【文献】
WANG W.,Instability, stabilization, and formulation of liquid protein pharmaceuticals,International Journal of Pharmaceutics,日本,1999年 4月,185,pp129-188
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ポリソルベート20(PS)、ラウリン酸(LA)又はPOEソルビタン20(POE)を含む様々な添加物との組合せにおける抗IL13抗体の濁度分析から得た結果を示す。
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図2】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IL13抗体のタンパク質濃度分析から得た結果を示す。
【
図3】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IgE抗体のタンパク質濃度分析から得た結果を示す。
【
図4】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IL13抗体の濁度分析から得た結果を示す。
【
図5】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IgE抗体の濁度分析から得た結果を示す。
【
図6】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IL13抗体の粒子サイズ分析(2μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
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図7】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IgE抗体の粒子サイズ分析(2μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
【
図8】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IL13抗体の粒子サイズ分析(10μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
【
図9】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IgE抗体の粒子サイズ分析(10μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
【
図10】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IL13抗体の粒子サイズ分析(50μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
【
図11】POEソルビタン20、PEG1000、又はPEG6000を含む様々な添加物(全て様々な濃度)との組合せにおける抗IgE抗体の粒子サイズ分析(50μmより大きい粒子)から得た結果を示す。
【0019】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明は、以下の特定の実施態様の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解されるだろう。
【0020】
別段の定めがある場合を除き、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当分野の通常の技術者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。ここに記載されるものと類似又は均等な何れかの方法及び材料が発明の実施又は試験において使用されうるが、好ましい方法及び材料をここに記載する。ここに記載の全ての刊行物を、出典明記によりその全体を本明細書中に援用する。
【0021】
抗体及び他のタンパク質の凝集は主に疎水性相互作用によって引き起こされ、最終的に変性を導く。部分的に又は完全にアンフォールドされたタンパク質が水に曝される場合、これは、通常は埋もれている疎水性内部が今度は親水性水性環境に曝されることによって、熱力学的に好ましくない状況をつくる。結果的に、疎水性領域の周りの構造化水分子によるエントロピーの低下が、主に曝された疎水性領域を通して、変性タンパク質を凝集させる。従って、タンパク質の溶解性も損なわれうる。幾つかの場合では、天然又はミスフォールドのタンパク質サブユニットの自己会合が特定の条件下で生じ、これが沈殿及び活性の低下を導きうる。
【0022】
溶液中におけるタンパク質凝集に影響する要因は一般に、タンパク質濃度、pH、温度、他の賦形剤、及びメカニカルストレスをを含む。幾つかの要因(例えば温度)は、他(例えばメカニカルストレス)より、精製、配合、製造、保管及び使用の間、容易にコントロールされる。製剤試験は、凝集を誘発しない、及び/又は実際に凝集の防止を援助するpH及び賦形剤の適切な選択(一又は複数)を決定する。タンパク質濃度は、要求される治療量によって決定され、この濃度がいくらかに依存して、溶液中における凝集を導きうるより高い関連状態(二量体、四量体など)に対する可能性が存在するか決定するだろう。製剤開発中に、どの要因がタンパク質凝集に影響し、そしてどのようにこれらの要因が除外又はコントロールされうるか決定するために、注意深い研究が為されなければならない。
【0023】
非経口又は他の投与における使用のための抗体又は他のタンパク質の安定した溶液調製物の同定に対する要求は、物理的安定性に対する様々な添加物の影響を評価するための試験方法の開発につながりうる。タンパク質凝集に影響する周知のタンパク質及びそのような使用の要件に基づき、物理的安定性は、タンパク質溶液の攪拌又は回転を含む機械的手法を使用して評価されうる。凝集を防止するための様々な添加物の能力を同定するための物理的ストレス試験に対する方法論は、水平面における振とう又はかき混ぜ、又は垂直面においてn rev/分で回転している車輪の軸からxcmでの回転を含みうる。攪拌から生じる濁度は通常、目視検査又は光散乱分析によって時間の関数として決定される。あるいは、沈殿による可溶性タンパク質量の低減は、HPLCアッセイにより時間の関数として定量化されうる。
【0024】
本発明は、液性製剤中に所定の濃度で存在するポリオキシエチレン(POE)ソルビタン及びポリエチレングリコール(PEG)が、タンパク質含有製剤の安定化に、及びこのような製剤中におけるタンパク質の凝集の防止に有用であるという新規な発見に基づく。
【0025】
従って、一態様では、本発明は、高濃度又は低濃度にかかわらず抗体又は他のタンパク質、及びPOEソルビタンを含んでなる物質の組成物に関する。ここで使用される場合、「ポリオキシエチレンソルビタン」又は「POEソルビタン」は、次の化学構造を有する非界面活性化合物を指す:
ここでa+b+c+dが好ましくは約6〜約80、より好ましくは約8〜約60、更により好ましくは約10〜約40、更により好ましくは約10〜約20である。上記に関して、当分野では、ここに記載されるPOEソルビタン等の化合物の化学合成は、完全に均一な調製物というより、いくらか不均一な化合物の混合物となることが理解される。このように、a+b+c+dが例えば好ましくは約6〜80であるとここで記載される場合、該定義は、その化学合成から生じる不均一な混合物の大部分の要素を指すことが理解される。
【0026】
POEソルビタンは、水溶液中において、抗体又は他のタンパク質の安定剤として単独で使用されてもよく、又は抗体又は他のタンパク質を安定化させるために他のPOEソルビタンとの組合せにおいて使用されてもよい。POEソルビタンは、水溶液中における広範な濃度にわたり抗体又は他のタンパク質の安定化(又は抗凝集)剤として有用である。本発明のある実施態様では、POEソルビタン(単一安定化剤としての使用)又はPOEソルビタン(組合せにおける使用)は水性抗体-又は他のタンパク質-含有製剤中に、約20ppm〜約100,000ppm、より好ましくは100ppm〜約50,000ppm、更により好ましくは150ppm〜約10,000ppm、更により好ましくは200ppm〜約5,000ppm、更により好ましくは200ppm〜約1,000ppmの濃度で存在しうる。
【0027】
別の態様では、本発明は、高濃度又は低濃度にかかわらず抗体又は他のタンパク質、及びポリエチレングリコールを含んでなる物質の組成物を記載する。
【0028】
ここで使用される場合、「ポリエチレングリコール」、「PEG」、及び類似な用語は、ポリエチレングリコール及びその様々な誘導体、例えばメトキシ-PEG-アミン、ジアミン-PEG、及び同様なものを包含することを意図する。より具体的には、本発明のある実施態様では、「ポリエチレングリコール」又は「PEG」なる用語は、次の化学構造を有する非界面活性化合物を指す:
ここで、nは約5〜約240であり、場合によってはある程度の不飽和を含みうる。本発明における使用に対して包含されるPEGは、分岐又は線状であり得、好ましくは線状である。上記に関して、当分野では、ここに記載されるPEG等の化合物の化学合成は、完全に均一な調製物というより、いくらか不均一な化合物の混合物となることが理解される。このように、nが好ましくは約5〜240であるとここで記載される場合、該定義は、その化学合成から生じる不均一な混合物の大部分の要素を指すことが理解される。
【0029】
PEGは、水溶液中において、抗体又は他のタンパク質の安定剤として単独で使用されてもよく、又は抗体又は他のタンパク質を安定化させるために他のPEGとの組合せにおいて使用されてもよい。PEGは、水溶液中における広範な濃度にわたり抗体又は他のタンパク質の安定化(又は抗凝集)剤として有用である。本発明のある実施態様では、PEG(単一安定化剤としての使用)又はPEG(組合せにおける使用)は水性抗体-又は他のタンパク質-含有製剤中に、約10,000ppm未満、好ましくは約20ppm〜約10,000ppm、より好ましくは約200ppm〜約10,000ppm、より好ましくは約200ppm〜約5,000ppm、より好ましくは約200ppm〜約1,000ppm、より好ましくは約200ppm〜約500ppmの濃度で存在しうる。
【0030】
好ましいPEGは約200〜12,000の分子量のポリマーを含むが、より高分子量のポリマーも発明の範囲内である。PEGは線状及び分岐ポリマー、星状分子、及びより高い分子量のポリマーを形成するために少なくとも2つの異なるPEGポリマーのカップリングにより形成されるPEGブロックコポリマーを含み、これら全ては当分野でよく知られている。
【0031】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」とは、鎖長がより高レベルな三次及び/又は四次構造を産生するのに十分な長さのアミノ酸の配列を意味する。従って、タンパク質は、そのような構造を持たない、同様にアミノ酸をベースとした分子である「ペプチド」とは区別される。典型的には、ここでの使用のためのタンパク質は少なくとも約5−20kD、あるいは少なくとも約15−20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有するだろう。「ペプチド」とは一般に高レベルの三次及び/又は四次構造を示さないアミノ酸の配列を意味する。ペプチドは一般に約5kD未満の分子量を有する。
【0032】
ここでの定義に包含されるポリペプチドの例は、哺乳類タンパク質、例えばレニン;成長ホルモン、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ1アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲンアクチベーター、例えばウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノゲンアクチベーター(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク、例えばベータラクタマーゼ;デオキシリボヌクレアーゼ(DNase);IgE;細胞傷害性Tリンパ球抗原(CTLA)、例えばCTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子に対する受容体;プロテインA又はD;リウマトイド因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経成長因子、例えばNGF-β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えばaFGF及びbFGF;上皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF-アルファ及びTGF-ベータ、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む;インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン-アルファ、-ベータ、及び-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL-1〜IL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばCA125(卵巣癌抗原)又はHER2、HER3又はHER4受容体;イムノアドヘシン;及び上に挙げた何れかのタンパク質の断片及び/又は変異体並びに上に挙げた何れかのタンパク質に結合する抗体(抗体断片を含む)を含む。
