(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792294
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】肺のがんを処置するためのポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストの肺内投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7125 20060101AFI20201116BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20201116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20201116BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20201116BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20201116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201116BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20201116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20201116BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20201116BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20201116BHJP
C07H 21/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
A61K31/7125ZNA
A61K31/713
A61P35/00
A61P11/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P43/00 117
A61K39/395 E
A61K9/72
A61K9/08
C07H21/00
【請求項の数】43
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-561677(P2017-561677)
(86)(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公表番号】特表2018-521011(P2018-521011A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】US2016033817
(87)【国際公開番号】WO2016196062
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】62/276,767
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/168,449
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/168,470
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/169,309
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/169,321
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501161136
【氏名又は名称】ダイナバックス テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グイドゥッチ, クリスティアーナ
(72)【発明者】
【氏名】コッフマン, ロバート エル.
【審査官】
飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−512096(JP,A)
【文献】
特表2014−520081(JP,A)
【文献】
特表2012−516352(JP,A)
【文献】
特開2014−065748(JP,A)
【文献】
特表2016−540042(JP,A)
【文献】
特開2012−232983(JP,A)
【文献】
特表2002−515513(JP,A)
【文献】
特表2006−502080(JP,A)
【文献】
特表2018−516252(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0326232(US,A1)
【文献】
米国特許第09993495(US,B1)
【文献】
特開2010−001310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
C07H 21/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 39/00−39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のポリヌクレオチドを含む、肺のがんの処置を必要とする哺乳動物対象における肺のがんを処置するための組成物であって、前記組成物は、肺内送達により投与されることを特徴とし、前記ポリヌクレオチドが、配列番号7の配列からなり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエート連結である、組成物。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、一本鎖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが、二本鎖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヌクレオチド間連結の全てが、ホスホロチオエート連結である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記対象が、原発性肺がんおよび肺外がんからなる群から選択される原発がんを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記肺のがんが、原発性肺がんである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記原発性肺がんが、非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記肺のがんが、肺への転移がんである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記転移がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される原発がんの転移である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記哺乳動物対象が、ヒトである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
有効量の第2の治療剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の治療剤が、アクチノマイシン、アファチニブ、アレクチニブ、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カンプトテシン、カルボプラチン、カペシタビン、セルチニブ、シスプラチン、クロランブシル、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エルロチニブ、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルダラビン、フルタミン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レトロゾール、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの組合せからなる群から選択される化学療法剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、およびビンクリスチンからなる群のうちの1または複数を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記化学療法剤が、マイトマイシン、ビンデシン、およびシスプラチンからなる群のうちの1または複数を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記化学療法剤が、シスプラチンおよびビノレルビンからなる群の一方または両方を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記化学療法剤が、シスプラチン、エトポシド、およびイホスファミドからなる群のうちの1または複数を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2の治療剤が、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストである、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記阻害性免疫チェックポイント分子が、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4(CD152)、LAG−3、TIM−3、TIGIT、IL−10、およびTGF−ベータからなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記阻害性免疫チェックポイント分子が、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはトリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ(TDO)である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記第2の治療剤が、免疫刺激性分子のアゴニストである、請求項11に記載の組成物。
【請求項21】
前記免疫刺激性分子が、CD27、CD40、OX40(CD134)、GITR、CD137、CD28、およびICOS(CD278)からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記第2の治療剤が、抗体、その断片または誘導体を含む、請求項11、17、18、20、および21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記対象の原発がんが切除されている、および/または前記対象が放射線療法を受けていることを特徴とする、請求項5から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する相乗効果を結果としてもたらす、請求項11から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する相加効果を結果としてもたらす、請求項11から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する協同効果を結果としてもたらす、請求項11から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
(a)前記対象の生存時間を増大させる;
(b)前記原発がんの体積を低減させる;
(c)前記原発がんの増殖を遅延させる;
(d)転移性腫瘍の数を低減させる;
(e)転移性腫瘍の体積を低減させる;および/または
(f)転移性腫瘍の増殖を遅延させる
請求項5から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ケモカインCCモチーフリガンド2(CCL2)、ケモカインCXCモチーフリガンド10(CXCL10)、インターフェロン−アルファ(IFN−α)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12p70(IL−12p70)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)からなる群から選択される1または複数のサイトカインの、肺内の分泌を誘導する、請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導される肺毒性を結果としてもたらさない、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導されるインフルエンザ様症状であって、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感からなる群のうちの1または複数を含むインフルエンザ様症状を結果としてもたらさない、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
