【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (A)第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)研究発表講演要旨集による公開 (1)発行日 平成28年3月5日 (2)刊行物 第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)研究発表講演要旨集、第50頁 公益社団法人 化学工学会 第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)実行委員会 (3)公開者 前田将輝、佐野紀彰及び田門肇 (4)公開された発明の内容 前田将輝、佐野紀彰及び田門肇が、第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)研究発表講演要旨集の第50頁にて、佐野紀彰及び中宗憲一が発明した、蛍光スペクトルの波長ピークによる微粒子凝集体の凝集状態を評価する技術について公開した。 (B)第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)における公開 (1)開催日 平成28年3月5日 (2)集会名、開催場所 第18回化学工学会学生発表会(福岡大会) 福岡大学七隈キャンパス(福岡市城南区七隈八丁目19−1) (3)公開者 前田将輝 (4)公開された発明の内容 前田将輝が、第18回化学工学会学生発表会(福岡大会)にて、佐野紀彰及び中宗憲一が発明した、蛍光スペクトルの波長ピークによる微粒子凝集体の凝集状態を評価する技術について公開した。 (C)第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Drying Symposium)発表要旨集による公開 (1)発行日 平成28年8月7日 (2)刊行物 第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Drying Symposium)発表要旨集D−1−5 第20回国際乾燥シンポジウム実行委員会(20th International Drying Symposium Organization Committee) (3)公開者 佐野紀彰、前田将輝及び田門肇 (4)公開された発明の内容 佐野紀彰、前田将輝及び田門肇が、第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Drying Symposium)発表要旨集D−1−5にて、佐野紀彰及び中宗憲一が発明した、蛍光スペクトルの波長ピークによる微粒子凝集体の凝集状態を評価する技術について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (D)第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Drying Symposium)における公開 (1)開催日 平成28年8月7日発表 Session D−1:Drying of chemicals and polymers D−1−5(第20回国際乾燥シンポジウム 開催期間:平成28年8月7日〜8月10日) (2)集会名、開催場所 第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Dying Symposium) 長良川国際会議場(岐阜県岐阜市長良福光2695−2) (3)公開者 佐野紀彰 (4)公開された発明の内容 佐野紀彰が、第20回国際乾燥シンポジウム(20th International Drying Symposium)Session D−1:Drying of chemicals and polymers D−1−5にて、佐野紀彰及び中宗憲一が発明した、蛍光スペクトルの波長ピークによる微粒子凝集体の凝集状態を評価する技術について公開した。
【文献】
WOLTMANN,E et.al.,Applicability of UV laser-induced solid-state fluorecence spectroscopy for characterization of solid dosage forms,Anal Bioanal Chem,2014年,Vol.406 No.25,6347-6362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の凝集体の凝集度測定装置Aの一例を図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0016】
