特許第6791944号(P6791944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アデイクセン・バキユーム・プロダクトの特許一覧

特許6791944密封製品の耐漏洩性を制御する方法及び漏洩検出装置
<>
  • 特許6791944-密封製品の耐漏洩性を制御する方法及び漏洩検出装置 図000002
  • 特許6791944-密封製品の耐漏洩性を制御する方法及び漏洩検出装置 図000003
  • 特許6791944-密封製品の耐漏洩性を制御する方法及び漏洩検出装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791944
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】密封製品の耐漏洩性を制御する方法及び漏洩検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   G01M3/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-502750(P2018-502750)
(86)(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公表番号】特表2018-520363(P2018-520363A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016066448
(87)【国際公開番号】WO2017012904
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】1556848
(32)【優先日】2015年7月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アラン ペリスー
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−057940(JP,U)
【文献】 特開平03−195935(JP,A)
【文献】 特開平07−146199(JP,A)
【文献】 特開平09−196797(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201903433(CN,U)
【文献】 特開平07−218376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00
G01M 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩検出装置(1)により、トレーサーガスが充填されている1つの密封製品(3)の耐漏洩性を監視する方法(100)であって、
前記漏洩検出装置は、
少なくとも1つの前記密封製品(3)を収容するチャンバ(2;2a、2b)と、
漏洩検出器(4)を有し、検出弁(5;5a、5b)を介して前記チャンバに接続される1つの分析ラインと、
真空ポンプ(9;9a、9b)により大気圧より低い圧力に減圧可能なバッファ容積(V;VTa,VTb)と、
前記チャンバと前記バッファ容積とを接続する通路に設けられた予備排気弁(7;7a、7b)と、
前記検出弁及び前記予備排気弁を制御する制御ユニット(14)を備えており、
前記分析ラインは、前記バッファ容積をバイパスして前記チャンバに接続されており、
少なくとも1つの前記密封製品(3)を収容する前記チャンバ(2;2a、2b)の残容積(V;VRa,VRb)に対する前記バッファ容積(V;VTa,VTb)の比は、少なくとも100より大きく、
前記方法は、
前記予備排気弁(7;7a、7b)及び前記検出弁(5;5a、5b)が閉じている状態で、少なくとも1つの前記密封製品(3)を大気圧の前記チャンバ(2;2a、2b)内に搬入する(101)と共に、前記バッファ容積を、前記真空ポンプ(9;9a、9b)により圧力が大気圧未満の状態にする段階と、
