(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、加熱室内に蒸気を供給することによって、管更生部材を加熱軟化させる。ここで、加熱室の天壁の外面側(天壁上面)は、外気と接している一方で、加熱室内は、蒸気で満たされている。このため、加熱室内の蒸気の一部は、外気の影響を受けて低温化した天壁の内面側(天壁下面)で凝縮し、水滴となって落下する。ドラム巻きタイプの管更生部材の場合は、巻付用ドラムのフランジがある程度の水滴避けとなるため、管更生部材上に落下する水滴は少ない。一方、ドラムレスタイプの管更生部材の場合は、管更生部材上に水滴がそのまま落下してくる。このため、管更生部材の重ね合わせ部分などに水滴が滞留し、管更生部材が部分的に加熱不足になる恐れがある。つまり、管更生部材に加熱むらの生じる恐れがある。
【0006】
管更生部材に加熱むらがあると、既設管内への挿入時に挿入力が変化し、管更生部材にかかる応力が変動するので、施工後の管厚にばらつきが生じ易くなり、更生管路の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管更生部材の加熱方法および加熱装置を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、ドラムレスタイプの管更生部材であっても可及的均一に加熱できる、管更生部材の加熱方法および加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、所定の巻き姿に巻かれた管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱室内で加熱軟化させる管更生部材の加熱方法であって、(A)加熱室内に設けられた回転軸に管更生部材を装着するステップ、(B)管更生部材の上方を覆う水滴防止部材を加熱室の天壁との間に間隔をあけた状態で設置するステップ
、(C)加熱室の内部に排気入口を有し、当該加熱室の外部に排気出口を有する排気集約管を設置するステップ、および(
D)加熱室内に蒸気を供給して、管更生部材を加熱軟化させるステップを含
み、ステップ(B)において、天壁と水滴防止部材との間隔は、排気集約管の排気入口側の端部を設置可能な大きさに設定され、ステップ(C)において、排気集約管は、排気入口側の端部が天壁と水滴防止部材との間に位置するように設置される、管更生部材の加熱方法である。
【0010】
第1の発明の管更生部材の加熱方法では、所定の巻き姿に巻かれた管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱室内で加熱軟化させる。先ず、ステップ(A)において、加熱室内に設けられた回転軸に対して、たとえばドラムレスで所定の巻き姿に巻かれたドラムレスタイプの管更生部材を装着する。次に、ステップ(B)において、遮水性を有する水滴防止部材を管更生部材の上方を覆うように設置する。
また、ステップ(C)において、加熱室の内部に排気入口を有し、当該加熱室の外部に排気出口を有する排気集約管を設置する。この際、水滴防止部材と加熱室の天壁との間には、
排気集約管の排気入口側の端部を設置可能な所定の間隔が設けられ
、排気集約管は、排気入口側の端部が天壁と水滴防止部材との間に位置するように設置される。そして、ステップ(
D)において、加熱室内に蒸気を供給して、管更生部材を加熱軟化させる。
【0011】
第1の発明によれば、管更生部材の上方を覆うように水滴防止部材を設けるので、管更生部材上に水滴が落下することを防止できる。したがって、水滴の滞留による管更生部材の加熱不足が防止され、ドラムレスタイプの管更生部材であっても、その全長に亘って均一に加熱できる。
【0012】
第2の発明は、
所定の巻き姿に巻かれた管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱室内で加熱軟化させる管更生部材の加熱方法であって、(A)加熱室内に設けられた回転軸に管更生部材を装着するステップ、(B)管更生部材の上方を覆う水滴防止部材を加熱室の天壁との間に間隔をあけた状態で設置するステップ、および(C)加熱室内に蒸気を供給して、管更生部材を加熱軟化させるステップを含み、ステップ(B)において、水滴防止部材は、回転軸の上端部にスペーサを介して取り付けられる
、管更生部材の加熱方法である。
【0013】
