(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792354
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/38 20110101AFI20201116BHJP
【FI】
H01R24/38
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-114735(P2016-114735)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-220379(P2017-220379A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】松本 正和
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06048227(US,A)
【文献】
特開2004−281401(JP,A)
【文献】
特開平07−282911(JP,A)
【文献】
実開昭63−023789(JP,U)
【文献】
特開2006−253148(JP,A)
【文献】
実公昭52−005275(JP,Y1)
【文献】
実開昭59−166384(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0155232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周部が絶縁体で覆われると共に前記絶縁体の外周部がシールド部材で覆われた同軸ケーブルの前端に取り付けられるコネクタであって、
前記同軸ケーブルの前記中心導体と前記絶縁体が通される内側スリーブと、
前記同軸ケーブルの前記中心導体と前記絶縁体と前記シールド部材が通される外側スリーブと
を備え、
前記内側スリーブは、周方向に配列され且つ径方向の外方に突出すると共に前記同軸ケーブルの前記絶縁体と前記シールド部材との間に差し込まれる複数の突起部を有し、前記複数の突起部のうち少なくとも1つは径方向に弾性変位可能であり、
前記外側スリーブは、前記内側スリーブの前記複数の突起部を覆い且つ前記同軸ケーブルに沿って前記同軸ケーブルの前記前端へと向かう第1の方向に先細りとなる内周面を有し、
前記内側スリーブの前記複数の突起部と前記外側スリーブの前記内周面との間に前記同軸ケーブルの前記シールド部材が挟み込まれ、
前記内側スリーブは、導電材料から形成され、前記複数の突起部よりも前記第1の方向側に配置され且つ径方向の外方に張り出すフランジを有し、
前記同軸ケーブルの前記シールド部材は、前記フランジに接触することで前記内側スリーブに導通することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記同軸ケーブルの前記シールド部材は、前記内側スリーブの前記フランジの前記第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた面と前記外側スリーブの前記第1の方向を向いた端面との間に挟まれることで保持される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記内側スリーブおよび前記外側スリーブを収容すると共に前記内側スリーブが突き当たる前記第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた突き当たり面を有する管形状のコネクタ本体と、
前記コネクタ本体内に保持され且つ前記同軸ケーブルの前記中心導体に電気的に接続される中心コンタクトと、
前記コネクタ本体にねじ込まれることで前記外側スリーブを前記第1の方向に押し付けるクランプナットと
を備える請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
中心導体の外周部が絶縁体で覆われると共に前記絶縁体の外周部がシールド部材で覆われた同軸ケーブルの前端に取り付けられるコネクタであって、
前記同軸ケーブルの前記中心導体と前記絶縁体が通される内側スリーブと、
前記同軸ケーブルの前記中心導体と前記絶縁体と前記シールド部材が通される外側スリーブと
を備え、
前記内側スリーブは、周方向に配列され且つ径方向の外方に突出すると共に前記同軸ケーブルの前記絶縁体と前記シールド部材との間に差し込まれる複数の突起部を有し、前記複数の突起部のうち少なくとも1つは径方向に弾性変位可能であり、
