特許第6792216号(P6792216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6792216-括り罠用トリガー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792216
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】括り罠用トリガー装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A01M23/34
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-195307(P2016-195307)
(22)【出願日】2016年10月1日
(65)【公開番号】特開2018-57289(P2018-57289A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】506195354
【氏名又は名称】株式会社マツダコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀人
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3177399(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3161292(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3200950(JP,U)
【文献】 特開2015−039330(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3127832(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3176032(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0143263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に設置され獣類の脚部を括るワイヤが装着されるトリガー装置であって、互いに連結される第一及び第二の半環状帯体で構成され、半環状帯体の連結部で回動可能なワイヤ装着体と、第一及び第二の半環状帯体の内周に嵌め合わされる支持棒と、支持棒に載置される踏板を備え、第一及び第二の半環状帯体の長手方向中央に切欠凹部を有し、当該切欠凹部の上部に支持棒が設けられることを特徴とする括り罠用トリガー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猪、鹿等の獣類の脚部等をワイヤで緊縛して捕獲する動物捕獲用括り罠に関し、とくに、括り罠に用いられるトリガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、猪、鹿等の獣類を捕獲する装置として、獣類の脚部等をワイヤ等で括って捕獲する括り罠が一般的に使用されている。一般的な括り罠としては、例えば特許文献1に示すような括り罠が提案されている。この括り罠は、捕獲対象の通過道又は近傍に埋め込まれる筒状の本体と、可撓性を有する長尺材により形成されると共に、前記本体に挿通され、この本体から引き出されて前記捕獲対象の通過道上に延長された一端に締付け可能な輪状絞り部を備えた捕獲用絞り材と、前記本体の頂部に捕獲用絞り材が貫通する状態で嵌装された締付体と、この締付体を前記捕獲用絞り材により導かれ前記輪状絞り部に向かう方向に付勢する部材と、前記捕獲用絞り材の輪状絞り部が囲む通過道上の領域に配置され、捕獲対象の体重により変位する重量受体と、この重量受体の下側領域に於いて前記本体により回動可能に支持されると共に、一片が前記重量受体の下面に連結され、他片が前記締付体に設けた係合溝部に係合された変位伝達部材とを具備し、前記変位伝達部材の他片により前記締付体を付勢部材の付勢力に抗して本体に拘束すると共に、前記重量受体に捕獲対象の重量が作用した時、前記他片に連動して一片を回動変位させ前記本体に対する拘束を解除して、この締付体を付勢部材の付勢力により捕獲用絞り材の輪状絞り部に圧接してこの輪状絞り部を締付け、捕獲対象の身体のいずれかの部分を搦め捕るようにしたことを特徴とするものである。
【0003】
ところが、特許文献1に記載されているような埋設式の括り罠は、地中へ埋設する必要があるため、設置作業の工数が大きく、かつ埋設穴からの排土により設置場所近傍が泥で汚れ、獣類に感づかれ易いという不具合があった。そこで、特許文献2に示すように、地中に埋設することなく設置可能な括り罠が提案されている。特許文献2に記載された括り罠は、括り罠のワイヤが回し掛けされる一対の板状部材と、板状部材を回動可能に保持する基部と、該基部内に設けられ一対の板状部材を互いに回動させる踏み板とからなり、踏み板を踏圧することで、一対の板状部材が回動し、ワイヤの締め付けが解除されるよう構成された括り罠の安全装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3038510号公報
