(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材とで構成され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させる相対移動低減部材が設けられ
、前記緩衝部材を第1緩衝部材とするとともに、前記緩衝部材を形成する線材を第1線材とし、前記相対移動低減部材が、前記第1線材よりも線径の小さい第2線材を編込んで形成された第2緩衝部材で構成され、前記第1緩衝部材に、変形した前記第2線材の食込みを許容する編目凹部を有することを特徴とする。
【0010】
上記金属製の線材は、例えば、ステンレス、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで形成した線材や、素材自体に制振性を有する鉄アルミで形成した線材など、いろいろな機能や特性を有する金属製素材を含むものとする。
上記軸方向は、緩衝部材および相対移動低減部材の厚み方向と同方向である。
【0011】
上述の前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置される緩衝部材とは、例えば、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す緩衝部材、あるいは、カラー部材のフランジと囲繞部材とにサンドイッチ状に挟み込まれる緩衝部材などを含むものとする。なお、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す場合の緩衝部材は、別部材を用いて囲繞部材とカラー部材とを架け渡してもよい。
【0012】
上記緩衝材は、厚み方向に湾曲する湾曲変形、厚み方向に圧縮する圧縮変形、面方向に伸縮する伸縮変形、あるいはこれらの組み合わせ変形などの弾性変形が可能なバネ部材や線材を編込んで形成したメッシュ部材などを含むものである。なお、面方向は、厚み方向に直交する方向を指す。
【0013】
上述のカラー部材と緩衝部材との間の隙間とは、カラー部材のフランジと緩衝部材との厚み方向の隙間、およびカラー部材のカラー本体と緩衝部材との径方向の隙間のうち少なくとも一方を含むものとする。
【0014】
上述の相対移動を低減するとは、カラー部材に対する緩衝部材の厚み方向および径方向の少なくとも一方の方向の相対移動における移動量を低減すること、相対移動における移動速度を低下させること、さらには、相対移動における移動加速度を低下させること、あるいはこれらの組み合わせを含むものとする。
【0015】
上記食込みは、編込みよって構成された第2緩衝部材の第2線材に荷重が作用することで変形し、編目凹部に入り込む態様を指す。
上記編目凹部は、第2緩衝部材の第2線材が食込むことができれば、例えば、線径の2倍の深さや開口に形成された編目凹部を含むものとする。
【0016】
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置される相対移動低減部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
【0017】
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
【0018】
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0019】
また、前記緩衝部材を第1緩衝部材とするとともに、前記緩衝部材を形成する線材を第1線材とし、前記相対移動低減部材を、前記第1線材よりも線径の小さい第2線材を編込んで形成された第2緩衝部材で構成し、前記第1緩衝部材に、変形した前記第2線材の食込みを許容する編目凹部を有することにより、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0020】
詳しくは、カラー部材に対する第1緩衝部材の相対移動によって第2緩衝部材に荷重が作用する場合、第2線材が変形しながら第1緩衝部材の編目凹部に食込むこととなる。
【0021】
このとき、第2緩衝部材に作用する荷重によるエネルギの一部が、第2緩衝部材が変形する際の第2線材の変形エネルギに変換されることに加え、第2緩衝部材が変形する際の第2線材同士の摩擦エネルギと、編目凹部を形成する第1線材および編目凹部に食込む第2線材の摩擦エネルギとに消費される。
【0022】
つまり、カラー部材に対する第1緩衝部材の相対移動に要するエネルギの一部は、変形エネルギに変換されるとともに摩擦エネルギに消費され低下する。すなわち、カラー部材に対する第1緩衝部材の相対移動を低減させることができる。
【0023】
さらに、荷重が作用して第2線材が編目凹部に食込んだ状態の第1緩衝部材と第2緩衝部材とは、第2線材が編目凹部に食込んでいない場合と比較して、第1線材と第2線材との接触圧力が増大したり、接触面積が拡大することによって摩擦力が増大するため、第2緩衝部材と重合した第1緩衝部材の、カラー部材に対する径方向の相対移動を低減させることができる。
したがって、カラー部材と第1緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0024】
また、第2線材が編目凹部に食込んだ状態における第1緩衝部材と第2緩衝部材とは、食込みによって第2緩衝部材の径方向への伸縮変形が抑制されるとともに、第1緩衝部材の湾曲変形に第2緩衝部材が追従するため一体化を図ることができ、第1緩衝部材の緩衝性能と第2緩衝部材の緩衝性能だけでなく、一体化した第3の緩衝部材としての緩衝性能を有することができる。
【0025】
さらに、第2緩衝部材に作用された荷重が除荷されると、編目凹部に変形しながら食込んだ第2線材は復元力によって元の状態に復帰するため、繰り返し荷重に対して有効な相対移動低減性能を有することができる。
さらにまた、第2線材を編込んで形成する第2緩衝部材は、編込みピッチや編込みパターンなどを容易に調整できるため、所定のバネ定数を容易に実現することができる。
【0026】
また、編目凹部を有する第1緩衝部材と、第1線材よりも線径の小さい第2線材を編込み、相対移動低減部材として機能する第2緩衝部材とを重合するため、振動吸収できる周波数帯域を拡大することができる。
【0027】
詳述すると、第1緩衝部材および第2緩衝部材は、振動が付与されると厚み方向への湾曲変形や圧縮変形、あるいは面方向への伸縮変形として弾性変形するとともに、それぞれの弾性変形によって第2緩衝部材に荷重が作用することによって、第2緩衝部材の第2線材が変形しながら第1緩衝部材の編目凹部に食込むこととなり、第1緩衝部材単体の振動吸収性能および第2緩衝部材の弾性変形による振動吸収性能に加えて、編目凹部に対する第2線材の食込み変形時のエネルギ消費による振動吸収性能を得ることができ、振動吸収できる周波数帯域の拡大を図ることができる。
【0028】
また、第1緩衝部材も第2緩衝部材も線材の編込みによって構成されているため、その編込みによる第1線材の編目凹部は、その大きさを変化しながら緩衝材として容易に拡縮方向に弾性変形することができる。
【0029】
これにより、第1緩衝部材および第2緩衝部材に多様な方向への変形が生じると、第2緩衝部材が食込んだ編目凹部が、第1緩衝部材の弾性変形に伴って縮小方向に弾性変形し、編目凹部を構成する第1線材が、編目凹部に食込んだ第2緩衝部材の第2線材をより拘束することになり、第1緩衝部材と第2緩衝部材との一体性を向上することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記第1緩衝部材が、メリヤス編みで構成されたメリヤス緩衝部材であるとともに、前記第2緩衝部材が、スムース編みで構成されたスムース緩衝部材であり、前記第1緩衝部材と前記第2緩衝部材とを重合させて構成することができる。
【0031】
上記メリヤス編みは、周知の如く、1本の第1線材を用いて多数の編目を形成させ、これを順次連結して面状に形成したものである。
上記スムース編みは、周知の如く、2つのゴム編みを重ねて、表裏とも平編み状に現れたものである。
【0032】
この発明により、緩衝装置の制振性能を確実に向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、第1緩衝部材は、重合方向に容易に湾曲運動でき、振動を湾曲運動に変換して吸収することで振動を確実に緩衝させることができる。
【0033】
一方、第2緩衝部材は、重合方向および径方向に容易に変形できるため、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動によって作用する荷重を、効率良く他のエネルギに変換あるいは消費することができる。
したがって、緩衝装置の制振性能を確実に向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記第2線材を、金属で構成することができる。
