(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792289
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】網戸及び改修網戸用キット
(51)【国際特許分類】
E06B 9/52 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
E06B9/52 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-83161(P2017-83161)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-178636(P2018-178636A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107929
【氏名又は名称】セイキ総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】守谷 崇
(72)【発明者】
【氏名】青山 武史
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 洋志
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−97242(JP,A)
【文献】
特開2012−162964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材が方形に枠組みされた網戸枠における四周の各枠材の室内側に、方形の周枠内に防虫ネットを取り付けたネット・カートリッジを保持させるためのカートリッジ取付枠を装着することによって構成される網戸であって、
上記網戸枠の四周の枠材に対応するカートリッジ取付枠の四周の各取付枠材が、ネット・カートリッジにおける周枠の各辺を接合するためのネット接合部と、それに沿って、固定用のネジを螺挿するネジ溝部とを連設してなる型材として構成され、
上記カートリッジ取付枠は、上記取付枠材を、そのネジ溝部がネット接合部の外側になるようにして、上記網戸枠の四周の各枠材の内側に沿うように配列させた状態で、且つ上記網戸枠の内周側の一部への当接面を備えるものとして、それらの取付枠材の各隅部を相互に連結することにより構成され、
上記ネット・カートリッジは、上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて切断した防虫ネットの周辺に、同様に上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて形成した周枠を固定すると共に、該防虫ネットにおける上記周枠の固定側とは反対側の面に、前記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に取り付けた第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を固定することにより構成され、
上記網戸枠に対し、その室内側から四周の枠材の内側に沿わせながら、カートリッジ取付枠を前記当接面が網戸枠の内周側に当接するところまで嵌め着けたうえで、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上に跨る押え金具を通して、上記ネジ溝部に対して離散的にタッピンネジを螺挿することにより、カートリッジ取付枠を上記網戸枠に固定している、
ことを特徴とする網戸。
【請求項2】
カートリッジ取付枠を構成する四周の取付枠材の各両端部における連結を、互いに直交する取付枠材の各端部が嵌入する嵌挿凹部を形成した合成樹脂製のコーナーブロックに対する端部の嵌挿によって行い、且つ、上記コーナーブロックにおいて、カートリッジ取付枠を網戸枠に対して嵌め着けたときに外周側に面する部位に、該部位から突出して、該コーナーブロックを構成する合成樹脂の弾性により網戸枠の一部に係止又は摩擦接触し、カートリッジ取付枠をそこに仮止めする弾片を設けている、
ことを特徴とする請求項1に記載の網戸。
【請求項3】