第2の発明では、水滴防止部材は、スペーサを用いて、回転軸との間に間隔をあけた状態で取り付けられる。
【0014】
第3の発明は、所定の巻き姿に巻かれた管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱軟化させる管更生部材の加熱装置であって、管更生部材が収容される加熱室、加熱室の内部に設けられて管更生部材が装着される回転軸、加熱室の内部に蒸気を供給する蒸気供給部、および回転軸に対して着脱可能に取り付けられ、加熱室の天壁との間に間隔をあけた状態で管更生部材の上方を覆う水滴防止部材を備える、管更生部材の加熱装置である。
【0015】
第3の発明では、加熱装置は、加熱室を備え、所定の巻き姿に巻かれた管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱軟化させる。加熱室内には、回転軸が設けられ、この回転軸に対して、たとえばドラムレスで所定の巻き姿に巻かれたドラムレスタイプの管更生部材が装着される。また、加熱室には、その内部に蒸気を供給する蒸気供給部が設けられる。そして、回転軸には、管更生部材の上方を覆う水滴防止部材が着脱可能に取り付けられる。この際、水滴防止部材と加熱室の天壁との間には、所定の間隔が設けられる。
【0016】
第3の発明によれば、管更生部材の上方を覆うように水滴防止部材を設けるので、管更生部材上に水滴が落下することを防止できる。したがって、水滴の滞留による管更生部材の加熱不足が防止され、ドラムレスタイプの管更生部材であっても、その全長に亘って均一に加熱できる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明に従属し、水滴防止部材は、フレームと、フレームによって支持される複数の板状部材とによって構成され、複数の板状部材の少なくとも1つは、フレームに対して着脱可能とされる。
【0018】
第4の発明では、水滴防止部材は、その骨格をなすフレームと、フレームによって支持される複数の板状部材とを含む。そして、板状部材の少なくとも1つは、フレームに対して着脱可能とされる。板状部材を着脱可能とすることで、水滴防止部材を回転軸に取り付けた後も、蒸気ホースの接続作業などを行い易くなる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、管更生部材の上方を覆うように水滴防止部材を設けるので、管更生部材上に水滴が落下することを防止できる。したがって、水滴の滞留による管更生部材の加熱不足が防止され、ドラムレスタイプの管更生部材であっても、その全長に亘って均一に加熱できる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および
図10を参照して、この発明の一実施例である管更生部材の加熱装置10(以下、単に「加熱装置10」と言う。)は、老朽化した既設管100を内側から補修するための管更生部材102を、既設管100内に挿入する前に加熱して軟化させるための装置である。
【0023】
先ず、加熱装置10の具体的な説明の前に、管更生部材102について簡単に説明する。管更生部材102は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂によって形成される長尺管であって、所定の巻き姿に巻かれて搬送等される。この実施例では、
図4に示すように、管更生部材102は、平板状部102aとその両端に形成される楕円筒状部102bとを有する断面略瓢箪形の縮径形状とされて、ドラムレスで渦巻き状(ロール状)に巻かれている。すなわち、この実施例では、ドラムレスタイプの管更生部材102を使用する。
【0024】
管更生部材102は、公知の製造方法によって製造することができる。管更生部材102を製造する際には、先ず、所定の径で直管を押出成形する。そして、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(たとえば硬質塩化ビニル製の管更生部材102では、100℃程度)にその直管を加熱した状態で、押し板やローラ等を用いて偏平させる等の縮径加工を施し、断面略瓢箪形の縮径形状にする。これにより、縮径形状とされた管更生部材102は、再び軟化点以上融点以下の温度に加熱および加圧することによって、円筒形等の元の形状に復元するようになる。なお、管更生部材102は、復元したときの外径が既設管100の内径と略等しいサイズとなるように設定される。更生する既設管100の内径は、たとえば100−700mmである。
