特許第6792323号(P6792323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許6792323磁石を用いた係合システムの着磁制御方法
<>
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000002
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000003
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000004
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000005
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000006
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000007
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000008
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000009
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000010
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000011
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000012
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000013
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000014
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000015
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000016
  • 特許6792323-磁石を用いた係合システムの着磁制御方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792323
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】磁石を用いた係合システムの着磁制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   H01F13/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-99431(P2015-99431)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-219465(P2016-219465A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年12月15日
【審判番号】不服2019-15615(P2019-15615/J1)
【審判請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英滋
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 石川 亮
【審判官】 山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−146725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石と、前記永久磁石を着磁する励磁コイルと、を備え、
前記励磁コイルに一定電圧を印加することによって発生する磁界によって前記永久磁石の着磁状態を変化させ、前記永久磁石の磁場−磁束密度曲線のクニック点を超えた不可逆減磁領域において、予め求めておいた前記励磁コイルの電流値と前記永久磁石の磁力との関係に応じて前記永久磁石が所望の磁力になる前記励磁コイルの電流値で止めて着磁処理を終了させることを特徴とする着磁制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の着磁制御方法であって、
前記励磁コイルに印加される電圧は、前記励磁コイルから発生する磁界が前記永久磁石の磁場-磁束密度曲線においてメジャーループを描く強度となる基準電圧値以上の電圧値であることを特徴とする着磁制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着磁制御方法であって、
前記永久磁石の着磁時に前記電圧を変更することを特徴とする着磁制御方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の着磁制御方法であって、
前記永久磁石の外周に前記励磁コイルが配置されていることを特徴とする着磁制御方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の着磁制御方法であって、
