特許第6792238号(P6792238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792238
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】薬液注入装置および薬液注入方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20201116BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20201116BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20201116BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20201116BHJP
   B01F 5/04 20060101ALI20201116BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20201116BHJP
   B01F 15/04 20060101ALI20201116BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20201116BHJP
   F28G 9/00 20060101ALN20201116BHJP
   F28G 15/04 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   C02F1/00 K
   C02F5/00 610G
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 510C
   C02F1/50 520K
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 532D
   C02F1/50 532H
   C02F1/50 532J
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550L
   B01F3/08 Z
   B01F5/04
   B01F5/10
   B01F15/04 D
   C02F5/10 620A
   C02F5/10 620E
   !F28G9/00 L
   !F28G15/04
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-213212(P2016-213212)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69175(P2018-69175A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】林 聖一
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−103380(JP,A)
【文献】 特開2005−188824(JP,A)
【文献】 特開2006−150325(JP,A)
【文献】 特開2013−000698(JP,A)
【文献】 特開2014−087728(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0126939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/50
C02F 5/00−5/14
F28G 9/00
F28G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と開放式の冷却塔とに冷却水を循環させる冷却水ラインに、水処理薬液を収容する薬液タンクから前記薬液を注入する薬液注入部と、
前記薬液注入部による前記薬液の注入量を制御する制御部とを備え、
前記薬液注入部が、前記冷却水ラインにおける前記熱源よりも水流方向下流側であって前記熱源よりも前記冷却塔に近い箇所に接続されるインジェクターと、前記インジェクターと前記薬液タンクとを接続する接続パイプと、前記冷却水ラインまたは前記接続パイプに設けられた流量調整バルブとを有し、
前記インジェクターは、その内部に冷却水を流通させることにより負圧を発生させ、かつ前記薬液タンクから前記薬液を前記内部へ吸引して冷却水と混合させるように構成され、
前記制御部は、前記冷却水ラインとは別に前記冷却塔と接続された循環経路に設けられ、前記冷却水中で消費される前記薬液の薬液濃度を前記循環経路を流れる前記冷却水から測定し、かつ測定した薬液濃度に基づいて前記流量調整バルブを調整し前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整することにより、前記薬液の前記冷却水中への注入量を制御するように構成された薬液注入装置。
