【文献】
高村 祐史 Yuji Takamura,クラウドコンピューティングがもたらす情報システムの革新,日立評論 第91巻 第7号 HITACHI HYORON,日立評論社,2009年 7月 1日,第91巻,P.34-37
【文献】
キャリアクラウドの利便性を高めるネットワークのさらなる価値向上を図るNTTコミュニケーションズ,BUSINESS COMMUNICATION 第51巻 第6号,日本,株式会社ビジネスコミュニケーション社,2014年 6月 1日,第51巻,P.60-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態の概要>
本発明の実施形態による通信システムでは、仮想移動体通信事業者(以下、MVNOと記す。)が自社のデータセンタ内に仮想コアネットワークを構築し、移動体通信事業者(以下、MNOと記す。)が保有する無線通信設備を利用して移動体通信ネットワーク機能を実現する。
【0012】
本発明の一実施形態によるデータセンタでは、その内部に構築された仮想コアネットワークが複数のMNOの無線通信設備からのトラフィックを処理することができる。また本発明の他の実施形態によるデータセンタでは、その内部に仮想コアネットワークとクラウドサービスを提供する別の仮想ネットワークとが独立に構築され、複数のMNOの無線通信設備からのトラフィックは仮想コアネットワークへ、クラウドサービスを利用するユーザのトラフィックは別の仮想ネットワークへ、それぞれ振り分けられる。本発明のさらに別の実施形態によるデータセンタでは、その内部に複数の異なるMVNO事業者の仮想ネットワークが独立に構築され、各MVNO事業者の加入者からのトラフィックがそれぞれ対応する仮想ネットワークに振り分けられる。以下、本発明の実施形態および実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態によれば、データセンタ内に仮想コアネットワークが構築され、データセンタ内の仮想コアネットワークが複数のMNOにより提供される無線通信設備からのトラフィックを処理するように通信制御を行うことで仮想コアネットワークの汎用性を高めることができる。
【0014】
1.1)システム
図2に例示するように、本実施形態による通信システムは、複数の無線通信設備(10A、10B)と、データセンタ20と、複数の無線通信設備とデータセンタ20とを接続するネットワーク30と、を有する。
図2では、異なるMNO(A)およびMNO(B)が無線通信設備10Aおよび10Bをそれぞれ保有し、MVNOがデータセンタ20を保有するものとする。
【0015】
無線通信設備10Aは、MNO(A)が保有する移動体通信ネットワークのアクセスネットワーク部の一部であり、少なくとも基地局101およびゲートウェイ102を含むものとする。ここでは一つの基地局101が図示されているが、複数の基地局101からなるアクセスネットワーク(たとえば、eUTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Network))を構成してもよい。なお、MNO(A)がコアネットワークを保有する場合には、端末Aからのアクセスがゲートウェイ102によりオフロードされ、MNO(A)のコアネットワークを経由しないものとする。基地局101はMNO(A)の加入者端末Aと無線通信を行い、ゲートウェイ102はネットワーク30を通してデータセンタ20に接続する。無線通信設備10Bも基本的に同様の構成を有するものとする。また、MVNOの加入者端末(端末C)がMNOの無線通信設備を利用してネットワーク30経由でデータセンタ20に接続することもできる。
【0016】
データセンタ20はコンピュータ等の計算資源を有し、コアネットワーク機能を実現する仮想ネットワーク201と、ネットワーク30に接続するゲートウェイ202と、が構築されている。ゲートウェイ202は各無線通信設備のゲートウェイ102との間で専用の物理チャネルあるいはネットワーク30を通る保護された論理チャネルを形成することが望ましい。これによって、各無線通信設備の基地局と仮想ネットワーク201とを接続することができ、仮想ネットワーク201が異なるMNOの無線アクセスネットワークを収容することが可能となる。なお、仮想ネットワーク201は、例えば物理サーバ上に設定された仮想マシン、スイッチ、ルータ等のリソースを用いて構築されうる。
【0017】
ネットワーク30は、無線通信設備10A、10Bおよびその他無線通信設備をデータセンタ20に接続するインターネット等のIPネットワーク、RAN(Radio Access Network)、物理的に他のネットワークと隔離された専用線等である。また仮想ネットワーク201に接続されたネットワーク40は、外部のパケットネットワークあるいはインターネット等のIPネットワークである。
【0018】
1.2)データセンタ
