特許第6791943号(P6791943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6791943軟質材料のための締結具及び締結具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791943
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】軟質材料のための締結具及び締結具システム
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20201116BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20201116BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F16B39/24 L
   F16B35/00 K
   F16B43/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-502722(P2018-502722)
(86)(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公表番号】特表2018-521281(P2018-521281A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2016041843
(87)【国際公開番号】WO2017014988
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】62/194,994
(32)【優先日】2015年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン サントス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ダ ロチャ
(72)【発明者】
【氏名】アディ シュチュコフスキ
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0108401(US,A1)
【文献】 実開平06−085921(JP,U)
【文献】 実開昭52−103269(JP,U)
【文献】 特開2001−140843(JP,A)
【文献】 実開昭60−021026(JP,U)
【文献】 特開2006−242324(JP,A)
【文献】 特開2000−097223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/24
F16B 35/00
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い穴を画定する表面を有する締結対象物であって、前記表面が前記穴における溝を更に画定する、締結対象物と、
前記溝に受けられる外方に延びるアームを有するワッシャと、
前記ワッシャに画定される係止特徴部と、
前記ワッシャに受けられるボルトであって、前記係止特徴部に係合されて前記ワッシャと該ボルトとの相対回転に抵抗する突出部を有する、ボルトと、
を備える、ねじ締結システム。
【請求項2】
前記締結対象物は、複数の溝を有し、前記ワッシャは、複数の外方に延びるアームを有し、前記溝ごとに1つの前記アームが存在する、請求項に記載のねじ締結システム。
【請求項3】
前記ボルトは、複数の突出部を有し、前記ワッシャは、前記係止特徴部を1つのみ有する、請求項1又は2に記載のねじ締結システム。
【請求項4】
前記ワッシャは、前記ボルトに摩擦係合する複数の内方に延びる突出部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のねじ締結システム。
【請求項5】
前記複数の内方に延びる突出部は、複数の内方に延びるディンプルである、請求項に記載のねじ締結システム。
【請求項6】
前記複数の内方に延びる突出部は、複数の内方に延びるアームである、請求項に記載のねじ締結システム。
【請求項7】
前記ワッシャは、軸方向に延びるスリーブを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のねじ締結システム。
【請求項8】
前記ワッシャの前記外方に延びるアームは、前記スリーブから延びる、請求項に記載のねじ締結システム。
【請求項9】
前記スリーブは、前記ボルトに摩擦係合する複数の内方に延びる突出部を有する、請求項7又は8に記載のねじ締結システム。
【請求項10】