【請求項2】
前記インジェクターを前記冷却水ラインへ接続する導入側バイパス管および排出側バイパス管をさらに備え、
前記インジェクターは、前記冷却水ラインからの前記冷却水を内部に導入するように前記導入側バイパス管と接続される流入部と、前記流入部内に流入した前記冷却水を流入時の圧力よりも低下させて前記冷却水ラインへ流出させるように前記排出側バイパス管と接続させる流出部と、前記接続パイプと接続されて前記流出部に前記薬液を送り込む薬液吸込部とを有する請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項3】
前記流量調整バルブが、前記導入側バイパス管に設けられる請求項2に記載の薬液注入装置。
【請求項4】
前記流量調整バルブが、前記冷却水ラインと前記導入側バイパス管との接続部に設けられる請求項2に記載の薬液注入装置。
【請求項5】
前記流量調整バルブが、前記接続パイプに設けられる請求項1に記載の薬液注入装置。
【請求項6】
前記制御部が、冷却水中に分散した薬液濃度の指標となる指標物質に光を照射して励起発光させ、かつ指標物質の発光強度を測定するように構成された請求項1〜5のいずれか1つに記載の薬液注入装置。
【請求項7】
熱源と開放式の冷却塔とに接続された循環式の冷却水ライン内の冷却水に薬液タンク内の水処理薬液を注入する薬液注入方法であって、
前記冷却水ラインまたは前記冷却水ラインと接続するバイパス管に設けられたインジェクターに接続パイプを介して前記薬液タンクを接続すると共に、前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整する流量調整バルブを前記冷却水ラインまたは前記接続パイプに設け、
前記冷却水ラインとは別に前記冷却塔と接続された循環経路を流れる前記冷却水中の薬液濃度を測定し、かつ測定した薬液濃度に基づいて前記流量調整バルブを調整し前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整することにより、前記薬液の前記冷却水中への注入量を制御すると共に、前記冷却水ラインにおける前記熱源よりも水流方向下流側であって前記熱源よりも前記冷却塔に近い箇所を流れる冷却水に前記薬液を注入する薬液注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入装置および薬液注入方法に関し、詳しくは、産業機器、空調設備等を冷却する冷却水系の冷却水に水処理剤としての薬液を添加してスケール防止、防食、殺菌等を行う薬液注入装置および薬液注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、ビル等に設けられた産業機器、空調設備等の熱源を冷却する冷却水系の冷却水(循環水)は、通常、熱交換によって温められた後に、冷却塔といった冷却装置(放熱部)において蒸発潜熱などにより冷やされ、再び冷却水として循環使用される。したがって、冷却水に含まれる塩類は次第に濃縮されて高濃度になり、微生物の増殖およびスライムの形成が誘発され、様々な障害が引き起こされる。
すなわち、細菌や真菌のような微生物が冷却水系内の管壁や器壁に付着し、粘着性物質を分泌してスライムを形成する。そして、このスライムが冷却水系内、特に熱交換器に付着して熱交換性能を低下させ、管壁や器壁の腐食を引き起こし、また病原菌の飛散により衛生上の問題を引き起こす。
【0003】
一般に、冷却水系には、スライム、腐食およびスケールという3大トラブルがあり、これらを防止するために従来から種々の水処理剤の添加が検討され、実施されてきた。
水処理剤に含まれる薬剤(有効成分)としては、大別して殺菌、防食、スケール防止のための薬剤が挙げられ、1種以上の薬剤を含む水処理剤は、冷却水へ迅速かつ均一に溶解すると共に、薬剤濃度の制御が容易であることから、液状の形態であることが望ましい。
【0004】
一般に、冷却水系には、薬液(液状の水処理剤)を収容する薬液タンクと、薬液タンク内の薬液を冷却水ライン内の冷却水中に送り出す定量ポンプとを備えた薬液注入装置が設けられ、この薬液注入装置によって冷却水中に薬液が注入される。この際、冷却水中の薬液の濃度が測定され、測定した薬液濃度に基づく注入量で薬液が冷却水中に注入される。
【0005】
冷却水(循環水)中の薬液濃度を測定する方法として、特許文献1には、水処理薬剤にトレーサー物質を添加、混合し、循環水中のトレーサー物質濃度を測定し、間接的に水処理薬剤濃度を測定する方法(例えば、臭素トレーサー法、リチウムトレーサー法、蛍光トレーサー法、色素トレーサー法)が開示されている。