網戸枠が、その枠材の枠内周側に沿って該網戸枠の室外側に向けて開口する凹溝部を備えている場合に、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上とに跨るようにタッピンネジで固定する押え金具を、その枠材側端に上記凹溝部に係止する鈎部を有するものとする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の網戸。
【請求項4】
上記押え金具に、カートリッジ取付枠と網戸枠の枠材とに跨る方向にタッピンネジの螺挿位置を調整する長孔を設けている、
ことを特徴とする請求項3に記載の網戸。
【請求項5】
上記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に対して固定する第1の面ファスナー片が、上記ネット接合部における該面ファスナー片の取付位置の両側に対設されたところの、互いに内側に傾いた一対のかしめ用爪部片間に配設され、上記一対のかしめ用爪部片の内側へのかしめにより固定されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の網戸。
【請求項6】
枠材が方形に枠組みされた網戸枠における四周の各枠材の枠内周側に沿って、防虫用のネット取付用の凹溝部が設けられているところの既存の網戸枠に対し、方形の周枠内に防虫ネットを取り付けたネット・カートリッジを保持させるためのカートリッジ取付枠を装着するための改修網戸用キットであって、
上記網戸枠の四周の枠材に対応するカートリッジ取付枠の四周の各取付枠材が、ネット・カートリッジにおける周枠の各辺を接合するためのネット接合部と、それに沿って、固定用のネジを螺挿するネジ溝部とを連設してなる型材として構成され、
上記カートリッジ取付枠は、上記取付枠材を、そのネジ溝部がネット接合部の外側になるようにして、上記網戸枠の四周の各枠材の内側に沿うように配列させた状態で、且つ上記網戸枠の内周側の一部への当接面を備えるものとして、それらの取付枠材の各隅部を相互に連結することにより構成可能にしたものであり、
上記ネット・カートリッジは、上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて切断した防虫ネットの周辺に、同様に上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて形成した周枠を固定すると共に、該防虫ネットにおける上記周枠の固定側とは反対側の面に、前記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に取り付けた第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を固定することにより構成され、
上記網戸枠に対するカートリッジ取付枠の組み付けは、網戸枠の室内側から四周の枠材の内側に沿わせながら、カートリッジ取付枠を前記当接面が網戸枠の内周側に当接するところまで嵌め着け可能に形成されており、
カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上に跨る押え金具を通して、上記ネジ溝部に対して離散的にタッピンネジを螺挿することにより、カートリッジ取付枠を上記網戸枠に固定可能とし、
上記カートリッジ取付枠における第1の面ファスナー片に対し、ネット・カートリッジの周枠に固定した第2の面ファスナー片を接合可能に構成されている、
ことを特徴とする改修網戸用キット。
【請求項7】
カートリッジ取付枠を構成する四周の取付枠材の各両端部における連結を、互いに直交する取付枠材の各端部が嵌入する嵌挿凹部を形成した合成樹脂製のコーナーブロックに対する端部の嵌挿によって行い、且つ、上記コーナーブロックにおいて、カートリッジ取付枠を網戸枠に対して嵌め着けたときに外周側に面する部位に、該部位から突出して、該コーナーブロックを構成する合成樹脂の弾性により網戸枠の一部に係止又は摩擦接触し、カートリッジ取付枠をそこに仮止めする弾片を設けている、
ことを特徴とする請求項6に記載の改修網戸用キット。
【請求項8】
網戸枠が、その枠材の枠内周側に沿って該網戸枠の室外側に向けて開口する凹溝部を備えている場合に、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上とに跨るようにタッピンネジで固定する押え金具を、その枠材側端に上記凹溝部に係止する鈎部を有するものとし、