次に、仮想ネットワーク201に異なるMNOの無線アクセスネットワークを収容するデータセンタ20について説明する。ただし、
図2に示した通信システムと同様の機能を有するブロックには同一の参照番号を付して詳細な説明は省略する。
【0019】
<第1実施例>
図3に例示するように、本発明の第1実施例による通信システムでは、クラウド事業者(MVNO)のデータセンタ20内に仮想コアネットワーク(vEPC)201が構築され、vEPC201の前段に、すなわちvEPC201のS−GWとゲートウェイ202との間に、各端末のベアラを終端する端末ベアラ終端部203が設けられている。
【0020】
vEPC201は、例えば、データセンタ20内のサーバ上の仮想マシンにおいて、アプライアンス単位又は各アプライアンスが有する個別の機能単位で実現される。これらの機能としては、たとえば以下のものがある。
【0021】
HSS(Home Subscriber Server):
通信システムの加入者情報を管理する機能。
RADIUS(Remote Authorization Dial In Service):
・ネットワークにアクセスするユーザを認証する機能(Authentication機能)。
・認証したユーザに対して、アクセス許可を与える機能(Authorization機能)。
・課金管理のため、アクセスを監視する機能(Accounting機能)。
P−GW:
・パケットを処理する機能(User−Plane機能)
・通信に応じた課金状態を管理する機能(PCEF:Policy and Charging Enforcement Function)
・QoS(Quality of Service)等のポリシを制御する機能(PCRF:Policy and Charging Rule Function)
・LI機能
S−GW:
・パケットを処理する機能(User−Plane機能)
・制御シグナリングを処理する機能(C−Plane機能)
MME(Mobility Management Entity):
・制御シグナリングを処理する機能(C−Plane機能):例えば、通信用のセッションの設定・解放、ハンドオーバーの制御等
・HSS(Home Subscriber Server)と連携して、通信システムの加入者情報を管理する機能。
【0022】
たとえば端末A(端末B、Cでも同様)は、当該端末が加入しているキャリアA(MNO(A))の基地局101と無線接続し、クラウド事業者のデータセンタ20内に構築されたvEPC201を経由してインターネット40にアクセスすることができる。E−UTRANを用いたEPS(Evolved Packet System)である場合、端末Aは、接続した基地局(eNodeB)101を通してvEPC201との間でベアラ(仮想パス)を確立してパケット通信を行うが、本実施例では、端末AとvEPC201の前段に配置された端末ベアラ終端部203との間でベアラを終端し、端末との間のトラフィックをエンド・ツー・エンドで保護する。ベアラはパケットをカプセル化して提供されるので、端末ベアラ終端部203はパケットのアウタヘッダにより各キャリアのアクセスネットワークを識別可能である。以下、第1実施例の動作について
図4を参照しながら説明する。
【0023】
図4において、端末Aは、加入しているキャリアA(MNO(A))が提供する設備(基地局およびGW)を通して、データセンタ20内のvEPC201に対してベアラ接続要求を送信すると(動作S301a)、vEPC201の前段に設けられた端末ベアラ終端部203が終端し、端末Aと端末ベアラ終端部203との間でベアラ設定処理が行われる(動作S302a)。端末ベアラ終端部203からベアラ接続応答が端末Aへ送信されると(動作S303a)、端末Aと端末ベアラ終端部203との間にベアラが確立し、当該ベアラを通して端末AとvEPC201との間で規定された信号のやりとりが行われる(動作S304a)。端末Bも同様に、加入しているキャリアB(MNO(B))が提供する設備(基地局およびGW)を通して、ベアラ接続要求の送信(動作S301b)、端末ベアラ終端部203との間のベアラ設定処理(動作S302b)、端末ベアラ終端部203からのベアラ接続応答の送信(動作S303a)、端末Bと端末ベアラ終端部203との間のベアラを通したvEPC201との間の規定された信号のやりとり(動作S304b)がそれぞれ実行される。このように、端末ベアラ終端部203は、各キャリアに加入した各端末との間のベアラを識別することができ、設定されたベアラによりそれぞれのキャリアトラフィックが保護される。
【0024】
なお、端末ベアラ終端部203は、ゲートウェイ202あるいはvEPC201の内部に設けられてもよい。
【0025】
<第2実施例>