また、特許文献1には、一有効薬品成分である水溶性ポリマーにトレーサー物質を化合させるか、その重合時にトレーサー物質を共重合させて、そのポリマー分子に化学結合したトレーサー物質の循環水中濃度を測定し、直接的に水処理薬剤濃度を測定する方法も開示されている。
【0006】
トレーサー物質を用いた前記薬液濃度測定方法では、薬液濃度測定装置内に冷却水を導入して冷却水中のトレーサー物質濃度を連続的に測定し、測定したトレーサー物質濃度に基づく指令信号を薬液濃度測定装置から定量ポンプへ送信し、それによって定量ポンプによる冷却水中への薬液の注入量を制御することにより、冷却水中の薬液濃度を所定範囲内の濃度に維持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−271564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トレーサー物質を用いた前記薬液濃度測定方法では、高価な定量ポンプが必要であるため設備費がかさむ、定量ポンプを駆動させる電力費(ランニングコスト)がかかる、定量ポンプは精密機械であるため定期的なメンテナンスが必要となる等が、水処理薬剤ユーザーにとっては負担となっている。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、設備費およびランニングコストの削減、構成の簡素化およびメンテナンスの簡易化を図ることができる薬液注入装置および薬液注入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明によれば、熱源と放熱部とに冷却水を循環させる冷却水ラインに、水処理薬液を収容する薬液タンクから前記薬液を注入する薬液注入部と、
前記薬液注入部による前記薬液の注入量を制御する制御部とを備え、
前記薬液注入部が、前記冷却水ラインに接続されるインジェクターと、前記インジェクターと前記薬液タンクとを接続する接続パイプと、前記冷却水ラインまたは前記接続パイプに設けられた流量調整バルブとを有し、
前記インジェクターは、その内部に冷却水を流通させることにより負圧を発生させ、かつ前記薬液タンクから前記薬液を前記内部へ吸引して冷却水と混合させるように構成され、
前記制御部は、前記冷却水中で消費される前記薬液の薬液濃度を測定し、かつ測定した薬液濃度に基づいて前記流量調整バルブを調整し前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整することにより、前記薬液の前記冷却水中への注入量を制御するように構成された薬液注入装置が提供される。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、熱源と放熱部とに接続された循環式の冷却水ライン内の冷却水に薬液タンク内の水処理薬液を注入する薬液注入方法であって、
前記冷却水ラインまたは前記冷却水ラインと接続するバイパス管に設けられたインジェクターに接続パイプを介して前記薬液タンクを接続すると共に、前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整する流量調整バルブを前記冷却水ラインまたは前記接続パイプに設け、
前記冷却水中の薬液濃度を測定し、かつ測定した薬液濃度に基づいて前記流量調整バルブを調整し前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整することにより、前記薬液の前記冷却水中への注入量を制御する薬液注入方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インジェクター内を冷却水が流れることにより生じるベルヌーイ効果を利用して薬液タンク内の薬液を冷却水ラインへ送ることができるため、従来用いられていた定量ポンプを省略することができる。
よって、定量ポンプ削減による薬液注入装置の簡素化と低コスト化、ランニングコストの削減およびメンテナンスの簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。
図2】本発明の実施形態2の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。
図3】本発明の実施形態3の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の薬液注入装置は、熱源と放熱部とに冷却水を循環させる冷却水ラインに、水処理薬液を収容する薬液タンクから前記薬液を注入する薬液注入部と、