前記励磁コイルによって発生する磁界の磁路に、前記永久磁石以外の永久磁石又は空隙が配置されていることを特徴とする着磁制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石を用いた係合システムの着磁制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルと永久磁石を備えた永電磁チャックにおいて、最大吸着力が発生した載置面の磁力に対して逆磁力がコイルに発生するように通電方向を交流電流の周期に同期して切り替え、かつ交流電流の周期に同期した所定数のパルス信号に対応する直流電流を流すことにより減磁して所望の吸着力を得る技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つの永久磁石を着磁させて吸引力を得る永電磁チャックでは、吸引力を調整するために永久磁石を適切な磁力に着磁又は減磁させる必要がある。そのため、減磁側と着磁側に交互に磁界を発生させて徐々に磁石を減磁させて永久磁石の磁力を調整する方法を採用している。しかしながら、本方法では、任意の磁力を得るために着磁と減磁を繰り返すので時間が掛かるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、永久磁石と、前記永久磁石を着磁する励磁コイルと、を備え、前記励磁コイルに電圧を印加することによって発生する磁界によって前記永久磁石の着磁状態を変化させ、前記永久磁石の磁場-磁束密度曲線のクニック点を超えた領域において着磁処理を終了させることを特徴とする着磁制御方法である。
【0006】
ここで、前記永久磁石の磁場-磁束密度曲線のクニック点を超えた所望の時間又は所望の電流値において着磁処理を終了させることが好適である。
【0007】
また、前記励磁コイルに印加される電圧は、前記励磁コイルから発生する磁界が前記永久磁石の磁場-磁束密度曲線においてメジャーループを描く強度となる基準電圧値以上の電圧値であることが好適である。
【0008】
また、前記永久磁石の着磁時に前記電圧を変更することが好適である。
【0009】
また、前記永久磁石の外周に前記励磁コイルが配置されていることが好適である。
【0010】
また、前記励磁コイルによって発生する磁界の磁路に、前記永久磁石以外の永久磁石又は空隙が配置されていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間に安定的に着磁状態(吸引力)を調整できる係合システムの着磁制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態における係合システムの基本構成を示す図である。
図2】永久磁石の着磁特性を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における係合システムの作用を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態における着磁制御方法を説明するための磁気回路を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における磁場−磁束密度曲線の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における磁場−磁束密度曲線の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における励磁コイルに流れる電流の時間変化の例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における磁束密度変化の時間変化の例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における着磁制御方法を説明するための磁気回路を示す図である。
図10】本発明の実施の形態における励磁コイルに流れる電流と磁束密度の関係の例を示す図である。
図11】本発明の実施の形態における磁場−磁束密度曲線の例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態における励磁コイルに流れる電流の時間変化の例を示す図である。
図13】本発明の実施の形態における係合システムの吸引力と励磁コイルに流れる電流との関係の例を示す図である。
図14】本発明の実施の形態における励磁コイルに流れる電流の時間変化の例を示す図である。
図15】本発明の実施の形態における磁場−磁束密度曲線の例を示す図である。
図16】本発明の実施の形態における励磁コイルに流れる電流の時間変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<係合システムの基本構成>
本発明の実施の形態における係合システム100は、図1の原理図に示すように、第1永久磁石10、第2永久磁石12、励磁コイル14、第1ヨーク部材16及び第2ヨーク部材18を含んで構成される。
【0014】
第1永久磁石10及び第2永久磁石12は、第1ヨーク部材16の一部を切り欠いた部分に配置され、第1永久磁石10、第2永久磁石12及び第1ヨーク部材16によって磁気的な閉回路が構成される。第1ヨーク部材16は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のN極又はS極とを繋ぎ、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のS極又はN極とを繋ぐように配置される。また、第2ヨーク部材18は、当該閉回路の第1永久磁石10に対して対向して間隙をもって配置される。
【0015】
励磁コイル14は、第2永久磁石12を着磁できるように、第2永久磁石12の磁極方向に向けて磁界が生成されるように第2永久磁石12の周囲に配置される。励磁コイル14に対して電流を流すことによって第2永久磁石12を着磁することができる。励磁コイル14は、生成される磁場ができるだけ漏れることなく第2永久磁石12を貫き、第2永久磁石12が効率的に着磁されるように、第2永久磁石12の外周に巻回されることが好適である。