該押え金具に、カートリッジ取付枠と網戸枠の枠材とに跨る方向にタッピンネジの螺挿位置を調整する長孔を設けている、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の改修網戸用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸枠に対して室内側から防虫ネットを着脱可能にした網戸、及び既存の網戸枠を利用して室内側からネットを着脱可能にした改修網戸を組み上げるための改修網戸用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的に行われている網戸枠へのネットの張設は、網戸枠の室外側面の枠内周に設けられているネット固定溝に対し、ネットを紐状のゴム(押さえビート)や樹脂製の押し縁と共に押し込んで行うのが通例である。このような網戸枠へのネットの固定は、ネットの洗浄や破損に伴う交換のために行う必要がある。そして、それらの網戸枠に対するネットの着脱は、網戸枠を建物のサッシ等から取り外してネットを除去し、その網戸枠を屋内の広い面積の床面上に置いて、新しいネット或いは張り替えのために洗浄したネットを再度網戸枠に取り付ける作業を行う必要があり、このような作業を能率的に行うのは、特に経験を積んだものでなければ容易なことではない。また、網戸の設置場所が高層階の外壁面であるような場合には、その着脱作業等に危険が伴うことになる。
【0003】
更に、近年は、中高層階の外壁に設置される網戸の落下防止のために、該網戸を建物開口部枠に固定的に設置したり、サッシの室内側に設置するなどの配慮がなされていることから、ネットを網戸枠に室内側から取り外したり張設したりすることが要望され、それを行う手段も提案されているので、従来から一般的に用いられている網戸枠の室外側面へネットの張設を行うものについても、網戸枠に室内側からの作業でネットの着脱や交換できるようにすることが望まれている。
【0004】
このような問題に対処するため、既存の網戸枠に対するネットの着脱を簡易にできるようにしたものが、特許文献1において提案されている。この既提案のものは、網戸框における室外側面に設けられたネット固定溝に、断面が略Z字状のアタッチメントを組み込んで、上記ネット取付部に接着叉はネジ止めにより固定し、そのアタッチメントの垂下片の室内側面に取り付けた一方の面ファスナーに対し、網部材の四周に固定した他方の面ファスナーを固着した防虫ネットを室内側から着脱可能にしたものである。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における防虫ネットの取付構造では、網戸枠の室外側面の枠内周に設けられているネット固定溝に対して防虫ネットの交換を行う必要があり、網戸の設置場所が高層階の外壁面であるような場合の該網戸の落下防止対策に対応することには困難性がある。即ち、上記既存の網戸框におけるネット固定溝は、飽くまでも網戸枠の室外側に開口する狭い幅の溝状であるだけでなく、既存の各社の網戸枠が同一寸法で製作されているものではないので、少なくともその溝自体をネットの固定に使用すれば、上記アタッチメントに対応する部材が防虫ネットと共に落下する可能性があることは明らかである。
【0006】
また、上述したように、近年では網戸枠にネットを室内側から取り外したり張設したりすることが要望されているが、網戸枠へのネットの貼り替えを、従来から行われているような作業、つまり、網戸枠の枠内周に設けられているネット固定溝に対してネットを紐状のゴム(押さえビート)や樹脂製の押し縁と共に押し込んで行うのは、その作業が面倒であるとか、ネットがその取付部近傍で破断しやすいなどの理由で、一般にあまり望まれていないものであり、そのため、他の簡易な手段でネットの貼り替えを容易に行えるような網戸構造の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−097242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術的課題は、既存の網戸枠を利用する場合を含めて、網戸枠に対し防虫ネットを室内側から容易に着脱できるような構造とし、しかも、該ネットを網戸枠に固定するカートリッジ取付枠と共に、網戸枠から離脱することはあり得ない、といえる程度に安定的に取り付けることを可能にした網戸、及び既存の網戸枠を利用して同様な網戸を構成する改修網戸用