前記薬液注入部による前記薬液の注入量を制御する制御部とを備え、
前記薬液注入部が、前記冷却水ラインに接続されるインジェクターと、前記インジェクターと前記薬液タンクとを接続する接続パイプと、前記冷却水ラインまたは前記接続パイプに設けられた流量調整バルブとを有し、
前記インジェクターは、その内部に冷却水を流通させることにより負圧を発生させ、かつ前記薬液タンクから前記薬液を前記内部へ吸引して冷却水と混合させるように構成され、
前記制御部は、前記冷却水中で消費される前記薬液の薬液濃度を測定し、かつ測定した薬液濃度に基づいて前記流量調整バルブを調整し前記インジェクター内へ導入される前記冷却水または前記薬液の流量を調整することにより、前記薬液の前記冷却水中への注入量を制御するように構成されている。
【0015】
本発明の薬液注入装置は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
(1)前記インジェクターを前記冷却水ラインへ接続する導入側バイパス管および排出側バイパス管をさらに備え、
前記インジェクターは、前記冷却水ラインからの前記冷却水を内部に導入するように前記導入側バイパス管と接続される流入部と、前記流入部内に流入した前記冷却水を流入時の圧力よりも低下させて前記冷却水ラインへ流出させるように前記排出側バイパス管と接続させる流出部と、前記接続パイプと接続されて前記流出部に前記薬液を送り込む薬液吸込部とを有してもよい。
【0016】
(2)前記流量調整バルブが、前記導入側バイパス管に設けられてもよい。
(3)前記流量調整バルブが、前記冷却水ラインと前記導入側バイパス管との接続部に設けられてもよい。
(4)前記流量調整バルブが、前記接続パイプに設けられてもよい。
【0017】
前記構成(2)および(3)によれば、インジェクター内を流れる冷却水の流量を調整することができ、これによりインジェクター内へ吸引する薬液の吸引力およびインジェクター内へ導入される薬液の注入量を調整することができる。さらに、前記構成(2)および(3)によれば、内部が負圧となる接続パイプへの負担を前記構成(4)よりも軽減することができる。
前記構成(4)によれば、インジェクター内へ導入される薬液の注入量を直接的に調整することができると共に、前記構成(1)および(2)における導入側および排出側バイパス管を省略することができるため、冷却水系を簡素化することができる。
【0018】
(5)前記制御部が、冷却水中に分散した薬液濃度の指標となる蛍光物質に光を照射して発光させ、かつ蛍光物質の発光強度を測定するように構成されてもよい。
このようにすれば、蛍光トレーサー法によって冷却水中の薬液濃度(有効成分濃度)を間接的に測定することができる。
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の薬液加温装置の各実施形態について詳説する。
【0020】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。
まず、実施形態1の薬液注入装置30が設けられた冷却水系10の構成について説明する。
【0021】
<冷却水系の構成について>
この冷却水系10は、主として、冷却塔11と、冷却塔11に接続されて冷却水Wを循環させる冷却水ライン12と、冷却水ライン12に設けられたメインポンプ13と、冷却水ライン12に接続された薬液タンク14および制御部31を含む薬液注入装置30とを備える。
【0022】
さらに詳しく説明すると、冷却水系10には冷凍機15が設けられると共に、冷凍機15は冷水ライン16と接続されている。なお、冷却水系10が工場、発電所等に設けられている場合の冷水ライン16は主に産業機器と熱交換可能に設けられ、冷却水系10がビル、駅、空港等に設けられている場合の冷水ライン16は主に空調設備と熱交換可能に設けられている。
【0023】
なお、図示省略するが、冷却水系10には、冷却水ライン12から分岐して冷却水Wの一部(ブロー水)を抜き取り外部に排出するブロー水ラインと、新しい冷却水W(例えば、工業用水)を冷却水ライン12中へ補給する補給水ラインと、冷却水W中の不純物を捕集する捕集部等が設けられている。
【0024】
薬液タンク14は、冷却水中に添加されてスライム、腐食および/またはスケール等を抑制する有効成分を含んだ薬液(液状の水処理剤)Dsを収容する樹脂製(例えば、ポリエチレン製)のタンクであり、上部には薬液補充口およびそれを開閉可能に覆う蓋体14aを有すると共に、下部には接続パイプと液密に接続される接続口14bを有している。
【0025】