配列番号7の配列からなり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結が、ホスホロチオエート連結である、単離ポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記ヌクレオチド間連結の全てが、ホスホロチオエート連結である、請求項31に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項31または請求項32に記載のポリヌクレオチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項34】
滅菌の等張性溶液である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
脱水された固体である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
ポリペプチド抗原をさらに含む、請求項33から35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記ポリペプチド抗原が、腫瘍抗原である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
哺乳動物対象における免疫応答を刺激するための、請求項33から37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
哺乳動物対象におけるインターフェロン−アルファ(IFN−α)を増大させるための、請求項33から38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
がんの処置を必要とする哺乳動物対象におけるがんを処置するための、請求項33から39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記対象へと、肺内投与により投与されることを特徴とする、請求項1から30および38から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記肺内投与が、噴霧器、用量計量型吸入器、スプレイヤー、および乾燥粉末吸入デバイスからなる群から選択されるデバイスの使用を伴う、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
静脈内、筋内、および皮下からなる群から選択される経路を介する注射により投与されることを特徴とする、請求項1から30および38から40のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2016年1月8日に出願された米国仮出願第62/276,767号の利益を主張し、その全体が参照によって組み込まれる。本願は、2015年6月1日に出願された米国仮出願第62/169,309号および第62/169,321号、ならびに2015年5月29日に出願された米国仮出願第62/168,449号および第62/168,470号の利益も主張する
ASCIIテキストファイルとしての配列表の提出
なし。
【0002】
分野
本開示は、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストの肺内投与によりがんを処置するための方法に関する。本開示の方法は、肺の原発がん、ならびに肺への転移がんおよびその肺外がんを処置するのに適する。加えて、本開示は、肺内投与に適する免疫刺激性および毒性プロファイルを伴う、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストを提示する。
【背景技術】
【0003】
背景
世界保健機関によれば、がんは、全世界で最大の死因であり、肺がんは、男性および女性のいずれにおいても、5番目に多いがんのうちの1つである。処置においてなされた進歩にも拘らず、臨床早期で診断されない限りにおいて、米国における肺がん患者の大半は、診断から5年以内に死亡する。
【0004】
非メチル化CGジヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドは、Toll様受容体9(TLR9)を発現する細胞を活性化させることにより、自然免疫系を刺激する。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストのいくつかは、がんのための免疫療法剤として調べられている。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストについての前臨床試験およびフェーズII試験の結果は有望であったが、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、化学療法レジメンへと付加された場合、非小細胞肺がんを伴う患者の生存を改善しなかった(Schmidt、Nature Biotechnology、25巻:825〜826頁、2007年)。より最近になって、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストの投与経路が、極めて重要であることが示され、腫瘍内注射が、静脈内注射より優れた抗腫瘍免疫応答を結果としてもたらした(Louら、J Immunother、34巻:279〜288頁、2011年)。
【0005】
肺内の原発および転移腫瘍に対する直接的な腫瘍内注射は一般に、実施不可能である。しかし、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストの肺内送達は、肺転移のマウスモデルにおいて、強力な抗腫瘍応答を結果としてもたらすことが示されている(Satoら、Mol Cancer Ther、14巻:2198〜2205頁、2015年;およびSfondriniら、Inter J Cancer、133巻:383〜394頁、2013年)。それでもなお、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、ヒトがん患者への肺内投与に適切な治療ウィンドウを有さなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schmidt、Nature Biotechnology、25巻:825〜826頁、2007年
【非特許文献2】Louら、J Immunother、34巻:279〜288頁、2011年
【非特許文献3】Satoら、Mol Cancer Ther、14巻:2198〜2205頁、2015年
【非特許文献4】Sfondriniら、Inter J Cancer、133巻:383〜394頁、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当技術分野が必要とするものは、効力が大きく、毒性が小さい、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストの肺内投与によりがんを処置するための方法に関する。本開示の方法は、肺の原発がん、ならびに肺への転移がんおよびその肺外がんを処置するのに適する。加えて、本開示は、肺内投与に適する免疫刺激性および毒性プロファイルを伴う、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストを提示する。
【0009】
具体的には、本開示は、肺のがんの処置を必要とする哺乳動物対象における肺のがんを処置する方法であって、対象へと、有効量のポリヌクレオチドを、肺内送達により投与するステップを含み、ポリヌクレオチドが、
【化1】

[配列中、xは、0、1、または2であり、各Nは、A、C、またはTであり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエート連結である]の配列からなる方法を提示する。一部の好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7、配列番号8、または配列番号9からなる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、二本鎖であるが、他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、一本鎖である。一部の実施形態では、ヌクレオチド間連結の全ては、ホスホロチオエート連結である。一部の実施形態では、対象は、原発性肺がんおよび肺外がんからなる群から選択される原発がんを有する。一部の実施形態では、肺のがんは、原発性肺がんである。これらの実施形態のサブセットでは、原発性肺がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)である。一部の実施形態では、肺のがんは、肺への転移がんである。一部の実施形態では、転移がんは、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される原発がんの転移である。好ましい実施形態では、哺乳動物対象は、ヒトである。加えて、本開示は、有効量の第2の治療剤を、対象へと投与するステップをさらに含む方法を提示する。一部の実施形態では、第2の治療剤は、アクチノマイシン、アファチニブ、アレクチニブ、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カンプトテシン、カルボプラチン、カペシタビン、セルチニブ、シスプラチン、クロランブシル、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エルロチニブ、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルダラビン、フルタミン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レトロゾール、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの組合せからなる群から選択される化学療法剤を含む。一部の実施形態では、化学療法剤は、i)シクロホスファミド、ドキソルビシン、およびビンクリスチン;ii)マイトマイシン、ビンデシン、およびシスプラチン;iii)シスプラチンおよびビノレルビン;ならびにiv)シスプラチン、エトポシド、およびイホスファミドからなる群から選択される組合せを含む。一部の実施形態では、第2の治療剤は、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストを含む。これらの実施形態のサブセットでは、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4(CD152)、LAG−3、TIM−3、TIGIT、IL−10、およびTGF−ベータからなる群から選択される。一部の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはトリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ(TDO)である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、免疫刺激性分子のアゴニストを含む。これらの実施形態のサブセットでは、免疫刺激性分子は、CD27、CD40、OX40(CD134)、GITR、CD137、CD28、およびICOS(CD278)からなる群から選択される。一部の実施形態では、第2の治療剤は、モノクローナル抗体、その断片または誘導体を含む。本開示はまた、原発がんを切除するステップおよび放射線療法を投与するステップの一方または両方をさらに含む方法も提示する。一部の特に好ましい実施形態では、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する相乗効果を結果としてもたらす。一部の好ましい実施形態では、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する相加効果を結果としてもたらす。一部の実施形態では、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する協同効果を結果としてもたらす。一部の好ましい実施形態では、肺のがんの処置は、以下:(a)対象の生存時間の増大;(b)原発がんの体積の低減;(c)原発がんの増殖の遅延;(d)転移性腫瘍の数の低減;(e)転移性腫瘍の体積の低減;および(f)転移性腫瘍の増殖の遅延のうちの1または複数を含む。一部の実施形態では、肺のがんの処置は、ケモカインCCモチーフリガンド2(CCL2)、ケモカインCXCモチーフリガンド10(CXCL10)、インターフェロン−アルファ(IFN−α)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12p70(IL−12p70)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)からなる群から選択される1または複数のサイトカインの、肺内の分泌の誘導を含む。一部の好ましい実施形態では、肺のがんの処置は、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導される肺毒性を結果としてもたらさない。一部の好ましい実施形態では、肺のがんの処置は、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導されるインフルエンザ様症状であって、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感からなる群のうちの1または複数を含むインフルエンザ様症状を結果としてもたらさない。
