特許第6792355号(P6792355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792355
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】内装材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20201116BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201116BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   E04B1/86 K
   B32B3/30
   B32B27/00 Z
   E04F13/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-116324(P2016-116324)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-8711(P2017-8711A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-126191(P2015-126191)
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃治
(72)【発明者】
【氏名】増田 潔
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−250501(JP,A)
【文献】 特開平05−002395(JP,A)
【文献】 実開昭61−150907(JP,U)
【文献】 特開2010−196421(JP,A)
【文献】 米国特許第06290022(US,B1)
【文献】 実開昭59−089916(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/86
E04F 13/08
B32B 3/30,27/00
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が多数設けられた基体の表面に、接着剤層を介して合成樹脂シートが貼着され、
前記合成樹脂シートと前記接着剤層とに、両者を貫通する直径0.5mm以下の貫通孔が多数設けられ
前記基体が、ガラスウールまたはロックウールを成形したものの表面に合成樹脂塗料が塗布され、さらに該合成樹脂塗料の塗装面がサンディングされたものであり、
前記凹部が、断面形状、奥行き、体積が一定でなくバラツキを有している不規則な形状であり、
前記貫通孔の空気を質量、前記凹部の空気をバネとするヘルムホルツ型吸音構造が構成されていることを特徴とする内装材(ただし、凹部が、所定間隔で平行し、ネック部および胴体部を有する溝であるものを除く)。
【請求項2】
前記合成樹脂シートは、接着剤層が設けられた状態で貫通孔が形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内装材からなる天井仕上げ材または壁仕上げ材。
【請求項4】
一方の面に接着剤層を有し、該接着剤層まで貫通する直径0.5mm以下の貫通孔が多数設けられた合成樹脂シートを、
凹部が多数設けられた基体に前記接着剤層で貼り合わせる内装材施工方法であって、
前記基体が、ガラスウールまたはロックウールを成形したものの表面に合成樹脂塗料が塗布され、さらに該合成樹脂塗料の塗装面がサンディングされたものであり、
前記凹部が、断面形状、奥行き、体積が一定でなくバラツキを有している不規則な形状であり、
前記貫通孔の空気を質量、前記凹部の空気をバネとするヘルムホルツ型吸音構造が構成されていることを特徴とする内装材施工方法(ただし、凹部が、所定間隔で平行し、ネック部および胴体部を有する溝であるものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
個人住宅、集合住宅、オフィスビル、商業施設、工場、コンサートホール等の壁や天井等に石膏ボード、ロックウールボード等が用いられている。特許文献1、2には、これら石膏ボード等の表面にエンボス模様やトラバーチン模様を形成した吸音化粧板が提案されている。
また、特許文献3には、吸音性能を高めた吸音化粧板として、平面状に画成された吸音基材の側面に、多数の微細孔が形成された化粧材を貼着してなる吸音化粧板が提案されている。特許文献3に記載された吸音化粧板は、化粧材と吸音基材とを点付け接着やパンチングメタル又はエクスパンドメタルにより部分接着している。部分接着で貼り合わされる部分は周期的であるから、微細孔の背後には均一な形状の区画が形成される。また、微細孔の一部は、接着剤で塞がれて通音性を有さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58−52804号公報
【特許文献2】特開2000−141582号公報
