(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792371
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】指紋検出液
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1172 20160101AFI20201116BHJP
【FI】
A61B5/1172
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-152572(P2016-152572)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-19881(P2018-19881A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月29日に、和歌山県警察本部 刑事部 鑑識課にて、▲樋▼口一博が公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591136193
【氏名又は名称】キンセイマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】谷 浩吉
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 淳也
【審査官】
福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−159233(JP,A)
【文献】
特開2000−245714(JP,A)
【文献】
特表2009−504833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒子と、
シリコーンとを含む指紋検出液であって、
カチオン系界面活性剤と、
前記カチオン系界面活性剤をイオン化させるイオン化液とをさらに含み、
前記カチオン系界面活性剤が、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを含むことを特徴とする指紋検出液。
【請求項2】
前記イオン化液が水を含むことを特徴とする請求項1に記載の指紋検出液。
【請求項3】
前記シリコーンが、下記式(
1)で表されるポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする請求項1に記載の指紋検出液。
【化1】
[式中、R
1は式(
2):−R
2−O−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
bR
3で示されるポリオキシアルキレン基(式中、R
2は炭素原子数2〜30のアルキレン基であり、R
3は式(
3):−(OC)−R
4で表される置換基(R
4は炭素原子数1〜30のアルキル基))であり、aは1≦a≦50であり、bは1≦b≦50であり、10≦a+b≦100であり、m,nはそれぞれ100≦m≦500、1≦n≦40である。]
【請求項4】
前記顔料粒子が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム粉、銅粉、よりなる群より選んだ少なくとも一種又はそれらの複合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の指紋検出液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指紋検出液に関する発明である。本発明は特に犯罪捜査に適した指紋検出液に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
犯罪捜査の際には、いずれかの箇所に潜在的に形成された指紋を採取しなければならない。指紋は、手の指が接触した箇所に指紋隆線の汗腺開口からの分泌物(以下、この分泌物は「指紋成分」と称される。)がいずれかの箇所に付着することで形成される。その指紋を採取する方法は、採取者がその分泌物に対して付着性の微粉末を塗布した後、採取者がその微粉末をゼラチン紙等に付着させるという方法が一般的である。その微粉末がゼラチン紙等に付着することで、指紋は視覚化される。
【0003】
そのような微粉末の例には、アルミニウム粉末とカーボンブラックとがある。これらの微粉末には、水に濡れた箇所からの指紋採取が困難という問題点がある。これらの微粉末によって水に濡れた箇所から指紋を採取する場合、その箇所が自然に乾燥するまで待つか何らかの手段でその箇所を乾燥させる必要がある。さらに、これらの微粉末には、クラフトテープからの指紋採取が困難という問題点がある。
【0004】
特許文献1は、指紋検出液を開示する。この指紋検出液は、顔料粉末とシリコーン化合物とを極性溶媒で希釈したものである。特許文献1に開示された指紋検出液は、水に濡れた箇所からの指紋採取が可能である。
【0005】
特許文献2は、指紋検出液を開示する。この指紋検出液は、顔料粉末と界面活性剤とを水で希釈したものである。特許文献2に開示された指紋検出液は、水に濡れた箇所からの指紋採取が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/51219号
【特許文献2】特開2005−27986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された指紋検出液にはクラフトテープからの指紋採取が困難という問題点がある。特許文献2に開示された指紋検出液には、指紋が採取される箇所により指紋の採取能力に違いがあるという問題点がある。特許文献2に開示された指紋検出液には、指紋が採取される箇所に応じて濃度および配合の少なくとも一方を調整する必要があるという問題点もある。このことは、指紋採取の手順を煩雑にする。
【0008】
本発明の目的は、濃度および配合の調整をすることなく濡れた箇所その他の様々な箇所から鮮明に指紋を採取できる指紋検出液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる指紋検出液は、顔料粒子と、シリコーンとを含む。請求項1にかかる指紋検出液は、カチオン系界面活性剤と、イオン化液とをさらに含むことを特徴とする。イオン化液はカチオン系界面活性剤をイオン化させる。
カチオン系界面活性剤が、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを含む。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
また、本発明の請求項
2にかかる指紋検出液は、請求項1にかかる発明の構成に加えて、イオン化液が水を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項
3にかかる指紋検出液は、請求項1にかかる発明の構成に加えて、シリコーンが、下記式(
1)で表されるポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする。
【化1】
[式中、R
1は式(
2):−R
2−O−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
bR
3で示されるポリオキシアルキレン基(式中、R
2は炭素原子数2〜30のアルキレン基であり、R
3は式(
3):−(OC)−R
4で表される置換基(R
4は炭素原子数1〜30のアルキル基))であり、aは1≦a≦50であり、bは1≦b≦50であり、10≦a+b≦100であり、m,nはそれぞれ100≦m≦500、1≦n≦40である。]
【0015】
また、本発明の請求項