図5に例示するように、本発明の第2実施例による通信システムでは、クラウド事業者(MVNO)のデータセンタ20内に仮想コアネットワーク(vEPC)201が構築され、さらにネットワーク30を通して各キャリアの保有設備との間に設定された仮想パス(トンネル)を終端する機能が設けられている。本実施例によれば、ゲートウェイ202にトンネル終端部2021およびゲートウェイ処理部2022が設けられている。
【0026】
トンネル終端部2021は、キャリアAが保有する無線通信設備10Aとの間のトンネル301と、キャリアBが保有する無線通信設備10Bとの間のトンネル302と、をそれぞれ終端する。なお、クラウド事業者が保有する他の無線通信設備があれば、トンネル終端部2021は、その無線通信設備との間のトンネルを終端してもよい。したがって、ゲートウェイ処理部2022は、各無線アクセスネットワークからのパケットを識別して、それぞれvEPC201へ転送することができる。このように端末との間のトラフィックがトンネルにより保護される。なお、vEPC201については、第1実施例で説明した通りである。
【0027】
<第3実施例>
図6に例示するように、データセンタ20を保有するクラウド事業者(MVNO)が基地局等の無線設備11を保有してもよい。たとえば、MVNOの保有設備11は、MNOが提供する設備10Aあるいは10Bと同様に基地局およびゲートウェイGWを有する。MVNOに加入している端末Cは、無線設備11を通してデータセンタ20にアクセス可能である。なお、第3実施例は上述した第1あるいは第2実施例と組み合わせることができる。すなわち、第1実施例と同様に、仮想ネットワーク201の前段に端末ベアラ終端部203を設けてもよいし、第2実施例と同様に、GW202にトンネル終端部2021を設けてもよい。
【0028】
1.3)効果
上述したように、本発明の第1実施形態によれば、データセンタ内に構築された仮想コアネットワークが複数のMNOにより提供される無線アクセス設備からのトラフィックを識別可能に処理できるので、異なるMNOの無線アクセスネットワークに対応した汎用性の高いデータセンタを実現でき、仮想コアネットワークの効率的利用が可能となる。
【0029】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態によれば、データセンタ内に、キャリア向けの仮想コアネットワークと、ユーザにクラウドサービスを提供する仮想ネットワークと、が独立に構築される。さらにデータセンタ内に振分手段が設けられ、トラフィックを仮想コアネットワークあるいは仮想ネットワークのいずれかに振り分けることで、データセンタの汎用性が向上する。
【0030】
2.1)システム
図7に例示するように、本実施形態による通信システムは、複数の無線通信設備(10A、10B)と、仮想アプリケーションユーザの端末を接続したネットワーク設備12と、データセンタ21と、複数の無線通信設備およびネットワーク設備12とデータセンタ21とを接続するネットワーク30と、を有する。ここでは、異なるMNO(A)およびMNO(B)が無線通信設備10Aおよび10Bをそれぞれ保有し、別の通信事業者(C社)がネットワーク設備12を保有し、MVNOがデータセンタ21を保有するものとする。なお、第1実施形態と同様に、MVNO自身が保有する無線通信設備11をネットワーク30経由でデータセンタ21に接続してもよい。
【0031】
無線通信設備10Aは、MNO(A)が保有する移動体通信ネットワークのアクセスネットワーク部の一部であり、少なくとも基地局101およびゲートウェイ102を含むものとする。ここでは一つの基地局101が図示されているが、複数の基地局101からなるアクセスネットワーク(たとえば、eUTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Network)を構成してもよい。また、MNO(A)はコアネットワークEPC(A)も保有し、ここでは端末Aからのアクセスをゲートウェイ102によりオフロードすることもできるし、MNO(A)のコアネットワークEPC(A)を経由してデータセンタ21へ転送することもできる。基地局101はMNO(A)の加入者端末Aと無線通信を行い、ゲートウェイ102はネットワーク30を通してデータセンタ21に接続する。無線通信設備10Bも基本的に同様の構成を有するものとする。
【0032】
C社が保有するネットワーク設備12は、端末103をネットワーク30に接続させることができる。後述するように、端末103はネットワーク30を通してデータセンタ21に接続しクラウドサービスを受けることが可能となる。
【0033】
データセンタ21はコンピュータ等の計算資源を有し、ゲートウェイ210によりネットワーク30に接続され、さらにゲートウェイ210に接続された複数の仮想ネットワークが互いに独立に構築されている。ここでは、仮想ネットワーク211がコアネットワーク機能を実現する仮想コアネットワークであり、仮想ネットワーク212がクラウド向けの企業ネットワークである。仮想ネットワーク212は企業ユーザごとに設けられる。なお、仮想コアネットワーク211および仮想ネットワーク212は、例えば物理サーバ上に設定された仮想マシン、スイッチ、ルータ等のリソースを用いて構築されうる。