前記外側スリーブは、前記内側スリーブの前記複数の突起部を覆い且つ前記同軸ケーブルに沿って前記同軸ケーブルの前記前端へと向かう第1の方向に先細りとなる内周面を有し、
前記内側スリーブの前記複数の突起部と前記外側スリーブの前記内周面との間に前記同軸ケーブルの前記シールド部材が挟み込まれ、
前記内側スリーブおよび前記外側スリーブを収容すると共に前記内側スリーブが突き当たる前記第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた突き当たり面を有する管形状のコネクタ本体と、
前記コネクタ本体内に保持され且つ前記同軸ケーブルの前記中心導体に電気的に接続される中心コンタクトと、
前記コネクタ本体にねじ込まれることで前記外側スリーブを前記第1の方向に押し付けるクランプナットと
を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
前記内側スリーブの前記複数の突起部は、それぞれ、径方向に弾性変位可能である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記内側スリーブの前記複数の突起部は、前記同軸ケーブルの前記中心導体を中心とする所定の円周上に均等の間隔で配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記内側スリーブの前記複数の突起部は、それぞれ、前記第1の方向とは反対向きの第2の方向に向かうほど径方向への突出量が小さくなる傾斜面を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記同軸ケーブルの前記シールド部材は、弾力性を有する編組からなる請求項1〜7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、同軸ケーブルの端部に取り付けられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、同軸ケーブルの接続のためにコネクタが使用されているが、例えば、特許文献1に、
図9に示されるようなコネクタ1が開示されている。コネクタ1は、接続ナット2が回転可能に嵌められたシェル3と、締め付けリング4とを備えており、同軸ケーブル5は、中心導体6の外周部が絶縁体7で覆われ、絶縁体7の外周部がシールド部材8と外皮9とで覆われた構造を有している。
【0003】
コネクタ1を同軸ケーブル5に装着する際には、まず、締め付けリング4に同軸ケーブル5が通され、同軸ケーブル5の前端における所定長さの外皮9が除去された後、絶縁体7が露出するようにシールド部材8が同軸ケーブル5の外周部の上に折り返される。この状態で、コネクタ1のシェル3の筒状部3Aが、同軸ケーブル5の絶縁体7とシールド部材8との間に差し込まれ、
図10に示されるように、締め付けリング4がシェル3に接触するまで接続ナット2の方向に移動されて、図示しない工具で変形され締め付けられることで、コネクタ1の装着が完了する。
このとき、同軸ケーブル5のシールド部材8と外皮9が、コネクタ1のシェル3の筒状部3Aと締め付けリング4との間に挟み込まれ、締め付けリング4により同軸ケーブル5の径方向に圧迫される。これにより、コネクタ1は、同軸ケーブル5から外れないように保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−124669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同軸ケーブル5の絶縁体7とシールド部材8との間にコネクタ1のシェル3の筒状部3Aが差し込まれるので、シールド部材8と外皮9がコネクタ1の接続ナット2の方向に向かって先太りとなる傾斜面を形成することとなり、このようなシールド部材8および外皮9から締め付けリング4の内面に、接続ナット2から遠ざかる方向の力成分を有する垂直抗力が作用する。このため、コネクタ1を取り付ける作業中に締め付けリング4が外れやすくなるという問題がある。
【0006】
