【実施例】
【0107】
実施例1
材料及び方法
【0108】
以下をそのまま使用した:アルギネート(55%以上のグルロン酸含有、50,000〜80,000g / mol、FMC Biopolymer)、塩化カルシウム(Bio Reagent、Sigma Aldrich)、塩化カルシウムを含まないリン酸緩衝溶液(PBS、Gibco)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)、カルシウム非含有DMEM(Gibco)、ピルビン酸ナトリウム(Gibco)、L-グルタミン(Gibco)、ジェランガム(Sigma Aldrich)、トリプシン(Sigma Aldrich)、0.22μmシリンジフィルター(ポリエーテルスルホン膜、Merck Millipore)、T150フラスコ(Corning)、15ml遠心分離管(Corning)、エタノール(Sigma Aldrich)。組織培養培地を、10%v/vのFCSとDMEMとを混合することにより作製した。
細胞型:
【0109】
SK−NBE(2)神経芽腫細胞を使用した。
細胞培養:
【0110】
T150フラスコ中の80%の集密性での神経芽腫を、3mlのPBSにより洗浄した。過剰のPBSの吸引の後、3mlのトリプシンを添加し、そしてフラスコを37℃で5分間、インキュベートし、細胞表面から細胞を解離した。続いて、7mlの組織培地を添加し、そして解離された細胞を、15mlの管中に移した。細胞分散液を、400gで3分間、遠心分離した。上清液を捨て、そして細胞ペレットを、5mlの培地に再懸濁した。次に、細胞の計数を、等体積の細胞懸濁液及びトリパンブルー染色を混合することにより実施し、細胞濃度を決定した。
基質:
【0111】
Corning社により供給される6ウェルマイクロタイタープレートを、そのまま使用した。無菌包装を、内容物の無菌性を維持するために無菌環境下で開封した。
バイオインク:
【0112】
ピルビン酸ナトリウム(100mMで5.5ml)、FCS(44ml)及びL−グルタミン(200mMで5.5ml)を、カルシウムフリーのDMEM(500ml)に添加し、バイオインク分散体を創造した。アルギネート(0.2g)を、激しい攪拌下で、前記分散体(10ml)にゆっくり添加し、2%w/vでバイオインクを得た。次に、得られる均質溶液を、0.22μmのシリンジフィルターを通して、滅菌環境下で濾過した。
活性化剤:
【0113】
塩化カルシウム(0.4g)を、10mlのMilliQ水に溶解し、4%w/vにした。次に、その溶液を、10分間、UV滅菌し、そして滅菌環境下で0.22μmのフィルターを通して濾過した。
細胞インク:
【0114】
ジェランガム(0.05g)を、10mlの温PBSに溶解し、0.5%w/vにした。その溶液を、室温に冷却するよう、渦動した。次に、その溶液を、10分間、UV滅菌し、そして滅菌環境下で0.22μmのフィルターを通して濾過した。
【0115】
10×10
6個の細胞/mlでDMEMに分散された、収穫された神経芽腫細胞(5ml)を、遠心分離し、50×10
6個の細胞の細胞ペレットを得た。次に、得られるペレットを、細胞インク(0.2ml)に再分散し、250×10
6個の細胞/mlで、分散されたSK−N−BE(2)細胞を有するバイオインク溶液を得た。
細胞印刷条件:
【0116】
最初に、プリンターを、エタノール(水中、70%v/v)による拭き取りにより滅菌し、空気乾燥し、そしてバイオセーフティキャビネット内に配置した。流体ライン及び液滴分配システムをまた、エタノール、水、滅菌MilliQ水、及び組織培養培地パージを用いて、この順に滅菌した。次に、細胞を含む細胞インク、バイオインク、及び活性化剤を、それらのそれぞれのバイアルに装填した。次に、液滴分配システムを、印刷ルーチンを開始する前、流体供給ラインから空気をパージすることによりプライムした。
【0117】
各流体についての液滴分配システムは、異なるノズル直径、及びリザーバ内の供給圧力を使用した。バイオインク、活性化剤、及び細胞インク+細胞についてのノズル直径は、それぞれ、0.007”、0.003”及び0.007”であった。バイオインク、活性化剤、及び細胞インク+細胞についての供給圧力は、それぞれ、40、5及び12psiであった。
【0118】
ハイドロゲルモールドは、
図2に示されるように、円筒状のパターン内にバイオインク及び活性化剤液滴の複数の層を含んでいた。ハイドロゲルモールド内の各層を、バイオインクの液滴、次に活性化剤の液滴を上部に直接又はその逆に付着させ、そしてこの工程を反復し、円筒状の構造を形成することにより印刷した。最初の2つの層の後、バイオインク又は活性化剤は、円筒構造の中心に付着させず、構造の中心で窪み又はカップを残した。この工程を、複数の続く層について反復した。細胞を含む細胞インクの1〜5つの液滴を、ハイドロゲルモールド中の中心又はカップに付着させた。最後に、ハイドロゲルの追加の層を、同じ様式で印刷し、ハイドロゲルモールド内の細胞を封入した。
【0119】
印刷が完結された後、マイクロタイタープレートを、インキュベーター(37℃及び5%CO
2)に72時間、置いた。
細胞濃度:
【0120】
250×10
6個の細胞/mlでSK−N−BE(2)を有する細胞インクを、実験に使用した。
細胞生存性:
【0121】
95%以上か又はそれに等しい細胞生存率を得た。
実施例2
【0122】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例1に記載のようにして、それぞれ40psi、12psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のSK−N−BE(2)細胞を、1億個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷された3D細胞培養モデルの顕微鏡画像は、24、48及び120時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。
実施例3
【0123】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例1に記載のように、それぞれ40psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インクは、16.5%w/vを得るためにPBSに溶解されたフィコール(商標)(Sigma Aldrich, 1.65g)であった。細胞インク中のSK−N−BE(2)細胞を、20psiの供給圧力で、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷された3D細胞培養モデルの顕微鏡画像は、24、48及び72時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。