上記金属は、例えば、ステンレス、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅や、素材自体に制振性を有する鉄アルミなど、いろいろな機能や特性を有する金属を含むものとする。
【0035】
この発明により、第2緩衝部材は、例えば樹脂製の線材を編込んで形成した場合と比較して、変形に対する耐久性能を向上できるとともに、弾性変形性能を向上することができる。
【0036】
この発明の態様として、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材が備えられ、前記緩衝部材の内周側を前記カラー部材に遊嵌することができる。
【0037】
この発明により、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
詳述すると、固定部材に外周側を固定される緩衝部材は、内周側がカラー部材に遊嵌されているため、固定部材を介して囲繞部材とカラー部材とを径方向に架け渡す態様となる。
【0038】
つまり、緩衝部材は、湾曲による弾性変形を容易に行うことができるため、振動部材から囲繞部材への振動を効率良く緩衝することができる。
したがって、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記相対移動低減部材のバネ定数を、前記緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定することができる。
この発明により、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
【0040】
詳述すると、相対移動低減部材のバネ定数を緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定する、つまり、相対移動低減部材と緩衝部材とを異なるバネ定数に設定することで、緩衝部材と相対移動低減部材とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置の制振性能を向上させることができる。
【0041】
さらに、相対移動低減部材のバネ定数が緩衝部材のバネ定数の10分の1以上である場合には、相対移動低減部材と緩衝部材との変形性能が近似し、荷重が作用することによって相対移動低減部材とともに緩衝部材も弾性変形して、緩衝部材の緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を緩衝部材の10分の1以下に設定した相対移動低減部材は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い緩衝部材よりも弾性変形し易いため、カラー部材と緩衝部材との隙間に配置した相対移動低減部材が荷重に対して弾性変形することで緩衝部材の弾性変形を防止することができる。
【0042】
つまり、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材との当接による当接力を相対移動低減部材の弾性変形によって吸収し、カラー部材との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
【0043】
またこの発明の態様として、前記緩衝部材と前記相対移動低減部材との重合状態の厚みを、前記フランジ同士の間隔よりも厚く形成することができる。
上記重合状態とは、緩衝部材に対して相対移動低減部材の少なくとも一部が厚み方向に接する状態を指す。
【0044】
この発明により、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、緩衝部材と相対移動低減部材との重合状態の厚みを、フランジ同士の間隔よりも厚く形成することで、バネ定数を緩衝部材よりも低く設定した相対移動低減部材が圧縮された状態でフランジと緩衝部材との隙間を埋め、つまり通常状態において、緩衝部材は弾性変形することなく、相対移動低減部材にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、緩衝部材をカラー部材へ付勢することができる。
【0045】
この場合においても緩衝部材は弾性変形していないため、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、振動部材から囲繞部材への振動を緩衝部材が確実に緩衝するとともに、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
【0046】
またこの発明の態様として、前記相対移動低減部材をバネ部材で構成することができる。
上記バネ部材は、例えば渦巻きバネ、コイルバネ、板バネなどを含むものとする。
【0047】
この発明により、線材の線径や素材、あるいはピッチなどにより所望の性能に合ったバネ部材を相対移動低減部材として用いることができるため、簡素な構成で相対移動低減部材を構成できるとともに、汎用性を向上させることができる。
【0048】
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成することができる。
この発明により、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
【0049】
またこの発明の態様として、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段を設けることができる。
上記移動規制手段は、例えば、バネ部材の緩衝部材側を固定する固定部材の固定部、あるいはバネ部材の緩衝部材側を係止させる緩衝部材に設けた凸部や凹部などを含むものとする。なお、緩衝部材に設けた凸部は、緩衝部材の一部で構成した凸部、緩衝部材と一体的に設けた凸部、あるいは、緩衝部材と別体で設けた凸部とすることができる。
【0050】
この発明により、優れた制振性能を奏するとともに、カラー部材と緩衝部材との径方向の当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、緩衝部材または固定部材に対する相対移動を規制されたバネ部材は、緩衝部材側を基端として自由端となるフランジ側によってカラー部材に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、軸方向の振動吸収性能に加えて、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0051】
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の径外側とともに前記バネ部材の前記緩衝部材側を固定する前記固定部材の固定部で構成することができる。
この発明により、緩衝装置の組み付けによって、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を、簡素な構成で確実かつ容易に防止することができる。
【0052】
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の前記バネ部材側に設けられた移動規制凸部で構成することができる。
この発明により、バネ部材の緩衝部材側の径を、固定部に固定する場合よりも小径とすることができるため、緩衝装置を構成するバネ部材を小型化できるとともに、小型化したバネ部材を固定部に固定することなく係止させるだけで緩衝部材に容易に組み付けることができ、さらには、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
【0053】
またこの発明の態様として、前記相対移動低減部材を、前記緩衝部材の両面に配置することができる。
この発明により、緩衝装置はより確実に安定して優れた制振性を有するとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をさらに防止することができる。
【0054】
またこの発明は、上述のような緩衝装置が、交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された金属製の板材に取り付けられた金属カバーであることを特徴とする。
この発明により、振動部材からの振動を緩衝装置が緩衝するため、金属カバーは振動部材の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0055】
安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(第1実施形態)
この発明の第1実施形態を、
図1から
図5を用いて説明する。
図1はエンジン2の概略正面図を示し、
図2は緩衝装置10Aが取り付けられたヒートインシュレータ1A,1Bの一部概略斜視図を示し、
図3は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。
図3について詳述すると、
図3(a)は緩衝装置10Aの概略斜視図を示し、
図3(b)は緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