【0016】
第1永久磁石10及び第2永久磁石12の動作点は、パーミアンス直線(磁石形状や磁気回路等で決定される直線)と減磁曲線との交点で決定される。例えば、図2に示すようなパーミアンス曲線(破線)をもつ磁石の場合、アルニコ磁石(Alnico5)の動作点は点Aとなり、ネオジム磁石の動作点は点Bとなる。すなわち、アルニコ磁石は、ネオジム磁石よりも着磁が容易であるが、ネオジム磁石の1/3程度の磁束密度しか得られない。一方、ネオジム磁石は、アルニコ磁石より着磁が困難であるが、アルニコ磁石よりも強い磁力が得られる。
【0017】
そこで、第1永久磁石10及び第2永久磁石12としてこれらの特性の異なる磁石をそれぞれ用いて、着磁時のみに電力を消費し、係合時及び開放時において電力を消費しない係合システム100を構成する。本実施の形態では、第2永久磁石12は、励磁コイル14へ電流を供給した際に生ずる磁界によって第1永久磁石10よりも着磁され易い磁石、
すなわち低保持力の磁石とする。例えば、第1永久磁石10としてネオジム磁石を用い、第2永久磁石12としてアルニコ磁石を用いることが好適である。
【0018】
図3(a)は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のS極とが第1ヨーク部材16によって接続され、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のN極とが第1ヨーク部材16によって接続されるように励磁コイル14によって第2永久磁石12を着磁した状態を示す。このような状態では、第1永久磁石10と第2永久磁石12とが第1ヨーク部材16によって直列に接続されており、第1ヨーク部材16内に磁束が閉じ込められ、第2ヨーク部材18に対する吸引力が生じない。すなわち、第2ヨーク部材18は第1ヨーク部材16側に吸引されず、係合システム100は開放状態となる。
【0019】
図3(b)は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のN極とが第1ヨーク部材16によって接続され、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のS極とが第1ヨーク部材16によって接続されるように励磁コイル14によって第2永久磁石12を着磁した状態を示す。すなわち、図3(a)に示したような状態から励磁コイル14によって発生する磁界を用いて第2永久磁石12の極性が逆転するように着磁状態を変化させた状態を示している。このような状態では、第1永久磁石10と第2永久磁石12とが第1ヨーク部材16によって並列に接続されており、第1ヨーク部材16から第2ヨーク部材18へと磁束が通り、第1ヨーク部材16と第2ヨーク部材18との間に吸引力が生じる。すなわち、第2ヨーク部材18は第1ヨーク部材16側に吸引され、係合システム100は非接触の係合状態となる。
【0020】
このように、第1永久磁石10と第2永久磁石12との着磁特性の差を利用して、励磁コイル14に電流を流すことによって生ずる外部磁界を用いて第2永久磁石12の極性のみを反転させることで係合システム100の開放状態と係合状態とを切り替えることができる。第2永久磁石12を一旦着磁すればその状態が保持されるので、励磁コイル14には着磁時のみに電力を供給すればよい。すなわち、開放状態と係合状態を保持するために電力を消費しないので省電力の係合システム100を実現することができる。
【0021】
<着磁制御方法>
まず、図4に示すように、第1永久磁石10を設けず、第2永久磁石12の両端をヨーク部材20にて接続した磁気回路における第2永久磁石12の着磁制御方法について説明する。ヨーク部材20は、例えば、電磁鋼板とされる。
【0022】
図5に、励磁コイル14から磁場を発生させて第2永久磁石12を着磁した場合の磁場−磁束密度曲線(ヒステリシス曲線)の例を示す。磁場−磁束密度曲線上の点aの動作点にある磁石に対して磁石の磁化方向と逆向きの外部磁界を与えると動作点は点bに移行する。このとき、外部磁界を除去すると、磁石の磁力が弱まって動作点は点cに移行する。このように、磁場−磁束密度曲線のクニック点Xを超えて外部磁界を印加すると、外部磁界を除去したとして磁石の磁力は元の状態には戻らずに減磁する。また、点aの状態から十分に大きな外部磁界を与えると点dに移行する。このとき、外部磁界を除去すると点eに移行し、磁石は元の磁化方向とは逆の磁化方向に着磁されて、磁石の極性は反転する。
【0023】
図6は、図4の磁気回路において励磁コイル14に一定電圧を印加して、第2永久磁石12の磁化方向と逆方向の磁界を発生させて第2永久磁石12を着磁させたときの第2永久磁石12の磁力(磁束密度)と励磁コイル14により発生する磁界との関係(磁場−磁束密度曲線)を示す。ここで、励磁コイル14に印加される電圧は、磁場−磁束密度曲線がメジャーループを描く基準電圧値以上とすることが好適である。励磁コイル14に流れる電流が大きくなり、励磁コイル14によって発生する磁界が強くなるにつれて第2永久磁石12の動作点は点A→点B(クニック点)→点Cと推移する。
【0024】
このとき、励磁コイル14に流れる電流は、図7に示すような時間的な変化を示す。なお、時刻t0において励磁コイル14に電圧を印加した例を示している。
【0025】
