特許第6792331号(P6792331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792331
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-249896(P2015-249896)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-116650(P2017-116650A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−047769(JP,A)
【文献】 特開2015−210456(JP,A)
【文献】 特開2014−186315(JP,A)
【文献】 特開2011−095549(JP,A)
【文献】 特開2006−119263(JP,A)
【文献】 特開平06−003987(JP,A)
【文献】 特開2011−076060(JP,A)
【文献】 特開2002−323819(JP,A)
【文献】 特開2009−251311(JP,A)
【文献】 特開平09−101695(JP,A)
【文献】 特開2014−178520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0247789(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101271308(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成された媒体を一対の回転体により加熱及び圧接して、前記媒体に前記トナー像を定着させる定着装置において、
前記一対の回転体の一方である筒状の定着ベルトと、
前記一対の回転体の他方であり、前記定着ベルトの外周面に対して前記媒体を押圧する加圧ローラと、
前記定着ベルトの内側に配置され、前記定着ベルトの内周面に当接する当接部を有する当接部材と、を備え、
基準面から前記加圧ローラ側に突出する複数の凸形状が前記当接部に形成されており、
前記複数の凸形状は、前記定着ベルトの移動方向に対して直交する幅方向に延びる複数の列を成して配置され、かつ、前記定着ベルトの前記移動方向から見た場合に、前記定着ベルトの前記幅方向に隙間なく配置されている定着装置。
【請求項2】
前記複数の凸形状のうちの1つと前記定着ベルトの前記内周面とが当接する長さは、前記定着ベルトの前記幅方向において、0.55mm以上であり、
前記定着ベルトの前記幅方向における前記複数の凸形状のうちの隣り合う凸形状間のピッチは、1.1mm以上である請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記複数の凸形状は、前記列の各々において、前記定着ベルトの前記幅方向に等間隔に並んで配置され、
前記定着ベルトの前記幅方向における前記複数の凸形状の各凸形状の長さは、前記定着ベルトの前記幅方向における前記複数の凸形状のうちの隣り合う凸形状間の隙間より大きい、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
トナー像が形成された媒体を一対の回転体により加熱及び圧接して、前記媒体に前記トナー像を定着させる定着装置において、
前記一対の回転体の一方である筒状の定着ベルトと、
前記一対の回転体の他方であり、前記定着ベルトの外周面に対して前記媒体を押圧する加圧ローラと、
前記定着ベルトの内側に配置され、前記定着ベルトの内周面に当接する当接部を有する当接部材と、を備え、
基準面から前記加圧ローラ側に突出する複数の凸形状が前記当接部に形成されており、
前記凸形状は、帯状を成し、前記定着ベルトの移動方向と直交する幅方向に延在し、
前記凸形状は、前記幅方向の外側に配置された傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記幅方向の外側に向かうにつれて、前記定着ベルトの前記移動方向の上流側から下流側に位置するように傾斜している定着装置。
【請求項5】
前記複数の凸形状のうちの1つと前記定着ベルトの前記内周面とが当接する長さは、前記定着ベルトの前記移動方向において、0.55mm以上である請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記当接部は、前記基準面と前記定着ベルトの前記内周面との間に潤滑剤を保持するための潤滑剤保持用凸部を含み、
前記潤滑剤保持用凸部は、前記定着ベルトの前記移動方向に延在し、
前記潤滑剤保持用凸部は、前記定着ベルトの前記幅方向の両側にそれぞれ配置されている請求項4または請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記潤滑剤保持用凸部は帯状を成し、
前記潤滑剤保持用凸部は、前記定着ベルトの前記幅方向において、前記媒体に前記トナー像が形成される領域である画像形成領域よりも外側であり、且つ、前記加圧ローラによる荷重を受ける領域であるニップ荷重領域内に形成されている請求項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記当接部は、母材と、前記母材上に形成された表層とを有し、
前記母材は、アルミニウム、ステンレス、液晶ポリマ、ポリフェニレンスルファイドから選択された1つの材料を含み、
前記表層は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂及びこれらの変性体から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記当接部は、少なくともアルミニウムを含む板材から成り、
前記当接部の厚みは、0.2mm以上0.5mm以下であり、
前記当接部の前記複数の凸形状は、プレス加工、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形されている請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記当接部は、少なくともステンレスを含む板材から成り、
前記当接部の厚みは、0.1mm以上0.3mm以下であり、
前記当接部の前記複数の凸形状は、プレス加工、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形されている請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記当接部は、液晶ポリマまたはポリフェニレンスルファイドを含む材料から成り、
前記当接部の前記複数の凸形状は、射出成形、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形されている請求項1〜の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項12】
前記定着装置は、
前記当接部材に対して前記定着ベルトの前記移動方向の上流側に配置され、前記当接部材の前記当接部に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、
前記定着ベルトの前記移動方向の下流側に配置され、前記定着ベルトの前記内周面に当接して前記定着ベルトが回転移動している際の形状を規制すると共に前記定着ベルトの前記内周面に付着して前記当接部材より下流に移動した前記潤滑剤の膜厚を規制する膜厚規制部と、を備える請求項1〜11の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記膜厚規制部は、前記定着ベルトの径方向において外側に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記定着ベルトの径方向において、前記一対の回転体の外周面同士が接触する面に沿って形成されたニップ面よりも、外側に突出しており、
前記定着装置は、前記定着ベルトの前記外周面に付着した前記媒体を分離する分離部材を更に備え、