〔測定原理〕
本発明者は、平均粒径が50nm以下である一次粒子の凝集体(平均粒径が50nm以下である一次粒子が凝集一体化して形成された凝集体)に紫外線(波長:10〜400nm)を照射し、この紫外線を照射された凝集体から放射された蛍光が、凝集体の凝集度によって変化することを見出した。なお、凝集体は、一次粒子が凝集一体化して形成されたものであるが、一次粒子は、必要に応じて賦形剤などを用いて凝集一体化されていてもよい。一次粒子の凝集体としては、医薬品(錠剤)、食品、農薬及び洗浄剤などが挙げられる。
【0017】
凝集体の凝集度をより精度良く測定できるので、一次粒子の平均粒径は、50nm以下であり、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。なお、一次粒子の平均粒径は、一次粒子のそれぞれの粒径をTEMを用いて測定し、一次粒子のそれぞれの粒径の相加平均値をいう。
【0018】
詳細に説明すると、凝集体に紫外線が照射されると、凝集体から蛍光が放射されるが、凝集体の凝集度が低いほど、即ち、凝集体の凝集度合いが小さいほど、蛍光スペクトルは短波長側に移動する一方、凝集体の凝集度が高いほど、即ち、凝集体の凝集度合いが大きいほど、蛍光スペクトルは長波長側に移動することを見出した。
【0019】
上述した凝集体の凝集度の変化によって蛍光スペクトルが変化する詳細な原理は明確に解明されていないが、以下の原理によると推測される。
【0020】
平均粒径が50nm以下である一次粒子の凝集体において、互いに隣接する粒子間に空間部が生じるが、この空間部には、
図1及び
図2に示したように、メソ孔とミクロ孔の二種類がある。ミクロ孔は、一次粒子同士の接点の近傍部に生じ、2nm未満の空間部を有している一方、メソ孔は、一次粒子同士の接点から離間した部分に生じ、2〜50nmの空間部を有する。
【0021】
一次粒子の凝集体の凝集度が高いほど、一次粒子同士の接点(ミクロ孔の割合)が増加する一方、メソ孔の割合が減少する。反対に、一次粒子の凝集体の凝集度が低いほど、一次粒子同士の接点(ミクロ孔の割合)が減少する一方、メソ孔の割合が増加する。
【0022】
そして、一次粒子同士の接点(ミクロ孔部分)においては電子の移動が容易となってバンドギャップが小さくなり、蛍光波長が長くなる一方、一次粒子同士の接点から離間した部分(メソ孔部分)においては電子の移動が生じにくくバンドギャップが大きくなり、蛍光波長が短くなる。
【0023】
従って、凝集体の凝集度が高いほど、即ち、凝集体の凝集度合いが大きいほど、一次粒子同士の接点が多くなり、蛍光スペクトル(縦軸:蛍光強度、横軸:蛍光の波長〔nm〕)は長波長側に移動する一方、凝集体の凝集度が低いほど、即ち、凝集体の凝集度合いが小さいほど、一次粒子同士の接点が少なくなり、蛍光スペクトルは短波長側に移動する。
【0024】
一次粒子の種類が同一であって凝集体の凝集度が同一であれば、蛍光スペクトルは概ね同一となることから、凝集体の凝集度ごとに蛍光スペクトル(標準蛍光スペクトル)を予め測定しておき、測定対象となる凝集体に紫外線を照射したときに得られる蛍光スペクトルを標準蛍光スペクトルと比較することによって、凝集体の凝集度を容易に測定することができる。
【0025】
具体的には、凝集体の凝集度ごとに予め測定された標準蛍光スペクトルからピーク波長(標準ピーク波長)を特定し、凝集体の凝集度と標準ピーク波長との相関関係を得る。凝集体の凝集度が大きくなるほど、標準ピーク波長は長波長側にシフトする。
【0026】
測定された蛍光スペクトルにはノイズが含まれており、このノイズを除去するために、蛍光スペクトルに必要に応じて単純移動平均法によってノイズ処理を施す。蛍光スペクトルにおいて、最も蛍光強度の高い波長を「蛍光スペクトルのピーク波長」とする。なお、上記単純移動平均法による蛍光スペクトルのノイズ処理は、下記の要領で行う。
【0027】
先ず、測定された蛍光スペクトルの任意に選択された波長において、この波長以下の波長における蛍光強度であって上記選択された波長の蛍光強度を含み且つ互いに連続する2個の蛍光強度の相加平均値を上記任意に選択された波長における蛍光強度として蛍光スペクトル(2個)を描く。
