(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、着用時には、常にマスクの下部が着用者の顎を押圧又は密着した状態で接触することになる。そのため、長時間の着用に際しては、着用者に対して顔面の締付感や息苦しさを与えてしまう。また、着用時に会話をすると、マスク本体の位置がずれやすいといった問題がある。このため、上記各先行技術は、これらの点において改善の余地がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、着用者の快適性を向上させることができる衛生マスク及び衛生マスク用フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る衛生マスクは、着用者の耳に装着される耳かけ部と、前記耳かけ部の後端部から延在され、前記耳かけ部よりも幅広、且つ、折り畳み不能な1本のバンド状に形成され、弾性復元力により
着用者の頭部を両側から挟持して前記着用者の後頭部に密着して支持される後方支持部と、前記耳かけ部の前端部と連結部を介して連結され、前記耳かけ部の前方側に延在されると共に前記着用者の顎に沿って湾曲されたアーム部と、前記アーム部の先端部に支持され、装着時に前記着用者の呼吸器の前方側に配置されるカバー部と、を備え
、前記アーム部は、前記連結部を介して前記耳かけ部に対して少なくとも上下方向に相対回動可能に連結された基端部と、該基端部と前記先端部とを接続すると共に変形自在なフレキシブルチューブで構成された連結部材を備えており、前記アーム部が前記基端部を中心に回動されることにより、側面視で前記アーム部が前記連結部、前記耳かけ部、前記後方支持部、と重なる位置に配置可能とされ、この状態において、前記連結部材が前記耳かけ部の後端部から前記後方支持部の前端部に跨って配置されるように構成されている。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る衛生マスクでは、フレームを構成する耳かけ部と後方支持部とアーム部を備えている。アーム部は、着用者の顎に沿って湾曲されており、アーム部の先端部にカバー部が支持されている。このカバー部は、装着時に着用者の口や鼻といった呼吸器の前方側に配置される。これにより、着用者の呼吸器から飛散する飛散物の拡散を抑制することができる。
【0010】
ここで、上述したアーム部は、連結部を介して着用者の耳に装着される耳かけ部の前端部に連結されており、耳かけ部の後端部には、該後端部から延在して着用者の後頭部に支持される後方支持部が設けられている。すなわち、アーム部は、耳かけ部と後方支持部を介して着用者の耳と後頭部に支持されている。これにより、アーム部の先端部を着用者の顎と非接触状態にして配置可能となる。その結果、衛生マスクを長時間着用した際に、着用者に与える顔面の締付感や息苦しさが低減される。また、着用者が会話のために口を動かしてもアーム部と口元との干渉を避けることができるため、会話中におけるアーム部及びカバー部の位置ずれを防止できる。このようにして、着用者の快適性を向上させることができる。
また、耳かけ部に対してアーム部を上下方向に回動させることによりアーム部の先端部に設けられたカバー部の位置を上下方向に調整することができる。これにより、着用者ごとに異なる呼吸器の位置に合わせてカバー部の位置を最適に保つことができ、呼吸器から飛散する飛散物の拡散が効果的に抑制される。また、衛生マスクを使用しない時は、アーム部を回動させて耳かけ部及び後方支持部と重ね合わさる位置まで折り畳むことにより、衛生マスクの形態を小型化させることができる。これにより、衛生マスクの収納性を向上させることができる。
また、連結部材の形状を折り曲げて調節することにより、アーム部の基端部に対する先端部の位置を調節することができる。これにより、アーム部の先端部に設けられたカバー部を手で把持して移動させることによりカバー部の位置を容易に調節することができる。従って、例えば、衛生マスクの着用後に不意にカバー部の位置がずれてしまった場合に、顔面や頭部に着用者の手を接触させることなくカバー部の位置を元の位置に戻すことができることから、衛生管理上の安全性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る衛生マスクは、請求項1に記載の構成において、前記耳かけ部は、一対設けられて前記着用者の右側及び左側の耳にそれぞれ装着され、前記後方支持部は一対の前記耳かけ部の前記後端部同士を連結するように架け渡されて前記着用者の前記後頭部に支持され、前記アーム部は、一方の前記耳かけ部における前記前端部と連結部を介して連結されている。