前記予備排気弁を0.5秒未満の間開放し、少なくとも1つの前記密封製品(3)を含む前記チャンバ(2;2a、2b)を、前記真空ポンプ(9;9a、9b)により前記大気圧未満の圧力下にある前記バッファ容積(V;VTa,VTb)と連通させて予備排気を行う予備排気段階(102)と、
前記予備排気弁(7;7a、7b)を閉鎖し、前記チャンバ(2;2a、2b)を前記バッファ容積(V;VTa,VTb)から分離し、次に、前記検出弁を開いて前記チャンバ(2;2a、2b)を、前記1つの分析ラインを介して前記漏洩検出器(4)と連通させ、前記漏洩検出器(4)により前記チャンバ内の前記トレーサーガスの濃度を測定して、少なくとも1つの前記密封製品(3)からの漏洩を検出する検査段階(103)と、
前記検出弁(5;5a、5b)を閉じ、前記チャンバを大気圧に戻し、検査済の前記少なくとも1つの密封製品を前記チャンバから取り出す搬出段階(104,105)とを含むことを特徴とする密封製品の耐漏洩性を監視する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の耐漏洩性を監視する方法(100)であって、
前記予備排気の時間は、0.3秒以下であることを特徴とする密封製品の耐漏洩性を監視する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐漏洩性を監視する方法(100)であって、
前記バッファ容積(V;VTa,VTb)の前記大気圧未満の圧力は、1000パスカル未満であることを特徴とする密封製品の耐漏洩性を監視する方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の耐漏洩性を監視する方法(100)であって、
前記予備排気弁は、ソレノイド弁(7;7a、7b)であることを特徴とする密封製品の耐漏洩性を監視する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐漏洩性を監視する方法(100)であって、
前記漏洩検出装置は、
少なくとも2つの前記密封製品(3)を収容する第1、第2のチャンバ(2a、2b)と、
前記漏洩検出器(4)を有し、第1、第2の検出弁(5a、5b)を介して前記第1、第2チャンバ(2a、2b)のいずれか1つのチャンバに接続される前記1つの分析ラインと、
第1、第2の真空ポンプ(9a、9b)により、各々、大気圧より低い圧力に減圧可能な第1、第2のバッファ容積(VTa,VTb)と、
前記第1、第2のチャンバ(2a、2b)と前記第1、第2のバッファ容積(VTa,VTb)とを接続する通路の途中に、各々挿入された第1、第2の予備排気弁(7a、7b)とを備え、
前記制御ユニット(14)は、前記第1、第2の予備排気弁、及び、前記第1、第2の検出弁を制御する機能を有しており、
前記1つの分析ラインは、前記第1、第2のバッファ容積をバイパスして前記第1、第2のチャンバに接続されており、
前記トレーサーガスの濃度を、前記1つの同じ分析ラインによって、前記第1、第2のチャンバ(2a、2b)のいずれかにおいて交互に測定することを特徴とする密封製品の耐漏洩性を監視する方法。
【請求項6】
密封製品の耐漏洩性を監視する方法(100)を実施するための漏洩検出装置(1;1’)であって、
トレーサーガスが充填されている少なくとも1つの密封製品(3)を収容するチャンバ(2;2a、2b)と、
前記チャンバ(2;2a、2b)に接続された少なくとも1つの予備排気弁(7;7a、7b)と、
前記チャンバ(2;2a、2b)に接続された少なくとも1つの検出弁(5;5a、5b)
前記予備排気弁(7;7a、7b)を介して前記チャンバ(2;2a、2b)に接続された少なくとも1つのバッファ容積(V;VTa,VTb)と、
漏洩検出器(4)を有し、前記検出弁(5;5a、5b)を介して前記チャンバに接続された1つの分析ラインと、
前記検出弁及び前記予備排気弁を制御する制御ユニット(14)を備えており、
前記少なくとも1つの前記予備排気弁(7;7a、7b)及び前記少なくとも1つの検出弁(5;5a、5b)は、ソレノイド弁であり、