【0058】
図4は第1実施形態における緩衝装置10Aの取付状態をあらわす概略断面図を示し、
図5は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。
図5について詳述すると、
図5(a)は荷重が作用する前の緩衝装置10Aの概略断面図を示し、
図5(b)は荷重が作用している状態の緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
なお、
図3から
図5の図面において、上側を上方とするとともに、下側を下方とする。
【0059】
ヒートインシュレータ1Aは、
図1に示すように、自動車などの車両用エンジン2の側面において、燃焼排気ガスを排出するエキゾーストマニホールド3(以下、エキマニ3)を覆うように取り付けられている。
【0060】
このヒートインシュレータ1Aは、
図2に示すように、インシュレータ基材100に、振動を緩衝する緩衝装置10Aを取り付けて構成しており、エキマニ3に対応する形状に形成して用いられる。なお、インシュレータ基材100には上述したようにエキマニ3を覆う形状で形成され、ヒートインシュレータ1Aを構成しているが、図示を容易にするため、
図2では、インシュレータ基材100を平板状で図示している。
【0061】
インシュレータ基材100は、直交する長手方向および短手方向のそれぞれに沿うコルゲート形状に形成されている。
なお、ヒートインシュレータ1Aに用いるインシュレータ基材100は、コルゲート形状に形成したものに限定せず、例えば、エンボス形状や波形形状などの適宜の形状で形成してもよい。
【0062】
第1実施形態における緩衝装置10Aは、
図3(a)および
図3(b)に示すように、略円環状に形成されており、径外側のグロメット30と、平面視中央のカラー部材40と、グロメット30とカラー部材40との間の緩衝重合部材20Aとで構成している。なお、振動を緩衝する緩衝重合部材20Aの径外側をグロメット30に固定するとともに、径内側をカラー部材40に取り付けて構成している。
【0063】
緩衝装置10Aを構成する緩衝重合部材20Aは、線材を編込んで圧縮形成した圧縮メッシュ21と、平面視渦巻状に巻き回して形成した渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置し、上下方向に重合させて構成している。
なお、緩衝重合部材20Aは、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置することだけに限らず、下方からこの順に配置してもよい。
【0064】
圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである円形断面線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮した円環状に形成することで、バネ定数約12000N/mmの弾性変形性能を有し、湾曲変形および圧縮変形可能となる。
【0065】
この圧縮メッシュ21は、外径が直径28mmに形成されるとともに、内径が直径12mmに形成され、グロメット30とカラー部材40とを径方向に架け渡す。
なお、圧縮メッシュ21を構成する線材210は、線径を0.2mm、素材をステンレス、外径を直径28mm、内径を直径12mmとすることだけに限らず適宜設定してもよい。また、圧縮メッシュ21は必ずしも圧縮形成する必要はない。
【0066】
渦巻きバネ22は、円形断面線材を径方向および下方に沿って平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に巻き回して下端よりも上端の方が大径となるように形成したバネ部材であって、上端が直径26mmに形成されるとともに、下端が直径10mmに形成され、上下方向における自然長の長さが後述するカラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成されている。
なお、渦巻きバネ24は、上端および下端の直径が上述のように形成されたものに限定しない。
【0067】
このように形成された渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下であるバネ定数約0.5N/mmに設定されており、圧縮メッシュ21よりも高い変形性を有する。さらに、圧縮メッシュ21との重合状態において、渦巻きバネ22を構成する円形断面線材が圧縮メッシュ21の主面と接触し、渦巻きバネ22が圧縮メッシュ21を支持できるように、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上である約24000分の1としている。
【0068】
グロメット30は、金属板を平面視円環状の片断面略S字状に形成されており、緩衝重合部材20Aを保持する第1固定部31と、ヒートインシュレータ1Aを保持する第2固定部32と、第1固定部31および第2固定部32を連結する連結部33とで一体に構成されている。
【0069】
第1固定部31は、連結部33より径外側に対応する金属板を下方から径内側に折り返した、径内側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、重合させた圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22との径外側を連結部33とともに加締めて固定している。
【0070】
一方、第2固定部32は、連結部33より径内側に対応する金属板を上方から径外側に折り返した、径外側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、ヒートインシュレータ1Aを連結部33とともに加締めて固定している。
【0071】
カラー部材40は、径に対して高さの低い略筒状体であり、SPCCなどの鉄系材料で構成されている。このカラー部材40は、取付ボルト50の挿通を許容する円筒状のカラー本体41と、カラー本体41の上下両端から径外側に突出する円環状のフランジ部42とを一体に構成している。
【0072】
カラー本体41の外径は、直径10mmに形成されており、圧縮メッシュ21の内径より小径であり、渦巻きバネ22の内径と同等である。
上下両端に配置されるフランジ42の間隔は、上下方向における圧縮メッシュ21の厚さよりも長く、渦巻きバネ22の自然長よりも短い。つまり、フランジ42の間隔は、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを重合させた緩衝重合部材20Aの厚み方向の長さより短く形成されている。
【0073】
さらに、組み付け状態のカラー部材40には、径方向および上下方向に隙間を有する態様で圧縮メッシュ21を遊嵌するとともに、上下方向に圧縮した状態の渦巻きバネ22がカラー本体41に嵌合するように取り付けられることとなる。換言すると、渦巻きバネ22はプレストレストされた状態で緩衝装置10Aに組み付けられることとなる。
なお、カラー本体41の直径は、以上の説明において10mmに限定したが、これだけに限定せず適宜設定することができる。
【0074】
上述のような緩衝装置10Aは、グロメット30の第1固定部31に緩衝重合部材20Aの径外側を固定するとともに、第2固定部32にインシュレータ基材100を固定し、カラー部材40のフランジ42同士の間に緩衝重合部材20Aの径内側が取り付けられて、組み付けられる。
【0075】
詳述すると、緩衝重合部材20Aは、カラー部材40に対して、上下のフランジ42の間で遊嵌する圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21を弾性変形させることなく、上下のフランジ42と圧縮メッシュ21とに挟まれ、圧縮された渦巻きバネ22とが重合されている。
【0076】
換言すると、渦巻きバネ22は、弾性変形およびカラー部材40との隙間による相対移動によって、振動を吸収する緩衝材として機能する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動を、圧縮メッシュ21の緩衝作用を損なうことなく低減させるように、圧縮メッシュ21の主面と渦巻きバネ22を構成する円形断面線材とが接触する態様で、圧縮メッシュ21とカラー部材40との間の隙間を埋めており、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の緩衝材として機能している。
【0077】
そして、緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したヒートインシュレータ1Aは、
図4に示すように、カラー部材40に挿通した取付ボルト50をエキマニ3に形成されたボス3aに螺挿されることで、エキマニ3に固定される。
【0078】