【0033】
製剤化されるタンパク質は好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(すなわち、混入タンパク質を含まない)。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の全重量に基づいて、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質を含んでなる組成物を意味する。「本質的に均一な」タンパク質とは、組成物の全重量に基づいて、少なくとも約99重量%のタンパク質を含んでなる組成物を意味する。
【0034】
ある実施態様では、タンパク質は抗体である。ここでの抗体は興味の「抗原」に対して向けられる。好ましくは抗原は生物学的に重要なタンパク質であり、疾病又は疾患を患っている哺乳類への抗体の投与は該哺乳類に治療効果をもたらしうる。しかしながら、非タンパク質抗原(例えば、腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5,091,178号を参照)に対して向けられる抗体も考えられる。抗原がタンパク質である場合は、それは膜貫通分子(例えば受容体)又はリガンド、例えば増殖因子でありうる。例示的な抗原は上で検討したそれらのタンパク質を含む。本発明により包含される抗体の好ましい分子標的は、CDポリペプチド、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD34;HER受容体ファミリーのメンバー、例えばEGF受容体(HER1)、HER2、HER3又はHER4受容体;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びav/b3インテグリン、そのa又はbサブユニットを含む(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);増殖因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;ポリペプチドC等を含む。可溶性抗原又はその断片が、場合によっては他の分子にコンジュゲートされ、抗体を生成するための免疫原として使用されうる。受容体などの膜貫通分子については、それらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用されてもよい。あるいは、膜貫通分子を発現している細胞が免疫原として使用されてもよい。このような細胞は天然源(例えば癌細胞株)から得られてもよく、又は膜貫通分子を発現させるように組換え技術によって形質転換された細胞であってもよい。
【0035】
ここにおいて精製される抗体の例は、限定するものではないが:HER2抗体、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)、米国特許第5,725,856号)及びペルツズマブ(OMNITARG
TM)(WO01/00245)を含む;CD20抗体(下を参照);IL-8抗体(St John等, Chest, 103:932 (1993), 及び国際公開番号WO95/23865);VEGF又はVEGF受容体抗体、ヒト化及び/又は親和性成熟VEGF抗体、例えばヒト化VEGF抗体huA4.6.1ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))及びラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))を含む(Kim等, Growth Factors, 7:53-64 (1992)、国際公開番号WO96/30046、及びOctober 15, 1998に公開のWO98/45331);PSCA抗体(WO01/40309);CD11a抗体、エファリズマブ(RAPTIVA(登録商標))を含む(米国特許第6,037,454号、米国特許第5,622,700号,WO98/23761, Stoppa等, Transplant Intl. 4:3-7 (1991), 及びHourmant等, Transplantation 58:377-380 (1994));IgEに結合する抗体、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))を含む(Presta等, J. Immunol. 151:2623-2632 (1993), 及び国際公開番号WO95/19181;February 3, 1998に発行の米国特許第5,714,338号又はFebruary 25, 1992に発行の米国特許第5,091,313号、March 4, 1993に公開のWO93/04173、又はJune 30, 1998に出願の国際出願番号PCT/US98/13410、米国特許第5,714,338号);CD18抗体(April 22, 1997に発行の米国特許第5,622,700号、又はJuly 31, 1997に公開のWO97/26912);Apo-2受容体抗体抗体(November 19, 1998に公開のWO98/51793);組織因子(TF)抗体(November 9, 1994に付与された欧州特許番号0420937B1);α
4−α
7インテグリン抗体(February 19, 1998に公開のWO98/06248); EGFR抗体(例えば、キメラ化又はヒト化225抗体,セツキシマブ,ERBUTIX(登録商標)、December 19, 1996に公開のWO96/40210に記載);CD3抗体、例えばOKT3(May 7, 1985に発行の米国特許第4,515,893号);CD25又はTac抗体、例えばCHI-621(SIMULECT(登録商標)) 及びZENAPAX(登録商標)(December 2, 1997に発行の米国特許第5,693,762号を参照);CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choy等, Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996)); CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(ILEX/Berlex) (Riechmann等, Nature 332:323-337 (1988)); Fc受容体抗体、例えばFcγRIに対して向けられるM22抗体、Graziano等, J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995))に記載;癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14 (Sharkey等, Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s (1995)); 乳房上皮細胞に対して向けられる抗体、huBrE-3、hu-Mc 3及びCHL6を含む (Ceriani等, Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s (1995);及びRichman等, Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995));結腸癌細胞に結合する抗体、例えばC242(Litton等, Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996));CD38抗体、例えばAT 13/5 (Ellis等, J. Immunol. 155(2):925-937 (1995));CD33抗体、例えばHu M195(Jurcic等, Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995)) 及びCMA-676又はCDP771;EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX(登録商標));GpIIb/IIIa抗体、例えばアブシキシマブ又はc7E3 Fab(REOPRO(登録商標));RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGISR);CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);HIV抗体、例えばPRO542;肝炎抗体、例えばHep B抗体OSTAVIR(登録商標);CA125抗体、抗MUC16(WO2007/001851;Yin, BWT and Lloyd, KO, J. Biol. Chem. 276:27371-27375 (2001)) 及びOvaRexを含む;イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;αvβ3抗体(例えば、VITAXIN(登録商標);Medimmune);ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗ヒト17-1An抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対して向けられる抗ヒトメラノーマ抗体R24;抗ヒト扁平上皮癌(SF-25);ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1);CD37抗体、例えばTRU 016(Trubion);IL-21抗体(Zymogenetics/Novo Nordisk);抗B細胞抗体(Impheron);B細胞標的MAb(Immunogen/Aventis);1D09C3(Morphosys/GPC);LymphoRad 131(HGS);Lym-1抗体、例えばLym-1Y-90(USC)又は抗Lym-1 Oncolym (USC/Peregrine);LIF 226(Enhanced Lifesci.);BAFF抗体(例えばWO03/33658);BAFF受容体抗体(例えばWO02/24909を参照);BR3抗体;Blys抗体、例えばベリムマブ;LYMPHOSTAT-B
TM;ISF 154(UCSD/Roche/Tragen);gomilixima(Idec 152; Biogen Idec);IL-6受容体抗体、例えばアトリズマブ(ACTEMRA
TM;Chugai/Roche);IL-15抗体、例えばHuMax-Il-15(Genmab/Amgen);ケモカイン受容体抗体、例えばCCR2抗体(例えばMLN1202; Millieneum);抗補体抗体、例えばC5抗体(例えばエクリズマブ、5G1.1;Alexion);ヒト免疫グロブリンの経口製剤 (例えばIgPO;Protein Therapeutics);IL-12抗体、例えばABT-874(CAT/Abbott);テネリキシマブ (BMS-224818;BMS);CD40抗体、S2C6及びその変異体を含む(WO00/75348)及びTNX 100(Chiron/Tanox);TNF-α抗体、例えばcA2又はインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、CDP571、MAK-195、アダリムマブ(HUMIRA
TM)、ペグ化TNF-α抗体断片、例えばCDP-870(Celltech)、D2E7(Knoll)、抗TNF-αポリクローナル抗体(例えばPassTNF; Verigen);CD22抗体、例えばLL2又はエプラツズマブ(LYMPHOCIDE(登録商標);Immunomedics)、例えばエプラツズマブY-90及び エプラツズマブI-131、AbiogenのCD22抗体(Abiogen, Italy)、CMC 544(Wyeth/Celltech)、combotox(UT Soutwestern)、BL22(NIH)、及びLympoScan Tc99(Immunomedics)を含む。
【0036】
