(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
<材料>
本発明の製造方法において、フィルターの種類は、一般にティーバッグに用いることできる素材であれば特に限定されず、ナイロン紗、ポリエステル紗、不織布、生分解性紗、生分解性不織布等を用いることができる。
本発明の製造方法において、融点が240℃以下のフィルターを用いることが好ましい。融点が240℃以下のフィルターを用いることで、フィルターが焦げる(炭化)ことなく、融点以上の温度に加熱することが可能となる。
また、融点が220℃以下のフィルターを用いることがより好ましく、200℃以下のフィルターを用いることがさらに好ましく、180℃以下のフィルターを用いることが特に好ましい。
【0024】
本発明の製造方法において、特に生分解性紗、又は生分解性不織布を用いることが好ましい。生分解性の紗、又は不織布は、一般的に融点が低い素材で構成されており、少ないエネルギーで容易に融点以上の温度に加熱することができる。
【0025】
<フィルター成形品>
本明細書中において、フィルター成形品とは、少なくとも重ねたフィルターを融点以上の温度に加熱することにより溶着する工程を経た構造体を意味する。
フィルター成形品としては、袋体のフィルター成形品が好ましい。袋体のフィルター成形品としては、開口部を有していてもよく、閉じていてもよい。
【0026】
<原料>
上記フィルター成形品として、ティーバッグや、出汁パック等の包装体を製造する場合には、包装体の内部に種々の原料を内包することができる。
原料としては、茶葉、コーヒー、漢方、健康食品、インスタント類(お味噌汁、スポーツ飲料、スープ等)等、出汁用原料等の食品等が例示できる。
また、アロマ及びポプリ等の雑貨や、石・鉱石等を投入し、風呂に入れることで、温泉効能的用途を有する雑貨、脱臭剤及び防臭剤等に用いることができる。さらに、医薬原料、及び洗顔料の粉末等の化粧品原料を用いることもできる。
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るティーバッグの製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0028】
(実施例1)
<フィルター積層工程>
図1には、実施例1におけるフィルター積層体11を示す。
本明細書中において、「フィルター積層体」とは、少なくとも一部にフィルターが重畳する重畳部を有する構造体を意味する。
本実施形態においては、2枚のフィルター10a、及びフィルター10bを重ねてフィルター積層体11を形成する。
本発明の別の実施形態においては、1枚のフィルターを折り畳み、フィルターが重畳する部分を形成し、これをフィルター積層体としてもよい。以下、フィルターの枚数について述べる時には、フィルターを折り畳み、フィルターが2層重なっている場合を「2枚」、フィルターがn層重なっている場合を「n枚」とする概念も含む。
【0029】
<溶着工程>
次いで、フィルター積層体11を、フィルターの融点以上の温度に加熱して、溶着部21を形成し、フィルター溶着体20aを形成する(
図2)。
本明細書中において、「フィルター溶着体」とは、フィルター積層体の重畳部の少なくとも一部が溶着された構造体を意味する。
実施例1においては、ティーバッグ袋体30aの外形が矩形状となるように、溶着部21を形成する。
【0030】
フィルターを溶着する手段は特に限定されず、超音波溶着、熱風式溶着、熱板式溶着、インパルス式溶着、コテ式溶着等を用いることができる。ハート型や丸型のような曲線部を有する形状や、星形のような鋭角部を有する形状にフィルター成形品の外形を画定する場合には、超音波溶着により溶着することが好ましい。超音波溶着であれば、複雑な形状であっても綺麗にフィルター積層体を溶着することができる。
なお、本発明においては、フィルターを溶着する手段として、レーザーを用いないことが好ましい。
【0031】
溶着温度は、フィルターの融点以上の温度で特に限定されないが、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましく、220℃以下が特に好ましく、200℃以下が特に好ましい。
フィルターの素材にもよるが、通常、物体を空気中で300℃近傍まで加熱すると、炭化(焦げ)が生じる恐れがある。したがって、通常はフィルターを加熱する上限は300℃未満である。
【0032】
なお、フィルター積層体11を融点に満たない程度の温度に加熱し、いわゆる半溶融状態とした場合であっても、フィルター積層体11を溶着すること自体は可能である。