【0028】
測定された蛍光スペクトルと、蛍光スペクトル(2個)のピーク波長とを比較し、両者の蛍光スペクトルのピーク波長が一致したとき、このピーク波長を蛍光スペクトルのピーク波長とする。
【0029】
一方、測定された蛍光スペクトルのピーク波長と、蛍光スペクトル(2個)のピーク波長とが不一致である場合は、上述と同様の要領で、蛍光スペクトル(3個)を描き、蛍光スペクトル(2個)のピーク波長と、蛍光スペクトル(3個)のピーク波長とを比較し、両者の蛍光スペクトルのピーク波長が一致したとき、このピーク波長を蛍光スペクトルのピーク波長とする。
【0030】
これに対して、両者の蛍光スペクトルのピーク波長が不一致である場合は、上述と同様の要領で、蛍光スペクトル(n個)のピーク波長と、蛍光スペクトル(n+1個)のピーク波長が一致するまで繰り返し行い、はじめて一致した時のピーク波長を蛍光スペクトルのピーク波長とする。
【0031】
なお、蛍光スペクトル(n個)とは、測定された蛍光スペクトルの任意に選択された波長において、この波長以下の波長における蛍光強度であって上記選択された波長の蛍光強度を含み且つ互いに連続するn個の蛍光強度の相加平均値を上記任意に選択された波長における蛍光強度として描かれた蛍光スペクトルをいう。
【0032】
測定対象となる凝集体に紫外線を照射したときに得られる蛍光スペクトルからピーク波長を特定し、凝集体の凝集度と標準ピーク波長との相関関係に基づいて、測定されたピーク波長から凝集体の凝集度を算出することができる。
【0033】
このように、紫外線が照射された凝集体から放射された蛍光スペクトルに基づいて凝集体の凝集度を測定することができる。
【0034】
〔測定装置の構成〕
凝集体の凝集度測定装置Aは、
図3に示したように、測定処理部3と、照射測定ヘッド部4とを含む。
【0035】
測定処理部3は、照射測定ヘッド部4と接続されており、照射測定ヘッド部4に対して紫外線の照射指令を与えるとともに、照射測定ヘッド部4において検出された蛍光スペクトルを処理して凝集体の凝集度を算出し出力する。
【0036】
図4に示したように、照射測定ヘッド部4は、紫外線照射部としての紫外線を発生するためのUV発光素子42と、ダイクロイックミラー43と、集光レンズ44と、測定対象となる凝集体Bから放射された蛍光を検出するための蛍光検出部としての分光器45とを含む。照射測定ヘッド部4において、UV発光素子42、ダイクロイックミラー43及び集光レンズ44は、光軸Ax1上に位置するように配設されている。UV発光素子42で発生する蛍光励起用の紫外線は、集光レンズ44を通じて光軸Ax1に沿って伝搬した後、光軸Ax1上に配置される測定対象となる凝集体Bに集められる。凝集体Bは配設板C上に載置されている。なお、蛍光励起用の紫外線の照射径(スポット径)は、測定対象となる凝集体Bの範囲に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
UV発光素子42は、一例として、主発光ピークを248nmとする紫外線を発生する。なお、UV発光素子42としては、公知の発光素子を用いることができ、例えば、紫外線LED及び紫外線ランプなどが挙げられ、紫外線LEDが好ましい。
【0038】
測定対象となる凝集体Bに紫外線が照射されると、上述の通り、凝集体Bから蛍光が放射される。凝集体Bから生じた蛍光の大部分は、光軸Ax1上を励起用の紫外線の伝搬方向とは逆方向に伝搬してダイクロイックミラー43に入射する。
【0039】
ダイクロイックミラー43は、入射する光の波長成分に応じて、その伝搬方向を変化させる一種の光フィルタである。具体的には、ダイクロイックミラー43は、紫外線が光軸Ax1に沿って入射すると、その伝搬方向を維持したまま、入射した紫外線を透過させる。一方、ダイクロイックミラー43は、蛍光が光軸Ax1に沿って入射すると、その伝搬方向を90°変化させた上で異なるポートから射出する。ダイクロイックミラー43の反射面は、通常、金属蒸着により形成されている。ダイクロイックミラー43としては、例えば、300nmより短い波長を透過域とし、且つ、300nmより長い波長を反射域とすることで、紫外線と蛍光とを分離することができる。
【0040】
そのため、凝集体Bで生じた蛍光の多くは、光軸Ax1に沿って紙面左側から紙面右側に伝搬した後、ダイクロイックミラー43においてその伝搬方向を紙面下側に曲げられる。そして、凝集体Bで生じた蛍光は、光軸Ax2に沿って紙面上側から紙面下側に伝搬して、分光器45に入射する。