【0010】
さらに、本開示は、配列番号7、配列番号8、または配列番号9からなり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結が、ホスホロチオエート連結である、単離ポリヌクレオチドを提示する。一部の好ましい実施形態では、ヌクレオチド間連結の全ては、ホスホロチオエート連結である。加えて、本開示は、ポリヌクレオチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提示する。一部の実施形態では、組成物は、滅菌の等張性溶液である。他の実施形態では、組成物は、脱水された固体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、ポリペプチド抗原をさらに含む。一部の好ましい実施形態では、ポリペプチド抗原は、腫瘍抗原である。本開示はまた、哺乳動物対象における免疫応答を刺激する方法であって、医薬組成物を、対象へと、対象における免疫応答を刺激するのに十分な量で投与するステップを含む方法も提示する。本開示は、哺乳動物対象におけるインターフェロン−アルファ(IFN−α)を増大させる方法であって、医薬組成物を、対象へと、対象におけるIFN−αを増大させるのに十分な量で投与するステップを含む方法をさらに提示する。さらに、本開示は、がんの処置を必要とする哺乳動物対象におけるがんを処置する方法であって、医薬組成物を、対象へと、対象におけるがんを処置するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提示する。一部の好ましい実施形態では、医薬組成物を、対象へと、噴霧器、用量計量型吸入器、スプレイヤー、および乾燥粉末吸入デバイスからなる群から選択されるデバイスの使用を伴いうる肺内投与により投与する。一部の好ましい実施形態では、医薬組成物を、静脈内、筋内、および皮下からなる群から選択される経路を介する注射により投与する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
肺のがんの処置を必要とする哺乳動物対象における肺のがんを処置する方法であって、前記対象へと、有効量のポリヌクレオチドを、肺内送達により投与するステップを含み、前記ポリヌクレオチドが、
【化3】
[配列中、xは、0、1、または2であり、各Nは、A、C、またはTであり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエート連結である]
の配列からなる方法。
(項目2)
前記ポリヌクレオチドが、配列番号7、配列番号8、または配列番号9からなる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ポリヌクレオチドが、二本鎖である、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ヌクレオチド間連結の全てが、ホスホロチオエート連結である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記対象が、原発性肺がんおよび肺外がんからなる群から選択される原発がんを有する、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記肺のがんが、原発性肺がんである、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記原発性肺がんが、非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記肺のがんが、肺への転移がんである、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記転移がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される原発がんの転移である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記哺乳動物対象が、ヒトである、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
有効量の第2の治療剤を、前記対象へと投与するステップをさらに含む、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記第2の治療剤が、アクチノマイシン、アファチニブ、アレクチニブ、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カンプトテシン、カルボプラチン、カペシタビン、セルチニブ、シスプラチン、クロランブシル、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エルロチニブ、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルダラビン、フルタミン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レトロゾール、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの組合せからなる群から選択される化学療法剤を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、およびビンクリスチンからなる群のうちの1または複数を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記化学療法剤が、マイトマイシン、ビンデシン、およびシスプラチンからなる群のうちの1または複数を含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記化学療法剤が、シスプラチンおよびビノレルビンからなる群の一方または両方を含む、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記化学療法剤が、シスプラチン、エトポシド、およびイホスファミドからなる群のうちの1または複数を含む、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記第2の治療剤が、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストである、項目11に記載の方法。
(項目18)
前記阻害性免疫チェックポイント分子が、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4(CD152)、LAG−3、TIM−3、TIGIT、IL−10、およびTGF−ベータからなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記阻害性免疫チェックポイント分子が、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはトリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ(TDO)である、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記第2の治療剤が、免疫刺激性分子のアゴニストである、項目11に記載の方法。
(項目21)
前記免疫刺激性分子が、CD27、CD40、OX40(CD134)、GITR、CD137、CD28、およびICOS(CD278)からなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記第2の治療剤が、抗体、その断片または誘導体を含む、項目11、17、18、20、および21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記原発がんを切除するステップおよび放射線療法を投与するステップの一方または両方をさらに含む、項目5から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する相乗効果を結果としてもたらす、項目11から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する相加効果を結果としてもたらす、項目11から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記有効量の前記ポリヌクレオチドと、前記有効量の前記第2の治療剤とが合わさり、前記肺のがんに対する協同効果を結果としてもたらす、項目11から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
肺のがんの処置が、以下:
(a)前記対象の生存時間の増大;
(b)前記原発がんの体積の低減;
(c)前記原発がんの増殖の遅延;
(d)転移性腫瘍の数の低減;
(e)転移性腫瘍の体積の低減;および
(f)転移性腫瘍の増殖の遅延
のうちの1または複数を含む、項目5から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
肺のがんの処置が、ケモカインCCモチーフリガンド2(CCL2)、ケモカインCXCモチーフリガンド10(CXCL10)、インターフェロン−アルファ(IFN−α)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12p70(IL−12p70)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)からなる群から選択される1または複数のサイトカインの、肺内の分泌の誘導を含む、項目1から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
肺のがんの処置が、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導される肺毒性を結果としてもたらさない、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
肺のがんの処置が、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導されるインフルエンザ様症状であって、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感からなる群のうちの1または複数を含むインフルエンザ様症状を結果としてもたらさない、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
配列番号7、配列番号8、または配列番号9からなり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結が、ホスホロチオエート連結である、単離ポリヌクレオチド。
(項目32)
前記ヌクレオチド間連結の全てが、ホスホロチオエート連結である、項目31に記載のポリヌクレオチド。
(項目33)
項目31または項目32に記載のポリヌクレオチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
(項目34)
滅菌の等張性溶液である、項目33に記載の医薬組成物。
(項目35)
脱水された固体である、項目33に記載の医薬組成物。
(項目36)
ポリペプチド抗原をさらに含む、項目33から35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目37)
前記ポリペプチド抗原が、腫瘍抗原である、項目36に記載の医薬組成物。
(項目38)
哺乳動物対象における免疫応答を刺激する方法であって、項目33から37のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記対象へと、前記対象における前記免疫応答を刺激するのに十分な量で投与するステップを含む方法。
(項目39)
哺乳動物対象におけるインターフェロン−アルファ(IFN−α)を増大させる方法であって、項目33から38のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記対象へと、前記対象におけるIFN−αを増大させるのに十分な量で投与するステップを含む方法。
(項目40)