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る衛生マスクでは、着用者の耳に装着される耳かけ部が左右一対設けられており、一対の耳かけ部の後端部同士を連結するように後方支持部が掛け渡されている。このため、アーム部が一対の耳かけ部と後方支持部を介して着用者の両耳と後頭部に支持される。その結果、衛生マスクの着用時における安定感が増し、着用者の快適性を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る衛生マスクは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記連結部には、前記着用者の顔面と接する側の面に弾性変形可能なパット部材が配置されている。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る衛生マスクでは、弾性変形可能なパット部材を介して着用者の顔面に連結部が当接する構成となっている。これにより、着用時に耳かけ部と後方支持部から受ける耳の近傍の締付感が、パット部材の弾性変形によって抑制される。これにより、着用者の快適性を向上させることができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る衛生マスクは、請求項1〜
請求項3の何れか1項に記載の構成において、前記連結部によって、前記アーム部が前記耳かけ部に対して少なくとも左右方向に相対回動可能に連結されている。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係る衛生マスクでは、耳かけ部に対してアーム部を左右方向に回動させることによりアーム部の先端部に設けられたカバー部の位置を左右方向に調整することができる。これにより、着用者ごとに異なる呼吸器の位置に合わせてカバー部の位置を最適に保つことができ、呼吸器から飛散する飛散物の拡散が効果的に抑制される。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る衛生マスクは、請求項1〜
請求項4の何れか1項に記載の構成において、前記連結部は、ボールジョイント機構を用いて前記耳かけ部と前記アーム部とを連結している。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係る衛生マスクでは、連結部に設けられたボールジョイント機構によって耳かけ部とアーム部とが連結されている。このため、回転ヒンジ機構を用いて耳かけ部に対してアーム部を回動させる構成と比較して、アーム部の可動域を広げることができる。これにより、カバー部の位置の調整を一層効果的に行うことができる。更に、多軸式の回転ヒンジ機構を用いてアーム部の可動域を広げる構成と比べて連結部の部材点数を少なくすることができ、生産性に優れる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係る衛生マスクは、請求項1〜
請求項5の何れか1項に記載の構成において、前記アーム部の基端部には、前記耳かけ部と前記アーム部の先端部との距離を前後方向に調整可能なアジャスタ機構が設けられている。
【0022】
請求項6に記載の本発明に係る衛生マスクでは、アーム部の基端部に設けられたアジャスタ機構を用いて耳かけ部とアーム部の先端部との距離を前後方向に調整可能とされている。これにより、アーム部の先端部に設けられたカバー部と着用者の呼吸器との距離を調節することができる。その結果、着用者の体格に関わらず、顔面から離間させた状態で呼吸器の前方側にカバー部を展開させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る衛生マスク及び衛生マスク用フレームは、着用者の快適性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1〜
図8を用いて本実施形態に係る衛生マスク10について説明する。なお、以下の説明で特記なく上下、左右の方向を用いる場合は、
図7及び
図8に示すように、衛生マスク10を着用した着用者Pから見た上下、左右を示すものとする。
【0028】
図1〜
図8に示されるように、衛生マスク10は、着用者Pの頭部Hに固定される衛生マスク用フレームとしてのマスク本体部10Aと、着用者Pの口Mや鼻Nなどの呼吸器の前方側に展開可能なカバー部10Bとを備えている。なお、
図2〜
図4では、カバー部10Bを省略して図示している。
【0029】
(耳かけ部)
マスク本体部10Aは、着用者Pの両耳に装着される左右一対の耳かけ部12を備えている。これらの耳かけ部12は、それぞれ樹脂材料で形成されており、側面視で鉤状に湾曲されている。また、耳かけ部12は、着用者Pの耳Eに引っ掛けることで装着可能とされている(
