【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例としての漏洩検出装置1を示す図である。
【0022】
漏洩検出装置1は、トレーサーガスが充填されている少なくとも1つの密封製品3を収容するチャンバ2と、検出弁5を介してチャンバ2に接続されている分析ラインと、予備排気弁7を介してチャンバ2に接続された予備排気装置6とを備えている。従って、分析ラインは、バッファ容積V
Tをバイパスするように構成されている。
【0023】
密封製品3は、(例えばはんだ付けによる)封止前にトレーサーガスが濃縮されている内部雰囲気中に、保護されるべきエレメントを備えている。密封製品3は、例えば、エアバッグの点火器、ペースメーカまたは各種の電子部品である。それらは、特に自動車、エレクトロニクスまたは医療機器産業用のものである。
【0024】
一般に、ヘリウムまたは水素をトレーサーガスとして使用する。これらのガスは、原子または分子のサイズが小さいため、他のガスよりも容易に小さな漏洩箇所を通過するからである。
【0025】
予備排気装置6は、第1ポンプ装置9とパイプ10とを備えている。パイプ10は、予備排気弁7を第1ポンプ装置9の吸引部に接続し、バッファ容積V
Tを定めている。
【0026】
少なくとも1つの密封製品3の周囲の容積は、残容積V
Rである。この残容積V
Rは、チャンバ2の容積によって規定され、その中に収容された少なくとも1つの密封製品3の容積は差し引かれ、チャンバ2と予備排気弁7との間の容積と、必要に応じて、チャンバ2と吸気弁8との間の容積と、チャンバ2と検出弁5との間の容積とが追加される。
チャンバ2に接続された吸気弁8は、チャンバ2を外部の大気雰囲気または中性ガスと連通させることを可能にしている。
【0027】
チャンバ2、予備排気弁7、吸気弁8、検出弁5、及びパイプ10は、次のように構成されている。すなわち、少なくとも1つの密封製品3を取り囲んでいる残容積V
Rに対するバッファ容積V
Tの比は、少なくとも100より大きく、例えば1000以上である。
【0028】
従って、残容積V
Rは可能な限り小さく、例えば1cm
3以下とする。
そのため、予備排気弁7、吸気弁8及び検出弁5をチャンバ2に近接して設け、チャンバ2の容積を、このチャンバに収容しようとする1つまたは複数の密封製品3の体積よりわずかに大きい寸法になるようにする。
【0029】
さらに、少なくとも1000cm
3を超える、比較的大きなバッファ容積V
Tが提供される。そのために、パイプ10は、例えば、直径が25mmで長さが1m以上、例えば2m程度の、少なくとも1つの管路を備えている。
【0030】
第1ポンプ装置9は、例えば、所定の流量でガスを吸引して、大気圧に戻す、ロータリーベーンポンプのような低真空ポンプ、例えば2段ロータリーベーンポンプを備えている。ポンプ流量は、例えば15〜20m
3/hである。
【0031】
分析ラインは、漏洩検出器4を備えている。
漏洩検出器4は、トレーサーガスとして使用されるガス状物質の濃度を測定するために、第2のポンプ装置12、13と、ガス分析装置11とを備えている。
【0032】
第2ポンプ装置12、13は、例えば、ターボ分子ポンプなどの高真空ポンプ12と、これに直列に接続された低真空ポンプ13とを備え、高真空ポンプ12は、低真空ポンプ13に対して、ガスの流れ方向における上流側に配置されている。
低真空ポンプ13は、例えば、予備排気装置6のものと同様の2段ロータリーベーンポンプ、又は小型のドライ低真空ポンプ等のロータリーベーンポンプである。
高真空ポンプ12のポンプ吸引時のポンプ流量は、例えば、50l/s〜150l/sである。
【0033】
ガス分析装置11は、例えば、質量分析計である。
質量分析計は、良く知られているように、イオン化チャンバと加熱された電気フィラメントのような電子エミッタとを含む、測定セルを備えている。分析すべきガスの分子は、電子ビームによって衝突され、イオン化される。
これらのイオン化粒子は、電場によって連続的に加速され、その質量の関数として、イオン化粒子の軌道を偏向させる磁場にさらされる。トレーサーガスのイオン化された粒子の流れは、装置内のガスの分圧に比例し、それを測定することにより、検出された漏洩の流量の値を決定することができる。
【0034】