また、締め付けリング4が外れることを抑制するために、シェル3の筒状部3Aと締め付けリング4の軸方向の長さを長くして、締め付けリング4によりシールド部材8と外皮9を同軸ケーブル5の径方向に圧迫する面積を増大し、締め付けリング4と折り返されたシールド部材8との間の摩擦力を大きくしようとすると、コネクタ1が大型化するという問題が生じてしまう。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、小型でありながらもコネクタを取り付ける作業中にも外れにくく同軸ケーブルの端部に確実に取り付けることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係るコネクタは、中心導体の外周部が絶縁体で覆われると共に絶縁体の外周部がシールド部材で覆われた同軸ケーブルの前端に取り付けられるコネクタであって、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体が通される内側スリーブと、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体とシールド部材が通される外側スリーブとを備え、内側スリーブは、周方向に配列され且つ径方向の外方に突出すると共に同軸ケーブルの絶縁体とシールド部材との間に差し込まれる複数の突起部を有し、複数の突起部のうち少なくとも1つは径方向に弾性変位可能であり、外側スリーブは、内側スリーブの複数の突起部を覆い且つ同軸ケーブルに沿って同軸ケーブルの前端へと向かう第1の方向に先細りとなる内周面を有し、内側スリーブの複数の突起部と外側スリーブの内周面との間に同軸ケーブルのシールド部材が挟み込まれ、内側スリーブは、導電材料から形成され、複数の突起部よりも第1の方向側に配置され且つ径方向の外方に張り出すフランジを有し、同軸ケーブルのシールド部材は、フランジに接触することで内側スリーブに導通するものである。
同軸ケーブルのシールド部材は、内側スリーブのフランジの第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた面と外側スリーブの第1の方向を向いた端面との間に挟まれることで保持されるように構成することができる。
内側スリーブおよび外側スリーブを収容すると共に内側スリーブが突き当たる第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた突き当たり面を有する管形状のコネクタ本体と、コネクタ本体内に保持され且つ同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続される中心コンタクトと、コネクタ本体にねじ込まれることで外側スリーブを第1の方向に押し付けるクランプナットとを備えることもできる。
第
2の発明に係るコネクタは、中心導体の外周部が絶縁体で覆われると共に絶縁体の外周部がシールド部材で覆われた同軸ケーブルの前端に取り付けられるコネクタであって、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体が通される内側スリーブと、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体とシールド部材が通される外側スリーブとを備え、内側スリーブは、周方向に配列され且つ径方向の外方に突出すると共に同軸ケーブルの絶縁体とシールド部材との間に差し込まれる複数の突起部を有し、複数の突起部のうち少なくとも1つは径方向に弾性変位可能であり、外側スリーブは、内側スリーブの複数の突起部を覆い且つ同軸ケーブルに沿って同軸ケーブルの前端へと向かう第1の方向に先細りとなる内周面を有し、内側スリーブの複数の突起部と外側スリーブの内周面との間に同軸ケーブルのシールド部材が挟み込まれ、内側スリーブおよび外側スリーブを収容すると共に内側スリーブが突き当たる第1の方向とは反対向きの第2の方向を向いた突き当たり面を有する管形状のコネクタ本体と、コネクタ本体内に保持され且つ同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続される中心コンタクトと、コネクタ本体にねじ込まれることで外側スリーブを第1の方向に押し付けるクランプナットとを備えるものである。
内側スリーブの前記複数の突起部は、それぞれ、径方向に弾性変位可能であることが好ましい。
内側スリーブの複数の突起部は、同軸ケーブルの中心導体を中心とする所定の円周上に均等の間隔で配置されていることが好ましい。
また、好ましくは、内側スリーブの複数の突起部は、それぞれ、第1の方向とは反対向きの第2の方向に向かうほど径方向への突出量が小さくなる傾斜面を有する。
