特許第6792349号(P6792349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792349
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   F25D23/02 301E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-106577(P2016-106577)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-211167(P2017-211167A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 浩一
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−074354(JP,U)
【文献】 実開昭58−009693(JP,U)
【文献】 実開昭55−149182(JP,U)
【文献】 特開2016−035134(JP,A)
【文献】 特開平09−243240(JP,A)
【文献】 実開昭49−101348(JP,U)
【文献】 特開2006−329610(JP,A)
【文献】 特開2008−134002(JP,A)
【文献】 特開2015−048991(JP,A)
【文献】 実開平05−064687(JP,U)
【文献】 特開2015−135228(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0000102(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記貯蔵室に設けられた開口部を開閉可能に閉塞する扉と、前記扉に設けられた軸受孔と、前記冷蔵庫本体に設けられたヒンジ軸とを備え、前記ヒンジ軸が前記軸受孔に回動可能に挿入され前記扉を回動可能に支持する冷蔵庫において、
前記ヒンジ軸は、前記軸受孔の軸方向外側において径外方向へ広がるフランジ部を備え、
前記扉は、前記軸受孔の開口端の周縁部に前記軸受孔の軸方向外側へ突出する凸部を備え、
前記凸部は、前記扉が前記開口部を閉塞する状態において前記フランジ部の周面に接触し、閉扉状態から全開まで開扉方向へ前記扉の回動角度が大きくなるにつれて前記フランジ部の周面と前記凸部との重なり量が漸次大きくなり前記フランジ部の周面と前記凸部との摩擦力が漸次大きくなる冷蔵庫。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記扉が前記開口部を閉扉する状態において前記凸部が接触する位置から前記開口部を開扉する状態において前記凸部が接触する位置へ近づくほど、前記ヒンジ軸の回転中心から前記フランジ部の周面までの距離が漸次大きくなる請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記フランジ部の周面と前記凸部とが面接触する請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記凸部は、前記ヒンジ軸の軸方向に沿った長さが、前記フランジ部より長い請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記扉は前記軸受孔が設けられた筒状のブッシュ部材を備え、
前記ブッシュ部材に前記凸部が一体に設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記扉は、その縁部に前記軸受孔が開口する面より突出する縁壁を備え、
前記凸部が前記縁壁に当接している請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記凸部は、前記縁壁に当接する当接面を備え、前記当接面の先端部が前記縁壁から離れている請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記縁壁は、分断部によって前記扉の縁部に沿った方向に分割され、
前記凸部は、前記分断部を跨いで前記縁壁に当接する請求項6又は7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記凸部は、前記フランジ部より変形しやすい材料で形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫では、貯蔵室の開口部を開閉する回動式の扉に飲料容器等の収納物を収納するドアポケットが設けられている。ドアポケットに収納物が収納され扉の総重量が大きくなると、扉を開放状態のままで保持していない場合、冷蔵庫の設置状態によって生じる傾きで扉が勝手に開放あるいは閉じていく現象が発生しやすくなり、使い勝手を損ねることがある。
【0003】