CD20抗体の例には、「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と称される「C2B8」(米国特許第5736137号)、「Y2B8」と呼称されるイットリウム-[90]-ラベル2B8マウス抗体、又はIDEC pharmaceuticals社から商業的に入手可能な「イブリツモマブ・チウキセタン」(ZEVALIN(登録商標))(米国特許第5736137号;1993年6月22日にHB11388の受託番号でATCCに寄託された2B8;場合によっては
131Iで標識され、「131I-B1」を生じる、「トシツモマズ」と呼称されるマウスIgG2a「B1」、又はCorixaから商業的に入手可能な「ヨードI113トシツモマズ」抗体(BEXXAR
TM)(また、米国特許第5595721号を参照);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Pressら, Blood 69(2):584-591(1987))及び「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5を含むその変異体(国際公開第2003/002607号、Leung, S.; ATCC寄託HB-96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号、Lowman等);2F2(HuMax-CD20)、B細胞の細胞膜においてCD20分子を標的とする全長ヒト高親和性抗体(Genmab, Denmark;例えばGlennie and van de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510(2003)、及びCraggら, Blood 101: 1045-1052(2003); 国際公開第2004/035607号;米国特許第2004/0167319号を参照);国際公開第2004/035607号及び米国特許出願公開第2004/0167319号(Teeling等)に説明されているヒトモノクローナル抗体;米国特許第2004/0093621号(Shitaraら)に記載されているような、Fc領域に結合した複合N-グリコシド-結合糖鎖を有する抗体;CD20に結合するモノクローナル抗体及び抗原結合断片(国際公開第2005/000901号、Tedder等)、例えばHB20-3、HB20-4、HB20-25、及びMB20-11;CD20結合分子、例えばAMEシリーズの抗体、特に国際公開第2004/103404号及び米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkinsら, Eli Lilly/Applied Molecular Evolution, AME)に説明されているようなAME33抗体;米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkins等)に記載されているようなCD20結合分子;A20抗体又はその変異体、例えばキメラ又はヒト化A20抗体(それぞれ、cA20、hA20)又はIMMU-106(米国特許出願公開第2003/0219433号、Immunomedics);CD20-結合抗体、特にエピトープ枯渇Leu-16、1H4、又は2B8で、米国特許出願公開第2005/0069545A1号及び国際公開第2005/16969号(Carr等)のような、場合によってはIL-2とコンジュゲートしているもの;CD22及びCD20に結合する二重特異性抗体、例えばhLL2xhA20(国際公開第2005/14618号、Chang等);International Leukocyte Typing Workshopから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentineら: Leukocyte Typing III(McMichael編, p. 440, Oxford University Press(1987));1H4(Haisma等 Blood 92:184(1998));抗CD20オーリスタチン(auristatin)Eコンジュゲート(Seattle Genetics);抗CD20-IL2(EMD/Biovation/City of Hope);抗CD20 MAb治療(EpiCyte);抗CD20抗体TRU 015(Trubion)が含まれる。
【0037】
「抗体」なる用語は、ここで使用される場合、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、及び単鎖分子、並びに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)
2、及びFv))を含む。「免疫グロブリン」(Ig)なる用語は、ここでは「抗体」と互換可能に使用される。
【0038】
基本的な4-鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパクである。IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、10の抗原結合部位を有するが、IgA抗体は、重合してJ鎖との組合せにおいて多価集合を形成可能な2-5の基本的4-鎖ユニットから成る。IgGの場合、4-鎖ユニットは一般的に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C
H)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのC
Hドメインが続く可変ドメイン(V
H)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメインが続く可変ドメイン(V
L)をN末端に有する。V
LはV
Hと整列し、C
Lは重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。V
LとV
Hは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994, page 71 and Chapter 6を参照のこと。
【0039】
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(C
H)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、CH配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
【0040】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの全スパンを通して均等には分布されていない。代わりに、V領域は、それぞれおよそ9−12アミノ酸残基長である「高頻度可変領域」又は時に「相補性決定領域」(CDR)と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された約15−30アミノ酸残基のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
【0041】
「超可変領域」(「相補性決定領域」又はCDRとしても知られる)なる用語は、ここで使用される場合、抗原結合部位を形成し、抗原特異性の主たる決定因子であるイムノグロブリンのV領域ドメイン内の抗体のアミノ酸残基(通常、極度の配列可変性を有する3又は4の短い領域)を意味する。CDR残基を同定するために少なくとも2つの方法がある:(1)種間配列可変性に基づいたアプローチ(即ち、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health, Bethesda, M S 1991);及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づいたアプローチ(Chothia, C.等, J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))。しかしながら、2つの残基同定技術が同一領域ではないがオーバーラップする領域を限定する程度内で、それらの方法は、ハイブリッドCDRを限定するために組合わせることができる。
【0042】
本明細書中で用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある自然に生じる突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む一般的な(ポリクローナル)抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されずにハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特性を意味し、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991)、及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0043】
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一な重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一なものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、サルなど)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0044】
「無傷な」抗体は、抗原結合部位並びにCL及び少なくとも重鎖ドメイン、C
H1、C
H2及びC
H3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、無傷な抗体は一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0045】
「抗体断片」は、無傷な抗体の一部、好ましくは無傷な抗体の抗原結合及び/又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')
2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0046】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V
H)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')
2断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC
H1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')
2抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
【0047】
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
【0048】
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0049】
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV
H及びV
L抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0050】
「ダイアボディ」なる用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対を作り、これにより二価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片となるように、V
H及びV
L間の短いリンカー(約5−10残基)を用いてsFv断片(先の段落を参照)を構築することによって調製される小さい抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体であり、ここでは2つの抗体のV
H及びV
Lドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えばEP404,097;WO93/11161; Hollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に、より詳細に記載されている。
【0051】
特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに「特異的に結合する」又はこれに「特異的な」抗体とは、何れかの他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合しないで、その特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに結合するものである。