前記ボルトは、頭部を有し、該頭部は、前記突出部を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のねじ締結システム。
【請求項11】
前記係止特徴部は、前記ワッシャから前記頭部に向かって突出する対向する係止タブと、前記突出部を受ける前記係止タブ間の空隙部とを含む、請求項10に記載のねじ締結システム。
【請求項12】
前記ボルトの前記頭部は、少なくとも第2の前記突出部を有する、請求項10又は11に記載のねじ締結システム。
【請求項13】
各前記溝は、該溝の入口に、内向きの肩部を有する、請求項に記載のねじ締結システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2015年7月21日に提出された米国仮特許出願第62/194994号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、包括的には、ねじ締結具に関し、より詳細には、軟質材料を長期にわたって締結するために有用なねじ締結具に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのタイプのねじ締結具が知られている。単純なナットとボルトとの締結システムでは、長期にわたって所望の締め付け荷重を維持することが困難である場合がある。時間とともに、ナット及びボルトの係合されたねじ部に伸長、変形又は他の変化が生じることにより、締結接続部が緩む可能性がある。ねじ締結具が、プラスチック等の比較的軟質の材料を接続するために使用される場合、更なる困難が生じる。多くのプラスチックは、適所に維持するのに高い締め付け荷重を必要としない。しかしながら、金属製のねじ締結具は、例えば、ねじ部に伸びが生じるように、係合する雄ねじ部品と雌ねじ部品との間に十分な締め付け荷重を必要とする。多くの場合、締結具に必要とされる締め付け荷重は、プラスチック部品を組み付けるのに必要な締め付け荷重よりも大きい。
【0004】
ともに締結される対象物に必要とされる締め付け荷重よりも大きい締め付け荷重が、雄ねじ部品及び雌ねじ部品に必要とされる締結場面において、段付きボルト、ブッシュ及び他のタイプのスリーブが使用されてきた。しかしながら、段付き部、スリーブ又はブッシュは、十分だが過大でない締め付け荷重が締結対象物に印加され、締結具のねじ部品自体にはより大きい締め付け荷重がもたらされるように、正確な寸法で提供されなければならない。段付き部、ブッシュ又はスリーブの寸法が正確でない場合、又は、締結対象物の締結領域における厚みにばらつきがある場合、締結具は、所望のとおりに機能しない場合がある。所望のとおりに機能するように締結具を提供することにおける困難に加えて、これらのタイプの締結具は、製造するのに費用がかかる。
【0005】
プラスチック及び他の軟質材料を締結する場合に生じる更なる困難は、プラスチックが、硬化後であっても流動し続けることである。「クリープ」として知られているこの現象は、時間とともに、プラスチック部材における著しい寸法変化を引き起こす可能性がある。これは、プラスチック製の1つ以上の対象物を別の対象物に接続する場合の単純なねじ締結具の使用を更に困難にする。クリープにより、ねじ部が緩むか又はねじ部の伸びが減少するのに十分なほど締め付け荷重が減少した場合、締結具は緩んで回転する可能性があり、それにより、完全な脱落が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、時間とともにプラスチックに生じることが知られているクリープ等の状況下で緩みに抵抗し、締結対象物の変動する状況下であっても有効に機能する、軟質材料の締め付けに有用である単純なねじ締結具を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本ねじ締結具は、変動する状況下であっても適切な締め付け荷重が与えられ、締結対象物の状態が時間とともに変化しても、部品が緩みに抵抗するように、締結具構造内に個別の係止特徴部を設けている。
【0008】
1つの形態の1つの態様において、ねじ締結具システムは、締結対象物と、ボルトと、ワッシャとを備える。ワッシャは、ワッシャの外方に延びるアームによって対象物に固定され、対象物の構造と協働して、対象物に対する回転及び脱落の双方に抵抗する。ワッシャの係止特徴部はボルトに係合し、ボルトとワッシャとの相対回転に抵抗する。
【0009】
一形態の別の態様において、細長い穴を画定する表面を有する締結対象物であって、表面は、穴における溝を更に画定する、対象物と、溝に受けられる外方に延びるアームを有するワッシャと、ワッシャに画定される係止特徴部と、ワッシャに受けられるボルトであって、係止特徴部に係合されてワッシャとボルトとの相対回転に抵抗する突出部を有する、ボルトとを備える、ねじ締結システムが提供される。