【0025】
なお、管更生部材102は、種々の用途および構成材料の既設管100の更生に適用し得る。たとえば、ガス管、上下水道管およびケーブル保護管等の更生に適用することができ、更生する管路の材質も、鉄筋コンクリート製、鋳鉄製、鋼製および合成樹脂製などのいずれであってもよい。
【0026】
続いて、この発明の一実施例である加熱装置10について具体的に説明する。加熱装置10は、上述のように、管更生部材102を加熱して軟化させるための装置であって、管更生部材102を収容する加熱室12を備える。
【0027】
図1−
図3に示すように、加熱室12は、基部14と、基部14上に設けられるテント部16とを含み、全体として、中空の略円柱形状に形成される。加熱室12の直径は、たとえば2550mmであり、その上下方向の長さ(つまり背の高さ)は、たとえば1700mmである。
【0028】
基部14は、加熱室12の底壁を構成する部分であり、鉄およびSUS(ステンレス鋼)などの金属によって円板状に形成される。また、基部14の下には、矩形枠状の基礎フレーム18が設けられており、基部14は、この基礎フレーム18によって下方に所定の空間を有する状態で保持される。
【0029】
テント部16は、加熱室12の天壁および側壁を構成する部分であり、有頂円筒状に形成される。この実施例では、テント部16は、その骨組みを形成するフレーム20と、フレーム20に被せられる天幕シート22とを備える。フレーム20は、たとえば、鉄およびSUS等の金属からなる中空パイプを縦横に組み合わせることによって形成され、縦フレーム20aと、縦フレーム20aの上端部同士を連結する横フレーム20bとを含む。また、天幕シート22は、耐熱ゴム等の弾性材によって形成され、フレーム20の天井部および側部を気密的に覆う。
【0030】
また、この実施例では、加熱室12の外面(天幕シート22の上面および外側面)を覆うように被覆部材24が設けられる。被覆部材24は、断熱性、防風性および防水性を有する素材によって形成される。たとえば、被覆部材24としては、樹脂シート等の基材の両面をアルミニウム箔などの金属層で挟み込んで形成される市販の遮熱シートを用いることができる。この実施例では、被覆部材24は、天幕シート22の上面を覆う第1天井カバー24aと、天幕シート22の外側面を覆う胴巻きカバー24bと、第1天井カバー24aおよび胴巻きカバー24bの上部を上から覆う第2天井カバー24cとを含む。
【0031】
このような被覆部材24によって加熱室12の外面全体を覆うことで、外気温、風および雨などの外部環境(外乱因子)が、加熱室12の内部環境に及ぼす影響を低減させることができる。したがって、外部環境によらず、加熱室12内における管更生部材102の加熱条件を均一化ないし安定化することができる。なお、ここで言う防風性を有するとは、風を通さない性能を有することを言い、少なくともJIS A6111:2004の防風性の規格(JIS P8117 ガーレー試験機法による通過時間が10秒以上)を満たすものであることを言う。
【0032】
このような加熱室12内には、管更生部材102を回転させるための回転機構として、ベーステーブル26およびベース軸28が設けられる。ベーステーブル26は、鉄およびSUS等の金属によって円環板状に形成され、基部14の上面に設置される。このベーステーブル26の外周面には、ギア歯が形成されており、ベーステーブル26のギア歯には、伝達ギア30が連結される。駆動モータ32の駆動力は、伝達チェーン34等を介して伝達ギア30に伝えられ、この伝達ギア30から回転駆動力を受けることによって、ベーステーブル26はその軸周りに回転可能とされる。
【0033】
また、ベース軸28は、鉄およびSUS等の金属によって直管状に形成され、ベーステーブル26の中央部に一体的に立設される。ベース軸28は、ベーステーブル26と共に回転する。また、ベース軸28の内部には、パイプ立上げ部36が設けられる。パイプ立上げ部36は、鉄およびSUS等の金属によって直管状にされ、ベーステーブル26およびベース軸28とは一体回転しないように、基部14上に立設されている。このパイプ立上げ部36の内部には、後述する第1蒸気パイプ46の立上り部分が挿通される。
【0034】