前記分離部材は、前記一対の回転体によって前記媒体が挟まれるニップ部の出口側に設けられ、
前記突出部は、前記定着ベルトの前記移動方向において、前記当接部材と前記分離部材との間に配置されている請求項12に記載の定着装置。
【請求項14】
前記膜厚規制部は、前記定着ベルトの前記内周面に当接するガイド面を有し、
前記ガイド面は、前記定着ベルトの周方向に沿って湾曲しており、
前記膜厚規制部は、
前記ガイド面の前記定着ベルトの前記移動方向の上流側の端部に形成され、前記定着ベルトの前記内周面に付着する前記潤滑剤を掻き取るエッジ部と、
前記定着ベルトの前記移動方向において、前記当接部材より下流側であり、前記エッジ部より上流側に配置され、前記エッジ部で掻き取られた前記潤滑剤を収容する潤滑剤収容部と
を有し、
前記エッジ部は、前記定着ベルトの前記内周面に接する接線に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記エッジ部の前記定着ベルトの回転中心側の面であり、前記定着ベルトの前記内周面に接する接線に対して傾斜する請求項12に記載の定着装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、給紙部から給紙された媒体は、現像装置で形成されたトナー像を媒体に二次転写する転写部に送られる。転写部でトナー像が媒体に転写された後、定着部(定着装置)において媒体上のトナーが溶融定着される。定着部でトナーが定着された媒体は下流の排紙部から排紙される。
【0003】
特許文献1に記載された画像形成装置の定着装置は、ベルトニップ方式の定着装置であり、ニップ部を形成する一対の部材として、無端状の定着ベルトと、弾性ローラ(加圧ローラ)とを備える。この定着装置は、定着ベルトの内周面側に配置された固定部材を有する。この固定部材は、ニップ部において弾性ローラによる荷重を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−42670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、長期間使用していなかった場合や、停止状態から一定期間経過した後のコールドスタート時において、定着ベルトと固定部材とが密着してしまい、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクが増大する。
【0006】
本発明は、ベルトニップ方式の定着装置において、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トナー像が形成された媒体を一対の回転体により加熱及び圧接して、媒体にトナー像を定着させる定着装置である。この定着装置は、一対の回転体の一方である筒状の定着ベルトと、一対の回転体の他方であり、定着ベルトの外周面に対して媒体を押圧する加圧ローラと、定着ベルトの内側に配置され、定着ベルトの内周面に当接する当接部を有する当接部材と、を備える。基準面から加圧ローラ側に突出する複数の凸形状が、当接部材の当接部に形成されている。
【0008】
この定着装置では、当接部材の当接部において、基準面から突出する複数の凸形状が形成されているので、定着ベルトの内周面と当接部材との接触面積を減らし、装置の停止時において定着ベルトと当接部材とが密着する力を弱めることができる。そのため、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することができる。また、当接部材と定着ベルトとの間に、摺動シートなどの他の部材を配置せずに、定着ベルトが移動する際の抵抗を減少させることができるので、コストの増大を抑えつつ、トルクの増大を抑制することができる。
【0009】
複数の凸形状のうちの1つと定着ベルトの内周面とが当接する長さは、定着ベルトの移動方向と直交する幅方向において、0.55mm以上とすることができる。隣り合う複数の凸形状のピッチは1.1mm以上とすることができる。このような複数の凸形状が形成されていると、定着ベルトと当接部材とが密着する力を好適に弱めることができ、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することができる。また、定着ベルトが駆動されている状態において、加圧ローラによる荷重を均一化することができ、当接部において荷重が掛かりにくい部分の発生を抑制することができる。
【0010】
複数の凸形状は、定着ベルトの移動方向と直交する幅方向に沿って並んで配置されていると共に幅方向と交差する方向に沿って並んで配置されている格子状を成す構成でもよい。複数の凸形状は、定着ベルトの移動方向に少なくとも1つ配置されている。複数の凸形状は、定着ベルトの移動方向から見た場合に、幅方向の全幅に亘って隙間なく配置されている構成でもよい。これにより、定着ベルトと接触しない領域が形成されることが防止される。そのため、当接部材において、加圧ローラによる荷重を均一化することができ、当接部の全長において荷重が掛かりにくい部分の発生を抑制することができる。
【0011】
凸形状は、帯状を成し、定着ベルトの移動方向と直交する幅方向に延在する構成でもよい。複数の凸形状のうちの1つと定着ベルトの内周面とが当接する長さは、定着ベルトの移動方向において、0.55mm以上である構成でもよい。
【0012】
凸形状は、幅方向の外側に配置された傾斜部を有する構成でもよい。傾斜部は、幅方向の外側に向かうにつれて、定着ベルトの移動方向の上流側から下流側に位置するように傾斜している構成でもよい。これにより、定着ベルトの側端部を円滑に移動させることができる。
【0013】
隣り合う複数の凸形状のピッチは、定着ベルトの移動方向において、1.1mm以上とすることができる。
【0014】
当接部は、基準面と定着ベルトの内周面との間に潤滑剤を保持するための潤滑剤保持用凸部を含んでいてもよい。潤滑剤保持用凸部は、定着ベルトの移動方向に延在し、基準面から加圧ローラ側に突出する構成でもよい。潤滑剤保持用凸部は、定着ベルトの移動方向と直交する幅方向の両側にそれぞれ配置されていてもよい。これにより、潤滑剤保持用凸部より外側への潤滑剤の流出を防止することができる。
【0015】
潤滑剤保持用凸部は帯状を成し、潤滑剤保持用凸部は、幅方向において、媒体にトナー像が形成される領域である画像形成領域よりも外側であり、且つ、加圧ローラによる荷重を受ける領域であるニップ荷重領域内に形成されていることが好ましい。潤滑剤保持用凸部が、ニップ荷重領域内に配置されるので、潤滑剤保持用凸部と定着ベルトの内周面とを確実に接触させることができる。また、潤滑剤保持用凸部が、画像形成領域よりも外側に配置されるので、画像形成領域に対応する位置において、潤滑剤を保持することができる。
【0016】
当接部は、母材と、母材上に形成された表層とを有する構成でもよい。母材の少なくとも一部は、アルミニウム、ステンレス、液晶ポリマ、ポリフェニレンスルファイドから選択された1つの材料を含んでいてもよい。表層の少なくとも一部は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂及びこれらの変性体から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。このような場合、装置の停止時において定着ベルトと当接部材とが密着する力を好適に弱めることができる。そのため、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を確実に抑制することができる。
【0017】
当接部は、少なくともアルミニウムを含む板材から成り、当接部の厚みは、0.2mm以上0.5mm以下とすることができる。当接部の複数の凸形状は、プレス加工、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形することができる。
【0018】
当接部は、少なくともステンレスを含む板材から成り、当接部の厚みは、0.1mm以上0.3mm以下とすることができる。当接部の複数の凸形状は、プレス加工、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形することができる。