【0010】
本明細書に開示される締結具システムにおける締結具の少なくとも1つの形態の利点は、締結具は軟質材料製の対象物を固定している間も安定であり、締結組立体が緩んでも、締結具は接続されたままとなることである。
【0011】
本明細書に開示される締結具及び締結具システムの少なくとも1つの形態の別の利点は、材料の収縮又は変化に起因して、締結組立体が緩んだ場合でも、締結具のボルトは回転しないように抑制されることである。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、及び図面を検討することによって当業者に明らかになる。図面では、同様の参照符号は同様の特徴を指すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】本明細書に開示されるねじ締結具を使用する締結手順における4つのステップ又は段階を示す一連の断面図の一つある。
図1b】本明細書に開示されるねじ締結具を使用する締結手順における4つのステップ又は段階を示す一連の断面図の一つある。
図1c】本明細書に開示されるねじ締結具を使用する締結手順における4つのステップ又は段階を示す一連の断面図の一つある。
図1d】本明細書に開示されるねじ締結具を使用する締結手順における4つのステップ又は段階を示す一連の断面図の一つある。
図2】締結プロセスの中間段階における締結具、より詳細には図1cに示す締結部品の状態の部分断面拡大図である。
図3図1dに示す設置の完了時における締結具の部分断面拡大図である。
図4】本明細書に開示されるねじ締結具の雄部品の斜視図である。
図5】本明細書に開示されるねじ締結具のワッシャ部品の斜視図である。
図6図5に示す角度とは異なる角度からワッシャ部品を示す、ワッシャ部品の別の斜視図である。
図7】ねじ締結具によって締結される対象物にある穴を示す平面図である。
図8図7の線A−Aに沿った、図7に示す対象物の断面図である。
図9図8の断面図と同様であるが、対象物にある穴の特徴をより良く示すように、上記対象物を或る透視角度から示す別の断面図である。
図10図8において文字「B」で示す丸囲み領域の部分拡大図である。
図11】本明細書に開示されるねじ締結具のワッシャの別の実施形態の斜視図である。
図12図11に示すワッシャの立面図である。
図13図11及び図12に示すワッシャの断面図である。
図14図11図13に示すワッシャの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態が詳細に説明される前に、本発明が、その適用において、以下の説明で述べられるか又は図面で示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、種々の方法で実施又は実行されることが可能である。同様に、本明細書で使用される言い回し及び用語は、説明のためのものであり、制限的であるとみなされるべきでないことが理解される。本明細書における「含む」、「備える」及びその変形の使用は、その前に挙げられる事項及びその等価物並びに更なる事項及びその等価物を包含することを意図される。
【0015】
ここで、より詳細に図面を参照し、特に図1a〜図1dを参照すると、ねじ締結具10は、雄ねじ部品又はボルト12と、ワッシャ14と、締結対象物16とを備える。下記でより十分に説明するように、締結具10は、ワッシャ14が、締結具によって与えられる締め付け荷重とは無関係に対象物16に係止されるとともに、雄ねじ部品12がワッシャ14に係止されるような機構を備える。したがって、雄ねじ締結具12は、一度締結されると、締結組立体が時間とともに変化する場合でも、このねじ式組立体からの不慮の脱落に抵抗する。
【0016】
ここで図4を参照すると、ボルト12は、頭部20と、フランジ22と、ねじ付きシャンク24とを有する。頭部20は、工具又は器具によって回転させるために工具又は器具を係合させるのに適した形状又は構成で設けることができる。したがって、頭部20は、締結組立体を完成させる際に機械によって又は手動で回転させるために、レンチ、ソケット、ねじ回し又は他の好適な器具若しくは工具を受けるように構成することができる。フランジ22は、頭部20を越えて外方に突出し、頭部20に対して下側では、実質的に平滑であるが、概ね軸方向に延びる、すなわちフランジ22の下面から離れる方へ軸方向に延びる1つ又は複数のノブ又は突出部26を有する。図示の例示的な実施形態では、フランジ22は、4つの突出部26を有するが、より多数又はより少数の突出部を用いてもよいことが理解されるべきである。ねじ付きシャンク24は、その表面にねじ山28を画定し、ねじ山28は、任意の好適な単純又は複雑なねじ形状を有することができる。ねじ山28は、実質的にシャンク26の長さにわたって延びてもよいし、ねじ締結具10の用途及び使用による要求に応じて、シャンク26の或る好適な部分にわたって延びてもよい。