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によれば、枠材が方形に枠組みされた網戸枠における四周の各枠材の室内側に、方形の周枠内に防虫ネットを取り付けたネット・カートリッジを保持させるためのカートリッジ取付枠を装着することによって構成される網戸であって、上記網戸枠の四周の枠材に対応するカートリッジ取付枠の四周の各取付枠材が、ネット・カートリッジにおける周枠の各辺を接合するためのネット接合部と、それに沿って、固定用のネジを螺挿するネジ溝部とを連設してなる型材として構成され、上記カートリッジ取付枠は、上記取付枠材を、そのネジ溝部がネット接合部の外側になるようにして、上記網戸枠の四周の各枠材の内側に沿うように配列させた状態で、且つ上記網戸枠の内周側の一部への当接面を備えるものとして、それらの取付枠材の各隅部を相互に連結することにより構成され、上記ネット・カートリッジは、上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて切断した防虫ネットの周辺に、同様に上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて形成した周枠を固定すると共に、該防虫ネットにおける上記周枠の固定側とは反対側の面に、前記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に取り付けた第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を固定することにより構成され、上記網戸枠に対し、その室内側から四周の枠材の内側に沿わせながら、カートリッジ取付枠を前記当接面が網戸枠の内周側に当接するところまで嵌め着けたうえで、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上に跨る押え金具を通して、上記ネジ溝部に対して離散的にタッピンネジを螺挿することにより、カートリッジ取付枠を上記網戸枠に固定していることを特徴とする網戸が提供される。
【0010】
上述した本発明の網戸においては、上記網戸枠にその室内側から取り付けるカートリッジ取付枠が、網戸枠の防虫ネットの取付開口部に対して室内側から取り付けるようにしたものであって、該取付開口部よりも大きいものであるから、防虫ネットの洗浄や交換に際して、或いは網戸枠が強い風雨等に曝されることがあっても、網戸枠から離脱して落下することはあり得ない、といえる程度に安定的に取り付けられているものであり、しかも、既存の網戸枠を用いてそれに簡易に装着できるので、極めて経済的であり、また、網戸枠に対して防虫ネットを室内側から面ファスナーで容易に着脱できるような構造としているので、防虫ネットの洗浄や交換等のメンテナンスも非常に簡単且つ容易に行うことができるものである。
【0011】
本発明に係る上記網戸の好ましい実施形態においては、カートリッジ取付枠を構成する四周の取付枠材の各両端部における連結を、互いに直交する取付枠材の各端部が嵌入する嵌挿凹部を形成した合成樹脂製のコーナーブロックに対する端部の嵌挿によって行い、且つ、上記コーナーブロックにおいて、カートリッジ取付枠を網戸枠に対して嵌め着けたときに外周側に面する部位に、該部位から突出して、該コーナーブロックを構成する合成樹脂の弾性により網戸枠の一部に係止又は摩擦接触し、カートリッジ取付枠をそこに仮止めする弾片を設けたものとして構成される。
【0012】
この構成は、網戸枠に対してカートリッジ取付枠を取り付けるに際し、該カートリッジ取付枠を網戸枠に対して嵌め着けるだけで、該カートリッジ取付枠をそこに一時的に保持させることができ、特にこの状態では、網戸枠の防虫ネットを張設する開口を通してカートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上とに跨るように押え金具をタッピンネジで固定する作業を行うことになるが、このような作業に際して、カートリッジ取付枠を一時的に仮固定しておけることは、施工を簡単、容易、安全にに行うことができる点で非常に有効である。
【0013】