前記分析ラインは、前記バッファ容積をバイパスして前記チャンバに接続されており、
少なくとも1つの前記密封製品(3)を収容する前記チャンバ(2;2a、2b)の残容積(V;VRa,VRb)に対する前記バッファ容積(V;VTa,VTb)の比は、少なくとも100より大きく、
前記制御ユニット(14)は、
前記予備排気弁及び前記検出弁が閉じている状態で、少なくとも1つの前記密封製品(3)を大気圧の前記チャンバ(2;2a、2b)内に搬入する(101)と共に、前記バッファ容積を、前記真空ポンプ(9;9a、9b)により圧力が大気圧未満の状態にする機能と、
前記予備排気弁(7;7a、7b)を0.5秒未満の開放し、前記密封製品(3)を含む前記チャンバ(2;2a、2b)を、前記真空ポンプ(9;9a、9b)により前記大気圧未満の圧力下にある前記バッファ容積と連通させて予備排気を行う予備排気機能(102)と
前記予備排気弁(7;7a、7b)を閉鎖し、前記チャンバ(2;2a、2b)を前記バッファ容積(V;VTa,Tb)から分離し、次に、前記検出弁を開いて前記チャンバ(2;2a、2b)を、前記1つの分析ラインを介して前記漏洩検出器(4)と連通させ、前記漏洩検出器(4)により前記チャンバ(2;2a、2b)内の前記トレーサーガスの濃度を測定して、少なくとも1つの前記密封製品(3)からの漏洩を検出する検査機能と、
前記検出弁(5;5a、5b)を閉じ、前記チャンバを大気圧に戻し、検査済の前記少なくとも1つの密封製品を前記チャンバから取り出す搬出機能とを含んでいることを特徴とする漏洩検出装置。
【請求項7】
請求項に記載の前記漏洩検出装置(1;1’)であって、
前記バッファ容積(V;VTa,Tb)は、1000cmより大きいことを特徴とする漏洩検出装置。
【請求項8】
請求項6〜7のいずれかに記載の前記漏洩検出装置(1;1’)であって、
直径25mm及び長さ1mを超える前記バッファ容積(V;VTa,Tb)を定めるパイプ(10;10a、10b)を含むことを特徴とする漏洩検出装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の前記漏洩検出装置(1;1’)であって、
前記漏洩検出器(4)は、質量分析計を含むことを特徴とする漏洩検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封製品の耐漏洩性を監視する方法に関する。本発明は、さらに、このような監視方法を実施する漏洩検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ点火器、ペースメーカ、あるいはある種の電子部品などのいくつかの製品は、その安全性を確保するために密封されている。この密封に漏れがないことを確認するために、漏洩を検出するいくつかの方法が知られている。
【0003】
1つの既知の方法は、ヘリウムトレーサーガスを用いて、漏洩の検査を行うことである。この方法によれば、ヘリウム原子のサイズが小さいために、他のガスよりも容易に、漏洩箇所を通過するヘリウムの漏れを検出することができる。
【0004】
このために、密封製品を封止する前に、ヘリウムが充填される。その後、密封製品は、真空下の耐漏洩性の検査室内に置かれる。この検査室内の真空度が適切な値になると、検査室の内部の雰囲気中に存在する可能性のあるヘリウムが、漏洩検出器を用いて検査される。ヘリウムの漏出を検出するためのこのプロセスは、信頼性があり、再現性があり、かつ、高感度である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、漏れが比較的大きいという欠陥のある小さい密封製品の耐漏洩性の監視には、ある種の困難が生じる場合がある。それは、検査室が真空状態にあるときに、密封製品中に存在する可能性のあるヘリウムが、漏洩箇所を通して急速に排出されるからである。
その結果、漏洩検出器に連通している検査室内の圧力が十分に低いと、すべてのヘリウムが消失してしまう。そのため、大きな欠陥のある密封製品を検知できないというリスクが存在する。
【0006】