【0017】
ここで図5及び図6を参照すると、ワッシャ14は、それぞれ上面斜視図及び底面斜視図で示されている。ワッシャ14は、スプリングワッシャ又は圧縮ワッシャであり、緩やかなドーム形状の本体30を有する。すなわち、図面に示すように、ワッシャ14が実質的に垂直に向けられたボルト上に配置された場合において見たとき、ワッシャ14の外側リム32は、本体30に対して第1の相対高度又は相対高さにあり、内側リム34は、本体3に対して異なる相対高度又は相対高さにある。したがって、ワッシャ14のこの向き(本明細書では説明の目的でワッシャ14の垂直向きと呼ぶ)において、本体30は、図面に示すように、外側リム32と内側リム34との間で傾斜して配置され、外側リム32から内側リム34まで上方に延びる。しかしながら、締結具10と、したがって(正:therefore)ワッシャ14とは、任意の向きにおいて使用することができ、必ずしも垂直に向けられなくてよいことが理解されるべきである。
【0018】
外側リム32は、離間したタブ38及び40を含む係止特徴部36を画定する。タブ38、40のそれぞれは、外側リム32の外縁から実質的に径方向に向けた短い切込みと、この短い切込みから延びる実質的に周方向の切込みとによって形成される。タブ38及び40は、実質的に垂直の向きにおけるワッシャ14の観点から見ると、外側リム32の平面から上方に屈曲している。タブ38及び40は、リムセグメント32aによって分離されている。
【0019】
ワッシャ14は、中央開口42を更に画定するとともに、内方に延びるアーム44の形式の複数の内方に延びる突出部44を画定する。ワッシャ14は、外方に延びるアーム46を更に画定する。図示の例示的な実施形態では、ワッシャ14は、3つの内方に延びるアーム44を画定し、3つの外方に延びるアーム46を画定する。しかしながら、より多数又はより少数のアームを用いてもよい。アーム44、46のそれぞれは、後述される目的のために自然の弾力性又は可撓性(deflectability)を得るように、いくらか薄く、幅が狭く、細長い。
【0020】
内方に延びるアーム44は、ボルト12上に、より詳細にはボルト12のシャンク24上に受けられるように構成される。例示的な実施形態では、ねじ山28がフランジ22まで延びており、内方に延びるアーム44は、ねじ山28の外縁部上に受けられる。内方に延びるアーム44間に画定される開口は、ワッシャ14がシャンク24上に受けられる地点における外径よりもいくらか小さく、したがって、シャンク24上に設置される際に内方に延びるアーム44が撓むことにより、内方に延びるアーム44の自然の弾力性によってワッシャ14をシャンク24上に保持する。ワッシャ14の中心は、シャンク24に置かれることが好ましく、3つの内方に延びるアーム44の使用は、所望のセンタリングを容易にする。しかしながら、より多数又はより少数の内方に延びるアームを用いてもよいことが理解されるべきである。例示的な実施形態において、内方に延びるアーム44は、いくらかフック状であり、弧を描く最も内側の湾曲部分が、ねじ山28の縁部に係合する。しかしながら、内方に延びるアーム44に関して他の形状及び構成を用いてもよいことが理解されるべきである。
【0021】
外方に延びるアーム46も、いくらかフック状であり、外方に突出する遠位部分又は先端部48を有する。図示の例示的な実施形態では、3つの外方に延びるアーム46が用いられている。しかしながら、下記の締結対象物16の更なる説明に関して、より多数又はより少数の外方に延びるアーム46を用いてもよいことが理解されるべきである。外方に延びるアーム46は、完全に設置されると対象物16に対する回転に抵抗するように、後述される方式で対象物16に係合する。
【0022】
ここで図7図8及び図9を参照すると、完全に締結された組立体において締結されるとともにフランジ22の真下に配置されることになる対象物には、その表面として形成される形状及び寸法の穴50が設けられる。穴50を画定する表面には、軸方向に延びる溝52が設けられる。溝52は、外方に延びるアーム46の先端部48を受けるように等しい数及び間隔で設けられる。外方に延びるアーム46は、軸方向に延びる溝52間のランド又は領域によって規定される穴50の内径よりも僅かに大きい外半径を規定する。したがって、ワッシャ14が対象物16に取り付けられ、外方に延びるアーム46が穴50の中に配置された場合、外方に延びるアーム46は、先端部48が溝52間の表面に当接する場合は内方に撓み、先端部48が溝52と位置合わせされている場合は外方に跳ねる。