そこで、貯蔵室と、貯蔵室の前面開口部を開閉する回転式扉と、回転式扉を支持するヒンジを備え、回転式扉はヒンジ軸を回転軸として開閉される冷蔵庫において、ヒンジ軸に設けた保持用部材を回転式扉に設けた軸受孔へ収納して組み合わせ、軸受孔と保持用部材の間に、回転式扉の所定の開放角度までは回転式扉に大きな保持力が作用せず、所定の開放角度を越えると回転式扉に大きな保持力が作用する保持機構を設けることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−48991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の冷蔵庫では、回転式扉に大きな保持力が作用する保持機構を、軸受孔とヒンジ軸の間に、つまり、軸受孔の内部に設けるため、回転式扉に設ける軸受孔が大きくなり、軸受孔周辺において断熱厚さが薄くなる。
【0006】
そこで、ヒンジ軸と軸受孔との間に保持機構を設けることなく扉に大きな保持力を作用させることができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記貯蔵室に設けられた開口部を開閉可能に閉塞する扉と、前記扉に設けられた軸受孔と、前記冷蔵庫本体に設けられたヒンジ軸とを備え、前記ヒンジ軸が前記軸受孔に回動可能に挿入され前記扉を回動可能に支持する冷蔵庫において、前記ヒンジ軸は、前記軸受孔の軸方向外側において径外方向へ広がるフランジ部を備え、前記扉は、前記軸受孔の開口端の周縁部に前記軸受孔の軸方向外側へ突出する凸部を備え、前記凸部は、前記扉が前記開口部を閉塞する状態において前記フランジ部の周面に接触し、閉扉状態から全開まで開扉方向へ前記扉の回動角度が大きくなるにつれて前記フランジ部の周面と前記凸部との重なり量が漸次大きくなり前記フランジ部の周面と前記凸部との摩擦力が漸次大きくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の断面図である。
図2図1に示す冷蔵庫の平面図である。
図3図1に示した冷蔵庫の冷蔵室の右扉を分解して示す分解斜視図である。
図4】右扉に設けられたヒンジ収納部を拡大して示す斜視図である。
図5図2のA−A断面図である。
図6】ブッシュ部材の斜視図である。
図7】閉扉状態においてヒンジカバーを取り外したヒンジユニットを拡大して示す平面図である。
図8】開扉状態においてヒンジカバーを取り外したヒンジユニットを拡大して示す平面図である。
図9図8より回動角度が大きい開扉状態においてヒンジカバーを取り外したヒンジユニットを拡大して示す平面図である。
図10図9より回動角度が大きい開扉状態においてヒンジカバーを取り外したヒンジユニットを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すように、冷蔵庫1の冷蔵庫本体2は、前面が開口した矩形の箱状をなしていて、鋼板製の外箱3と合成樹脂製の内箱4との間に、真空断熱材や発泡断熱材等の断熱材5を充填して構成されている。この冷蔵庫本体2は、内部に複数の貯蔵室を有している。貯蔵室としては、最上部に冷蔵室6が設けられ、その下に野菜室7が設けられ、その野菜室7の下に、製氷室及び上段冷凍室8が左右に並んで設けられ、製氷室及び上段冷凍室8の下に下段冷凍室9が設けられている。
【0011】
この例では、冷蔵室6の前面開口部は、図2に示すように、観音開き式の2枚の扉10、11により閉塞されている。2枚の扉10、11のうち、正面から見て左側の左扉10は、左扉10の左端部が上側のヒンジユニット12及び下側のヒンジユニット(不図示)により冷蔵庫本体2に回動可能に支持され、右側の右扉11は、右扉11の右端部が上側のヒンジユニット13及び下側のヒンジユニット(不図示)により冷蔵庫本体2に回動可能に支持されている。
【0012】
野菜室7、製氷室、上段冷凍室8、及び下段冷凍室9の前面開口部は、引き出し式の扉14、15,16により開閉される。引き出し式の各扉14、15,16の裏側には、収納容器17,18,19が設けられている。
【0013】
次に、冷蔵室6における左右の扉10、11及びヒンジユニット12,13の構成について説明する。なお、左扉10及び当該扉10を支持するヒンジユニット12は、右扉11及び当該扉11を支持するヒンジユニット13と大きさや冷蔵庫本体2に対する取付位置が異なっているが、基本的な構成が共通しているため、ここでは、右扉11及びヒンジユニット13について説明し、左扉10及びヒンジユニット12の詳細な説明を省略する。
【0014】
図3に示す冷蔵室6の右扉11は、当該右扉11の前面を全面的に覆うように設けられた外表面のガラス板22を有する。なお、図3において、ガラス板22の設けられている側が右扉11の前面側であり、ガラス板22と反対側の後方が冷蔵室6の内部に向かう右扉11の後側である。