更に、本発明に係る上記網戸の他の好ましい実施形態においては、網戸枠が、その枠材の枠内周側に沿って該網戸枠の室外側に向けて開口する凹溝部を備えている場合に、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上とに跨るようにタッピンネジで固定する押え金具を、その枠材側端に上記凹溝部に係止する鈎部を有するものとして、網戸の構成をより一層安全で強固なものとすることができる。しかも、上記押え金具においては、カートリッジ取付枠と網戸枠の枠材とに跨る方向にタッピンネジの螺挿位置を調整する長孔を設けておくのが望ましく、これにより、網戸枠における枠材の室外側に寸法を異にした凹溝部がある各社の製品に対し、タッピンネジの螺挿位置を調整して確実に鈎部を凹溝部に係止させることが可能になる。
【0014】
また、本発明に係る上記網戸の他の好ましい実施形態においては、上記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に対して固定する第1の面ファスナー片が、上記ネット接合部における該面ファスナー片の取付位置の両側に対設されたところの、互いに内側に傾いた一対のかしめ用爪部片間に配設され、上記一対のかしめ用爪部片の内側へのかしめにより固定されているものとして構成される。
【0015】
更に、前記課題を解決するため、本発明によれば、枠材が方形に枠組みされた網戸枠における四周の各枠材の枠内周側に沿って、防虫用のネット取付用の凹溝部が設けられているところの既存の網戸枠に対し、方形の周枠内に防虫ネットを取り付けたネット・カートリッジを保持させるためのカートリッジ取付枠を装着するための改修網戸用キットであって、上記網戸枠の四周の枠材に対応するカートリッジ取付枠の四周の各取付枠材が、ネット・カートリッジにおける周枠の各辺を接合するためのネット接合部と、それに沿って、固定用のネジを螺挿するネジ溝部とを連設してなる型材として構成され、上記カートリッジ取付枠は、上記取付枠材を、そのネジ溝部がネット接合部の外側になるようにして、上記網戸枠の四周の各枠材の内側に沿うように配列させた状態で、且つ上記網戸枠の内周側の一部への当接面を備えるものとして、それらの取付枠材の各隅部を相互に連結することにより構成可能にしたものであり、上記ネット・カートリッジは、上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて切断した防虫ネットの周辺に、同様に上記カートリッジ取付枠のサイズに合わせて形成した周枠を固定すると共に、該防虫ネットにおける上記周枠の固定側とは反対側の面に、前記カートリッジ取付枠の取付枠材におけるネット接合部に取り付けた第1の面ファスナー片に接合させる第2の面ファスナー片を固定することにより構成され、上記網戸枠に対するカートリッジ取付枠の組み付けは、網戸枠の室内側から四周の枠材の内側に沿わせながら、カートリッジ取付枠を前記当接面が網戸枠の内周側に当接するところまで嵌め着け可能に形成されており、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上に跨る押え金具を通して、上記ネジ溝部に対して離散的にタッピンネジを螺挿することにより、カートリッジ取付枠を上記網戸枠に固定可能とし、上記カートリッジ取付枠における第1の面ファスナー片に対し、ネット・カートリッジの周枠に固定した第2の面ファスナー片を接合可能に構成されていることを特徴とする改修網戸用キットが提供される。
【0016】
本発明に係る上記改修網戸用キットの好ましい実施形態においては、カートリッジ取付枠を構成する四周の取付枠材の各両端部における連結を、互いに直交する取付枠材の各端部が嵌入する嵌挿凹部を形成した合成樹脂製のコーナーブロックに対する端部の嵌挿によって行い、且つ、上記コーナーブロックにおいて、カートリッジ取付枠を網戸枠に対して嵌め着けたときに外周側に面する部位に、該部位から突出して、該コーナーブロックを構成する合成樹脂の弾性により網戸枠の一部に係止又は摩擦接触し、カートリッジ取付枠をそこに仮止めする弾片を設けたものとして構成される。
【0017】
また、本発明に係る上記改修網戸用キットの他の好ましい実施形態においては、網戸枠が、その枠材の枠内周側に沿って該網戸枠の室外側に向けて開口する凹溝部を備えている場合に、カートリッジ取付枠のネジ溝部上と網戸枠における枠材上とに跨るようにタッピンネジで固定する押え金具を、その枠材側端に上記凹溝部に係止する鈎部を有するものとし、該押え金具に、カートリッジ取付枠と網戸枠の枠材とに跨る方向にタッピンネジの螺挿位置を調整する長孔を設けているものとして構成される。