4にかかる指紋検出液は、請求項1にかかる発明の構成に加えて、顔料粒子が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム粉、銅粉、よりなる群より選んだ少なくとも一種又はそれらの複合体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の指紋検出液は、濃度および配合の調整をすることなく濡れた箇所その他の様々な箇所から鮮明に指紋を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図2】指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図3】指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図4】指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図5】指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図6】指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図7】指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの非粘着面)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図8】指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの粘着面)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図9】指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図10】指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図11】指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図12】指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図13】指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図14】指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図15】指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図16】指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図17】指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図18】指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの非粘着面)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【
図19】指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの粘着面)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
【0018】
[指紋検出用
液の成分]
本発明にかかる指紋検出液は、顔料粒子(顔料として知られる周知の物質を含む粒子のこと)と、シリコーンとに加え、イオン化液と、カチオン系界面活性剤とを含むことを特徴とする。
【0019】
シリコーンばかりでなく、カチオン系界面活性剤を含むことが、顔料粒子と指紋成分との親和性を高める。これにより、指紋成分以外の物質への顔料粒子の付着が抑えられる。カチオン系界面活性剤とシリコーンとを併用することで、それぞれを単独で用いた場合よりも、指紋が視覚化されたときその指紋の像がより鮮明になる。
【0020】
本発明にかかるカチオン系界面活性剤は、
オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを含む。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートの化学構造は下記式(
4)で表される。
【化2】
【0025】
本発明にかかる指紋検出液においてカチオン系界面活性剤の重量%は特に限定されない。ただし、このカチオン系界面活性剤の重量%は、0.01重量%以上10.00重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明においてシリコーンの化学構造は特に限定されない。本発明にかかる指紋検出液が含み得るシリコーンの例には、ジメチルシリコーン、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、フェニルトリメチコンがある。好ましくは、本発明にかかる指紋検出液は、上述されたシリコーンとして下記式(
1)で表されるポリエーテル変性シリコーンを含む。なお、このポリエーテル変性シリコーンの一種として、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーンがある。
【化3】
[式中、R
1は式(
2):−R
2−O−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
bR
3で示されるポリオキシアルキレン基(式中、R
2は炭素原子数2〜30のアルキレン基であり、R
3は式(
3):−(OC)−R
4で表される置換基(R
4は炭素原子数1〜30のアルキル基))であり、aは1≦a≦50であり、bは1≦b≦50であり、10≦a+b≦100であり、m,nはそれぞれ100≦m≦500、1≦n≦40である。]
【0027】
本発明にかかる指紋検出液においてシリコーンの重量%は特に限定されない。ただし、本発明にかかる指紋検出液が上記式(
1)で示されるポリエーテル変性シリコーンを含む場合、そのポリエーテル変性シリコーンの重量%は、0.10重量%以上40.00重量%以下であることが好ましい。
【0028】
どのような形態でシリコーンが含まれるかという点は、本発明にかかる指紋検出液において特に限定されない。例えば、シリコーンは、液中に分散していても良い。あるいは、シリコーンは、顔料粒子の表面に形成された被膜(本発明の説明においてはこの被膜は「表層」と称される。)の成分であっても良い。あるいは、シリコーンは、顔料粒子の成分の一種であってもよい。
【0029】
シリコーンが顔料粒子の表層に含まれている場合、その表層の厚さは特に限定されない。その表層の具体的な形態も特に限定されない。
【0030】
本発明にかかる指紋検出用
液において顔料粒子の具体的な成分は特に限定されない。顔料粒子の成分のうち顔料として周知の物質の例には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム粉、および、銅粉がある。これらの中で、顔料粒子の成分として好ましいものには、酸化チタン、酸化鉄がある。本発明にかかる顔料粒子は、これらのうち二種類以上の物質の複合体であってもよい。
【0031】
[指紋検出用
液の製造方法]
本発明にかかる指紋検出用
液の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明にかかる指紋検出用
液は、次に述べられる方法により製造されてもよい。その方法とは、周知の方法により顔料粒子を形成した後、その顔料粒子の表面に周知の方法でシリコーンを付着させ、水および界面活性剤と混合するというものである。その他、周知の方法によりシリコーンを含有する顔料粒子を形成した後、その顔料粒子を水および界面活性剤と混合するという方法で本発明にかかる指紋検出用
液を製造してもよい。その他、周知の方法により顔料粒子を形成した後、その顔料粒子とポリエーテル変性シリコーンと水および界面活性剤と混合するという方法で本発明にかかる指紋検出用
液を製造してもよい。
【0032】
[指紋検出用
液の使用方法]
本発明にかかる指紋採取溶液の使用方法は特に限定されない。例えば、噴霧又は浸漬により本発明にかかる指紋採取溶液を指紋が採取される箇所に接触させた後、水洗によりその箇所から余剰の顔料粒子を除去するという方法がある。噴霧又は浸漬の方法は特に限定されるものではない。例えば、本発明にかかる指紋採取溶液は、霧吹き又は噴霧用ポンプによって噴霧されてもよい。上記水洗は顕在化した指紋に水をかけることで十分である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の一実施形態における実施例1〜2を比較例1〜7と共に説明する。
[実施例1]
作業者は、酸化チタン(石原産業株式会社製CR−EL)10gとポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製SH3749)0.1gとを良く混合した後、それにイオン交換水100gとオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート0.1gとを加え攪拌した。撹拌されたものが、本実施例にかかる指紋検出液である。
【0034】
[実施例2]
作業者は、酸化鉄(関東化学株式会社製 四酸化三鉄 鹿一級)5gとポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製SH3749)0.1gとを良く混合した後、それにイオン交換水100gとオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート0.1gとを加え攪拌した。撹拌されたものが、本実施例にかかる指紋検出液である。
