特許第6791960号(P6791960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791960
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】3D組織培養モデルの印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20201116BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C12N5/02
   C12M3/00 Z
【請求項の数】19
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-522824(P2018-522824)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-522587(P2018-522587A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】AU2016000258
(87)【国際公開番号】WO2017011854
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月16日
(31)【優先権主張番号】2015902917
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518022570
【氏名又は名称】インベンティア ライフ サイエンス プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】エイダン パトリック オマホニー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ハディノト ウタマ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マイケル ファイフ
(72)【発明者】
【氏名】ラクマリ アタパッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ シーザー カルデイラ リベイロ
(72)【発明者】
【氏名】マリア カバラリス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジャスティン グッディング
【審査官】 坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0237822(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0221225(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/110590(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/017579(WO,A1)
【文献】 Mehesz, A N et al,Scalable robotic biofabrication of tissue spheroids,Biofabrication,2011年,3(2),025002
【文献】 Cui, X et al,Human microvasculature fabrication using thermal inkjet printing technology,Biomaterials,2009年,30(31),6221-6227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12N 5/00
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D組織培養モデルを作製する方法であって、前記方法が:
(a)バイオインクの液滴を、基材に印刷する工程;
(b)前記バイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷して、ハイドロゲル液滴を形成する工程;
(c)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、細胞を含む液滴を受けるように適合されたハイドロゲルモールドを形成する工程;
(d)前記ハイドロゲルモールドに、10細胞/mL以上の細胞濃度を有する細胞を含む液滴を印刷する工程;及び、
(e)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、前記ハイドロゲルモールド内に封入された細胞を含む3D組織培養モデルを形成する工程、
を含み、
ここで、前記印刷が、ドロップ−オン−デマンド液滴分配システムを有するプリンタを使用して印刷が実行されるものであって、前記3D組織培養モデルは、95%以上の高い細胞生存率を有する、方法。
【請求項2】
前記工程(d)が、細胞を含む細胞−インクの液滴を、前記ハイドロゲルモールドに印刷する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(d)が、細胞を含むバイオインクの液滴を印刷する工程と、工程(e)の前に、細胞を含む前記バイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、細胞を収容、保持又は増殖させるのに適している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、異なるウェル構成(6、24、48及び96ウェル)のマイクロタイタープレート、異なるウェル構成(6、24、48及び96ウェル)のカバースリップ底面を有するマイクロタイタープレート、蛍光ディッシュ(fluorodish)、異なるチャンバー構成(1、2、4、8及び16)のチャンバースライド、カバースリップ又は顕微鏡スライドから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオインクが、適切な活性化剤に暴露されたときにハイドロゲルを形成し得る、細胞と適合性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオインクが、合成高分子、アミン反応性官能基を有するポリマー、チオール反応性官能基を有するポリマー、フルクトース、スクロース若しくはグルコース官能基を含むポリマー、非イオン性ポリマー、高分子電解質、又は天然高分子を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記合成高分子が多糖類であり、前記アミン反応性官能基を有するポリマーがアルデヒド、エポキシ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又は2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン(VDM)であり、前記チオール反応性官能基がアルケン、アルキン、アジド、ハロゲン又はシアネートであり、前記非イオン性ポリマーがポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(NIPAAM)及びポリ(プロピレンフマレート)(PPF)又は誘導体であり、前記天然高分子が、アルギネート(alginate)、キトサン、ヒアルロン酸、アガロース、グリコサミノグリカン若しくはメチルセルロース、タンパク質、ゼラチン、フィブリン、コラーゲン又は基底膜抽出物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記活性化剤が、前記バイオインクをハイドロゲルへと形成するように選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記活性化剤が、無機塩又は光開始剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機塩が、塩化バリウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム又は水酸化ナトリウムであり、前記光開始剤が、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)及びイルガキュア(Irgacure)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオインクが、アルギネートであり、前記活性化剤が、塩化カルシウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞−インクが、ジェランガム、フィコール(Ficoll)(商標)、デキストラン、グリセロール、アルギネート、メチルセルロース又はポリ(ビニルピロリドン)(PVP)から選択される、請求項2〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞−インクが、ジェランガムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞−インクが、フィコール(商標)である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ハイドロゲルモールドに封入された細胞を、細胞増殖又はスフェロイド形成を可能とする又は維持する温度及び条件においてインキュベートすることをさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記3D組織培養モデルが、細胞スフェロイドである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞濃度が、250×10細胞/mLである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞濃度が、450×10細胞/mLまでである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年7月22日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2015902917号の利益を主張し、そのすべての開示は、参照により全体が本明細書に組込まれる。