図6の磁場−磁束密度曲線における点Aから点Bまでの領域(可逆減磁領域)にある場合には、励磁コイル14に流れる電流は急激に変化する。一方、図6の磁場−磁束密度曲線におけるクニック点(点B)を超えて、点Bから点Cの領域(不可逆減磁領域)に達すると、励磁コイル14に流れる電流の増加は緩やかになる。これは、不可逆減磁領域では励磁コイル14に逆起電力が生ずるためと推察される。すなわち、図8の第2永久磁石12の時間当りの磁束密度変化に示されるように、点Bから点Cの不可逆減磁領域において第2永久磁石12の磁束密度の変化が大きく、この変化に伴って励磁コイル14に生ずる逆起電力も大きくなっていると考えられる。
【0026】
以上のように、点Bから点Cの不可逆減磁領域では、第2永久磁石12の磁力の変化が大きいが、励磁コイル14に流れる電流の時間変化が緩やかになる。そこで、点Bから点Cの不可逆減磁領域において、励磁コイル14の電流値と第2永久磁石12の磁力との関係を予め求めておき、第2永久磁石12が所望の磁力となる励磁コイル14の電流値で止めて励磁コイル14から発生している磁界を除去することによって、第2永久磁石12を所望の動作点の着磁状態に制御し易い。
【0027】
また、励磁コイル14の電流値の代わりに着磁処理を開始した時刻からの時間によって第2永久磁石12の着磁状態動作点を制御してもよい。すなわち、図7に示すように、励磁コイル14に流れる電流は励磁コイル14に電圧を印加した時刻t0からの時間に応じて一意に決定される。そこで、励磁コイル14に着磁処理を開始した時刻からの時間と第2永久磁石12の磁力との関係を予め求めておき、第2永久磁石12が所望の磁力となる時間で励磁コイル14の電流値で止めて励磁コイル14から発生している磁界を除去することによって、第2永久磁石12を所望の動作点の着磁状態に制御することができる。特に、点Bから点Cの不可逆減磁領域では時間による励磁コイル14に流れる電流の変化が小さいので第2永久磁石12の動作点の制御が容易となる。
【0028】
次に、図9に示すように、ヨーク部材20の一部に空隙20aを設けた構成における着磁制御方法について説明する。
【0029】
図10は、図9の磁気回路において励磁コイル14に一定電圧を印加して、第2永久磁石12の磁化方向と逆方向の磁界を発生させて第2永久磁石12を着磁させたときの第2永久磁石12の磁力(磁束密度)と励磁コイル14に流れる電流との関係(電流−磁束密度曲線)を示す。空隙20aなし(白丸印)、幅0.1mm(黒三角印)、幅0.4mm(白四角印)と空隙20aの幅が広くなるにつれて、励磁コイル14の電流値の変化に対する第2永久磁石12の磁力の変化が緩やかになる。すなわち、励磁コイル14の電流値による励磁コイル14への着磁処理では、着磁のための磁気回路上に空隙20aが存在することによって制御性が向上する。これは、空隙20aの代わりにネオジム磁石等の透磁率が低い物質を配置した場合でも同様である。
【0030】
図11は、係合システム100において第1永久磁石10としてネオジム磁石及び第2永久磁石12としてアルニコ磁石を適用した場合に励磁コイル14に一定電圧を印加したときの磁場−磁束密度曲線を示す。また、図12は、同じ状況における励磁コイル14に流れる電流の時間変化を示す。
【0031】
係合システム100においても、点Aから点Bの可逆減磁領域では励磁コイル14を流れる電流の変化が急激であるが、点Bから点Cの不可逆減磁領域では変化が緩やかになる。したがって、励磁コイル14の電流値又は励磁コイル14に電圧を印加してからの時間のいずれによっても第2永久磁石12の着磁状態を容易に制御することができる。
【0032】
図13は、励磁コイル14の電流値と、その電流値において着磁処理を終了したときの係合システム100の吸引力との関係を示す。図より明らかなように、励磁コイル14の電流値によって係合システム100の吸引力を高い精度で制御することができる。
【0033】
図14は、係合システム100において第2永久磁石12を着磁する際に励磁コイル14に印加する電圧を変化させたときの励磁コイル14に流れる電流の時間変化を示す。励磁コイル14に印加する電圧が高くなるほど、励磁コイル14に流れる電流の時間変化も大きくなる。したがって、第2永久磁石12の着磁速度と着磁制御の安定性(ロバスト性)のバランスの観点から励磁コイル14に印加する電圧を決定することが好適である。例えば、励磁コイル14に印加する電圧は、コイル抵抗に着磁に必要な電流を乗算した値程度とすることが好適である。また、第2永久磁石12の着磁状態に応じて励磁コイル14に印加する電圧を変更してもよい。
【0034】
次に、係合システム100の吸引力を弱める際の第2永久磁石12への着磁制御方法について説明する。図15は、励磁コイル14に一定電圧を印加したときの磁場−磁束密度曲線を示す。また、図16は、同じ状況における励磁コイル14に流れる電流の時間変化を示す。
【0035】
この場合、第1永久磁石10の磁力が第2永久磁石12の磁化方向に対して逆向きに作用するので、係合システム100の吸引力を強める場合に比べて第2永久磁石12の動作点がクニック点に近くなる。点Dから点Eの不可逆減磁領域では、励磁コイル14に流れる電流の時間変化が係合システム100の吸引力を強める場合の点Bから点Cの領域に比べて大きくなる。これは、第1永久磁石10の磁界が励磁コイル14の磁界に重畳して作用するためである。したがって、係合システム100の吸引力を弱めたい場合には吸引力を強めたい場合に比べて励磁コイル14に印加する電圧を小さく設定することが好適である。
【符号の説明】
【0036】
10 第1永久磁石、12 第2永久磁石、14 励磁コイル、16 第1ヨーク部材、18 第2ヨーク部材、20 ヨーク部材、20a 空隙、100 係合システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16