しかし、フィルターの融点以上の温度に加熱するか、溶着される程度にフィルターの融点未満の温度まで加熱するかによって、以下説明する引張工程の成否が分かれる。
【0033】
融点以上の温度で加熱して溶着することにより形成される溶着部(溶着層)と、融点未満の温度で加熱して溶着することにより形成される溶着部とは、溶着の態様が異なると考えられる。
フィルターの融点未満の温度で加熱すると、フィルターがある程度軟化し、半溶融の状態で相対するフィルターに圧着されることにより、相対するフィルターはそれぞれ繊維状態を維持したまま溶着される。
この溶着の態様では、相対するフィルターの界面が剥がれる方向に力を加えると、容易に界面剥離するが、溶着面に対して略平行な引張応力に対しては高い強度を有すると考えられる。
【0034】
一方、フィルターが融点以上の温度まで加熱されると、溶融状態になり、相対するフィルターと完全に混合する。
この溶着の態様では、界面が存在しなくなるため、フィルターの界面が剥がれる方向の力には強いが、溶着面に対して略平行に引張応力が作用すると、不均一な混合状態となった各分子に、不均一に応力がかかることで部分破断を起こし、溶着部から破断しやすくなると考えられる。
【0035】
なお、フィルターが融点の異なる複数の素材からなる場合、すべての素材の融点以上の温度に加熱することで、同様の効果を得ることができる。
【0036】
<引張工程>
次いで、
図2に示すように、溶着部21の幅方向に対して略垂直方向に引張力Pを加えることで、溶着部21に引張応力σを加える。
このように、溶着部21に引張応力σを加えることで、溶着部21のエッジ部からティーバッグ袋体30aを容易に切り離すことが可能となる(
図3)。
【0037】
本発明の製造方法によれば、例えば人の手によりティーバッグ袋体30aを切り離す場合であっても、溶着部21に沿って綺麗に切り離すことができる。
また、強い応力をかける必要がなく、ティーバッグ袋体30aを、ミシン目を切り取る様に容易に切り離すことが可能となる。
したがって、本発明の製造方法によれば、超音波カッター等の、従来から存在するフィルターを溶着し、切断する方式では綺麗に製造することができなかった、曲線部や鋭角部を有する複雑な形状のフィルター成形品を、レーザー加工装置等の特別な装置を要せずに、容易に加工、製造することができる。
【0038】
フィルター積層体が、フィルターの融点以上に加熱されているかどうかは、溶着面温度測定法(MTMTS法)等により確認することができる。
しかし、実験的に溶着面の温度を測定することは可能であるが、実製品における溶着面の温度を溶着中にリアルタイムで正確に測定し、融点以上の温度で加熱されているかを調べることは困難である。
上述の通り、融点を境にして、形成される溶着部の種類が異なることが知られているため、引張工程により綺麗に溶着部に沿ってフィルター成形品を切り離すことができれば、融点以上の温度で加熱することができたといえる。
【0039】
また、フィルターの融点以上に加熱されているかどうかは、光学顕微鏡等を用いて、溶着部を観察することで確認することができる。
フィルターの加熱が融点に達していない場合には、溶着部の多くが繊維状態であることを確認することができる。
一方で、フィルターの加熱が融点以上に達している場合には、溶着部が混合状態となり、ほとんど繊維状態が確認されない。
【0040】
(実施例2)
実施例1で説明した事項については、省略しつつ実施例2に係る、異なる2種のフィルター成形品の製造方法として、フックタグ付きティーバッグの製造方法について説明を加える。
【0041】
図4には、ティーバッグ袋体30aと、フィルターからなるフックタグ30bを備えるティーバッグを製造するためのフィルター溶着体20bを示す。ティーバッグ袋体30aと、フックタグ30bとは、紐状部材40を介して連結されている。紐状部材40の両端部は、それぞれティーバッグ袋体30aとフックタグ30bに溶着されている。
実施例2のフックタグ30bは、フックタグ30bの外縁から中心部に向かって融点以上の温度で溶着された溶着部21bを備えている。
【0042】
紐状部材40は、一般にティーバッグに使用されるものであれば特に限定されず、綿、麻、毛、絹等の天然繊維、アクリル、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の化学繊維、及びこれらを複合した糸並びに紐等を用いることができる。
【0043】
図5には、ティーバッグ袋体30a及びフックタグ30bの使用態様を示す。
フックタグ30bの溶着部21bは、上述の通り、ミシン目を切り取るように容易に切り離すことが可能であり、本実施形態においては、フックタグ30bの外縁から、中心部まで一直線に切り離すことが可能である。