【0019】
当接部の少なくとも一部は、液晶ポリマまたはポリフェニレンスルファイドを含む材料から成形することができる。当接部の複数の凸形状は、射出成形、または、エッチング加工、または、レーザ加工によって成形することができる。
【0020】
定着装置は、当接部材に対して定着ベルトの移動方向の上流側に配置され、当接部材の当接部に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、定着ベルトの移動方向の下流側に配置され、定着ベルトの内周面に当接して定着ベルトが回転移動している際の形状を規制すると共に定着ベルトの内周面に付着して当接部材より下流に移動した潤滑剤の膜厚を規制する膜厚規制部と、を備える。
【0021】
この定着装置では、定着ベルトの移動方向において、当接部材の上流側に配置された潤滑剤供給部から潤滑剤が供給される。この潤滑剤は、定着ベルトの内周面に付着して定着ベルトと共に移動して、当接部材の当接部に供給される。これにより、当接部材の当接部と定着ベルトの内周面との間に潤滑剤が存在することになり、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することができる。
【0022】
また、この定着装置は、定着ベルトの移動方向の下流側に配置された膜厚規制部を備える構成であるので、定着ベルトの内周面に付着して当接部材より下流に移動した潤滑剤の膜厚が規制される。これにより、膜厚規制部より下流に移動する潤滑剤を減少させることができ、定着ベルトの内側において潤滑剤による汚染を抑制することができる。同様に、定着ベルトと当接部材との摩擦によって生じた摩耗粉が、膜厚規制部によって、下流への移動が抑制される。これにより、膜厚規制部より下流に移動する摩耗粉を減少させることができ、定着ベルトの内側において摩耗粉による汚染を抑制することができる。また、膜厚規制部は、定着ベルトの内周面に当接するので、回転移動する定着ベルトの形状が規制される。これにより、定着ベルトの回転振れが抑制される。その結果、定着ベルトの外周面側に配置された他の部材(例えば、分離部材)に対して、定着ベルトが不意に当たってしまうことが抑制される。なお、回転振れとは、定着ベルトの回転移動の際に発生する定着ベルトの厚み方向における変位である。
【0023】
また、膜厚規制部は、定着ベルトの径方向において外側に突出する突出部を有する構成でもよい。突出部は、定着ベルトの径方向において、一対の回転体の外周面同士が接触する面に沿って形成されたニップ面よりも、外側に突出する。この構成によれば、膜厚規制部は、定着ベルトの径方向において当接部材の当接部よりも外側に配置されている。膜厚規制部は、定着ベルトの内周面に対して、より安定して密着するので、定着ベルトの内周面に付着した潤滑剤及び摩耗粉は、膜厚規制部によって確実に規制される。そのため、定着ベルトの内側において潤滑剤及び摩耗粉による汚染が抑制される。また、膜厚規制部と定着ベルトとの密着が確実に行われるので、定着ベルトの厚み方向における変位が抑制されて、定着ベルトの回転振れが好適に抑制される。また、膜厚規制部は、定着ベルトの径方向において、ニップ面よりも外側に配置されるので、定着ベルトの外周面側に配置された他の部材と定着ベルトとを接近させることができる。
【0024】
定着装置は、定着ベルトの外周面に付着した媒体を分離する分離部材を更に備える構成でもよい。分離部材は、一対の回転体によって媒体が挟まれるニップ部の出口側に設けられている構成でもよい。突出部は、定着ベルトの移動方向において、当接部材と分離部材との間に配置されていてもよい。これにより、分離部材は、突出部と定着ベルトとの接触点より下流に配置される。そのため、突出部を通過して、回転振れが抑制された後の定着ベルトに対して、分離部材を接近させて配置することができる。
【0025】
膜厚規制部は、定着ベルトの内周面に当接するガイド面を有する。ガイド面は、定着ベルトの周方向に沿って湾曲している。これにより、ガイド面を、定着ベルトの内周面に当接させることで、定着ベルトはガイド面に沿って案内されて搬送される。そのため、定着ベルトの形状を安定させて、定着ベルトの回転振れを好適に抑制することができる。
【0026】
膜厚規制部は、ガイド面の定着ベルトの移動方向の上流側の端部に形成され、定着ベルトの内周面に付着する潤滑剤を掻き取るエッジ部と、定着ベルトの移動方向において、当接部材より下流側であり、エッジ部より上流側に配置され、エッジ部で掻き取られた潤滑剤を収容する潤滑剤収容部と、を有する構成でもよい。この構成によれば、ガイド面の端部に形成されたエッジ部により、定着ベルトの内周面に付着する潤滑剤が掻き取られる。エッジ部により掻き取られた潤滑剤は、潤滑剤収容部に収容されて回収される。
【0027】
エッジ部は、定着ベルトの内周面に接する接線に対して傾斜する傾斜面を有する構成でもよい。傾斜面は、エッジ部の定着ベルトの回転中心側の面であり、定着ベルトの内周面に接する接線に対して傾斜する構成でもよい。これにより、定着ベルトの内周面に付着する余剰の潤滑剤は、エッジ部の斜面に沿って移動して定着ベルトの内周面から好適に分離される。
【0028】
定着装置は、定着ベルトの外周面に付着した媒体を分離する分離部材を更に備える構成でもよい。分離部材は、一対の回転体によって媒体が挟まれるニップ部の出口側に設けられている構成でもよい。エッジ部は、定着ベルトの移動方向において、当接部材と分離部材との間に配置されている構成でもよい。これにより、分離部材は、エッジ部と定着ベルトとの接触点より下流に配置される。そのため、エッジ部を通過して、回転振れが抑制された後の定着ベルトに対して、分離部材を接近させて配置することができる。
【0029】
膜厚規制部は、定着ベルトの内周面に当接する不織布を有する構成でもよい。このように膜厚規制部に不織布が設けられていると、定着ベルトの内周面に付着する潤滑剤は、不織布によって拭き取られ、付着量が減少する。
【0030】
定着ベルトは、樹脂製の基材を有し、潤滑剤供給部は、黒色の潤滑剤を供給する構成でもよい。これにより、定着ベルトの内周面に黒色の潤滑剤を塗り付けることができ、定着ベルトの内周面側に配置された熱源からの輻射熱を効率良く吸収することができる。そのため、定着ベルトは効率良く加熱される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ベルトニップ方式の定着装置において、定着ベルトの駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
図2】ベルトニップ方式の定着装置を示す断面図である。
図3】定着ニップ部を拡大して示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る当接部材の当接部を拡大して示す斜視図である。
図5】当接部の凸形状を拡大して示す平面図である。
図6】第2実施形態に係る当接部材の当接部を拡大して示す斜視図である。
図7】当接部の凸形状を拡大して示す平面図である。
図8】定着ベルトの駆動開始時のトルクを示すグラフである。
図9】第3実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
図10】変形例に係る膜厚規制部を拡大して示す断面図である。
図11】第4実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
図12】膜厚規制部材のエッジ部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
第1実施形態に係る画像形成装置1は、マゼンダ、イエロー、シアン、ブラックの各色を用いてカラー画像を形成する装置である。図1に示されるように、画像形成装置1は、媒体Pを搬送する媒体搬送ユニット10と、静電潜像を現像する現像装置20と、トナー像を媒体Pに二次転写する転写ユニット30と、周面に画像が形成される静電潜像担持体である感光体ドラム40と、トナー像を媒体Pに定着させる定着装置50と、を備えている。