【0041】
なお、UV発光素子42の射出面から集光レンズ44までの距離Lと、集光レンズ44から測定対象となる凝集体Bまでの距離とは、略同一となるように構成することが好ましい。
【0042】
このように、
図4に示す照射測定ヘッド部4においては、ダイクロイックミラー43が凝集体Bから受けた蛍光の伝搬方向を変更することで、同一の光軸Ax1上を伝搬する励起用の紫外線と検出対象の蛍光とを分離することができる。そのため、凝集体Bから発生する微弱な蛍光であっても、確実に検出できる。
【0043】
次に、
図5に示したように、測定処理部3は、処理の実行主体となるCPU(Central Processing Unit)31と、表示部32と、設定ボタン33と、発振子34と、記憶部35と、電源装置36と、インターフェイス部37とを含む。
【0044】
CPU31は、後述する記憶部35に予め格納されたプログラムなどに従ってコマンドを順次実行することで、測定装置A全体の処理を司る。具体的には、CPU31は、ユーザにより指定されたタイミングなどに応答して、照射測定ヘッド部4に対して励起用の紫外線の照射開始を指示するとともに、照射測定ヘッド部4により検出された凝集体Bからの蛍光に基づいて、凝集体Bの凝集度を算出及び/又は出力する。
【0045】
表示部32は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)及びCRT(Cathode-Ray tube)などのディスプレイ、セグメント表示器、又は、表示ランプといった通知手段を含む。測定処理部3の表示部32としては、例えば、
図3に示す模式図においては、算出された凝集体の凝集度を表示するためのセグメント表示器、測定装置Aの状態などを示すためのLED表示器などが挙げられる。
【0046】
設定ボタン33は、各種のスイッチやボタンなどの指示受付手段を含む。設定ボタン33は、ユーザによる操作を受付けて、その操作に応じたコマンドをCPU31に出力する。
図3に示す模式図においては、設定の変更/反映などを指示するためのボタンが例示されている。
【0047】
発振子34は、CPU31などが処理を実行する際の動作クロックを発生する。記憶部35は、例えば、E
2PROM(Electrically Erasable and Programmable Read only Memory)などからなり、CPU31で実行されるプログラムが格納され、CPU31で算出された凝集体の凝集度が格納される。
【0048】
電源装置36は、駆動電源Vccなどを受けて、測定装置Aの内部において必要な各種電圧値をもつ電源を生成して供給する。
【0049】
インターフェイス部37は、測定装置Aの外部にある各種装置との間でデータのやり取りを仲介する。一例として、インターフェイス部37は、凝集体Bの凝集度を示す凝集度出力38と、ユーザなどからの測定開始を指示するための測定開始入力39とを入出力する。なお、凝集度出力38については、後述する。
【0050】
なお、本発明において「出力」とは、各種表示装置に目的とする情報(データ)を表示してユーザに通知すること、及び、外部装置に目的とする情報(データ)を伝送することを含む。更に、本発明における「出力」には、測定装置Aとプリンタなどを接続し、プリンタから情報が印刷された紙媒体を出力することも含む。
【0051】
照射測定ヘッド部4は、励起用の紫外線を照射するためのUV投光部4aと、凝集体Bで生じる蛍光を検出するための蛍光受光部4bとを含む。
【0052】
UV投光部4aは、上述したUV発光素子42に加えて、UV発光素子42を駆動するための投光駆動回路46を含む。投光駆動回路46には、駆動電力に加えて、CPU31からの制御信号が与えられる。この制御信号が活性化(ON)になると、投光駆動回路46からUV発光素子42に対して電力が供給され、UV発光素子42が励起用の紫外線の照射を開始する。
【0053】
蛍光受光部4bは、上述した分光器45に加えて、増幅回路47と、A/Dコンバータ48とを含む。増幅回路47は、分光器45から出力される電圧信号(検出された蛍光強度の大きさに比例)を所定の増幅率で増幅し、その増幅後の信号をA/D(Analog to Digital)コンバータ48へ出力する。A/Dコンバータ48は、増幅回路47から入力されるアナログ信号を量子化することでデジタル信号を生成し、この生成されたデジタル信号をCPU31へ出力する。なお、A/Dコンバータ48は、電源装置36により供給される参照電圧VREFを電圧基準として、量子化を行う。