【0023】
また更なる特徴として、対象物16の穴50の上縁部には、テーパー状の内方に突出する肩部54が設けられる。図示の例示的な実施形態では、肩部54は、穴50の開口全体の周囲で周方向に延びる。しかしながら、肩部は、他の構成をとることもでき、本明細書に開示されるねじ締結具のいくつかの用途及び使用では、溝52の端部のみに設けてもよい。図10には、肩部54の拡大図が示されている。
【0024】
本明細書に記載のねじ締結具の多くの用途及び使用において、対象物16は、注型又は成形によって製造されたプラスチック部品又は他の部品であり、したがって、溝52及び肩部54を含む穴50の形状は、費用のかかる機械加工又は二次加工を伴わずに提供することができることが理解されるべきである。
【0025】
ここで、再度図1a〜図1dを参照しながら、締結具10の使用方法を4つのステップに関して記載する。締結具10の使用プロセスは、必ずしも別個のステップによって規定されないことが理解されるべきである。しかしながら、図1a〜図1dに示す種々の段階又はステップにおける締結具部品の状態に関して、このプロセスの種々の態様が記載され得る。さらに、後述するように、いくつかの用途及び使用において、プロセスの順序は変更され得る。
【0026】
まず図1aを参照すると、ワッシャ14は、ボルト12に事前に組み付けられている。前述したように、内方に延びるアーム44は、ねじ山28に係合し、ワッシャ14は、実質的にフランジ22の下側に位置するとともに、フランジ22の下側に当接する。内方に延びるアーム44の撓みによってもたらされる自然の抵抗力により、ワッシャ14は、ワッシャ14がねじ付きシャンク24上に配置される位置に保持される。組み付けられたボルト12とワッシャ14とは、ねじ付きシャンク24を穴50に挿通することができるように、対象物16にある穴50と位置合わせされる。
【0027】
ここで図1b及び図1cを参照すると、ボルト12とワッシャ14との組立体は、外方に延びるアーム46が肩部54に係合するように押し込まれる。ボルト12又はワッシャ14に連続的な軸方向の力を加えることにより、外方に延びるアーム46が内方に撓み、先端部48が肩部54を滑って越える。肩部54の角度、寸法及び形状と、先端部48の寸法、形状及び構成は、ワッシャ14に対して最小限の軸方向の力を加えることで、外方に延びるアーム46の滑らかな撓みを促すように規定することができる。先端部48が溝52と位置合わせされている場合、先端部が肩部54を越えると、先端部は、外方に跳ねて溝に収まる。そうではなく、先端部48が溝52間のランドと位置合わせされている場合、ボルト12とワッシャ14との組立体は、先端部48が溝52と位置合わせされて溝52に嵌まるまで回転させることができる。
【0028】
図1aに示すように、ワッシャ14は、ボルト12に事前に組み付けておくことができることが理解されるべきである。しかしながら、ワッシャ14は、ボルト12を用いて又は用いずに、対象物16に事前に組み付けることもできることが更に理解されるべきである。先端部48が溝52内に受容されると、肩部54がワッシャの穴50からの脱落を抑止するとともに溝52がワッシャ14の対象物16に対する回転を抑止するので、ワッシャ14は対象物16に保持される。先端部48が肩部54の下で溝52内に捕捉される様子は、図2の拡大図においてより容易に見て取れる。ワッシャ14は、ボルト12又は対象物16のいずれかに事前に組み付けて準備することができ、ボルト12、ワッシャ14及び対象物16の事前組立体の全体は、組立体に後で取り付けられるように準備することができる。
【0029】
ここで図1dを参照すると、ねじ付きシャンク24のねじ山28に螺合する物品60に締結された対象物16が示されている。物品60は、別の組立体又は部品とすることもできるし、ナット又は他の雌ねじ物品とすることもできることが理解されるべきである。さらに、物品60は、ねじが付いていなくてもよく、このとき、ねじ山28は、物品60との固有の係合を確立するタッピンねじである。最終組立体内において、ワッシャ14と、ねじ付きシャンク24の締結末端部、ナット60とすることができる物品60との間に、1つ以上の他の対象物、物品又は構造物を配置することができることが更に理解されるべきである。
【0030】