実施例4
【0124】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例3に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のp53
R127H細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷されたモデルの顕微鏡画像は、24、48及び72時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。
実施例5
【0125】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例3に記載のようにして、それぞれ40psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インクは、10%w/vを得るためにPBSに溶解されたフィコール(商標)(Sigma Aldrich, 1g)であった。細胞インク中のp53
R127H細胞を、20psiの供給圧力で、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。
実施例6
【0126】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のDAOY細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。
実施例7
【0127】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のH460細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。
実施例8
【0128】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のSKOV−3細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。
アプリケーション
3D組織培養モデルアッセイ:
【0129】
3D組織培養モデルアッセイを、マルチ−ウェルプレート、例えば96ウェルプレート中のウェルの内部に構築した。第1段階は、3D組織培養モデルを支持するであろう円筒状ハイドロゲル構造又はモールドの下半分を印刷することであった。これは、バイオインク及び活性化剤を用いたドロップ−オン−ドロップ工程を用いて達成される。次に、高密度の細胞を含む細胞リンク液滴を、
図3に示されるように、円筒状ハイドロゲル構造の中心に印刷する。次いで、3D組織培養モデルを、バイオインク及び活性化剤を用いたドロップ−オン−ドロップ工程を用いて、さらに印刷することにより、ハイドロゲルに封入した。最後に、ウェル上の印刷工程を、薬物又は他の試験剤(50、100、150又は200μl)を含む増殖培地を置くことにより終了する。
インビトロアプリケーション:
【0130】
以下の生物学的表現型の試験は以下を含む(但し、それらだけには制限されない):細胞運動、細胞遊走、細胞浸潤、経内皮遊走、上皮−間葉移行、間葉−上皮移行、スフェロイド形成及び成長、細胞分化(より具体的には幹細胞分化、細胞分化マーカーのモニタリング)、細胞死(より具体的には細胞アポトーシス;細胞壊死)、細胞オートファジー、細胞増殖、細胞代謝、タンパク質の代謝回転、タンパク質の分布及び位置、細胞シグナル伝達及び下流事象、薬物効力、薬物薬力学、作用の薬物メカニズム、薬物受容体媒介輸送、薬物インターナリゼーションのメカニズム、バイオマーカー評価、細胞−細胞接合、細胞−細胞のシグナル伝達及び下流事象、細胞形態、細胞接着、遺伝子発現、タンパク質発現、細胞ホーミング、細胞周期調節及び制御、サイトカイン放出、インスリン産生、タンパク質分泌及び細胞内輸送(trafficking)および輸送(transport)、受容体−リガンド結合、抗体結合、抗体特異性、タンパク質リン酸化、プロテオソーム機能、酵素機能(より特異的には酵素阻害)、免疫調節、クローン原性、酸化的ストレス、タンパク質フォールディング、細胞細胞骨格、オルガネラの形態学及び機能(より具体的には、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム、分泌小胞、液胞、リボソーム、核、リソソーム、繊毛、小胞体、ゴルジ体)、膜輸送、低酸素症、血管新生、創傷治癒、神経突起(伸長または形成)、ホスファターゼ機能、ラメリポダイアル形成(lamellipodial formation)及び動態; 接着点(focal contact)/接着斑(focal adhesion)形成、動態及びシグナル伝達; 細胞感知、メカノトランスダクション。
【0131】
細胞に送達されるか、又は投与され得る物質のリストは、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:薬物、治療剤、抗体、小分子阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、抗原、病原体、血小板、増殖因子、サイトカイン、アミノ酸、栄養素(単糖類及び多糖類)、馴化培地、抗生物質、抗ウイルス剤、ナノ粒子、RNA及び関連する変異体(例えば、siRNA、miRNAなど)。
印刷構造型:
【0132】
細胞を含まない領域、及び少なくとも1つのスフェロイドを含む少なくとも1つの領域から部分的に構成される構造の印刷。
【0133】
少なくとも2つのスフェロイドを含む構造の印刷であって、ここで異なるスフェロイドは、同じか又は異なる細胞型から構成され得る。
【0134】
隣接するスフェロイドを含む構造の印刷であって、ここで隣接するスフェロイドは、同じか又は異なる細胞型であり得る。
【0135】
上記に列挙される物質の少なくとも1つを含む構造の印刷。
【0136】
広範に記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、本発明に対して多くの変更及び/又は修飾を行うことができることは、当業者に理解されるであろう。従って、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとしてみなされるべきである。
【0137】
参考文献
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