【0035】
[比較例1]
作業者は、市販の指紋検出粉(株式会社科学装備研究所 スーパーホワイト)10gとイオン交換水100gとを混合した。混合されたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0036】
[比較例2]
作業者は、アミノプロピルジメチコン1gとジメチルシリコーン1gとイソプロピルアルコール20gと酢酸0.1gとイオン交換水77.9gとを混合攪拌した。作業者は、その混合撹拌によって得られた混合水溶液100gに対し、酸化チタン10gを加えた。その混合水溶液が、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0037】
[比較例3]
作業者は、四三酸化鉄3gとポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王ケミカル製エマルゲン130k)0.3gとイオン交換水100gとを混合した。混合されたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0038】
[比較例4]
作業者は、酸化チタン10gとイオン交換水100gとオクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート0.1gとを混合し攪拌した。撹拌されたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0039】
[比較例5]
作業者は、酸化チタン10gとポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製SH3749)0.1gとを混合した後、イオン交換水100gを加えた。イオン交換水100gが加えられたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0040】
[比較例6]
作業者は、酸化チタン10gとポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製SH3749)0.1gとを混合した後、イオン交換水100gと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1gとを加え攪拌した。撹拌されたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0041】
[比較例7]
作業者は、酸化チタン10gとポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製SH3749)0.1gとを混合した後、イオン交換水100gとポリオキシエチレンソルビタンモノオレート0.1gとを加え攪拌した。撹拌されたものが、本比較例にかかる指紋検出液である。
【0042】
[濡れた検体に対する効果の確認]
作業者は、次に述べられる手順により、濡れた箇所からの指紋採取が可能か否かを確認した。まず、作業者は、検体を作成した。検体は、次に述べられる素材の板又はシートであった。その素材は、アクリル、アルミ、ガラス、タイル、クラフトテープの非粘着面、クラフトテープの粘着面、養生テープの非粘着面、養生テープの粘着面、ビニルテープの非粘着面、および、ビニルテープの粘着面であった。1種類の素材につき9枚の検体が作成された。次に、作業者は、すべての検体に指を接触させた。これにより、それらに指紋成分が付着した。次に、作業者は、すべての検体に水を吹き付けた。これにより、それらの検体が水に濡れた状態が再現された。次に、作業者は、それらの検体に指紋検出液を噴霧した。噴霧される指紋検出液は、実施例1,2にかかる指紋検出液と比較例1乃至比較例7にかかる指紋検出液とであった。指紋検出液が噴霧されると、作業者は、その検体を水洗した。水洗により、各検体の表面に指紋が現れた。指紋が現れると、作業者は、その指紋の鮮明さを観察し評価した。表1には評価の結果が示される。
【0043】
【表1】
【0044】
表1における二重丸印は、指紋の隆線間に顔料粒子の付着がなく、かつ、指紋を表わす線が濃いことを意味する。表1における一重丸印は、指紋の隆線間に顔料粒子の付着がないものの、指紋を表わす線が薄いことを意味する。表1における三角印は、指紋の隆線間に顔料粒子の付着があることを意味する。表1におけるバツ印は、指紋の隆線がほとんど見えないことを意味する。表1におけるアスタリスクは、指紋が検体自体の色と同化するため指紋が見えないことを意味する。
【0045】
図1は、指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図2は、指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図3は、指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ実施例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図4は、指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図5は、指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図6は、指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図7は、指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの非粘着面)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図8は、指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの粘着面)へ実施例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図1乃至
図8から明らかなように、実施例1,2にかかる指紋検出液によって得られた指紋は鮮やかである。
【0046】
一方、
図9は、指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図10は、指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図11は、指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例1にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図12は、指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図13は、指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図14は、指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例2にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図15は、指紋がつけられた検体(素材はアクリル)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図16は、指紋がつけられた検体(素材はガラス)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図17は、指紋がつけられた検体(素材はタイル)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図18は、指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの非粘着面)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図19は、指紋がつけられた検体(素材はクラフトテープの粘着面)へ比較例3にかかる指紋検出液を噴霧し水洗した結果得られた指紋の写真である。
図9乃至
図19から明らかなように、比較例1乃至比較例3にかかる指紋検出液によって得られた指紋は検体の素材に応じてその鮮やかさが異なる。
【0047】
以上の説明から明らかな通り、実施例1、2にかかる指紋検出液は、比較例にかかる指紋検出液に比べ、濃度および配合の調整をしなくても、指紋を検出可能な素材の種類と検出される指紋の鮮明さとにおいて優れた結果を示した。すなわち、本発明にかかる指紋検出液は、濃度および配合の調整をしなくても、指紋検出が可能な素材の種類数と鮮明な指紋を採取できる点とにおいて、従来の指紋検出液に比べ、優れた効果が見られた。