技術分野
【0002】
本技術は、三次元組織培養、例えば3D組織培養モデルの形成方法、及び3D組織培養モデルにおける使用に関する。

背景
【0003】
ヒト及び動物体内におけるほとんどの細胞構造は、三次元で組織化されている。これは、細胞培養の二次元単層において模倣され得る複雑な細胞間相互作用を導く(Pampaloni, Ansari and Stelzer, 2013)。しかしながら、二次元細胞培養は、典型的なインビトロ細胞培養のためのパラダイムであった。三次元環境下で培養される場合、細胞はより自然に振る舞うが、しかし三次元細胞培養の形成は、作製するのに困難で、高価で且つ面倒であることが実証されている。
【0004】
細胞スフェロイドは、三次元細胞培養モデルの例であり、基礎研究及び臨床薬理学において発現され、そして適用された最初のものの中のものであった。細胞スルフェロイドは、数百ミクロンの典型的な直径を有する凝集した細胞クラスターである。現在、スフェロイド形成のために利用できる多くの技法、例えばハンギングドロップ方法又は回転攪拌機が存在する。典型的には、細胞スフェロイドの培養は、4日までを要し、そして成功率は50%である。
【0005】
ドロップ−オン−デマンド型技法を用いて細胞を印刷する多くの研究が報告されて来た。Faulkner-Sonesら(2013)は、DMEM中、約1×105個の細胞/mlの細胞密度を有するドロップ−オン−デマンド方法を用いて培地に懸濁された細胞を印刷した。Ferrisら(2015)は、市販のインクジェットプリントヘッドを用いてバイオインク(ジェランガム)中2×106個の細胞/mlの印刷を報告している。Xuら(2014)は、1×107個の細胞/mlの密度でバイオインク中細胞の印刷を報告している。細胞印刷において最も広く使用されている細胞濃度は、105〜107個の細胞/mlであることも報告されている。多くのこれまでの研究は、ドロップ−オン−デマンド技法を用いての細胞の印刷を記載しているが、ドロップ−オン−デマンド方法によりバイオインクの中、高細胞密度(107個の細胞/ml以上)を印刷する報告は存在しない。
【0006】
細胞スフェノイドを形成するためには、例えば、高密度の細胞(5×107〜2×108個の細胞/ml)が、小さな球状細胞クラスターに凝集されなければならない。ハンギングドロップ技法は、単離された細胞を含む培地の液滴を懸濁し、そして細胞を3〜7日間にわたって凝集することによりこれを達成する。ドロップ−オン−デマンド装置を用いての細胞スフェロイドの作製は、高細胞密度に関連する高い粘性、及びドロップ−オン−デマンドにおける小さな特徴サイズのために困難性を提供する。この理由のために、スフェロイドを用いて組織構造を印刷する従来の試みにおいては、まず、細胞スフェロイドが手動的に形成され、3Dプリンターに装填され、そして次に、組織構造を形成するために印刷される。Tanら(2014)は、押出し法による予備形成された細胞スフェロイドの3D印刷を報告している。Tanなどは、液滴分配ノズルとして加圧されたパスツールピペットシステム使用し、予備形成されたスフェロイドの連続的堆積をもたらした。Margaら(2012)はまた、押出し法による予備形成されたスフェロイドの3D印刷を報告している。対照的に、細管マイクロピペットを用いて、細胞凝集体を連続して一列に配置した。同様に、Mironovら(2009)はまた、押出し法による予備形成された細胞スフェロイドの3D印刷を報告している。
【0007】
本発明者らは、インビトロ細胞培養アッセイに適切な3D組織培養モデルを作製するための方法を開発した。
【発明の概要】
【0008】
第1の側面によれば、3D組織培養モデルを作製する方法が提供され、ここで前記方法は:
(a)バイオインクの液滴を、基材に印刷する工程;
(b)前記バイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷して、ハイドロゲル液滴を形成する工程;
(c)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、細胞を含む液滴を受けるように適合されたハイドロゲルモールドを形成する工程;
(d)前記ハイドロゲルモールドに、細胞を含む液滴を印刷する工程;及び、
(e)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、前記ハイドロゲルモールド内に封入された細胞を含む3D組織培養モデルを形成する工程、を含む。
【0009】
1つの実施形態によれば、工程(d)は、ハイドロゲルモールドに、細胞を含む細胞インクの液滴を印刷することを含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、工程(d)は、ハイドロゲルモールドに、細胞を含むバイオインクの液滴を印刷し、そして工程(e)の前、細胞を含むバイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷することを含む。
【0011】
第2の側面によれば、3D組織培養モデルを作製する方法が提供され、ここで前記方法は:
(a)バイオインクの液滴を、基材に印刷する工程;
(b)前記バイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷して、ハイドロゲル液滴を形成する工程;
(c)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、細胞を含む液滴を受けるように適合されたハイドロゲルモールドを形成する工程;
(d)前記ハイドロゲルモールドに、細胞を含む細胞インクの液滴を印刷する工程;及び、
(e)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、前記ハイドロゲルモールド内に封入された細胞を含む3D組織培養モデルを形成する工程、を含む。
【0012】
第3の側面によれば、3D組織培養モデルを作製する方法が提供され、ここで前記方法は:
(a)バイオインクの液滴を、基材に印刷する工程;
(b)前記バイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷して、ハイドロゲル液滴を形成する工程;
(c)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、細胞を含む液滴を受けるように適合されたハイドロゲルモールドを形成する工程;
(d)前記ハイドロゲルモールドに、細胞を含むバイオインクの液滴を印刷する工程;
(e)細胞を含むバイオインクの液滴に、活性化剤の液滴を印刷する工程;及び、
(f)任意の順序で工程(a)及び(b)を繰り返して、前記ハイドロゲルモールド内に封入された細胞を含む3D組織培養モデルを形成する工程、を含む。
【0013】
1つの実験形態によれば、前記方法は液滴を形成できる3Dバイオプリンターを用いて実施される。3Dバイオプリンターは、細胞の完全性、生存能力又は機能性を可能にするような態様で、バイオインク、活性化剤、細胞包含液滴、細胞含有の細胞インクの液滴を印刷するように構成される。
【0014】
工程(a)及び(b)は、任意の順序で実施され得ることが理解されるであろう。バイオインクの液滴が基材に適用され、続いてハイドロゲル液滴又は活性化剤の液滴を形成するための活性化剤の液滴が基材に適用され、続いてハイドロゲル液滴を形成するためにバイオインクの液滴が適用され得る。
【0015】
1つの実施形態によれば、基材は、細胞を収容し、保持するか、又は増殖させるための任意の適切な容器から選択される。例としては、異なるウェル構成(6、24、48及び96ウェル)のマイクロタイタープレート、異なるウェル構成(6、24、48及び96ウェル)のカバースリップ底面を有するマイクロタイタープレート、種々のサイズの蛍光ディッシュ(fluorodish)、異なるチャンバー構成(1、2、4、8及び16)のチャンバースライド、カバースリップ又は顕微鏡スライドである。
【0016】
バイオインクは、適切な活性化剤に暴露される場合、細胞と適合でき、そしてハイドロゲルを形成できる任意の適切な材料から選択され得る。
【0017】
1つの実施形態によれば、バイオインクは、合成高分子、フルクトース、スクロース又はグルコース官能基を含むポリマー、非イオン性ポリマー、高分子電解質、又は天然高分子である。
【0018】
例としては、合成高分子、例えば多糖類;フルクトース、スクロース又はグルコース官能基を含むポリマー;アミン反応性官能基、例えばアルデヒド、エポキシ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又は2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン(VDM)を担持するポリマー;チオール反応性官能基、例えばアルケン、アルキン、アジド、ハロゲン又はシアネートを有するポリマー、非イオン性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)、非イオン性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(NIPAAM)及びポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、及び誘導体;高分子電解質−正又は負の何れかの電荷を担持するポリマー、両性及び双性ポリマー;アミド結合により一緒に保持される多くのアミノ酸(最小2つのアミノ酸)の単一の直鎖であるポリペプチドを含む。天然高分子は、多糖類、例えばアルギネート、キトサン、ヒアルロン酸、アガロース及びグリコサミノグリカン;タンパク質、例えばゼラチン、フィブリン、コラーゲン、ペプチド又はそれらの組合せ;又は基底膜抽出物を含む。