【0052】
「固相」なる用語は、本発明の抗体が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径の調整されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
【0053】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含み大部分がヒト配列である、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab’)
2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの高頻度可変領域(又はCDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種の高頻度可変領域(ドナー抗体)に由来する残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、「ヒト化抗体」は、ここで使用される場合、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練かつ最適化するために施される。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann等, Nature, 332:323-329 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0054】
「種依存性抗体」、例えば哺乳動物抗-ヒトIgE抗体は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1x10
−7M以下、あるいは約1x10
−8以下、あるいは約1x10
−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)に「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0055】
抗体「エフェクター機能」は抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰因するその生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例は、Clq結合及び補体依存性細胞傷害性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面レセプターのダウンレギュレーション(例えばB細胞レセプター);及びB細胞活性化を含む。
【0056】
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害性」又は「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)に結合した分泌Igがこれらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒で標的細胞を死滅させ得る細胞傷害性の形態を意味する。抗体は細胞傷害性細胞を「武装し」、このメカニズムによる標的細胞の死滅に必要とされる。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγI、FcγII及びFcγIIIを発現する。造血細胞上のFc発現はRavetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するために、例えば米国特許第5500362号又は5821337号に記載されているインビトロADCCアッセイが実施されうる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes等, PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されうる。
【0057】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(γレセプター)を結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン-ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。(M. Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991); Capel等, Immunomethods 4: 25-34 (1994); and de Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41 (1995)に概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。該用語は胎児への母性IgGsの移動の原因である新生児レセプターFcRnもまた含む。Guyer等, J. Immunol. 117: 587 (1976) and Kim等, J. Immunol. 24: 249 (1994)。
【0058】
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFCγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球を含み、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、その天然源、例えば血液から、単離することができる。
【0059】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的補体経路の活性化は、その同族抗原に結合する(適切なサブクラスの)抗体への補体系の第1の成分(Clq)の結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されているようなCDCアッセイを実施することができる。
【0060】
「単離された」とは、ここに開示される種々のポリペプチド及び抗体を記述するために使用する場合、その生産環境の要素から同定され、分離され及び/又は回収されたポリペプチド又は抗体を意味する。好ましくは単離されたポリペプチドはその産生環境からの他の全ての要素との関連がない。その生産環境の混入成分とは、例えば組換えトランスフェクト細胞から生じ、ポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分なほど精製される。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチド又は抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0061】
ここでのポリペプチド及び抗体をコードしている「単離された」核酸分子は、同定され、それが産生された環境と通常関連がある少なくとも一つの混入核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸はその産生環境からの他の全ての要素との関連がない。ここでのポリペプチド及び抗体をコードしている単離された核酸分子は、それが天然に見出される形態又は設定以外の形態である。故に、単離された核酸分子は、細胞中に天然に存在するここに記載のポリペプチド及び抗体をコードしている核酸とは区別される。
【0062】
「コントロール配列」なる用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0063】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列或いは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合しているか、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合しているか、又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター或いはリンカーが使用される。
【0064】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したここに記載のポリペプチド又は抗体を含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープ、又は幾つかの他の試薬によって同定できるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0065】
ここで用いられているように、「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。Ig融合は好ましくは、Ig分子内の少なくとも一つの可変領域の代わりにここに記載のポリペプチド又は抗体のドメインを置くことを含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体はIgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の生産については、1995年6月27日に発行された米国特許第5,428,130号も参照のこと。
【0066】
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性を許容する形態であり、その製剤が投与されるであろう被検体に許容できない程に毒性である更なる成分を含まない調製物を意味する。
【0067】
抗体は、任意の時点での抗体の生物学的活性が、薬学的製剤が調製された時点で示される生物学的活性の約10%(アッセイのエラーの範囲内)である場合、薬学的製剤中において「生物学的活性」を有し、インビトロ又はインビボにおける抗体の抗原に結合し測定可能な生物学的反応をもたらす能力によって決定される。
【0068】
「安定な」又は「安定化」製剤とは、その中におけるタンパク質が保管の際にその物理的及び/又は化学的安定性を基本的に維持しているものである。安定性は選択した温度で選択した期間、測定されうる。好ましくは、製剤は室温で(〜30°C)又は40°Cで少なくとも1ヶ月、及び/又は約2−8°Cで少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年安定である。例えば、保管の間の凝集の程度がタンパク質の安定性の指標として使用されうる。従って、「安定な」製剤とは、タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%未満が製剤中に凝集として存在するものでありうる。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当分野で利用可能であり、例えばPeptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991) and Jones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に総説されている。
【0069】
タンパク質含有製剤の「安定性」を増加させることは、該製剤中におけるタンパク質凝集の形成を(未処理タンパク質含有製剤と比較して)低減又は防止させることを指す。
【0070】
「水溶液」なる用語は、水が溶解媒体又は溶媒である溶液を指す。物質が液体に溶存する場合、混合物は溶液と呼ばれる。溶存物質は溶質であり、溶解している液体(この場合は水)は溶媒である。
【0071】
「安定化剤」又「安定剤」はなる用語は、ここで使用される場合、溶液又は混合物又は懸濁液又は組成物又は治療用組成物に加えられ、それを安定な又は不変な状態に維持する化学薬品又は化合物;又はより安定な又は不変な状態に導く原子又は分子における変化を含む反応を作るために使用される化学薬品又は化合物である。
【0072】
「凝集する」又は「凝集」なる用語は、ここで使用される場合、例えばペプチド、ポリペプチド、抗体又はその変異体の凝集において、塊又は一つに集まる又はまとまることを意味する。凝集は自己凝集、又は他の要因、例えば凝集剤、沈殿剤、攪拌、又はペプチド、ポリペプチド、抗体又はその変異体が集まるように導かれる他の手段及び方法による凝集でありうる。
【0073】
攪拌誘発凝集は、攪拌により誘発されるタンパク質含有溶液における凝集の形成であり、ここで攪拌は振とう又はかき混ぜによってなされる。
【0074】
「凝集に感受性な」抗体は、特に攪拌により、他の抗体分子(一又は複数)と凝集することが観察されているものである。
【0075】
攪拌誘発凝集を阻害することは、攪拌誘発凝集の量を防止、低減、又は低下させることを意図し、少なくとも一つの攪拌誘発凝集の阻害剤を含むタンパク質含有溶液中に存在する凝集の量を、少なくとも一つの攪拌誘発凝集の阻害剤を含まないタンパク質含有溶液中に存在する凝集の量と比較することによって測定される。
【0076】