【特許文献3】特開平07−324400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、施工性に優れ、意匠性の高い内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.凹部が多数設けられた基体の表面に、接着剤層を介して合成樹脂シートが貼着され、
前記合成樹脂シートと前記接着剤層とに、両者を貫通する直径0.5mm以下の貫通孔が多数設けられていることを特徴とする内装材。
2.前記凹部が、不規則な形状であることを特徴とする1.に記載の内装材。
3.前記貫通孔と、前記凹部とが連通することにより、ヘルムホルツ型吸音構造を形成していることを特徴とする1.または2.に記載の内装材。
4.前記合成樹脂シートは、接着剤層が設けられた状態で貫通孔が形成されたものであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の内装材。
5.1.〜4.のいずれかに記載の内装材からなる天井仕上げ材または壁仕上げ材。
6.接着剤層を裏打ちした合成樹脂シートに、直径0.5mm以下の貫通孔を多数設けることにより、接着剤層と合成樹脂シートとを貫通する貫通孔が多数形成されていることを特徴とする、表面に凹部が多数設けられた基体の表面への貼着用である穴あき合成樹脂シート。
7.一方の面に接着剤層を有し、該接着剤層まで貫通する直径0.5mm以下の貫通孔が多数設けられた合成樹脂シートを、
凹部が多数設けられた基体に前記接着剤層で貼り合わせることを特徴とする内装材施工方法。
8.前記凹部が、不規則な形状であることを特徴とする7.に記載の内装材施工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の内装材は、基体の表面に合成樹脂シートを貼り合わせる際に、合成樹脂シートと接着剤層とを貫通する貫通孔から空気が抜け、気泡が形成されないため容易に貼り合わせることができる。また、基体から合成樹脂シートが剥がれにくく、強度、耐久性に優れている。本発明の内装材は、合成樹脂シートに設けられた貫通孔が目立たず、意匠性に優れており、合成樹脂シートの表面に印刷やエンボス加工等を施すことで、さらに意匠性を高めることができる。
【0007】
合成樹脂シートに形成された貫通孔と、基体に設けられている凹部とが連通すると、ヘルムホルツ型吸音構造が形成される。ヘルムホルツ型吸音構造が形成された内装材は、周波数によっては基体そのものよりも高い吸音性能を有する。基体表面の凹部が不規則な形状を有し、断面形状、奥行き、体積がバラツキを有する場合、広い音域の音波を吸音することができ、特に、会話音の主たる周波数帯域である500Hz〜2000Hzの広帯域の音波を効率的に吸音することができる。
【0008】
既設の壁や天井に、基体として有孔板を設置し、その上に合成樹脂シートを貼着することにより、既設建築物に容易に吸音性能を付与することができる。有孔板により吸音性を付与する場合、従来、有孔板が最表面に位置し、孔と、隣接する有孔板間の目地が視認されることから意匠性が悪い。本発明は、合成樹脂シートを有孔板の表面に貼着することにより意匠性に優れ、かつ、ヘルムホルツ型吸音構造を形成することにより吸音性を維持することができる。
【0009】
本発明の内装材は、施工性に優れ、意匠性、強度、耐久性にも優れており、天井仕上げ材や壁仕上げ材に利用することができる。また、会話音の主たる周波数帯域を吸音することができるため、会議室、オフィス室内等に適している。
接着剤層を裏打ちした合成樹脂シートに貫通孔を形成することで、合成樹脂シートと接着剤層とを貫通する貫通孔を容易に設けることができる。また、ロールtoロール法で製造することができ、生産効率に優れている。
建築物の内装構造として嵌め込まれた基体に合成樹脂シートを貼り合わせる際に気泡が形成されず、高所等の手が届きにくい箇所でも容易に合成樹脂シートを貼着することができるため、施工が容易で施工期間を短期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の内装材の第一の実施態様における部分断面図。
図2】本発明の内装材の第二の実施態様における部分断面図。
図3】本発明の内装材の第三の実施態様における部分断面図。
図4】本発明の内装材の第四の実施態様における部分断面図。
図5】実施例1、比較例1、2の内装材の垂直入射吸音率の測定結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、基体の表面に合成樹脂シートを貼着した意匠性に優れた内装材に関する。
本発明の内装材の第一の実施態様における部分断面図を図1に示す。
第一の実施態様である内装材101は、不規則な形状の凹部21が多数設けられた基体2の表面に、接着剤層5を介して合成樹脂シート4が貼着され、合成樹脂シート4と接着剤層5とには、両者を貫通する直径0.5mm以下の貫通孔3が多数設けられている。
【0012】