【0034】
ゲートウェイ210は各無線通信設備のゲートウェイ102との間で専用の物理チャネルあるいはネットワーク30を通る保護された論理チャネルを形成することが望ましい。これによって、各無線通信設備の基地局と仮想ネットワーク211あるいは212とを接続することができ、仮想ネットワーク211が異なるMNOの無線アクセスネットワークを収容することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、端末103のユーザは仮想ネットワーク212が提供するクラウドサービスの契約をしているものとし、これによって、端末103はネットワーク設備12およびネットワーク30を通してクラウド向けの仮想ネットワーク212にアクセス可能である。たとえば、端末103のユーザがMNO(A)の加入者であれば、端末103は無線通信設備10Aを通して仮想ネットワーク212にアクセスするができ、あるいは仮想ネットワーク211に接続しネットワーク40を経由して仮想ネットワーク212にアクセスすることも可能である。
【0036】
ネットワーク30は、無線通信設備10A、10Bおよびネットワーク設備12をデータセンタ21に接続するインターネット等のIPネットワーク、RAN(Radio Access Network)等である。また仮想ネットワーク211および212に接続されたネットワーク40は、外部のパケットネットワークあるいはインターネット等のIPネットワークである。
【0037】
2.2)データセンタ
次に、仮想ネットワーク211としてキャリア向けの仮想コアネットワーク(vEPC)と、仮想ネットワーク212としてIaaS、PaaS等のクラウドサービスを提供する企業ネットワークとがデータセンタ内に構築されたシステムを一例として説明する。
【0038】
<第4実施例>
図8に例示するように、本発明の第4実施例による通信システムでは、クラウド事業者(MVNO)のデータセンタ21内にvEPC211とクラウド212とが構築され、vEPC211およびクラウド212は外部ネットワーク40に接続されるとともに、ゲートウェイ210によってネットワーク30に接続されている。vEPC211およびクラウド212は、MVNOが保有するデータセンタ21内の計算リソース(物理サーバ、仮想サーバ、仮想マシン等)上で動作する。
【0039】
ゲートウェイ210はゲートウェイ処理部2101と振分部2102とを有し、振分部2102がキャリアのトラフィックとクラウドユーザのトラフィックとをそれぞれvEPC211あるいはクラウド212に振り分ける。振分部2102によるトラフィックの振分は、送信元のネットワークID、宛先および/または上述したベアラあるいはトンネルの識別に基づいて、ネットワーク単位あるいは通信設備単位で行うことができる。たとえば、ネットワークIDあるいはトンネルの識別は、パケットの一部、パケットに含まれるネットワーク、ユーザ、サービス等を示す識別子、あるいは入力ポート番号を参照することで行うことができる。以下、第4実施例の動作について
図9および
図10を参照しながら説明する。
【0040】
図9において、キャリアAが提供する無線通信設備10Aには、上述したように基地局101およびゲートウェイ102が設けられ、ゲートウェイ101がデータセンタ21のゲートウェイ210との間のトンネルを終端する。ゲートウェイ210には上述したようにゲートウェイ処理部2101と振分部2102とが設けられているものとする。また、キャリアAはコアネットワークEPC(A)も保有し、ここでは端末Aからのアクセスをゲートウェイ102によりオフロードすることもできるし、キャリアAのコアネットワークEPC(A)を経由してデータセンタ21へ転送することもできる。
【0041】
図9に例示するように、キャリア提供設備10Aのゲートウェイ102とデータセンタ21のゲートウェイ210との間に所定の手順によりトンネルが設定されると(動作S401〜S403)、端末Aは、当該トンネルを通して、データセンタ21内のvEPC211あるいはクラウド212にアクセス可能となる。
【0042】
たとえば、ゲートウェイ102によりオフロードされたキャリア向けトラフィックは、ゲートウェイ210の振分部2102によりvEPC211へ振り分けられる(動作S410)。また、端末Aからのキャリア向けトラフィックがクラウド212を宛先とし、キャリアAのコアネットワークEPC(A)を経由した場合には、ゲートウェイ210の振分部2102は当該トラフィックを宛先であるクラウド212へ直接振り分ける(動作S411)。
【0043】