この問題を克服するための1つの解決法は、「水」検査である。この方法は、ヘリウムによる検査の前に、密封製品を水で満たされた大きなタンクに浸して行われる。目視検査により、タンク内に気泡が形成される可能性を検出することができる。気泡が存在しないと、密封製品には著しい漏れがないことを確認できる。
【0007】
しかしながら、この方法は、オペレータに依存し、気泡を見つけられず、そのため欠陥のある密封製品の検出を見逃すオペレータもいるので、ヘリウム検査ほどには信頼性がない。
【0008】
この方法のもう一つの欠点は、実行するのが面倒であるということである。
まず、小さな漏れを検出することはできないので、ヘリウム検査に加えて、他の検査を実施する必要がある。従って、密封製品に対して、2つの連続した耐漏洩性の監視の操作を行わなければならない。第2に、水検査の後、密封製品を完全に乾燥させてから、生産ラインに再導入できるものでなければならない。
【0009】
本発明の目的の1つは、これらの欠点を少なくとも部分的に解消し、最先端の技術よりも制限が少なく、かつ、連続した検査を高速で行える、密封製品の耐漏洩性を監視するための方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明の主題は、トレーサーガスが充填されている少なくとも1つの密封製品を大気圧下のチャンバ内に置く搬入段階を含む、密封製品の耐漏洩性を監視する方法であって、
‐ 少なくとも1つの前記密封製品を含むチャンバを、0.5秒未満の予備排気段階の間、大気圧未満の圧力下で、バッファ容積と連通させる予備排気段階と、
‐ その後、前記チャンバ内のトレーサーガスの濃度を測定して、前記少なくとも1つの密封製品からの漏洩を検出するために、前記チャンバを、前記バッファ容積をバイパスするように構成された1つの分析ラインと連通させる段階とを含むことを特徴としている。
【0011】
これにより、数秒間にわたる1つのサイクルで、10−1mbar.l/s〜10−8mbar.l/sの範囲の検出閾値により、密封製品の耐漏洩性を監視することが可能となり、これにより、連続した高感度の検査を、非常に高速で行うことができる。
【0012】
単独でまたは組み合わせて行われる、前記耐漏洩性を監視する方法の1つまたは複数の特徴によれば、
‐ 前記予備排気の時間は、0.3秒以下であり、
‐ 前記バッファ容積の前記大気圧未満の圧力は、1000パスカル未満、例えば100パスカル未満であり、
‐ 少なくとも1つの密封製品を含む前記チャンバの残容積に対する前記バッファ容積の比率は、少なくとも100より大きく、例えば1000より大きく、
‐ 少なくとも1つの前記密封製品を収容する前記チャンバは、このチャンバと前記バッファ容積との間に設けられたソレノイド弁を制御することによって、前記バッファ容積と連通させられ、
‐ 少なくとも2つの前記チャンバにおけるトレーサーガスの濃度は、同一の前記分析ラインによって交互に測定される。
【0013】
本発明による前記密封製品の耐漏洩性を監視する方法によれば、
‐ 第1のチャンバで検査済の少なくとも1つの密封製品を、大気圧で搬出し、
次に、検査すべき少なくとも1つの密封製品を前記第1のチャンバに搬入し、そして、前記第1のチャンバを第1のバッファ容積に連通させるために、第1の予備排気弁を開かき、前記第2のチャンバを前記分析ラインと連通させ、
‐ 次に、検査済の少なくとも1つの前記密封製品を搬出し、検査すべき少なくとも1つの密封製品を搬入するために、前記第2のチャンバ内の圧力を大気圧に戻しながら、前記第2のチャンバを第2のバッファ容積と連通させるために、第2の予備排気弁が開かれている間、前記第1のチャンバを前記分析ラインと連通させる。
【0014】
本発明の他の主題は、上記密封製品の耐漏洩性を監視する方法を実施するための、漏洩検出装置であって、
‐ トレーサーガスが充填されている少なくとも1つの密封製品を収容するようになっている少なくとも1つのチャンバと、
‐ それぞれ、少なくとも1つの前記チャンバが接続された、少なくとも1つの予備排気弁及び少なくとも1つの検出弁と、