さらに、ベーステーブル26上には、管更生部材102を載置するためのターンテーブル38が設けられる。ターンテーブル38は、鉄およびSUS等の金属によって円環板状に形成され、その外径は、たとえば900mmである。また、ターンテーブル38の中央部には、回転軸40が一体的に立設される。回転軸40は、鉄およびSUS等の金属によって直管状に形成され、ベース軸28の外周面を囲繞するように設けられる。ベーステーブル26とターンテーブル38とは、係合ピン等によって連結されており、ターンテーブル38および回転軸40は、ベーステーブル26の回転に伴って回転する。
【0035】
そして、この回転軸40に対してドラムレスタイプの管更生部材102が装着される。すなわち、管更生部材102の巻中心に回転軸40が挿通されて、ターンテーブル38上に管更生部材102が載置される。回転軸40に装着された管更生部材102は、ターンテーブル38および回転軸40の回転に伴って回転する。
【0036】
図1−
図3に戻って、加熱室12には、蒸気供給部が設けられる。蒸気供給部は、加熱室12の内部に蒸気を供給するものであり、この実施例では、第1蒸気パイプ46と第2蒸気パイプ48とを含む。ただし、蒸気供給部の具体的構成は、以下の構成に限定されるものではないことを予め指摘しておく。
【0037】
第1蒸気パイプ46および第2蒸気パイプ48の上流側端部には、接続ホース50を介して、加熱室12の外部に設けられる蒸気発生装置52が接続されており、所定の値に加熱および加圧された蒸気が蒸気発生装置52から第1蒸気パイプ46および第2蒸気パイプ48に供給される。
【0038】
第1蒸気パイプ46は、基部14の下方空間を横方向に延びて加熱室12の中央部で立ち上がり、パイプ立上げ部36の内部を通って上方向に延びる。第1蒸気パイプ46の下流側端部(上端部)には、公知のスイベル等の回転部材54が設けられ、この回転部材54に蒸気ホース56の上流側端部が接続される。そして、この蒸気ホース56の下流側端部が管更生部材102の巻始め側の端部に接続され、蒸気発生装置52からの蒸気は、第1蒸気パイプ46および蒸気ホース56等を介して、管更生部材102の内面側に供給される。管更生部材102の内面側に供給された蒸気は、管更生部材102の巻終り側の端部から加熱室12内に排出される。
【0039】
また、第2蒸気パイプ48は、基部14の下方空間を横方向に延びてベーステーブル26の周辺部で立ち上がり、ベーステーブル26を囲むように矩形状に配管される。この第2蒸気パイプ48の管壁には、複数の上向きの放出孔が所定間隔で形成されており、蒸気発生装置52からの蒸気は、第2蒸気パイプ48の放出孔から加熱室12の内部(管更生部材102の外面側)に供給される。
【0040】
さらに、加熱室12には、熱風供給部58が設けられる。熱風供給部58は、所定温度に加熱された熱風(乾燥空気)を加熱室12内に供給するためのものであり、基部14の下方空間を横方向に延びるように設けられる。熱風供給部58の上流側端部には、可撓性を有する耐熱ホース60を介して、ジェットヒータ等の熱風発生装置62が接続される。また、熱風供給部58の上流側端部には、熱風供給部58の内部通路を開閉自在に封止するシャッタ64が設けられる。一方、熱風供給部58の下流側端部(熱風流入口66)は、基部14の周縁部において略台形状に上向きに開口する。つまり、加熱室12内に熱風を送り込む熱風流入口66は、管更生部材102の収容位置よりも下方に設けられる。熱風発生装置62からの熱風は、耐熱ホース60および熱風供給部58を介して、熱風流入口66から加熱室12の内部に供給される。
【0041】
また、加熱室12には、排気集約管70が設けられる。排気集約管70は、加熱室12内の余剰の空気(蒸気および熱風)をまとめて外部に排出するためのものであり、加熱室12内の中央上部に排気入口72を有し、加熱室12外に排気出口74を有する。この実施例では、排気集約管70は、横引き管部70aと可撓管部70bとを備える。
【0042】
横引き管部70aは、鉄およびSUS等の金属によって形成される直管であって、加熱室12内の中央上部から横方向に延び、加熱室12の側壁(この実施例では、天幕シート22、胴巻きカバー24bおよび第2天井カバー24c)を貫通して加熱室12の外部に突出する。この横引き管部70aの一方端部の開口が排気入口72となる。横引き管部70aの内径は、たとえば250mmである。一方、可撓管部70bは、可撓性を有する耐熱ホースであって、その一方端部が横引き管部70aの他端部に接続されて、その他端部は地表付近まで延びる。この可撓管部70bの他端部の開口が排気出口74となる。