ボルト12が物品60に締め付けられると、ワッシャ14が圧縮されて、対象物16の上面とフランジ22の下面との間にばね付勢をもたらす。最終的な締め付けが行われる際、フランジ22の下側にあるノブ又は突出部26のうちの1つが、係止タブ38、40(ねじの「方向(hand)」に応じる)を乗り越え、まずフランジを下方に撓ませた後、撓んだタブが外方に跳ね戻ることで外側リムセグメント32aに当接して収まる。結果として、ノブ又は突出部26のうちの1つが、係止特徴部36の係止タブ38、40間で外側リムセグメント32aに当接して捕捉される。複数の突出部26が設けられており、係止タブ38、40を撓ませるように十分近接していない突出部26から、タブを撓ませてタブ間に捕捉される次の突出部に移動するために、ボルト12の部分的な回転しか必要とされないので、締め付け荷重は、ボルト12の最初の向きに関わらず正確に制御されることが理解されるべきである。係止タブ38、40間での突出部26の捕捉は、図3においてより明確に見て取れる。
【0031】
完成した組立体において、ワッシャ14は、先端部48が溝52内で肩部54の下に捕捉されることによって、対象物16に固定される。したがって、ワッシャ14は、そこから容易には外れない。ボルト12は、物品60と螺合し、係止特徴部36の係止タブ38、40間に捕捉されたノブ又は突出部26により、ワッシャ14に対して回転しないように固定される。したがって、対象物16及び/又は物品60の収縮又はクリープに起因して締め付け荷重が緩んでも、ボルト12はワッシャ14に対して回転できず、ワッシャ14は対象物16に対して回転できず、また、ワッシャ14は対象物16から軸方向に抜くことができないので、締結組立体の係合は解けない。したがって、物品60におけるボルト12の螺合は、ボルトが物品60に対して回転しないので変化し得ない。さらに、ワッシャ14がスプリングワッシャであるので、締結組立体における多少の変化は、圧縮ワッシャによって対応又は吸収することができる。
【0032】
本明細書に開示されるねじ締結具の概念は、他の構造形式において実施することができる。例えば、図11図14は、多くの面で前述したワッシャ14と同様であるものの、他の面では異なるワッシャ114の別の実施形態を示している。ワッシャ114は、ワッシャ本体130と、外側リム132と、内側リム134とを備え、これらは、前述のワッシャ本体30、外側リム32及び内側リム34と同様である。係止特徴部36と同様の係止特徴部136は、係止タブ138、140と外側リムセグメント132aとを備え、これらは、前述の係止タブ38、40及び外側リムセグメント32aと同様である。
【0033】
ワッシャ114は、スリーブ170を通る中央開口142を更に画定し、スリーブ170は、内側リム134から軸方向に延びる。スリーブ170には、ワッシャ114を上述のボルト12及び締結対象物16に係合させるための構造部が設けられる。スリーブ170の増大した長さにより、ボルト12及び締結対象物16に係合する頑健な構造部の使用が容易になっている。この例示的な実施形態では、スリーブ170は、ディンプル144の形式の内方に延びる突出部144を画定する。突出部144は、ワッシャ114をボルト12上に係合するように、内方に延びるアーム44と同様に且つ同じ目的のために機能する。スリーブ170は、先端部148を有する外方に延びるアーム146を更に画定する。先端部148を有する外方に延びるアーム146は、外方に延びるアーム146の先端部148が溝52内に受容される場合にワッシャ114を締結対象物16に係合させるように、前述の外方に延びるアーム46及び先端部48と同様に且つ同じ目的のために機能する。
【0034】
上記の変形及び変更は本発明の範囲内にある。本明細書に開示及び規定されている本発明は、言及されているか、又は本文及び/又は図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組み合わせに及ぶことが理解される。これらの様々な組み合わせの全ては、本発明の種々の代替的な態様を構成する。本明細書に記載の実施形態は、本発明を実施するためのわかっている最良の形態を説明しており、当業者が本発明を利用することを可能にする。特許請求の範囲は、従来技術が許容する範囲まで代替的な実施形態を含むものと解釈すべきである。
【0035】
本発明の種々の特徴は添付の特許請求の範囲内に記載されている。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
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図14