ガス分析装置11は、例えば、高真空ポンプ12の吸引部に接続されている。
【0035】
検出弁5は、例えば高真空ポンプ12の中間圧縮ステージにおいて、第2ポンプ装置12、13に接続されている。従って、ガス分析装置11の測定セルは、10
−4mbarのオーダーの低圧下にある。このようにして、ガス分析装置11の測定セルは、中間圧縮ステージによってガスの逆拡散から保護されている。
【0036】
予備排気弁7、検出弁5及び吸気弁8は、コンピュータなどの漏洩検出装置1の制御ユニット14によって制御することができる。予備排気弁7、検出弁5及び吸気弁8は、電磁弁等のソレノイド弁により構成されている。
【0037】
次に、密封製品の耐漏洩性を監視するためのサイクルについて説明する。
【0038】
第1ポンプ装置9、第2ポンプ装置12、13及びガス分析装置11は、中断することなく機能するものとする。
【0039】
サイクルの開始時に、予備排気弁7及び検出弁5は閉じられる。バッファ容積V
Tの大気圧未満の圧力(準大気圧)は、定義上、大気圧よりも低い。望ましくは、1000パスカル(または10mbar)未満、例えば100パスカル(または1mbar)未満である。
【0040】
搬入段階101の間に、トレーサーガスの雰囲気下で予めシールされた少なくとも1つの密封製品3がチャンバ2内に置かれる。チャンバ2内の圧力は、このチャンバ2の外部に広がる大気雰囲気の大気圧である。
【0041】
吸気弁8を閉鎖し、チャンバ2を漏洩のない状態で密閉する。
【0042】
次に、予備排気段階102において、少なくとも1つの密封製品3を収容しているチャンバ2を、0.5秒未満の予備排気時間の間、大気圧より低い圧力のバッファ容積V
Tと連通させる。そのために、チャンバ2をパイプ10から分離するための予備排気弁7を開く。
【0043】
予備排気時間は、例えば0.3秒以下、例えば0.1秒と0.3秒の間である。
【0044】
予備排気弁7を数十秒間にわたり開放することにより、残容積V
Rとバッファ容積V
Tとの圧力はバランスする。残容積V
Rの容積とバッファ容積V
Tの容積の比は、残容積V
Rの圧力を、数秒ではなく実質的に瞬時に、大気圧から数mbarオーダーの低圧に低下させることを可能にする。従って、少なくとも1つの密封製品3が不良である場合、第1ポンプ装置9によって排出される時間を要することなく、トレーサーガスは、漏洩箇所を通して密封製品3から流出しチャンバ2を経て拡散する。
【0045】
予備排気時間の終了時、チャンバ2内の圧力は、検出弁5が開放されるのに十分な程度に低くなり、そのため、分析ラインはチャンバ2に連通させられる。
【0046】
次に、予備排気弁7を閉じ、予備排気装置6をチャンバ2から隔離し、検出弁5を開いてチャンバ2を漏洩検出器4に連通させる(検査段階103)。
【0047】
残容積VRの圧力は、例えば、10
−2mbar〜10
−3mbarの間の低圧まで低下する。
【0048】
欠陥のある密封製品3がある場合、例えば、大きな漏洩のある小さな密封製品3であっても、チャンバ2内に存在する可能性のあるトレーサーガスを、漏洩検出器4によって検出することができる。
【0049】
同時に、予備排気弁7を閉鎖することにより、第1ポンプ装置9によって、パイプ10内のバッファ容積V
Tの圧力を低下させることができる。
【0050】
そして、大気圧に戻す段階104において、検出弁5を閉じ、吸気弁8を開くと、チャンバ2内の圧力は大気圧に戻る。
そして、検査済の少なくとも1つの密封製品3を取り出すために、チャンバ2を開放し(搬出段階105)、次に、検査すべき少なくとも1つの新しい密封製品3をチャンバ2に搬入することができる(搬入段階101)。
【0051】
従って、唯1回の検査だけで、密封製品3が、小さな漏洩や大きな漏洩のいずれかを有するか否かを、検出することができる。
【0052】
さらに、耐漏洩性を監視するための方法100は、完全にまたは部分的に自動化される。特に、チャンバ2が自動的にバッファ容積V
Tまたは分析ラインと連通するように、装置は構成されている。
【0053】
そのため、制御ユニット14は、制御を行うために、次のように構成されている。
‐ 予備排気段階102の間、予備排気時間だけ予備排気弁7を開放し、検出弁5及び吸気弁8を閉鎖する制御を行い、そして、