【0054】
〔制御構造〕
次に、測定装置Aにおける制御構造について説明する。
図6は、測定装置Aの制御構造を示す模式図である。
図6を参照して、測定装置Aは、その制御構造として、バッファ51と、表示データ生成部52と、凝集度算出部53と、データベース54とを含む。一例として、測定装置Aは、照射測定ヘッド部4により検出された蛍光を入力として、凝集体の凝集度を出力する。
【0055】
なお、典型的には、表示データ生成部52及び凝集度算出部53は、CPU31がプログラムを実行することで実現され、バッファ51及びデータベース54は、記憶部54の所定領域に実現される。
【0056】
具体的には、計測開始トリガに応答して、バッファ51には、照射測定ヘッド部4からの検出値が取得されて格納される。この計測開始トリガに同期して、照射測定ヘッド部4へは、紫外線の照射指令が与えられる。バッファ51に格納された検出値は、表示データ生成部52及び凝集度算出部53からそれぞれアクセス可能となっている。なお、ノイズなどを除去するための各種の前処理(フィルタリング処理)を行ってもよい。
【0057】
表示データ生成部52は、バッファ51に格納された蛍光スペクトルを表示するためのデータ、典型的には、表示部32を駆動するための信号を生成する。
【0058】
凝集度算出部53は、バッファ51に格納された蛍光スペクトルに基づいて、凝集体Bの凝集度を算出し表示部32に出力する。データベース54に、凝集体Bから放射された蛍光スペクトルの標準ピーク波長と、その凝集体Bの凝集度とを対応付けたテーブル540(又は、グラフ、関係式又は関数)などを用意しておき、凝集度算出部53が、対応するテーブル540を参照して、バッファ51に格納された蛍光スペクトルに基づいてピーク波長を読み取り、このピーク波長をキーとしてテーブル540から凝集体Bの凝集度を算出する。凝集体Bの凝集度について、国際標準又は国内標準で定められた単位は存在しない。従って、ユーザが、標準蛍光スペクトルを測定した時に用いた、標準とした凝集体Bの凝集度を数値又はランクなどとして定め、この定められた凝集体の凝集度と、標準蛍光スペクトルの標準ピーク波長とを対応付ける必要がある。例えば、ユーザが凝集度合いの異なる凝集体を標準凝集体として用意する。そして、凝集度合いの最も高い凝集体の凝集度を100とする一方、凝集度合いの最も低い凝集体の凝集度を0とし、これ以外の凝集度合いを有する凝集体の凝集度を凝集度合いに応じてユーザがそれぞれ0を超え且つ100未満の値の中から定めればよい。更に、標準凝集体として用意することができなった、所定の凝集度合いを有する凝集体の凝集度については、用意した標準凝集体の凝集度に基づいて近似曲線を引き、近似曲線に基づいて、凝集体Bの凝集度とピーク波長とを対応付ければよい。又は、凝集度合いの最も高い凝集体の凝集度をAランクとする一方、凝集度合いの最も低い凝集体の凝集度をZランクとし、これ以外の凝集度合いを有する凝集体の凝集度を凝集度合いに応じてユーザがそれぞれB〜Yランクの中から定めてもよい。上記では、得られた蛍光スペクトルのピーク波長をキーとし、このピーク波長に対応した凝集体の凝集度を算出した場合を説明したが、蛍光スペクトルのピーク波長を凝集体の凝集度として用いてもよい。なお、凝集体Bから放射される蛍光スペクトルは、凝集体Bを構成している一次粒子の材質に依存するので、凝集体Bを構成している一次粒子の材質(種類)別にテーブル540を複数用意しておき、凝集体Bを構成している一次粒子の材質(種類)に応じたテーブル540を選択的に使用することが好ましい。
【0059】
〔処理手順〕
以下、凝集体の凝集度の測定処理の手順について説明する。
図7は、凝集体の凝集度の測定手順を示すフローチャートである。
図7に示す凝集体の凝集度の測定処理は、
図6に示す制御構造に対応して実行されるものであり、凝集体Bから測定された蛍光スペクトルに基づいて、凝集体の凝集度が測定される。
【0060】