【0043】
このような排気集約管70を加熱室12に設けることで、加熱室12からの排気量を適切に制御できる。すなわち、加熱室12からの排気量は、排気集約管70の内径および長さ等によって制御可能であるので、排気集約管70の内径および長さ等を適切に設定することによって、加熱室12からの排気量を適切に制御できる。また、排気入口72を加熱室12内の中央上部に配置することで、加熱室12内の全体からバランスよく均一に排気できる。さらに、加熱室12から蒸気を無造作に排出すると、蒸気が周辺の植込みに当たって植込みを枯死させてしまったり、加熱室12から立ち上がる湯気(水滴化した蒸気)を見た周辺住民に火災等の異変が発生していると誤認されたりするなど、周辺に悪影響を及ぼす恐れがある。これに対して、排気集約管70を用いて蒸気をまとめて排出することで、このような不具合を解消できる。特に、排気集約管70が可撓管部70bを備えることで、排気出口74の開口方向および位置を容易に変更調整できるので、施工現場の周辺状況に適切に対応可能となる。
【0044】
また、この実施例では、排気集約管70の排気出口74には、槽76およびヒータ78が接続される。槽76としては、たとえばドラム缶を用いることができる。ヒータ78は、たとえばジェットヒータであって、槽76の側壁を貫通するように設けられて、槽76内に熱風を供給する。加熱室12から排気集約管70を通って槽76に排出された湯気は、ヒータ78によって加熱されることで再度蒸発して、透明化する。上記のように、装置から湯気が立ち上がっていると、周辺住民に火災等の異変が発生していると誤認される恐れがあるが、槽76およびヒータ78を用いて、加熱室12から排出される湯気を再度蒸発させて不可視化することによって、このような不具合を解消できる。
【0045】
さらに、加熱室12には、管更生部材102よりも下方であってかつ熱風流入口66よりも上方において略水平方向に拡がるように、熱流調整板80が設けられる。熱流調整板80は、熱風流入口66から加熱室12内に送り込まれる熱風の流れを調整ないし制御して、加熱室12内の全体に熱風が適切に行き渡るようにするための部材である。
【0046】
具体的には、熱流調整板80は、鉄およびSUS等の金属によって円環板状に形成され、ベーステーブル26の外側面から加熱室12の内側面に亘るように、略水平方向に拡がって設けられる。熱流調整板80の下面には、複数の脚部82が設けられ、熱流調整板80は、この脚部82によって、管更生部材102と熱風流入口66との間の所定の高さ位置に保持される。
【0047】
この熱流調整板80には、その上面と下面とを連通させる複数の円形の貫通孔84が所定の配置態様で形成される。貫通孔84は、熱風の通路となる部分であって、この貫通孔84の配置態様によって、上方へ向かう熱風の流れを調整することができる。
【0048】
この実施例では、貫通孔84による熱流調整板80の開口率は、熱流調整板80の下方に存在する障害物(たとえば、伝達ギア30を収容するギアボックス86および補強リブ88)の熱風の流れ方向における下流側よりも上流側の方が小さく設定される。これは、障害物があると、熱風が障害物に当たってその手前側(上流側)で上昇し、障害物の奥側(下流側)には熱風が回り込み難くなるからである。また、熱流調整板80の熱風流入口66の直上部分には、貫通孔84が形成されない。これは、熱風流入口66の直上部分は、最も熱風が上昇し易い位置であるからである。つまり、この実施例では、熱風が流れ込み易い(上昇し易い)部分については、熱流調整板80の開口率を小さく、または開口率をゼロに設定することによって、熱風が流れ込み難い部分にも熱風が適切に行き渡るようにしている。
【0049】
具体的には、
図5からよく分かるように、ギアボックス86の熱流方向上流側の領域A1における熱流調整板80の開口率は、ギアボックス86の熱流方向下流側の領域A2における熱流調整板80の開口率よりも、小さく設定される。また、補強リブ88の熱流方向上流側の領域B1における熱流調整板80の開口率は、補強リブ88の熱流方向下流側の領域B2における熱流調整板80の開口率よりも、小さく設定される。さらに、加熱室12の周縁部は熱風が回り込み易いので、加熱室12の周縁領域C1における熱流調整板80の開口率は、それよりも中央側の内側領域C2における熱流調整板80の開口率よりも、小さく設定される。また、上述のように、熱風流入口66の直上部分における熱流調整板80の開口率は、ゼロに設定される。