攪拌誘発凝集阻害量とは、攪拌誘発凝集を阻害する量である。
【0077】
攪拌誘発凝集を測定するために本発明において有用な方法は、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び逆相高速液体クロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析、紫外吸収分光、蛍光分光、円二色性分光、等温滴定熱量測定、示差走査熱量測定、分析超遠心、動的光散乱、タンパク質分解、及び架橋結合、濁度測定、フィルター遅延アッセイ、免疫学的アッセイ、蛍光色素結合アッセイ、タンパク質染色アッセイ、顕微鏡、及びELISA又は他の結合アッセイによる凝集の検出を含む。
【0078】
「等張な」製剤は、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を持つものである。等張な(アイソトニック)製剤は、一般に約250から350mOsmの浸透圧を持つ。「低張な」なる用語は、ヒトの血液の浸透圧より低い浸透圧を持つ製剤を表す。同様に、「高張な」なる用語は、ヒトの血液の浸透圧より高い浸透圧を持つ製剤を表す。等張性は、例えば、蒸気圧又は氷-凍結(ice-freezing)型浸透圧計を用いて測定することができる。本発明の製剤は、塩及び/又はバッファーの添加の結果、高張となる。
【0079】
「再構成された」製剤は、凍結乾燥タンパク質又は抗体製剤を希釈液中に溶解させ、タンパク質が再構成製剤中に分散されることによって調製されたものである。再構成された製剤は、目的のタンパク質で治療される患者に投与(例えば、非経口投与)するのに適するもの、本発明のある実施態様では、皮下投与に適するものであってもよい。
【0080】
「サーファクタント(界面活性剤)」とは、親水性及び疎水性基双方を含むそれらの化学組成により、固体-固体、固体-液体、液体-液体、及び液体-空気の面でそれらの効果を行使可能な界面活性剤である。これらの物質は、希釈溶液中において、タンパク質が吸着し潜在的に凝集しうる空気-水及び/又は水-固体界面でタンパク質の濃度を低減させる。サーファクタントはタンパク質製剤において疎水性界面に結合できる。水面上のタンパク質は、特に攪拌された場合に、アンフォールディング及びその後のタンパク質単分子層の凝集により凝集するだろう。
【0081】
「サーファクタント(界面活性剤)」はタンパク質を変性させうるが、表面変性に対してそれらを安定化させることも可能である。一般に、イオン性界面活性剤はタンパク質を変性させる。しかしながら、非イオン性界面活性剤は通常、比較的高い濃度(1%w/v)であってもタンパク質を変性しない。多くの非経口に許容可能な非イオン性界面活性剤はポリソルベート又はポリエーテル基の何れかに由来する。ポリソルベート20及び80が、市販のタンパク質製剤における現代のサーファクタント安定剤である。しかしながら、タンパク質製剤に使用される界面活性剤はプルロニックF-68及び「Brij」クラスのメンバーを含む。非イオン性界面活性剤は糖ベースでありうる。糖ベース界面活性剤はアルキルグリコシドでありうる。アルキルグリコシドの一般的な構造はR
1-O-(CH
2)
X-Rであり、ここでRは独立してCH
3又はシクロヘキシル(C
6H
11)であり、R
1は独立してグルコース又はマルトースである。例示的なアルキルグリコシドは、R
1がグルコース、RがCH
3、xが5(n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド)、xが6(n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド)、xが7(n-オクチル-β-D-グルコピラノシド)、xが8(n-ノニル-β-D-グルコピラノシド)、xが9(n-デシル-β-D-グルコピラノシド)、及びxが11(n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド)であるものを含む。時にグルコピラノシドはグルコシドと呼ばれる。例示的なアルキルグリコシドは、R
1がマルトース、RがCH
3、xが5(n-ヘキシル-β-D-マルトピラノシド)、xが7(n-オクチル-β-D-マルトピラノシド)、xが8(n-ノニル-β-D-マルトピラノシド)、xが9(n-デシル-β-D-マルトピラノシド)、xが10(n-ウンデシル-β-D-マルトピラノシド)、xが11(n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド)、xが12(n-トリデシル-β-D-マルトピラノシド)、xが13(n-テトラデシル-β-D-マルトピラノシド)、及びxが15(n-ヘキサデシル-β-D-マルトピラノシド)であるものを更に含む。時にマルトピラノシドはマルトシドと呼ばれる。例示的なアルキルグリコシドは、R
1がグルコース、xが3、及びRがシクロヘキシル(3-シクロヘキシル-1-プロピル-β-D-グルコシド)であるもの;及びR
1がマルトース、xが4、及びRがシクロヘキシル(4-シクロヘキシル-1-ブチル-β-D-マルトシド)であるものを更に含む。
【0082】
「薬学的に許容可能な酸」は、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機酸を含む。例えば、適切な無機酸には、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファニル酸、リン酸、炭酸などが含まれる。適切な有機酸には、直鎖及び分岐鎖アルキル、芳香族、環状、環状脂肪族、アリール脂肪族、複素環式、飽和、不飽和、モノ-、ジ-、及びトリ-カルボン酸で、例えば、蟻酸、酢酸、2-ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、アントラニル酸、プロパン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-オキソプロパン酸、プロパンジオイン酸(propandioic)、シクロペンタンプロピオン酸、シクロペンタン プロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、ブタン酸、ブタンジオイン酸(butandioic)、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、アスコルビン酸、ケイ皮酸、ラウリル硫酸、ステアリン酸、ムコン酸、マンデル酸、コハク酸、エンボン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、グライコン酸、グルコン酸、ピルビン酸、グリオキサール酸、シュウ酸、メシリン酸(mesylic)、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、パルモイン酸(palmoic)、パルメイン酸(palmeic)、チオシアン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルフホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-コロベンゼンスルホン酸(chorobenzenesulfonic)、ナフタレン-2-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルバイシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボキシル酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-3-(ヒドロキシ-2-エン-1-カルボキシル酸)、ヒドロキシナフトイン酸(hydroxynapthoic)を含む。
【0083】
「薬学的に許容可能な塩基」には、それらが製剤化される濃度及び方法において無毒性である無機及び有機塩基を含む。例えば、適切な塩基には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジンなどの無機塩基形成金属、及び第一級、第二級、第三級アミン、置換アミン、環状アミンを含む有機無毒性塩基、及び塩基性イオン交換レジン、[例えば、N(R’)
4+(ここでR’は別個にH又はC
1−4アルキル基、例えばアンモニウム、トリス)]、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミンレジン及び類似物から形成されるものが含まれる。特に、好ましい有機無毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0084】
本発明に使用可能な、さらなる薬学的に許容可能な酸及び塩基には、アミノ酸、例えば、ヒスチジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸。グルタミン酸、リジン、アスパラギンに由来するものが含まれる。
【0085】
「薬学的に許容可能な」バッファー及び塩は、上記酸及び塩の酸及び塩基付加塩双方から得られるものを含む。具体的なバッファー及び又は塩には、ヒスチジン、コハク酸及び酢酸が含まれる。
【0086】
「リオプロテクタント」とは、興味のタンパク質と組み合わせた場合、保管の際にタンパク質の物理化学的な不安定さを顕著に防止又は低減する分子である。例示的なリオプロテクタントは、糖及びそれらの対応する糖アルコール;アミノ酸、例えばグルタミン酸ナトリウム又はヒスチジン;メチルアミン、例えばベタイン;リオトロピック塩、例えば硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば三価以上の分子量糖アルコール、例えばグリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;プルロニック(登録商標);及びその組合せを含む。更なる例示的なリオプロテクタントは、グリセリン及びゼラチン、及び糖メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース及びスタキオースを含む。還元糖の例は、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース及びラクツロースを含む。非還元糖の例は、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドを含む。好ましい糖アルコールはモノグリコシドであり、特に、二糖、例えばラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどの還元によって得られる化合物である。グリコシド側基はグルコシド又はガラクトシドのどちらかでありうる。糖アルコールの更なる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール及びイソマルツロースである。好ましい薬学的に許容可能なリオプロテクタントは非還元糖のトレハロース又はスクロースである。
【0087】
リオプロテクタントは、「リオプロテクティング(lyoprotecting)量」において凍結乾燥前製剤に加えられ、これは、リオプロテクティング量のリオプロテクタントの存在下におけるタンパク質の凍結乾燥後、該タンパク質が凍結乾燥及び保管の際にその物理的及び化学的安定性を本質的に維持することを意味する。
【0088】
「薬学的に許容可能な糖」とは、興味のタンパク質と組み合わせた場合、保管の際にタンパク質の物理化学的な不安定さを顕著に防止又は低減する分子である。製剤が凍結乾燥され、次いで再構成されることが意図される場合、「薬学的に許容可能な糖」は「リオプロテクタント」としても知られうる。例示的な糖及びそれらの対応する糖アルコールはアミノ酸、例えばグルタミン酸ナトリウム又はヒスチジン;メチルアミン、例えばベタイン;リオトロピック塩、例えば硫酸マグネシウム;ポリオール、例えば三価以上の分子量糖アルコール、例えばグリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;プルロニック(登録商標);及びその組合せを含む。更なる例示的なリオプロテクタントは、グリセリン及びゼラチン、及び糖メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース及びスタキオースを含む。還元糖の例は、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース及びラクツロースを含む。非還元糖の例は、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドを含む。好ましい糖アルコールはモノグリコシドであり、特に、二糖、例えばラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどの還元によって得られる化合物である。グリコシド側基はグルコシド又はガラクトシドのどちらかでありうる。糖アルコールの更なる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール及びイソマルツロースである。好ましい薬学的に許容可能な糖は非還元糖のトレハロース又はスクロースである。