上述の第1実施形態における緩衝装置10Aは、カラー部材40と圧縮メッシュ21との間の隙間において圧縮メッシュ21と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を弾性変形によって低減させる渦巻きバネ22を設けたことで、安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0079】
詳述すると、エンジン2の駆動あるいは車両の走行に伴うエキマニ3の振動によって、グロメット30とカラー部材40とが相対的に移動しても(
図5(a)中の矢印方向)、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21がカラー部材40に対して相対移動しながら弾性変形することで緩衝するとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22が上下方向に縮んで吸収する(
図5(b)参照)。
つまり、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが協働して緩衝することができる。
【0080】
加えて、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22は、渦巻きバネ22が配置されていない場合と比較して、圧縮メッシュ21の弾性変形を阻害して緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動(相対移動量、相対速度、相対加速度)を低下させる。
【0081】
これにより、圧縮メッシュ21とカラー部材40とが当接しない、あるいは当接してもその当接力が低減するため、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0082】
したがって、緩衝装置10Aは安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
さらに、線径や素材、巻きピッチなどによって緩衝材として所望の性能に合った渦巻きバネ22を相対移動低減部材として選定することができ、簡素な構成であるとともに、高い汎用性を有することができる。
【0083】
また、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定したことで、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
【0084】
詳述すると、渦巻きバネ22のバネ定数を圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定した、つまり、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを異なるバネ定数に設定したことで、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置10Aの制振性能を向上させることができる。
【0085】
さらに、渦巻きバネのバネ定数が圧縮メッシュのバネ定数の10分の1以上である場合には、圧縮メッシュと渦巻きバネとの変形性能が近似し、荷重が作用することによって渦巻きバネとともに圧縮メッシュも弾性変形して、圧縮メッシュの緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を圧縮メッシュ21の10分の1以下である0.5N/mmに設定した渦巻きバネ22は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い圧縮メッシュ21よりも弾性変形し易いため、カラー部材40と圧縮メッシュ21との隙間に配置した渦巻きバネ22が荷重に対して弾性変形することで圧縮メッシュ21の弾性変形を防止することができる。
【0086】
つまり、圧縮メッシュ21の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40との当接による当接力を渦巻きバネ22の弾性変形によって吸収し、カラー部材40との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
【0087】
さらにまた、渦巻きバネのバネ定数を圧縮メッシュのバネ定数の25000分の1以下とした場合、渦巻きバネが圧縮メッシュを支持することができず、フランジと圧縮メッシュとの隙間を埋めることができない、あるいは、荷重吸収性能を奏することができないおそれがあるが、バネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上であるため、圧縮メッシュ21の主面と接触する渦巻きバネ22の円形断面線材が圧縮メッシュ21を確実に支持し、渦巻きバネ22の十分な荷重吸収機能を奏することができる。
【0088】
また、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
【0089】
詳述すると、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、バネ定数を圧縮メッシュ21よりも低く設定した渦巻きバネ22が圧縮された状態でフランジ42と圧縮メッシュ21との隙間を埋め、つまり通常状態において、圧縮メッシュ21は弾性変形することなく、渦巻きバネ22にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、圧縮メッシュ21をフランジ42へ付勢することができる。
【0090】
この場合においても圧縮メッシュ21は弾性変形していないため、圧縮メッシュ21の緩衝性能が低下することなく、エキマニ3からヒートインシュレータ1Aへの振動を圧縮メッシュ21が確実に緩衝するとともに、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
【0091】
また、渦巻きバネ22を、上端が下端より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成することで、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、上下方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動代を確保でき、圧縮メッシュ21による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
【0092】
また、渦巻きバネ22における上方の径外側を、圧縮メッシュ21における径外側とともにグロメット30の第1固定部31に加締めて固定することで、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0093】
詳述すると、第1固定部31の固定によって、圧縮メッシュ21またはグロメット30に対する相対移動を簡素な構成で確実かつ容易に規制された渦巻きバネ22は、第1固定部31に固定されていない部分によってカラー部材40に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0094】
また、ヒートインシュレータ1Aは、上述のような緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したことで、エキマニ3からの振動を緩衝装置10Aが緩衝するため、ヒートインシュレータ1Aはエキマニ3の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0095】
(第2実施形態)
この発明の第2実施形態を、
図6から
図9を用いて説明する。ただし、以下で説明する構成のうち、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0096】
図6は第2実施形態における緩衝装置10Bの説明図を示し、詳述すると、
図6(a)は緩衝装置10Bの概略斜視図を示し、
図6(b)は緩衝装置10Bの概略断面図および部分拡大図を示している。
【0097】
図7は第2実施形態における緩衝重合部材20BのCT撮像画像の拡大斜視図を示し、
図8は第2実施形態における緩衝重合部材20BのCT撮像画像の拡大分解斜視図を示し、
図9は第2実施形態における緩衝重合部材20Bの概略拡大断面図および部分拡大図を示している。
【0098】
なお、
図7から
図9は、部分的に矩形状に切り出して拡大した状態の緩衝重合部材20Bをあらわしている。また、
図6から
図9の図面の上側を上方とするとともに、下側を下方とする。
【0099】
第2実施形態における緩衝装置10Bは、
図6(a)および
図6(b)に示すように、略円環状に形成されており、径外側のグロメット30と、平面視中央のカラー部材40と、グロメット30とカラー部材40との間の緩衝重合部材20Bとで構成している。
【0100】
なお、振動を緩衝する緩衝重合部材20Aの径外側をグロメット30に固定するとともに、径内側をカラー部材40に取り付けて構成し、第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、インシュレータ基材100に取り付けて、ヒートインシュレータ1Bを構成することができる(