本発明における基体としては、ガラスウール、ロックウール等を成型したもの、木毛セメント板、石膏ボード、セメント板等を穴あけしたもの、発泡ポリウレタン樹脂、アルミ焼結板等、及び、これらの積層体を用いることができる。また、コンクリート、ガラス繊維補強セメント(GRC)、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート(ALC)、鉄板、押し出し成形セメント板、石膏ボード、ガラス等の剛性を有する材料の平滑な表面に凹部を形成したもの、または、これらの剛性を有する材料の表面に、石膏ボードや鉄板からなる有孔板を設置したもの用いることができる。
基体は、表面が平らで、かつ、多数の凹部を有することを特徴とする。基体の表面を平らにする方法は特に制限されず、例えば、石膏ボード、発泡ポリウレタン樹脂、セメント系材料からなる基体であれば、平滑な面を有する型枠に流しこんで硬化させればよい。ガラスウール、ロックウールを成型した基体は、その表面に合成樹脂塗料等を塗布して表面を平らにすればよい。また、凹部を形成する方法も特に制限されないが、例えば、平らな表面を有する基体にエンボスロール等で型押し加工を施し、凹部を形成することができる。また、凹部を形成後に、再度、塗装を行ってもよい。さらに、塗装面をサンドペーパー等でサンディングしてもよい。なお、塗装面には基体と合成樹脂シートの接着力を向上させるために、プライマーを塗布してもよい。
【0013】
合成樹脂シート4の種類としては、特に制限することなく使用することができる。例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等からなる合成樹脂シートを用いることができる。合成樹脂シート4の厚さは、通常0.1mm以上3.0mm以下程度である。
合成樹脂シート4の一方の面には接着剤層5が設けられている。接着剤の種類は特に制限されず、従来公知の感圧性接着剤、感熱性接着剤等を使用することができる。感熱性接着剤は、熱を加えすぎると流動性が大きくなりすぎて貼り合わせ時に貫通孔3を塞ぐことがあるため、感圧性接着剤が好ましい。また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物を含まない接着剤を用いることが好ましい。
【0014】
合成樹脂シート4と接着剤層5とには、両者を貫通する多数の貫通孔3が形成されている。貫通孔3の形状は特に制限されず、円、楕円、多角形等を挙げることができる。貫通孔3は合成樹脂シート4の全面に設けられていればよく、規則的、またはランダムなパターンで設けることができる。貫通孔3の数密度は、開口面積率と貫通孔の直径に影響されるが、通常1〜10000個/cmの範囲内である。
【0015】
合成樹脂シート4と接着剤層5とを貫通する貫通孔3を形成する方法は制限されないが、合成樹脂シート4の一方の面に接着剤層5を形成した後に、レーザー、針、ドリル等で穴あけ加工を行うことにより、両者を貫通する貫通孔を効率的に形成することができる。これらの中で、レーザーで穴あけ加工を行うことが貫通孔3の位置、大きさ、数を容易に調節することができるため好ましい。
合成樹脂シート4と接着剤層5とを貫通する貫通孔3の直径は0.5mm以下である。ここで、貫通孔の形状が円でない場合に、貫通孔の直径とは合成樹脂シート表面に平行方向の断面で最も大きな径を意味する。直径が0.5mmより大きいと、合成樹脂シート4の貫通孔3が目立つため意匠性が低下し、また、合成樹脂シートの強度が低下して破れやすくなる。貫通孔3の直径は0.02mm以上であることが好ましい。直径が0.02mmよりも小さいと、加工が困難であり高コストとなる。貫通孔3の直径は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
合成樹脂シート4の全面積に対する貫通孔3の総面積の割合である開口面積率は5.0%未満であることが好ましい。開口面積率が5%以上となると、貫通孔3が目立つようになり意匠性が低下し、また、合成樹脂シート4の強度が低下して破れやすくなる。開口面積率は、4.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。開口面積率は0.1%以上であることが好ましい。開口面積率が0.1%より小さいと、貼り合わせ時に形成された気泡が取り除きにくくなる。開口面積率は0.5%以上であることがより好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明において、合成樹脂シート4の接着剤層5が設けられていない側の表面が内装材の最表面となる。そのため、合成樹脂シート4の表面に印刷やエンボス加工等を施して意匠性を高めることが好ましい。印刷やエンボス加工等を施すことで合成樹脂シート4に形成された貫通孔3を更に目立たなくすることができる。印刷、エンボス等の加工は、穴あけの前、または後に行うことができる。本発明の合成樹脂シート4は、開口面積率と貫通孔の直径とが小さく、機械加工が可能な強度を維持しているため、穴あけ加工の後に印刷、エンボス等の加工を施すこともできる。ただし、穴あけ加工の後に印刷、エンボス等の加工を施すと、貫通孔3が潰れたり埋まったりすることがあるため、穴あけ加工の前に施すことが好ましい。