【特許文献2】特開2015−039330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された括り罠は、一対の板状部材が設置面に接する状態でワイヤが回し掛けされる構造とされており、基部に所定の高さが必要なため、括り罠自体のサイズが嵩張り、地表に設置された括り罠は目立つという問題があった。また、板状部材は、セット状態で角度が水平より下向きで、ワイヤが回し掛けされた状態から解除される状態までの回動角度が大きいため、獣類が踏み板を踏んでから、獣類の脚をワイヤが括るまでの一連の作動に時間を要し、捕獲率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、地中を掘削することなく括り罠の設置を容易に行えるとともに、獣類が踏んだ際に瞬時に作動して、捕獲率を向上させることのできる括り罠用トリガー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明の括り罠用トリガー装置は、地表に設置され獣類の脚部を括るワイヤが装着されるトリガー装置であって、互いに連結される第一及び第二の半環状帯体で構成され、半環状帯体の連結部で回動可能なワイヤ装着体と、第一及び第二の半環状帯体の内周に嵌め合わされる支持棒と、支持棒に載置される踏板を備え、第一及び第二の半環状帯体の長手方向中央に切欠凹部を有し、当該切欠凹部の上部に支持棒が設けられることを第一の特徴とする。
【0008】
また、第一及び第二の半環状帯体が、当該短手方向の中心線より設置面側に設けられたボルトにより連結されていることを第二の特徴とし、第一もしくは第二の半環状帯体が、支持棒が当接する位置に、支持棒を螺合可能なネジ孔を有することを第三の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)切欠凹部の上部近傍に支持棒がセットされるため、獣類が踏板を踏むと瞬時に支持棒が切欠凹部へスライドして罠を作動することができる。すなわち、獣類が踏み板を踏んでから、獣類の脚をワイヤが括るまでの時間が短く、捕獲率を向上させることができる。
(2)第一及び第二の半環状帯体は、当該短手方向の中心線より設置面側に設けられたボルトにより連結されているため、支持棒がスライドした際にワイヤが締付ける力を、第一及び第二の半環状帯体同士の回転力へと転換し、ワイヤ装着体に装着されたワイヤを瞬時に離脱させるとともに、踏板上に位置する獣類の脚をワイヤで括り付けることができる。
(3)第一もしくは第二の半環状帯体が、支持棒が当接する位置に、支持棒を螺合可能なネジ孔を設けているため、第一及び第二の半環状帯体が回動することを確実に防ぐことができる。したがって、例えば括り罠を設置する際に、誤って罠が作動することを防ぎ、安全性を向上させることができる。
(4)簡素な構成としたことで、装置自体のサイズ、とくに高さが嵩張ることなく製造することができる。そのため、地表に目立つことなく設置でき、捕獲率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る括り罠用トリガー装置を示す斜視図である。
図2】本発明に係る括り罠用トリガー装置に括り罠をセットする状態を説明する断面図である。
図3】本発明に係る括り罠用トリガー装置の作動した状態を説明する断面図である。
図4】本発明に係る括り罠用トリガー装置によって獣類の脚99が括られた状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る安全装置1は、図1に示すように、ワイヤ装着体2と、支持棒3と、踏板4から少なくとも構成されており、ワイヤ装着体2の外周にループ状のワイヤ9を締付けて地表に設置して使用される。概略としては、獣類の脚部等の踏圧で、踏板4及び支持棒3がワイヤ装着体2から外れることにより、立木等に
ワイヤ9がセットされた状態から解除され、縮径したワイヤ9が獣類の脚部等を括り、獣類を捕獲するものである。尚、括り罠の構成については公知のため、括り罠のワイヤ9以外については、図示および説明を省略する。
【0012】
ワイヤ装着体2は、図1図2に示すように、半環状に形成された一対の金属製帯体、すなわち第一の帯板21及び第二の帯板22から構成されている。第一の帯板21及び第二の帯板22は、対面する互いの側端部をボルト51,52により回動自在に連結されており、ワイヤ装着体2は、全体として環状に形成されている。また、第一の帯板21及び第二の帯板22は、長手方向の中央部に切欠部211,221が夫々設けられている。そのため、図2に示すように、切欠部211,221の上方にセットされた支持棒3が、図3に示すように、切欠部211,221の位置にスライドすることで、ロックが解除される。
【0013】
第一の帯板21及び第二の帯板22同士が回動する際に、互いの両端部が接触して回動速度が低下することを防止する目的で、第一の帯体21の側端部は傾斜部212が設けられている。第一の帯板21及び第二の帯板22の両側端部の接触面積を減ずることができる形状であれば何れの形状も良く、図示した傾斜形状に限定されるものではない。
【0014】
第二の帯体22は、切欠部221の上側に蝶ネジ6が挿通するネジ孔222が穿設されており、支持棒3を第一の帯板21及び第二の帯板22の内周にセットする際に使用される。支持棒3は、金属製の棒状体で、一旦側にボルト31が固設されている。図2に示すように、一端側のボルト31を第二の帯体22の内周に当接させ、他端側を第一の帯体21の内周に当接させた後に、蝶ネジ6を螺設する。ワイヤ装着体2が回動を規制された状態とした後、ワイヤ装着体2の外周にワイヤ9を装着し、蝶ネジ6が外される。したがって、支持棒3は、ワイヤ装着体2の回動を規制するとともに、支持棒3がスライドすることで、ワイヤ装着体2の回動規制を解除する役割を担う。
【0015】