【0089】
薬学的に許容可能な糖は、「保護量」において製剤に加えられ(例えば凍結乾燥前)、これは、タンパク質が保管の間、その物理化学的安定性を基本的に保持することを意味する。(例えば、再構成及び保管後)。
【0090】
ここにおける興味の「希釈剤」は、薬学的に許容可能(ヒトへの投与に関して安全かつ非毒性)であり、液体製剤、例えば凍結乾燥後に再構成される製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤は、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液を含む。他の実施態様では、希釈剤は塩及び/又はバッファーの水溶液を含む。
【0091】
「保存剤」は、細菌活性を低減させるためにここにおける製剤に加えられうる化合物である。保存剤を加えることは、例えば、多使用(多投与)製剤の生産を容易にしうる。考えられる保存剤の例は、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムを含む。保存剤の他のタイプは、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチル及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールを含む。ここにおいて最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
【0092】
「治療(処置)」とは、療法的処置及び予防又は防止手段双方を指す。治療を必要としているものとは、既に疾患を持つもの、並びに疾患が防止されるものを含む。
【0093】
治療目的に対する「哺乳類」とは、哺乳類として分類させる何れかの動物を指し、ヒト、飼育及び家畜動物、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ等を含む。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0094】
「疾患」とは、タンパク質を用いた治療から恩恵を受けうる何れかの状態である。これは、慢性及び急性疾患又は疾病を含み、哺乳類を問題の疾患にかかりやすくさせるそれらの病態を含む。ここにおいて治療される疾患の非限定例は、癌腫及び炎症を含む。
【0095】
「治療的に有効な量」とは少なくとも、特定の疾患の測定可能な改善又は防止を達成するのに必要な最小な濃度である。知られているタンパク質の治療的に有効な量は当分野で良く知られているが、以下に見出されるタンパク質の有効量は、当業者、例えば一般的な医師の技術の十分範囲内である標準的技術によって決定されうる。
【0096】
ここに記載されるように製剤化されうる抗体(毒素にコンジュゲートされた抗体を含む)及び他のタンパク質の調製方法は当分野で良く知られており、例えばWO2007/001851に詳細に記載されている。
【0097】
抗体及び他のタンパク質は、本発明に従い水性又は凍結乾燥化形態に製剤化され得、水性形態に再構成されるなら、後者が有用である。
【0098】
ここに記載の製剤は、再構成された凍結乾燥製剤として調製されうる。ここに記載のタンパク質又は抗体が凍結乾燥され、次いで再構成され、発明の液体製剤が生産される。この特定の実施態様では、上記の興味のタンパク質の調製後、「凍結乾燥前製剤」が生産される。凍結乾燥前製剤に存在するタンパク質の量は、所望される投与量、投与の方法等を考慮して決定される。例えば、インタクトな抗体の開始濃度は、約2mg/ml〜約50mg/ml、好ましくは約5mg/ml〜約40mg/ml及び最も好ましくは約20−30mg/mlでありうる。
【0099】
製剤化されるタンパク質は一般に溶液中に存在する。例えば、発明の液体製剤においてタンパク質はpH緩衝液中に、約4−8、好ましくは約5−7のpHで存在しうる。バッファー濃度は、約1mM〜約20mM、あるいは約3mM〜約15mMであり得、例えば、バッファー及び製剤の(例えば再構成化製剤の)所望される浸透圧性に依存する。例示的なバッファー及び/又は塩は薬学的に許容可能なものであり、適切な酸、塩基及びその塩から作られ得、例えば「薬学的に許容可能な」酸、塩基又はバッファー下に定義されるものである。
【0100】
一実施態様では、リオプロテクタントが凍結乾燥前製剤に加えられる。凍結乾燥前製剤中におけるリオプロテクタントの量は、一般に、再構成の際に、得られる製剤が等張となる量である。しかしながら、高張再構成化製剤も適切でありうる。更に、リオプロテクタントの量は、凍結乾燥の際に、許容できない量のタンパク質の分解/凝集が生じるほど少量であってはならない。しかしながら、凍結乾燥前製剤中における例示的なリオプロテクタント濃度は、約10mM〜約400mM、あるいは約30mM〜約300mM、あるいは約50mM〜約100mMである。例示的なリオプロテクタントは、糖及び糖アルコール、例えばスクロース、マンノース、トレハロース、グルコース、ソルビトール、マンニトールを含む。しかしながら、特定の状況下では、特定のリオプロテクタントはまた、製剤の粘度を増加することに寄与しうる。このように、この作用を最小化又は中和する特定のリオプロテクタントを選択するように注意が払われるべきである。更なるリオプロテクタントが「リオプロテクタント」の定義の下、上に記載されており、またここでは「薬学的に許容可能な糖」とも呼ばれる。
【0101】
タンパク質対リオプロテクタントの比は、各特定のタンパク質又は抗体及びリオプロテクタントの組合せに対して様々でありうる。高タンパク質濃度の等張再構化成製剤の生成に対し、タンパク質として抗体、リオプロテクタントとして糖(例えば、スクロース又はトレハロース)を選択する場合、リオプロテクタント対抗体のモル比は、約100〜約1500モルリオプロテクタント対1モル抗体、及び好ましくは約200〜約1000モルのリオプロテクタント対1モル抗体、例えば約200〜約600モルのリオプロテクタント対1モル抗体でありうる。
【0102】
リオプロテクタント(例えばスクロース又はトレハロース)及びバルキング剤(例えばマンニトール又はグリシン)の混合物が、凍結乾燥前製剤の調製に使用されうる。バルキング剤は、その中に過剰なポケットを作ることなどなく、均一な凍結乾燥ケーキの生産を可能にしうる。他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されるものなどが、凍結乾燥前製剤中(及び/又は凍結乾燥製剤及び/又は再構成化製剤)に含まれうるが、ただし、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないとする。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、更なる緩衝剤;保存剤;共溶媒;抗酸化剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む;キレート剤、例えばEDTA;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);生分解性ポリマー、例えばポリエステル;及び/又は塩形成対イオン、例えばナトリウムを含む。
【0103】
ここにおける製剤は、治療される特定の適応症に必要であれば、一以上のタンパク質も含み得、好ましくは他のタンパク質に悪影響がない相補的活性を有するものである。例えば、単一製剤中に、所望の標的(例えば受容体又は抗原)に結合する2つ以上の抗体を提供することが所望されうる。このようなタンパク質は、意図される目的に有効な量の組合せにおいて適宜存在する。
【0104】
インビボ投与のために用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。あるいは、混合物全体の無菌性は、タンパク質以外の成分を、例えば約120°Cで約30分間、オートクレーブすることにより達成されうる。
【0105】
タンパク質、任意リオプロテクタント及び他の任意化合物が共に混合された後、製剤は凍結乾燥される。多くの異なる凍結乾燥機がこの目的のために利用でき、例えばHull50
TM(Hull,USA)又はGT20
TM(Leybold-Heraeus, Germany) 凍結乾燥機などがある。凍結乾燥は、製剤を凍結させ、その後、一次乾燥に適した温度で凍結内容物から氷を昇華させることにより達成される。この条件下で、生成物の温度を製剤の共晶点又は崩壊温度より低くする。典型的には、一次乾燥の棚温度は適当な圧力(典型的には約50〜250mTorrの範囲)で、約−30〜25°C(ただし、一次乾燥の間、生成物は凍結されたままとする)の範囲であろう。製剤、試料を保持する容器(例えば、ガラスバイアル)のサイズとタイプ、及び液体の容量により乾燥に要する時間が主に決定され、数時間から数日間(例えば、40−60時間)の範囲でありうる。また場合によっては二次乾燥段階が、生成物における所望の残留水分レベルに応じて実施されうる。二次乾燥が実施される温度は、主に容器のタイプとサイズ及び用いられるタンパク質のタイプに応じて、約0−40°Cの範囲となる。例えば、凍結乾燥の全水除去段階の間の棚温度は約15−30°C(例えば、約20°C)でありうる。二次乾燥に必要とされる時間と圧力は、適当な凍結乾燥ケーキを生成する時間及び圧力であり、例えば、温度や他のパラメーターに依存する。二次乾燥時間は生成物中の所望の残留水分によって決まり、典型的には、少なくとも約5時間(例えば、10−15時間)かかるだろう。圧力は一次乾燥工程で使用したものと同じであってよい。凍結乾燥の条件は製剤及びバイアルのサイズに応じて変えることができる。
【0106】
患者への投与の前に、凍結乾燥製剤は薬学的に許容可能な希釈剤を用いて再構成され、例えば再構化成製剤中におけるタンパク質濃度が少なくとも約50mg/ml、例えば約50mg/ml〜約400mg/ml、あるいは約80mg/ml〜約300mg/ml、あるいは約90mg/ml〜約150mg/mlとなるようにする。再構成化製剤中におけるこのような高いタンパク質濃度は、再構成化製剤の皮下送達が意図される場合に特に有用であると考えられる。しかしながら、静脈内投与などの他の投与経路に対し、再構成化製剤中においてより低いタンパク質濃度が所望されうる(例えば、再構成化製剤中に約5−50mg/ml、又は約10−40mg/mlのタンパク質)。ある実施態様では、再構成化製剤中におけるタンパク質濃度は凍結乾燥前の製剤中の該濃度より著しく高い。例えば、再構成化製剤中のタンパク質濃度は凍結乾燥前の製剤中の該濃度の約2〜40倍、あるいは3〜10倍、あるいは3〜6倍(例えば、少なくとも3倍又は少なくとも4倍)でありうる。
【0107】
再構成は通常完全な水和を確実に達成するために約25℃の温度で行われるが、所望により他の温度で行ってもよい。再構成に要する時間は、例えば、希釈剤のタイプ、賦形剤(一又は複数)の量及びタンパク質に応じて変わるだろう。例示的な希釈剤は、滅菌水、静菌性の注射用水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液、又はデキストロース液を含む。希釈剤は場合により保存剤を含んでいてもよい。例示的な保存剤については先に記載したが、ベンジル又はフェノールアルコールなどの芳香族アルコールが好ましい保存剤である。用いられる保存剤の量は、様々な保存剤濃度をペプチドとの適合性及び保存剤効力試験について評価することにより決定される。例えば、保存剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、それは約0.1−2.0%、好ましくは約0.5−1.5%、最も好ましくは約1.0−1.2%の量で存在しうる。
【0108】
好ましくは、再構成化製剤はバイアルあたり6000未満の粒子を有し、サイズ>10μmである。
【0109】
治療用製剤は、保管に対し、所望の純度を有する有効成分を任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences 18th edition, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 18042 [1990])。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる容量及び濃度においてレシピエントに非毒性であり、バッファー、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウム、保存剤、等張化剤、安定剤、金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体)、及び/又はキレート剤、例えばEDTAを含む。