【発明の効果】
【0018】
以上に詳述した本発明によれば、既存の網戸枠を利用する場合を含めて、網戸枠に対しネットを室内側から容易に着脱できるような構造とし、しかも、該ネットを網戸枠に固定するカートリッジ取付枠と共に、網戸枠から離脱することはあり得ない、といえる程度に安定的に取り付けることを可能にした網戸、及び既存の網戸枠を利用して同様な網戸を構成する改修網戸用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例であるところの、網戸枠にその室内側からカートリッジ取付枠を取り付けると共に、該カートリッジ取付枠に室内側からネット・カートリッジを接合して防虫ネットを張設した状態を示す要部断面図である。
【
図2】本発明の網戸におけるカートリッジ取付枠及びネット・カートリッジの構成を室内側からみた状態において示す分解斜視図である。
【
図3】上記カートリッジ取付枠を構成する四周の取付枠材の端部を直交させて連結するコーナーブロックの構成、及び該コーナーブロックにおける嵌挿凹部に嵌挿する方向に向けた上記取付枠材の要部斜視図である。
【
図4】上記コーナーブロックを他の方向から見た斜視図である。
【
図5】
図1の網戸枠の枠材とは異なる断面形状の枠材に上記カートリッジ取付枠を取り付けた状態を示し、(a)は縦の枠材に、(b)は横の枠材に上記カートリッジ取付枠を取り付けた状態を示す要部断面図である。
【
図6】ネット・カートリッジの構成を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る網戸は、基本的には、既存の網戸枠を利用する場合を含めて、各種網戸枠に対し防虫ネット32を室内側から容易に着脱できるような構造とし、しかも、該ネットを網戸枠10に保持させるカートリッジ取付枠20等と共に、網戸枠10に対して安定的に強固に取り付けることを可能にし、建物の中高層階の外壁に設置された網戸の落下防止を図るものである。
【0021】
本発明に係る網戸の構成について具体的に説明すると、この網戸において用いる網戸枠10は、例えば、
図1や
図5の(a)(b)に示しているように一般的に知られている断面形状に或る程度の差があるものでも差し支えなく、むしろ、既存のどのような網戸に対してもその網戸枠10を用いた改修を可能にしようとするものである。更に、縦及び横の枠材11,12により方形に枠組みされた網戸枠10における四周の各枠材の内側に、従来からネットの取り付けに供している凹溝部13を備えているものでも、或いはそのような凹溝部を備えていないものでも差し支えない。本発明においては、上記凹溝部13に紐状のゴム等で取り付けられていた従来のネットの有無とは無関係に、
図2及び
図6に示すように、方形の周枠31内に防虫ネット32を取り付けたネット・カートリッジ30を保持させるためのカートリッジ取付枠20を装着することにより、該ネット・カートリッジ30を室内側から面ファスナーで取り付け可能にするものである。
【0022】
上記網戸枠10の四周の枠材11,12に対応するカートリッジ取付枠20の四周の各取付枠材21は、
図1〜
図3に示しているように、ネット・カートリッジ30における周枠31の各辺を接合するためのネット接合部22と、それに沿って、固定用のネジを螺挿するネジ溝部23とを連設してなる型材として構成されるものである。そして、上記カートリッジ取付枠20は、
図1及び
図3に示すように、上記取付枠材21を、そのネジ溝部23がネット接合部22の外側になるようにして、上記網戸枠10の四周の各枠材の内側に沿うように配列させ、それらの取付枠材21の各隅部を相互に連結することにより構成している。なお、網戸枠10における縦及び横の枠材11,12に対応するカートリッジ取付枠20の取付枠材21としては、共通の断面形状の型材を用いている。
【0023】
上記カートリッジ取付枠20を構成する四周の取付枠材21の各両端部の連結は、各種手段で行うこともできるが、
図3及び
図4に示すようなコーナーブロック26を用いるのが望ましい。該コーナーブロック26は、合成樹脂からなるブロックに、互いに直交する取付枠材21の各端部が嵌入する嵌挿凹部27を形成したもので、このコーナーブロック26における嵌挿凹部27に対して取付枠材21の端部を嵌挿することによって、複雑形状を有する取付枠材21の端部を簡単に連結することができる。しかも、取付枠材21の各両端部に連結のための切り欠き部等を形成する加工の必要もない。