図1および
図2参照)。
【0101】
緩衝装置10Bを構成する緩衝重合部材20Bは、
図7に示すように、圧縮メッシュ21の上下両面に、第2線材230を編込んで形成した編組メッシュ23を重合させて構成している。このように、圧縮メッシュ21の上下両面に配置された編組メッシュ23は、編込み方向と、編込み方向に対する直交方向とで伸縮性が異なるため、面方向の向きを90度異ならせて配設しており、これにより、緩衝重合部材20B全体の特性の均一化を図るよう構成している。
【0102】
なお、第2実施形態において、上述のように圧縮メッシュ21の上下両面に配置する編組メッシュ23を、面方向の向きを90度異ならせて配設したが、面方向の向きを90度異ならせて配設した緩衝重合部材20Bだけに限らない。例えば、編組メッシュ同士の面方向の向きを45度異ならせて配設してもよい。
また、緩衝重合部材20Bは、圧縮メッシュ21の上下両面のそれぞれに1枚の編組メッシュ23を重合して構成することだけに限らず、適宜の枚数を交互に重合してもよいし、例えば圧縮メッシュに対して複数の編組メッシュを重合させてもよい。つまり、圧縮メッシュ21に対する編組メッシュ23の重合態様は適宜設定することができる。
【0103】
第1線材210を編込んで構成された圧縮メッシュ21の表面には、
図8に示すように、編込まれた第1線材210同士の間に多数の編目凹部211が形成されている。この編目凹部211の多くは、後述する編組メッシュ23を構成する第2線材230の線径の2倍以上の深さおよび開口に形成されている。
【0104】
なお、編目凹部211の深さや開口は、後述するように編組メッシュ23を構成する第2線材230が変形しながら編目凹部211に食込むことができれば、第2線材230の2倍以上とせずに、適宜のサイズで形成されればよい。
【0105】
編組メッシュ23は、ステンレス製(SUS316)の線径が50μmである円形断面の第2線材230を、厚さが0.6mmとなるようにスムース編みに編込んで形成することで、編込方向とこれに直交する直交方向とに異なる伸縮性を有し、面方向に伸縮する弾性変形可能な特徴を有する。
この編組メッシュ23は、外径が圧縮メッシュ21の外径と同等である直径28mmに形成されるとともに、内径が直径10mmに形成されている。
【0106】
上述のような編組メッシュ23は、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下であるバネ定数約250N/mmに設定されており、圧縮メッシュ21よりも高い変形性を有する。さらに、圧縮メッシュ21との重合状態において、編組メッシュ23の主面が圧縮メッシュ21の主面と接触し、編組メッシュ23が圧縮メッシュ21を支持できるように、編組メッシュ23のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の50分の1以上である約48分の1としている。
【0107】
カラー部材40におけるフランジ42同士の間における上下方向の間隔は、圧縮メッシュ21と2枚の編組メッシュ23の厚みの合計より小さくなるように形成されている。具体的には、第2実施形態において、フランジ42同士の上下方向の間隔を1.35mmとしている。
【0108】
また、組み付け状態において、カラー本体41の外周面に編組メッシュ23の内周面が密着するように取り付けられている。なお、フランジ42同士の間隔は、1.35mmに限定せず、適宜設定することができる。
【0109】
上述のような緩衝装置10Bは、グロメット30の第1固定部31に緩衝重合部材20Bの径外側が固定されるとともに、第2固定部32にインシュレータ基材100が固定され、カラー部材40のフランジ42同士の間に緩衝重合部材20Bの径内側が取り付けられる。
【0110】
詳述すると、緩衝重合部材20Bは、
図6(b)に示すように、径外側の編組メッシュ23が完全に圧縮された状態で第1固定部31に固定されるとともに、カラー部材40に対応する部分の編組メッシュ23が圧縮され、
図8に示すように、互いの編込方向が直交するように編組メッシュ23を圧縮メッシュ21の上下両面に配置されている。具体的には、圧縮メッシュ21の上下両面に配置される編組メッシュ23は、第2実施形態において、厚み0.175mmとなるまでそれぞれ圧縮されている。
【0111】
このとき、
図6(b)の部分拡大図に示すように、フランジ42の径外側の端部が編組メッシュ23に食込むとともに、
図9の部分拡大図に示すように、カラー部材40に対応する部分の編組メッシュ23に圧縮による荷重が作用して第2線材230が変形しながら圧縮メッシュ21の編目凹部211に食込んで食込部231を構成している。
【0112】
つまり、カラー部材40に対応する部分における編組メッシュ23は、フランジ42および第2線材230の接触による摩擦力と、編組メッシュ23に対するフランジ42の端部の食込みによる係止力とによってカラー部材40に対する径方向の相対移動が低減される。
【0113】
加えて、編組メッシュ23におけるカラー部材40に対応する部分は、カラー部材40に対しない部分と比較して、第2線材230が変形しながら編目凹部211に食込んだ食込部231と編目凹部211を形成する第1線材210の摩擦力が向上するため、弾性変形に伴う圧縮メッシュ21との層間にズレが生じず、圧縮メッシュ21と一体化されることとなる。
【0114】
また、上述のように配置された1組の編組メッシュ23は、編込方向が同方向となるように配置した1組の編組メッシュと比較して、編込方向および直交方向への伸縮率が均一化され、フランジ42同士の間において圧縮メッシュ21の安定した配置を保持するように、圧縮メッシュ21とカラー部材40との隙間を埋めている。
【0115】
さらに、圧縮メッシュ21の上下に配置した編組メッシュ23の厚みを、フランジ42同士の間隔と圧縮メッシュ21の厚みとの差の半分よりも厚く形成しているため、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の上下方向の相対運動において、上下両端のフランジ42の一方に限りなく近接した場合であっても、他方のフランジ42と圧縮メッシュ21との対向面に編組メッシュ23が当接しており、つまり、圧縮メッシュ21とフランジ42との間を編組メッシュ23が常に隙間なく埋める態様で配置されることとなる。
【0116】
具体的には、厚さ0.6mmの編組メッシュ23が圧縮メッシュ21とフランジ42との間で0.175mmまで圧縮された状態において、仮に圧縮メッシュ21が上方に配置されたフランジ42に限りなく近接したとしても、圧縮メッシュ21と下方のフランジ42との隙間は0.35mm以上になることはないため、圧縮メッシュ21の上下に配置した編組メッシュ23が、圧縮メッシュ21とフランジ42との間の隙間を常に埋める態様で配置されることとなる。
【0117】
したがって、編組メッシュ23がフランジ42から一旦離間して、再度当接する際の、カラー部材40に対する編組メッシュ23の当接による当接音の発生を防止することができる。
【0118】
このような編組メッシュ23は、食込部231が編目凹部211に食込んだ第2線材230と第1線材210との摩擦力によって、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動が低減し、カラー部材40との隙間に生じる圧縮メッシュ21の振動をバランスよく吸収する緩衝材として機能している。
【0119】
上述の第2実施形態における緩衝装置10Bは、カラー部材40と圧縮メッシュ21との間の隙間において圧縮メッシュ21と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を低減させる編組メッシュ23を設けたことで、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0120】
また、編組メッシュ23のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約250N/mmに設定することでも、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、緩衝装置10Bの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
【0121】
さらにまた、編組メッシュのバネ定数を圧縮メッシュのバネ定数の50分の1以下とした場合、編組メッシュが圧縮メッシュを支持することができず、フランジと圧縮メッシュとの隙間を埋めることができない、あるいは、荷重吸収性能を奏することができないおそれがあるが、バネ定数250N/mmの編組メッシュ23は、圧縮メッシュ21のバネ定数の50分の1以上であるため、圧縮メッシュ21の主面と接触する編組メッシュ23の主面が圧縮メッシュ21を確実に支持し、編組メッシュ23の十分な荷重吸収機能を奏することができる。
【0122】