ここで、スライム抑制成分としては次亜塩素酸ナトリウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等の有機系殺菌剤などが挙げられ、腐食抑制成分としてはヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、亜鉛塩、トリルトリアゾール等が挙げられ、スケール抑制成分としてはアクリル酸系ポリマー、マレイン酸系ポリマー等が挙げられる。
【0026】
薬液注入装置30は、薬液タンク14内の薬液Dsを所定の注入量で冷却水ライン12を流れる冷却水W中に注入する装置であり、冷却水ライン12に接続された導入側バイパス管35aと排出側バイパス管35bとの間に設けられたインジェクター32と、薬液タンク14とインジェクター32とを接続する接続パイプ33と、導入側バイパス管35aに設けられた流量調整バルブ(電動バルブ)34と、流量調整バルブ34を制御可能な前記制御部31とを備える。
【0027】
インジェクター32は、冷却水ライン12からの冷却水Wを内部に導入する流入部32aと、流入部32a内に流入した冷却水Wを流入時の圧力よりも低下させて冷却水ライン12へ流出させる流出部32bと、接続パイプ33と接続されて流入部32aと流出部32bとの間に薬液Dsを送り込む薬液吸込部32cとを有し、市販品を用いることができる。
【0028】
制御部31は、実施形態1の場合、蛍光トレーサー法に対応した装置であり、例えば、片山ナルコ株式会社製の「3D TRASAR」(登録商標)を用いることができる。
蛍光トレーサー法に対応した制御部31は、冷却水W中の薬液濃度の指標となる指標物質としての蛍光物質に特定波長の光を照射し、それによって励起発光した蛍光物質の発光強度(反射光の強度)を測定することにより、冷却水W中の薬液Dsの濃度を間接的に測定することができる。
【0029】
そのため、薬液タンク14内の薬液Ds中には、有効成分の種類および質量に応じた所定量の蛍光物質が添加されている。
実施形態1の場合、蛍光物質としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0030】
制御部31は、例えば、冷却塔11の下部の冷却水Wをポンプ37bにて汲み上げて再び冷却塔11内へ戻す循環経路37aに設けられ、冷却水Wを連続的に導入(通水)しながら冷却水W中の蛍光物質の発光強度を測定し、測定した発光強度(測定値)が予め設定入力された基準発光強度(設定値)の範囲内であるか否かを判定する。
また、制御部31は流量調整バルブ34のモータMの制御回路と電気的に接続されており、前記判定の結果、測定値が設定値の下限を下回れば流量調整バルブ34の開き度合いを大きくするようモータMを駆動制御する指令信号が制御部31から制御回路へ送信され、測定値が設定値の上限を上回れば流量調整バルブ34の開き度合いを小さくするようモータMを駆動制御する指令信号が制御部31から制御回路へ送信される。
【0031】
<冷却水系の動作について>
冷却塔11およびメインポンプ13が駆動することにより、冷却水ライン12内を矢印A方向に冷却水Wが循環する。この間、冷却水ライン12内の冷却水Wは冷凍機15を介して冷水ライン16内の冷水と熱交換する。
【0032】
また、冷却水ライン12内を流れる冷却水Wの一部は、薬液注入装置30の導入側バイパス管35aを通ってインジェクター32内に流入し、排出側バイパス管35bを通って再び冷却水ライン12内の冷却水Wと合流する。この際、インジェクター32内において、流出部32b内の圧力が導入部32a内の圧力よりも低くなり、ベルヌーイ効果によって薬液吸入部32c内が負圧となって薬液タンク14内の薬液Dsがインジェクター32内に引き込まれるため、薬液Dsと混合した冷却水Wがインジェクター32から冷却水ライン12へ排出される。このときの薬液Dsの流量は、インジェクター32から冷却水ライン12へ排出される冷却水Wの流速(流量)に依存する。
【0033】
そして、冷却塔11へ戻った冷却水Wは、回転するファン11aにより発生した上昇気流中でシャワー状に散布されて冷却され、再び冷却水ライン12を循環する。
また、冷却塔11内の下部に溜まった冷却水Wの一部は薬液注入装置30の循環経路37aを循環し、この際、制御部31に導入された冷却水W中の蛍光物質の発光強度が連続的に測定される。
【0034】
制御部31は、前記のように測定値に基づく指令信号を流量調整バルブ34へ送信し、それによって流量調整バルブ34の導入側バイパス管35aを通る冷却水Wの流量を調整する。すなわち、蛍光物質の発光強度の測定値(冷却水中の薬液濃度)が設定値の下限を下回ると導入側バイパス管35aを通る冷却水Wの流量を増加させ、測定値(冷却水中の薬液濃度)が設定値の上限を上回ると導入側バイパス管35aを通る冷却水Wの流量を減少させるよう制御する。