【0024】
上記カートリッジ取付枠20の取付枠材21におけるネット接合部22に対しては、ネット・カートリッジ30における周枠31の各辺と接合するための一対の面ファスナーのの一方である第1の面ファスナー片24を接着その他の適宜手段で固定するが、この固定には、カートリッジ取付枠20としてアルミ系金属材により成形した型材を用い、
図1に明示しているように、上記ネット接合部22における上記面ファスナー片24の取付位置の両側に対設したところの、互いに内側に傾いた一対のかしめ用爪部片22a間に上記面ファスナー片24を配設して、上記一対のかしめ用爪部片22aの内側へのかしめにより上記面ファスナー片24の側縁を固定するのが望ましい。
【0025】
また、上記カートリッジ取付枠20は、以下に説明するように、上記網戸枠10に対して、その室内側から四周の枠材11,12の内側に沿わせながら安定的に収容する必要があるため、取付枠材21の各両端部の連結部分にビス等の一部の突出や各種凹凸部がないことが望ましく、上記コーナーブロック26の表面や、取付枠材21の表面の一部のような一定形状の外形を得られるものが、網戸枠10内への収容に適することになり、網戸枠10に対して位置決めして安定的に収容するための当接面を形成するのが容易になる。このような位置決めのための当接面は、取付枠材21の表面の一部や、上記コーナーブロック26の表面などの適切な部位に設定することができるが、この実施例では、
図1から分かるように、取付枠材21のネジ溝部23から外側に張り出すように設けた張出縁25の室外側面をその当接面25aとして、網戸枠10の枠材の一部に当接させるようにしている。
【0026】
更に、
図4に明瞭に示しているように、カートリッジ取付枠20を上記当接面25aが網戸枠10の枠材に当接するところまで嵌め着けた上記コーナーブロック26において、その外周側に面する部位に、該部位から突出して、該コーナーブロック26を構成する合成樹脂の弾性により網戸枠10の一部に係止又は摩擦接触する弾片28を設けている。このコーナーブロック26の弾片28は、カートリッジ取付枠20の4隅に設けられるため、カートリッジ取付枠20がその周囲において弾性的に支持されて、そこに仮止めされることになり、最終的には、カートリッジ取付枠20が安定的な位置に固定されることになる。なお、図示の実施例では、
図5の(a)(b)に示す網戸枠の枠材11,12の内端に上記弾片28が弾性的に接触し、それにより、カートリッジ取付枠20が網戸枠10に一時的に保持されている状態を示している。
【0027】
上記網戸枠10に対するカートリッジ取付枠20の固定は、網戸枠10の室内側から四周の枠材11,12の内側に沿わせながら、カートリッジ取付枠20をそれが網戸枠10内に当接するところまで嵌め着けたうえで、
図1及び
図2に示すように、カートリッジ取付枠20のネジ溝部23上と網戸枠10における枠材11上とに跨る押え金具40を通して、上記ネジ溝部23に対して離散的にタッピンネジ41を螺挿することにより、カートリッジ取付枠20を上記網戸枠10に固定することにより行うものである。
【0028】
上述したところに螺挿するタッピンネジ41は、網戸枠10における枠材の一部を、上記取付枠材21における張出縁25の当接面25aと押え金具40との間に挟み込むものであり、しかも、上記タッピンネジ41は取付枠材21のネジ溝部23の任意位置にその必要数を螺挿することができる。該タッピンネジ41の螺挿の作業は、カートリッジ取付枠20を網戸枠10に嵌め着けて、そこに前記コーナーブロック26の弾片28で該カートリッジ取付枠20を一時的に仮固定した状態で行うことができるので、その施工も、簡単、容易、安全に行うことができる。
【0029】
また、極めて一般的に見られるように、網戸枠10における枠材11,12が、その枠内周側に沿って網戸枠10の室外側に向けて開口する凹溝部13を備えている場合には、
図1、
図2及び
図5に示すように、上記押え金具40の枠材側端に該凹溝部13に係止する鈎部40aを有するものとして、該鈎部40aを枠材の凹溝部13に係止させておくことにより、タッピンネジ41の螺挿でカートリッジ取付枠20の位置決めをより一層安全で強固なものとすることができる。更に、上記押え金具40においては、カートリッジ取付枠20と網戸枠10の枠材とに跨る方向にタッピンネジ41の螺挿位置を調整する長孔40bを設けておけば、網戸枠10における枠材の室外側に寸法を異にした凹溝部13がある各社の製品に対しても、或いは、
