(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792297
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】発熱テープ
(51)【国際特許分類】
E03B 7/12 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
E03B7/12 G
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-117083(P2019-117083)
(22)【出願日】2019年6月25日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】593079944
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】水野 哲也
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−148863(JP,A)
【文献】
特開2018−059268(JP,A)
【文献】
特開平10−061832(JP,A)
【文献】
実開昭57−123871(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線基板と、フレキシブルプリント配線基板に実装された発熱源となる複数個のLEDチップと、軟質プラスチック樹脂から成りLEDチップを封止する封止層を備えた発熱テープであって、
前記軟質プラスチック樹脂にアルミナの粉末を均一に混合したことを特徴とする発熱テープ。
【請求項2】
前記軟質プラスチック樹脂として透明なシリコンゲルを使用し、
フレキシブルプリント配線基板に形成されたリード線接続用の端子部が目視可能な半透明の封止層となるように、アルミナの粉末の混合割合を調整したことを特徴とする請求項1に記載の発熱テープ。
【請求項3】
前記シリコンゲルに対し重量比で10パーセント以下となるようにアルミナの粉末を混合したことを特徴とする請求項2に記載の発熱テープ。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント配線基板の裏面、若しくはフレキシブルプリント配線基板の裏面側に両面接着テープを貼着したことを特徴とする請求項1に記載の発熱テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光に伴って発熱するLEDチップを発熱源とする発熱テープに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発熱テープの一形式として、特開2014−148863号公報には、発熱源となる複数個のLEDチップをフレキシブルプリント配線基板に実装し、軟質プラスチック樹脂で封止した発熱テープが開示されている。この発熱テープは柔軟性があるので、水道管、水栓、バルブに貼り付けて密着させ、LEDチップの発熱で水道管等の凍結防止に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−148863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の発熱テープはLEDチップを封止した軟質プラスチック樹脂の放熱性が低いため所望の凍結防止効果を得にくい。
本発明はかかる点に鑑み、LEDチップを発熱源とし、高い放熱効果を得られる発熱テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、フレキシブルプリント配線基板と、フレキシブルプリント配線基板に実装された発熱源となる複数個のLEDチップと、軟質プラスチック樹脂から成りLEDチップを封止する封止層を備えた発熱テープであって、
前記軟質プラスチック樹脂にアルミナの粉末を均一に混合したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の発熱テープにおいて、
前記軟質プラスチック樹脂として透明なシリコンゲルを使用し、
フレキシブルプリント配線基板に形成されたリード線接続用の端子部が目視可能な半透明の封止層となるように、アルミナの粉末の混合割合を調整したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発熱テープにおいて、
前記シリコンゲルに対し重量比で10パーセント以下となるようにアルミナの粉末を混合したことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発熱テープにおいて、
前記フレキシブルプリント配線基板の裏面、若しくはフレキシブルプリント配線基板の裏面側に両面接着テープを貼着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る発熱テープは、LEDチップを封止する軟質プラスチック樹脂に放熱性に優れたアルミナの粉末を混合したので、発熱テープの放熱効果が高まり、LEDチップの発熱を凍結防止や暖房の熱源として効果的に利用できる。
とりわけ、アルミナは高い絶縁性を有するので、アルミナの粉末の混合によって、LEDチップを封止する軟質プラスチック樹脂の絶縁性が損なわれることはない。
【0010】
透明なシリコンゲルにアルミナの粉末を混合すると、シリコンゲルは白濁する。請求項2に記載の発明によれば、アルミナの粉末の混合量を調整することにより透明なシリコンゲルを半透明にし、もってフレキシブルプリント配線基板に形成されたリード線接続用の端子部を目視可能としたので、発熱テープを接続用端子部の近辺から切断し、端子部にリード線を接続することができる。そのため、長尺な発熱テープから所望の長さの発熱テープを切り取って凍結防止や、暖房の熱源として利用し、あるいは、短尺の発熱テープ同士をリード線で繋げて長尺の発熱テープにすることができる。そのため発熱テープの使い勝手が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、透明なシリコンゲルに10パーセント以下のアルミナの粉末を混合することにより、発熱テープの放熱効果を高めるとともに、シリコンゲルを通してリード線接続用の端子を目視できる。
アルミナの粉末の混合割合が10パーセントを超えると、放熱効果はより高まるものの、シリコンゲルの白濁度が高まって、端子を目視することが困難になる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、発熱テープを水道管等の凍結防止対象物に両面接着テープで貼り付けることができるので、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る発熱テープを示す部分平面図である。