また、vEPC211がコアネットワークEPC(A)の一部の機能だけを構築し、残りの機能についてはコアネットワークEPC(A)を利用することも可能である。たとえば、端末Aからのキャリア向けトラフィックがキャリアAのコアネットワークEPC(A)の一部の機能を経由した場合には、ゲートウェイ210の振分部2102は、当該キャリア向けトラフィックをvEPC211へ振り分けることで、残りのEPC機能を経由させ、ネットワーク40へ送付することが可能となる(動作S412)。
【0044】
図10に例示するように、C社が保有するネットワーク設備12によりネットワーク30に接続した端末103とデータセンタ21のゲートウェイ210との間に所定の手順によりトンネルが設定されると(動作S501〜S503)、端末103は、当該トンネルを通して、データセンタ21内のvEPC211経由で、あるいは直接に、クラウド212にアクセス可能となる。
【0045】
たとえば、クラウド向けトラフィックは、ゲートウェイ210の振分部2102によりクラウド212へ直接振り分けられる(動作S510)。また、EPC経由でクラウド212へアクセスする場合、クラウド向けトラフィックは、ゲートウェイ210の振分部2102によりvEPC211へ振り分けられ(動作S511)、vEPC211からネットワーク40を通してクラウド212へ転送される(動作S512)。
【0046】
次に、
図8に示すシステムにおけるトラフィックの経路の例を
図11および
図12を参照しながら説明する。
【0047】
図11には本実施例におけるトラフィックの経路がいくつか例示されている。端末Aからのトラフィックがゲートウェイ102でオフロードされた場合、当該トラフィックは経路401を通してデータセンタ21のvEPC211へ転送される。たとえば、振分部2102は、トラフィックの送信元がキャリアAの無線アクセスネットワークであれば、当該トラフィックをvEPC211へ転送する。
【0048】
また、端末Aからクラウド212へのトラフィックがオフロードされずにキャリアAのEPC(A)へ転送された場合、当該トラフィックは経路402を通してデータセンタ21のクラウド212へ転送される。たとえば、振分部2102は、トラフィックの送信元がキャリアAのEPC(A)であり、宛先がクラウド212であれば、当該トラフィックをクラウド212へ転送する。
【0049】
なお、宛先がクラウド212のトラフィックがゲートウェイ102でオフロードされた場合には、当該トラフィックは経路401を通してデータセンタ21のvEPC211へ転送され、ネットワーク40を通してクラウド212へ転送される。
【0050】
また、C社が保有するネットワーク設備12を用いてクラウドユーザの端末103がクラウド212へアクセスする場合、端末103からのトラフィックは経路403を通してデータセンタ21のクラウド212へ転送される。たとえば、振分部2102は、トラフィックの送信元がC社ネットワーク12であり、宛先がクラウド212であれば、当該トラフィックをクラウド212へ転送する。
【0051】
また、
図12に示す経路404のように、EPC(A)とvEPC211の両方を経由することもできる。この場合、データセンタ21のvEPC211がEPCを構築する一部の機能のみを有し、残りの機能についてはキャリアAのEPC(A)の機能を仮想的に使用する。例えば、vEPC211がP−GW機能、HSS機能のみを有する場合には、EPC(A)のS−GWまでの機能を利用する。あるいは、vEPC211が課金機能および顧客情報・認証機能のみを有する場合には、EPC(A)のS−GW、P−GWおよびHSSを使用する。このように、キャリアAが保有するEPC(A)とデータセンタ21内のvEPC211の両方を経由してコアネットワークの機能を実現する構成も可能である。この場合、EPC(A)は、MNOであるキャリアAとMVNOであるクラウド事業者とにより共有され、ネットワークを通して物理的あるいは仮想的に分離して使用される。
【0052】
なお、第4実施例において、
図3に示す第1実施例と同様に、データセンタ21にベアラ終端部を設けてもよい。あるいは
図4に示す第2実施例と同様にゲートウェイ210にトンネル終端部を設けることもできる。
【0053】
2.3)効果
上述したように、本発明の第2実施形態によれば、データセンタ内に、キャリア向けの仮想コアネットワークと、ユーザにクラウドサービスを提供する仮想ネットワークと、が独立に構築され、トラフィックを仮想コアネットワークあるいは仮想ネットワークのいずれかに振り分けることでデータセンタの汎用性を向上させることができ、仮想ネットワークの効率的利用が可能となる。
【0054】
3.第3実施形態
本発明の第3実施形態によれば、データセンタ内に、複数の異なるMVNO事業者の仮想ネットワークが互いに独立に構築される。さらにデータセンタ内に振分手段が設けられ、各MVNO事業者の加入者端末からのトラフィックは、それぞれ対応する仮想ネットワークに振り分けられる。
【0055】