【0018】
合成樹脂シート4と接着剤層5の積層体に両者を貫通する貫通孔3を設けるには、長尺ロール状の合成樹脂シート原紙に接着剤塗布工程、離型紙貼りあわせ工程、孔あけ加工工程を連続的に行えばよい。なお、上記工程は一例であり、孔あけ加工工程の後に離型紙貼りあわせ工程を行ってもよく、印刷工程とエンボス工程のいずれか、または両方を接着剤塗布工程前に行ってもよい。この方法により、合成樹脂シート4/接着剤層5/離型紙の順で積層された貫通孔3を有する積層体の長尺ロールを、いわゆるロールtoロールで連続的に製造することができるため、生産効率に優れている。
【0019】
第一の実施態様である内装材101は、基体2と合成樹脂シート4とが、接着剤層5で貼着されてなる。基体2の凹部21を除く表面は平らであり、凹部21の奥行きは、同一でも、バラツキがあってもよい。凹部21の奥行きが同一の場合は低周波数帯域で吸音性能を大きく向上させられる。凹部21の奥行きにバラツキを持たせれば、広い周波数帯域で吸音性能を向上させられる。基体2は、凹部21を除く平らな部分で合成樹脂シート4と貼着されるため、基体2と合成樹脂シート4とは強固に貼り合わされる。第一の実施態様である内装材101は、基体2から合成樹脂シート4が剥がれにくく、強度、耐久性に優れている。また、合成樹脂シート4と基体2とは凹部21を除く広い面積で貼り合わされ、強く押し付けて貼り合わせる必要がないため、貼り合わせ時に接着剤層5が変形して貫通孔3を塞ぐことはない。
【0020】
第一の実施態様である内装材101は、基体2表面に設けられた吸音性能を発揮するための凹部21が、合成樹脂シート4で覆われているにも関わらず、周波数によっては基体2そのものよりも高い吸音性能を有する。これは、内装材101が、基体2の凹部21による吸音性能と合わせて、ヘルムホルツ型吸音構造6による吸音性能を有するためである。以下に、内装材101が有するヘルムホルツ型吸音構造6について詳述する。
【0021】
第一の実施態様である内装材101において、基体2表面の凹部21の部分は合成樹脂シート4と貼り合わされない。そのため、合成樹脂シート4と接着剤層5とを貫通する貫通孔3の背後に基体2の凹部21が位置すると、貫通孔3と凹部21とが連通し、貫通孔3の空気を質量、凹部21の空気と基体内の空気をバネとするいわゆるヘルムホルツ型吸音構造6が構成される。このヘルムホルツ型吸音構造6に特定の周波数の音波が当たると、貫通孔3付近の空気が振動し、粘性損失によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて特定の周波数の音波が吸音される。
ヘルムホルツ型吸音構造6により吸音される音の周波数や吸音率は、貫通孔3の断面積、深さ、凹部21の断面形状、奥行き、体積、基体2の厚さにより変化する。本発明において使用する基体2の凹部21は、規則的な形状、不規則な形状のいずれであってもよいが、不規則な形状を有し、断面形状、奥行き、体積等が一定でなくバラツキを有していることが好ましい。凹部21が不規則な形状を有すると、ヘルムホルツ型吸音構造6で吸音することのできる音域が広く、会話音の主たる周波数帯域である500Hz〜2000Hzの広帯域の音波を効率的に吸音することができる。本発明の内装材101は、会話音の周波数帯域を効率的に吸音することができ、印刷やエンボス加工により木目調や大理石調等の外観を付与することができるため、会議室、応接室、教室、オフィス室内等に好適に利用することができる。
【0022】
第一の実施態様である内装材101において、ヘルムホルツ型吸音構造6が効果的に形成されるように、基体2と合成樹脂シート4とを貼り合わせたときに、合成樹脂シート4の凹部21を覆う部分が一つ以上の貫通孔3を有することが好ましい。具体的には、凹部21の面積を1/Xcmとしたときに、貫通孔3の数密度をX個/cm以上とすると、合成樹脂シート4の一つの凹部21を覆う部分に一つ以上の貫通孔3が位置することになる。本発明では、基体2として市販されているものを用いることができるため、これら市販の基体の凹部21の平均面積の逆数よりも大きな数密度となるように合成樹脂シート4に貫通孔3を設ければよい。
【0023】
ここで、基体2のひとつとして例示したロックウールを成型したものは強度に劣るため、ロックウールを成型した基体2は人や物と接触することの多い壁材として利用されることは少なく、天井材として利用されることが多かった。それに対し、第一の実施態様である内装材101は、基体2が合成樹脂シート4で保護されているため天井仕上げ材のみでなく、壁仕上げ材としても利用することができる。壁仕上げ材には天井仕上げ材と比較すると意匠性が要求されるが、第一の実施態様である内装材101は印刷等により意匠性を高めることができる。また、合成樹脂シート4の表面にハードコート処理等を施すことで、さらに耐傷性を向上させることができる。さらに、合成樹脂シート4、基体2のいずれかまたは両方に、消臭機能、防カビ機能、防汚機能、調湿機能等を付与してもよい。
【0024】
