特許第6792375号(P6792375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792375
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】サンセンサ及び人工衛星
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20201116BHJP
   B64G 1/36 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G01J1/02 U
   B64G1/36 D
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-157245(P2016-157245)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-25463(P2018-25463A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 佳人
(72)【発明者】
【氏名】千田 大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 積利
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−064611(JP,A)
【文献】 特開2002−221408(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0317283(US,A1)
【文献】 実開昭63−021811(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/136171(WO,A2)
【文献】 特開2010−077719(JP,A)
【文献】 特開平07−159236(JP,A)
【文献】 実開平2−141814(JP,U)
【文献】 特開平11−211562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
G01C 1/00−1/14
G01S 3/78−3/789
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光孔を有する導光部材と、
前記導光孔に対面するイメージセンサと、
前記イメージセンサによって前記導光孔から入射する太陽のスポット光を受光することにより得られる画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した画像データにおいて、所定の輝度条件を満たす点像を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した点像の輝度値に基づいて重心計算をする重心計算手段と、を備え
前記重心計算手段は、抽出した点像の2次元配列に対して垂直方向の輝度を足し合わせて生成された水平方向の1次元配列、及び、抽出した点像の2次元配列に対して水平方向の輝度を足し合わせて生成された垂直方向の1次元配列に基づいて、重心計算を行うことを特徴とするサンセンサ
【請求項2】
前記抽出手段は、前記画像データにおいて所定の輝度条件を満たす複数の点像が存在する場合には、前記複数の点像のうち輝度が最も高い点像を抽出することを特徴とする請求項1に記載のサンセンサ
【請求項3】
前記輝度条件を満たすことは、前記輝度が所定の閾値を超えることであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサンセンサ
【請求項4】
記イメージセンサに対する入射光の角度を取得する入射角取得手段と、前記入射角取得手段が取得する角度情報を出力する情報出力手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサンセンサ
【請求項5】
前記導光部材は、厚さ方向に外径が漸小する貫通孔を有する板状部材で構成され、
前記導光孔は、前記貫通孔のうち外径が最も小さい部分の開口により形成され、
前記貫通孔のうち外径が最も大きい側となる前記板状部材の表面側には光学フィルタが配置され、前記板状部材の裏面側には前記イメージセンサが所定の間隔をあけて配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサンセンサ
【請求項6】
前記導光部材は、前記導光孔に連通する連通孔を有する筐体内に配置され、前記光学フィルタは、前記導光部材と、前記筐体との間に配置されたことを特徴とする請求項5に記載のサンセンサ
【請求項7】
前記筐体の内部には、前記導光部材が固定される固定部が前記連通孔の周縁部に設けられ、
前記イメージセンサが設けられたセンサ基板は、前記導光部材と非接触の状態で前記導光孔との間に所定間隔をあけて前記筐体の内壁に固定されたことを特徴とする請求項6に記載のサンセンサ
【請求項8】
前記光学フィルタは、前記導光孔と前記イメージセンサとの間隔よりも大きい厚みを有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のサンセンサ
【請求項9】