【0035】
媒体搬送ユニット10は、画像が形成される記録媒体としての媒体Pを収容すると共に、媒体Pを搬送経路R1上に搬送する。媒体Pは、カセットKに積層されて収容される。媒体搬送ユニット10は、媒体Pに転写されるトナー像が二次転写領域R2に到達するタイミングで、媒体Pを搬送経路R1を介して二次転写領域R2に到達させる。
【0036】
現像装置20は、各色ごとに4個設けられている。各現像装置20は、トナーを感光体ドラム40に担持させる現像ローラ21を備えている。現像装置20では、トナーとキャリアとが混合撹拌されて十分に帯電された後、トナーとキャリアとの混合によって生成される現像剤を現像ローラ21に担持させる。そして、現像ローラ21の回転により現像剤が感光体ドラム40と対向する領域まで搬送されると、現像ローラ21に担持された現像剤のうちのトナーが感光体ドラム40の周面上に形成された静電潜像に移動し、静電潜像が現像される。
【0037】
転写ユニット30は、現像装置20で形成されたトナー像を媒体Pに二次転写する二次転写領域R2に搬送する。転写ユニット30は、転写ベルト31と、転写ベルト31を懸架する懸架ローラ31a,31b,31c,31dと、感光体ドラム40と共に転写ベルト31を挟持する一次転写ローラ32と、懸架ローラ31dと共に転写ベルト31を挟持する二次転写ローラ33と、を備えている。
【0038】
転写ベルト31は、懸架ローラ31a,31b,31c,31dにより循環移動する無端状のベルトである。一次転写ローラ32は、転写ベルト31の内周側から感光体ドラム40を押圧するように設けられる。二次転写ローラ33は、転写ベルト31の外周側から懸架ローラ31dを押圧するように設けられる。
【0039】
感光体ドラム40は、色ごとに4個設けられている。各感光体ドラム40は、転写ベルト31の移動方向に沿って設けられている。感光体ドラム40の周上には、現像装置20と、帯電ローラ41と、露光ユニット42と、クリーニングユニット43と、が設けられている。
【0040】
帯電ローラ41は、感光体ドラム40の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光ユニット42は、帯電ローラ41によって帯電した感光体ドラム40の表面を、媒体Pに形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体ドラム40の表面のうち露光ユニット42により露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。4個の現像装置20は、それぞれの現像装置20に対向して設けられたトナータンク22から供給されたトナーによって感光体ドラム40に形成された静電潜像を現像し、トナー像を生成する。各トナータンク22内には、それぞれ、マゼンダ、イエロー、シアン及びブラックのトナーが充填されている。クリーニングユニット43は、感光体ドラム40上に形成されたトナー像が転写ベルト31に一次転写された後に感光体ドラム40上に残存するトナーを回収する。
【0041】
定着装置50は、転写ベルト31から媒体Pへ二次転写されたトナー像を媒体Pに定着させる。定着装置50は、媒体Pを加熱する定着ベルト51と、定着ベルト51を押圧する加圧ローラ(弾性ローラ)52とを備えている。定着ベルト51及び加圧ローラ52は円筒状に形成されている。定着ベルト51と加圧ローラ52との間には接触領域である定着ニップ部53が形成され、定着ニップ部53に媒体Pを例えば搬送方向に通過させることにより、トナー像を媒体Pに溶融定着させる。
【0042】
また、画像形成装置1には、定着装置50によりトナー像が定着された媒体Pを装置外部へ排出するための排出ローラ71及び72が設けられている。
【0043】
次に、画像形成装置1の動作について説明する。画像形成装置1に被記録画像の画像信号が入力されると、画像形成装置1の制御部は、受信した画像信号に基づいて、帯電ローラ41により感光体ドラム40の表面を所定の電位に均一に帯電させる。その後、露光ユニット42により感光体ドラム40の表面にレーザ光を照射して静電潜像を形成する。
【0044】
一方、現像装置20では静電潜像が現像されてトナー像が形成される。こうして形成されたトナー像は、感光体ドラム40と転写ベルト31とが対向する領域において、感光体ドラム40から転写ベルト31へ一次転写される。転写ベルト31には、4個の感光体ドラム40上に形成されたトナー像が順次積層されて、1つの積層トナー像が形成される。そして、積層トナー像は、懸架ローラ31dと二次転写ローラ33とが対向する二次転写領域R2において、媒体搬送ユニット10から搬送された媒体Pに二次転写される。
【0045】
積層トナー像が二次転写された媒体Pは、定着装置50へ搬送される。媒体Pを定着ベルト51と加圧ローラ52との間で熱及び圧力を加えながら通過させることにより、積層トナー像を媒体Pへ溶融定着させる。その後、媒体Pは、排出ローラ71及び72によって画像形成装置1の外部へ排出される。
【0046】
ここで、定着装置50についてより詳細に説明する。
【0047】
図2に示されるように、定着装置50は、定着ベルト51、加圧ローラ52、当接部材(固定部材)54及び加熱源(ヒータ)55を備えている。また、定着装置50は、定着ベルト51の外周面51aに付着している媒体Pを定着ベルト51から分離する分離部材56を有する。分離部材56は、媒体Pの搬送経路R3において、定着ニップ部53の下流に配置されている。
【0048】
定着ニップ部53は、図2及び図3に示されるように、定着ベルト51と加圧ローラ52とによって媒体Pが挟持される部分である。定着ニップ部53は、定着ベルト51の外周面51aと加圧ローラ52の外周面52aとが最も接近する部分(接触する部分)を含む。定着ニップ部53における内部圧力は、一般的に、0.049MPa以上、0.196MPa以下(0.5kgf/cm以上、2.0kgf/cm以上)である。定着ニップ部53における内部圧力とは、定着ベルト51と加圧ローラ52とによって挟持された媒体Pが受ける圧力である。
【0049】
定着ベルト51は、可撓性を有する筒状の回転体であり、例えば金属により形成されている。この定着ベルト51に使用される金属材料としては、例えばステンレスなどが挙げられる。また、定着ベルト51は、例えば樹脂によって形成してもよい。
【0050】
定着ベルト51は、図3に示されるように、複数種類の材料が積層されて形成されている。定着ベルト51は、基材57と、基材57上に積層された弾性層58と、弾性層58上に積層された表層59とを有する。基材57は、例えばステンレス、ニッケル等の金属材料により形成されている。また、基材57は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂により形成されていてもよい。
【0051】
弾性層58は例えばゴムにより形成されている。表層59は、フッ素樹脂から形成されている。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、及びこれらの変性体から選択される少なくとも1種である。基材57の厚さは、例えば20μm以上、120μm以下であり、弾性層58の厚さは、例えば100μm、400μm以下であり、表層59の厚さは、例えば10μm以上、50μm以下である。
【0052】
加圧ローラ52は、弾性を有する筒状の回転体であり、例えばゴム(弾性体)により形成されている。加圧ローラ52は、弾性体から成る弾性層61と、この弾性層61上に形成された表層62を有する。また、加圧ローラ52の内部には回転軸60が挿通されている。
【0053】
当接部材54は、定着ベルト51の内側に配置されて、加圧ローラ52による押圧荷重を受けるものである。当接部材54は例えばバネ部材(不図示)によって加圧ローラ52側に付勢されている。なお、加圧ローラ52が当接部材54側に付勢されている構成でもよい。また、加圧ローラ52が当接部材54側に付勢されていると共に、当接部材54が加圧ローラ52側に付勢される構成でもよい。
