(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステップ(C)において、前記管更生部材の外面温度の測定は、前記管更生部材の内面側に供給した蒸気の流れ方向における下流側端部において行う、請求項1記載の管更生部材の加熱方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、内面側および外面側の双方から管更生部材を加熱するので、管更生部材を短時間で加熱できるが、装置が大掛かりとなる。また、管更生部材の軟化状態を正確に判断するために、加熱軟化温度測定装置のような特別な装置が必要になる。しかしながら、既設管を更生する施工現場は、幅の狭い道路などの狭小地である場合もあり、必ずしも大掛かりな装置を設置できるとは限らない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管更生部材の加熱方法を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、狭小地における施工にも適用できるように装置を小型化でき、かつ管更生部材の全体が加熱軟化されたことを正確に判断できる、管更生部材の加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、既設管を更生する管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱室内で加熱軟化させる管更生部材の加熱方法であって、(A)加熱室の内部に
設けた回転台部上に管更生部材を設置するステップ、(B)
回転台部を作動させて管更生部材を回転させながら、管更生部材の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材を加熱し、管更生部材の内面側に供給した蒸気は、加熱室の内部に排出することなく加熱室の外部に排出するステップ、および(C)温度センサを用いて管更生部材の外面温度を測定するステップを含む、管更生部材の加熱方法である。
【0008】
第1の発明に係る管更生部材の加熱方法では、既設管を更生する管更生部材を既設管内に挿入する前に加熱軟化させる。先ず、ステップ(A)において、加熱室の内部に
設けた回転台部上に管更生部材を設置する。次に、ステップ(B)において、
回転台部を作動させて管更生部材を回転させながら、管更生部材の外面側から蒸気および熱風などの熱媒を供給することなく、管更生部材の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材を加熱する。また、管更生部材の内面側に供給した蒸気は、加熱室の内部に排出することなく加熱室の外部に排出する。そして、ステップ(C)において、温度センサを用いて管更生部材の外面温度を測定し、その測定温度が所定温度に達したら、加熱軟化工程を終了する。このように、管更生部材の内面側のみに蒸気を供給して、加熱室の外面側には熱媒が供給されないようにすると、管更生部材の外面側は、管更生部材の内面側から肉厚内部を通って伝わる熱のみで加熱される。したがって、管更生部材の外面温度を測定して、その外面温度が所定温度に達していれば、管更生部材の肉厚内部まで十分に昇温していることが分かる。
【0009】
第1の発明によれば、管更生部材の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材を加熱軟化させるので、装置を小型化できる。したがって、狭小地における施工にも適切に対応できる。また、管更生部材をその内面側からのみ加熱するので、管更生部材の外面温度が所定温度に達していることを確認することによって、管更生部材の全体が加熱軟化されたことを正確に判断できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(C)において、管更生部材の外面温度の測定は、管更生部材の内面側に供給した蒸気の流れ方向における下流側端部において行う。
【0011】
第2の発明では、管更生部材の長手方向において最後に加熱される部分(加熱の完了が遅い部分)である、蒸気の流れ方向における下流側端部において管更生部材の外面温度の測定を行う。このため、この部分が十分に昇温されていれば、管更生部材がその長手方向の全体に亘って十分に昇温していることが分かる。
【0012】
第2の発明によれば、管更生部材の全体が加熱軟化されたことをより正確に判断できる。
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、ステップ(B)において、管更生部材の内面側に供給した蒸気は、回転台部に設けた回転軸部を介して加熱室の外部に排出する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、管更生部材の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材を加熱軟化させるので、装置を小型化できる。したがって、狭小地における施工にも適切に対応できる。また、管更生部材をその内面側からのみ加熱するので、管更生部材の外面温度が所定温度に達していることを確認することによって、管更生部材の全体が加熱軟化されたことを正確に判断できる。