先ず、ステップ1(S1)において、インターフェイス部37を通じてユーザによって測定開始指令が発行される。次に、ステップ2(S2)において、測定開始指令に応答して、照射測定ヘッド部4から励起用の紫外線が凝集体Bに向けて照射される。ステップ3(S3)において、照射測定ヘッド部4において、凝集体Bで生じる蛍光が検出される。ステップ4(S4)において、検出された蛍光に対して必要に応じてノイズ除去処理(フィルタリング処理)が施された上で、蛍光スペクトルが取得される。
【0061】
ステップ5(S5)において、凝集度算出部53によって蛍光スペクトルのピーク波長が算出され、凝集体Bを構成している一次粒子の種類に応じたテーブル(又は関係式など)が必要に応じて選択され、選択されたテーブル(又は関係式など)を用いて、算出されたピーク波長に基づいて凝集体Bの凝集度が算出される。
【0062】
次に、ステップ6(S6)において、出力処理が行われる。具体的には、ステップ5にて算出された凝集体Bの凝集度が表示部32に出力されて終了する。
【0063】
上述のように、本発明の凝集体の凝集度の測定方法によれば、凝集体の凝集度を非接触にて高速に測定することができる。凝集体の凝集度は、凝集体の硬度や液中での凝集体の崩壊時間に影響を与えるが、凝集体の凝集度を凝集体ごとに非破壊にて高速に測定することができるので、製造した凝集体のそれぞれの凝集度を容易に測定し、凝集体の品質を管理することができる。
【0064】
上記した照射測定ヘッド部4において、UV発光素子42で発生する蛍光励起用の紫外線の伝搬軌道と、凝集体Bから発生する蛍光の伝搬軌道とが同一の光軸Ax1上にある場合を説明したが、UV発光素子42で発生する蛍光励起用の紫外線の伝搬軌道と、凝集体で発生する蛍光の伝搬軌道とを相違させてもよい。
【0065】
UV発光素子42で発生する蛍光励起用の紫外線の伝搬軌道と、凝集体で発生する蛍光の伝搬軌道とが相違している照射測定ヘッド部4について説明する。なお、
図4の照射測定ヘッド部4と同一構成又は相当部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図8に示す測定装置Aにおける照射測定ヘッド部4は、励起用の紫外線を照射するためのUV投光部4a'と、凝集体Bで生じる蛍光を検出するための蛍光受光部4b'とを含む。
【0067】
UV投光部4a'は、UV発光素子42と、集光レンズ44aとを含む。集光レンズ44aは、UV発光素子42と凝集体Bとを結んだ光軸Ax3上に配置されている。従って、UV発光素子42で発生する励起用の紫外線は、集光レンズ44aを透過した後、光軸Ax3に沿って伝搬して凝集体Bに入射する。
【0068】
凝集体Bに紫外線が入射することによって凝集体Bで発生した蛍光の殆どは、凝集体Bを配設している配設板Cに対する紫外線の入射角に対応する反射角でもって放射される。即ち、蛍光の殆どは、配設板Cにおける凝集体Bの配設面に対する垂直軸を中心にして光軸Ax3と対称となる光軸Ax4に沿って伝搬する。
【0069】
蛍光受光部4b'においては、上記光軸Ax4上に、波長フィルタ49、集光レンズ44b及び分光器45が整列した状態で配置されている。波長フィルタ49は、UV投光部4a'から照射される励起用の紫外線が分光器45に直接入射することを抑制するための光フィルタである。波長フィルタ49は、凝集体Bで発生した蛍光が入射した場合には透過させる一方、測定対象ではない紫外線が入射した場合にはカットするような特性を有する。
【0070】
従って、励起用の紫外線が凝集体Bに照射されることによって凝集体Bにて発生した蛍光は、波長フィルタ49を透過した後、集光レンズ44bによって集光されて、分光器45に入射するように構成されている。
【0071】
なお、凝集体Bを構成している一次粒子の種類によって、凝集体にて発生する蛍光の波長が異なる場合には、蛍光の波長毎に、UV投光部及び/又は蛍光受光部を複数用意しておき、必要に応じて、適切なものを選択するようにしてもよい。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0074】
<一次粒子の凝集体の製造>
〔自然乾燥〕
縦0.8cm×横1.5cmのステンレス基板の横方向の両端部に、粘着テープを厚みが0.15mmとなるように複数枚、重ね合わせて積層一体化した。ステンレス基板の中央部に、平均粒径4nm及び含水率が21.2質量%であるコロイダルシリカを供給し、余剰のコロイダルシリカをガラス板でそぎ落として膜厚が0.15mmの均等なコロイダルシリカの薄膜を作製した。
【0075】