【0054】
当接部材54は、筒状の定着ベルト51の軸線方向に延在し、当該軸線方向に貫通する構造体63と、当該構造体63に固定された支持体64と、当該支持体64に支持された固定摺動部材65と、を備える。
【0055】
これらの構造体63、支持体64及び固定摺動部材65の長手方向に直交する断面は、例えばコ字状を成している。構造体63は、媒体Pの搬送方向(R3)に対向する一対の側壁63aと、この一対の側壁63aの加圧ローラ52側の端部同士を連結する本体部63bとを有する。構造体63の本体部63bは板状を成し、本体部63bの板厚方向は、定着ベルト51の回転中心O51と、加圧ローラ52の回転中心O52とを結ぶ直線L1が延在する方向に沿って配置されていてもよい。
【0056】
支持体64は、媒体Pの搬送方向に対向する一対の側壁64aと、この一対の側壁64aの加圧ローラ52側の端部同士を連結する本体部64bとを有する。支持体64の本体部64bは板状を成し、本体部64bの板厚方向は、直線L1が延在する方向に沿って配置されている。支持体64は、構造体63に対して装着され、構造体63の加圧ローラ52側を覆うように配置されている。支持体64の本体部64bは、構造体63の本体部63bを覆い、支持体64の一対の側壁64aは、構造体63の一対の側壁63aをそれぞれ覆っている。
【0057】
固定摺動部材65は、媒体Pの搬送方向に対向する一対の側壁65aと、この一対の側壁65aの加圧ローラ52側の端部同士を連結する本体部(当接部)65bとを有する。固定摺動部材65の本体部65bは板状を成し、本体部65bの板厚方向は、直線L1が延在する方向に沿って配置されている。固定摺動部材65は、支持体64に対して装着され、支持体64の加圧ローラ52側を覆うように配置されている。固定摺動部材65の本体部65bは、支持体64の本体部64bを覆い、固定摺動部材65の一対の側壁65aは、支持体64の一対の側壁64aをそれぞれ覆っている。
【0058】
固定摺動部材65は、母材と母材上に形成された表層とを有する。固定摺動部材65の母材は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料によって形成されている。また、固定摺動部材65は、液晶ポリマ(LCP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等の耐熱性を有する樹脂によって形成されていてもよい。
【0059】
また、固定摺動部材65の本体部65bの表面(表層)には、フッ素樹脂が塗布されている。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、及びこれらの変性体から選択される少なくとも1種である。
【0060】
当接部材54の固定摺動部材65の本体部65bは、図3に示されるように、定着ベルト51の内周面51bに当接する当接部である。加圧ローラ52は、図示しない駆動モータによる動力が伝達されて軸周りに回転する。加圧ローラ52の外周面52aは、定着ニップ部53において、定着ベルト51の外周面51aと接触している。定着ベルト51は、加圧ローラ52による回転力が伝達されて軸周りに回転する。
【0061】
定着ニップ部53において、定着ベルト51は加圧ローラ52による押圧荷重を受けて、固定摺動部材65の本体部65bに当接して摺動する。定着ベルト51は、定着ニップ部53において、固定摺動部材65の本体部65bに沿う平面を形成する。定着ニップ部53において、定着ベルト51の移動方向Yは、媒体Pの搬送方向(R3)と一致している。定着ニップ部53のニップ面Nは、定着ベルト51と加圧ローラ52とに挟まれた仮想の面である。
【0062】
ここで、固定摺動部材65の本体部65bには、図3図4及び図5(a)に示されるように、基準面66から加圧ローラ52側に突出する複数の凸形状67が形成されている。基準面66は、本体部65bにおいて加圧ローラ52側の面であり、例えば直線L1と直交する面である。複数の凸形状67は、平面視において、例えば矩形状を成している。複数の凸形状67は、例えば、同一の寸法及び同一の形状となっている。
【0063】
凸形状67において、移動方向Yに直交する幅方向Xに沿う長さLX67は、例えば0.55mm以上である。また、幅方向Xに隣り合う凸形状67同士のピッチ(配置間隔)P67は、例えば1.1mm以上である。
【0064】
また、複数の凸形状67は、幅方向Xに等間隔に並んで配置されて列(第1の列X1、第2の列X2)を成している。幅方向Xに列を成す複数の凸形状67は、Y方向に等間隔で配置されている。例えば、第2の列X2の凸形状67は、第1の列X1の複数の凸形状67間の隙間を埋めるように配置されている。凸形状67の長さLX67は、凸形状67間の隙間D67より大きい。
【0065】
複数の凸形状67は、定着ベルト51の移動方向Yに少なくとも1つ配置されている。複数の凸形状67は、定着ベルト51の移動方向Yから見た場合に、幅方向Xの全幅に亘って隙間なく配置されている。すなわち、媒体Pの搬送方向において本体部65bの全長に亘って、定着ベルト51と接触しない領域が形成されることが防止される。そのため、固定摺動部材65において、加圧ローラ52による荷重を均一化することができ定着ニップ部53内において荷重が掛からない部分の発生を抑制することができる。
【0066】
複数の凸形状67の高さH67は、例えば、5μm以上30μm以下である。複数の凸形状67の高さH67は、基準面66から凸形状67の頂部の平面までの高さの差である。
【0067】
複数の凸形状67を有する固定摺動部材65が金属材料から形成されている場合には、例えば、プレス加工、エッチング加工、またはレーザ加工によって、複数の凸形状67を成形することができる。また、複数の凸形状67を有する固定摺動部材65が樹脂材料から形成されている場合には、例えば、射出成形、エッチング加工、またはレーザ加工によって、複数の凸形状67を成形することができる。化学薬品の作用によって物質の表面を腐食させてエッチング加工を行うことで、当接部の表面にシボ加工を行い、凸形状67を成形することができる。また、エッチング加工を行って、当接部の表面に幾何学模様を成形して複数の凸形状67を成形することができる。
【0068】
また、レーザ加工によって複数の凸形状67を成形する場合には、複数の方向からレーザを照射するレーザ彫刻機を使用することができる。これにより、複雑な形状の複数の凸形状67を成形することができる。
【0069】
また、固定摺動部材65の母材がアルミニウムの板材から形成されている場合、母材の厚みが例えば0.2mm以上0.5mm以下であると、プレス加工時のスプリングバックの影響を抑制することができる。これにより、複数の凸形状67を鮮明に成形することができる。
【0070】
また、固定摺動部材65の母材がステンレスの板材から形成されている場合、母材の厚みが例えば0.1mm以上0.3mm以下であると、プレス加工時のスプリングバックの影響を抑制することができる。これにより、複数の凸形状67を鮮明に成形することができる。
【0071】
このような定着装置50では、固定摺動部材65の本体部65bである当接部において、基準面66から突出する複数の凸形状67が形成されているので、定着ベルト51の内周面51bと固定摺動部材65の本体部65bとの接触面積を減らすことができる。これにより、定着ベルト51の駆動開始時におけるトルクの増大が抑制される。また、固定摺動部材65と定着ベルト51との間の摩擦が低減されるので、定着ベルト51を駆動する際のエネルギの消費を抑えることができる。また、固定摺動部材65と定着ベルト51の内周面51bとの間に、摺動シートなどの他の部材を配置せずに、摺動抵抗を減少させることができる。そのため、装置の構造の簡素化を図り、コストの増大を抑えつつ、定着ベルト51の駆動開始時におけるトルクの増大を抑制することができる。
【0072】