【
図2】
図1の2−2線から切断した拡大断面図である。
【
図3】リード線をはんだ付けした同発熱テープを示す平面図である。
【
図5】同発熱テープの他の使用例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施例に係る発熱テープを示す拡大断面図である。
【実施例】
【0014】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1〜
図3には本発明の実施例に係る発熱テープ10が示されている。当該発熱テープ10はフレキシブルプリント配線基板11、フレキシブルプリント配線基板11に実装した複数個のLEDチップ12とチップ抵抗器13及びLEDチップ12とチップ抵抗器13を封止した封止層14を備えている。LEDチップ12はフレキシブルプリント配線基板11の表面に長手方向に沿って等間隔で並べられている。隣接するLEDチップ12の間には1個又は2個のチップ抵抗器13が、過電流によってLEDチップ12が損傷するのを防止するため配置されている。
【0015】
図2に拡大して示すように、フレキシブルプリント配線基板11は、銅箔層11aと、銅箔層11aの上面に貼り付けた絶縁性の上面印刷シート11bと、銅箔層11aの下面に貼り付けた絶縁性のフィルムベース11cと、フィルムベース11cの下面に貼り付けた絶縁性の印刷シート11dから成る。LEDチップ12は上面印刷シート11b上に載置され、LEDチップ12の電極端子が銅箔層11aにはんだ付け11eされている。上面印刷シート11bにはリード線接続用の端子部11fが露出し、プラス記号とマイナス記号が印刷表記されている。この端子部11fは銅箔層11aに電気的に接続されている。下側印刷シート11dには両面接着テープ15が貼り付けられている。
【0016】
封止層14は透明なシリコンゲルにアルミナ粉末を均一に混合したものが使用されている。透明なシリコンゲルにアルミナ粉末を混合するとシリコンゲルは白濁する。アルミナの混合量が多くなれば透明度が低下し、半透明あるいは不透明になる。本実施例ではリード線接続用の端子部11fが封止層14を通して目視可能な半透明となるように、シリコンゲルに対し重量比で10パーセント以下のアルミナの粉末を混合している。
【0017】
本実施例に係る発熱テープ10の構成は以上の通りであって、LEDチップ12を封止する封止層14を形成するシリコンゲルに放熱性に優れたアルミナの粉末を混合したので、発熱テープ10の放熱効果が高まり、LEDチップ12の発熱を凍結防止や暖房の熱源として効果的に利用できる。
ちなみに、アルミナは高い絶縁性を有するので、アルミナの粉末の混合によって、LEDチップ12を封止するシリコンゲルの絶縁性が損なわれることはない。
【0018】
本実施例では、シリコンゲルにアルミナの粉末を重量比で10パーセント以下とすることにより、フレキシブルプリント配線基板11に形成されたリード線接続用の端子部11fが目視可能な半透明としたので、
図3に示すように、発熱テープ10を接続用端子部11fの近辺から切断し、端子部11fにリード線16をはんだ付けしてLEDチップ12の点灯を制御する電源回路17の電源コード18を接続し、あるいは長尺な発熱テープ10から所望の長さの発熱テープ10を切り取って凍結防止や、暖房の熱源として利用することも、また、短尺の発熱テープ10同士をリード線16で繋げて長尺の発熱テープ10にすることができる。
図3に示す発熱テープ10では、シリコンゲルでLEDチップ12やチップ抵抗器13を封止するだけでなく、はんだ付けしたリード線16もシリコンゲルで封止して発熱テープ10全体に防水性を付与している。
【0019】
また、本実施例では、発熱テープ10を水道管等の凍結防止対象物に両面接着テープ15で貼り付けることができるので、使い勝手が良い。
【0020】
上記発熱テープ10を屋根20の融雪及び雪庇防止に用いた使用例を
図4に示す。この屋根20には屋根材として折板21が葺設され、葺設した折板21の谷部21aの上に複数本の発熱テープ10が敷設されている。この発熱テープ10は屋根の勾配に沿って棟側から軒側へと延びている。電源コード18を屋内又は屋外に設置した家庭用電源コンセントに接続し、発熱テープ10のLEDチップ12の列を発光させると、発光に伴う発熱で折板21の上の積雪が融雪されるとともに、軒先に雪庇が発生するのを防止できる。
【0021】
上記発熱テープ10を暖房装置30に用いた使用例を
図5に示す。この暖房装置30は木質材から成るケース31を備えている。このケース31の側面の下部には空気取入口31aが形成され、ケース31の上端面は空気排出口31bとして開放されている。ケース31には発熱テープ10が幾重にも曲がりくねったり、若しくは、幾重にもねじれたりしたつづら折りにして収納されている。発熱テープ10に通電するとLEDチップ12が発光し、発光に伴う発熱でケース31内の空気が温められる。暖められた空気は空気排出口31bからケース31の外に排出されるとともに、空気取入口31aから空気がケース31内に流入する。
【0022】
上記発熱テープ10では、LEDチップ12を取り付けたフレキシブルプリント配線基板11の表面側だけにシリコンゲルを塗布して封止層14を形成したが、
図6に示す発熱テープ10Aのようにフレキシブルプリント配線基板11の表裏両面にシリコンゲルを塗布して封止層14を形成すれば、より防水性を高めることができる。
【0023】
また、シリコンゲルにアルミナを混合して封止層14を形成したが、シリコンゲルに代えて他の軟質プラスチック樹脂、例えばウレタンゲル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0024】
10…発熱テープ
11…フレキシブルプリント配線基板
11f…端子部
12…LEDチップ
14…封止層
15…両面接着テープ
【要約】
【課題】LEDチップ12を発熱源とし、高い放熱効果を得られる発熱テープ10を提供すること。
【解決手段】LEDチップ12を封止する封止層14を形成するシリコンゲル等の軟質プラスチック樹脂に放熱性に優れたアルミナの粉末を混合する。発熱テープ10の放熱効果が高まり、LEDチップ12の発熱を凍結防止や暖房の熱源として効果的に利用できる。アルミナは高い絶縁性を有するので、アルミナの粉末の混合によって、LEDチップ12を封止する軟質プラスチックの絶縁性が損なわれることはない。
【選択図】
図1