‐ 少なくとも1つの前記検出弁に接続された分析ラインとを備え、
‐ 少なくとも1つの前記予備排気弁及び少なくとも1つの前記検出弁は、ソレノイド弁であり、
‐ 前記漏洩検出装置は、以下のように制御するようになっている制御ユニットを含むことを特徴としている。
・0.5秒未満の予備排気時間のために、前記予備排気弁を開放し、次いで、
・前記分析ラインによる前記チャンバ内の前記トレーサーガスの濃度を測定するために、前記予備排気弁の閉鎖と前記検出弁の開放とを行う。
【0015】
前記予備排気弁の閉鎖及び前記予備排気段階から前記検査段階への推移のための前記検出弁の開放を、経過した時間の関数として自動的に実行することが可能である。そのため、この切り替えが行われる瞬間を決定するために、圧力センサを使用する必要はない。
圧力センサの応答時間はもはや関係しないので、前記予備排気段階から前記検査段階への推移はより速くなる。
【0016】
単独または組み合わせられた前記漏洩検出装置の1つまたは複数の特徴として、
‐ 少なくとも1つの前記密封製品を包囲する残容積に対する前記バッファ容積の比率は、少なくとも100より大きく、例えば1000であるか、それよりもより大きく、
‐ 前記バッファ容積は、1000cmより大きく、
‐ 前記漏洩検出装置は、直径25mm及び長さ1mより大きな前記バッファ容積を有するパイプを含み、
‐ 前記分析ラインは、質量分析計を有する漏洩検出器を含んでいる。
【0017】
本発明の他の利点や特徴は、本発明の詳細な説明や図面により明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例に係る漏洩検出装置の模式図である。
図2】密封製品の耐漏洩性を監視する方法における、異なる段階を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施例に係る漏洩検出装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面において、同じ構成要素には同じ符号を付してある。
【0020】
以下の実施例は例示的なものである。以下の説明では、1つまたは複数の実施例を挙げているが、これは、必ずしも各符号が同じ実施例に関すること、またその特徴がただ1つの実施例にのみに限定されることを意味するものではない。異なる実施例の簡単な特徴を組み合わせて、他の実施例を提供することもできる。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例としての漏洩検出装置1を示す図である。
【0022】
漏洩検出装置1は、トレーサーガスが充填されている少なくとも1つの密封製品3を収容するチャンバ2と、検出弁5を介してチャンバ2に接続されている分析ラインと、予備排気弁7を介してチャンバ2に接続された予備排気装置6とを備えている。従って、分析ラインは、バッファ容積Vをバイパスするように構成されている。
【0023】
密封製品3は、(例えばはんだ付けによる)封止前にトレーサーガスが濃縮されている内部雰囲気中に、保護されるべきエレメントを備えている。密封製品3は、例えば、エアバッグの点火器、ペースメーカまたは各種の電子部品である。それらは、特に自動車、エレクトロニクスまたは医療機器産業用のものである。
【0024】
一般に、ヘリウムまたは水素をトレーサーガスとして使用する。これらのガスは、原子または分子のサイズが小さいため、他のガスよりも容易に小さな漏洩箇所を通過するからである。
【0025】
予備排気装置6は、第1ポンプ装置9とパイプ10とを備えている。パイプ10は、予備排気弁7を第1ポンプ装置9の吸引部に接続し、バッファ容積Vを定めている。
【0026】
少なくとも1つの密封製品3の周囲の容積は、残容積Vである。この残容積Vは、チャンバ2の容積によって規定され、その中に収容された少なくとも1つの密封製品3の容積は差し引かれ、チャンバ2と予備排気弁7との間の容積と、必要に応じて、チャンバ2と吸気弁8との間の容積と、チャンバ2と検出弁5との間の容積とが追加される。