前記イメージセンサは、カラーフィルタを備えたCMOSイメージセンサであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のサンセンサ
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のサンセンサと、前記サンセンサの出力データに基づいて衛星本体の向き又は軌道を制御するための制御手段とを備えたことを特徴とする人工衛星。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ピンホール等の導光孔を通じて受光する点像を取り扱う情報処理装置、及びこの情報処理装置を組み込んだ太陽光受光素子、並びに、この太陽光受光素子を搭載した人工衛星に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光の入射角度を測定するためのサンセンサとして、スロットを通過する太陽光として入射するスポット位置により異なる起電力を発生するポジション・センシティブ・ディテクタ(PSD)を用いて、太陽光検出を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−102397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すような従来のサンセンサでは、例えば、太陽光以外の光入射があると、太陽光のスポット位置として誤検知するおそれがある。前述のPSDは入射光により発生した起電力のみが情報として出力されるため、複数の光入射の情報は合成されて出力され、太陽光のみのスポット位置を情報処理により切り分けることは困難である。なお、このような問題は、上述した太陽光に限らず、他の用途においても同様に発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、検知したい光のスポットを高精度に抽出できる情報処理装置、及び太陽光受光素子、並びに人工衛星を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のサンセンサは、導光孔を有する導光部材と、前記導光孔に対面するイメージセンサと、前記イメージセンサによって前記導光孔から入射する太陽光のスポット光を受光することにより得られる画像データを取得する取得手段と、前記取得手段が取得した画像データにおいて、所定の輝度条件を満たす点像を抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した点像の輝度値に基づいて重心計算をする重心計算手段と、を備え、前記重心計算手段は、抽出した点像の2次元配列に対して垂直方向の輝度を足し合わせて生成された水平方向の1次元配列、及び、抽出した点像の2次元配列に対して水平方向の輝度を足し合わせて生成された垂直方向の1次元配列に基づいて、重心計算を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の輝度条件を満たす点像を抽出するようにしたので、検知したい点像を高精度に抽出する情報処理装置、及び太陽光受光素子、並びに人工衛星を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の分解斜視図。
図2】本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の分解斜視図。
図3】本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の組立状態を示す斜視図及び要部断面図。
図4】本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の要部を示す斜視図。
図5】本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の要部断面図。
図6】太陽光の代わりにレーザ光を太陽光受光素子1に入射させる位置を変更したときのスポット位置の変化を示す図。
図7】入射角の算出方法を示す概略図。
図8】実施形態1に係る太陽光受光素子のシステムブロック図。
図9】実施形態1に係る太陽光受光素子のプロセッサの機能ブロック図。
図10】実施形態1に係るプロセッサによる入射角度算出を行う全体フロー図。
図11】複数の点像が形成された場合の概念図。
図12】他の実施形態に係る太陽光受光素子のシステムブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
<実施形態1>
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る太陽光受光素子の分解斜視図であり、図3太陽光受光素子の組立状態を示す斜視図及び要部断面図であり、図4図1の太陽光受光素子の要部を示す斜視図であり、図5図1の太陽光受光素子の断面図である。
【0010】
図示するように、本実施形態の太陽光受光素子1は、太陽光の入射角を計測するためのセンサ素子であり、外装を構成する箱状の筐体10と、この筐体10内に配置される受光部品20と、受光部品20が内部に配置された筐体1の蓋部材となるバックカバー30とで構成される。
【0011】
