛栄堂社製「キャリーハンド」)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、励起光線を照射することにより、高コントラストの多色画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラスを用いるディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.6モル%、ブチラール化度68.5モル%)100重量部に対し、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部、青色系発光材料としてナフタルイミド系材料(BASF社製「Violet 570」)0.2重量部、赤色系発光材料としてトリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオネート−O,O’)ビス(トリフェニルホスフィンオキシド−O−)ユーロピウム(セントラルテクノ株式会社製)0.2重量部、紫外線吸収剤としてTinuvin326(BASF社製)0.20重量部、及び、酸化防止剤としてH−BHT(堺化学工業社製)0.20重量部添加し、ミキシングロールで充分に混練して組成物を得た。
得られた組成物を押出機により押出して、平均厚み0.76mmの単層の中間膜を得た。
【0044】
得られた中間膜を、縦50mm×横50mm、厚み2.5mmの透明フロート板ガラス2枚の間に挟持し、耐熱性のテープを用いてずれることがないように固定して積層体を得た。得られた積層体を真空バッグ中に設置し、常温で933.2hPaの減圧度にて真空バッグ内の脱気を行った。続いて、脱気状態を維持したまま、真空バッグを100℃まで昇温し、温度が100℃に到達した後、20分間保持した。その後、真空バッグを自然冷却により冷却し、温度が30℃まで低下したことを確認して、圧力を大気圧に開放した。
上記真空バッグ法により仮圧着された合わせガラスを、オートクレーブを用いて、135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着して、合わせガラスを得た。
【0045】
(実施例2〜4、比較例1、2)
発光材料を表1のようにした以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0046】
(評価)
得られた合わせガラスについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
(1)可視光透過率の測定
得られた合わせガラスについて、自記分光光度計(日立製作所製「U4100」)を用いて300〜2500nm透過率を測定し、JIS R 3211(1998)に準拠して、380〜780nmの可視光透過率を算出した。
【0048】
(2)画像表示の評価
暗室下にて、合わせガラスの面に対して垂直方向に10cm離れた位置に配置したHigh Powerキセノン光源(朝日分光社製「REX−250」)から、表1に示した各波長のレーザー光線を合わせガラスの全面に向けて照射し、光線を照射した合わせガラスの面から45度の角度で35cm離れた位置に配置した輝度計(トプコンテクノハウス社製「SR−3AR」)によって、発光波長を測定して発色を評価した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1より、青色系発光材料、緑色系発光材料及び赤色系発光材料からなる群より選択される少なくとも2種の発光材料を含有する発光層を有する実施例の合わせガラスでは、3色の多色表示を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、励起光線を照射することにより、高コントラストの多色画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラスを用いるディスプレイ装置を提供することができる。