【0110】
治療物質が抗体断片である場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列を基にして、標的タンパク質配列に結合する能力を維持する抗体断片又は更にはペプチド分子が設計されることができる。このようなペプチドは化学的に合成、及び/又は組換えDNA技術によって生産されうる(例えば、Marasco等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7889-7893 [1993]を参照)。
【0111】
治療効果を最適化する範囲にpHを制御するためにバッファーが使用され、特に安定性がpH依存である場合に使用される。バッファーは好ましくは約50mM〜約250mMの範囲の濃度で存在する。本発明との使用に適した緩衝剤は、有機及び無機酸及びその塩の双方を含む。例えば、クエン酸、リン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、シュウ酸、乳酸、酢酸である。更に、バッファーはヒスチジン及びトリメチルアミン塩から成り得、例えばトリスである。
【0112】
保存剤は微生物増殖を遅延させるために加えられ、典型的には0.2%−1.0%(w/v)の範囲で存在する。本発明との使用に適した保存剤は、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールを含む。
【0113】
等張化剤は、時に「安定剤」として知られ、液体組成物の浸透圧性を調整又は維持するために存在する。タンパク質及び抗体などの大きな荷電生分子と使用される場合、それらはしばしば「安定剤」と呼ばれ、なぜならそれらはアミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それによって分子間及び分子内相互作用の可能性を低下させることができるからである。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1重量%〜25重量%の任意の量で、好ましくは1〜5%で存在しうる。好ましい等張化剤は多価糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含む。
【0114】
更なる賦形剤は次の一又は複数として機能しうる薬剤を含む:(1)バルキング剤、(2)溶解度促進剤、(3)安定剤及び(4)変性又は容器壁への接着を防ぐ薬剤。このような賦形剤は:多価糖アルコール(上に列挙する):アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等;有機糖又は糖アルコール、例えばスクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、ナトリウムチオグリコレート、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;単糖(例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖、例えばラフィノース;及び多糖、例えばデキストリン又はデキストランを含む。
【0115】
製剤がインビボ投与のために用いられるためには、それらは無菌でなければならない。製剤は滅菌濾過膜を通す濾過によって無菌にされうる。ここでの治療用組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下用注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0116】
投与の経路は周知の容認された方法、例えば適した方法での単回又は多回ボーラス又は長期にわたる注入、例えば皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内経路による注射又は注入、局所投与、吸入又は徐放又は持続放出手段などに従う。
【0117】
ここでの製剤は、治療されている特定の適応症に必要であれば一以上の活性化合物も含み得、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものである。あるいは又は加えて、組成物は細胞傷害性剤、サイトカイン、又は増殖阻害剤を含みうる。このような分子は、意図される目的に有効な量の組合せにおいて適宜存在する。
【0118】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences 18th edition、上掲に開示されている。
【0119】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。徐放のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMN rpg 120によって成功裏に実施された。Johnson等, Nat. Med.2:795-799 (1996); Yasuda等, Biomed.Ther.27:1221-1223 (1993); Hora等, Bio/Technology 8:755-758 (1990); Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems," in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds., (Plenum Press:New York, 1995), pp. 439-462;WO97/03692;WO96/40072;WO96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
【0120】
これらのタンパク質の徐放性製剤は、ポリ乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で速やかにクリアされる。さらに、このポリマーの分解性は、その分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, "Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer", in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker; New York, 1990), M. Chasin and R. Langer (Eds.) pp. 1-41。
【0121】
エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、特定のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、関与する機構に応じて安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリックス組成物の開発によって達成されうる。
【0122】
またリポソーム又はプロテノイド組成物が、ここに記載のタンパク質又は抗体の製剤化に使用されうる。米国特許第4,925,673号及び同第5,013,556号を参照。
【0123】
ここに記載のタンパク質及び抗体の安定性は、非毒性の「水溶性多価金属塩」の使用により強化されうる。例えばCa
2+、Mg
2+、Zn
2+、Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+、Sn
2+、Sn
3+、Al
2+及びAl
3+を含む。上の多価金属カチオンと水溶性塩を形成しうるアニオンの例は、無機酸及び/又は有機酸から形成されるものを含む。このような水溶性塩は、水中(20℃)において少なくとも約20mg/ml、あるいは少なくとも約100mg/ml、あるいは少なくとも約200mg/mlの溶解度を有する。
【0124】
「水溶性多価金属塩」を形成するために使用されうる適した無機酸は、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸及びリン酸を含む。使用されうる適した有機酸は、脂肪族カルボン酸及び芳香族酸を含む。この定義による脂肪族酸は、飽和又は非飽和C
2−9カルボン酸(例えば、脂肪族モノ-、ジ-及びトリ-カルボン酸)として定義されうる。例えば、この定義による例示的なモノカルボン酸は、飽和C
2−9モノカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸 ペラルゴン酸及びカプリオン酸、不飽和C
2−9モノカルボン酸、アクリル酸、プロプリオル酸 メタクリル酸、クロトン酸及びイソクロトン酸を含む。例示的なジカルボン酸は、飽和C
2−9ジカルボン酸はマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びピメリン酸を含み、不飽和C
2−9ジカルボン酸はマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸を含む。例示的なトリカルボン酸は、飽和C
2−9トリカルボン酸、トリカルバリル酸及び1,2,3-ブタントリカルボン酸を含む。更に、この定義のカルボン酸はヒドロキシカルボン酸を形成するために1つ又は2つのヒドロキシ基も含みうる。例示的なヒドロキシカルボン酸は、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸を含む。この定義による芳香族酸は安息香酸及びサリチル酸を含む。
【0125】
本発明のカプセル化ポリペプチドの安定化を援助するために使用されうる一般的に用いられる水溶性多価金属塩は、例えば:(1)ハロゲン化物(例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウム)、硫酸、硝酸、リン酸及びチオシアン酸の無機酸金属塩;(2)脂肪族カルボン酸金属塩(例えば、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、カルシウムプロプリオナート、グリコール酸亜鉛、乳酸亜鉛及び酒石酸亜鉛);及び(3)安息香酸(例えば安息香酸亜鉛)及びサリチル酸の芳香族カルボン酸金属塩を含む。
【0126】
疾患の防止又は治療について、活性剤の適切な投与量は、上記で定義したような治療される疾患のタイプ、疾患の重篤さ及び経過、防止又は治療目的で薬剤が投与されるか否か、過去の治療、患者の臨床履歴及び薬剤に対する応答、及び主治医の裁量に依存するだろう。薬剤は、一回又は一連の治療に渡って患者に適切に投与される。
【0127】
発明の方法は、組合せ又は追加治療工程として、又は治療製剤の追加成分として、疾患に対する知られている治療方法と組合せられてもよい。
【0128】
本発明の薬学的組成物の投与量及び所望の薬剤濃度は、想定される特定の使用に依存して様々であろう。投与の適切な投与量又は経路の決定は、通常の技術者の十分範囲内である。動物実験はヒト治療に対する効果的な用量の決定に対し信頼できるガイダンスを提供する。効果的な用量の種間スケーリングが、Mordenti, J. and Chappell, W. "The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics," In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-46に定められる原則に従って実施可能である。
【0129】
ここに記載のポリペプチド又は抗体のインビボ投与が使用される場合、通常の用量は、一日あたり哺乳類の体重の約10ng/kgから約100mg/kgまで又はそれ以上と様々であり得、好ましくは約1mg/kg/日〜10mg/kg/日であり、投与の経路に依存する。特定の投与量及び送達の方法に関するガイダンスが文献に提供されており;例えば米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;又は同第5,225,212号を参照のこと。異なる製剤が異なる治療及び異なる疾患に対して効果的であり得、特定の臓器又は組織の治療を意図した投与が、別の臓器又は組織に対するものとは異なった方法での送達を必要としうることは、発明の範囲内である。更に、投薬は、一又は複数の別個の投与、又は持続注入によって投与されうる。数日以上にわたる反復投与は、症状に応じて、疾患症状が所望通り抑制されるまで治療が継続される。しかしながら、他の投与計画が有用な場合もある。この治療の進行は、一般的な技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0130】
本発明の製剤は、限定するものではないが再構成化製剤を含め、タンパク質による治療を必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに対して、例えばボーラス又はある期間にわたる連続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、腱鞘内、経口、局部的又は吸入経路などの知られている方法に従い投与される。