【0019】
反応性官能基の例は、アミン反応性官能基、例えばアルデヒド、エポキシ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又は2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン(FDM)及びチオール反応性官能基、例えばアルケン、アルキン、アジド、ハロゲン又はシアネートを含む。
【0020】
活性化剤は、ハイドロゲルにバイオインクを形成するために選択される。
【0021】
1つの実施形態によれば、活性化剤は、無機塩、光開始剤、高分子電解質、ポリペプチド、タンパク質、及びアミン又はチオール基を担持する合成若しくは天然高分子を含む。
【0022】
1つの実施形態によれば、無機塩は、塩化バリウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム又は水酸化ナトリウムであり、前記光開始剤が、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)及びイルガキュア(Irgacure)である。
【0023】
1つの実施形態によれば、合成又は天然高分子は、天然において、アミン又はチオール基を担持してもよく、又は合成的に修飾されてもよい。
【0024】
1つの実施形態によれば、バイオインクは、反応性官能基を導入するために、化学的に修飾されてもよい。
【0025】
1つの実施形態によれば、分散した神経芽腫(SK−N−BE(2))細胞と共にウシ血清(FCS)が補充されてもよい、カルシウムフリーのダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)に溶解されたアルギネートから形成される。1つの実施形態によれば、バイオインクは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9% 又は10%のFCSが補充される。
【0026】
1つの実施形態によれば、活性化剤は、MilliQ水に溶解された塩化カルシウムである。
【0027】
細胞インクは、細胞と適合でき、そして印刷工程の間、細胞を懸濁状態に保持する任意の適切な材料から選択されてもよい。
【0028】
細胞インクは、細胞の完全性又は生存性を可能にする、緩衝液、細胞培地又は他の材料であってもよい。
【0029】
1つの実施形態によれば、細胞インク材料は、ジェランガム、フィコール(商標)、デキストラン、グリセロール、アルギネート、メチルセルロース又はポリ(ビニルピロリドン)(PVP)を含む。
【0030】
1つの実施形態によれば、細胞インクは、リン酸緩衝溶液(PBS)中のジェランガムである。
【0031】
1つの実施形態によれば、細胞インクは、PBS中のフィコール(商標)である。
【0032】
1つの実施形態によれば、細胞は、哺乳動物の肝臓細胞、胃腸細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、肺細胞、気管細胞、血管細胞、骨格筋細胞、心臓細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、結合組織細胞、角膜細胞、泌尿生殖細胞、乳房細胞、生殖細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、シュワン細胞、脂肪細胞、骨細胞、骨髄細胞、軟骨細胞、周皮細胞、中皮細胞、内分泌組織由来の細胞、間質細胞、幹細胞、前駆細胞、リンパ細胞、血液細胞、内胚葉由来細胞、外胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0033】
追加の細胞型は、他の哺乳類細胞(すなわち、非ヒト)、細菌、菌類及び酵母を含んでもよい。
【0034】
1つの実施形態によれば、3D組織培養モデルはさらに、剤、例えば薬物、治療剤、抗体、小分子阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、抗原、病原体、血小板、増殖因子、サイトカイン、アミノ酸、栄養素(単糖類及び多糖類)、馴化培地、抗生物質、抗ウイルス剤、ナノ粒子、RNA及び関連する変異体(例えばするsiRNA、miRNA、など)を含む。
【0035】
1つの実施形態によれば、前記方法は、液滴を形成することができる3Dバイオプリンターを用いて実施される。このバイオプリンターは、少なくともバイオインク、活性化剤、細胞懸濁液及び洗浄溶液のための流体レザーバ、3軸運動制御ステージ、ドロップ−オン−デマンド液滴分配システム、及び液体レザーバ内の圧力を制御するための圧力レギュレーターを有する。液滴分配システム及び3軸ステージは、無菌チャンバー、例えば層流キャビネット内に収容され得る。印刷プラットフォームは、多くの種類の基材、例えばマイクロウェルプレート及びペトリ皿上に印刷するためにアダプターを含み得る。印刷プラットフォームは、細胞増殖を助けるために37℃に加熱され得る。
【0036】
3Dバイオプリンターは、印刷フォーマットを定義するソフトウェアを有するコンピューターにより制御され得る。
【0037】
1つの実施形態によれば、3D組織培養モデルは、少なくとも約100、1000、5000、10000、50000、100000、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000又は 500000、又はそれ以上の細胞を含むことができる。他の数の細胞が使用され得ることは理解されるであろう。
【0038】
約450×106個の細胞/mlまでの細胞濃度が、3D組織培養モデルに使用され得る。さらに高い細胞濃度が使用され得ることは理解されるであろう。
【0039】
1つの実施形態によれば、複数の細胞型が液滴で印刷され得る。例えば、2又はそれ以上の細胞型が、3D組織培養モデルを形成するために、混合され、そして使用され得る。
【0040】
1つの実施形態によれば、方法は、基材上に複数の3D組織培養モデルを形成するために、実施される。例えば、96ウェルマイクロタイタープレートが適切な基材であり、多数の細胞アッセイのために使用され得る。
【0041】
1つの実施形態によれば、方法は、実質的に無菌の環境下で実施される。
【0042】
1つの実施形態によれば、方法は、約37℃までの温度で実施される。
【0043】
培地は、細胞生存性を維持するか、又は増殖及び細胞分裂を促進するために、3D組織培養モデルに添加され得る。
【0044】
1つの実施形態によれば、方法は自動化される。
【0045】
1つの実施形態によれば方法はさらに、細胞増殖又はスフェロイド形成を可能にする条件下でハイドロゲルモールド内に封入される細胞をインキュベートすることを含む。
【0046】
1つの実施形態によれば、インキュベーションは、細胞増殖及び維持するために適切な任意の適切な温度及び条件である。例えば、インキュベーションは、約37℃、約5%CO2で少なくとも24時間、実施され得る。インキュベーションは、ハイドロゲルモールド内の細胞型の細胞増殖又は維持又はスフェロイド形成を可能にする任意の温度及び時間で実施され得ることが理解されるであろう。
【0047】
1つの実施形態によれば、3D組織培養モデルは、細胞スフェロイドである。
【0048】
1つの実施形態によれば、ハイドロゲルは、例えば顕微鏡を用いて3D組織培養モデルにおける細胞の目視検査を可能にする。
【0049】
使用においては、3D組織培養モデルは、細胞研究のためのハイドロゲル内外への栄養素及び試験剤の移動を可能にすることができる。
【0050】
第4の側面によれば、第1の側面に従っての方法により作製される3D組織培養モデルが提供される。
【0051】
第5の側面によれば、3Dバイオプリンターにより形成されるハイドロゲルに封入される細胞の液滴を含む3D組織培養モデルが提供される。
【0052】
第6の側面によれば、細胞アッセイにおける3D組織培養モデルの使用が提供される。
【0053】
1つの実施形態によれば、細胞アッセイは、以下から選択される:細胞運動、細胞遊走、細胞浸潤、経内皮遊走、上皮−間葉移行、間葉−上皮移行、スフェロイド形成及び成長、細胞分化(より具体的には幹細胞分化、細胞分化マーカーのモニタリング)、細胞死(より具体的には細胞アポトーシス;細胞壊死)、細胞オートファジー、細胞増殖、細胞代謝、タンパク質代謝回転、タンパク質の分布及び位置、細胞シグナル伝達及び下流事象、薬物効力、薬物薬力学、作用の薬物メカニズム、薬物受容体媒介輸送、薬物インターナリゼーションのメカニズム、バイオマーカー評価、細胞−細胞接合、細胞−細胞シグナル伝達および下流の事象、細胞形態、細胞接着、遺伝子発現、タンパク質発現、細胞ホーミング、細胞周期調節および制御、サイトカイン放出、インスリン産生、タンパク質分泌及び細胞内輸送および輸送、受容体−リガンド結合、抗体結合、抗体特異性、タンパク質リン酸化、プロテオソーム機能、酵素機能(より特異的には酵素阻害)、免疫調節、クローン原性、酸化ストレス、タンパク質フォールディング、細胞細胞骨格、オルガネラの形態学及び機能(より具体的には、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム、分泌小胞、液胞、リボソーム、核、リソソーム、繊毛、小胞体、ゴルジ体)、膜輸送、低酸素症、血管新生、創傷治癒、神経突起(伸長又は形成)、キナーゼ機能、ホスファターゼ機能、ラメリポダイアル形成(lamellipodial formation)及び動態;接着点(focal contact)/接着斑(focal adhesion)形成、動態及びシグナル伝達;細胞感知、メカノトランスダクション。
【0054】
この方法の利点は、高濃度の細胞が組織培養モデルに含められ得ることである。
【0055】
この方法の利点は、高い細胞生存率が、印刷の後、達成され得ることである。