【0015】
ガラス板22の上下左右の外周部には、合成樹脂製の上側扉キャップ23、下側扉キャップ24、左側扉キャップ25、および右側扉キャップ26がそれぞれ設けられている。これらの上下左右4個の扉キャップ23,24,25,26は、ガラス板22の上下左右の側面を、上下左右の外側から保持して固定とともに、ガラス板21の4辺部分における装飾を施す装飾部として機能する。
【0016】
図3に示すガラス板22の背面側には、矩形の枠体である扉内側組立体27がガラス板22の外周部に沿うように設けられ、この扉内側組立体27により右扉11を全体的かつ一体的に組み立てている。扉内側組立体27の背面側には、矩形の枠体28が設けられている。なお、図示しないが、この枠体28には、例えば鋼板などからなる内板が取り付けられるとともに、この内板と前記ガラス板22との間の空間に発泡ウレタンなどからなる発泡断熱材が充填され、断熱性能を向上するとともに、発泡断熱材がガラス板22の内面に接着してガラス板22を固着し、ガラス板22が外れたり、反ったりしないように固定している。
【0017】
図2及び図4に示すように上側扉キャップ23の右端部には、下方に陥没し、後方及び右側方に開口する凹部29が設けられている。凹部29の底面29aは、右側扉キャップ26の上面26aと段差なくつながっており、上側扉キャップ23に設けられた凹部29と右側扉キャップ26の上面26aとで、右扉11を回動可能に支持するヒンジユニット13の一部、具体的には、冷蔵庫本体2より前方へ突出する部分を収納するヒンジ収納部30を区画している。
【0018】
ヒンジ収納部30の前側及び右側前部は、右扉11の上面縁部より上方に突出する縁壁33によって区画されている。縁壁33は分断部34によって右扉11の上面縁部に沿った方向に分割されている。この例では、ヒンジ収納部30の前側が、上側扉キャップ23に設けられた凹部29の底面29aより上方に立ち上がる前縁壁33aによって区画され、ヒンジ収納部30の右側前部は、右側扉キャップ26の上面26aから上方へ立ち上がる右前縁壁33bによって区画され、分断部34が右扉11の前側に位置している。
【0019】
ヒンジ収納部30の底面を構成する凹部29の底面29aと右側扉キャップ26の上面26aには、底面29a及び上面26aに跨がるように筒状のブッシュ部材40を挿入する取り付け孔31が穿設されている。
【0020】
この取り付け孔31には、図5に示すように、その周縁部から下方に伸びるように円筒形の長さのある保持筒32が形成されている。この保持筒32の上端の周縁部、つまり、取り付け孔31の開口部は、内径が広がった段部31aをなしており、ブッシュ部材40の一端部に設けられたブッシュ鍔部42が段部31aに嵌まり込むようになっている。また、保持筒32の他端部の内周面には内方へ突出する複数個の係合突出部31bが形成される。
【0021】
ブッシュ部材40は、図6に示すように、軸受孔41を有する筒状の部材である。ブッシュ部材40の一端部は、ブッシュ鍔部42が径方向外方へ突出し、ブッシュ部材40の他端部は、小径となるように緩やかなテーパ状に形成されている。ブッシュ部材40の軸方向中央部には、保持筒32の係合突出部31bと係合する爪部43が、ブッシュ部材40の径方向外方へ突出形成されている。ブッシュ部材40のブッシュ鍔部42と爪部43との間には、複数組(本実施形態では4組)の環状の凸部とその間の凹部からなる凹凸部44が形成されている。ブッシュ鍔部42には、軸受孔41の周縁部より径方向外方へ間隔をあけた位置に凸部45が上方へ突出している。
【0022】
ブッシュ部材40は、扉キャップ23,24,25,26を構成する樹脂より硬く摺動特性に優れた樹脂、例えばポリアセタール樹脂によってブッシュ鍔部42、爪部43、凹凸部44及び凸部45とともに一体に成型されている。ブッシュ部材40は、ヒンジ収納部30の底面に開口する取り付け孔31に挿入されると、右扉11の上面に軸受孔41を形成するとともに、軸受孔41から径方向外方に離れた位置にヒンジ収納部30の底面から上方へ突出する凸部45を形成する。
【0023】
凸部45は、軸受孔41の径方向外側に向いた面が、右扉11の上面縁部より上方に突出する縁壁33に当接する当接面46をなし、軸受孔41の径方向内側に向いた面が、後述するヒンジ部60に接触する摩擦面47をなしている。
【0024】
この例では、図4に示すように、凸部45が上側扉キャップ23及び右側扉キャップ26に跨がって設けられており、当接面46が右扉11の縁壁33に設けられた分断部34を跨いで上側扉キャップ23の前縁壁33aと右側扉キャップ26の右前縁壁33bに当接している。
【0025】
また、この例では、図5に示すように、当接面46は、上端(先端)に行くほど軸受孔41の径方向内方へ向かい縁壁33から離れるように傾斜している。これにより、凸部45は、当接面46の下部が縁壁33と当接し、当接面46の上部が縁壁33から離間している。