【0131】
好ましい実施態様では、製剤は皮下(すなわち、皮膚の下)投与によって哺乳動物に投与される。かかる目的に対し、製剤はシリンジを用いて注射される。しかし、製剤の投与のための他の装置、例えば、注射装置(例えば、Inject-ease
TM及びGenject
TM装置);インジェクターペン(GenPen
TMなど);自動注射装置、針なし装置(例えば、MediJector
TM及びBioJector
TM);及び皮下パッチ送達システムなどが利用可能である。
【0132】
特定の実施態様では、本発明は、単回用量投与単位のキットに関する。そのようなキットは、単一又は複数のチャンバーを有するあらかじめ充填されたシリンジを包含する、治療用タンパク質又は抗体の水性製剤の容器を含む。例えばあらかじめ充填されたシリンジは、Vetter GmbH, Ravensburg, Germanyから入手可能である。
【0133】
タンパク質の適切な投与量(「治療上有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重症度及び経過、タンパク質が防止又は治療目的でタンパク質が投与されるか否か、過去の治療、患者の臨床履歴及びタンパク質に対する応答、使用されるタンパク質のタイプ、及び主治医の裁量に依存するだろう。タンパク質は一回又は一連の治療に渡って患者に適切に投与され、診断後の任意の時点で患者に投与されうる。タンパク質は、単一の治療として又は問題の状態を治療するのに有用な他の薬剤又は療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0134】
選択されるタンパク質が抗体の場合、例えば、一回又は複数回に分けての投与のいずれであっても、患者への投与に関する初回の推奨される投与量は、約0.1−20mg/kgである。しかしながら、他の投与計画が有用な場合もある。本治療の進捗は、従来の技術によって容易にモニターすることができる。
【0135】
本発明の他の実施態様では、製剤を含有する製造品が提供され、好ましくはその使用のための説明書を提供する。製造品は容器を含む。適当な容器には、例えばボトル、バイアル(例えば、二室型バイアル)、注射器(例えば、二室型注射器)、及び試験管が含まれる。容器はガラスやプラスチックなどの様々な材料から作ることができる。製剤を収容する容器に貼られた又は容器に付随するラベルが再構成及び/又は使用のための説明を示しうる。ラベルはさらに、製剤が皮下投与に有用であるか、または皮下投与を意図したものであることを示しうる。製剤を収容する容器は、多目的使用バイアルであってもよく、再構成された製剤の繰返し投与(例えば、2−6投与)を可能にする。この製品は適当な希釈剤(例えば、BWFI)を含む第二の容器をさらに含むことができる。希釈液と凍結乾燥製剤を混合すると、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は、通常、少なくとも50mg/mlになるであろう。製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用説明書を含むパッケージ挿入物を含め、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0136】
本発明は以下の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかし、それらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではない。本開示を通して全ての引例は、ここに出典により明確に取り込まれる。
【0137】
実施例1 − タンパク質凝集に対する脂肪酸、ポリソルベート及びPOE-ソルビタンの作用の調査
この実施例は、ポリソルベート、脂肪酸及びPOEソルビタンが、水溶液中におけるタンパク質凝集にどのように作用するかを示す。
【0138】
溶液中における抗IL13モノクローナル抗体の撹拌誘発凝集に対するPOEソルビタンの保護作用を、撹拌誘発タンパク質凝集分析を使用して評価した。具体的に、この試験では、1mg/mlの抗IL13モノクローナル抗体を有する緩衝液(20mM His-OAc、pH5.7)を次の潜在的安定化添加物との組合せにおいて調製した:
(i) 添加物無し、コントロール;
(ii) ラウリン酸(29ppm);
(iii) ラウリン酸(29ppm)及びポリソルベート20(24ppm);
(iv) POEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”(150ppm);
(v) POEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”(150ppm)及びポリソルベート20(24ppm);
(vi) POEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”(150ppm)及びラウリン酸(29ppm);
(vii) POEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”(150ppm)、ラウリン酸(29ppm)、及びポリソルベート20(24ppm);
(viii) ポリソルベート20(24ppm)。
【0139】
9mlのモノクローナル抗体含有製剤を、別の15mlのForma Vitriumバイアルに入れ(三つ組)、該バイアルを密封し、次いでベンチトップ型シェーカー(70rpm)上で室温で0時間、4時間又は24時間、撹拌させた。完了後、各バイアルの内容物を直ちに紫外分光法(340−360nm)で処理し、溶液の濁度を測定した。濁度を、1cm光路長セル及びAgilent 8453紫外分光計を使用して25
oCで測定した。340、345、350、355及び360nmでの吸光度値を平均し、ここで、どのタンパク質製剤発色団も吸光せず、不溶性タンパク質凝集の散乱効果が決定可能である。上記波長での平均吸光度値は試料の濁度を表す。この点において、タンパク質含有溶液の濁度が、溶液中のタンパク質凝集の量に直接的に、また定量的に相関することが当分野でよく知られている(例えば、Dani等, J. Pharm. Sci., 96(6):1504-1517 (2007)を参照)。これらの分析からの結果を
図1に示す。
【0140】
図1に示すデータは、特定のポリソルベート分解物(脂肪酸、ラウリン酸を含む)が水溶液中のタンパク質の安定性に悪影響を及ぼし、撹拌によりタンパク質凝集を引き起こすことを示す。対照的に、抗体含有水溶液へのPOEソルビタンの添加は、撹拌による溶液中におけるタンパク質凝集の形成を防いだ。このように、これらのデータは、POEソルビタンが撹拌によるタンパク質の凝集を防ぎ、それにより溶液中の治療用タンパク質の安定性を強化する効果を有することを示す。
【0141】
実施例2 − タンパク質凝集に対するPOE-ソルビタン及びPEGの作用の調査
この実施例は、タンパク質の凝集を防止又は低減するための、安定剤としてのPOEソルビタン及びPEGの使用を説明する。
【0142】
溶液中における2つのモノクローナル抗体、抗IL13及び抗IgEの撹拌誘発凝集に対する様々なPOEソルビタン及びPEGの保護作用を、撹拌誘発タンパク質凝集分析を使用して評価した。
【0143】
このセットの試験では、抗IL13抗体(20mM His-OAc、pH5.7)又は抗IgE抗体(His-HisCl、pH6.0)のどちらか1mg/mlを含有する緩衝液を、次の添加物と共に調製した:
(i) 添加物無し、コントロール;
(ii) 200ppmの濃度でのPOEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”
(iii) 1000ppmの濃度でのPOEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”
(iv) 5000ppmの濃度でのPOEソルビタン20”(a+b+c+d=20)”
(v) 200ppmの濃度でのPEG1000;
(vi) 1000ppmの濃度でのPEG1000;
(vii) 5000ppmの濃度でのPEG1000;
(viii) 200ppmの濃度でのPEG6000;
(ix) 1000ppmの濃度でのPEG6000;
(x) 5000ppmの濃度でのPEG6000。
【0144】
9mlの各抗体含有製剤を、別の15mlのForma Vitriumバイアルに入れ(三つ組)、該バイアルを密封し、次いでベンチトップ型シェーカー上(70rpm)で室温で0時間、4時間又は24時間、撹拌させた。完了後、各バイアルの内容物を直ちに次の各分析で処理した;(a)紫外分光法による濾過後のタンパク質濃度の測定、(b)紫外分光法(340−360nm)による溶液の濁度の測定、及び(c)光遮蔽によるタンパク質の粒子サイズ及び分布の決定。
【0145】
A.紫外分光法によるタンパク質濃度の測定
上記のように振とうさせた後直ちに、タンパク質含有溶液をタンパク質凝集を除去するために濾過し、次いで濾液中のタンパク質濃度を紫外分光法により決定した。タンパク質濃度データを0.5又は1cm光路長セル及びAgilent 8453紫外分光計を使用して25
oCで測定した。278nmで1.45及び1.60mLmg
−1cm
−1の消衰係数Εを使用し、0.2μmシリンジフィルターを通した濾過後の抗体濃度を決定した。散乱効果に対し320nmでの吸光度値を278nmでの吸光度値から減算した。これに関して、タンパク質含有溶液中のタンパク質の濃度が、UV吸光分析を使用して定量的に測定されうることが当分野でよく知られている(例えば、Liu等, J. Pharm. Sci., 94(9):1928-1940 (2005)を参照)。抗IL13抗体及び抗IgE抗体に関して得たデータの結果を、
図2及び3にそれぞれ示す。
【0146】
図2及び3のデータは、未処理コントロール抗体製剤の撹拌が、測定可能の有意な凝集と、濾過によるタンパク質損失を引き起こすことを示す。対照的に、試験した様々な濃度の全てにおいてPOEソルビタン又はPEGの添加は、撹拌誘発タンパク質凝集を防ぎ、そして濾過によるタンパク質の損失を防いだ。これらのデータは、POEソルビタン及びポリエチレングリコール双方が、水溶液中において、その中におけるタンパク質凝集の形成を防止又は低減することにより、タンパク質の効果的な安定剤として機能することを示す。
【0147】
B.紫外分光法による溶液濁度の測定
上記のように、340−360nmでの紫外分光法は溶液中に存在するタンパク質凝集の量を定量的に決定するための効果的な手段を提供し、ここで濁度は存在する凝集タンパク質の量に直接相関する。抗IL13抗体及び抗IgE抗体の濁度分析から得た結果を、
図4及び5にそれぞれ示す。
【0148】
図4及び5のデータは、未処理コントロール抗体製剤の撹拌が、そこに含まれる抗体の測定可能な有意の凝集を誘発することを示す。対照的に、試験した様々な濃度の全てにおいてPOEソルビタン又はPEGの添加は、撹拌誘発タンパク質凝集を防止及び/又は低減させた。これらのデータは、POEソルビタン及びポリエチレングリコール双方が、水溶液中において、その中におけるタンパク質凝集の形成を防止又は低減することにより、タンパク質の効果的な安定剤として機能することを示す。
【0149】
C.粒子サイズ分布の決定
また、上記の抗体含有水溶液を、そこに含まれるタンパク質の粒子サイズ分布を決定するために分析した。具体的に、2〜50μmの不溶性粒子の数及びサイズを、HIAC/Royco 3000A液体シリンジサンプラーに取り付けられたHIAC/Royco 9703液体粒子カウンター、HRLD-150センサーを使用して室温で測定し、PacificSpec Version 2.0ソフトウェアを使用して解析した。検出の上限は〜18000粒子/mlであり、この閾値を超えるサンプルは測定に対して適切に希釈した。各サンプルを注入あたり1.0mLの容積で4回測定した。最初の注入は処分し、平均値を最後の3回の注入から得た。各サンプルの分析間に、装置の2μm粒子カウントが<10となるまで注入用水を用いてシステムを洗浄した。≧2、5、10、15、25、35、及び50μmのSub-visible粒子はmlあたりの累積カウントとして表される。
【0150】
これらの分析から得た結果を
図6−11に示す。
図6−11のデータは、未処理コントロール抗体製剤の撹拌が、そこに含まれる抗体の測定可能な有意の凝集を誘発することを示す。対照的に、試験した様々な濃度の全てにおいてPOEソルビタン又はPEGの添加は、撹拌誘発タンパク質凝集を防止及び/又は低減させた。これらのデータは、POEソルビタン及びポリエチレングリコール双方が、水溶液中において、その中におけるタンパク質凝集の形成を防止又は低減することにより、タンパク質の効果的な安定剤として機能することを示す。