がんの処置を必要とする哺乳動物対象におけるがんを処置する方法であって、項目33から39のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記対象へと、前記対象におけるがんを処置するのに十分な量で投与するステップを含む方法。
(項目41)
前記医薬組成物を、前記対象へと、肺内投与により投与する、項目1から30および38から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記肺内投与が、噴霧器、用量計量型吸入器、スプレイヤー、および乾燥粉末吸入デバイスからなる群から選択されるデバイスの使用を伴う、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記医薬組成物が、静脈内、筋内、および皮下からなる群から選択される経路を介する注射により投与される、項目1から30および38から40のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、用量を増大させるポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1またはTLR9アゴニストであるD60−7に応答する、ヒトPBMCによるIFN−αの産生(pg/mL)について描示するグラフである。データは、平均±SEMとして示す。
【0012】
【
図2】
図2は、用量を増大させるポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1またはTLR9アゴニストであるD60−7に応答する、ヒトBリンパ球によるIL−6の産生(pg/mL)について描示するグラフである。データは、平均±SEMとして示す。
【0013】
【
図3A】
図3A〜Bは、0、14、28、および42日目の、1、5、または20μgの生理食塩液、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1、またはポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−7の、鼻腔内投与後における、マウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のサイトカインレベルについて描示する多重グラフである。BALFは、4回目の処置の24時間後に得た。データは、平均±SEMとして示す。
【
図3B】
図3A〜Bは、0、14、28、および42日目の、1、5、または20μgの生理食塩液、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1、またはポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−7の、鼻腔内投与後における、マウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のサイトカインレベルについて描示する多重グラフである。BALFは、4回目の処置の24時間後に得た。データは、平均±SEMとして示す。
【0014】
【
図4】
図4は、0、14、28、および42日目の、1、5、または20μgの生理食塩液、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1、またはポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−7の、鼻腔内投与後における、マウスに由来する肺組織についての組織病理学スコアを例示するグラフである。マウスを屠殺し、肺試料は、4回目の処置の24時間後に採取した。データは、95%の信頼区間による平均として示す。
【0015】
【
図5】
図5は、0、14、28、および42日目の、生理食塩液、20μgのポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−1、または20μgのポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−7の、鼻腔内投与後における、マウスの体重変化(ベースラインに対する百分率)を示すグラフである。データは、平均±SEMとして示す。
【0016】
【
図6】
図6は、転移性腫瘍4T1担持マウスであって、肺内D60−7、全身抗PD−1抗体、または2つの薬剤の組合せで処置されたマウスの生存を示す図である。
【0017】
【
図7】
図7は、肺内D60−7、全身抗PD−1抗体、または2つの薬剤の組合せで処置されたマウスの肺内の、転移性4T1細胞の数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストの肺内投与によりがんを処置するための方法に関する。本開示の方法は、肺の原発がん、ならびに肺への転移がんおよびその肺外がんを処置するのに適する。加えて、本開示は、肺内投与に適する免疫刺激性および毒性プロファイルを伴う、ポリヌクレオチドのToll様受容体9アゴニストを提示する。
【0019】
I.一般的な方法および定義
本開示の実施では、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当技術分野の技術の範囲内にある、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学についての従来の技法を利用する。このような技法については、文献において十分に記載されており、例えば、Animal Cell Culture、6版(Freshney、Wiley-Blackwell、2010年);Antibodies, A Laboratory Manual、2版(Greenfield編、Cold Spring Harbor Publications、2013年);Bioconjugate Techniques、3版(Hermanson、Academic Press、1996年);Current Protocols in Cell Biology(Bonifacinoら編、John Wiley & Sons, Inc.、1996年、2014年までの増補を含む);Current Protocols in Immunology(Coliganら編、John Wiley & Sons, Inc.、1991年、2014年までの増補を含む);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、1987年、2014年までの増補を含む);Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry(Egliら編、John Wiley & Sons, Inc.、2000年、2014年までの増補を含む);Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3版(SambrookおよびRussell、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年);Molecular Cloning: A Laboratory Manual、4版(GreenおよびSambrook、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2012年);Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications(Herdewijn編、Humana Press、2004年);Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties(Agrawal編、Humana Press、1993年);ならびにUsing Antibodies :A Laboratory Manual(HarlowおよびLane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1998年)を参照されたい。
【0020】
本明細書および付属の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、そうでないことが指示されない限りにおいて、複数の指示対象を含む。例えば、「ある」賦形剤は、1または複数の賦形剤を含む。
【0021】
本明細書で使用される「〜を含むこと」という語句は、オープンエンドであり、このような実施形態が、さらなる要素を含みうることを指し示す。これに対し、「〜からなる」という語句は、クローズドであり、このような実施形態が、さらなる要素を含まない(微量の不純物を除き)ことを指し示す。「〜から本質的になる」という語句は、部分的にクローズドであり、このような実施形態が、このような実施形態の基本的な特徴を実質的に変化させない要素をさらに含みうることを指し示す。本明細書で「〜を含むこと」として記載される態様および実施形態は、「〜からなる」実施形態および「〜から本質的になる」実施形態を含むことが理解される。
【0022】
値に言及して本明細書で使用される「約」という用語は、この値の90%〜110%を包含する(例えば、約20μgのサバイビン抗原とは、18μg〜22μgのサバイビン抗原を指し、20μgのサバイビン抗原を含む)。
【0023】
本明細書で互換的に使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖RNA(dsRNA)、修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシド、またはこれらの組合せを含む。ポリヌクレオチドは一般に、ホスホジエステル連結を介して接続されたヌクレオシドのポリマーであるが、ホスホロチオエートエステルなどの代替的な連結もまた、使用することができる。ヌクレオシドは、糖に結合したプリン(アデニン(A)またはグアニン(G)またはこれらの誘導体)またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)またはウラシル(U)、またはこれらの誘導体)塩基からなる。DNA内の4つのヌクレオシド単位(または塩基)を、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、およびデオキシシチジンと呼ぶ。RNA内の4つのヌクレオシド単位(または塩基)を、アデノシン、グアノシン、ウリジン、およびシチジンと呼ぶ。ヌクレオチドとは、ヌクレオシドのリン酸エステルである。
【0024】
「パリンドローム配列」または「パリンドローム」という用語は、反転リピート、例えば、ABCDD’C’B’A’[配列中、塩基、例えば、AとA’、BとB’、CとC’、DとD’は、ワトソン−クリック型の塩基対を形成することが可能である]である核酸配列を指す。このような配列は、条件により、一本鎖の場合もあり、二本鎖構造を形成する場合もあり、ヘアピンループ構造を形成する場合もある。例えば、本明細書で使用される場合、「8塩基のパリンドローム」とは、パリンドローム配列が、ABCDD’C’B’A’など、8塩基の長さである核酸配列を指す。パリンドローム配列は、非パリンドローム配列もまた含有するポリヌクレオチドの一部でありうる。ポリヌクレオチドは、1または複数のパリンドローム配列部分と、1または複数の非パリンドローム配列部分とを含有しうる。代替的に、ポリヌクレオチド配列は、完全なパリンドローム配列でありうる。1つを超えるパリンドローム配列部分を伴うポリヌクレオチド内では、パリンドローム配列部分は、互いと重複する場合もあり、重複しない場合もある。
【0025】
「個体」および「対象」という用語は、哺乳動物を指す。「哺乳動物」は、ヒト、非ヒト霊長動物(例えば、サル)、家畜、競技動物、齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)、および愛玩動物(例えば、イヌおよびネコ)を含むがこれらに限定されない。
【0026】
「抗原」という用語は、抗体またはT細胞抗原受容体が特異的に認識および結合する物質を指す。抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖、複合炭水化物、糖、ガングリオシド、脂質、およびリン脂質;これらの部分およびこれらの組合せを含みうる。本開示の組成物中に存在する場合の抗原は、合成の場合もあり、天然から単離される場合もある。本開示の方法における投与に適する抗原は、抗原特異的なB細胞またはT細胞応答を誘発することが可能な任意の分子を含む。ハプテンは、「抗原」の範囲内に含まれる。「ハプテン」とは、それ自体は免疫原性でないが、一般に、大型の免疫原性分子(キャリア)とコンジュゲートさせると、免疫原性となる低分子量化合物である。
【0027】
「ポリペプチド抗原」は、精製された天然のペプチド、合成ペプチド、組換えペプチド、粗ペプチド抽出物、または部分的に精製されているかもしくは精製されていない活性状態にあるペプチド(弱毒化または不活化させたウイルス、微生物、または細胞の一部であるペプチドなど)、あるいはこのようなペプチドの断片を含みうる。ポリペプチド抗原は、少なくとも6アミノ酸残基の長さであることが好ましい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「免疫原性」という用語は、適切な条件下で、哺乳動物対象へと投与すると、適応免疫応答を誘発する作用物質(例えば、ポリペプチド抗原)の能力を指す。免疫応答は、B細胞(体液性)応答の場合もあり、かつ/またはT細胞(細胞性)応答の場合もある。