【0056】
この方法の利点は、それが安価で、反復可能であり、且つスケーラブルであり得ることである。
定義
【0057】
本明細書を通して、特にことわらない限り、用語「含む(comprise)」、又は「含む(comprise)」又は「含む(comprising)」などの変形は、言及される要素、整数又は工程、又は要素群の包含を意味することが理解されるが、但し任意の他の要素、整数又は工程、又は要素群を除外するものではない。
【0058】
本明細書を通して、用語「〜から成る(consisting of)」は、〜からのみ成ることを意味する。
【0059】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、製品又は同様のものの任意の議論は、単に本発明の文脈を提供することを目的とするものである。それらの事項の何れか又はすべてが先行技術拠点の一部を形成するか、又は本明細書の各請求項の優先日の前に存在した本明細書に関連する分野において通常の一般的知識であることは、認められるべきではない。
【0060】
特に記載されるか、又は反対の記載がない限り、単数の整数、工程又は要素として本明細書に列挙される本発明の整数、工程又は要素は、列挙された整数、工程又は要素の単数形及び複数形の両者を明確に包含する。
【0061】
本明細書において、用語「a」及び「an」は、製品の1又は複数(すなわち、少なくとも1つの)の文法的対象を示すために使用される。例によれば、「要素(an element)」への言及は、1つの要素又は2以上の要素を意味する。
【0062】
本明細書においては、用語「約(about)」とは、数字又は値への言及が絶対数字又は値として解釈されるべきではなく、エラー又は機器の限界の典型的なマージン内にある、当業者が当核技術に従って理解するであろう線に沿った数字又は値の上又は下の変動のマージンを含むことを意味する。言い換えると、用語「約」の使用は、当業者が同じ機能又は結果において列挙される値と同等であると考える範囲又は近似を言及すると理解される。
【0063】
当業者は、本明細書に記載される本発明は、具体的に記載されたもの以外の変形及び修飾が可能であることを理解するであろう。誤解を避けるために、本発明はまた、本明細書において、個々に又は集合的に言及又は指示される工程、特徴及び化合物のすべて、並びに任意の2以上の前記工程、特徴及び化合物の任意及びすべての組合せも含む。
【0064】
本明細書をより明確に理解するために、好ましい実施形態が、以下の図面及び実施例を参照して記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、3Dバイオプリンターの概略図を示す。
【0066】
図2図2は、内部に印刷された細胞コロニーを有する印刷されたハイドロゲルモールドの例を示す。A:中央にカップを有する印刷されたハイドロゲルモールド;B:ハイドロゲルモールドの中央でカップに印刷された細胞;C:48時間のインキュベーションの後に形成された細胞スフェロイド;D:72時間のインキュベーションの後に形成された細胞スフェロイド。
【0067】
図3図3は、3D組織培養モデルアッセイ(mm単位での寸法)の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
材料及び方法
バイオインク:
本明細書においては、バイオインクとは、細胞が懸濁又は収容されてもよい、1又は2以上のタイプの高分子の水溶液として定義される。活性化又は架橋に際し、それは、バイオインクの化学的及び物理的組成により定義されるその物理的及び化学的特性を有するハイドロゲル構造を作製する。高分子は、合成及び天然ポリマー、タンパク質及びペプチドのアレイとして定義される。高分子は、それらの未変性状態であってもよく、又はアミン又はチオール反応性官能基により化学的に修飾されてもよい。
【0069】
合成高分子は、以下を含んでもよい:
多糖類、例えばフルクトース、スクロース又はグルコース官能基を含むポリマー;
非イオン性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(NIPAAM)及びポリ(プロピレンフマレート)(PPF)及び誘導体;
高分子電解質−正又は負の荷電を担持するポリマー、両性及び双性ポリマー;
ポリペプチド−アミド結合により一緒に保持される多くのアミノ酸(最少2個のアミノ酸)の単一単鎖;
合成ポリマーを含む核酸塩基−核酸塩基(アデニン、チミン、グアニン又はシトシン)反復単位を有するポリマー。
【0070】
天然高分子は、以下を含むことができる:
多糖類、例えばアルギネート、キトサン、ジェランガム、ヒアルロン酸、アガロース及びグリコサミノグリカン;
タンパク質、例えばゼラチン、フィブリン及びコラーゲン;
DNA及びオリゴヌクレオチド、例えば一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、DNAzyme及びアプタマー;
基底膜抽出物。
【0071】
アミン反応性官能基は、以下を含んでもよい:アルデヒド、エポキシ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトン(VDM)。
【0072】
チオール反応性官能基は、以下を含んでもよい:アルケン、アルキン、アジド、ハロゲン及びシアネート。
【0073】
使用され、そして適切であることが見出されたバイオインクは、10%v/vFCS、L−グルタミン及びピルビン酸ナトリウムが補充されたカルシウムフリーDMEMに溶解されたアルギネート(2%w/v)であった。
【0074】
分散されたSK−N−BE(2)神経芽腫細胞を有するバイオインクは、細胞を含むバイオインクとして言及される。
活性化剤:
【0075】
活性化剤は、ハイドロゲル構造を形成するためにバイオインクと相互作用する小分子又は高分子の何れかを含む水溶液である。活性化剤の組成は、得られるハイドロゲルの物性を制御するよう変更され得る。使用される活性化剤のタイプは、使用される高分子及び意図される架橋工程に高く依存する。
【0076】
活性化剤は、以下から選択され得る:
無機塩、例えば炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム。 水酸化ナトリウム及び塩化バリウム;
光開始剤、例えば2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン(DMPA)及びイルガキュア;
高分子電解質−バイオインク中の高分子に反対の電荷を担持するポリマー、それは、カチオン、アニオン、両性及び双性イオンであり得た;
ポリペプチド−アミド結合により一緒に保持される、多くのアミノ酸(最少2個のアミノ酸)の単一の直鎖;
DNAリンカー−バイオインクの高分子上に存在するものを補充するヌクレオチド又はDNA配列を担持する高分子;
天然の又は化学的修飾を介してアミン又はチオール基を担持する天然又は合成高分子。
【0077】
アルギネートバイオインクのために使用される活性化剤は、MilliQ水に、4%w/vで溶解された塩化カルシウムであった。
架橋又はゲル化:
【0078】
これは、個々の高分子鎖がハイドロゲルを形成するために活性化剤により一緒に連結される工程である。架橋工程は、化学的又は物理的架橋により分類され得る。物理的架橋又は非共有架橋は、以下を含んでもよい:
イオン架橋−高分子及び活性化剤に存在する反対の電荷の相互作用を通しての架橋。活性化剤は、荷電されたオリゴマー、イオン性塩及びイオン性分子を含んでもよい;
水性結合−極性分子の静電引力を通しての架橋。この場合、高分子及び活性化剤は極性官能基を担持する;
温度架橋−温度の変化(加熱又は冷却)に対する応答としての、高分子鎖の再配列を介した架橋;
疎水性相互作用又はファンデルワールス力。
【0079】
化学的又は共有架橋は、高分子と活性化剤との間の化学的反応を含む。反応の型は、以下を含んでもよい:
架橋反応がUV又は光照射により促進される光架橋;
水性媒体中、チオールとビニル担持の高分子との間のマイケル型付加反応(Michael-type addition reaction);
アミノ基とアルデヒド基との間のシッフ塩基反応;
ディールス・アルダー反応;
クリック化学;
活性エステル基へのアミノリシス反応;
酵素架橋。
【0080】
他のバイオインク及び活性化剤の組合せの例が、下記表に示される:
【表1】
【0081】
細胞インク:
細胞インクは、3Dバイオ印刷工程の間中、細胞が均等に懸濁され、それが維持されたままである1又は2以上のタイプの分子又は高分子の水溶液である。細胞インクの濃度は、細胞の沈降を防ぐために最適化されるが、しかしまだ高い細胞生存性を維持している。
【0082】
細胞インクは、下記から選択され得る:
小分子、例えばグリセロール;
高分子、例えばフィコール(商標)、デキストラン、アルギネート、ジェランガム、メチルセルロース及びポリ(ビニルピロリドン)(PVP)。
【0083】
フィコール(商標)は、水溶液に容易に溶解する、中性、高分岐、高質量、親水性多糖類である。フィコール(商標)の半径は、2〜7nmの範囲であり、そして多糖類とエピクロロヒドリンとの反応により調製される。フィルコール(登録商標)は、GH Healthcare社が所有する登録商標である。
【0084】
使用される細胞インクは、PBSに溶解されたフィコール(商標)400(10%w/v)であった。
【0085】
分散されたSK−N−BE(2)神経芽腫細胞は、細胞を含む細胞インクとして言及される。
【0086】
ジェランガムは、細菌スフィンゴモナス・エロデア(Sphingomonas elodea)(以前は、シュードモナス・エロデア(Pseudomonas elodea))により生成される水溶性アニオン性多糖類である。