また、固定摺動部材65の本体部65bにおいて、基準面66から突出する複数の凸形状67が形成されているので、複数の凸形状67の周囲の基準面(非接触部)66上に潤滑剤を保持させることができる。これにより、定着ベルト51の摺動が好適に行われ、定着ベルト51の経年劣化を防止して、定着装置50の品質を長期にわたり維持することができる。
【0073】
また、固定摺動部材65の1つの凸形状67において、定着ベルト51の内周面51bと当接する長さは、幅方向Xにおいて、0.55mm以上となっている。また、隣り合う複数の凸形状67のピッチP67は1.1mm以上となっている。この定着装置50では、上記のような複数の凸形状67が形成されているので、定着ベルト51と固定摺動部材65との密着力が好適に弱められ、定着ベルト51の駆動開始時におけるトルクの増大が抑制される。また、この固定摺動部材65では、定着ベルト51が駆動されている状態において、加圧ローラ52による荷重を均一化することができ定着ニップ部53内において荷重が掛からない部分の発生を抑制することができる。なお、複数の凸形状67を有する構成では、定着ニップ部53における内部圧力は、0.098Mpa以下となっている。
【0074】
次に、図5(b)を参照して、凸形状の第1の変形例について説明する。凸形状は、矩形状に限定されず、平面視において、ひし形を成す凸形状68でもよい。
【0075】
ひし形の凸形状68の2つの対角線のうち、長い方の対角線L2は、例えば移動方向Yに沿うように配置されている、凸形状68の2つの対角線のうち、短い方の対角線L3は、例えば、幅方向Xに配置されている。
【0076】
凸形状68において、移動方向Yに直交する幅方向Xに沿う長さLX68は、例えば0.55mm以上である。また、幅方向Xに隣り合う凸形状68同士のピッチP68は、例えば1.1mm以上である。そして、凸形状68の長さLX68は、凸形状68間の隙間D68よりも大きい。
【0077】
次に、図5(c)を参照して、凸形状の第2の変形例について説明する。第2の変形例に係る凸形状69は、平面視において円形を成す凸形状でもよい。
【0078】
複数の凸形状69は、幅方向(第1の方向)Xに並んで列を成し、この幅方向Xに沿って列を成す複数の凸形状69は、移動方向(第2の方向)Yに複数列配置されている。また、幅方向Xに隣り合う列の複数の凸形状69は、幅方向Xにおいて異なる位置に配置されている。複数の凸形状69は、格子状に配置されている。なお、凸形状69が列を成す方向は、幅方向X及び移動方向Yに限定されず、その他の方向でもよい。また、格子状を形成する第1の方向及び第2に方向は、直交する方向でもよく、所定の角度で傾斜するように交差する方向でもよい。
【0079】
凸形状69の直径LX69は、例えば0.55mm以上である。また、幅方向Xに隣り合う凸形状69同士のピッチP69は、例えば1.1mm以上である。そして、凸形状69の直径LX69は、凸形状69間の隙間D69よりも大きい。
【0080】
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る当接部材の固定摺動部材の凸形状について説明する。第2実施形態の固定摺動部材81の本体部(当接部)81bには、複数の凸形状として、帯状の凸形状82,83が形成されている。凸形状82は、幅方向Xに延在して、移動方向Yに離間して複数配置されている。また、凸形状83は、幅方向Xの両側で、移動方向Yに沿って延在している。
【0081】
凸形状83は、幅方向Xにおいて、凸形状82の外側に配置されている。定着装置50では、固定摺動部材81の本体部81bと定着ベルト51の内周面51bとの間に潤滑剤が保持されている。凸形状83は、固定摺動部材81の本体部81bと定着ベルト51の内周面51bとの間に存在する潤滑剤を保持するための潤滑剤保持用凸部として機能する。この凸形状83は、幅方向Xにおいて、媒体Pの画像形成領域よりも外側であり、且つ、加圧ローラ52による荷重を受けるニップ荷重領域より内側に配置されている。媒体Pの画像形成領域とは、媒体Pにおいてトナー像が形成されている領域である。ニップ荷重領域とは、定着ベルト51と加圧ローラ52とが接触している領域である。
【0082】
凸形状82の幅LY82は、例えば0.55mm以上である。また、移動方向Yに隣り合う凸形状82同士のピッチP82は、例えば1.1mm以上である。凸形状83の幅は、例えば、凸形状82の幅LY82以上である。
【0083】
このように、幅方向Xの両側に帯状の凸形状82が形成されていると、固定摺動部材65の本体部65bと定着ベルト51の内周面51bとの間の潤滑剤の幅方向Xにおける移動が制限される。これにより、定着ニップ部53において、潤滑剤の幅方向Xの外側からの漏れが防止される。
【0084】
次に、図7を参照して帯状の凸形状の変形例について説明する。図7(a)〜図7(c)に示される帯状の凸形状85〜87は、図6に示された帯状の凸形状82の変形例(第3の変形例〜第5の変形例)である。図7では、帯状の凸形状85〜87のうち、長手方向の中央部から一方の端部までを図示している。
【0085】
図7(a)に示されるように、第3の変形例に係る帯状の凸形状85は、媒体Pの幅方向Xに延在する直線に対して所定の傾斜角度で傾斜している。帯状の凸形状85は、移動方向Yに対して直交していない。帯状の凸形状85は、長手方向の全長に亘って傾斜している。また、帯状の凸形状85の傾斜角は、長手方向の位置に応じて一定でもよく、異なっていてもよい。
【0086】
図7(b)に示されるように、第4の変形例に係る帯状の凸形状86は、長手方向において中央部86a及び端部86bを有する。中央部86aは、凸形状86の長手方向において、例えば全長の1/3程度の長さを有する。中央部86aは、移動方向Yに対して直交している。端部86bは、中央部86aの両側で、中央部86aに対して傾斜する傾斜部である。端部86bは、中央部86a側の部分が移動方向Yの上流に配置され、長手方向の外側の部分が移動方向Yの下流に配置されている。また、端部86bと中央部86aとが交差する角度は、例えば5(deg)以上、30(deg)以下程度である。
【0087】
また、帯状の凸形状は、長手方向の中央の部分において、移動方向Yに直交する部分を備えず、中央から両端部に亘って傾斜していてもよい。例えば、長手方向の中央を頂点としてV字状に配置されていてもよい。この場合においても、中央側が移動方向Yの上流に配置され、長手方向の外側が移動方向Yの下流に配置されている。
【0088】
また、帯状の凸形状は、長手方向の中央の部分において、移動方向Yに直交する部分を備え、その両側において、長手方向の外側に向かうほど移動方向Yの下流側に配置されるように湾曲する形状でもよい。
【0089】
図7(c)に示されるように、第5の変形例に係る帯状の凸形状87は、波形を成すように湾曲していてもよい。凸形状87は複数の湾曲部を有し、互いに反対側に湾曲する湾曲部が、幅方向Xにおいて交互に配置されている。この場合においても、長手方向の両端部は、外側に向かうほど移動方向Yの下流に配置されている。
【0090】
次に、図8を参照して、定着ベルトの駆動開始時のトルクについて説明する。図8は、定着ベルト51の駆動開始時のトルクを示すグラフである。図8では、横軸に定着ニップ部における負荷(N)を示し、縦軸に定着ベルト51の駆動開始時のトルク(N・m)を示している。
【0091】
実施例1として、図4に示されるように矩形の複数の凸形状67が形成された固定摺動部材65を備える定着装置を用いた。比較例1として、凹凸形状が形成されておらず、平面を有する固定摺動部材を備える定着装置を用いた。実施例1及び比較例1では、凸形状の有無以外は同一である。そして、定着ベルト51の駆動開始時におけるトルクの最大値を測定してグラフ化した。
【0092】
実施例1及び比較例1において、定着ニップ部53における負荷を変えて、複数回測定を行った。図8では、実施例1における測定結果は、グラフG1で示され、比較例1における測定結果は、グラフG2で示されている。例えば、負荷300(N)程度において、実施例1のトルクは、比較例1のトルクに対して30%以上低減されていることが分かった。
【0093】