【0050】
このような熱流調整板80を加熱室12内に設けることによって、熱風流入口66から加熱室12内に送り込まれる熱風の流れを調整ないし制御できるので、加熱室12内の全体に熱風を適切に行き渡らせることができる。すなわち、加熱室12内の温度分布が一様となるように調整できるので、管更生部材102の全体を可及的均一に加熱軟化させることができる。ただし、熱流調整板80に形成する貫通孔84の数、形状および位置などの配置態様は、
図5に示した配置態様に限定されず、加熱室12内の構造などに応じて適宜変更可能である。
【0051】
上述のような加熱装置10では、加熱室12内に蒸気を供給することによって、管更生部材を加熱軟化させる。ここで、加熱室12内の蒸気の一部は、加熱室12(テント部16)の天壁の内面側で凝縮(結露)し、水滴となって管更生部材102上に落下する。管更生部材102上に落下した水滴は、管更生部材102の重ね合わせ部分などに滞留するため、このままでは管更生部材102が部分的に加熱不足になる恐れがある。
【0052】
そこで、この実施例では、管更生部材102の上方を覆うように、遮水性を有する水滴防止部材90を設けることによって、管更生部材102上に水滴が落下することを防止するようにしている。以下、
図2および
図6を参照して、水滴防止部材90の構成について具体的に説明する。
【0053】
図2および
図6に示すように、水滴防止部材90は、スペーサ92を介して、回転軸40の上端部に着脱可能に取り付けられて、加熱室12の天壁との間に間隔をあけた状態で管更生部材102の上方を覆う。加熱室12の天壁と水滴防止部材90との間に所定の空間を設けることで、水滴防止部材90の熱が加熱室12の天壁に移動することが防止され、水滴防止部材90の温度は、加熱室12内の雰囲気温度に保たれる。したがって、水滴防止部材90の表面においては、蒸気の凝縮は発生しない。
【0054】
具体的には、水滴防止部材90は、その骨格をなすフレーム94と、フレーム94によって支持される複数の板状部材96とを含み、全体として略六角形の平板状に形成される。水滴防止部材90の外形寸法は、少なくとも管更生部材102の巻き姿状態における外形寸法よりも大きく設定される。つまり、平面視において、水滴防止部材90の外形線の内側に管更生部材102が収まるように、水滴防止部材90の大きさが設定される。
【0055】
フレーム94は、鉄およびSUS等の金属によって形成される。フレーム94は、放射状に延びる断面逆T字状の複数の支持部94aと、支持部94aの中心側端部を連結する短円筒状の連結部94bとを含む。板状部材96は、アルミニウム等の軽量の材料によって略三角板状に形成される。板状部材96は、支持部94aの水平板部上に載置されて、支持部94aに対して水密的に固定される。この際、板状部材96の少なくとも1つは、フレーム94に対して着脱可能とされる。板状部材96を着脱可能とすることで、水滴防止部材90を回転軸40の上端部に取り付けた後も、蒸気ホース56の接続作業などを行い易くなる。
【0056】
また、スペーサ92は、回転軸40との間に間隔をあけた状態で水滴防止部材90を着脱可能に取り付けるための取付部材であって、鉄およびSUS等の金属によって形成される。スペーサ92は、円筒部92aと、円筒部92aの両端部に形成される円環板状のフランジ部92bとを含む。円筒部92aの上端部は、上側のフランジ部92bよりも上方に突出しており、この円筒部92aの上端部が水滴防止部材90の連結部94bに嵌め込まれることによって、スペーサ92に対して水滴防止部材90が安定的に固定される。また、円筒部92aの側壁には、開口部が設けられており、蒸気ホース56は、円筒部92a内および開口部を通るように配管される。
【0057】
以下、
図7−
図9と共に
図1を参照して、上述のような加熱装置10を用いて、ドラムレスで所定の巻き姿に巻かれたドラムレスタイプの管更生部材102を加熱軟化させる方法について説明する。
【0058】
この加熱方法では、先ず、
図7に示すように、加熱装置10の基礎部分となる基部14、基礎フレーム18、縦フレーム20a、ベーステーブル26、ベース軸28、ターンテーブル38および回転軸40などを立坑110側(