図7参照)。耳かけ部を装着した状態では、耳かけ部12の前端部12Aが着用者Pの耳Eの前方側に配置されている。一方、耳かけ部12の後端部12Bは、着用者Pの後頭部BHに沿って後方側へ延在されている。
【0030】
(後方支持部)
また、マスク本体部10Aは、左右一対の耳かけ部12の後端部を連結するように架け渡された後方支持部14を備えている。この後方支持部14は、樹脂材料で形成されている。また、後方支持部14は、平面視で円弧状に湾曲され、延在方向の両端部が一対の耳かけ部12の後端部12Bにそれぞれ接合されている。
【0031】
本実施形態では、
図4に示されるように、耳かけ部12と後方支持部14が別体で構成されている。耳かけ部12と後方支持部14は、それぞれ別々に成形された後、耳かけ部12の後端部12Bに形成された爪部と後方支持部14の両端部に形成された被嵌合部とが爪嵌合される(いずれも符号省略)。これにより、耳かけ部12の後端部12Bに後方支持部14の延在方向の一端部が結合されている。なお、耳かけ部12と後方支持部14を一体成型の方法で形成してもよい。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、左右一対の耳かけ部12は、着用者Pに装着される前の状態では互いに近接して配置されている。
図8に示されるように、着用者Pは、一対の耳かけ部12を把持しながら互いに離間させ、後方支持部14の両端部を左右に押し広げて弾性変形させる。この状態で、着用者Pは、後方支持部14の内側に後頭部BHを挿入し、耳かけ部12を両耳に引っ掛けることにより衛生マスク10の装着を完了させる。そうすると、後方支持部14は、弾性復元力により着用者Pの後頭部BHに密着する。これにより、後方支持部14は、着用者Pの後頭部BHに安定して支持される。
【0033】
また、本実施形態の後方支持部14は、薄型のバンド状に形成されている。これにより、後頭部BHとの接触面積を増やし、後方支持部14の装着安定性を向上させている。
【0034】
(連結部)
図1〜
図4に示されるように、マスク本体部10Aは、一方の耳かけ部12の前端部12Aに接合された連結部16を備えている。この連結部16は、耳かけ部12の前端部12Aと後述するアーム部30の基端部32とを連結している。なお、他方の耳かけ部12の前端部12Aには、後述するハウジング18とパット部材20のみが設けられている。
【0035】
連結部16は、樹脂材料で形成されている。この連結部16は、略円柱箱状をなすハウジング18と、ハウジング18の内側面(着用者Pの顔面と接する面)18Aに配置されたパット部材20と、ハウジング18の外側面18Bに設けられたボールジョイント機構22を備えている。
【0036】
(パット部材)
パット部材20は、弾性変形可能な弾性材料で構成され、一例として、ウレタン等で形成されたクッション材やゴムによって形成することができる。このパット部材20は、ハウジング18と着用者Pの顔面の間に配置されることで連結部16による顔面の締付感を低減させている。より具体的に説明すると、着用者Pが衛生マスク10を装着した状態では、後方支持部14の弾性復元力に伴って、耳かけ部12の前端部12Aに接合された連結部16が着用者Pの耳Eの近傍を左右両側から押圧する。この際、パット部材20が連結部16のハウジング18と顔面の間で弾性変形することにより、連結部16による顔面の締付感を低減させている。なお、パット部材20をハウジング18の表面よりも摩擦係数の高い材料で構成し、顔面と連結部16の位置ずれを抑制するように構成してもよい。
【0037】
(ボールジョイント機構)
図4に示されるように、ボールジョイント機構22は、ハウジング18の外側面18Bに形成された球体受部24と、アーム部30の後述する基端部32の一端に設けられた球体26を含んでいる。球体受部24は、基端部32の球体26を相対回転可能に保持している。また、球体受部24と球体26との間には、球体受部24側に貼着などによって保持されたゴム材シートでなる図示しないゴムパッドが介在されていて、そのゴムパッドの外表面が球体26の表面に常時重なり合って球体26に対する摺動面24Aを形成している。この摺動面24Aの相手方摺動面は球体26の表面である。なお、本実施形態ではボールジョイント機構22の球体受部24を連結部16のハウジング18に形成し、球体26をアーム部30に形成しているが、これに限らず、球体受部をアーム部に形成し、球体をハウジングに形成してもよい。
【0038】
ボールジョイント機構22によれば、連結部16及び耳かけ部12に対し、アーム部30が球体26を中心に
図7に矢印A1で示す上下方向に回動させることも、矢印A2で示す左右方向に回動させることも可能である。従って、アーム部30は、基端部32の一端が球体受部24の周縁部によって規制される範囲内において、連結部16に対して全方位回転可能に連結されている。
【0039】