【0026】
凸部45の摩擦面47は、軸受孔41と同心円の円弧を有し、かつ、ヒンジ収納部30の底面に対して垂直に立ち上がる面であり、右ヒンジユニット13を構成するヒンジ部60が面接触する。
【0027】
右ヒンジユニット13は、図5に示すように、冷蔵庫本体2に対して右扉11を回動可能に支持するヒンジ部60と、ヒンジ部60を覆うヒンジカバー64とを備える。
【0028】
ヒンジ部60は、金属、例えば鋼板を所定形状に成形したもので、冷蔵庫本体2の右前端部にネジなどによって固定される固定部66と、固定部66から前方に突出し右扉11の上面に設けられたヒンジ収納部30に収納される支持部68とを備える。
【0029】
支持部68は、固定部66から前方に延びた後、幅方向外側(右側)へ直角に折れ曲がる形状をなしている。支持部68の先端部には、下方へ突出するヒンジ軸70と、ヒンジ軸70の上端部に設けられたヒンジフランジ部72とが設けられている。
【0030】
ヒンジ軸70は、右扉11の上面に開口する軸受孔41に回動可能に挿入される円筒状をなしており、センサなどの電子部品と冷蔵庫本体2に設けられた制御装置(不図示)とを電気接続する接続線が、ヒンジ軸70の中空部70aに挿入されるようになっている。
【0031】
ヒンジフランジ部72は、ヒンジ軸70より径方向外方へ広がり軸受孔41の内径より大きい形状をなしている。ヒンジフランジ部72は、ヒンジ軸70を軸受孔41に挿入した状態で軸受部41の外側上方に位置し、ヒンジフランジ部72の外周面72aが凸部45の摩擦面47に面接触する。また、図5に示すように、ヒンジフランジ部72の厚みTは、凸部45がヒンジ収納部30の底面から突出する高さHより小さく設けられている。これにより、凸部45の摩擦面47は、ヒンジ軸70の軸方向に沿った長さがヒンジフランジ部72の外周面72aに比べて長くなっている。
【0032】
より詳細には、ヒンジフランジ部72の平面形状は、ヒンジフランジ部72の前側から右側を通って後側へ行くに従って曲率半径が大きくなる幅方向外側へ膨らんだ湾曲形状をなしている(図7図10参照)。これにより、ヒンジ軸70の回転中心からヒンジフランジ部72の外周面72aまでの距離が、ヒンジフランジ部72の前側から後側へ行くに従って漸次大きくなっている。
【0033】
ヒンジフランジ部72は、図7に示すような右扉11が閉扉する状態において、外周面72aの前側が右扉11に設けられた凸部45の摩擦面47に面接触する。そして、閉扉状態から右扉11が左回り(反時計回り)に回動して開扉すると、右扉11に設けられた凸部45の摩擦面47は、図8及び図9に示すようにヒンジフランジ部72の外周面72aの右側を摺動し、図10に示すヒンジフランジ部72の外周面72aの後側に達するまで移動する。
【0034】
このような構成において、右扉11を開扉方向へ回動させると、凸部45の摩擦面47がヒンジフランジ部72の外周面72aの前側から右側を通って後側へ摺動移動する。本実施形態では、ヒンジ軸70の回転中心からヒンジフランジ部72の外周面72aまでの距離が、ヒンジフランジ部72の前側から後側へ行くに従って漸次大きくなっている。
【0035】
そのため、図7図10に示すように、右扉11を開扉方向へ回動させると、回動角度が大きくなるにつれてフランジ部72の外周面72aと凸部45との重なり量Rが大きくなる。金属製のヒンジフランジ部72に比べて樹脂製の凸部45は変形しやすいため、右扉11の回動角度が大きくなり重なり量が大きくなるにつれて凸部45の弾性変形量が大きくなり、凸部45の摩擦面47とヒンジフランジ部72の外周面72aとの間に発生する摩擦力が大きくなる。その結果、使用者が開扉状態の右扉11を保持せずとも、右扉11が勝手に開放したり閉塞することがなく、右扉11の開扉位置を保持することができる。なお、図7図10において2点鎖線は、弾性変形前の凸部45を示す。
【0036】
また、凸部45が閉扉状態においてヒンジフランジ部72の外周面72aと離れており開扉した後に外周面72aに接触する場合であると、開扉時に凸部45がヒンジフランジ部72の外周面72aに引っかかりスムーズに開扉できないことがあるが、本実施形態では、右扉11の開扉状態だけでなく閉扉状態でも凸部45の摩擦面47が、ヒンジフランジ部72の外周面72aと接触しているため、凸部45がヒンジフランジ部72に引っかかることがなくスムーズに左扉11を開扉することができる。
【0037】
しかも、凸部45とヒンジフランジ部72が、軸受孔41の外側の外側において接触するため、ヒンジ軸70を挿入する軸受孔41の内径を小さくすることができ、左扉11の断熱厚さを確保することができる。
【0038】