また、筐体10には、受光側となる表面10a側の中央部において、その厚さ方向に貫通する1つの円形貫通部11が設けられている。そして、この円形貫通部11が設けられた筐体10の表面10aには、円形貫通部11の開口周縁部を取り囲むように環状の突起部12が設けられ、ピンホールPHまでの光路の一部を構成する環状傾斜面12aの延長線上にピンホールPHが形成される。
【0012】
このような筐体10の後方には、導光孔となるピンホールPHが設けられた円板形状のアパーチャ(導光部材)21が配置される。このアパーチャ21は、中心部において厚さ方向に外径が漸小する貫通孔21aが設けられている。なお、ここではアパーチャ21を円形の板状部材で構成したが、四角形など他の外形としてもよい。
【0013】
このようなアパーチャ21においては、貫通孔21aのうち外径が最も大きい側が、筐体10が有する円形貫通部11側に向けられ、外径が最も小さい側の開口によってピンホールPHの外径が規定される。つまり、筐体10の外からの光は、環状傾斜面12aから貫通孔21aの内面に沿ってピンホールPHに導かれ、ピンホールPHからイメージセンサSに対し、ピンホールPHの外形に沿ってスポット的に入射する。
【0014】
このような構成のアパーチャ21は、筐体10の内壁10bに設けられた円形凹部(固定部)13に埋設され、2つのビスBを通じて筐体10に固定される。このとき、本実施形態では、アパーチャ21と筐体10との間には、光学フィルタFが配置される。
【0015】
詳細には、この光学フィルタFは、例えば、本実施形態では、筐体10の円形凹部13の周縁部に接着剤によって予め固着され、その上からアパーチャ21が固定される。なお、光学フィルタFは、アパーチャ21側に先に固定してもよいし、アパーチャ21と筐体10との間で把持固定するようにしてもよい。
【0016】
このように、アパーチャ21が筐体10に固定された状態においては、筐体10に設けられた円形貫通部1の環状傾斜面12aが、アパーチャ21の貫通孔21aに向けて傾斜して接続される。これにより、筐体10の外から入射する入射角は、例えば、本実施形態では、円形貫通部1の環状傾斜面12aとこれに連続するアパーチャ21の貫通孔21aとで決定され、アパーチャ21を通過する最小の光径は、貫通孔21aの最小開口、すなわち、ピンホールPHの直径で決定される。
【0017】
一方、このようなアパーチャ21に対面するように、光学センサとしてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサSが実装されたセンサ基板22が配置される。また、このセンサ基板22の後方には、イメージセンサで取得する画像データをIC(Integrated Circuit)で処理する画像処理基板23が配置され、更にその後方には、画像処理基板23にて画像処理されたデータを外部出力する外部インターフェース基板24が配置される。
【0018】
また、本実施形態では、センサ基板22は、2つのビスBにより、筐体10の内壁10aにおいて立設されたネジ穴に対して螺合され、筐体10に対して固定される。これにより、アパーチャ21のピンホールPHとイメージセンサSのセンサ面との間の距離d(図5(b))が所定の間隔、すなわち、ピンホールPHから入射するスポット光がイメージセンサSのセンサ面に確実に着地する距離で固定される。
【0019】
ここで、本実施形態では、アパーチャ21とイメージセンサSとを接近してその間隔(距離d)を小さく設定したので、イメージセンサSのセンサ面の大きさを小さくできる。これにより、イメージセンサSの小型化に加えて、太陽光受光素子1の小型化や軽量化にも有効である。
【0020】
さらに、このようなセンサ基板22に対しては、画像処理基板23、外部インターフェース基板24がこの順で相互に2つの連結ネジNによって相互連結され、外部インターフェース基板24側の後方から2つのビスBにより固定される。これにより、センサ基板22と画像処理基板23との間、および画像処理基板23と外部インターフェース基板24との間には、それぞれ、放熱用の空間が形成される。
【0021】
また、このようにして筐体10内に収容される光学部品は、上述した光学フィルタF、アパーチャ21、センサ基板22、画像処理基板23、外部インターフェース基板24により構成され、これら各光学部品が筐体10に収容され、そのまま、バックカバー30が2つのビスBによって筐体10に連結されることで、筐体10の収容空間が実質的に封止される。なお、このバックカバー30には、外部インターフェース基板24が有する2つの端子部24a,24bが挿通される2つの連通孔31が設けられている。
【0022】
なお、本実施形態では、センサ基板22に対して、画像処理基板23と外部インターフェース基板24とを別々に基板として3層構造としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、画像処理と外部インターフェースとを1つの基板としてセンサ基板22と組み合わせて2層構造としてもよく、イメージセンサと画像処理と外部インターフェースとを1つの基板に設けて1層構造としてもよい。このように基板の積層数を減らす分だけ、基板間の隙間や通信接続の構成も無くなるため、太陽光受光素子1の更なる小型化と軽量化を実現できる。
【0023】