【0014】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図5を参照して、この発明の一実施例である管更生部材の加熱方法は、老朽化した既設管100を内側から補修するための管更生部材102を、既設管100内に挿入する前に加熱して軟化させる方法である。詳細は後述するように、この加熱方法では、加熱装置10を用いて、管更生部材102の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材102の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材102を加熱軟化させる。
【0017】
先ず、この発明に係る加熱方法の具体的な説明の前に、管更生部材102について簡単に説明する。管更生部材102は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂によって形成される長尺管であり、
図2に示すように、巻付用ドラム30に対して所定の縮径状態で渦巻き状(ロール状)に巻き付けられて搬送等される。この実施例では、管更生部材102は、平板状部102aとその両端に形成される楕円筒状部102bとを有する断面略瓢箪形の縮径形状とされて巻付用ドラム30に巻き付けられる。ただし、管更生部材102は、ドラムレスで所定の巻き姿に巻かれて搬送等される場合もある。
【0018】
管更生部材102は、公知の製造方法によって製造することができる。管更生部材102を製造する際には、先ず、所定の径で直管を押出成形する。そして、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(たとえば硬質塩化ビニル製の管更生部材102では、100℃程度)にその直管を加熱した状態で、押し板やローラ等を用いて偏平させる等の縮径加工を施し、断面略瓢箪形の縮径形状にする。これにより、縮径形状とされた管更生部材102は、再び軟化点以上融点以下の温度に加熱および加圧することによって、円筒形等の元の形状に復元するようになる。なお、管更生部材102は、復元したときの外径が既設管100の内径と略等しいサイズとなるように設定される。更生する既設管100の内径は、たとえば100−700mmである。
【0019】
なお、管更生部材102は、種々の用途および構成材料の既設管100の更生に適用し得る。たとえば、ガス管、上下水道管およびケーブル保護管等の更生に適用することができ、更生する管路の材質も、鉄筋コンクリート製、鋳鉄製、鋼製および合成樹脂製などのいずれであってもよい。
【0020】
続いて、この加熱方法に用いる加熱装置10について説明する。加熱装置10は、管更生部材102を加熱して軟化させるための装置であって、管更生部材102を収容する加熱室12を備える。
【0021】
図1に示すように、加熱室12は、基部14と、基部14上に設けられるテント部16とを含み、全体として、中空の略円柱形状に形成される。加熱室12の直径は、たとえば2550mmであり、その上下方向の長さ(つまり背の高さ)は、たとえば1700mmである。
【0022】
基部14は、加熱室12の底壁を構成する部分であり、鉄およびSUS(ステンレス鋼)などの金属によって円板状に形成される。また、基部14の下には、矩形枠状の基礎フレーム18が設けられており、基部14は、この基礎フレーム18によって下方に所定の空間を有する状態で保持される。
【0023】
テント部16は、加熱室12の天壁および側壁を構成する部分であり、有頂円筒状に形成される。この実施例では、テント部16は、その骨組みを形成するフレーム20と、フレーム20に被せられる天幕シート22とを備える。フレーム20は、たとえば、鉄およびSUS等の金属からなる中空パイプを縦横に組み合わせることによって形成される。また、天幕シート22は、耐熱ゴム等の弾性材によって形成され、フレーム20の天井部および側部を気密的に覆う。
【0024】
また、この実施例では、加熱室12の外面(天幕シート22の上面および外側面)を覆うように被覆部材24が設けられる。被覆部材24は、断熱性、防風性および防水性を有する素材によって形成される。たとえば、被覆部材24としては、樹脂シート等の基材の両面をアルミニウム箔などの金属層で挟み込んで形成される市販の遮熱シートを用いることができる。この実施例では、被覆部材24は、天幕シート22の上面を覆う第1天井カバー24aと、天幕シート22の外側面を覆う胴巻きカバー24bと、第1天井カバー24aおよび胴巻きカバー24bの上部を上から覆う第2天井カバー24cとを含む。