コロイダルシリカの薄膜を25℃にて10時間に亘って自然乾燥させてコロイダルシリカの凝集体を作製した。
【0076】
〔凍結乾燥〕
自然乾燥してコロイダルシリカの凝集体を製造した時と同様の要領でコロイダルシリカの薄膜を作製した。コロイダルシリカの薄膜を−10℃にて48時間に亘って乾燥させてコロイダルシリカの凝集体を作製した。
【0077】
〔伝導伝熱乾燥(100℃)〕
自然乾燥してコロイダルシリカの凝集体を製造した時と同様の要領でコロイダルシリカの薄膜を作製した。コロイダルシリカの薄膜を100℃及び15分の条件下にて伝導伝熱乾燥を行ってコロイダルシリカの凝集体を作製した。
【0078】
〔伝導伝熱乾燥(175℃)〕
自然乾燥してコロイダルシリカの凝集体を製造した時と同様の要領でコロイダルシリカの薄膜を作製した。コロイダルシリカの薄膜を175℃及び15分の条件下にて伝導伝熱乾燥を行ってコロイダルシリカの凝集体を作製した。
【0079】
〔伝導伝熱乾燥(250℃)〕
自然乾燥してコロイダルシリカの凝集体を製造した時と同様の要領でコロイダルシリカの薄膜を作製した。コロイダルシリカの薄膜を250℃及び15分の条件下にて伝導伝熱乾燥を行ってコロイダルシリカの凝集体を作製した。
【0080】
自然乾燥、凍結乾燥、伝導伝熱乾燥(100℃)、伝導伝熱乾燥(175℃)及び伝導伝熱乾燥(250℃)で得られたコロイダルシリカの凝集体のメソ孔容積及びミクロ孔容積を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0081】
なお、メソ孔容積は、Dollimore and Healの方法(DH法)によって測定した。Dollimore and Healの方法は、具体的には、Dollimore, D.; Heal, G. R. An Improved Method for the Calculation of Pore Size Distribution from Data. J. Appl. Chem. 1964, 14, 109−114に記載されている。
【0082】
ミクロ孔容積は、t-plot法によって測定した。t-plot法は、具体的には、Lippens, B. C.; de Boer, J. H. Studies on Pore Systems in Catalysts: V. The t Method. J. Catal. 1965, 4, 319−323に記載されている。
【0083】
コロイダルシリカの凝集体のメソ孔容積及びミクロ孔容積を見ると、メソ孔容積が最も高く且つミクロ孔容積が最も低い、凍結乾燥によって得られたコロイダルシリカの凝集体の凝集度が最も低い一方、メソ孔容積が最も低く且つミクロ孔容積が最も高い、伝導伝熱乾燥(250℃)によって得られたコロイダルシリカの凝集度が最も高いことが分かる。コロイダルシリカの凝集度は、凍結乾燥<自然乾燥<伝導伝熱乾燥(100℃)<伝導伝熱乾燥(175℃)<伝導伝熱乾燥(250℃)の順序で高くなっていることが分かる。
【0084】
次に、
図3、5、6及び8に示した凝集体の凝集度の測定装置Aを用いて、上述したそれぞれの乾燥方法で得られたコロイダルシリカの凝集体の凝集度を算出した。
【0085】
具体的には、先ず、インターフェイス部37を通じてユーザによって測定開始指令を発行し(S1)、測定開始指令に応答して、照射測定ヘッド部4から主発光ピークを248nmとする励起用の紫外線が凝集体Bに向けて照射された(S2)。照射測定ヘッド部4において、凝集体Bから放射された蛍光が検出され(S3)、検出された蛍光に対してノイズ除去処理(フィルタリング処理)が施された上で、蛍光スペクトルが取得された(S4)。
【0086】
次に、凝集度算出部53によって蛍光スペクトルのピーク波長が算出され、このピーク波長を凝集体Bの凝集度として用い(S5)、得られた凝集体Bの凝集度が表示部32であるディスプレイに表示された。
【0087】
得られた凝集体の凝集度を表1に示した。測定結果から分かるように、コロイダルシリカの凝集体の凝集度(凝集度合い)が高いほど、蛍光スペクトルのピーク波長が長波長側に移動していることが分かる。
図9に、コロイダルシリカの凝集体のそれぞれの蛍光スペクトル(ノイズ処理前)を示した。
図10に、
図9の蛍光スペクトルを単純移動平均法によってノイズ処理した後の蛍光スペクトルを示した。
図11に、ノイズ処理した蛍光スペクトル(
図10)の部分拡大図を示した。
【0088】
【表1】