第一の実施態様である内装材101は、施工現場において、壁面や天井面にパネル状の基体2を嵌め込んだ後、接着剤層5上に剥離紙を有するロール状の合成樹脂シート4と接着剤層5との積層体を所定の長さだけ切り取り、離型紙を剥離した後に、基体2に貼着するだけで施工することができる。合成樹脂シート4と接着剤層5とには、両者を貫通する貫通孔3が形成されており、基体2に貼り付ける際に空気が貫通孔3から抜けて気泡は形成されない。そのため、天井や、手が届きにくい箇所であっても気泡の形成を気にすることなく容易に貼着することができ、貼り直し作業の量も減少するため、施工期間を短くすることができる。
【0025】
本発明の内装材の第二の実施態様における部分断面図を図2に示す。なお、図2において、第一の実施態様と同一の部材には同一の符号を付す。
第二の実施態様である内装材102は、コンクリート等の剛性を有する材料からなり、吸音性を有さない基体7の表面に、規則的な形状の凹部71を形成し、この基体7を用いた以外は、第一の実施態様と同様である。
第二の実施態様である内装材102において、基体7は吸音性を有さないが、凹部71を形成し、その上から貫通孔3を有する合成樹脂シート4を貼り合わせることにより、ヘルムホルツ型吸音構造6による吸音性能を付与することができる。なお、第二の実施態様において、凹部71は、不規則な形状であってもよい。
【0026】
本発明の内装材の第三、第四の実施態様における部分断面図を、それぞれ図3、4に示す。なお、図3、4において、第一の実施態様と同一の部材には同一の符号を付す。
第三の実施態様である内装材103は、グラスウールボードまたは空気層の両面に二層の石膏ボードを貼り合わせた遮音構造壁8に、有孔板9を直貼りし、さらに合成樹脂シート4を貼り合わせたものである。第四の実施態様である内装材104は、コンクリート等の剛性を有する材料からなる壁10に、吸音性を有する有孔板9を、従来と同様に下地材11を介して設置し、さらに、この有孔板9に合成樹脂シート4を貼り合わせたものである。なお、第四の実施態様である内装材104において、壁10と下地材11との間には、空気層が存在する。
第三、第四の実施態様である内装材103、104は、基体として有孔板9を施工することにより、既設の遮音構造壁8や壁10に、有孔板9が備える孔91を利用したヘルムホルツ型吸音構造6を形成し、吸音性能を付与することができる。
【実施例】
【0027】
「実施例1」
表面に不規則な形状の凹部が多数形成されたロックウールからなる基体に、直径0.4mmの貫通孔を開口面積率1.4%となるように一様に設けた塩化ビニルからなる合成樹脂シートを貼り合わせて、内装材1とした。基体と合成樹脂シートとの貼り合わせは容易であり、迅速に行うことができた。
【0028】
「比較例1」
表面に貫通孔が形成されていない合成樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様にして内装材2とした。基体と合成樹脂シートとを貼り合わせる際には、内部に気泡が形成されないように慎重に行う必要があった。
「比較例2」
実施例1で用いた基体を内装材3とした。
【0029】
上記内装材1〜3の垂直入射吸音率をJIS A1405−2に準拠して測定した。
測定結果を図5に示す。
【0030】
本発明の内装材1である実施例1は、基体表面に音を反射する合成樹脂シートを貼着しているにもかかわらず、優れた吸音率を示した。これは、合成樹脂シートと接着剤層とを貫通する貫通孔とこの貫通孔の背後に位置する凹部と基体が形成するヘルムホルツ型吸音構造により音波が吸音されたためである。実施例1で使用した本発明の内装材は、広い周波数帯域で高い吸音性能を有しており、基体表面の凹部の形状がバラツキを有することにより、吸音される周波数帯域を広くできることが確かめられた。また、貫通孔の直径は0.4mm、開口面積率は1.4%と小さいため、かなり接近しないと肉眼で貫通孔を確認することはできなかった。
【0031】
比較例1の内装材2は、凹部を有する基体に貫通孔が形成されていない合成樹脂シートを貼り合わせたものである。比較例1の内装材2は吸音性能が非常に小さく、その垂直入射吸音率は100〜5000Hzのほとんどの周波数帯域で0.1以下であった。これは、基体を覆う合成樹脂シートに音が反射してしまったためである。
比較例2の内装材3は、凹部を有する基体のみからなる。比較例2の内装材3は、基体に形成された凹部に入射した音波が、基体の隙間の空気を振動させて散逸することにより、吸音効果を発揮するものであるが、100〜1200Hzの範囲で実施例1よりも吸音性能に劣っていた。
【符号の説明】
【0032】
101 第一の実施態様である内装材
2 基体
21 不規則な形状の凹部
3 貫通孔
4 合成樹脂シート
5 接着剤層
6 ヘルムホルツ型吸音構造

102 第二の実施態様である内装材
7 基体
71 規則的な形状の凹部

103 第三の実施態様である内装材
8 遮音構造壁
9 有孔板(基体)
91 孔

104 第四の実施態様である内装材
10 壁
11 下地材
図1
図2
図3
図4
図5