金属製の網板からなる踏板4は、支持棒3により支持されており、踏板4が踏まれた際に支持棒3がスライドするよう構成されている。踏板4は、その辺縁に針金等の線条部材71,72を挿通させてボルト51,52に固定しており、踏板4が安定した状態で支持棒3に載置される。踏板4は、図1に示すように、所定のメッシュ巾を有する網板が好ましい。これは、踏板4に載置された小石や土などの重量により支持棒3が脱離することを防止するためであり、例えばパンチグメタルなど適度な軽量性を備え、踏板4への積載を防止できるものではあれば何れでも使用することができる。
【0016】
以上のように、本発明に係る安全装置1は、第一の帯体21と第二の帯体22からなるワイヤ装着体2、及び踏板4が、ボルト51,52、及び線条部材71,72を介して一体的に連結されており、ワイヤ装着体2の内周かつ踏板4の下部に、支持棒3を設けるだけで使用することができ、簡易に括り罠を設置することができる。また、従来の括り罠と比較して、埋設するための掘削用部は不要で、括り罠と安全装置1を携行するだけで済むため、この点においても設置作業者にかかる負担が十分に軽減される。
【0017】
安全装置1は、括り罠とともに設置場所へ搬送して使用される。括り罠の設置場所に到着した際には、まず、図2に示すように、設置場所の枯れ木や石などを除去して、比較的平坦な設置面GLを造る。次いで、安全装置1の第一の帯体21及び第二の帯体22が互いに水平となるよう回動させ、その内周に踏板4を支えるように支持棒3を設け、支持棒3と第二の帯体22を蝶ネジ6により螺合して固定し、第一の帯体21及び第二の帯体22の回動が規制された状態とする。この作業は設置場所に到着する前に行い、回動が規制された状態の安全装置1を携行し、そのまま設置面GLへ設置しても良い。
【0018】
次いで、立ち木等に括り罠を接続するとともに、括り罠のワイヤ9を第一の帯体21及び第二の帯体22の外周、すなわちワイヤ装着体2の外周に回し掛け、ワイヤ9を締付ける。この際ワイヤ9は、図2に示すように、ワイヤ装着体2の上縁部に装着される。そのため、図2に示すように、ワイヤ装着体2は、その内周方向へ押圧力P1が付勢される。その後、蝶ネジ6を外して設置作業が完了する。必要に応じて、括り罠及び安全装置1を落ち葉や土によって覆い隠しても良い。
【0019】
次に、安全装置1及び括り罠の動作について説明する。猪や鹿等の獣類が、設置された安全装置1を通過する際、獣類の脚99が踏板4を踏み、その踏圧力により図3に示すように、踏板4及び支持棒3が下方にスライドし、第一の帯体21及び第二の帯体22がボルト51,52を軸として起立する方向(図3に示す矢印の向き)へ互いに回動する。すなわち、踏板4及び支持棒3が下方にスライドすることで、押圧力P1に対抗していた力が失われて回動の規制が解除され、第一の帯体21及び第二の帯体22が回動するとともに、外周に廻し掛けられたワイヤ9が上方向へ離脱する。ワイヤ9は、括り罠の付勢手段等によって縮径する方向に付勢されているため、この付勢力により瞬時に縮径しながら上方向へと離脱し、獣類の脚99へ向かって接近する。したがって、図4に示すように、括り罠の作動と同時に踏板4の上方へ逃げる獣類の脚99へ確実にワイヤ9が括り付き、獣類を捕獲することができる。
【0020】
確実に獣類を捕獲するには、獣類の脚99が踏板4を踏んでからワイヤ9が括り付くまでの速度が重要であり、本発明においては、最も腐心した点である。異変を感じた獣類は、実に素早く脚99を踏板4から離脱させようとする。そこで、本発明においては、図2に示すように、ボルト51,52を、第一の帯板21及び第二の帯板22の短手方向の中心線Sより設置面GL側に設け、かつワイヤ9を中心線Sより上側へ配置することで、規制が解除された際にワイヤ9の押圧力P1の向きを図3に示すように、回転力P2へと転換し、確実に獣類の脚99に括り付けることができる。また、切欠部211,221の上方に支持棒3を設けることで、踏板4を踏んだ際の支持棒3のスライド量を極小とし、回動の規制を素早く解除することができ、獣類の捕獲率を向上させることができる。
【0021】
また、本発明においては、図1に示すように、踏板4の周囲と、ワイヤ装着体2(第一の帯体21及び第二の帯体22)内周間に間隙空間8が設けられている。この間隙空間8は、図4に示すように、脚部99の脚底半径Wと同程度の間隙距離tが形成されることが望ましい。例えば、この間隙距離tが不十分な場合、獣類がワイヤ装着体2の上部を脚部99の中心で踏んだ際に爪先等が踏板4を踏圧してトリガー装置1が作動し、いわゆる空ハジキを招く。一旦、空ハジキした括り罠は、その後獣類を捕獲できなくなるばかりでなく、獣類が警戒して括り罠を仕掛けた獣道自体を通らなくなる。したがって、本発明においては、間隙空間8を設けることで、ワイヤ装着体2を踏んだとしても踏板4までもが踏まれてトリガー装置1が作動することを防ぎ、確実に踏板4を踏んだ際にのみ作動するよう構成することで、獣類の捕獲率を向上させることができる。
【0022】
尚、本発明に係るトリガー装置の構成は、上記の構成や図示した構成に限定されるものではない。例えば、第一の帯板21及び第二の帯板22は、円環形状を採用しているが、角環形状を採用しても良い。また例えば、支持棒3と踏板4を一体的に形成しても良く、種々の改良を加え得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 トリガー装置
2 ワイヤ装着体2
21 第一の帯体
22 第二の帯体
211 切欠凹部
212 傾斜部
221 切欠凹部
222 ネジ孔
3 支持棒
4 踏板
51 ボルト
52 ボルト
6 蝶ネジ
71 線条部材
72 線条部材
8 間隙空間
9 ワイヤ
99 獣類の脚
GL 設置面
P1 押圧力
P2 回転力
図1
図2
図3
図4