本実施形態のフックタグ30bは、
図5に示す通り、溶着部21bを切り離した部分をカップ50の縁に引っ掛けることが可能である。
【0044】
このように本発明の製造方法によれば、フィルター溶着体からフィルター成形品を切り離すのみならず、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着することで、任意の箇所に切り込みを入れる加工を、容易にかつ綺麗に行うことができる。
【0045】
さらに、用途、又は形状が異なる2種以上のフィルター成形品であっても、容易に製造することが可能である。
【0046】
(実施例3)
次に、本発明の一実施形態として、外形が曲線部からなるフィルター成形品の製造方法について説明を加える。
図6には、外形がハート型のティーバッグ袋体30cの外形を画定するように、フィルター積層体をフィルターの融点以上の温度に加熱して溶着したフィルター溶着体20cを示す。
【0047】
本実施形態においては、ティーバッグ袋体30cの曲線部を有する外縁(溶着部21c)より内側を、略直線状にレーザーカットし、原料投入口31cを形成する。
本実施形態のように、ティーバッグ袋体30cの外縁が曲線部からなる形態においては、外縁に原料投入口31cを形成すると、原料を投入後、曲線状に原料投入口31cを封止する必要があり、綺麗に封止することができないという問題がある。
【0048】
本実施形態においては、ティーバッグ袋体30cの外縁より内側を略直線状に切断し、原料投入口31cを形成すると、原料投入後、略直線状に原料投入口31cを封止することができるため、綺麗に溶着することができる。
【0049】
また、原料投入口形成工程は、引張工程によりフィルター成形品を切り離した後に行ってもよい。
【0050】
本実施形態においては、フィルター成形品の外縁より内側を略直線状にレーザーカットし、原料投入口を形成する形態について例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、フィルター成形品の外縁より内側を略直線状に切断する切断手段としては、外縁より内側を略直線状に、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着し、形成された溶着部に引張応力を加えて切断してもよい。
また、超音波カッターを用いて、略直線状に熱切断してもよい。
【0051】
(実施例4)
次いで、フィルター成形品として、ドリップタイプのコーヒーパック30dを製造する方法について説明を加える。
図7には、ドリップタイプのコーヒーパック30dを製造するためのフィルター溶着体20dを示す。
実施例4においては、予めフィルター積層体の間に原料60(コーヒー粉)を挟みこんでおき、当該原料を内包するように、フィルター積層体を融点以上の温度に加熱し、フィルター溶着体20dを形成する。
【0052】
さらに、実施例4においては、コーヒーパック30dにおいて、原料を封入する空間と、原料を封入しない空間とを分断するように、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着部21dを形成する。
【0053】
図8には、実施例4に係るコーヒーパック30dの使用態様を示す。
コーヒーパック30dは、消費者等のコーヒーパック30dを使用する使用者が、コーヒーを抽出する際に、溶着部21dに引張応力を加えることで、溶着部21dに沿ってコーヒーパック30dを千切り取ることができる。このようにして形成された開口部32dに、お湯を注ぐことで、ドリップコーヒーを抽出することができる。
【0054】
このように、従来のドリップタイプのコーヒーパックは、抽出時に開口させるために、切り取り部にミシン目を入れる工程が必要であったが、本発明に製造方法によれば、フィルター積層体を融点以上の温度で加熱して溶着する際に、切り取り部のミシン目に代えて溶着部を形成すればよく、製造工程を簡略化することができる。
【0055】
また、本発明の製造方法によれば、フィルターの融点以上の温度で加熱して溶着部を形成しておくことで、その使用態様に併せて、ユーザーが容易に切り取り可能な切り取り部を任意の箇所に形成することができる。
【0056】
なお、
図7、及び
図8においては省略したが、ドリップタイプのコーヒーパックにおいては、コーヒーパックをカップの縁に引っ掛けて固定するための厚紙で形成された引掛け部材を備える形態としてもよい。また、当該引掛け部材を、本発明の製造方法により、フィルターで形成してもよい。
【0057】
(実施例5)
次いで、複数のティーバッグ袋体が連結したティーバッグ連結体30eの製造方法について説明を加える。