チャンバ2に接続された吸気弁8は、チャンバ2を外部の大気雰囲気または中性ガスと連通させることを可能にしている。
【0027】
チャンバ2、予備排気弁7、吸気弁8、検出弁5、及びパイプ10は、次のように構成されている。すなわち、少なくとも1つの密封製品3を取り囲んでいる残容積Vに対するバッファ容積Vの比は、少なくとも100より大きく、例えば1000以上である。
【0028】
従って、残容積Vは可能な限り小さく、例えば1cm以下とする。
そのため、予備排気弁7、吸気弁8及び検出弁5をチャンバ2に近接して設け、チャンバ2の容積を、このチャンバに収容しようとする1つまたは複数の密封製品3の体積よりわずかに大きい寸法になるようにする。
【0029】
さらに、少なくとも1000cmを超える、比較的大きなバッファ容積Vが提供される。そのために、パイプ10は、例えば、直径が25mmで長さが1m以上、例えば2m程度の、少なくとも1つの管路を備えている。
【0030】
第1ポンプ装置9は、例えば、所定の流量でガスを吸引して、大気圧に戻す、ロータリーベーンポンプのような低真空ポンプ、例えば2段ロータリーベーンポンプを備えている。ポンプ流量は、例えば15〜20m/hである。
【0031】
分析ラインは、漏洩検出器4を備えている。
漏洩検出器4は、トレーサーガスとして使用されるガス状物質の濃度を測定するために、第2のポンプ装置12、13と、ガス分析装置11とを備えている。
【0032】
第2ポンプ装置12、13は、例えば、ターボ分子ポンプなどの高真空ポンプ12と、これに直列に接続された低真空ポンプ13とを備え、高真空ポンプ12は、低真空ポンプ13に対して、ガスの流れ方向における上流側に配置されている。
低真空ポンプ13は、例えば、予備排気装置6のものと同様の2段ロータリーベーンポンプ、又は小型のドライ低真空ポンプ等のロータリーベーンポンプである。
高真空ポンプ12のポンプ吸引時のポンプ流量は、例えば、50l/s〜150l/sである。
【0033】
ガス分析装置11は、例えば、質量分析計である。
質量分析計は、良く知られているように、イオン化チャンバと加熱された電気フィラメントのような電子エミッタとを含む、測定セルを備えている。分析すべきガスの分子は、電子ビームによって衝突され、イオン化される。
これらのイオン化粒子は、電場によって連続的に加速され、その質量の関数として、イオン化粒子の軌道を偏向させる磁場にさらされる。トレーサーガスのイオン化された粒子の流れは、装置内のガスの分圧に比例し、それを測定することにより、検出された漏洩の流量の値を決定することができる。
【0034】
ガス分析装置11は、例えば、高真空ポンプ12の吸引部に接続されている。
【0035】
検出弁5は、例えば高真空ポンプ12の中間圧縮ステージにおいて、第2ポンプ装置12、13に接続されている。従って、ガス分析装置11の測定セルは、10−4mbarのオーダーの低圧下にある。このようにして、ガス分析装置11の測定セルは、中間圧縮ステージによってガスの逆拡散から保護されている。
【0036】
予備排気弁7、検出弁5及び吸気弁8は、コンピュータなどの漏洩検出装置1の制御ユニット14によって制御することができる。予備排気弁7、検出弁5及び吸気弁8は、電磁弁等のソレノイド弁により構成されている。
【0037】
次に、密封製品の耐漏洩性を監視するためのサイクルについて説明する。
【0038】
第1ポンプ装置9、第2ポンプ装置12、13及びガス分析装置11は、中断することなく機能するものとする。
【0039】
サイクルの開始時に、予備排気弁7及び検出弁5は閉じられる。バッファ容積Vの大気圧未満の圧力(準大気圧)は、定義上、大気圧よりも低い。望ましくは、1000パスカル(または10mbar)未満、例えば100パスカル(または1mbar)未満である。
【0040】
搬入段階101の間に、トレーサーガスの雰囲気下で予めシールされた少なくとも1つの密封製品3がチャンバ2内に置かれる。チャンバ2内の圧力は、このチャンバ2の外部に広がる大気雰囲気の大気圧である。
【0041】