【0029】
「アジュバント」とは、抗原などの免疫原性作用物質と混合すると、混合物への曝露時のレシピエントにおける作用物質への免疫応答を、非特異的に増強または強化する物質を指す。
【0030】
「アゴニスト」という用語は、最も広い意味で使用され、受容体を介するシグナル伝達を活性化させる任意の分子を含む。一部の実施形態では、アゴニストは、受容体に結合する。例えば、TLR9アゴニストは、TLR9受容体に結合し、TLR9シグナル伝達経路を活性化させる。別の例では、免疫刺激性分子であるCD27のアゴニストは、CD27に結合し、CD27シグナル伝達経路を活性化させる。
【0031】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広い意味で使用され、少なくとも部分的に、アゴニストの生物学的活性を遮断する任意の分子を含む。一部の実施形態では、アンタゴニストは、アゴニストに結合するが、他の実施形態では、アンタゴニストは、アゴニストのリガンドに結合する。例えば、阻害性免疫チェックポイント分子であるPD−1のアンタゴニストは、PD−1に結合し、PD−1シグナル伝達経路を遮断する。
【0032】
「免疫刺激性配列」および「ISS」という用語は、測定可能な免疫応答(例えば、in vitro、in vivo、および/またはex vivoにおいて測定される)を刺激する核酸配列を指す。本開示の目的では、ISSという用語は、非メチル化CGジヌクレオチドを含む核酸配列を指す。測定可能な免疫応答の例は、抗原特異的抗体の産生、サイトカインの分泌、リンパ球の活性化、およびリンパ球の増殖を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書では、「CpG」および「CG」という用語は、リン酸により隔てられたシトシンおよびグアニンを指すように互換的に使用される。これらの用語は、シトシンとグアニンとの塩基対合に対する直鎖配列を指す。本開示のポリヌクレオチドは、少なくとも1つの非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する。すなわち、CpGジヌクレオチド内のシトシンは、メチル化されていない(すなわち、5−メチルシトシンではない)。
【0034】
本明細書で使用される「アンチセンス」および「アンチセンス配列」という用語は、mRNAのコード鎖と相補的な配列を有する、ポリヌクレオチドの非コード鎖を指す。好ましい実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、アンチセンス配列またはRNAi分子(miRNAおよびsiRNA)ではない。すなわち、好ましい実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、それらが使用される哺乳動物対象の転写物(または遺伝子)と、顕著な相同性(または相補性)を有さない。例えば、ヒト対象における免疫応答をモジュレートするための、本開示のポリヌクレオチドは、その長さにわたり、ヒトゲノムの核酸配列と、80%未満同一であることが好ましい(例えば、50ヌクレオチドの長さのポリヌクレオチドであれば、50塩基のうちの40以下を、ヒト転写物と共有するであろう)。すなわち、好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、それらが使用される哺乳動物対象(例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、家畜、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなど)の核酸配列と、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、または20%未満同一である。
【0035】
応答またはパラメータの「刺激」は、目的のパラメータを除き、他の点では同じである条件と比較した場合における、この応答もしくはパラメータの誘発および/もしくは増強、または代替的に、別の条件と比較した場合における、この応答もしくはパラメータの誘発および/もしくは増強(例えば、TLRアゴニストの存在下における、TLRシグナル伝達の、TLRアゴニストの非存在下と比較した増大)を含む。例えば、免疫応答の「刺激」とは、応答の増大を意味する。
【0036】
応答またはパラメータの「阻害」は、目的のパラメータを除き、他の点では同じである条件と比較した場合における、この応答もしくはパラメータの遮断および/もしくは抑制、または代替的に、別の条件と比較した場合における、この応答もしくはパラメータの遮断および/もしくは抑制(例えば、PD−1リガンドおよびPD−1アンタゴニストの存在下における、PD−1シグナル伝達の、PD−1アンタゴニストの非存在下におけるPD−1リガンドの存在下と比較した減少)を含む。例えば、免疫応答の「阻害」とは、応答の減少を意味する。
【0037】
本明細書で開示される薬剤の「有効量」とは、具体的に言明される目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、言明される目的に関して経験的に決定することができる。薬剤の「有効量」または「十分量」とは、有益な臨床的結果を含む有益な結果など、所望の生物学的効果を及ぼすのに適切な量である。「治療有効量」という用語は、薬剤(例えば、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニスト)の量であって、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)における疾患または障害「を処置する」のに有効な量を指す。薬剤の「有効量」または「十分量」は、1回または複数回の投与により投与することができる。
【0038】
疾患「を処置すること」または疾患の「処置」という用語は、疾患の徴候または症状を軽減しようとする試みにおいて、1または複数の薬物を個体(ヒトまたは他の個体)へと投与することを含みうるプロトコールを実行することを指す。したがって、「〜を処置すること」または「処置」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、個体に対して、緩和効果だけを及ぼすプロトコールを具体的に含む。本明細書で使用される場合、および当技術分野で十分に理解されているように、「処置」とは、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るための手法である。有益または所望の臨床結果は、1または複数の症状の軽減または改善、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(すなわち、非増悪)状態、疾患の拡散の防止、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および、検出可能であれ、検出不能であれ、寛解(部分的であれ、完全であれ)を含むがこれらに限定されない。「処置」はまた、処置を施されない個体について予測される生存と比較した生存の延長も意味しうる。疾患または障害の「緩和」とは、疾患もしくは障害の程度および/もしくは所望されない臨床所見が、予測される非処置転帰と比較して弱められ、かつ/または疾患もしくは障害の進行の時間経過が、緩徐化されることを意味する。さらに、緩和および処置は必ずしも、1回の投与を施すことにより生じるわけではなく、投与系列を施したときに生じることが多い。
【0039】
II.ポリヌクレオチドのToll様受容体9(TLR9)アゴニスト
本開示は、
【化2】
[配列中、xは、0、1、または2であり、各Nは、A、C、またはTであり、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエートエステル連結である]の配列からなるポリヌクレオチドを提示する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7(D60−7)、配列番号8(D60−8)、または配列番号9(D60−9)の配列からなる。一部の実施形態では、ヌクレオチドの間の1または複数の連結は、ホスホジエステル連結である。一部の実施形態では、ヌクレオチドの間の連結の全ては、ホスホロチオエートエステル連結である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、一本鎖である。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、二本鎖である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2’−デオキシリボポリヌクレオチドである。
【0040】
配列番号1(D60−1)および配列番号3(D60−3)のポリヌクレオチドは、高レベルのIFN−αを、ヒトPBMCから強力に誘導する。したがって、これらのポリヌクレオチドは、肺内投与にそれほど所望されないとみなされた。本開示のポリヌクレオチドは、D60−3の3’端から、ヌクレオチドを効果的に除去すること(表1−1および1−2を参照されたい)によって、D60−3の配列およびパリンドロームの長さを徐々に短縮することにより開発された。驚くべきことに、D60−3の短い変異体は、ヒトPBMCからのIFN−αの最高レベルの誘導では低度であるが、効力を保持することが同定された(表1−3を参照されたい)。D60−3と比べて、パリンドロームを、8塩基低減し、配列の長さを、4塩基低減することは、この所望の活性プロファイルを結果としてもたらすと予測されていなかった。
【0041】
実験例で裏付けられる通り、本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、所望の刺激性および毒性プロファイルを有する点で、肺内投与に特によく適する。具体的には、本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、哺乳動物のPBMCからの、中程度レベルのIFN−αの強力な誘導因子であるが、肺内送達を反復した後であってもなお、実質的な毒性と関連しない。したがって、本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、低用量で効果的であると予測され、投与量の低減、一次的な処置の休止、または永続的な処置の中断を必要とする重度のまたは致死性の副作用を引き起こすと予測されない。本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストは、本明細書で詳述される通り、肺のがんを処置するのに特に有用であると予測される。
【0042】
III.医薬組成物
また、本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを含む医薬組成物も提供される。医薬組成物は、規定では、薬学的に許容される賦形剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、抗原をさらに含む。本開示の医薬組成物は、溶液の形態でありうる。代替的に、医薬組成物は、脱水された固体(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥させた固体)でありうる。本開示の医薬組成物は、好ましくは滅菌であり、好ましくは本質的に内毒素非含有である。本明細書では、「医薬組成物」という用語を、「医薬品」および「医薬」という用語と互換的に使用する。
【0043】
A.賦形剤
本開示の薬学的に許容される賦形剤は、例えば、溶媒、増量剤、緩衝剤、等張性調整剤、および保存剤を含む(例えば、Pramanickら、Pharma Times、45巻:65〜77頁、2013年を参照されたい)。一部の実施形態では、医薬組成物は、溶媒、増量剤、緩衝剤、および等張性調整剤のうちの1または複数として機能する賦形剤(例えば、生理食塩液中の塩化ナトリウムは、水性媒体および等張性調整剤の両方として用いうる)を含みうる。本開示の医薬組成物は、非経口投与に適する。すなわち、本開示の医薬組成物は、腸内投与を意図しない。
【0044】
一部の実施形態では、医薬組成物は、溶媒としての水性媒体を含む。適切な媒体は、例えば、滅菌水、生理食塩液溶液、リン酸緩衝生理食塩液、およびリンゲル液を含む。一部の実施形態では、組成物は、等張性である。
【0045】
医薬組成物は、増量剤を含みうる。増量剤は、投与の前に医薬組成物を凍結乾燥(lyophilized)させる場合に、特に有用である。一部の実施形態では、増量剤は、凍結乾燥(freeze drying)もしくは噴霧乾燥中および/または保管中における、活性薬剤の安定化および分解の防止の一助となる保護剤である。適切な増量剤は、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール(sorbital)、グルコース、およびラフィノースなどの糖(単糖、二糖、および多糖)である。