図9に、ティーバッグ連結体30eを製造するためのフィルター溶着体20eを示す。
【0058】
フィルター溶着体20eには、それぞれ原料60を独立して包含するティーバッグ袋体30e−1、30e−2、及び30e−3を備え、各ティーバッグ袋体は、連結部23を介して連結している。連結部23は、溶着部21eと、各ティーバッグ袋体の外縁の一部である溶着部21に囲まれた領域に形成される。
【0059】
次いで、
図9に示すように、各ティーバッグ袋体と連結部23を含むように、ティーバッグ連結体30eをフィルター溶着体20eから切り離す。
【0060】
図10には、実施例5に係るティーバッグ連結体の使用態様を示す。
ティーバッグ連結体30eは、使用時にティーバッグ袋体30e−1と、連結部23との界面である溶着部21に沿って、ティーバッグ袋体30e−1のみをティーバッグ連結体30eから切り離すことができる。
【0061】
カップにて抽出する際には、ティーバッグ袋体30e−1のみを切り離して使用し、ティーボトルにて抽出する際には、ティーバッグ袋体30e−1及びティーバッグ袋体30e−2を切り離して使用する等、抽出の容量に応じて、任意の数のティーバッグ袋体を容易に切り離すことができる。
【0062】
従来の技術において、このようなティーバッグ連結体を製造する際には、溶着工程とは別に、ミシン目等の切り取り線を形成する工程を行う必要があったが、本発明の製造方法によれば、フィルター積層体を融点以上の温度に加熱して溶着することで、溶着部に沿って容易に切り取り可能なティーバッグ連結体を製造することができる。
【0063】
(実施例6)
次に、原料投入口31fを有するティーバッグ袋体30fの製造方法について説明を加える。
図11には、ティーバッグ袋体30fを製造するためのフィルター溶着体20fを示す。
本実施形態においては、矩形状のティーバッグ袋体30fの一辺が、フィルター溶着体20fの溶着されていない外縁からなる。
このように、フィルター溶着体の溶着されていない外縁を含むように、フィルター積層体を溶着することで、原料投入口31fを有するティーバッグ袋体30fを容易に製造することができる。
【0064】
原料投入口31fを封止する場合、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着してもよく、フィルターの融点未満の温度に加熱して溶着してもよい。
また、原料投入口31fを封止せずに、好みの原料を封入可能な空のティーバッグ袋体として取り扱ってもよい。
【0065】
(実施例7)
次いで、貫通孔を有するティーバッグ袋体30gについて、説明を加える。
図12は、ティーバッグ袋体30gを製造するフィルター溶着体20g、及びティーバッグ袋体30gの使用態様を示す図面である。
【0066】
まずフィルター積層体の外縁全周を、フィルターの融点未満の温度に加熱して溶着する。フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着してもよいが、フィルター積層体の外縁全周を溶着して、一つの袋体を形成する場合には、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着する必要がない。
【0067】
次いで、フィルター積層体の上部を、フィルターの融点以上の温度に加熱して円形の溶着部21gを形成し、フィルター溶着体20gを形成する。
【0068】
円形の溶着部21gに沿って、フィルターを切り離すと、貫通孔33gを有するティーバッグ袋体30gを製造することができる。ティーバッグ袋体30gは、
図12に示すように、フック70等に引っかけて保管することができる。
【0069】
従来、貫通孔を有するフィルター成形品を製造するためには、別途打ち抜き加工を行う必要があったが、本発明の製造方法によれば、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着する工程を行うことで、容易に貫通孔を有するフィルター成形品を製造することができる。
【0070】
上記実施例1〜7において、具体的なフィルター成形品の製造方法について例示したが、本発明の製造方法は、上記具体的態様に限定されない。
【0071】
本発明におけるフィルター成形品は、少なくとも重ねたフィルターを、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着する溶着工程を経て製造されたものであればよい。
例えば、超音波カッターや、レーザー加工装置等の切断手段を用いて、ティーバッグの外形を切り出した後、ティーバッグの一部を融点以上の温度に加熱して溶着されたものであってもよい。
フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着することで、溶着部に沿って容易にフィルターを切り離し、又は切れ込み、切り欠き、若しくは貫通孔等の構造を形成することが可能となり、フィルター成形品を容易に加工し、製造することができる。
【0072】
前記溶着工程により形成される溶着部は、線状であることが好ましい。溶着部の溶着幅は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜20mmであり、より好ましくは0.05〜10mmであり、さらに好ましくは0.05〜0.5mmであり、特に好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0073】
フィルター成形品としては、外形として曲線部を有している形態、又は鋭角部を有している形態が好ましい。本発明の製造方法は、曲線部や鋭角部を有するフィルター成形品であっても、容易に加工、製造することができる。
【0074】
本実施形態においては、フィルター溶着体から、引張工程を経て分離した部分をフィルター成形品とする形態について例示したが、フィルター溶着体が最終製品、すなわちフィルター成形品となる形態も含まれる。
【0075】
このような形態においては、フィルター成形品を使用する消費者等のユーザーが、自身で使用する部分を切り取る態様として使用することができる。上述の通り、従来、ユーザー自身が使用部分を切り取れるようにフィルター成形品を加工するためには、ミシン目等の切り取り線を形成する工程が必要であった。本発明の製造方法によれば、ミシン目を形成する工程を経ずに、溶着工程にて、使用者が自身で切り離し可能な切り取り部を有するフィルター成形品を製造することができる。
【0076】
フィルター成形品の種類は、特に限定されないが、原料を内包する原料内包空間を有する袋体、または当該袋体を切り離し可能な構造体が好ましい。
【0077】
フィルター成形品の形状は特に限定されず、矩形状、円形、ハート形等の曲線部を含む形状、星型等の鋭角部及び/又は鈍角部を有する形状等、任意の形状とすることができる。
【0078】
複数のフィルター成形品を切り離し可能なフィルター成形品である場合、ティーバッグの外形を、ハート型、星形、及び円形等、形状が異なる2種以上のティーバッグを切り離し可能な構成とすることで、使用者が、その日の気分に合わせて好みの形状を使用する構成とすることができる。
前記複数のフィルター成形品が複数のティーバッグである場合、封入する原料の種類は同一である必要はなく、異なる種類の原料を封入する形態としてもよい。
【0079】
本実施形態においては、2枚のフィルターを重ねてフィルター積層体を形成し、これを融点以上の温度に加熱する工程について例示したが、フィルターの数は2枚に限定されず、フィルター成形品の使用用途に合わせて、2枚以上のフィルターを使用してもよく、3枚以上のフィルターを使用してもよい。
例えば、実施例2で例示したフックタグを製造する場合には、強度を高めるために、3枚以上のフィルターを用いてもよい。
【0080】
また、実施例2においては、フィルター成形品として、ティーバッグ袋体及びフックタグが、紐状部材で連結された形態について例示したが、本発明はこれに限定されず、異なる2種以上のフィルター成形品を製造することができる。
なお、「異なる2種以上のフィルター成形品」とは、内容物、形状、及び用途の少なくとも1つが異なる2種以上のフィルター成形品を意味する。
【0081】
例えば、一方は茶葉が封入されたティーバッグ袋体で、他方は砂糖、又は粉乳が封入された袋体として、これが紐状部材で連結されている形態でもよい。このような構成とすることで、使用者の好みに応じて、甘味を調節することができる。
【0082】
砂糖、又は粉乳が封入された袋体においては、
図7、及び
図8で示したように、砂糖、又は粉乳等の原料が封入された空間と、原料を含まない空間とに分断する溶着部を備えてもよい。
このような構成とすることで、使用者は、袋体を溶着部に沿って切り取ることで、内容物を好みの割合で使用することができる。
【0083】
また、異なる2種以上のフィルター成形品が何れもティーバッグ袋体であり、それぞれ異なる茶葉を封入する形態であってもよい。
このような構成においては、使用者が、好みに応じて茶葉をブレンドすることができる。
【0084】
実施例1〜7においては、フィルターの融点以上の温度にフィルターを加熱し、形成される溶着部がフィルター成形品の外縁となるように溶着を行う形態について例示したが、実施例8に示した通り、必ずしもフィルター成形品の外縁として、フィルターの融点以上の温度に加熱することによる溶着部を含む必要はない。