さらに、同軸ケーブルの前記シールド部材は、弾力性を有する編組からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体が通される内側スリーブは、同軸ケーブルの絶縁体とシールド部材との間に差し込まれる複数の突起部を有し、同軸ケーブルの中心導体と絶縁体とシールド部材が通される外側スリーブは、同軸ケーブルに沿って同軸ケーブルの前端へと向かう第1の方向に先細りとなる内周面を有し、内側スリーブの複数の突起部と外側スリーブの内周面との間に同軸ケーブルのシールド部材が挟み込まれるので、小型でありながらもコネクタを取り付ける作業中にも外れにくく同軸ケーブルの端部に確実に取り付けられるコネクタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係るコネクタの組立図である。
【
図2】同軸ケーブルの前端に取り付けられた、実施の形態に係るコネクタを示す断面図である。
【
図3】実施の形態に係るコネクタに用いられる内側スリーブを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るコネクタに用いられる内側スリーブを示す一部破断側面図である。
【
図5】実施の形態に係るコネクタに用いられる外側スリーブを示す斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るコネクタに用いられる外側スリーブを示す一部破断側面図である。
【
図7】実施の形態に係るコネクタを同軸ケーブルの前端に取り付ける際の状態を示す断面図である。
【
図9】同軸ケーブルに従来のコネクタを取り付ける状態を示す側面図である。
【
図10】同軸ケーブルに取り付けられた従来のコネクタを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態に係るコネクタ11の組立図である。コネクタ11は、同軸ケーブル21の前端21Aに取り付けられるもので、中心軸Cに沿って、コネクタ本体12に、中心コンタクト組立体13、内側スリーブ14、外側スリーブ15、ガスケット16およびクランプナット17が順次組み込まれた構成を有している。
また、同軸ケーブル21は、中心導体22と、中心導体22の外周部を覆う絶縁体23と、絶縁体23の外周部を覆うシールド部材24と、シールド部材24の外周部を覆う外皮25とを有している。
ここで、便宜上、同軸ケーブル21に沿って同軸ケーブル21の前端21Aへと向かう方向を第1の方向D1とし、第1の方向D1とは反対方向を第2の方向D2と呼ぶものとする。
【0015】
図2は、同軸ケーブル21の前端21Aに取り付けられた状態のコネクタ11を示している。
図2に示されるように、コネクタ本体12は、金属等の導電材料から形成された管形状の部材であり、コネクタ本体12の内部には、第1の方向D1側に中心コンタクト収容部12Aが形成されると共に、第2の方向D2側に、中心コンタクト収容部12Aの径よりも大きな径を有する同軸ケーブル収容部12Bが形成されている。
また、中心コンタクト収容部12Aの中心軸Cに沿った長さ方向の中間部には、コネクタ本体12の内周面に中心軸Cに向かって突出する環状の突出部12Cが形成され、中心コンタクト収容部12Aと同軸ケーブル収容部12Bの境界部分には、第2の方向D2を向いた環状の突き当たり面12Dが形成されている。さらに、コネクタ本体12の第2の方向D2側の端部には、コネクタ本体12の内周面に雌ネジ部12Eが形成されている。
【0016】
中心コンタクト組立体13は、金属等の導電材料から形成され且つ中心軸Cに沿って直線状に延びる中心コンタクト13Aと、絶縁材料から形成され且つ中心コンタクト13Aを保持する円柱形状の中心コンタクト保持部13Bとを有している。中心コンタクト13Aは、中心軸Cに沿って中心コンタクト保持部13Bに形成された貫通孔を貫通しており、第1の方向D1側の端部と第2の方向D2側の端部がそれぞれ中心コンタクト保持部13Bから突出している。
【0017】
また、中心コンタクト13Aの第2の方向D2側の端部には、中心軸Cに沿って延び且つ第2の方向D2に開口する中心導体収容孔13Cが形成されると共に、中心導体収容孔13Cに連通し且つ中心軸Cに対して直交する方向を向いた開口部13Dが形成されている。
中心コンタクト組立体13は、中心コンタクト保持部13Bの第1の方向D1側の周縁部がコネクタ本体12の環状の突出部12Cに接触した状態でコネクタ本体12の中心コンタクト収容部12Aに収容されている。また、中心コンタクト13Aの中心導体収容孔13Cに同軸ケーブル21の中心導体22の端部が収容され、開口部13Dからハンダ付けされることにより、中心コンタクト13Aが同軸ケーブル21の中心導体22に接続されている。
【0018】
内側スリーブ14は、金属等の導電材料から形成された環状の部材で、
図3および