次に図9を参照して、第3実施形態に係る定着装置90について説明する。図9に示される定着装置90は、図1の画像形成装置1において、定着装置50の代わりに使用することができる。第3実施形態の定着装置90の説明において、上記の第1及び第2実施形態と同様の説明は省略する。
【0094】
定着装置90は、定着ベルト51、加圧ローラ52、当接部材54及び加熱源(ヒータ)55を備えている。また、定着装置90は、定着ベルト51の外周面51aに付着している媒体Pを定着ベルト51から分離する分離部材56を有する。分離部材56は、媒体Pの搬送経路R3において、定着ニップ部53の下流に配置されている。
【0095】
当接部材54は、定着ベルト51の内側に配置されて、加圧ローラ52による押圧荷重を受けるものである。当接部材54は、筒状の定着ベルト51の軸線方向に延在し、当該軸線方向に貫通する構造体63と、当該構造体63に固定された支持体64と、当該支持体64に支持された固定摺動部材65と、を備える。固定摺動部材65は複数の凸形状67を有する。
【0096】
また、定着装置90は、当接部材54の外面を覆う反射板92を備えている。反射板92は、定着ベルト51の軸線方向に延在し、長手方向に直交する断面は、コ字状を成している。反射板92は、媒体Pの搬送方向に対向する一対の側壁92aと、この一対の側壁92a同士を連結する連結部92bと、を備えている。図9に示される断面において、一対の側壁92aの端部同士(具体的には加熱源側の端部同士)は、連結部92bによって連結されている。
【0097】
一対の側壁92aは、固定摺動部材65の一対の側壁65aを覆うように、一対の側壁65aに対して装着されている。反射板92は、加熱源55からの輻射熱を定着ベルト51の内周面51bに向けて反射する。また、定着ベルト51の内周面51bからの輻射熱を当該定着ベルト51の内周面51bに向けて反射させる。
【0098】
また、定着装置90は、固定摺動部材65の当接部における定着ベルト51の移動方向Yにおいて、当接部である本体部65bの上流側に配置された潤滑剤供給部93と、本体部65bの下流側に配置された膜厚規制部94と、を備える。
【0099】
潤滑剤供給部93は、例えば、定着ベルト51の移動方向Yにおいて、固定摺動部材65の本体部65bの上流側の端部に配置され、固定摺動部材65に対して取り付けられている。潤滑剤供給部93は、定着ベルト51の軸線方向において、定着ベルト51の幅に対応した長さを有する。潤滑剤供給部93の内部には潤滑剤が充填されており、潤滑剤供給部93の外面に浸み出した潤滑剤が定着ベルト51の内周面51bに塗布される。そして、内周面51bに付着した潤滑剤は、定着ベルト51の移動に伴って移動して、本体部63bと内周面51bとの間に供給される。
【0100】
膜厚規制部94は、例えば、定着ベルト51の移動方向Yにおいて、固定摺動部材65の本体部65bの下流側の端部に配置され、支持体64に対して取り付けられている。膜厚規制部94は、定着ベルト51の軸線方向において、定着ベルト51の幅に対応した長さを有する。
【0101】
また、膜厚規制部94は、定着ベルト51の内周面51bに当接して定着ベルト51が回転移動している際の形状を規制する。膜厚規制部94は定着ベルト51の径方向外側に張り出し、内周面51bに対して押し当てられている。また、膜厚規制部94は、本体部65bより下流に移動した潤滑剤の膜厚を規制する。すなわち、定着ベルト51の内周面51bに付着する潤滑剤は、膜厚規制部94により下流側への移動が抑制される。
【0102】
膜厚規制部94は、不織布により形成されている。不織布は、例えば耐熱性繊維から構成されている。不織布の耐熱性能としては、例えば、300℃以上の耐熱性能を有していることが好ましい。また、不織布は、耐熱性と共に難燃性を有し、例えば、燃焼性UL94の規格においてV0以上であることが好ましい。また、不織布の厚さは、例えば0.8mm以上、4.5mm以下である。また、不織布の目付は、例えば200g/m以上である。また、不織布として、耐熱性繊維であるアラミド繊維を用いることができる。
【0103】
膜厚規制部94は、例えば、棒状の部材に不織布が巻き付けられた構成でもよい。また、膜厚規制部94は、複数枚の不織布が積層されている構成でもよい。また、膜厚規制部94は、樹脂などその他の部材により形成されたものでもよい。
【0104】
この定着装置90では、固定摺動部材65の上流から潤滑剤が供給されて、固定摺動部材65の本体部65bと定着ベルト51の内周面51bとの間に潤滑剤が存在することになる。これにより、固定摺動部材65の本体部65bと定着ベルト51の内周面51bとの間の摩擦抵抗を減らすことができ、定着ベルト51のトルクの増大を抑制することができる。定着装置90では、駆動開始時及び駆動中におけるトルクを低減することができる。
【0105】
この定着装置90では、固定摺動部材65の本体部65bと定着ベルト51の内周面51bとの間に潤滑剤が存在するので、潤滑剤がない場合と比較して、固定摺動部材65と定着ベルト51との摩擦による摩擦粉の発生が抑制される。このように摩擦粉の発生量を減少させることで、摩擦粉による汚染が防止される。例えば、定着ベルト51の内周面51bに形成された表面層が剥離して、摩耗粉が生じるおそれがあるが、この定着装置90では摩擦粉の発生が抑制される。そのため、余剰の潤滑剤と共に下流側に移動する摩擦粉の量が制限され、加熱源55側において定着ベルト51の内側における汚染が抑制される。
【0106】
また、この定着装置90では、定着ベルト51の内周面51bに付着した潤滑剤の膜厚は、膜厚規制部94により規制される。所定の厚さ以上の潤滑剤は、膜厚規制部94に当たり、下流側への移動が制限される。膜厚規制部94は、不織布を有する構成であるので、定着ベルト51の内周面51bに付着した余剰の潤滑剤は、不織布により拭き取られて、付着量が減少する。また、固定摺動部材65と定着ベルト51との摩擦により生じた少量の摩耗粉も、膜厚規制部94の不織布により潤滑剤と共に拭き取られ、膜厚規制部94より下流への移動が制限される。
【0107】
そのため、潤滑剤及び摩耗粉による汚染が抑制される。定着ベルト51の内部において、定着ベルト51の内周面51bに付着している潤滑剤及び摩耗粉の落下が防止される。これより、反射板92に付着する潤滑剤及び摩耗粉を減少させることができ、反射板92による反射効率の低下が抑制される。その結果、加熱源55からの輻射熱が、定着ベルト51に効率良く伝達されるので、定着ベルト51が効率良く加熱される。その結果、媒体Pに対してトナー像を確実に定着させることができる。
【0108】
また、定着装置90では、膜厚規制部94が定着ベルト51の内周面51bに当接するので、回転移動する定着ベルト51の形状が規制される。定着ベルト51は、膜厚規制部94によって、径方向の外側に押し出されるようにして、形状が規制される。これにより、定着ベルト51の回転振れが抑制される。回転振れとは、定着ベルト51が回転移動する際に生じる位置変化であり、定着ベルト51の厚み方向への変動である。定着装置90では、回転振れが抑制されるので、定着ベルト51の外周面51a側に配置された分離部材56と定着ベルト51との接触のおそれが低減される。定着ベルト51の回転形状(周回軌道)を安定させて、定着ベルト51と分離部材56とが不意に当たってしまうことが抑制される。
【0109】
また、定着装置90では、定着ニップ部53の出口側近傍の定着ベルト51の回転形状が安定するので、定着ベルト51の外周面51aに対して、分離部材56の先端部を接近させて配置することができる。これにより、定着ベルト51の外周面51aに付着する媒体Pを確実に剥がすことができる。
【0110】
また、膜厚規制部94では、定着ベルト51に付着した潤滑剤及び摩耗粉の下流への移動を規制する機能と、定着ベルト51の回転形状を安定させる機能との複数の機能を1つの部品で実現している。これにより、別々の部品を設ける必要を無くし、部品点数の削減を図り、装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0111】