図13に例示するように、本実施形態による通信システムは、無線通信設備10Aと、データセンタ22と、無線通信設備10Aとデータセンタ22とを接続するネットワーク30と、を有する。ここでは、MNO事業者Aが無線通信設備10Aを保有し、MVNOがデータセンタ22を保有するものとする。
【0056】
無線通信設備10Aは、MNO(A)が保有する移動体通信ネットワークのアクセスネットワーク部の一部であり、少なくとも基地局101およびゲートウェイ102を含むものとする。ここでは一つの基地局101が図示されているが、複数の基地局101からなるアクセスネットワーク(たとえば、eUTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Network))を構成してもよい。また、MNO(A)はコアネットワークEPC(A)も保有し、ここでは端末Aからのアクセスをゲートウェイ102によりオフロードすることもできるし、MNO(A)のコアネットワークEPC(A)を経由してデータセンタ22へ転送することもできる。基地局101は、MNO(A)の加入者端末あるいは無線通信設備10Aの使用契約を締結したMVNO事業者の加入者端末と無線通信を行い、ゲートウェイ102はネットワーク30を通してデータセンタ22に接続する。
【0057】
データセンタ22はコンピュータ等の計算資源を有し、ゲートウェイ220によりネットワーク30に接続され、さらにゲートウェイ220に接続された複数の仮想ネットワーク(221、222・・・)が互いに独立に構築されている。ここでは、仮想ネットワーク221および222がMVNO事業者BおよびCによりそれぞれ運用され、MVNO事業者BおよびCが外部の管理端末51および52を通して仮想コアネットワーク221および222をそれぞれ管理するものとする。なお、データセンタ22内の各仮想ネットワーク(221、222)は、例えば物理サーバ上に設定された仮想マシン、スイッチ、ルータ等のリソースを用いて構築されうる。
【0058】
ゲートウェイ220は無線通信設備10Aのゲートウェイ102との間で専用の物理チャネルあるいはネットワーク30を通る保護された論理チャネルを形成することが望ましい。これによって、複数の無線通信設備の各基地局と仮想ネットワーク221あるいは222とを独立に接続することができ、たとえば仮想ネットワーク221あるいは222が異なるMNOの無線アクセスネットワークを収容することが可能となる。
【0059】
ネットワーク30は、無線通信設備10Aをデータセンタ22に接続するインターネット等のIPネットワーク、RAN(Radio Access Network)等である。また仮想ネットワーク221および222に接続されたネットワーク40は、外部のパケットネットワークあるいはインターネット等のIPネットワークである。
【0060】
<第5実施例>
次に、無線通信設備10AがMNO事業者(キャリア)Aにより保有され、データセンタ22内にMVNO事業者Bの仮想コアネットワークvEPC(B)221とMVNO事業者Cの仮想コアネットワークvEPC(C)222とが構築されたシステムを一例として説明する。
【0061】
図14に例示するように、本発明の第5実施例による通信システムでは、クラウド事業者(MVNO)のデータセンタ22内にvEPC(B)221とvEPC(C)222とが構築されている。vEPC(B)221およびvEPC(C)222は、MVNOが保有するデータセンタ22内の計算リソース(物理サーバ、仮想サーバ、仮想マシン等)上で動作する。vEPC(B)221およびvEPC(C)222は外部ネットワーク40に接続されるとともに、ゲートウェイ220を通してネットワーク30に接続されている。
【0062】
本実施例において、vEPC(B)221は、キャリアAのコアネットワークEPC(A)の一部の機能だけを構築し、残りの機能についてはコアネットワークEPC(A)を利用するものとする。同様に、vEPC(C)222も、キャリアAのコアネットワークEPC(A)の一部の機能だけを構築し、残りの機能についてはコアネットワークEPC(A)を利用するものとする。ただし、すでに述べたように、vEPC(B)221およびvEPC(C)222の一方あるいは両方がコアネットワークEPC(A)のすべての機能を有する仮想コアネットワークであってもよい。
【0063】
ゲートウェイ220はゲートウェイ処理部2201と振分部2202とを有し、振分部2202が端末からのトラフィックを当該トラフィックに対応するvEPC221あるいはvEPC222に振り分ける。振分部2202によるトラフィックの振分は、送信元のネットワークID、宛先および/または上述したベアラあるいはトンネルの識別に基づいて、ネットワーク単位あるいは通信設備単位で行うことができる。たとえば、ネットワークIDあるいはトンネルの識別は、パケットの一部、パケットに含まれるネットワーク、ユーザ、サービス等を示す識別子、あるいは入力ポート番号を参照することで行うことができる。以下、第5実施例の動作について