【0085】
また、実施例8で示した通り、フィルター積層体を溶着する工程において、全ての溶着をフィルターの融点以上の温度に加熱する溶着とする必要はなく、フィルターの融点未満の温度に加熱して溶着する工程を含んでもよい。
単にフィルターを溶着すればよい部分については、フィルターの融点未満の温度に加熱して溶着し、フィルターの溶着部に沿って、フィルターを切り離す等の加工を行う部分については、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着することができる。
【0086】
上述した以外にも、本発明の製造方法によれば、フィルターの融点以上の温度に加熱して溶着する溶着工程を経ることで、様々な形状、及び用途のフィルター成形品を容易に加工、製造することができることは理解されよう。
【0087】
(製造例)
表1に記載の素材のフィルターを重ねて、それぞれフィルター積層体を形成した。
次いで、最大振幅が19.2μmであるホーン(出力100%時)を備えた超音波溶着装置を用いて、表1に記載の出力でそれぞれフィルター積層体を溶着し、フィルター溶着体を形成した。
次いで、それぞれのフィルター溶着体を発明者が手で切り離し、フィルター成形品を製造した。結果を表1、及び
図12〜17に示す。
また、表1に記載のフィルターの種類、及び超音波溶着装置の出力を同一条件として、別途フィルター溶着体を形成し、当該フィルター溶着体を同様に手で切り離して得られたフィルター成形品の溶着部を、光学顕微鏡(倍率:100倍)を用いて観察した。結果を
図12〜
図17に示す。
【0089】
図13〜17に示す通り、何れの製造例においても、フィルターの溶着を行うことができた。
また、
図13〜16に示す通り、製造例1−1、製造例2−1、製造例3−1、製造例4−1においては、フィルター溶着体の溶着部に沿ってフィルター成形品を容易に、かつ綺麗に切り離すことが可能であったのに対し、製造例1−2、製造例2−2、製造例3−2、製造例4−2においては、フィルター溶着体に引張応力を加えると、切り離し自体は可能であったものの、フィルター成形品の外縁部に穴が空いてしまった。
この結果は、超音波溶着装置の出力を低くしたことで、フィルターの融点を超えるほど加熱することができなかったことが原因であると考えられる。
したがって、溶着部に沿って綺麗に、かつ容易に切り取るためには、フィルターの融点以上の温度に加熱してフィルターを溶着する必要があることがわかった。
【0090】
また、製造例1−2、2−2、3−2、及び4−2においては、フィルター成形品の切り離し自体は可能であったものの、製造例1−1、2−1、3−1、及び4−1と比して切り離すために強い応力を必要としたため、素材によっては引張の際に生じた歪みが残ってしまった(製造例1−2、2−2、及び4−2)。
【0091】
この結果から、フィルターを融点以上の温度に加熱して溶着することで、融点に達しない温度まで加熱して溶着した場合と比して、溶着部に沿って容易に、かつ綺麗にフィルター溶着体を切断することができることがわかった。
【0092】
また、フィルターとして不織布を使用した場合には、溶着は可能であったものの、容易にかつ綺麗に切り離すことができた製造例を作ることができなかった(
図17)。
これは、本実験で使用した超音波溶着装置が、不織布の融点(260℃)を超える温度まで加熱することができる出力を備えていないことが原因であったと考えられる。
【0093】
不織布の融点以上の温度まで加熱可能な超音波溶着装置を用いれば、不織布についても同様に、容易に、かつ綺麗にフィルター溶着体を切断することが可能であると推定できる。
【0094】
このように、本発明のフィルター成形品の製造方法によれば、重ねたフィルターを、フィルターの融点以上の温度に加熱し、溶着することで、形成された溶着部に沿って容易に、かつ綺麗にフィルターを切断することができる。
【0095】
また、
図13〜
図17に示す通り、綺麗にかつ容易に切断が可能であったフィルター成形品における溶着部は混合していることで、ほとんど繊維状態が確認できないのに対して、綺麗に切断することができなかったフィルター成形品は、溶着部の大半が繊維状態を維持していることがわかった。
【解決手段】フィルター成形品30aを製造する方法であって、その溶着工程(高音波溶着、熱風式溶着、熱板溶着、インパルス式溶着、コテ式用溶着等)においてフィルター溶着部21を少なくともフィルター材料の融点以上の温度に加熱することにより、フィルターを重ねたフィルター溶着部21を、ずれやほつれ等のない綺麗に切断されたフィルター成形品30aを製造する方法。