図10は、変形例に係る膜厚規制部を拡大して示す断面図である。図10に示されるように、膜厚規制部94は、定着ベルト51側に突出する突出部94aを備える構成でもよい。突出部94aは、定着ベルト51の内周面51bに対向する面を含む部分であり、定着ベルト51の径方向の外側に突出している。突出部94aは、固定摺動部材65の本体部65bよりも加圧ローラ52側に張り出している。また、この突出部94aは、ニップ面Nよりも加圧ローラ52側に突出していてもよい。これにより、突出部94aと定着ベルト51とが当接する位置を、ニップ面Nよりも径方向の外側に配置することができる。このように、突出部94aがニップ面Nよりも外側に突出していると、膜厚規制部94を定着ベルト51に対して、安定して当てることができ、定着ベルト51の回転振れを確実に抑制することができる。また、定着ベルト51の内周面51bに付着している潤滑剤及び摩耗粉を確実に減少させることができる。
【0112】
次に、図11を参照して、第4実施形態に係る定着装置100について説明する。図11に示される定着装置100が、第3実施形態の定着装置90と違う点は、膜厚規制部102の構造が異なる点、及び、膜厚規制部102で回収された潤滑剤を収容する潤滑剤収容部103を備えている点である。第4実施形態の定着装置100の説明において、上記の第1〜第3実施形態の定着装置と同じ説明は省略する。
【0113】
定着装置100は、膜厚規制部102を有する膜厚規制部材101を備えている。膜厚規制部材101は、定着ベルト51の軸線方向に延在する。膜厚規制部材101は、定着ベルト51の軸線方向において、定着ベルト51の幅に対応した長さを有する。膜厚規制部材101は、膜厚規制部102の他に支持部101aを有する。支持部101aは、当接部材54に対して固定されている。
【0114】
支持部101aは、例えば角柱状を成し、定着ベルト51の軸線方向に延在している。支持部101aは、例えば、支持体64の下流側(定着ベルト51の移動方向Yの下流側)の側壁64aに固定されている。支持部101aは、当接部材54の構造体63に対して固定されていてもよい。
【0115】
膜厚規制部102は、支持部101aに連続して形成されている(膜厚規制部102は、支持部101aと一体的に形成されている)。膜厚規制部102は、ガイド面102a、エッジ部102b及び傾斜面102cを有する。膜厚規制部102は、定着ベルト51の径方向において、支持部101aから外方に張り出すように形成されている。膜厚規制部102は、定着ベルト51の内周面51bに当接するように形成されたガイド面102aを有する。ガイド面102aは、例えば、定着ベルト51の回転中心O51を中心とする円弧に沿うように形成されている。また、ガイド面102aは、定着ベルト51の周方向において、所定の長さを有する。ガイド面102aの定着ベルト51の周方向における長さは、例えば、定着ベルト51の円周の長さの10%程度である。
【0116】
また、ガイド面102aは、例えば、樹脂によって形成されている。ガイド面102aには、耐熱性に優れると共に難燃性に優れる樹脂を使用することができ、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などを使用することができる。また、ガイド面102aは、不織布により形成されていてもよい。
【0117】
図12は、膜厚規制部材101のエッジ部102bを拡大して示す断面図である。図12に示されるように、ガイド面102aの移動方向Yの上流側の端部であるエッジ部102bは、定着ベルト51の周方向において、分離部材56の先端部(媒体Pの搬送方向における上流側の端部)と、固定摺動部材65の本体部65bとの間に配置されている。
【0118】
エッジ部102bにおいて、定着ベルト51の回転中心O51側の面は、定着ベルト51の内周面51bに接する接線L51bに対して傾斜する傾斜面102cを構成する。傾斜面102cに沿う直線L102cの接線L51bに対する傾斜角度θ102cは、例えば15(deg)以上45(deg)以下程度である。
【0119】
定着装置100は、膜厚規制部102で回収された潤滑剤を収容する潤滑剤収容部103を有する。潤滑剤収容部103は、定着ベルト51の移動方向Yにおいて、固定摺動部材65の下流側であり、且つ、エッジ部102bより上流側に配置されている。潤滑剤収容部103は、定着ベルト51の内周面51b側に開口を有する。
【0120】
潤滑剤収容部103は、当接部材54の固定摺動部材65の側壁65a(図1参照)と膜厚規制部102との間に形成された空間内に、余剰の潤滑剤を収容する。定着ベルト51に付着して移動した潤滑剤は、膜厚規制部102のエッジ部102bに当たって定着ベルト51から剥離される。剥離された潤滑剤は、エッジ部102bの傾斜面102cに沿って移動して、潤滑剤収容部103に収容される。
【0121】
このような第4実施形態の定着装置100においても、第3実施形態の定着装置90と同様に、潤滑剤及び摩耗粉による汚染を抑制することができる。
【0122】
なお、第4実施形態の定着装置100では、膜厚規制部材101と支持体64とが別々の構成となっているが、膜厚規制部材101と支持体64とが一体の部材として形成されていてもよい。これにより、定着装置における部品点数を削減することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【0123】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0124】
上記の定着装置において、定着ベルト51は樹脂製の基材57を有し、潤滑剤供給部93が黒色の潤滑剤を供給する構成でもよい。これにより、定着ベルト51の内周面51bに黒色の潤滑剤を塗り付けることができる。そのため、黒色の表面処理ができない樹脂を定着ベルト51の基材として採用した際に、定着ベルト51の内周面51bに黒色の潤滑剤を塗布することで、定着ベルト51における輻射熱の吸収率を向上させることができる。これにより、加熱効率を向上させて、定着装置における定着を安定させることができる。黒色の潤滑剤は、例えばカーボンブラックまたは黒色の染料などが添加されたフッ素系潤滑剤である。なお、その他の方法により、潤滑剤を黒くしてもよい。
【0125】
また、上記の実施形態において、固定摺動部材65の当接部である本体部65bに凸形状が形成されているが、第3及び第4の実施形態に係る定着装置90,100において、本体部65bに凸形状が形成されていない構成でもよい。
【0126】
また、凸形状は、矩形状、ひし形、円形、帯状に限定されず、台形状、楕円形などその他の形状でもよい。
【0127】
また、複数の凸形状の配置間隔は、1.1mm以上に限定されず、1.1mm未満でもよい。また、凸形状の配置間隔は、一定でもよく、例えば、幅方向Xの位置に応じて異なっていてもよい。また、凸形状の定着ベルトとの接触長さは、0.55mm以上に限定されず、0.55mm未満でもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…画像形成装置、50,90,100…定着装置、51…定着ベルト、51a…定着ベルトの外周面、51b…定着ベルトの内周面、52…加圧ローラ、53…定着ニップ部、54…当接部材、56…分離部材、65…固定摺動部材、65b…固定摺動部材の本体部(当接部)、66…基準面、67〜69…凸形状、81…固定摺動部材、81b…本体部(当接部)、82,85〜87…帯状の凸形状、83…帯状の凸形状(潤滑剤保持用凸部)、94,102…膜厚規制部、101…膜厚規制部材、102a…ガイド面、102b…エッジ部、103…潤滑剤収容部、P…媒体、X…幅方向、Y…定着ベルトの移動方向。
図1
図2
図3
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図6
図7
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図9
図10
図11
図12