図10参照)に設置する。その後、クレーン等を用いて、回転軸40に管更生部材102を装着する。この実施例では、管更生部材102の巻中心に回転軸40を挿通して、ターンテーブル38上に管更生部材102を載置する。
【0059】
次に、
図8に示すように、管更生部材102の上方を覆う水滴防止部材90を回転軸40の上端部に設置する。この実施例では、回転軸40の上端部にスペーサ92を取り付けた後、このスペーサ92の円筒部92aの上端部を水滴防止部材90の連結部94bに嵌め込んで固定する。また、スペーサ92の円筒部92a内および開口部を通るように蒸気ホース56を配管して、第1蒸気パイプ46の上端部に設けた回転部材54と管更生部材102の巻始め側の端部とを蒸気ホース56によって接続する。
【0060】
続いて、
図9に示すように、天幕シート22、被覆部材24および排気集約管70の横引き管部70aなどを設置する。この実施例では、縦フレーム20aの上端部を連結する横フレーム20bを設けた後、フレーム20の天井部および側部を覆うように天幕シート22を設けることによって、テント部16を形成する。この際、テント部16(加熱室12)の天壁下面と水滴防止部材90との間には、所定間隔が設けられる。また、天幕シート22の上面および外側面を覆うように被覆部材24を設けると共に、天幕シート22および被覆部材24を貫通するように排気集約管70の横引き管部70aが設ける。
【0061】
その後、
図1に示すように、熱風供給部58に耐熱ホース60を介して熱風発生装置62を接続し、横引き管部70aに可撓管部70bなどを接続し、第1蒸気パイプ46および第2蒸気パイプ48に接続ホース50を介して蒸気発生装置52を接続することで、管更生部材102の加熱準備が完了する。
【0062】
加熱準備が完了すると、続いて、加熱室12内に蒸気を供給して、管更生部材102を加熱軟化させる。管更生部材102を加熱軟化させる際には、先ず、加熱装置10の全体を5°程度傾けた後、駆動モータ32を作動させてベーステーブル26を回転させ、ターンテーブル38および管更生部材102を回転させる。次に、蒸気発生装置52を作動させて、第1蒸気パイプ46等を介して管更生部材102の内面側に蒸気を供給すると共に、第2蒸気パイプ48等を介して加熱室12内の全体に蒸気を供給する。また、熱風発生装置62を作動させて、熱風流入口66から加熱室12の内部に熱風を供給し、加熱室12内に供給された蒸気を熱風によってさらに加熱する。
【0063】
そして、所定の雰囲気温度(たとえば80〜100℃)の中で、管更生部材102を所定時間加熱することによって加熱軟化させる。この際、この実施例では管更生部材102の上方に水滴防止部材90が設けられるので、加熱室12の天壁から管更生部材102上に水滴が落下することを防止できる。また、被覆部材24によって天幕シート22の上面を覆うことで、天幕シート22の下面において結露が発生し難くなるので、加熱室12の天壁からの水滴の落下そのものが低減され、管更生部材102上に水滴が落下することがより確実に防止される。したがって、水滴の滞留による管更生部材102の加熱不足が防止され、管更生部材102を全長に亘って均一に加熱できる。
【0064】
続いて、
図10を参照して、上述のように加熱軟化させた管更生部材102を用いて、老朽化した既設管100を更生する更生方法について説明する。
【0065】
既設管100を更生する際には、先ず、既設管100の更生区間内の滞留物等を除去洗浄する。また、始点の立坑110側には、加熱装置10を設置し、終点の立坑112側には、牽引ワイヤ114を巻き取るためのウインチ116を設置する。そして、上述の要領で、加熱室12内に収容した管更生部材102を加熱軟化させる。
【0066】
管更生部材102が十分に加熱軟化されると、続いて、加熱室12内から管更生部材102を引き出して既設管100内に挿入する。この際には、終点の立坑112側から既設管100内に牽引ワイヤ114を挿通し、その牽引ワイヤ114を管更生部材102の先端に接続する。その後、牽引ワイヤ114をウインチ116で巻き取ることにより、管更生部材102を既設管100内に引き込む。
【0067】