これにより、冷却水W中の薬液Dsの濃度に応じて、インジェクター32を通過する冷却水Wの流量が調整され、インジェクター32内に注入される薬液Dsの注入量も適切に調整される。
【0035】
(実施形態2)
図2は本発明の実施形態2の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。なお、図2において、図1中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
以下、実施形態2における実施形態1とは異なる構成を主に説明する。
【0036】
実施形態2において、薬液注入装置130は、概ね実施形態1における薬液注入装置30と同じ構成を有するが、流量調整バルブ134の構成およびその取り付け位置が実施形態1とは異なる。
実施形態2の場合、冷却水ライン12と導入側バイパス管35aとの接続箇所に流量調整バルブ134として電動式3方バルブが設けられ、この電動式3方バルブのモータMの制御回路に制御部31が電気的に接続されている。
【0037】
実施形態2の場合、流量調整バルブ134(電動式3方バルブ)の下流側において、冷却水中の薬液濃度が設定値の上限を上回っていると制御部31にて判断されると、制御部31は導入側第2バイパス管35aへ冷却水が流れずに冷却水ライン12のみに冷却水が流れる流路設定となるよう流量調整バルブ134を切り替え、冷却水中の薬液濃度が設定値の下限を下回っていると制御部31にて判断されると、制御部31は導入側第2バイパス管35aに冷却水が流れる流路設定となるよう流量調整バルブ134を切り替える。このとき、冷却水ライン12へ冷却水が流れても流れなくてもよい。
このように構成された実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
(実施形態3)
図3は本発明の実施形態3の薬液注入装置が設けられた冷却水系を示す概略的な構成図である。なお、図3において、図1および図2中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
以下、実施形態3における実施形態1および2とは異なる構成を主に説明する。
【0039】
実施形態3の薬液注入装置230において、実施形態1および2で設けられていた導入側および排出側バイパス管35a、35bが省略され、インジェクター32は冷却水ライン112に直接設けられる。また、流量調整バルブ34は接続パイプ33に設けられる。
このように構成された実施形態3によれば、実施形態1および2と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
また、実施形態1および2では、本発明の薬液注入装置が、冷凍機15および冷水ライン16を介して産業機器や空調設備等と間接的に熱交換する冷却水系10に設けられた場合を例示したが、本発明はこのような冷却水系10への適用に限定されるものではない。
例えば、製鉄所で製造される高温の鋼材Fを冷却水Wにて直接的に冷却する設備が冷却水ライン112に備えられた冷却水系110にも実施形態1〜3の薬液加温装置を適用することができる。
【0041】
(他の実施形態)
1.実施形態1〜3では、冷却水中の蛍光物質の発光強度を測定することにより間接的に冷却水中の薬液の有効成分濃度を測定する場合を例示したが、蛍光物質を薬液の有効成分に結合させて直接的に有効成分濃度を測定してもよく、これらを同時に行ってもよい。
【0042】
2.実施形態1〜3では、蛍光トレーサー法にて冷却水中の薬液の有効成分濃度を測定する場合を例示したが、蛍光トレーサー法以外にも、臭素トレーサー法、リチウムトレーサー法、色素トレーサー法等を用いてもよい。
【0043】
3.本発明の薬液注入装置は、冷却水系の複数箇所に流量調整バルブが設けられてもよい。例えば、図1で示された冷却水系10における接続パイプ33に流量調整バルブ34を追加で設けてもよい。このようにすれば、冷却水中への薬液の注入量をより高精度に制御することができる。
【0044】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の薬液注入装置は、工場、ビル等に設けられた産業機器、空調設備等を冷却する冷却水系に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
12、112 冷却水ライン
14 薬液タンク
30、130、230 薬液注入装置
31 制御部
32 インジェクター
32a 流入部
32b 流出部
32c 薬液吸込部
33 接続パイプ
34、134 流量調整バルブ
35a 導入側バイパス管
35b 排出側バイパス管
Ds 薬液
W 冷却水
図1
図2
図3