なお、本実施形態では、アパーチャ21のうちイメージセンサS側とは反対の面側に光学フィルムFを配置しているが、アパーチャ21とイメージセンサSとの間に光学フィルムFを配置してもよい。この場合には、アパーチャ21とイメージセンサSとの距離dが大きくなるが、光学フィルムFの屈折率を含めてイメージセンサSへの入射角を決定し、イメージセンサSの大きさ等を決定すればよい。
【0024】
また、本実施形態では、アパーチャ21と筐体10とを別体で構成したが、筐体とアパーチャとを一体の構造物としてもよい。このような構造とすると、アパーチャ21及び筐体10の間の取付けが無くなるため、イメージセンサSに対するピンホールPHの位置精度が向上する他、例えば、取付構造としてのビスBも不要となるため、軽量化にも有利である。なお、この場合には、光学フィルムFは、イメージセンサSとピンホールPHとの間に設けてもよいし、ピンホールPHよりも手前に設けてもよい。
【0025】
また、上述した本実施形態では、アパーチャ21を筐体10に取り付け、その筐体10にセンサ基板2等を取り付けた構造例を説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、アパーチャ21をセンサ基板2に取り付けてもよい。
【0026】
以下、上述した本実施形態の太陽光受光素子1により太陽光の点像を取得し、その後の処理を含めた情報処理に関して、図6を参照して、詳細に説明する。
【0027】
図6には、太陽光の代わりにレーザ光を太陽光受光素子1に入射させる位置を変更したときのスポット位置の変化を示す図であり、図6(a)は画像データであり、図6(b)は入射角度を示す図である。より詳細には、レーザ光の入射角(X方向、Y方向にそれぞれ±51°振った角度)を横軸に、イメージセンサSの出力値を縦軸にした結果を示す。入射角の算出方法については、図7に示す。なお図7では、X方向のみの算出例であるが、Y方向も同様に算出する。
【0028】
図6に示すように、アパーチャ21のピンホールPHからイメージセンサSに向かって入射する光は、イメージセンサSに対してスポット的に入射する。図6においては、例えば、イメージセンサSの中央部に形成される点像を入射角0°の点像として図6(b)の(C)地点、つまり、入射角0°の原点で表している。
【0029】
例えば、レーザ光の光源位置を所定の位置から直線上に移動させると、入射角51°の(A)地点から、入射角27°の(B)地点→入射角0°の(C)地点→入射角−27°の(D)地点→入射角−51°の(E)地点の順に点像の位置が移動することになる。
【0030】
なお、ここではレーザ光源を用いて説明したが、レーザ光源を太陽とした場合には、点像の位置により太陽の移動方向とその位置を検出できる。すなわち、本実施形態の太陽光受光素子1は、太陽センサ(サンセンサ)として用いる場合には、図6のような点像を追跡することにより、太陽の位置を検出することができる。
【0031】
(システム)
以下、図8には、本実施形態に係る太陽光受光素子のシステムブロック図を示す。図8に示すように、本実施形態の太陽光受光素子1は、CMOSイメージセンサSがプロセッサ101に接続され、プロセッサ101の指示によりイメージセンサSで画像を読み取り、プロセッサ101に送信する関係を形成している。また、読み取った画像データは、プロセッサ101に接続されたRAM(Random Access Memory)102に保存される。
【0032】
さらに、イメージセンサS等を駆動するためのプログラムは、プロセッサ101に接続されたROM103に記憶され、プロセッサ101を通じてRAM102に展開される。プロセッサ101は、RAM102に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、イメージセンサS等を制御する。
【0033】
そして、プロセッサ101には、通信IC104を経由して情報出力手段である外部IF(インターフェース)コネクタ105に接続されており、イメージセンサSで読み取った画像データは、プロセッサ101内で画像処理され、例えば、入射角度等のデータは、プロセッサ101から通信IC104を通じて外部IFコネクタ105に送られる。
【0034】
(プロセッサ)
ここで、上述した図8のプロセッサ101の内部処理について図9図10を参照しながら詳細に説明する。図9には、本実施形態に係る太陽光受光素子のプロセッサの機能ブロック図を示す。また、図10には、太陽光受光素子のプロセッサにより入射角度算出を行う全体フローを示す。
【0035】
図9に示すように、太陽光受光素子が有するプロセッサ101は、まず、入射角の算出を開始すると、イメージセンサSをON(図10のステップS101)し、予め設定された撮影パラメータ(ゲイン値や露光時間等)に基づいて、イメージセンサSを制御し、撮影する(図10のステップS102)。
【0036】
次に、プロセッサ101が有する画像取得手段1011は、イメージセンサSから撮影パラメータに基づいて撮影した画像データを受け取る(図10のステップS103)。その後、プロセッサ101は、イメージセンサSをOFFする(図10のステップS103)。なお、ここでは、1つの画像データを取得するたびに、イメージセンサSをON/OFFしたが、イメージセンサSを常に起動状態としてもよい。
【0037】