また、編組メッシュ23を圧縮し、フランジ42の径外側の端部に食込む状態で圧縮メッシュ21の上下両面に重合することで、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、エキマニ3からヒートインシュレータ1Bへの振動に対して確実に圧縮メッシュ21を作用させることができる。
【0123】
しかも、圧縮された状態の編組メッシュ23において、フランジ42の径外側の端部に食込む部分が、カラー部材40に対する編組メッシュ23の径方向の相対移動を低減するため、編目凹部211に食込んだ第2線材230と第1線材210との摩擦力によって、圧縮メッシュ21のカラー部材40に対応する径方向の相対移動も低減させることができる。
【0124】
また、第1線材210よりも線径の小さい第2線材230を編込んで編組メッシュ23を形成し、第2線材230が変形した食込部231の食込みを許容する編目凹部211を圧縮メッシュ21に形成することで、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0125】
詳しくは、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動によって編組メッシュ23に荷重が作用する場合、第2線材230が変形しながら圧縮メッシュ21の編目凹部211に食込んで食込部231を構成することとなる。
【0126】
このとき、編組メッシュ23に作用する荷重によるエネルギの一部が、編組メッシュ23が変形して食込部231を構成する際の第2線材230の変形エネルギに変換されることに加え、食込部231が編目凹部211に食込む際の第2線材230同士の摩擦エネルギと、編目凹部211を形成する第1線材210および食込部231を構成する第2線材230の摩擦エネルギとに消費される。
【0127】
つまり、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動に要するエネルギの一部は、変形エネルギに変換されるとともに摩擦エネルギに消費され低下する。すなわち、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を低減させることができる。
【0128】
さらに、荷重が作用して食込部231が編目凹部211に食込んだ状態の圧縮メッシュ21と編組メッシュ23とは、第2線材230が編目凹部211に食込んでいない、つまり食込部231が構成されていない場合と比較して、第1線材210と第2線材230との接触圧力が増大したり、接触面積が拡大することによって摩擦力が増大するため、編組メッシュ23と重合した圧縮メッシュ21の、カラー部材40に対する径方向の相対移動を低減させることができる。
したがって、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0129】
また、第2線材230が編目凹部211に食込んだ状態における緩衝重合部材20Bは、食込部231の食込みによって編組メッシュ23の径方向への伸縮変形が抑制されるとともに、圧縮メッシュ21の湾曲変形に編組メッシュ23が追従するため一体化を図ることができ、圧縮メッシュ21の緩衝性能と編組メッシュ23の緩衝性能だけでなく、一体化した第3の緩衝部材としての緩衝性能を有することができる。
【0130】
さらに、編組メッシュ23に作用された荷重が除荷されると、編目凹部211に変形しながら食込んだ第2線材230は復元力によって元の状態に復帰する、つまり食込部231は解消されるため、繰り返し荷重に対して有効な相対移動低減性能を有することができる。
さらにまた、第2線材230を編込んで形成する編組メッシュ23は、編込みピッチや編込みパターンなどを容易に調整できるため、バネ定数を容易に実現することができる。
【0131】
また、編目凹部211を有する圧縮メッシュと、第1線材210よりも線径が小さい第2線材230を編込み、相対移動低減部材として機能する編組メッシュ23とを重合したため、緩衝重合部材20Bを備えた緩衝装置10Bは振動吸収できる周波数帯域を拡大することができる。
【0132】
詳述すると、緩衝重合部材20Bに振動が付与されると、圧縮メッシュ21および編組メッシュ23がそれぞれ面内方向の拡縮変形や厚み方向の湾曲変形として弾性変形するとともに、それぞれの弾性変形によって編組メッシュ23に荷重が作用することによって、編組メッシュ23の第2線材230が変形しながら圧縮メッシュ21の編目凹部211に食込んで食込部231を形成することとなり、圧縮メッシュ21単体の振動吸収性能および編組メッシュ23の弾性変形による振動吸収性能に加えて、編目凹部211に対する第2線材230の食込み変形時のエネルギ消費による振動吸収性能を得ることができ、振動吸収できる周波数帯域の拡大を図ることができる。
【0133】
また、圧縮メッシュ21も編組メッシュ23も線材の編込みによって構成されているため、その編込みによる編目凹部211は、その大きさを変化しながら緩衝材として容易に拡縮方向に弾性変形することができる。
【0134】
これにより、緩衝重合部材20Bに多様な方向への変形が生じると、食込部231が食込んだ編目凹部211が、圧縮メッシュ21の変形に伴って縮小方向に変形し、編目凹部211を構成する第1線材210が、編目凹部211に食込んだ食込部231をより拘束することとなる。
【0135】
さらに、金属製線材230を編込んで形成した上方の編組メッシュ23は、例えばグロメット30に対してカラー部材40が上方に相対移動して、圧縮メッシュ21が上方に湾曲変形する場合、圧縮メッシュ21に押圧されることとなり、第2線材230が編目凹部211に食込み易くなる。
【0136】
したがって、編目凹部211に食い込んだ食込部231を第1線材が拘束する、あるいは、圧縮メッシュ21の湾曲変形によって押圧される編組メッシュ23の第2線材230が編目凹部211に食い込み易くなることで、圧縮メッシュ21と編組メッシュ23との一体性を向上することができる。
【0137】
また、圧縮メッシュ21をメリヤス編みで形成するとともに、編組メッシュ23をスムース編みで形成し、圧縮メッシュ21と編組メッシュ23とを重合させて構成することで、緩衝装置10Bの制振性能を確実に向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0138】
詳述すると、圧縮メッシュ21が弾性変形によってエキマニ3からヒートインシュレータ1Bへの振動を確実に緩衝する。一方、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動により作用する荷重を、編組メッシュ23が上下方向および径方向への弾性変形によって効率良く他のエネルギに変換あるいは消費することができる。
したがって、緩衝装置10Bの制振性能を確実に向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
【0139】
加えて、編組メッシュ23におけるカラー部材40に対応する部分は、編目凹部211に食込んだ食込部231を構成する第2線材230と第1線材210の摩擦力が向上するため、弾性変形に伴う圧縮メッシュ21との層間にズレが生じず、圧縮メッシュ21と一体化され、単にバネ定数が異なる圧縮メッシュ21と編組メッシュ23とを重ね合わせただけでは得ることができない、第3の緩衝材として機能することができる。
したがって、緩衝可能な振動の周波数帯域を拡大することができ、緩衝装置10Bの緩衝性能をより確実に向上させることができる。
【0140】
また、編組メッシュ23の線材をステンレスで構成することで、例えば樹脂製の線材を編込んで形成した場合と比較して、変形に対する耐久性能を向上できるとともに、弾性変形性能を向上させることができる。
【0141】
また、編組メッシュ23を圧縮メッシュ21の両面に配置することで、緩衝装置10Bはより確実に安定して優れた制振性を有するとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をさらに防止することができる。
【0142】
しかも、圧縮メッシュ21に重合させる1組の編組メッシュ23は、互いの編込方向が直交するように配置されているため、編込方向が同方向となるように配した1組の編組メッシュと比較して、編込方向および直交方向への伸縮率の均一化を図ることができる。
【0143】
また、インシュレータ1Bは、上述のような緩衝装置10Bをインシュレータ基材100に取り付けて構成することで、第1実施形態におけるヒートインシュレータ1Aと同様に、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を抑制することができる。
【0144】
続いて、上述のような効果を奏する緩衝重合部材20Aおよび緩衝重合部材20Bの効果確認試験として行った、供試体A〜Eを用いた荷重特性確認試験、振動騒音確認試験、および振動低減確認試験について説明する。
【0145】