吸気弁8を閉鎖し、チャンバ2を漏洩のない状態で密閉する。
【0042】
次に、予備排気段階102において、少なくとも1つの密封製品3を収容しているチャンバ2を、0.5秒未満の予備排気時間の間、大気圧より低い圧力のバッファ容積Vと連通させる。そのために、チャンバ2をパイプ10から分離するための予備排気弁7を開く。
【0043】
予備排気時間は、例えば0.3秒以下、例えば0.1秒と0.3秒の間である。
【0044】
予備排気弁7を数十秒間にわたり開放することにより、残容積Vとバッファ容積Vとの圧力はバランスする。残容積Vの容積とバッファ容積Vの容積の比は、残容積Vの圧力を、数秒ではなく実質的に瞬時に、大気圧から数mbarオーダーの低圧に低下させることを可能にする。従って、少なくとも1つの密封製品3が不良である場合、第1ポンプ装置9によって排出される時間を要することなく、トレーサーガスは、漏洩箇所を通して密封製品3から流出しチャンバ2を経て拡散する。
【0045】
予備排気時間の終了時、チャンバ2内の圧力は、検出弁5が開放されるのに十分な程度に低くなり、そのため、分析ラインはチャンバ2に連通させられる。
【0046】
次に、予備排気弁7を閉じ、予備排気装置6をチャンバ2から隔離し、検出弁5を開いてチャンバ2を漏洩検出器4に連通させる(検査段階103)。
【0047】
残容積VRの圧力は、例えば、10−2mbar〜10−3mbarの間の低圧まで低下する。
【0048】
欠陥のある密封製品3がある場合、例えば、大きな漏洩のある小さな密封製品3であっても、チャンバ2内に存在する可能性のあるトレーサーガスを、漏洩検出器4によって検出することができる。
【0049】
同時に、予備排気弁7を閉鎖することにより、第1ポンプ装置9によって、パイプ10内のバッファ容積Vの圧力を低下させることができる。
【0050】
そして、大気圧に戻す段階104において、検出弁5を閉じ、吸気弁8を開くと、チャンバ2内の圧力は大気圧に戻る。
そして、検査済の少なくとも1つの密封製品3を取り出すために、チャンバ2を開放し(搬出段階105)、次に、検査すべき少なくとも1つの新しい密封製品3をチャンバ2に搬入することができる(搬入段階101)。
【0051】
従って、唯1回の検査だけで、密封製品3が、小さな漏洩や大きな漏洩のいずれかを有するか否かを、検出することができる。
【0052】
さらに、耐漏洩性を監視するための方法100は、完全にまたは部分的に自動化される。特に、チャンバ2が自動的にバッファ容積Vまたは分析ラインと連通するように、装置は構成されている。
【0053】
そのため、制御ユニット14は、制御を行うために、次のように構成されている。
‐ 予備排気段階102の間、予備排気時間だけ予備排気弁7を開放し、検出弁5及び吸気弁8を閉鎖する制御を行い、そして、
‐ 検査段階103の間、チャンバ2内のトレーサーガスの濃度を漏洩検出器4のガス分析装置11により測定するために、予備排気弁7の閉鎖と検出弁5の開放の制御を行い、次に
‐ 大気圧に戻す段階104の間、検出弁5の閉鎖及び吸気弁8の開放の制御を行う。
【0054】
予備排気弁7の閉鎖及び予備排気段階102から検査段階103への移行のための検出弁5の開放は、経過時間の関数として自動的に実行される。そのため、この切り替えが行われる瞬間を決定するために、もはや圧力センサを使用する必要はない。従って、予備排気段階102から検査段階103への移行は、圧力センサの応答時間が関与しないので、より速くなる。
【0055】
同様に、チャンバ2のドア16の開閉も、制御ユニット14によって制御することができる。この制御ユニット14は、搬入段階101と搬出段階105の間の密封製品3の搬入及び搬出を自動化するために、検出装置1のロボット15を制御し、密封製品3を把持して移動させ、チャンバ2内に出し入れすることができる。
【0056】
従って、密封製品3の耐漏洩性を、1サイクル(段階101〜段階105)を数秒間で、かつ、10−1mbar.l/s〜10−8mbar.l/sの範囲の検出閾値で監視することが可能であり、非常に高感度で、高速の連続した検査を行うことが可能になる。さらに、サイクルの自動管理の結果、速度は保証されたものとなる。