【0046】
医薬組成物は、緩衝剤を含みうる。緩衝剤は、加工、保管、および、任意選択で、復元中における、活性薬剤の分解を阻害するように、pHを制御する。適切な緩衝液は、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、または硫酸塩を含む塩を含む。他の適切な緩衝液は、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、およびリシンなどのアミノ酸を含む。緩衝剤は、塩酸または水酸化ナトリウムをさらに含みうる。一部の実施形態では、緩衝剤は、組成物のpHを、4〜9の範囲内に維持する。一部の実施形態では、pHは、(下限)4、5、6、7、または8を超える。一部の実施形態では、pHは、(上限)9、8、7、6、または5未満である。すなわち、pHは、下限が上限未満である、約4〜9の範囲内にある。
【0047】
医薬組成物は、等張性調整剤を含みうる。適切な等張性調整剤は、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン、およびマンニトールを含む。
【0048】
医薬組成物は、保存剤を含みうる。適切な保存剤は、例えば、抗酸化剤および抗微生物剤を含む。しかし、好ましい実施形態では、医薬組成物は、滅菌条件下で調製し、単回使用の容器内に入れ、したがって、保存剤の組入れを必要としない。
【0049】
B.抗原
本開示は、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストに加えて、抗原および賦形剤を含む医薬組成物をさらに提示する。抗原を含む本開示の好ましい組成物では、抗原を、ポリヌクレオチドへと、共有結合により連結しない。一部の好ましい実施形態では、抗原は、ポリペプチド抗原である。一部の好ましい実施形態では、抗原は、好ましくは、担体タンパク質へと共有結合により接合させた多糖抗原である。一部の好ましい実施形態では、抗原は、腫瘍抗原である。他の実施形態では、抗原は、微生物抗原またはアレルゲンである。
【0050】
医薬組成物は、腫瘍抗原を含みうる。一部の実施形態では、腫瘍抗原は、哺乳動物抗原である。当技術分野では、適切な腫瘍抗原について記載されている(例えば、Cheeverら、Clinical Cancer Research、15巻:5323〜5337頁、2009年を参照されたい)。例えば、適切な腫瘍抗原は、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、Her−2/neu、イディオタイプ、MAGE A3、p53、NY−ESO−1、PSMA、GD2、CEA、MelanA/Mart1、Ras、gp100、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr−able、チロシナーゼ、サバイビン、PSA、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、PAP、MP−IAP、AFP、EpCAM、ERG、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、PhoC、TRP−2、GD3、Fucosyl、GM1、メソテリン、PSCA、MAGE A1、sLe(a)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6−AML、NY−BR−1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY−TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP−4、SSX2、XAGE 1、B7H3、レグメイン、Tie 2、Page4、VEGFR2、MAD−CT−1、FAP、PDGFR−ベータ、MAD−CT−2、およびFos関連抗原1を含む。
【0051】
医薬組成物は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、および寄生虫抗原からなる群から選択される微生物抗原を含みうる。一部の好ましい実施形態では、微生物抗原は、ウイルス抗原または細菌抗原である。一部の実施形態では、微生物抗原は、非ヒト哺乳動物対象において感染性疾患を引き起こす微生物に由来する。一部の実施形態では、微生物抗原は、ヒト対象において感染性疾患を引き起こす微生物に由来する。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生原虫により引き起こされる。
【0052】
医薬組成物は、アレルゲンを含みうる。一部の実施形態では、アレルゲンは、哺乳動物、昆虫、植物、およびカビアレルゲンなどの環境抗原である。一部の実施形態では、哺乳動物アレルゲンは、被毛および鱗屑を含む。
【0053】
C.キット
加えて、本開示は、医薬組成物(賦形剤とポリヌクレオチドのTLR9アゴニストとを含む)と、本明細書で記載される方法のための組成物の使用に関する指示書のセットとを含むキットを提示する。キットの医薬組成物は、適切にパッケージングする。例えば、医薬組成物が、凍結乾燥粉末である場合、弾力性の止栓を通して流体を注入することにより、粉末を容易に再懸濁させうるように、弾力性の止栓を伴うバイアルを通常使用する。一部の実施形態では、キットは、医薬組成物を投与するためのデバイス(例えば、シリンジおよび注射針、噴霧器、乾燥粉末吸入デバイスなど)をさらに含む。医薬組成物の使用に関する指示書は一般に、意図される使用法のための投与量、投与スケジュール、および投与経路についての情報を含む。キットが抗原を含む一部の実施形態では、抗原を、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストと同じ容器内にパッケージングする場合もあり、同じ容器内にパッケージングしない場合もある。
【0054】
IV.使用法
本開示の医薬組成物は、免疫応答の刺激を必要とする哺乳動物対象における免疫応答の刺激を伴う複数の使用に適する。哺乳動物対象は、ヒト、非ヒト霊長動物、齧歯動物、愛玩動物、および家畜を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象へと、具体的な転帰を達成するのに有効な量で投与することができる。
【0055】
A.投与量および投与方式
全ての医薬組成物についてと同様、有効量および投与方式は、当業者に明らかないくつかの因子に基づき変動しうる。考慮される重要な因子は、医薬組成物を、単独処置として投与するのか、または治療剤の組合せの一部として投与するのかである。別の因子は、医薬組成物が、抗原をさらに含有するのかどうかである。考慮される他の因子は、達成される転帰と、投与される投与回数とを含む。
【0056】
適切な投与量範囲とは、所望の効果をもたらす投与量範囲である。投与量は、対象へと投与されるポリヌクレオチドの量により決定することができる。対象の体重当たりに送達される量で与えられる、ポリヌクレオチドの例示的な投与量範囲は、1kg当たり約5〜5000mcgである。一部の実施形態では、投与量は、1kg当たり約(下限)5、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、750または1000mcgを超える。一部の実施形態では、投与量は、1kg当たり約(上限)5000、4000、3000、2000、1000、750、500、450、400、350、300、250、200、150、または100mcg未満である。すなわち、投与量は、下限が上限未満である、1kg当たり約5〜5000mcgの範囲内のいずれかである。ヒト対象へと送達される量で与えられる、ポリヌクレオチドの例示的な投与量範囲は、約100mcg〜約100mgである。一部の実施形態では、投与量は、約(下限)100、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000mcgを超える。一部の実施形態では、投与量は、約(上限)100、75、50、25、20、15、または10mg未満である。すなわち、投与量は、下限が上限未満である、約100〜100,000mcgの範囲内のいずれかである。
【0057】
一部の実施形態では、医薬組成物が、抗原をさらに含む場合、対象へと送達される量で与えられる、抗原の投与量範囲は、約1mcg〜50mcgである。一部の実施形態では、抗原の投与量は、約(下限)1、5、10、15、20、25、30、35または40mcgを超える。一部の実施形態では、抗原の投与量は、約(上限)50、45、40、35、30、25、20、15、または10mcg未満である。すなわち、抗原の投与量は、下限が上限未満である、約1〜50mcgの範囲内のいずれかである。
【0058】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、非経口投与を意図する(例えば、経口または直腸内投与を意図しない)。適切な投与経路は、注射、局所、および吸入を含む。特に、本開示の医薬組成物は、静脈内、筋内、皮下、表皮(遺伝子銃)、経皮、および吸入などの経路により投与することができる。
【0059】
一部の好ましい実施形態では、本開示の医薬組成物は、肺内(intrapulmonary)投与(本明細書ではまた、肺内(pulmonary)投与とも称する)を意図する。肺内投与は、有害な全身副作用の可能性を低減しながら、治療用ポリヌクレオチドの、意図される作用部位への局所送達を達成するように、肺のがんなど、肺の疾患の処置に好ましい。肺内投与に適するデバイスは、噴霧器、用量計量型吸入器、スプレイヤー、および乾燥粉末吸入デバイスを含む。
【0060】
適切な投与レジメンは、予防的または治療的文脈において、所望の効果をもたらす投与レジメンである。選び出された経路により投与される投与回数は、1回の場合もあり、1回を超える場合もある。投与頻度は、毎週、隔週、毎月、隔月、または投与の間に3〜12カ月間を置く頻度にわたりうる。一部の実施形態では、2回の投与は、第2の投与を、第1の投与の1〜2カ月間後に投与して行う。一部の実施形態では、3回の投与は、第2の投与を、第1の投与の1〜2カ月間後に投与し、かつ、第3の投与を、第2の投与の1〜5カ月間後に投与して行う。他の実施形態では、3または4回の投与は、隔週または毎月ベースで行うことができる。他の実施形態では、より短いまたはより長い期間が投与の間に経過する場合がある。ある特定の実施形態では、一連の投与の間の間隔は、週数単位で変動する場合もあり、月数単位で変動する場合もある。一実施形態では、毎週1回ずつ、2、3、4、5、または6回にわたる投与系列を投与するのに続き、後の時点において、毎週1回ずつ、数回にわたる第2の投与系列を投与することができる。当業者は、抗原特異的抗体応答または腫瘍退縮など、実施例で例示される生物学的転帰を測定することにより、投与量レジメンを調整することが可能であろう。
【0061】
B.免疫応答の刺激
略述すると、本開示は、哺乳動物対象における免疫応答を刺激する方法であって、哺乳動物対象へと、医薬組成物を、哺乳動物対象における免疫応答を刺激するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提示する。免疫応答の「刺激」とは、デノボの免疫応答(例えば、初期ワクチン接種レジメンの帰結としての)を誘発すること、または既存の免疫応答(例えば、追加ワクチン接種レジメンの帰結としての)を増強することから生じうる、免疫応答の増大を意味する。一部の実施形態では、免疫応答の刺激は、サイトカイン産生の刺激;Bリンパ球増殖の刺激;インターフェロン経路に関連する遺伝子発現の刺激;化学誘引物質に関連する遺伝子発現の刺激;および形質細胞様樹状細胞(pDC)成熟の刺激からなる群のうちの1または複数を含む。当技術分野では、免疫応答の刺激を測定するための方法が公知であり、本開示の生物学的例において記載されている。医薬組成物が、抗原をさらに含む実施形態では、免疫応答の刺激は、抗原特異的抗体応答の誘導を含む。
【0062】
例えば、医薬組成物が抗原をさらに含む一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物対象へと、医薬組成物を、哺乳動物対象における抗原特異的抗体応答を誘導するのに十分な量で投与することにより、哺乳動物対象における抗原特異的抗体応答を誘導する方法を提示する。抗原特異的抗体応答の「誘導」とは、抗原特異的抗体の力価を、投与前のベースライン力価または血清保護レベルなどの閾値レベルを上回って増大させることを意味する。
【0063】
免疫応答についての解析(定性的および定量的の両方)は、抗原特異的抗体の産生(具体的な抗体サブクラスの測定を含む)、B細胞およびヘルパーT細胞など、特異的リンパ球集団の活性化、IFN−アルファ、IL−6、IL−12など、サイトカインの産生、および/またはヒスタミンの放出の測定を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の任意の方法による解析でありうる。抗原特異的抗体応答を測定するための方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。特異的リンパ球集団の活性化は、増殖アッセイおよび蛍光活性化細胞分取(FACS)により測定することができる。サイトカインの産生もまた、ELISAにより測定することができる。