図15および
図16を参照しながら説明する。
【0064】
図15に例示されるように、MVNO事業者Bの加入者端末103Bからのトラフィックは、キャリアAのEPC(A)を通してデータセンタ22へ転送され、ゲートウェイ220の振分部2202によりvEPC(B)221へ振り分けられる。また、MVNO事業者Cの加入者端末103Cからのトラフィックは、キャリアAのEPC(A)を通してデータセンタ22へ転送され、ゲートウェイ220の振分部2202によりvEPC(C)222へ振り分けられる。たとえば、振分部2202は、キャリアAの無線通信設備10Aとのトンネルを経由したトラフィックであって、その送信元が端末103Bであり宛先がネットワーク40であれば、当該トラフィックをvEPC(B)221へ転送する。なお、ゲートウェイ102でオフロードされ、EPC(A)を経由しないトラフィックであっても、データセンタ22内の対応するvEPCへ同様に転送される。
【0065】
図16において、キャリアAが提供する無線通信設備10Aには、上述したように基地局101、ゲートウェイ102およびEPC(A)が設けられ、ゲートウェイ101がデータセンタ22のゲートウェイ220との間のトンネルを終端する。ゲートウェイ220には上述したようにゲートウェイ処理部2201と振分部2202とが設けられているものとする。また、キャリアAはコアネットワークEPC(A)も保有し、ここでは端末AからのアクセスがキャリアAのコアネットワークEPC(A)を経由してデータセンタ22へ転送されるものとする。
【0066】
図16に例示するように、キャリア提供設備10Aのゲートウェイ102とデータセンタ22のゲートウェイ210との間に所定の手順によりトンネルが設定されると(動作S601〜S603)、端末103Bおよび103Cの各々は、当該トンネルを通して、データセンタ22内のvEPC(B)221あるいはvEPC(C)222にアクセス可能となる(動作S604、S605)。
【0067】
端末103Bからのキャリア向けトラフィックがキャリアAのコアネットワークEPC(A)の一部の機能を経由した場合には、ゲートウェイ220の振分部2202は、当該キャリア向けトラフィックをvEPC(B)221へ振り分けることで、残りのEPC機能を経由させることができ、ネットワーク40へ送付することが可能となる。同様に、端末103Cからのキャリア向けトラフィックがキャリアAのコアネットワークEPC(A)の一部の機能を経由した場合には、ゲートウェイ220の振分部2202は、当該キャリア向けトラフィックをvEPC(C)222へ振り分けることで、残りのEPC機能を経由させることができ、ネットワーク40へ送付することが可能となる。
【0068】
たとえば、データセンタ22のvEPC(B)221がEPCを構築する一部の機能のみを有する場合には、残りの機能についてはキャリアAのEPC(A)の機能を仮想的に使用する。一例として、vEPC221がP−GW機能、HSS機能のみを有する場合には、EPC(A)のS−GWまでの機能を利用する。あるいは、vEPC221が課金機能および顧客情報・認証機能のみを有する場合には、EPC(A)のS−GW、P−GWおよびHSSを使用する。このように、キャリアAが保有するEPC(A)とデータセンタ22内のvEPC221の両方を経由してコアネットワークの機能を実現する。この場合、EPC(A)は、MNOであるキャリアAとMVNOであるクラウド事業者とにより共有され、ネットワークを通して物理的あるいは仮想的に分離して使用される。キャリアAのEPC(A)とvEPC(C)222とについても同様である。
【0069】
なお、第5実施例において、
図3に示す第1実施例と同様に、データセンタ22にベアラ終端部を設けてもよい。あるいは
図4に示す第2実施例と同様にゲートウェイ220にトンネル終端部を設けることもできる。
【0070】
<第6実施例>
本発明の第6実施例によれば、第5実施例と同様にデータセンタ内に複数の仮想コアネットワークが構築されているが、各仮想コアネットワークが複数のMNO事業者の提供設備を利用可能である。すなわち、データセンタ内の各仮想コアネットワークが複数のMNO通信設備からのトラフィックを処理することができる。
【0071】
図17に例示するように、第6実施例による通信システムは、異なるMNO事業者AおよびDがそれぞれ保有する無線通信設備10Aおよび10Dと、データセンタ22と、ネットワーク30と、を含む。MVNOが保有するデータセンタ22は第5実施例と同様であるから、各ブロックに同一参照番号を付して詳細な説明は省略する。以下、
図18を参照して第6実施例による通信システムの動作について説明する。
【0072】