細胞培養溶液:
【0087】
細胞培養溶液は、培養された細胞と接触する液体であり、そして種々の細胞関連の作業のために適切である。調製方法は、塩及びpHバランスの注意した分析、生体適合性分子のみの取り込み、及び滅菌を含む。
【0088】
細胞培養溶液のいくつかは、以下を含む:
細胞培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、Media 199、Ham’s F10、 Ham’s F12、 McCoy‘s 5A及びロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地;
成長サプリメント、例えばウシ胎仔血清(FCS)、表皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFBF)、線維芽細胞増殖因子(FBF)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、インスリン様成長因子1(IGF−1)及び血小板由来成長因子(PDGF);
生物学的緩衝液、例えばPBS、HEPES及びCHES;
キレート化及び安定化溶液;
滅菌MilliQ水。

細胞培養条件:
【0089】
細胞及び3D組織培養モデルは、標準的細胞培養技法を用いて、インキュベートされ、培養され、そして維持され得る。ハイドロゲルモールドに封入された細胞を含む3D組織培養モデルは、細胞増殖又はスフェロイド形成を可能にするか、又は維持するための条件下でインキュベートされ得る。インキュベーションは典型的には、ほとんどの動物及びヒト細胞系で、約37℃、5%のCO2レベルで少なくとも24時、実施される。インキュベーションは、ハイドロゲルモールドにおいて細胞型の増殖、維持又はスフェロイド形成を可能にする、任意の適切な条件、温度及び時間、実施され得ることは理解されるであろう。