【実施例2】
【0057】
図3は、密封製品の耐漏洩性を監視するための方法100を実施するための、漏洩検出プラント1’の他の実施例を示す。
【0058】
漏洩検知装置1’は、それぞれ少なくとも1つの密封製品3を収容する第1のチャンバ2a及び第2のチャンバ2bと、第1の予備排気装置6a及び第2の予備排気装置6bと、第1のチャンバ2aに接続された第1の検出弁5aと、第2のチャンバ2bに接続された第2の検出弁5bとを備えている。
【0059】
第1予備排気装置6aは、第1の予備排気弁7aによって第1のチャンバ2aに接続され、第2予備排気装置6bは、第2の予備排気弁7bによって第2のチャンバ2bに接続されている。
【0060】
第1の検出弁5a及び第2の検出弁5bは、単一の分析ラインに接続されている
【0061】
また、制御ユニット14は、2つのチャンバ2a、2b内のトレーサーガスの濃度を前記分析ラインで交互に測定するために、一度に2つの検出弁5a、5bのうちの一方の検出弁の開放を制御するように構成されている。
【0062】
従って、密封製品の耐漏洩性を監視するサイクルにおいて、少なくとも1つの検査済の密封製品3が搬出されている間に、検査すべき次の密封製品3が大気圧下で第1のチャンバ2aに搬入される(搬出段階104と搬入段階101)。その後、第1のチャンバ2aを第1のパイプ10aの第1バッファ容積VTaに連通させるために第1の予備排気弁7aを開き(予備排気工程102)、その後、第2のチャンバ2bを漏洩検出器4に連通させるために第2の検出弁5bを開く(検査段階103)。
【0063】
欠陥のある密封製品3が内部に存在する可能性のある第2のチャンバ2bのトレーサーガスは、漏洩検出器4によって検出することができる。同時に、第2の予備排気弁7bの閉鎖により第2のチャンバ2bから隔離された第2バッファ容積VTbの圧力は、第2ポンプ装置9bにより第2のパイプ10b内で減圧される。
【0064】
そして、第2の検出弁5bが閉じられている間に、少なくとも1つの密封製品3を搬出し、次の密封製品を搬入するために、第2のチャンバ2b内の圧力を大気圧に戻すように吸気口弁8bを開き(搬出段階104と搬入段階101)、そして、第2の予備排気弁7bが第2バッファ容積VTbに開放されている間(予備排気段階102)に、第1の検出弁5aを開き、第1のチャンバ2aを漏洩検出器4に連通させる(検査段階103)。同時に、第1の予備排気弁7aの閉鎖によって第1のチャンバ2aから隔離された第1バッファ容積VTaの圧力は、第1ポンプ装置9aによって第1のパイプ10a内で減圧される。
【0065】
このようにして、チャンバ内のトレーサーガスの濃度を並行して測定することができる。すなわち、チャンバを大気圧に戻すのに必要な時間の間に、検査済の密封製品3を搬出し、検査すべき次の新しい密封製品3を搬入し、チャンバ内の圧力を減圧できる(搬出段階104、搬入段階101、及び、予備排気段階102)。
【0066】
従って、密封製品3の測定速度を2倍にすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 漏洩検出装置
1’ 漏洩検出プラント
2 チャンバ
2a 第1のチャンバ
2b 第2のチャンバ
3 密封製品
4 漏洩検出器
5 検出弁
5a 第1の検出弁
5b 第2の検出弁
6 予備排気装置
7 予備排気弁
8 吸気弁
9 第1ポンプ装置
9a 第1ポンプ装置
9b 第2ポンプ装置
10 パイプ
10a 第1のパイプ
10b 第2のパイプ
11 ガス分析装置
12 高真空ポンプ(第2ポンプ装置)
13 低真空ポンプ(第2ポンプ装置)
14 制御ユニット
15 ロボット
16 ドア
100 密封製品の耐漏洩性を監視するための方法
101 搬入段階
102 予備排気段階
103 検査段階
104 大気圧に戻す段階
105 搬出段階
残容積
バッファ容積
Ta 第1バッファ容積
Tb 第2バッファ容積
図1
図2
図3