管更生部材102の先端が立坑112に到達すると、管更生部材102の両端を切断して、そこに拡径用金具等を取り付け、管更生部材102の管端を封止する。そして、蒸気発生装置を用いて管更生部材102内に蒸気を供給し、管更生部材102を加熱すると共に内圧をかける。すると、管更生部材102は、断面形状が真円形状または略真円形状に拡径復元されて、管更生部材102の外周面全体が既設管100の内周面全体に略密着される。
【0068】
その後、内圧を保持した状態で、冷却ノズル等から管更生部材102内に冷却空気を供給して、管更生部材102を冷却する。冷却後、管更生部材102内から圧力空気を排出し、後処理を適宜実行することによって、管更生部材102を用いた既設管100の補修が完了する。
【0069】
以上のように、この実施例によれば、管更生部材102の上方を覆うように水滴防止部材90を設けるので、加熱室12の天壁から管更生部材102上に水滴が落下することを防止できる。したがって、水滴の滞留による管更生部材102の加熱不足が防止され、ドラムレスタイプの管更生部材102であっても、その全長に亘って均一に加熱できる。
【0070】
なお、上述の実施例では、略六角板状の水滴防止部材90を回転軸40の上端部にスペーサ92を介して設けるようにしたが、これに限定されない。水滴防止部材90の材質、形状および設置態様などの具体的構成は、加熱室12の天壁との間に間隔をあけた状態で管更生部材102の上方を覆うように設けられて、管更生部材102上への水滴の落下を防止できるものであれば、適宜変更可能である。
【0071】
たとえば、
図11に示すように、水滴防止部材90は、吊り具98などを用いて、横フレーム20b等から吊り下げるようにしてもよい。或いは、図示は省略するが、基部14の上面から上方に延びる支持体によって、水滴防止部材90を支持するようにしてもよい。
【0072】
また、たとえば、水滴防止部材90は、耐熱性および遮水性を有していれば、合成樹脂製であってもよいし、防水加工した布製であってもよい。
【0073】
また、上述に実施例では、上向きに開口する1つの熱風流入口66を有する熱風供給部58を設けたが、これに限定されず、熱風供給部58の具体的構成についても適宜変更可能である。たとえば、複数の熱風流入口66を設けることもできるし、熱風流入口66を横向きに開口させることもできる。また、必ずしも加熱室12に熱風供給部58を設ける必要はない。
【0074】
さらに、上述の実施例では、排気集約管70は、横引き管部70aと可撓管部70bとを備えるようにしたが、これに限定されない。たとえば、横引き管部70aの代わりに縦引き管部を備えるようにし、この縦引き管部が加熱室12の天壁中央部を貫通するように排気集約管70を設置してもよい。また、排気集約管70は、必ずしも可撓管部70bを有する必要はないし、その全体が可撓管部70bで構成されていてもよい。また、排気集約管70には、その流路断面積を調整可能なダンパまたはバルブ等が設けられていてもよい。
【0075】
さらにまた、上述の実施例では、管更生部材102を加熱室12内に設置するときに、管更生部材102を回転させる軸が縦方向に延びるように設置している(つまり回転軸40が縦方向に設けられる)が、管更生部材102を回転させる軸が横方向に延びるように設置してもよい。
【0076】
また、上述の実施例では、管更生部材102は、断面略瓢箪形の縮径形状とされて渦巻き状に巻かれているが、管更生部材102の縮径形状および巻き姿は、特に限定されない。たとえば、折り畳み加工により折り畳まれた縮径形状であってもよいし、周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径形状であってもよい。
【0077】
さらに、上述の実施例では、ドラムレスで所定の巻き姿に巻かれたドラムレスタイプの管更生部材102を加熱するようにしたが、これに限定されない。巻付用ドラムに対して所定の巻き姿に巻かれたドラム巻きタイプの管更生部材102であっても、巻付用ドラムのフランジに貫通孔(開口)が形成されている場合などには、管更生部材102上に水滴が落下し易くなり、管更生部材102に加熱むらの生じる恐れがある。このため、上述のような水滴防止部材90を用いる加熱方法または加熱装置10は、ドラム巻きタイプの管更生部材102に対しても適用され得る。
【0078】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などはいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。