本試験で用いる供試体Aは、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮したバネ定数12000N/mmの圧縮メッシュ21である。
【0146】
供試体Bは、円形断面線材を平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成したバネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22である。
供試体Cは、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮したバネ定数12000N/mmの圧縮メッシュ21の下面に、円形断面線材を平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成したバネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22を重合させた緩衝重合部材20Aである。
【0147】
供試体Dは、ステンレス製(SUS316)の線径が50μmである線材を、厚さが0.6mmとなるようにスムース編みに編込んだバネ定数250N/mmの編組メッシュ23である。
供試体Eは、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮たバネ定数12000N/mmの圧縮メッシュ21の上下両面に、ステンレス製(SUS316)の線径が50μmである線材を、厚さが0.6mmとなるようにスムース編みに編込んだバネ定数250N/mmの編組メッシュ23を重合させた緩衝重合部材20Bである。なお、供試体Dは互いの編込方向が互いに直交するように配置されている。
【0148】
まず、インストロン社製の圧縮試験装置を用いて供試体に所定の荷重を作用させ、その後除荷することで得られる供試体の変位量を確認する荷重特性確認試験の結果について
図10を用いて説明する。
【0149】
図10は、横軸に変位をあらわし、縦軸に荷重をあらわす荷重特性グラフを示している。
図10について詳述すると、
図10(a)は供試体Aの荷重特性グラフを示し、
図10(b)は供試体Bの荷重特性グラフを示し、
図10(c)は供試体Cの荷重特性グラフを示し、
図10(d)は供試体Dの荷重特性グラフを示し、
図10(e)は供試体Eの荷重特性グラフを示している。
【0150】
供試体Aにおよそ2800Nの荷重を作用させると変位量が0.4mmまで漸増した。
これに対し、供試体Bにおよそ400Nの荷重を作用させると変位量が5.8mmまで正比例し、供試体Cにおよそ600Nの荷重を作用させると変位量が5.8mmまで正比例し、その後変位量が6.0mmまで漸増した。
【0151】
そして、供試体Dにおよそ200Nの荷重を作用させると変位量が0.4mmまで漸増し、供試体Eにおよそ100Nの荷重を作用させると変位量が0.8mmまで漸増した。
その後の除荷の際における供試体A〜Dは、それぞれ荷重時のヒステリシスを有して変位量が漸減する結果となった。
つまり、図から明らかなように、供試体Cは、供試体Aに対して約15倍,供試体Bに対して0.2mm大きい変位量が得られ、供試体Eは、供試体A,Dに対して約2倍の変位量が得られた。
【0152】
この結果について考察すると、供試体Cは、変位量が5.8mmまで供試体Aよりもバネ定数が低い供試体Bの変形のみ影響し、その後供試体Aの影響を受け、供試体Eは、変位量が0.4mmまで供試体Aよりもバネ定数が低い供試体Dの変形のみ影響し、その後供試体Aの影響を受けたものと考えられる。
【0153】
つまり、小さな荷重で大きな変位を得ることができた供試体C,Eは、付加された振動による振動エネルギを弾性変形による弾性エネルギに効率良く変換でき、供試体Aよりも振動吸収性能が優れているということが確認できた。
【0154】
次に、IMV社製の加振装置を用いて供試体を加振して得られる供試体の変位量および音圧を確認する振動・騒音確認試験の結果について
図11を用いて説明する。なお、本試験は、供試体をインシュレータ基材100に固定した状態で行った。
【0155】
図11は、横軸に周波数をあらわし、左縦軸に変位をあらわすとともに、右縦軸に音圧をあらわす振動・騒音特性グラフを示している。
図11について説明すると、
図11(a)は供試体Aの振動・騒音特性グラフを示し、
図11(b)は供試体Cの振動・騒音特性グラフを示し、
図11(c)は供試体Eの振動・騒音特性グラフを示している。
【0156】
供試体Aは、およそ周波数50Hzの振動が作用することによって、変位量が約2mmのピーク値を示し、周波数60Hz程度までその変位量は急激に低下する。そして、周波数70Hz以上において、徐々に変位量0mmに近似していく結果となった。また、周波数50Hz,260Hzの振動が作用すると、騒音が60dBを超えるピーク値を示す結果となった。
【0157】
これに対して、供試体Cは、およそ50Hzの振動が作用することによって、変位量が約2.0mmのピーク値を示し、周波数60Hz程度までその変位量は急激に低下する。そして、周波数70Hz以上において、徐々に変位量0mmに近似していく結果となった。また、周波数50Hzの振動が作用すると、騒音が60dBを越えるピーク値を示すものの、その振幅は、供試体Aにおける同周波数のピーク値の振幅よりも狭かった。
【0158】
そして、供試体Eは、およそ60Hzの振動が作用することによって、変位量が約1.2mmのピーク値を示し、周波数75Hz程度までその変位量は急激に低下する。そして、周波数80Hz以上において、徐々に変位量0mmに近似していく結果となった。また、騒音については作用させる振動に関わらず50Hz付近を推移してピーク値を示すことはなかった。
【0159】
つまり、図から明らかなように、緩衝材として従来から用いられている供試体Aをインシュレータ基材100に固定した場合と比較して、供試体Cをインシュレータ基材100に固定した場合は、周波数50Hzにおいて騒音60dBを越えたものの、このピークにおける振幅が狭いことから全体的に騒音が低く、供試体Eをインシュレータ基材100に固定した場合は、振動も騒音も全体的に低いという結果が得られた。
【0160】
したがって、供試体C,Eは、インシュレータ基材100に固定された場合であっても、上述した荷重特性確認試験で確認できた振動吸収性能を奏することができ、結果、供試体Aよりも振動・騒音特性が優れていることを確認できた。
【0161】
最後に、小野測器社製の加速度測定装置を用いて供試体に所定の周波数を作用させることで得られる供試体の振動加速度を確認する振動騒音確認試験の結果について
図12を用いて説明する。なお、本試験は、各供試体をインシュレータ基材100に固定した状態で行った。
【0162】
図12は、横軸に周波数をあらわし、縦軸に振動加速度をあらわす振動低減特性グラフを示している。
図12中において、供試体Aの振動低減特性を点線で示し、供試体Cの振動低減特性を一点鎖線で示し、供試体Eの振動低減特性を実線で示している。
【0163】
供試体Aは、周波数がおよそ40Hzの振動が作用することによって、振動加速度が200m/sec
2を超え図中のピーク(a)を示し、周波数50Hz程度まで急激に低下すると、周波数60Hz以上において振動加速度20m/sec
2を推移した。そして、周波数240Hzの振動が作用することによって、振動加速度が300m/sec
2に迫るピーク(b)を示し、周波数240Hz程度まで急激に低下する結果となった。
【0164】
これに対して、供試体Cは、周波数がおよそ30Hzの振動が作用することによって、振動加速度が40m/sec
2程度の図中のピーク(c)を示し、周波数40Hz以上において振動加速度30m/sec
2を推移した。そして、周波数180Hzの振動が作用することによって、振動加速度が50m/sec
2程度のピーク(d)を示し、周波数180Hz以上において振動加速度30m/sec
2を推移する結果となった。
【0165】
そして、供試体Eは、周波数がおよそ30Hzの振動が作用することによって、振動加速度が100m/sec
2程度の図中のピーク(e)を示し、周波数50Hz以上において振動加速度10m/sec
2まで急激に低下したが、周波数がおよそ70Hzの振動が作用すると、再び振動加速度が100m/sec
2程度の図中のピーク(f)を示し、周波数80Hz程度まで急激に低下すると、周波数90Hz以上において振動加速度20m/sec
2を推移した。そして、周波数220Hzの振動が作用することによって、振動加速度が130m/sec
2程度のピーク(g)を示し、周波数240Hz程度まで急激に低下するする結果となった。
【0166】
つまり、緩衝材として従来から用いられている供試体Aと比較して、図から明らかなように、供試体C,Eは、インシュレータ基材100に固定された場合であっても、上述した荷重特性確認試験および振動・騒音確認試験で確認できた効果を本試験結果に反映させ、振動加速度が低いという結果が得られた。特に供試体Cの結果は良好であることがわかった。したがって、供試体C,Eは供試体Aよりも振動低減特性が優れていることが確認できた。