図4に示されるように、周方向に配列され且つそれぞれ中心軸Cに沿って第2の方向D2に延びる片持ち梁形状の4つのバネ部14Aを有している。それぞれのバネ部14Aには、径方向の外方に突出する突起部14Bが形成されている。これらの突起部14Bは、中心軸Cを中心とする所定の円周上に均等の間隔で配置され、それぞれ、対応するバネ部14Aにより径方向に弾性変位可能に構成されている。さらに、それぞれの突起部14Bは、第2の方向D2に向かうほど径方向への突出量が小さくなるように径方向の外方を向いた傾斜面14Cを有している。
また、内側スリーブ14には、4つの突起部14Bよりも第1の方向D1側において径方向の外方に張り出す環状のフランジ14Dが形成されている。
【0019】
内側スリーブ14は、同軸ケーブル21の絶縁体23の外径よりもわずかに大きい内径を有しており、
図2に示されるように、同軸ケーブル21の中心導体22と絶縁体23が通されると共に4つの突起部14Bが同軸ケーブル21の絶縁体23とシールド部材24との間に差し込まれた状態で、フランジ14Dの第1の方向D1側の面がコネクタ本体12の突き当たり面12Dに接触するようにコネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに収容されている。
【0020】
外側スリーブ15は、金属等の導電材料から形成された環状の部材で、
図5および
図6に示されるように、第1の方向D1に向かって先細りとなる円錐面状の内周面15Aを有している。内周面15Aの第2の方向D2側の端部の内径は、同軸ケーブル21の外皮25の外径よりも大きな値に設定されており、内周面15Aの第1の方向D1側の端部は、第2の方向D2側の端部の内径よりも小さく且つ内側スリーブ14の内径よりも大きな内径を有している。
外側スリーブ15は、
図2に示されるように、同軸ケーブル21の中心導体22と絶縁体23とシールド部材24が通されると共に内周面15Aにより内側スリーブ14の4つの突起部14Bを覆った状態で、コネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに収容されている。そして、内側スリーブ14の4つの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に同軸ケーブル21のシールド部材24が挟み込まれている。
【0021】
ガスケット16は、弾性部材から形成された環状の部材であり、圧縮されることで、弾性変形可能に構成されている。ガスケット16は、同軸ケーブル21の外皮25の外周部を囲むように配置されている。
【0022】
クランプナット17は、金属等の導電材料から形成された管状の部材で、コネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに挿入される筒状部17Aを有し、筒状部17Aの外周部にコネクタ本体12の雌ネジ部12Eに対応する雄ネジ部17Bが形成されている。また、クランプナット17には、筒状部17Aの第2の方向D2側の端部において径方向の外方に張り出すフランジ17Cが形成されている。
クランプナット17は、同軸ケーブル21の外皮25の外径よりもわずかに大きい内径を有しており、同軸ケーブル21が通された状態で、筒状部17Aがコネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに挿入され、雄ネジ部17Bがコネクタ本体12の雌ネジ部12Eにねじ込まれることで、コネクタ本体12に保持されている。
【0023】
フランジ17Cを利用してクランプナット17を中心軸Cの回りに回転させることにより、クランプナット17を第1の方向D1に前進させると、ガスケット16を介して外側スリーブ15が第1の方向D1に押し付けられ、内側スリーブ14の4つの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に挟み込まれている同軸ケーブル21のシールド部材24が、内側スリーブ14のフランジ14Dの第2の方向D2を向いた面と外側スリーブ15の第1の方向D1を向いた端面との間に挟まれ、これにより、同軸ケーブル21がコネクタ11に保持される。
このとき、同軸ケーブル21の中心導体22は、中心コンタクト組立体13の中心コンタクト13Aに電気的に接続され、同軸ケーブル21のシールド部材24は、内側スリーブ14のフランジ14Dを介してコネクタ本体12に電気的に接続されている。
【0024】
ここで、同軸ケーブル21の前端21Aにコネクタ11を取り付ける際には、まず、