図5の(a)(b)に示すように、縦の枠材11と横の枠材12とで凹溝部13に対する鈎部40aの係止位置が相違する場合でも、タッピンネジ41の螺挿位置を調整して確実に鈎部40aを凹溝部13に係止させることが可能になる。
【0030】
なお、上記実施例においては、網戸枠10の縦横の枠材が凹溝部を有している場合について説明しているが、網戸枠10における枠材が同様の位置に凹溝部を有していない場合とか、網戸枠が一対の縦の枠材間に中桟を配設していてそこには凹溝部に対応するものがない場合も多く、このような場合には上記押え金具40の鈎部40aが係止する部位が存在しないことになる。このような場合には、上記鈎部40aがない押え金具40を別途用意してそれを用いることを考慮するとか、また、上記凹溝部があるにしてもそこに押え金具40を接触させるには段差があるような網戸枠の場合には、或る程度の段差のある押え金具40も用意するとか、そのような段差に対応するスペーサを用意するなどの手段で、それぞれ対応することができる。
【0031】
一方、カートリッジ取付枠20に保持させる上記ネット・カートリッジ30は、
図6から分かるように、該カートリッジ取付枠20のサイズに合わせて切断した防虫ネット32の周辺に、同様に上記カートリッジ取付枠20のサイズに合わせて形成した可撓性シートからなる周枠31を、接着、縫着、溶着等の手段で固定すると共に、該防虫ネット32における上記周枠31の固定側とは反対側の面に、カートリッジ取付枠20の取付枠材21におけるネット接合部22に取り付けた第1の面ファスナー片24に接合させる第2の面ファスナー片33を,同様な手段で固定することにより構成されるものである。なお、同図中、符号34は接着剤、35はネット・カートリッジ30の着脱用摘み片を兼ねたコーナー補強片である。
【0032】
上述した本発明に係る網戸において、方形に枠組みされた網戸枠10は、既に建物開口部に設置されたサッシ等において使用されていた既存のものでもよく、その網戸枠10における枠材11,12の枠内周側にネット取付用の凹溝部13が設けられていても、それを使用して上述したカートリッジ取付枠20やネット・カートリッジ30等を取り付けることにより、既存の網戸枠を本発明と同様な網戸に改修することができる。このような改修のためには、網戸枠10の枠材11,12に上述したカートリッジ取付枠20やネット・カートリッジ30等を取り付けるために必要な後述する素材が改修網戸用キットとして提供されればよい。
なお、本発明の網戸を組み上げる各構成要素は、提供される素材の長さを既存の網戸における各部の寸歩等に適合させるように切断するなどの単純な加工と、常用のドライバー等の工具によるネジの締め付けなどで簡単に組み上げできるように考慮されている。
【0033】
上記改修網戸用キットとしては、上述したところから明らかなように、まず、(1)上記網戸枠10の四周の枠材11,12に対応するカートリッジ取付枠20の四周の取付枠材21を構成するところの、ネット・カートリッジ30における周枠31の各辺を接合するためのネット接合部22とそれに沿うネジ溝部23とを連設した型材であって、爪部片22aのかしめにより第1の面ファスナー片24を取り付けたもの、また、(2)網戸枠10の四周の枠材に対応する上記取付枠材21の両端を連結するためのコーナーブロック26又はそれに代えて用いる上記取付枠材21の両端を連結するための部材、(3)ネット・カートリッジ30又はそれを構成する防虫ネット32、周枠31用の素材、第2の面ファスナー片33及びネット・カートリッジの組立用付属品等、(4)カートリッジ取付枠20のネジ溝部23に離散的に取り付ける押え金具40とその取り付けを行うタッピンネジ41、などを挙げることができる。
【0034】
ここに列挙した改修網戸用キットの構成要素のそれぞれについては、それらの具体的構成の説明を省略しているが、それぞれが、前述した具体構成を備えていることは当然である。
【符号の説明】
【0035】
10 網戸枠
11 枠材
20 カートリッジ取付枠
21 取付枠材
22 ネット接合部
22a 爪部片
23 ネジ溝部
24 第1の面ファスナー片
26 コーナーブロック
30 ネット・カートリッジ
32 防虫ネット
40 押え金具
41 タッピンネジ