‐ 検査段階103の間、チャンバ2内のトレーサーガスの濃度を漏洩検出器4のガス分析装置11により測定するために、予備排気弁7の閉鎖と検出弁5の開放の制御を行い、次に
‐ 大気圧に戻す段階104の間、検出弁5の閉鎖及び吸気弁8の開放の制御を行う。
【0054】
予備排気弁7の閉鎖及び予備排気段階102から検査段階103への移行のための検出弁5の開放は、経過時間の関数として自動的に実行される。そのため、この切り替えが行われる瞬間を決定するために、もはや圧力センサを使用する必要はない。従って、予備排気段階102から検査段階103への移行は、圧力センサの応答時間が関与しないので、より速くなる。
【0055】
同様に、チャンバ2のドア16の開閉も、制御ユニット14によって制御することができる。この制御ユニット14は、搬入段階101と搬出段階105の間の密封製品3の搬入及び搬出を自動化するために、検出装置1のロボット15を制御し、密封製品3を把持して移動させ、チャンバ2内に出し入れすることができる。
【0056】
従って、密封製品3の耐漏洩性を、1サイクル(段階101〜段階105)を数秒間で、かつ、10
−1mbar.l/s〜10
−8mbar.l/sの範囲の検出閾値で監視することが可能であり、非常に高感度で、高速の連続した検査を行うことが可能になる。さらに、サイクルの自動管理の結果、速度は保証されたものとなる。
【実施例2】
【0057】
図3は、密封製品の耐漏洩性を監視するための方法100を実施するための、漏洩検出プラント1’の他の実施例を示す。
【0058】
漏洩検知装置1’は、それぞれ少なくとも1つの密封製品3を収容する第1のチャンバ2a及び第2のチャンバ2bと、第1の予備排気装置6a及び第2の予備排気装置6bと、第1のチャンバ2aに接続された第1の検出弁5aと、第2のチャンバ2bに接続された第2の検出弁5bとを備えている。
【0059】
第1予備排気装置6aは、第1の予備排気弁7aによって第1のチャンバ2aに接続され、第2予備排気装置6bは、第2の予備排気弁7bによって第2のチャンバ2bに接続されている。
【0060】
第1の検出弁5a及び第2の検出弁5bは、単一の分析ラインに接続されている
【0061】
また、制御ユニット14は、2つのチャンバ2a、2b内のトレーサーガスの濃度を前記分析ラインで交互に測定するために、一度に2つの検出弁5a、5bのうちの一方の検出弁の開放を制御するように構成されている。
【0062】
従って、密封製品の耐漏洩性を監視するサイクルにおいて、少なくとも1つの検査済の密封製品3が搬出されている間に、検査すべき次の密封製品3が大気圧下で第1のチャンバ2aに搬入される(搬出段階104と搬入段階101)。その後、第1のチャンバ2aを第1のパイプ10aの第1バッファ容積V
Taに連通させるために第1の予備排気弁7aを開き(予備排気工程102)、その後、第2のチャンバ2bを漏洩検出器4に連通させるために第2の検出弁5bを開く(検査段階103)。
【0063】
欠陥のある密封製品3が内部に存在する可能性のある第2のチャンバ2bのトレーサーガスは、漏洩検出器4によって検出することができる。同時に、第2の予備排気弁7bの閉鎖により第2のチャンバ2bから隔離された第2バッファ容積V
Tbの圧力は、第2ポンプ装置9bにより第2のパイプ10b内で減圧される。
【0064】
そして、第2の検出弁5bが閉じられている間に、少なくとも1つの密封製品3を搬出し、次の密封製品を搬入するために、第2のチャンバ2b内の圧力を大気圧に戻すように吸気口弁8bを開き(搬出段階104と搬入段階101)、そして、第2の予備排気弁7bが第2バッファ容積V
Tbに開放されている間(予備排気段階102)に、第1の検出弁5aを開き、第1のチャンバ2aを漏洩検出器4に連通させる(検査段階103)。同時に、第1の予備排気弁7aの閉鎖によって第1のチャンバ2aから隔離された第1バッファ容積V
Taの圧力は、第1ポンプ装置9aによって第1のパイプ10a内で減圧される。
【0065】
このようにして、チャンバ内のトレーサーガスの濃度を並行して測定することができる。すなわち、チャンバを大気圧に戻すのに必要な時間の間に、検査済の密封製品3を搬出し、検査すべき次の新しい密封製品3を搬入し、チャンバ内の圧力を減圧できる(搬出段階104、搬入段階101、及び、予備排気段階102)。
【0066】
従って、密封製品3の測定速度を2倍にすることができる。