【0167】
以上のような結果から、供試体C(緩衝重合部材20A)および供試体E(緩衝重合部材20B)は、従来から用いられている供試体A(圧縮メッシュ21単体)と比較して、振動吸収性能が優れており、インシュレータ基材100に固定した場合に振動が作用しても、振動・騒音特性と振動低減特性が優れているという結果を得ることができたため、上述したような効果を奏することができることを確認できた。
【0168】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の金属カバーは、実施形態のヒートインシュレータ1A,1Bに対応し、
以下同様に、
金属製の板材および囲繞部材は、インシュレータ基材100に対応し、
振動部材は、エキマニ3に対応し、
緩衝部材、第1緩衝部材およびメリヤス緩衝部材は、圧縮メッシュ21に対応し、
相対移動低減部材は、渦巻きバネ22および編組メッシュ23に対応し、
バネ部材は、渦巻きバネ22に対応し、
第2緩衝部材およびスムース緩衝部材は、編組メッシュ23に対応し、
固定部材は、グロメット30に対応し、
移動規制手段および固定部は、第1固定部31に対応し、
移動規制凸部は、後述する凸部212に対応し、
締結部材は、取付ボルト50に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0169】
例えば、上述の第1実施形態および第2実施形態で説明した緩衝装置10A,10Bと異なる構成の緩衝装置10C〜10Lであってもよい。これら緩衝装置10C〜10Lについて、上述した緩衝装置10A,10Bと同様の構成の説明を省略し、他の実施形態における緩衝装置10C〜10Lをあらわす
図13から
図15を用いて簡単に説明する。
【0170】
図13について詳述すると、
図13(a)は緩衝装置10Cの概略断面図を示し、
図13(b)は緩衝装置10Dの概略断面図を示し、
図13(c)は緩衝装置10Eの概略断面図を示し、
図13(d)は緩衝装置10Fの概略断面図を示している。
【0171】
図14について詳述すると、
図14(a)は緩衝装置10Gの概略断面図を示し、
図14(b)は緩衝装置10Hの概略断面図を示し、
図14(c)は緩衝装置10Iの概略断面図を示している。
【0172】
図15について詳述すると、
図15(a)は緩衝装置10Jの概略断面図を示し、
図15(b)は緩衝装置10Kの概略断面図を示し、
図15(c)は緩衝装置10Lの概略断面図を示している。
【0173】
緩衝装置10Cは、
図13(a)に示すように、下面に底面視環状の凸部212を形成した圧縮メッシュ21Cと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Cを用いてもよい。この緩衝重合部材20Cは、渦巻きバネ22の外周を凸部212の内周面に係止して構成している。
【0174】
また、緩衝装置10Dは、
図13(b)に示すように、下面に底面視環状で溝状の凹部213を形成した圧縮メッシュ21Dと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Dを用いてもよい。この緩衝重合部材20Dは、渦巻きバネ22の上端を凹部213に嵌合させて構成している。なお、凹部213は、線材を編込むことで形成される編目凹部211とは異なり、積極的に形成した環状の溝である。
【0175】
また、緩衝装置10Eは、
図13(c)に示すように、圧縮メッシュ21Cと、圧縮メッシュ21Cの上下両面に配置した1組の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Eを用いてもよい。この緩衝重合部材20Eは、下方の渦巻きバネ22を第1固定部31で固定するとともに、上方の渦巻きバネ22を上面に設けた凸部212に係止している。
【0176】
また、緩衝装置10Fは、
図13(d)に示すように、圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21の下面に配置した倒位の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Fを用いてもよい。この場合、カラー部材40Fは、カラー本体41の上端のフランジ42よりも大径のフランジ42Fを下端に配置し、フランジ42Fの上面に凸部421を設け、子の凸部421に渦巻きバネ22の下端を係止させる。
【0177】
以上のように構成した緩衝装置10C〜10Fは、渦巻きバネ22を小型化して圧縮メッシュ21に容易に組み付けることができ、さらには、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、圧縮メッシュ21C,21Dやグロメット30に対する渦巻きバネ22の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
【0178】
緩衝装置10Gは、
図14(a)に示すように、上述した第2実施形態と同様の構成である編組メッシュ23と、編組メッシュ23の上下両面に配置した圧縮メッシュ21とで構成した緩衝重合部材20Gを用いてもよい。
【0179】
また、緩衝装置10Hは、
図14(b)に示すように、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様の構成である圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21の外面を囲繞する編組メッシュ23Hとで構成した緩衝重合部材20Hを用いてもよい。
【0180】
また、緩衝装置10Iは、
図14(c)に示すように、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様の構成である圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21におけるカラー部材40に対応する部分のみを囲繞する編組メッシュ23Iとで構成した緩衝重合部材20Iを用いてもよい。
【0181】
以上のように構成した緩衝装置10G〜10Iは、少なくとも圧縮メッシュ21におけるカラー部材40に対応する部分に編組メッシュ23,23G,23Iに配置しているため、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を確実に防止することができる。
【0182】
しかも、緩衝装置10H,10Iの場合、圧縮メッシュ21とカラー部材40との間の上下方向の隙間のみならず、径方向の隙間も埋めることができ、上下方向の相対移動に加えて、径方向の相対移動も防止することができる。
【0183】
上述のようにグロメット30を用いてインシュレータ基材100と圧縮メッシュ21とを連結し、圧縮メッシュ21とフランジ42との間の隙間に渦巻きバネ22や編組メッシュ23を配置する態様の緩衝装置10A〜10Iとは異なり、以下で説明する緩衝装置10J〜10Lは、フランジ42同士の間において、インシュレータ基材100と、圧縮メッシュ21J,21Lと、渦巻きバネ22Jまたは編組メッシュ23Lとをこの順にサンドイッチ状に重合させてもよい。
【0184】
詳述すると、緩衝装置10Jは、
図15(a)に示すように、インシュレータ基材100の下面に配置した圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21Jの下面に配置した渦巻きバネ22Jとで構成した緩衝重合部材20Jを、インシュレータ基材100とともにフランジ42同士の間に配置してもよい。
【0185】
この場合、緩衝重合部材20Jは、圧縮メッシュ21Jの下面に設けた凸部212に渦巻きバネ22Jの上端を係止して構成している。
もちろん、
図15(b)に示すように、インシュレータ基材100を介して上記緩衝重合部材20Jを板厚方向に対称配置させて緩衝装置10Kを構成してもよい。
【0186】
また、緩衝装置10Lは、
図15(c)に示すように、圧縮メッシュ21Lと、圧縮メッシュ21Lおよびフランジ42の間に配置した編組メッシュ23Lとで構成した緩衝重合部材20Lを、インシュレータ基材100の上下両面に配置して構成してもよい。
【0187】
以上のように構成した緩衝装置10J〜10Lは、インシュレータ基材100を圧縮メッシュ21J,21Lで緩衝するとともに、圧縮メッシュ21J,21Lのカラー部材40に対する相対移動を渦巻きバネ22Jまたは編組メッシュ23Lによって低減するため、上述の第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0188】
また、上記圧縮メッシュ21および編組メッシュ23は、ステンレス製(SUS316)の線材を用いることのみならず、例えば、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで構成した線材であってもよく、さらには、素材自体に制振性を有する鉄アルミなど、いろいろな機能や特性を有する金属製の素材を用いてもよい。