図7に示されるように、クランプナット17およびガスケット16に同軸ケーブル21が通され、同軸ケーブル21のシールド部材24が露出するように、同軸ケーブル21の第1の方向D1側の端部から中心軸Cに沿った所定長さの外皮25が除去される。さらに、シールド部材24が露出する同軸ケーブル21の前端21Aが外側スリーブ15に通され、内周面15Aが外皮25の第1の方向D1側の端部に接触する位置に外側スリーブ15が配置される。
【0025】
次に、同軸ケーブル21の第1の方向D1側の端部から内側スリーブ14の4つの突起部14Bが同軸ケーブル21の絶縁体23とシールド部材24との間に差し込まれ、この状態で、内側スリーブ14が第2の方向D2に押し込まれる。このようにして内側スリーブ14が第2の方向D2に移動されると、内側スリーブ14の4つの突起部14Bの傾斜面14Cが、同軸ケーブル21のシールド部材24を介して外側スリーブ15の内周面15Aの第1の方向D1側の縁部に接触する。
このとき、内側スリーブ14の4つの突起部14Bの外周側に配置されるシールド部材24の外径、すなわち、4つの突起部14Bが配置される中心軸Cを中心とした円周の直径に内側スリーブ14と外側スリーブ15との間に挟み込まれるシールド部材24の厚さの2倍の値を加算したものは、外側スリーブ15の内周面15Aの第1の方向D1側の端部の内径よりも大きいものとする。
【0026】
このため、内側スリーブ14が第2の方向D2にさらに押し込まれると、内側スリーブ14のそれぞれの突起部14Bの傾斜面14Cが、外側スリーブ15の内周面15Aの第1の方向D1側の縁部から中心軸Cに向かう方向の反力を受け、内側スリーブ14の4つのバネ部14Aのうち少なくとも1つが中心軸Cに向かって弾性変形することで、内側スリーブ14の4つの突起部14Bが、外側スリーブ15の内周面15Aの第1の方向D1側の縁部を通り抜ける。このようにして、内側スリーブ14の4つの突起部14Bが外側スリーブ15の内周面15Aの内側に位置したところで、弾性変形していたバネ部14Aが元の状態に戻る。すなわち、外側スリーブ15の内周面15Aにより内側スリーブ14の4つの突起部14Bが覆われることとなる。
【0027】
ここで、内側スリーブ14のフランジ14Dの第1の方向D1側の面をガイドとして、同軸ケーブル21の絶縁体23を切断し、第1の方向D1側の絶縁体23を除去することにより、
図7に示されるように、第1の方向D1に突出する中心導体22を露出させることができる。
【0028】
このとき、同軸ケーブル21のシールド部材24は、内側スリーブ14の4つの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に挟み込まれた状態にある。また、外側スリーブ15の内周面15Aは、第1の方向D1に向かって先細りとなる円錐面形状を有しているので、
図8に示されるように、外側スリーブ15の内周面15Aから内側スリーブ14のそれぞれの突起部14Bに、第2の方向D2に向かう方向の力成分を有する垂直抗力Nが作用する。このため、4つの突起部14Bが同軸ケーブル21の絶縁体23とシールド部材24との間に差し込まれている内側スリーブ14は、コネクタ11を取り付ける作業中にも同軸ケーブル21から第1の方向D1に外れることが防止される。
【0029】
この状態で、第1の方向D1に突出する同軸ケーブル21の中心導体22が、中心コンタクト組立体13の中心コンタクト13Aの中心導体収容孔13Cに挿入され、開口部13Dからハンダ付けすることにより、同軸ケーブル21の中心導体22を中心コンタクト13Aに接続することができる。このとき、上述したように、内側スリーブ14の4つの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に同軸ケーブル21のシールド部材24が挟み込まれ、内側スリーブ14の4つの突起部14Bが外側スリーブ15の内周面15Aにより覆われて、内側スリーブ14が同軸ケーブル21から第1の方向D1に外れることが防止されているため、効率よく、同軸ケーブル21の中心導体22と中心コンタクト13Aとの接続作業を行うことが可能となる。
【0030】
なお、同軸ケーブル21が、ロボット等に用いられるために、繰り返しの屈曲動作に耐え得るように、シールド部材24が弾力性を有する編組からなる場合は、
図9および
図10に示した従来の構造のコネクタでは、特に、コネクタの部品が同軸ケーブル21から外れやすくなる。ところが、弾力性を有する編組からなるシールド部材24を備えた同軸ケーブル21に対しても、この実施の形態に係るコネクタ11は、確実に取り付けられることとなる。