(アーム部)
図1に示されるように、アーム部30は、連結部16を介して耳かけ部12の前端部12Aから前方側に延在されている。このアーム部30は、着用者Pの頬から顎Cのラインに沿って湾曲された形状とされており、本実施形態では、アーム部30が略円弧状に形成されている。なお、アーム部30を略L字状に湾曲して形成してもよい。
【0040】
アーム部30は、基端部32と、先端部48とを主たる構成として備えており、基端部32と先端部48が後述する連結部材46によって連結されている。基端部32は、略角筒状に形成された樹脂製の筒部34を備えている。この筒部34は、連結部16から前方側へ着用者Pの頬に沿って長尺に延在している。また、筒部34の延在方向の後端には、上述したボールジョイント機構22を構成する球体26が設けられている。また、筒部34の延在方向の前端側には、アジャスタ機構36が設けられている。
【0041】
(アジャスタ機構)
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、アジャスタ機構36は、筒部34の側面に形成された長孔38と、筒部34の側面に一体形成された弾性片40及び係止片42と、筒部34の内部において、筒部34に対して摺動可能に保持される樹脂製の摺動部44とを備えている。
【0042】
長孔38は、筒部34の延在方向に沿って長尺に形成されている。弾性片40及び係止片42は、筒部34の延在方向の前端に形成されており、筒部34の側面の意匠側と略面一に配置されている。
【0043】
弾性片40は、長孔に沿って延在する細長い板体とされ、長孔38の内側に配置されている。弾性片40の基端部は、筒部34の側面と一体化されている。また、弾性片40の先端部は、筒部34の内側に向かって凸をなす係止凸部40Aが設けられている。
【0044】
係止片42は、弾性片40の先端部の近傍に配置されている。この係止片42は、筒部34の側面に一体形成されると共に、長孔38を短手方向に横断する板片とされている。
【0045】
摺動部44は、長尺な棒状に形成され、前端に連結部材46の後端が固定されている。なお、連結部材46は、一例として、公知のフレキシブルチューブで構成され、所定の外力を加えることで屈曲自在とされている。なお、連結部材46はフレキシブルチューブに限らず、ワイヤー等の金属製の線材でもよい。
【0046】
図6(A)に示されるように、摺動部44には、上述した弾性片40と対向する側面に係止面部45が設けられている。この係止面部45には、弾性片40側に凸をなす凸部45Aが連続して配置されている。また、摺動部44の後端には、フック状に折り曲げられた係止部45Bが形成されている。
【0047】
図4及び
図6(A)に示されるように、弾性片40の係止凸部40Aは、通常、摺動部44の係止面部45に隣接して配置された凸部の間に配置される。この状態では、弾性片40に係止面部45の凸部45Aが係止されて、筒部34に対する摺動部44の摺動が規制されている。一方、所定の引張力を摺動部44に付与した場合、弾性片40は、凸部45Aから入力される押圧力によって弾性変形されて凸部45Aを乗り越えることができる。これにより、摺動部44が筒部34に対して前後方向に摺動可能とされている(
図7の矢印A3参照)。このようにして、基端部32の全長を前後方向に伸縮可能とされ、アーム部30の先端部48と着用者Pの顔面との距離を前後方向に調節可能とされている。なお、
図6(B)に示されるように、摺動部44は、所定の長さ分、筒部34から引き出されると、後端の係止部45Bが筒部34に一体形成された係止片42に突き当たり、これ以上の引出が規制される。これにより、摺動部44が筒部34から脱落しない構成とされている。
【0048】
図5及び
図7に示されるように、アーム部30の先端部48は、樹脂製の長尺な棒体として構成され、延在方向の後端に連結部材46の前端が固定されている。この先端部48は、緩やかに湾曲しながら着用者Pの顔の幅方向(左右方向)に延在している。また、先端部48は、装着時に着用者Pの顎Cと非接触状態で、顎Cの前方側に配置可能とされている。
【0049】
図5に示されるように、先端部48には、着用者Pの顔面と対向する面に、後述するカバー部10Bを着脱可能な取付部50が設けられている。取付部50は、先端部48の両端部に設けられた一対の係合凸部50Aと、一対の係合凸部50Aの間に配置された一対の支持溝部50Bを備えている。係合凸部50Aは、カバー部10Bに係合されており、支持溝部50Bは、カバー部10Bの下端部を支持している。
【0050】
(カバー部)
カバー部10Bは、アーム部30の先端部48の形状に沿って湾曲された板体で構成されている。また、カバー部10Bは、例えば、ポリカーボネート等のプラスチック材料を用いて透明に形成されている。このカバー部10Bは、アーム部30の先端部48に支持されて、先端部48の上方側に配置されている。カバー部10Bは装着時に着用者Pの顔面と離間した状態で、口Mや鼻Nなどの呼吸器の前方側に展開可能とされている。