実用溶液:
【0090】
実用溶液は、細胞と接触しないが、しかし細胞に暴露されるすべてのプリンター表面を清浄し、そして滅菌するために使用される溶液として定義される。それらの溶液は、下記を含む:
正しい濃度のエタノール;
無菌MilliQ水;
細胞培養培地;
洗剤(detergent);
過酸化水素溶液(最大2%w/vの濃度)。

印刷基材:
【0091】
印刷基材は、印刷された細胞構造を封入し、そして培養するために使用される生体適合性消耗品である。それらの基材は、以下を含むことができる:
異なるウェル構成のマイクロタイタープレート(6、24、48及び96ウェル);
異なるウェル構成のカバースリップ底を有するマイクロタイタープレート(6、24、48及び96ウェル);
カバースリップ及び顕微鏡スライド;
種々の大きさの蛍光ディッシュ;
異なるチャンバー構成のチャンバースライド(1、2、4、8及び16)。

3Dバイオ印刷プラットフォーム:
【0092】
Inventia Life Scienceにより開発され、そして組立てられた3Dバイオプリンターの概略が図1に示される。3Dバイオプリンター内の構成要素は、3軸運動制御ステージ、ドロップ−オン−デマンド液滴分配システム及び流体リザーバ内の圧力を制御するための圧力レギュレーターを含む。液滴分配システム及び3軸ステージは、無菌チャンバー、例えば層流キャビネット内に収容され得る。印刷プラットフォームは、多くの種類の基材、例えばマイクロ−ウェルプレート及びペトリ皿上を印刷するためのアダプターを含む。印刷プラットフォームは、細胞増殖を助けるために、37℃に加熱され得る。
【0093】
3D軸運動制御ステージは、すべての3つの(X、Y及びZ)次元において10μmの解像度で液体分配システムを正確に位置決定することができる。4つの液滴分配システムは、マイクロコントローラーにより制御されるジュエリーオリフィス分配ノズル(jewelled orifice dispensing nozzle)を備えたソレノイド弁からなる。ジュエリーオリフィスノズルの内径は、流体粘度及び所望の液滴体積に依存して、127〜254μmであり得る。各液滴分配システムは、柔軟な管を介して分配されるバイオインク及び活性化剤溶液のための静圧リザーバに取り付けられる。所望の液滴体積は、流体レザーバ内の背圧(backpressure)及びソレノイド弁の開放時間を用いて調整され得る。典型的には、背圧は、1〜60psiの圧力に設定され、ソレノイド弁の開放時間は、0.3ms又はそれ以上であり、そして液滴体積は1〜500nlである。バイオインク及び活性化剤レザーバを連結する柔軟な管は、システムをプライムし、そして印刷ルーチンの最後にパージするのにかかる時間を最小限にするために、できるだけ短くした。

制御ソフトウェア:
【0094】
3Dバイオプリンターは、生物学的アッセイを印刷するために開発されたカスタムソフトウェアを通して制御される。ソフトウェアは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を含む。GUIを通して、エンドユーザーは、異なるアッセイ印刷ルーチンを選択し、そしてアッセイパラメーター、例えば液滴間隔及び液滴体積を変更することができる。ユーザーは、液滴分配システムの空間位置を手動で制御し、そして液滴のカスタムパターンを創造することもできる。ソフトウェアの追加の特徴は、液滴分配システムのプライミング及びパージのためのルーチンを含む。

バイオインクの調製:
【0095】
最初に、バイオインクは、適切な細胞培養溶液において適切なタイプ及び量の高分子を混合することにより調製される。均質性を達成した後、ブランクのバイオインクがUV照射及び濾過(0.22μmのフィルター)の両者を用いて滅菌される。次に、バイオインクは、さらなる使用まで、4℃で維持される。

細胞の調製:
【0096】
PBSにより洗浄することにより細胞を収穫する。PBSを吸引する。トリプシンを添加し、そして37℃でインキュベートし、フラスコ表面から細胞を分離する。組織培養培地を添加し、分離された細胞を管中に集める。細胞を遠心分離し、上清液を吸引し、そしてペレットを新しい培地に再懸濁する。同量の細胞懸濁液及びトリパンブルー染色を混合することにより、細胞数を測定する。計算を行い、細胞濃度を決定する。次に、所望の数の細胞を、バイオインク、細胞インクに添加するか、又は細胞培養溶液に添加する。

活性化剤の調製:
【0097】
正しいタイプ及び量の分子を、適切な細胞培養溶液に溶解した。得られる溶液を、使用の前、UV照射及び濾過により滅菌した。

細胞インクの調製:
【0098】
正しいタイプ及び量の分子を、適切な細胞培養溶液に溶解した。均質性を達成した後、得られる溶液を、使用の前、UV照射及び濾過により滅菌した。次に、細胞インクを、さらなる使用まで、室温で保持した。

3Dバイオプリンターの調製:
【0099】
作動流体を含む印刷カートリッジを、連結を通して3Dバイオプリンターに装填する。印刷ルーチンを開始する前、液滴分配システム及び連結流体チャネルを、エタノール、水、媒体及び空気により滅菌する。滅菌の後、液滴分配システムをプライムし、そして気泡を、流体システムから除去する。

細胞収穫:
【0100】
一定の集密度での目的の培養細胞を、すでに確立されたプロトコルに従って収穫する。細胞を含むバイオインク又は細胞インクを作製するために、収穫された細胞を、200μlのバイオインク又は細胞インクに、2.5×108個の細胞/mlの濃度を得るための正しい細胞濃度で再懸濁する。次に、得られる細胞ペレットを、適切な体積のバイオインク又は細胞インクに再分配する。細胞を含むバイオインク又は細胞インクは、3Dバイオプリンターへの使用の準備が整っている。

印刷カートリッジの調製:
【0101】
滅菌環境下で、活性化剤、バイオインク、及び細胞を含むバイオインク又は細胞インクを、マイクロピペットを用いて、適切なカートリッジバイアルに、ゆっくり装填し、小気泡の生成を回避する。次に、カートリッジを閉じ、その無菌性を維持し、そして印刷工程のためのプリンターに装填する。

ハイドロゲルモールドの印刷:
【0102】
ハイドロゲルモールドを、ドロップ−オン−ドロップ工程を用いて印刷し、それにより、バイオインクの液滴及び活性化剤の液滴を、互いに重ねて堆積させ、ハイドロゲルを生成した。この工程を反復し、そしてハイドロゲルの層を構築することにより、3Dハイドロゲル構造を形成することができる。中央に印刷された細胞を有する印刷されたハイドロゲルモールドの例が、図2に示される。