【0025】
このような被覆部材24によって加熱室12の外面全体を覆うことで、外気温、風および雨などの外部環境(外乱因子)が、加熱室12の内部環境に及ぼす影響を低減させることができる。したがって、外部環境によらず、加熱室12内における管更生部材102の加熱条件を均一化ないし安定化することができる。なお、ここで言う防風性を有するとは、風を通さない性能を有することを言い、少なくともJIS A6111:2004の防風性の規格(JIS P8117 ガーレー試験機法による通過時間が10秒以上)を満たすものであることを言う。
【0026】
このような加熱室12内には、巻付用ドラム30(管更生部材102)を回転させるための回転機構として、回転台部26および回転軸部28が設けられる。回転台部26は、鉄およびSUS等の金属によって円環板状に形成され、基部14の上面に設置される。図示は省略するが、回転台部26には、駆動モータからの駆動力が伝達チェーンおよび伝達ギア等を介して伝えられ、これによって、回転台部26はその軸周りに回転可能とされる。また、回転軸部28は、鉄およびSUS等の金属によって直管状に形成され、回転台部26の中央部に立設される。回転軸部28は、回転台部26と共に回転する。
【0027】
そして、回転台部26上には、回転軸部28の外周面を囲繞するように、巻付用ドラム30が設置される。
図2に示すように、巻付用ドラム30は、胴部32およびフランジ34を含み、鉄およびSUS等の金属によって形成される。胴部32は、内筒および外筒を備える2重筒構造を有しており、その外周面に管更生部材102が渦巻き状に巻き付けられる。フランジ34は、胴部32の両端部に設けられ、胴部32の外周面から径方向外側に鍔状に突出する。胴部32の外径は、たとえば900mmであり、フランジ34の外径は、たとえば2400mmである。巻付用ドラム30および管更生部材102は、回転台部26および回転軸部28の回転に伴って回転する。
【0028】
図1に戻って、加熱室12には、蒸気発生装置40からの蒸気を管更生部材102の内面側(内部)に供給する経路である蒸気供給経路42と、管更生部材102内に供給した蒸気を加熱室12内に排出することなく加熱室12外に排出する経路である蒸気排出経路44とが設けられる。
【0029】
具体的には、回転軸部28の内部には、外管46と内管48とを有する二重管が設けられる。この二重管(外管46および内管48)は、回転台部26および回転軸部28の回転に伴って回転する。
【0030】
外管46の上端部には、第1ホース接続部50が設けられ、この第1ホース接続部50に給気ホース52の上流側端部が接続される。給気ホース52の下流側端部は、管更生部材102の内部と連通するように、管更生部材102の巻始め側の管端に取り付けられた封止部材(図示せず)の接続口に接続される。
【0031】
また、内管48の上端部には、第2ホース接続部54が設けられ、この第2ホース接続部54に排気ホース56の下流側端部が接続される。
図3に示すように、管更生部材102の巻終り側の管端には、封止部材58が取り付けられ、排気ホース56の上流側端部は、管更生部材102の内部と連通するように、封止部材58に形成された接続口58aに接続される。また、この封止部材58には、ドレン口58bが形成される。管更生部材102内で蒸気が凝縮することによって生じる水(ドレン)は、このドレン口58bから管更生部材102の外部に排出される。
【0032】
一方、二重管46,48の下端部には、二重管スイベル60が設けられる。
図4に示すように、二重管スイベル60は、給気口62aおよび排気口62bを有する略円筒状のスイベルケース62を備える。スイベルケース62の内側には、ベアリング64およびシールリング66等を介して、略円筒状のスピンドル68が回転可能に設けられる。このスピンドル68上端部には、外管46の下端部が継手70を介して接続される。また、スピンドル68の内部には、略円筒状のキャップ72が設けられ、このキャップ72に内管48の下端部が接続される。キャップ72は、スピンドル68の内面と内管48の外面との間の空間を封止する。
【0033】
このように、外管46および内管48と二重管スイベル60とを接続した状態では、外管46の内面と内管48の外面との間の空間は、給気口62aと連通する。一方、内管48の内部空間は、排気口62bと連通する。そして、回転台部26および回転軸部28の回転に伴って二重管46,48が回転すると、スイベルケース62(給気口62aおよび排気口62b)は非回転状態を保ちながら、スピンドル68は二重管46,48と共に回転する。
【0034】