図18において、MNO事業者Aの提供設備10Aには、上述したように基地局101およびゲートウェイ102が設けられ、データセンタ22のゲートウェイ220には上述したようにゲートウェイ処理部2201と振分部2202とが設けられているものとする。また、MNO事業者AはコアネットワークEPC(A)を保有し、上述したように、コアネットワークEPC(A)の一部の機能だけがデータセンタ22のvEPC(B)221およびvEPC(C)222の各々に構築されているものとする。
【0073】
図18に例示するように、キャリア提供設備10Aのゲートウェイ102とデータセンタ22のゲートウェイ220との間に所定の手順によりトンネルが設定されると(動作S701〜S703)、端末103Bからのキャリア向けトラフィックは、コアネットワークEPC(A)の一部の機能を経由し、トンネルを通してデータセンタ22のゲートウェイ220へ転送される。ゲートウェイ220の振分部2102は、送信元アドレスあるいはネットワークID等から当該キャリア向けトラフィックをvEPC(B)221へ振り分ける(動作S704)。これにより、端末103Bからのトラフィックは、コアネットワークEPC(A)でのEPC機能とvEPC(B)221でのEPC機能とを経由し、ネットワーク40へ送付される。
【0074】
同様に、端末103Cからのトラフィックも、キャリア提供設備10Dのゲートウェイ102とデータセンタ22のゲートウェイ220との間に所定の手順によりトンネルが設定されると(動作S801〜S803)、コアネットワークEPC(D)の一部の機能を経由し、トンネルを通してデータセンタ22のゲートウェイ220へ転送され、vEPC(C)222へ振り分ける(動作S804)。これにより、端末103Cからのトラフィックは、コアネットワークEPC(C)でのEPC機能とvEPC(C)222でのEPC機能とを経由し、ネットワーク40へ送付される。
【0075】
上述したように、本発明の第3実施形態によれば、データセンタ内に、複数の異なるMVNO事業者の仮想ネットワークがそれぞれ独立に構築され、各MVNO事業者の加入者端末からのトラフィックがそれぞれ対応する仮想ネットワークに振り分けられることで、データセンタの汎用性を向上させることができ、仮想ネットワークの効率的利用が可能となる。
【0076】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態によれば、第2実施形態と同様にデータセンタ内に複数のMVNO事業者の仮想ネットワークが構築され、そのうちの一つのMVNO事業者の仮想ネットワークリソース内にさらに別のMVNO事業者の仮想ネットワークが構築される。言い換えれば、データセンタ内に仮想ネットワークリソースを有するMVNO事業者がその一部を他のMVNO事業者の仮想ネットワークのために貸し出すことで、データセンタのより多様で効率的な利用形態が可能となる。
【0077】
図19に例示するように、本実施形態による通信システムでは、クラウド事業者(MVNO)のデータセンタ23内にクラウド231と他のMVNO事業者Bの仮想ネットワーク232とが構築され、クラウド231と仮想ネットワーク232とは外部ネットワーク40に接続されるとともに、ゲートウェイ230によってネットワーク30に接続されている。クラウド231および仮想ネットワーク232は、MVNOが保有するデータセンタ23内の計算リソース(物理サーバ、仮想サーバ、仮想マシン等)上で動作する。
【0078】
ゲートウェイ230は、第4実施例(
図8)で述べたように、ゲートウェイ処理部2101および振分部2102と同様の機能を有し、振分部がキャリアのトラフィックとクラウドユーザのトラフィックとをそれぞれクラウド231あるいは仮想ネットワーク232に振り分ける。振分部によるトラフィックの振分は、送信元のネットワークID、宛先および/または上述したベアラあるいはトンネルの識別に基づいて、ネットワーク単位あるいは通信設備単位で行うことができる。たとえば、ネットワークIDあるいはトンネルの識別は、パケットの一部、パケットに含まれるネットワーク、ユーザ、サービス等を示す識別子、あるいは入力ポート番号を参照することで行うことができる。
【0079】
本実施形態によれば、さらにMVNO(B)の仮想ネットワーク232に、ゲートウェイ240と、当該MVNO(B)の仮想ネットワークであるvEPC(B)241と、他のMVNO事業者Cの仮想ネットワークであるvEPC(C)242とが構築されている。言い換えれば、MVNO(B)のネットワーク232は、vEPC(B)241とvEPC(C)242とが物理的あるいは仮想的に分離されることで、MVNO(B)およびMVNO(C)により共有されている。したがって、本実施形態では、MVNO(C)からみると、MNO(A)の設備10AはMVNO(B)の仲介により使用可能となる。なお、仮想ネットワーク232内の構成および動作については、第6実施例で説明したとおりであるから詳細は省略する。