細胞型:
【0103】
スフェロイドなどの3D組織培養モデルは、接着細胞、例えば::哺乳動物の肝臓細胞、胃腸細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、肺細胞、気管細胞、血管細胞、骨格筋細胞、心臓細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、結合組織細胞、角膜細胞、泌尿生殖細胞、乳房細胞、生殖細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、シュワン細胞、脂肪細胞、骨細胞、骨髄細胞、軟骨細胞、周皮細胞、中皮細胞、内分泌組織由来の細胞、間質細胞、幹細胞、前駆細胞、リンパ細胞、血液細胞、内胚葉由来細胞、外胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又はそれらの組み合わせなどの接着細胞を含む任意の適切な細胞型から調整され得る。
【0104】
追加の細胞型は、真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣)、細菌(例えば、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori))、真菌(例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum))及び酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))を含んでもよい。
【0105】
細胞株SK−N−BE(2)(神経芽細胞腫細胞)は、ある範囲の条件下で3D組織培養モデルを作成する工程において都合良く使用されて来た。他の細胞株が、開発された方法により生成された3D組織モデルにおいて、必要に応じて実施されることが予測されることは理解されるであろう。使用される他の細胞株は、以下を含む:DAOY(ヒト髄芽腫癌細胞)、H460(ヒト非小細胞肺癌)及びp53R127H(ヒト膵臓癌細胞)。適切である他の細胞株は、段落番号088及び089に列挙される。
【0106】
3Dバイオ印刷技法は、ドロップ−オン−デマンド技法を通してハイドロゲルモールドに封入される高密度3D組織培養モデルを生成するために開発された。特に、3D印刷技法は、種々の3D構造を製造するために、層ごとに構築されるバイオインク及び活性化剤を用いて生体適合性ハイドロゲルモールドを印刷するのに使用された。ハイドロゲルモールドの製造の間、高細胞密度液滴は、ハイドロゲルモールド中に含まれ得る。
【実施例】
【0107】
実施例1
材料及び方法
【0108】
以下をそのまま使用した:アルギネート(55%以上のグルロン酸含有、50,000〜80,000g / mol、FMC Biopolymer)、塩化カルシウム(Bio Reagent、Sigma Aldrich)、塩化カルシウムを含まないリン酸緩衝溶液(PBS、Gibco)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)、カルシウム非含有DMEM(Gibco)、ピルビン酸ナトリウム(Gibco)、L-グルタミン(Gibco)、ジェランガム(Sigma Aldrich)、トリプシン(Sigma Aldrich)、0.22μmシリンジフィルター(ポリエーテルスルホン膜、Merck Millipore)、T150フラスコ(Corning)、15ml遠心分離管(Corning)、エタノール(Sigma Aldrich)。組織培養培地を、10%v/vのFCSとDMEMとを混合することにより作製した。

細胞型:
【0109】
SK−NBE(2)神経芽腫細胞を使用した。

細胞培養:
【0110】
T150フラスコ中の80%の集密性での神経芽腫を、3mlのPBSにより洗浄した。過剰のPBSの吸引の後、3mlのトリプシンを添加し、そしてフラスコを37℃で5分間、インキュベートし、細胞表面から細胞を解離した。続いて、7mlの組織培地を添加し、そして解離された細胞を、15mlの管中に移した。細胞分散液を、400gで3分間、遠心分離した。上清液を捨て、そして細胞ペレットを、5mlの培地に再懸濁した。次に、細胞の計数を、等体積の細胞懸濁液及びトリパンブルー染色を混合することにより実施し、細胞濃度を決定した。

基質:
【0111】
Corning社により供給される6ウェルマイクロタイタープレートを、そのまま使用した。無菌包装を、内容物の無菌性を維持するために無菌環境下で開封した。

バイオインク:
【0112】
ピルビン酸ナトリウム(100mMで5.5ml)、FCS(44ml)及びL−グルタミン(200mMで5.5ml)を、カルシウムフリーのDMEM(500ml)に添加し、バイオインク分散体を創造した。アルギネート(0.2g)を、激しい攪拌下で、前記分散体(10ml)にゆっくり添加し、2%w/vでバイオインクを得た。次に、得られる均質溶液を、0.22μmのシリンジフィルターを通して、滅菌環境下で濾過した。

活性化剤:
【0113】
塩化カルシウム(0.4g)を、10mlのMilliQ水に溶解し、4%w/vにした。次に、その溶液を、10分間、UV滅菌し、そして滅菌環境下で0.22μmのフィルターを通して濾過した。

細胞インク:
【0114】
ジェランガム(0.05g)を、10mlの温PBSに溶解し、0.5%w/vにした。その溶液を、室温に冷却するよう、渦動した。次に、その溶液を、10分間、UV滅菌し、そして滅菌環境下で0.22μmのフィルターを通して濾過した。
【0115】
10×106個の細胞/mlでDMEMに分散された、収穫された神経芽腫細胞(5ml)を、遠心分離し、50×106個の細胞の細胞ペレットを得た。次に、得られるペレットを、細胞インク(0.2ml)に再分散し、250×106個の細胞/mlで、分散されたSK−N−BE(2)細胞を有するバイオインク溶液を得た。

細胞印刷条件:
【0116】
最初に、プリンターを、エタノール(水中、70%v/v)による拭き取りにより滅菌し、空気乾燥し、そしてバイオセーフティキャビネット内に配置した。流体ライン及び液滴分配システムをまた、エタノール、水、滅菌MilliQ水、及び組織培養培地パージを用いて、この順に滅菌した。次に、細胞を含む細胞インク、バイオインク、及び活性化剤を、それらのそれぞれのバイアルに装填した。次に、液滴分配システムを、印刷ルーチンを開始する前、流体供給ラインから空気をパージすることによりプライムした。
【0117】
各流体についての液滴分配システムは、異なるノズル直径、及びリザーバ内の供給圧力を使用した。バイオインク、活性化剤、及び細胞インク+細胞についてのノズル直径は、それぞれ、0.007”、0.003”及び0.007”であった。バイオインク、活性化剤、及び細胞インク+細胞についての供給圧力は、それぞれ、40、5及び12psiであった。
【0118】
ハイドロゲルモールドは、図2に示されるように、円筒状のパターン内にバイオインク及び活性化剤液滴の複数の層を含んでいた。ハイドロゲルモールド内の各層を、バイオインクの液滴、次に活性化剤の液滴を上部に直接又はその逆に付着させ、そしてこの工程を反復し、円筒状の構造を形成することにより印刷した。最初の2つの層の後、バイオインク又は活性化剤は、円筒構造の中心に付着させず、構造の中心で窪み又はカップを残した。この工程を、複数の続く層について反復した。細胞を含む細胞インクの1〜5つの液滴を、ハイドロゲルモールド中の中心又はカップに付着させた。最後に、ハイドロゲルの追加の層を、同じ様式で印刷し、ハイドロゲルモールド内の細胞を封入した。
【0119】
印刷が完結された後、マイクロタイタープレートを、インキュベーター(37℃及び5%CO2)に72時間、置いた。