図1に戻って、二重管スイベル60の給気口62aには、蒸気発生装置40に繋がる給気パイプ74が接続される。また、排気口62bには、加熱室12の外部まで延びる排気パイプ76が接続される。蒸気発生装置40から供給される蒸気は、給気パイプ74、外管46の内面と内管48の外面との間の空間、および給気ホース52等を含む蒸気供給経路42を通って、管更生部材102の巻始め側の管端から管更生部材102の内面側に供給される。管更生部材102の内面側に供給された蒸気は、管更生部材102の巻終り側の管端まで流れ、排気ホース56、内管48の内部空間、および排気パイプ76等を含む蒸気排出経路44を通って、加熱室12の外部に排出される。
【0035】
また、この実施例では、管更生部材102の巻終り側の端部、つまり管更生部材102の内面側に供給した蒸気の流れ方向における下流側端部には、管更生部材102の外面温度を検出する温度センサ78が設けられる。温度センサ78としては、サーミスタ、測温抵抗体および熱電対などを使用できる。また、図示は省略するが、温度センサ78が検知した温度は、加熱室12の外部に設置したモニタの温度表示部に表示される。また、温度センサ78による検出温度が所定温度に達したときに、加熱の完了通知を行うアラーム等の通知部を設けておいてもよい。
【0036】
続いて、
図1および
図5を参照して、加熱装置10を用いて管更生部材102を加熱軟化させる方法、および加熱軟化させた管更生部材102によって既設管100を更生する方法について説明する。
【0037】
既設管100を更生する際には、先ず、既設管100の更生区間内の滞留物等を除去洗浄すると共に、管更生部材102の加熱準備を行う。すなわち、始点の立坑110側に加熱装置10を設置し、巻付用ドラム30に巻き付けられた管更生部材102を加熱室12の内部に設置する。この際、給気ホース52を用いて管更生部材102の巻始め側の管端と外管46の第1ホース接続部50とを接続すると共に、排気ホース56を用いて管更生部材102の巻終り側の管端と内管48の第2ホース接続部54とを接続する。また、終点の立坑112側には、牽引ワイヤ114を巻き取るためのウインチ116を設置しておく。
【0038】
管更生部材102の加熱準備が完了すると、続いて、加熱装置10を用いて管更生部材102を加熱軟化させる。管更生部材102を加熱軟化させる際には、先ず、加熱装置10の全体を5°程度傾けた後、回転台部26を作動させて、巻付用ドラム30および管更生部材102を回転させる。次に、蒸気発生装置40を作動させて、蒸気供給経路42を介して管更生部材102の内面側に蒸気を供給する。また、管更生部材102の内面側に供給した蒸気は、蒸気排出経路44を介して加熱室12の外部に排出させる。すなわち、管更生部材102の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材102の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材102を加熱し、管更生部材102の内面側に供給した蒸気は、加熱室12の内部に排出することなく加熱室12の外部に排出する。
【0039】
そして、温度センサ78を用いて管更生部材102の巻終り側の端部における外面温度を測定し、管更生部材102の外面温度が所定温度(たとえば80℃)になったことが確認されたら、蒸気発生装置40を停止させて、管更生部材102の加熱軟化工程を終了する。
【0040】
ここで、仮に、管更生部材102の外面側からも蒸気および熱風などの熱媒を供給して管更生部材102を加熱すると、温度センサ78によって管更生部材102の外面温度を測定しても、管更生部材102の表面部分だけが昇温しているのか、或いは肉厚内部まで昇温しているのかが判断し難い。これに対して、この実施例のように、管更生部材102の内面側のみに蒸気を供給して、加熱室12の外面側には熱媒が供給されないようにすると、管更生部材102の外面側は、管更生部材102の内面側から肉厚内部を通って伝わる熱のみで加熱される。したがって、管更生部材102の外面温度を測定して、その外面温度が所定温度に達していれば、管更生部材102の肉厚内部まで十分に昇温していることが分かる。また、加熱室12内に蒸気が充満されないので、管更生部材102を目視し易く、目視による管更生部材102の状況の確認も行い易い。
【0041】
また、仮に、管更生部材102の外面側のみに熱媒を供給して管更生部材102を加熱すると、渦巻き状に巻かれた管更生部材102の重ね合わせ部分が加熱され難い。これに対して、この実施例のように、管更生部材102の内面側のみに蒸気を供給して管更生部材102を加熱すると、このような不具合は発生せず、管更生部材102の全体が略均一に加熱される。
【0042】
なお、この発明で言う、蒸気を加熱室12の内部に排出することなく加熱室12の外部に排出するとは、加熱室12内への蒸気の漏れを完全に防止することを意味するのではない。管更生部材102の外面温度の測定に影響を与えない程度であれば、管更生部材102の内面側に供給した蒸気の加熱室12内への多少の漏れは、許容される。
【0043】