【0051】
カバー部10Bの下端部には、幅方向(左右方向)の両側に一対の切り込み部60が形成されている。この切り込み部60には、アーム部30の係合凸部50Aと係合可能とされている。カバー部10Bは、下端部の中央部分をアーム部30の支持溝部50Bに挿入した状態で、両側の切り込み部60を係合凸部50Aに押し付けて係合させることによりアーム部30に装着される。このように、カバー部10Bは、簡単な作業でアーム部30の先端部48に着脱可能とされ、カバー部10Bを付け替えることにより、衛生管理上の安全性を保ちつつ、複数人で衛生マスク10を共用することができる構成とされている。
【0052】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0053】
本実施形態に係る衛生マスク10及びマスク本体部10Aは、着用者Pの顎Cに沿って湾曲されるアーム部30を備えており、アーム部30の先端部48にカバー部10Bが支持されている。このカバー部10Bは、装着時に着用者Pの口Mや鼻Nといった呼吸器の前方側に配置される。これにより、着用者Pの呼吸器から飛散する飛散物の拡散を抑制することができる。
【0054】
ここで、上述したアーム部30は、連結部16を介して着用者Pの耳Eに装着される耳かけ部12の前端部12Aに連結されており、耳かけ部12の後端部12Bには、後端部12Bから延在して着用者Pの後頭部BHに支持される後方支持部14が設けられている。すなわち、アーム部30は、耳かけ部12と後方支持部14を介して着用者Pの耳Eと後頭部BHに支持されている。これにより、アーム部30の先端部48を着用者Pの顎Cと非接触状態にして配置させることができる。その結果、衛生マスク10を長時間着用した際に、着用者Pに与える顔面の締付感や息苦しさが低減される。また、着用者Pが会話のために口Mを動かしてもアーム部30と口元とが干渉しないため、会話中におけるアーム部30及びカバー部10Bの位置ずれを防止することができる。このようにして、衛生マスク10の着用時における着用者Pの快適性が向上する。
【0055】
また、本実施形態では、着用者Pの耳Eに装着される耳かけ部12が左右一対設けられており、一対の耳かけ部12の後端部同士を連結するように後方支持部14が掛け渡されている。このため、アーム部30が一対の耳かけ部12と後方支持部14を介して着用者Pの両耳と後頭部BHに支持される。その結果、衛生マスク10の着用時における安定感が増し、着用者Pの快適性を一層向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、弾性変形可能なパット部材20を介して着用者Pの顔面に連結部16が当接する構成となっている。これにより、耳かけ部12と後方支持部14から受ける耳の近傍の締付感が、パット部材20の弾性変形によって抑制される。
【0057】
また、本実施形態では、耳かけ部12とアーム部30がボールジョイント機構22を用いて連結されているため、アーム部30を耳かけ部12に対して上下方向及び左右方向に回動させることができる。これにより、例えば、耳かけ部12に対してアーム部30を上下方向に回動させると、アーム部30の先端部48に設けられたカバー部10Bの位置を上下方向に調整することができる。その結果、着用者Pの呼吸器の位置に合わせてカバー部10Bの位置を呼吸器の前方側の最適な位置に保つことができ、呼吸器から飛散する飛散物の拡散が効果的に抑制される。
【0058】
また、衛生マスクを使用しない時の利便性といった観点では、
図2及び
図3に示されるようにアーム部30を回動させて耳かけ部12及び後方支持部14と重ね合わさる位置まで折り畳むと、衛生マスク10の形態を小型化させることができる。これにより、不使用時は省スペースで衛生マスク10を保管することができるため、衛生マスク10の収納性を向上させることができる。
【0059】
また、例えば、耳かけ部12に対してアーム部30を左右方向に回動させると、アーム部30の先端部48に設けられたカバー部10Bの位置を左右方向に調整することができる。これにより、着用者Pの顔幅に合わせてカバー部10Bを呼吸器の前方側の最適な位置に保つことができる。
【0060】