細胞濃度:
【0120】
250×106個の細胞/mlでSK−N−BE(2)を有する細胞インクを、実験に使用した。

細胞生存性:
【0121】
95%以上か又はそれに等しい細胞生存率を得た。

実施例2
【0122】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例1に記載のようにして、それぞれ40psi、12psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のSK−N−BE(2)細胞を、1億個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷された3D細胞培養モデルの顕微鏡画像は、24、48及び120時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。

実施例3
【0123】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例1に記載のように、それぞれ40psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インクは、16.5%w/vを得るためにPBSに溶解されたフィコール(商標)(Sigma Aldrich, 1.65g)であった。細胞インク中のSK−N−BE(2)細胞を、20psiの供給圧力で、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷された3D細胞培養モデルの顕微鏡画像は、24、48及び72時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。

実施例4
【0124】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例3に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のp53R127H細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。印刷されたモデルの顕微鏡画像は、24、48及び72時間のインキュベーションの後、細胞スフェロイド形成を示した。

実施例5
【0125】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例3に記載のようにして、それぞれ40psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インクは、10%w/vを得るためにPBSに溶解されたフィコール(商標)(Sigma Aldrich, 1g)であった。細胞インク中のp53R127H細胞を、20psiの供給圧力で、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。

実施例6
【0126】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のDAOY細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。

実施例7
【0127】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のH460細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。

実施例8
【0128】
ハイドロゲルモールド又はカップを、実施例5に記載のように、それぞれ40psi、20psi及び5psiの供給圧力で、バイオインク、細胞インク及び活性化剤を用いて印刷した。細胞インク中のSKOV−3細胞を、2億5,000万個の細胞/mlの濃度でハイドロゲルカップの中心に印刷した。細胞の液滴を封入するモールドを、37℃でインキュベートし、24〜48時間のインキュベーションの後、細胞増殖及びスフェロイド形成を可能にした。

アプリケーション
3D組織培養モデルアッセイ:
【0129】
3D組織培養モデルアッセイを、マルチ−ウェルプレート、例えば96ウェルプレート中のウェルの内部に構築した。第1段階は、3D組織培養モデルを支持するであろう円筒状ハイドロゲル構造又はモールドの下半分を印刷することであった。これは、バイオインク及び活性化剤を用いたドロップ−オン−ドロップ工程を用いて達成される。次に、高密度の細胞を含む細胞リンク液滴を、図3に示されるように、円筒状ハイドロゲル構造の中心に印刷する。次いで、3D組織培養モデルを、バイオインク及び活性化剤を用いたドロップ−オン−ドロップ工程を用いて、さらに印刷することにより、ハイドロゲルに封入した。最後に、ウェル上の印刷工程を、薬物又は他の試験剤(50、100、150又は200μl)を含む増殖培地を置くことにより終了する。

インビトロアプリケーション:
【0130】
以下の生物学的表現型の試験は以下を含む(但し、それらだけには制限されない):細胞運動、細胞遊走、細胞浸潤、経内皮遊走、上皮−間葉移行、間葉−上皮移行、スフェロイド形成及び成長、細胞分化(より具体的には幹細胞分化、細胞分化マーカーのモニタリング)、細胞死(より具体的には細胞アポトーシス;細胞壊死)、細胞オートファジー、細胞増殖、細胞代謝、タンパク質の代謝回転、タンパク質の分布及び位置、細胞シグナル伝達及び下流事象、薬物効力、薬物薬力学、作用の薬物メカニズム、薬物受容体媒介輸送、薬物インターナリゼーションのメカニズム、バイオマーカー評価、細胞−細胞接合、細胞−細胞のシグナル伝達及び下流事象、細胞形態、細胞接着、遺伝子発現、タンパク質発現、細胞ホーミング、細胞周期調節及び制御、サイトカイン放出、インスリン産生、タンパク質分泌及び細胞内輸送(trafficking)および輸送(transport)、受容体−リガンド結合、抗体結合、抗体特異性、タンパク質リン酸化、プロテオソーム機能、酵素機能(より特異的には酵素阻害)、免疫調節、クローン原性、酸化的ストレス、タンパク質フォールディング、細胞細胞骨格、オルガネラの形態学及び機能(より具体的には、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム、分泌小胞、液胞、リボソーム、核、リソソーム、繊毛、小胞体、ゴルジ体)、膜輸送、低酸素症、血管新生、創傷治癒、神経突起(伸長または形成)、ホスファターゼ機能、ラメリポダイアル形成(lamellipodial formation)及び動態; 接着点(focal contact)/接着斑(focal adhesion)形成、動態及びシグナル伝達; 細胞感知、メカノトランスダクション。
【0131】
細胞に送達されるか、又は投与され得る物質のリストは、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:薬物、治療剤、抗体、小分子阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、抗原、病原体、血小板、増殖因子、サイトカイン、アミノ酸、栄養素(単糖類及び多糖類)、馴化培地、抗生物質、抗ウイルス剤、ナノ粒子、RNA及び関連する変異体(例えば、siRNA、miRNAなど)。

印刷構造型:
【0132】
細胞を含まない領域、及び少なくとも1つのスフェロイドを含む少なくとも1つの領域から部分的に構成される構造の印刷。
【0133】
少なくとも2つのスフェロイドを含む構造の印刷であって、ここで異なるスフェロイドは、同じか又は異なる細胞型から構成され得る。
【0134】
隣接するスフェロイドを含む構造の印刷であって、ここで隣接するスフェロイドは、同じか又は異なる細胞型であり得る。
【0135】
上記に列挙される物質の少なくとも1つを含む構造の印刷。
【0136】
広範に記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、本発明に対して多くの変更及び/又は修飾を行うことができることは、当業者に理解されるであろう。従って、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとしてみなされるべきである。
【0137】
参考文献
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図1
図2
図3