【0064】
Th1型免疫応答を刺激(すなわち、誘発または増強)することが好ましい。本開示に言及すると、Th1型免疫応答の刺激は、本開示の活性薬剤(ポリヌクレオチドのTLR9アゴニスト)で処置された細胞からのサイトカイン産生を、活性薬剤で処置されていない対照細胞と比較して測定することにより、in vitroまたはex vivoにおいて決定することができる。「Th1型サイトカイン」の例は、IL−2、IL−12、IFN−ガンマ、およびIFN−アルファを含むがこれらに限定されない。これに対し、「Th2型サイトカイン」は、IL−4、IL−5、およびIL−13を含むがこれらに限定されない。免疫刺激活性の決定に有用な細胞は、抗原提示細胞であるリンパ球、好ましくは、マクロファージおよびT細胞など、免疫系の細胞を含む。適切な免疫細胞は、哺乳動物対象から単離された、形質細胞様樹状細胞およびB細胞または脾臓細胞を含む末梢血単核細胞などの初代細胞を含む。
【0065】
Th1型免疫応答の刺激はまた、本開示の活性薬剤(ポリヌクレオチドのTLR9アゴニスト)で処置された哺乳動物対象において、IL−2、IL−12、およびインターフェロンのレベルを、投与の前および後において測定するか、または活性薬剤で処置されていない対照の対象と比較して測定することによっても決定することができる。Th1型免疫応答の刺激はまた、Th1型抗体力価の、Th2型抗体力価に対する比を測定することによっても決定することができる。「Th1型」抗体は、ヒトIgG1およびIgG3、ならびにマウスIgG2aを含む。これに対し、「Th2型」抗体は、ヒトIgG2、IgG4、およびIgE、ならびにマウスIgG1およびIgEを含む。
【0066】
がん
本開示は、哺乳動物対象におけるがんを処置する方法であって、哺乳動物対象へと、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを含む医薬組成物を、哺乳動物対象におけるがんを処置するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提示する。がん「を処置すること」とは、寛解を引き起こすか、または、そうでなくとも、処置の非存在下で予測される生存と比較して生存を延長することなど、有益な臨床的結果をもたらすことを意味する。一部の実施形態では、がんが充実性腫瘍である場合、がん「を処置すること」は、充実性腫瘍のサイズを縮小させること、または、そうでなくとも、生存可能ながん細胞の数を低減することを含む。他の実施形態では、がんが充実性腫瘍である場合、がん「を処置すること」は、充実性腫瘍の増殖を遅延させることを含む。一部の好ましい実施形態では、本開示は、肺のがんの処置を必要とする哺乳動物対象における肺のがんを処置する方法であって、対象へと、有効量の、本開示のポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを、肺内送達により投与するステップを含む方法を提示する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、賦形剤をさらに含む医薬組成物中に存在する。
【0067】
肺のがんは、原発性肺がんの場合もあり、肺への転移がんの場合もある。一部の実施形態では、対象は、原発性肺がんおよび肺外がんからなる群から選択される原発がんを有する。一部の実施形態では、原発性肺がんは、小細胞肺癌(SCLC)であるが、他の実施形態では、原発性肺がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)である。NSCLCの3つの主要な種類は、腺癌、扁平上皮癌、および大細胞癌である。肺への転移がんは、遠隔部位における原発がんから肺へと拡散した続発がんである。一部の実施形態では、転移がんは、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される原発がんの転移である。他の実施形態では、転移がんは、原発不明がんに由来する。
【0068】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを、唯一の治療剤として投与する(単剤療法)のに対し、他の実施形態では、ポリヌクレオチドを、有効量の第2の治療剤と共に投与する(組合せ療法)。組合せ療法における各治療剤は、同時に(同じ医薬組成物中で)投与することもでき、共時的に投与する(別個の医薬組成物中、任意の順序で、相次いで投与する)こともでき、任意の順序で逐次的に投与する(別個の医薬組成物中、別個の機会に投与する)こともできる。逐次投与は、組合せ療法における治療剤が、異なる剤形である(例えば、一方の薬剤は、肺内投与のための乾燥粉末であり、他方の薬剤は、注射による投与のための溶液である)場合に特に有用である。逐次投与は、また、組合せ療法における治療剤を、異なる投与スケジュールで投与する(例えば、一方の薬剤は、1、2、3、または4週間ごとに1回投与されるポリヌクレオチドであり、他方の薬剤は、毎日またはより高頻度で投与される化学療法剤である)場合にも有用である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを、手術による原発がんの切除と共に投与し、手術の前に投与することもでき、手術中に投与することもでき、かつ/または手術後に投与することもできる。一部の実施形態では、手術による切除(resection)は、葉切除であるが、他の実施形態では、手術による切除は、楔状切除(縮小切除(sublobar excision))である。
【0069】
本開示は、第1の治療剤としてのポリヌクレオチドと、第2の治療剤とを含む組合せ療法を提示する。一部の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤、生物学的薬剤、およびこれらの組合せからなる群のうちの1つを含む。一部の実施形態では、方法は、原発がんを切除するステップおよび放射線療法を投与するステップの一方または両方をさらに含む。第2の治療剤は、単剤療法としての使用について、関連政府機関(例えば、FDA、EMAなど)により承認された用量およびスケジュールで投与する。代替的に、第2の治療剤は、単剤療法としての使用について、関連政府機関により承認された用量およびスケジュールより低用量および/または低頻度のスケジュールで投与する。
【0070】
一部の実施形態では、化学療法剤は、アクチノマイシン、アファチニブ、アレクチニブ、アスパラギナーゼ、アザシチジン、アザチオプリン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カンプトテシン、カルボプラチン、カペシタビン、セルチニブ、シスプラチン、クロランブシル、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エルロチニブ、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルダラビン、フルタミン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、ラパチニブ、レトロゾール、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ソラフェニブ、スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0071】
一部の実施形態では、生物学的薬剤は、サイトカインまたは抗体である。サイトカインまたは抗体は、断片の場合もあり、誘導体の場合もあり、融合タンパク質の場合もある。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、好ましくは完全ヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ネシツムマブなどの抗EGF抗体である。
【0072】
本開示は、第1の治療剤としてのポリヌクレオチドと、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストを含む第2の治療剤とを含む組合せ療法を提示する。一部の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA−4(CD152)、LAG−3、TIM−3、TIGIT、IL−10、およびTGF−ベータからなる群から選択される。他の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはトリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ(TDO)である。
【0073】
なおさらなる実施形態では、本開示は、第1の治療剤としてのポリヌクレオチドと、免疫刺激性分子のアゴニストを含む第2の治療剤とを含む組合せ療法を提示する。一部の実施形態では、免疫刺激性分子は、CD27、CD40、OX40(CD134)、GITR、CD137、CD28、およびICOS(CD278)からなる群から選択される。
【0074】
好ましくは、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する協同効果を結果としてもたらす。協同効果とは、第2の治療剤の非存在下におけるポリヌクレオチドの投与から生じる効果を超えるが、相加効果未満である効果である。より好ましくは、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する相加効果を結果としてもたらす。相加効果とは、ほぼ、単剤療法としての、ポリヌクレオチドおよび第2の治療剤の投与から生じる効果の合計であるが、相乗効果未満である効果である。なおより好ましくは、有効量のポリヌクレオチドと、有効量の第2の治療剤とが合わさり、肺のがんに対する相乗効果を結果としてもたらす。相乗効果とは、単剤療法としての、ポリヌクレオチドおよび第2の治療剤の投与から生じる効果の合計を超える効果である。
【0075】
本開示は、ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを含む単剤療法または組合せ療法として、肺のがんを処置するための方法を提示する。一部の方法は、治療の中断後、ある期間にわたり、完全または部分寛解を達成する。一部の実施形態では、方法は、以下の転帰:
(a)対象の生存時間の増大;
(b)原発がんの体積の低減;
(c)原発がんの増殖の遅延;
(d)転移性腫瘍の数の低減;
(e)転移性腫瘍の体積の低減;および
(f)転移性腫瘍の増殖の遅延;
のうちの1または複数を達成し、ここで、原発がんは、肺内原発がんまたは肺外原発がんである。一部の実施形態では、肺のがんの処置は、ケモカインCCモチーフリガンド2(CCL2)、ケモカインCXCモチーフリガンド10(CXCL10)、インターフェロン−アルファ(IFN−α)、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)、インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12p70(IL−12p70)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)からなる群から選択される1または複数のサイトカインからなる群から選択される1または複数のサイトカインの肺内の分泌の誘導を含む。一部の実施形態では、肺のがんの処置は、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導される肺毒性を結果としてもたらさない。一部の実施形態では、肺のがんの処置は、ポリヌクレオチドの反復投与が禁忌となるような重症度の、ポリヌクレオチドに誘導されるインフルエンザ様症状であって、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感からなる群のうちの1または複数を含むインフルエンザ様症状を結果としてもたらさない。
【0076】
他の疾患および障害
本開示は、哺乳動物対象における感染性疾患を防止する方法であって、哺乳動物対象へと、本開示の医薬組成物を、哺乳動物対象における感染性疾患を防止するのに十分な量で投与するステップを含む方法をさらに提示する。すなわち、一部の実施形態では、本開示は、予防用ワクチンを提示する。一部の実施形態では、哺乳動物対象は、感染作用物質への曝露の危険性がある。感染性疾患の「防止」とは、対象を、感染性疾患の発症から保護することを意味する。一部の実施形態では、感染性疾患の防止は、対象を、感染作用物質への感染から保護すること(例えば、対象を、急性または慢性の感染症の発症から保護すること)をさらに含む。加えて、本開示は、哺乳動物対象における感染性疾患の症状を改善する方法であって、哺乳動物対象へと、医薬組成物を、哺乳動物対象における感染性疾患の症状を改善するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提示する。すなわち、一部の実施形態では、本開示は、治療用ワクチンを提示する。一部の実施形態では、対象は、感染作用物質に、急性または慢性感染している。感染性疾患は、ウイルス性、細菌性、真菌性、または寄生虫性疾患でありうる。一部の実施形態では、医薬組成物は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫抗原をさらに含みうる。感染性疾患の症状の「改善(ameliorating)」とは、疾患の症状を改善し(improve)、好ましくは、疾患の程度を縮小することを意味する。