また、ボールジョイント機構22を用いた連結構造では、例えば、公知の回転ヒンジ機構を用いて耳かけ部12に対してアーム部30を回動させる構成と比較して、アーム部30の可動域を広げることができる。このため、カバー部10Bの位置の微調整も容易に行うことができる。また、多軸式の回転ヒンジ機構を用いてアーム部の可動域を広げる構成と比べて、連結部16の構造が簡易になり、部材点数を少なくすることができる。よって、衛生マスク10の生産性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、アーム部30の基端部32に設けられたアジャスタ機構36を用いて耳かけ部12とアーム部30の先端部48との距離を前後方向に調整可能とされている。これにより、アーム部30の先端部48に設けられたカバー部10Bと着用者Pの呼吸器との距離を調節することができる。その結果、着用者Pの頭部Hの大きさ、ひいては体格の大小に関わらず、顔面から離間させた状態で呼吸器の前方側にカバー部10Bを展開させることができる。よって、本実施形態の衛生マスク10は、体格の大きな着用者から体格の小さな着用者まで好適に利用することができ、汎用性に優れる。
【0062】
また、本実施形態では、連結部材46の形状を折り曲げて調節することにより、アーム部30の基端部32に対する先端部48の位置を調節することができる。これにより、アーム部30の先端部48に設けられたカバー部10Bを手で把持して移動させることにより、カバー部10Bの位置を容易に調節することができる。従って、例えば、衛生マスク10の着用後に不意にカバー部10Bの位置がずれてしまった場合に、顔面や後頭部BHに着用者Pの手を接触させることなくカバー部10Bの位置を元の位置に戻すことができることから、衛生管理上の安全性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、後方支持部14の弾性力を利用して、後方支持部14が着用者の後頭部BHに密着するように構成されている。これにより、着用者Pの後頭部BHによって衛生マスク10が安定して支持される。その結果、衛生マスク10の装着安定性が増し、着用者Pの快適性の向上に寄与する。
【0064】
また、本実施形態では、カバー部10Bがアーム部30に着脱可能に構成されているため、食品を扱う店舗等で複数の従業員が衛生マスク10を使用する場合、カバー部10Bだけを取り換えてマスク本体部10Aを共用にして供することができるため、店舗備品としてのコストを抑えることができる。また、マスク本体部10Aが樹脂材料で構成されているため、衛生マスクを着用者の頭部へ固定するための固定手段が紐部材やコムバンド等で構成される衛生マスクと比較して、耐久性がよく、長期間使用することができる。
[補足説明]
【0065】
上記実施形態では、衛生マスク10が左右一対の耳かけ部12を備え、後方支持部14が一対の耳かけ部12を連結する構成としたが、本発明はこれに限らない。
図9に示す変形例のように、単一の耳かけ部12と、単一の耳かけ部12の後端部12Bから着用者Pの後頭部に沿って密着する後方支持部72を備える衛生マスク70でもよい。この衛生マスク70においても、円弧状に形成された後方支持部14の弾性復元力により単一の耳かけ部12と後方支持部72の先端部に形成された当接部74によって着用者Pの後頭部BHが把持される。これにより、後方支持部72は、単一の耳かけ部12と後方支持部72を介して着用者Pの耳Eと後頭部BHに支持される。なお、
図9に示す衛生マスク70の他の構成は、上記実施形態と同一である。
【0066】
また、上記実施形態では、連結部16がボールジョイント機構22を備える構成としたが、本発明はこれに限らない。連結部に公知の回転ヒンジ機構を設けて耳かけ部に対して上下方向又は左右方向にアーム部を回動可能に連結してもよい。または、回転ヒンジ機構を例えば2軸式の回転ヒンジ機構とし、耳かけ部に対して上下方向及び左右方向にアーム部を回動可能に連結してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、連結部を介して耳かけ部12に対してアーム部30が回動可能に連結される構成としたが、本発明はこれに限らず、連結部は、アーム部の位置が耳かけ部に対して固定される態様で、両者を連結してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、カバー部10Bをアーム部30に対して着脱可能に構成したが、本発明はこれに限らない。カバー部10Bをアーム部30に対して着脱不可能に接合してもよいし、カバー部とアーム部を同一の樹脂材料で一体成形してもよい。
【解決手段】衛生マスク10は、着用者Pの耳Eに装着される耳かけ部12と、耳かけ部12の後端部12Bから延在され、着用者Pの後頭部BHに支持される後方支持部14と、耳かけ部12の前端部12Aと連結部16を介して連結され、耳かけ部12の前方側に延在されると共に着用者Pの顎Cに沿って湾曲されたアーム部30と、を含むマスク本体部10Aを備えている。また、衛生マスク10は、アーム部30の先端部48に支持され、装着時に着用者Pの呼吸器の前方側に配置されるカバー部10Bを備えている。