また、管更生部材102の外面温度を測定する長手方向位置は、特に限定されないが、この実施例のように、管更生部材102の巻終り側の端部、つまり蒸気の流れ方向における下流側端部において外面温度を測定することによって、管更生部材102がその長手方向の全体に亘って十分に昇温していることを判別できる。すなわち、蒸気の流れ方向における管更生部材102の下流側端部は、管更生部材102の長手方向において最後に加熱される部分(加熱の完了が遅い部分)であるので、この部分が十分に昇温されていれば、管更生部材102がその長手方向の全体に亘って十分に昇温していることが分かる。したがって、管更生部材102の全体が加熱軟化されたことをより正確に判断できる。また、管更生部材102の巻終り側の端部の外面に温度センサ78を設置するので、温度センサ78を設置し易い。
【0044】
既設管100を更生方法の説明に戻って、管更生部材102の加熱軟化工程が終了すると、続いて、加熱室12内から管更生部材102を引き出して既設管100内に挿入する。この際には、管更生部材102の巻終り側の管端部から温度センサ78と排気ホース56とを取り外す。そして、終点の立坑112側から既設管100内に牽引ワイヤ114を挿通し、その牽引ワイヤ114を管更生部材102の先端(巻終り側の管端)に接続する。その後、牽引ワイヤ114をウインチ116で巻き取ることにより、管更生部材102を既設管100内に引き込む。
【0045】
管更生部材102の先端が立坑112に到達すると、管更生部材102の両端を切断して、そこに拡径用金具等を取り付け、管更生部材102の管端を封止する。そして、蒸気発生装置40を用いて管更生部材102内に蒸気を供給し、管更生部材102を加熱すると共に内圧をかける。すると、管更生部材102は、断面形状が真円形状または略真円形状に拡径復元されて、管更生部材102の外周面全体が既設管100の内周面全体に略密着される。
【0046】
その後、内圧を保持した状態で、拡径用金具等に設けられた冷却空気供給口から管更生部材102内に冷却空気を供給して、管更生部材102を冷却する。冷却後、管更生部材102内から圧力空気を排出し、後処理を適宜実行することによって、管更生部材102を用いた既設管100の補修が完了する。
【0047】
以上のように、この実施例によれば、管更生部材102の外面側から熱媒を供給することなく、管更生部材102の内面側のみに蒸気を供給することによって管更生部材102を加熱軟化させるので、加熱装置10を小型化できる。したがって、狭小地における施工にも適切に対応できる。
【0048】
また、管更生部材102をその内面側からのみ加熱するので、管更生部材102の外面温度が所定温度に達していることを確認することによって、管更生部材102の肉厚内部まで十分に昇温していることが分かる。したがって、管更生部材102の全体が加熱軟化されたことを正確に判断できる。
【0049】
なお、上述の実施例では、管更生部材102を加熱室12内に設置するときに、管更生部材102を回転させる軸が縦方向に延びる(つまり巻付用ドラム30を横方向に回転させる)ように設置しているが、管更生部材102を回転させる軸が横方向に延びる(つまり巻付用ドラム30を縦方向に回転させる)ように設置してもよい。
【0050】
また、上述の実施例では、排気ホース56の上流側端部を封止部材58の接続口58aに接続したが、排気ホース56の上流側端部は、封止部材58のドレン口58bに接続するようにしてもよい。たとえば、接続口58aは栓などを用いて塞いでおいてもよいし、接続口58aのない封止部材58を用いてもよい。そして、排気ホース56の上流側端部をドレン口58bに接続すると共に、排気ホース56の下流側端部を回転軸部28の下端側から回転軸部28に接続して、この回転軸部28にドレン排出口を設けておくようにしてもよい。これによって、加熱室12内への蒸気の漏れを最小限にできる。
【0051】
さらに、上述の実施例では、管更生部材102は、断面略瓢箪形の縮径形状とされて巻付用ドラム30を巻き付けられたが、管更生部材102の縮径形状および巻き姿は、特に限定されない。たとえば、折り畳み加工により折り畳まれた縮径形状であってもよいし、周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径形状であってもよい。
【0052】
さらにまた、上述の実施例では、管更生部材102を回転させながら加熱軟化するようにしたが、管更生部材102は必ずしも回転させる必要はない。管更生部材102を回転させずに加熱する場合には、二重管スイベル60を必ずしも設ける必要はない。たとえば、管更生部材102の巻終り側の端部を加熱室12外に直接出す、或いは管更生部材102の巻終り側の端部に接続した排気ホースを加熱室12外に出すことによって、加熱室12の外部に蒸気を排出することもできる。
【0053】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などはいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。