【0077】
さらに、本開示は、哺乳動物対象におけるIgE関連障害の症状を改善する方法であって、哺乳動物対象へと、本開示の医薬組成物を、哺乳動物対象におけるIgE関連障害の症状を改善するのに十分な量で投与するステップを含む方法を提示する。一部の好ましい実施形態では、IgE関連障害とは、アレルギーである。アレルギーは、アレルギー性鼻炎(花粉症)、副鼻腔炎、湿疹、および蕁麻疹を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、医薬組成物は、アレルゲンをさらに含みうる。IgE関連障害の症状の「改善(ameliorating)」とは、障害の症状を改善し(improve)、好ましくは、障害の程度を縮小することを意味する。例えば、IgE関連障害が、アレルギー性鼻炎である場合、症状の改善とは、鼻腔粘膜の腫脹を低減し、鼻漏(鼻水)を低減し、かつ/またはくしゃみを低減することを意味する。
【実施例】
【0078】
略語:CTRL(対照);DNA(デオキシリボ核酸);BALF(気管支肺胞洗浄液);ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ);EC
50(半数効果濃度);(FACS)蛍光活性化細胞分取;mcgまたはμg(マイクログラム);PBMC(末梢血単核細胞);PN(ポリヌクレオチド);TLR9(Toll様受容体9);およびWT(野生型)。
【0079】
前出の開示は、明確さおよび理解のために、例示および例を目的として、ある程度詳細に記載してきたが、当業者には、ある特定の変化および改変を実施しうることが明らかであろう。したがって、記載および実施例は、本開示の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。
【表1-1】
^ 可能な最長のパリンドロームを、太字で示す。D60-2および配列番号2において、少なくとも1つのヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエート連結であり、xは、0、1、または2であり、Nは、A、C、またはTである。
【表1-2】
【0080】
表1−1は、実施例で言及されるヌクレオチド配列を示し、表1−2は、実施例で言及されるポリヌクレオチドのTLR9アゴニストの配列特徴についてまとめる。そうでないことが注記されない限りにおいて、ポリヌクレオチドは、2’−デオキシリボポリヌクレオチドであり、ヌクレオチド間連結は、ホスホロチオエートエステル連結である。
【0081】
(実施例1)
ポリヌクレオチドによるヒト白血球の単離および刺激
ポリヌクレオチド(PN)の活性を、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)および単離B細胞によるサイトカイン分泌の測定により、in vitroにおいて評価した。
【0082】
PBMCは、Ficoll−Paqueを使用して、健常ヒトドナーの血液から単離した。B細胞は、製造元の指示書に従い、抗CD19マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を使用して、正の選択により、軟膜から単離した。IFN−αを誘導するために、ポリヌクレオチドの濃度を増大させながら、PBMC(1mL当たりの細胞2.5×10
6個)の二連の培養物を、24時間にわたりインキュベートした。細胞培養物上清中のIFN−αレベルは、ELISA(ドナーのn=4)により測定した。IL−6を誘導するために、ポリヌクレオチドの濃度を増大させながら、B細胞(1mL当たりの細胞0.75×10
6個)の二連の培養物を、96時間にわたりインキュベートした。細胞培養物上清中のIL−6レベルは、ELISA(ドナーのn=12)により測定した。
【0083】
全ての被験ポリヌクレオチドは、広範な濃度範囲にわたり、ヒトPBMCからのIFN−αの産生を誘導した(
図1)。D60−1は、D60−7と比較して、より高度の最高IFN−αレベルを誘導したが、表1−3において示される通り、D60−1とD60−7が、同等なIFN−α EC
50値を示したという点で、D60−7の効力が低度であるわけではなかった。D60−1およびD60−7の両方はまた、広範な濃度範囲にわたり、ヒトB細胞からのIL−6の産生も誘導した(
図2)。D60−7は、D60−1と比較して、わずかに高度な最高IL−6レベルを誘導した。
【表1-3】
【0084】
(実施例2)
マウスにおけるポリヌクレオチドの評価
ポリヌクレオチド(PN)の活性を、隔週のスケジュールによる、生理食塩液、D60−1、またはD60−7の鼻腔内投与後における気管支肺胞洗浄液(BALF)中のサイトカインの測定、肺組織についての組織病理学的評定、およびマウスの体重変化の決定により、in vivoにおいて評価した。
【0085】
用量を1、5、または20μgとする、生理食塩液またはポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを、肺への送達を確保するように、鼻腔内経路を介して、50μLの体積で、BALB/cマウス(群1つ当たりのn=5)へと投与した。マウスには、0、14、28、および42日目に、合計4回の鼻腔内処置を施した。マウスは、毎週2回秤量した。最終回の(4回目の)処置の24時間後、マウスを屠殺し、生理食塩液による気管支肺胞洗浄を実施して、下気道の洗浄液(liquid wash)を得た。その後、肺組織を採取し、組織病理学的な評価および評定の準備としての、パラフィン包埋、切片化、ならびにヘマトキシリンおよびエオシンによる染色のために、10%のホルマリン中で保存した。肺組織の切片は、1が、肺の無変化を表し、高スコアが、細気管支周囲および血管周囲における炎症性浸潤物の発生率の増大のほか、構造的変化および肺組織リモデリングの発生率の増大を表す、1〜5のスケールにより評定した。BALF中のサイトカインレベルは、MAGPIX(登録商標)マルチプレックスシステム(Luminex、Austin、TX)を使用して測定した。
【0086】
ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストの、鼻腔内経路を介する投与は、BALF中のサイトカインを測定することにより決定される局所的免疫応答を誘導する(
図3)。被験低用量(1または5μg)では、D60−1およびD60−7は、多くのサイトカインについて、同等なレベルを誘導した。しかし、被験最高用量(20μgまたは約1mg/kgの用量)では、D60−1は、全てのサイトカインについて、D60−7と比較して高レベルを誘導した。
【0087】
ポリヌクレオチドにより誘導される毒性は、肺組織の顕微鏡検査により、局所的に観察され、体重の変化を測定することにより、全身的に観察された(Campbellら、J Clin Invest、119巻:2564〜2576頁、2009年)。肺組織切片についての組織病理学的評定は、D60−1およびD60−7の両方に応答した、細気管支周囲および血管周囲における細胞への浸潤の用量依存的増大、気道壁および血管壁への変化、ならびに組織リモデリングをとらえたが、各用量レベルで、D60−1のレシピエントにおいて、より顕著な効果がもたらされた(
図4)。被験最高用量(20μg)では、D60−1は、それぞれ、14および28日目の、2および3回目の処置の後でとりわけ、D60−7より顕著な、処置後の体重減少を引き起こした(
図5)。まとめると、これらのデータは、D60−7の鼻腔内投与が、D60−1と比較した毒性の低減と関連することを指し示す。
【0088】
(実施例3)
肺のがんについてのマウスモデルにおけるポリヌクレオチドの評価
ポリヌクレオチド(PN)の活性を、肺への転移がんについての、いくつかの異なるマウスモデル(Heppnerら、Breast Cancer Res.、2巻:331〜334頁、2000年)においてin vivoで評価する。
【0089】
癌細胞の皮下(SC)注射
D60−7と、抗PD−1とは、肺腫瘍担持マウスの生存を増大するように相乗作用する
4T1乳癌細胞は、皮下腔から、肺、肝臓、膵臓、骨、および血液へと自発的に転移する。約10,000個の4T1細胞を、BALB/cマウスへと皮下注射した。6日後、抗PD−1遮断抗体(Ab)による処置を開始した。遮断Abを、250μgの用量で、3または4日間ごと、5週間にわたるIP注射により投与した。原発腫瘍は、手術により、15日目に除去した。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストであるD60−7を、50μLの生理食塩液中に10μgの用量で、16日目に開始し、以後毎週2回ずつ、3週間にわたり(例えば、16、19、23、26、30、34、および41日目に)、鼻腔内投与した。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニスト(D60−7)および遮断Ab(抗PD−1)は、単独または組合せで施した。生理食塩液を、対照として、別個の群のマウス、および抗PD−1単独を施されるマウスへと投与した。群1つ当たりのマウスの数は、以下の通りであった:生理食塩液(対照):n=11;D60−7:n=10;抗PD−1:n=10;抗PD−1に加えたD60−7:n=12。処置が腫瘍担持マウスの生存を増大させる能力を、90日間にわたり査定した。
図6は、D60−7および抗PD−1の両方で処置されたマウスの生存の、どちらか一方の薬剤単独で処置されたマウスと比較した増強を示す、2つの独立の実験についての合成図である。
【0090】
D60−7と、抗PD−1とは、肺転移の数を低減するように相乗作用する
約10,000個の4T1細胞を、BALB/cマウスへと皮下注射した。6日後、抗PD−1遮断抗体による処置を開始した。抗PD−1を、毎週2回ずつ、6日目〜34日目にわたり、用量を250μgとするIP注射により投与した。原発腫瘍は、手術により、15日目に除去した。D60−7を、16、19、21、23、27、および30日目において、50μLの生理食塩液中に10μgの用量で、鼻腔内投与した。D60−7および抗PD−1は、単独または組合せで施した。生理食塩液を、対照として、別個の群のマウス、および抗PD−1単独を施されるマウスへと投与した。34日目に、マウスを屠殺した。肺を採取し処理して、播種アッセイにより、肺転移の数をカウントした。略述すると、肺を、鋏で15回切断し、1mg/mLのIV型コラゲナーゼと、0.25mg/mLのDNアーゼIとを含有する、5mlのHBSS中、37℃で30分間にわたり消化させた。インキュベーション後、懸濁液を、HBSSで2回洗浄し、5mlの組織培養培地(RPMIに、10%のFBSを加えた)中に再懸濁させた。懸濁液を、1:2〜1:1000の範囲の異なる希釈率で、10mlの組織培養培地中で希釈し、ペトリディッシュ内に播種した。10日後、腫瘍コロニーをカウントして、肺内の転移性コロニー形成細胞の数を評価した。群1つ当たりのマウスの数は、以下の通りであった:生理食塩液(対照):n=13;D60−7:n=11;抗PD−1:n=14;抗PD−1に加えたD60−7:n=14。
図7は、D60−7および抗PD−1の両方が、単剤としての転移の数の有意な低減をもたらしたことを示す、2つの独立の実験について合わせた図である。驚くべきことに、D60−7および抗PD−1の組合せは、相乗作用して、肺転移の数の、さらに大幅な低減をもたらした。p値は、対応のないマン−ホイットニーのT検定を使用し、Prismソフトウェアを使用して計算した。
【0091】
癌細胞の静脈内(IV)注射
約20,000個のCT26結腸癌細胞を、BALB/cマウスへと静脈内注射するか、または約50,000個のルイス肺癌細胞を、C57BL/6マウスへと静脈内注射する。抗PD−1または抗PDL−1遮断抗体(Ab)を、7、11、15、18、21、25、28、および32日目に、250μgの用量で、IP注射により投与する。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストを、7、11、15、18、21、25、28、および32日目に、50μLの生理食塩液中に10または5または1μgの用量で、鼻腔内投与する。ポリヌクレオチドのTLR9アゴニストおよび遮断Abは、単独または組合せで施す。処置が腫瘍担持マウスの生存を増大させる能力を、最大200日間にわたり査定する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]