本実施形態では、凸部45の摩擦面47とヒンジフランジ部72の外周面72aとが面接触しているため、ヒンジフランジ部72の厚みTを小さくしても右扉11の開扉位置を保持するために必要な摩擦力を摩擦面47と外周面72との間で得ることができ、これにより、ヒンジ収納部30を小さくして扉の断熱厚さを確保することができる。
【0039】
本実施形態では、ヒンジ軸70の軸方向に沿った凸部45の長さHが、ヒンジフランジ部72の厚みTより大きいため、部品公差や組立公差によって凸部45とヒンジフランジ部72との位置にばらつきがあっても、凸部45とヒンジフランジ部72とを確実に接触させることができる。
【0040】
本実施形態では、右扉11の回動角度が大きくなるにつれてフランジ部72の外周面72aと凸部45との重なり量が大きくなり、凸部45に対してヒンジ軸71の径方向外方へ大きな押圧力が作用するが、凸部45において径方向外側を向いた当接面46が右扉11に設けられた縁壁33に当接して、当該押圧力を凸部45だけでなく縁壁33でも支持する。そのため、凸部45とヒンジフランジ部72との間に発生する摩擦力が大きくなり右扉11を保持する保持力が向上する。
【0041】
しかも、凸部45は、ヒンジフランジ部72より押圧力を受けて変形しやすい先端側の上部において当接面46が縁壁33から離れているため、開扉時に縁壁33が凸部45に過度に押圧されることがなく、縁部33の変形を抑えることができる。
【0042】
さらに本実施形態では、凸部45の当接面46が、右扉11の縁壁33に設けられた分断部34を跨いで上側扉キャップ23の前縁壁33aと右側扉キャップ26の右前縁壁33bに当接しているため、開扉時に発生する押圧力を前縁壁33a及び右前縁壁33bのいずれか一方に集中させることなく2つの縁壁33a,33bに分散することができ、縁壁33a,33bの変形を抑えることができる。
【0043】
なお、右扉11の回動角度に対するフランジ部72の外周面72aと凸部45との重なり量の変化量は任意に設定することができるが、例えば、閉扉状態から所定の回動角度に達するまで重なり量の変化量を小さくし、所定の回動角度を超えると重なり量の変化量を大きくしても良い。閉扉時、扉には、冷蔵庫本体との間をシールするガスケットが磁気吸着するとともに、不用意な開扉を防止するために扉が冷蔵庫本体2に設けられたストッパに係止していることがあるが、閉扉状態から所定の回動角度に達するまで重なり量の変化量を小さくすることで、開扉時の抵抗力を減らし、使い勝手を向上させることができる。
【0044】
(変更例)
上記した実施形態では、右扉11に設けた凸部45の摩擦面47を軸受孔41と同心円の円弧形状に設け、ヒンジフランジ部72aの外周面72aを曲率半径が変化する湾曲形状に設けたが、右扉11の回動角度が大きくなるにつれて摩擦面47と外周面72aとの間で生じる摩擦力が大きくなるように凸部45及びヒンジフランジ72の形状の形状を設ければよく、例えば、凸部45の摩擦面47を湾曲形状に設け、ヒンジフランジ部72aの外周面72aを円弧形状に設けたり、あるいは、凸部45の摩擦面47及びヒンジフランジ72の外周面72aを湾曲形状に設けても良い。
【0045】
また、上記した実施形態では、ヒンジフランジ部72及び凸部45を右扉11の上側に設ける場合について説明したが、右扉11の下側のヒンジユニットにヒンジフランジ部を設け、右扉11の回動角度が大きくなるにつれて当該ヒンジフランジ部との重なり量が大きくなる凸部を右扉11の下面に設けても良い。
【0046】
また、上記した実施形態では、凸部45をブッシュ部材40に一体に設けたが、例えば、上側扉キャップ23や右側扉キャップ26の上面に凸部45を一体に設けても良い。
【0047】
また、上記した実施形態では、凸部45の摩擦面47やヒンジフランジ72の外周面72aをなだらかな曲面としたが、右扉11の回動角度が大きくなるにつれて摩擦面47と外周面72aとの間で生じる摩擦力が大きくなるように、摩擦面47や外周面72aに凹凸形状を設けても良い。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…冷蔵庫、2…冷蔵庫本体、6…冷蔵室、10…左扉、11…右扉、12…左ヒンジユニット、13…右ヒンジユニット、22…ガラス板、23…上側扉キャップ、24…下側扉キャップ、25…左側扉キャップ、26…右側扉キャップ、27…扉内側組立体、29…凹部、30…ヒンジ収納部、31…取り付け孔、32…保持筒、33…縁壁、33a…前縁壁、33b…右前縁壁、34…分断部、40…ブッシュ部材、41…軸受孔、42…ブッシュ鍔部、43…爪部、44…凹凸部、45…凸部、46…当接面、47…摩擦面、60…ヒンジ部、62…接続線引き出し部、64…ヒンジカバー、66…固定部、68…支持部、70…ヒンジ軸、70a…中空部、72…ヒンジフランジ部、72a…外周面
図1
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