【0031】
このようにして、同軸ケーブル21の中心導体22に中心コンタクト組立体13の中心コンタクト13Aが接続されると、コネクタ本体12の第2の方向D2側の端部から、コネクタ本体12の中心コンタクト収容部12A内に中心コンタクト組立体13が挿入され、内側スリーブ14のフランジ14Dの第1の方向D1側の面がコネクタ本体12の突き当たり面12Dに接触するように、同軸ケーブル21の前端21Aがコネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに収容される。さらに、同軸ケーブル21が通されているガスケット16とクランプナット17の筒状部17Aがコネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bに挿入され、クランプナット17を中心軸Cの回りに回転させて、クランプナット17の雄ネジ部17Bをコネクタ本体12の雌ネジ部12Eにねじ込むことで、同軸ケーブル21へのコネクタ11の取り付けが完了する。
【0032】
なお、コネクタ本体12に対しクランプナット17を締め込むと、外側スリーブ15とクランプナット17との間に配置されているガスケット16が第1の方向D1に圧縮されて弾性変形し、コネクタ本体12の同軸ケーブル収容部12Bの内周面と同軸ケーブル21の外皮25の外周面の間を密閉する。これにより、同軸ケーブル21とコネクタ11との間の防水性が確保されると共に、コネクタ本体12からクランプナット17が緩むことが防止される。
ただし、防水性およびクランプナット17の緩み止めが特に必要でない場合には、ガスケット16を省略し、外側スリーブ15にクランプナット17が直接接触するような構成とすることもできる。
【0033】
このようなコネクタ11によれば、内側スリーブ14の4つの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に同軸ケーブル21のシールド部材24を挟み込むことにより、内側スリーブ14および外側スリーブ15と同軸ケーブル21のシールド部材24の中心軸Cに沿った長さに依存することなく、同軸ケーブル21に対して内側スリーブ14および外側スリーブ15を保持することができるので、コネクタ11の小型化を図ることが可能となる。
【0034】
なお、上記の実施の形態では、内側スリーブ14の4つの突起部14Bは、4つのバネ部14Aに形成されることで、それぞれ径方向に弾性変位可能に構成されているが、これに限るものではない。少なくとも1つの突起部14Bが、対応するバネ部14Aに形成されて径方向に弾性変位可能であれば、4つの突起部14Bが同軸ケーブル21の絶縁体23とシールド部材24との間に差し込まれた状態で、内側スリーブ14が第2の方向D2に押し込まれたときに、内側スリーブ14の4つの突起部14Bが、外側スリーブ15の内周面15Aの第1の方向D1側の縁部を通り抜けて、外側スリーブ15の内周面15Aの内側に位置することが可能となる。
【0035】
また、内側スリーブ14の突起部14Bは、4つに限るものではなく、内側スリーブ14が、2つ以上の突起部14Bを有していれば、これらの突起部14Bと外側スリーブ15の内周面15Aとの間に同軸ケーブル21のシールド部材24が挟み込まれた状態で、同軸ケーブル21に対し内側スリーブ14および外側スリーブ15を保持することができ、小型でありながらもコネクタ11を取り付ける作業中にも外れにくく同軸ケーブル21の前端21Aに確実に取り付けられるコネクタ11を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 コネクタ、2 接続ナット、3 シェル、3A 筒状部、4 締め付けリング、5 同軸ケーブル、6 中心導体、7 絶縁体、8 シールド部材、9 外皮、11 コネクタ、12 コネクタ本体、12A 中心コンタクト収容部、12B 同軸ケーブル収容部、12C 突出部、12D 突き当たり面、12E 雌ネジ部、13 中心コンタクト組立体、13A 中心コンタクト、13B 中心コンタクト保持部、13C 中心導体収容孔、13D 開口部、14 内側スリーブ、14A バネ部、14B 突起部、14C 傾斜面、14D フランジ、15 外側スリーブ、15A 内周面、16 ガスケット、17 クランプナット、17A 筒状部、17B 雄ネジ部、17C フランジ、21 同軸ケーブル、21A 同軸ケーブルの前端、22 中心導体、23 絶縁体、24 シールド部材、25 外皮、C 中心軸、D1 第1の方向、D2 第2の方向、N 垂直抗力。