次に、プロセッサ101が有する輝度変換手段1012が、画像取得手段1011から画像データ(画像のRGB信号値)を受け取り、所定の変換条件に従って、画像の輝度値に変換する(図10のステップS105)。
【0038】
ここで、画像の輝度変換の一例について説明する。イメージセンサSには、例えば、ベイヤーパターンのカラーフィルタが使われており、取得する画像データは、左上が赤(R)、右上と左下が緑(G)、右下が青(B)の隣り合う4ピクセルを最小構成単位とした画像データとなる。隣り合う4ピクセルの各ピクセルの信号量に対して、下記式(1)に従って、4画素により輝度値を算出する。下記式(1)におけるYは輝度値である。点像の水平方向をX方向、垂直方向をY方向とした場合に、[h]はX方向のピクセル位置(座標)であって[h]=1、2、3、・・・640で示される値であり、[w]はY方向のピクセル位置(座標)であって[w=1、2、3・・・480で示される値である。なお、これら[h]又は[w]の上限値は、任意に設定可能である。
【数1】
なお、上記式(1)で計算される値を輝度値とし、4ピクセルを1ピクセルにまとめる。すなわち上記式(1)に基づいて2×2ビニングを実行して得られた各ピクセルの信号量を輝度値とする。そして、このような画像の輝度変換処理については、画像のピクセル毎に全て行う。
【0039】
次いで、この輝度変換手段1012に接続された点像抽出手段1013は、輝度変換手段1012により生成した画像の輝度値に対して点像抽出を実行する。すなわち、所定の閾値を基準として、閾値よりも大きい輝度値のある画素を抽出する。次に、抽出した画素に基づいて、点像の輝度値を抽出し、次の点像重心の計算を行う。つまり、点像の重心計算は、事前に抽出した点像に対してのみ行う。仮に、点像抽出しなかった場合(全てのピクセルに対応する輝度値が閾値より小さいものであった場合)には、点像の重心計算を行わない。したがって、点像抽出手段1013は、画像データの輝度値に基づいて、所定の輝度条件を満たす点像を抽出する抽出手段としての役割がある。また、重心計算手段1014は、点像抽出手段1013が抽出した点像のXY重心座標を求める(図10のステップS106)。
【0040】
なお、点像の重心計算の一例を説明する。点像の水平方向をX方向、垂直方向をY方向とする。X方向の重心位置を次の手順で計算する。点像の2次元配列に対してY方向の輝度を足し合わせてx方向の1次元配列を生成する。点像の全輝度を足し合わせて総輝度を計算し、X方向の1次元配列をこの値で割って正規化することで、x方向の確率分布をもとめる。各x座標の確率分布とそのx座標の値の積をとり、全x座標で和をとることでx方向の重心を計算する。Y方向の重心位置の計算については、点像データの2次元配列に対してy方向の輝度を足し合わせて方向の1次元配列を生成した後、x方向の重心位置計算と同様の手順で計算する。つまり、点像抽出手段1013で抽出した点像における中心座標を重心位置として求める。
【0041】
その後、求めた点像のXY重心座標(点像座標)は、重心計算手段1014から角度計算手段(入射角取得手段)1015に送り、予め求めておいた構造パラメータ(アパーチャとカバーガラス間の距離、カバーガラスの厚み、ピクセルサイズ、カバーガラスの屈折率)を使って、太陽光のXY方向の入射角を求める処理を行う。計算手段1015は、入射角度計算フローに基づいて、太陽光のXY方向の入射角を求める(図10のステップS107)。
【0042】
ここで、図7を参照しながら、入射角度の算出について詳細に説明する。本実施形態のイメージセンサSは、センサ表面側にカバーガラスが配置されている。このため、アパーチャPHから入射する光は、カバーガラスで屈折してからセンサに入射する。このカバーガラスの屈折角αは、アパーチャPHに入射する光の角度によって変化する。そのため、本実施形態では、下記式(2)に基づいて、太陽光の入射角を求めている。入射角度計算フローでは、太陽入射角を変数として、センサ中心から点像までの距離の計算値と測定値の差が閾値以内に収束するまで計算を繰り返し、収束した際の太陽入射角を計算結果としている。
【数2】
【0043】
具体的には、アパーチャPHとカバーガラスとの距離D、カバーガラスの厚みTはそれぞれ所定の値で決まっているので、入射角θ(シータ)を、図6のように±51°の範囲で、0.1°毎に変化させた角度を上記式2にそれぞれ代入し、センサ中心から点像までの距離Xを算出する。算出した距離Xから、実測で取得したセンサ中心から点像までの距離L(実測値)を引いた値が閾値よりも小さい値となるまで計算を行って、入射角θを求めている。なお、ここでは、±51°の範囲で角度を振ってセンサ中心から点像までの距離Xを算出したが、±60°の範囲としてもよい。また、イメージセンサSにおいてカバーガラスを配置しない場合には、上記の入射角計算においてカバーガラスでの屈折を考慮した計算を行わなくてもよい。
【0044】
なお、その後は、プロセッサ101は、求めた角度を通信IC104を経由して外部IFコネクタ105から外部に出力する(図10のステップS108)。その後、太陽センサの出力周期が一定になるように、指定された時間が経過するまで待機する(図10のステップS109)。図10のステップS101〜S110までが太陽入射角度算出のフローであり、太陽入射角度算出終了の要求があるまで、太陽入射角度算出フローを繰り返す。
【0045】
ここで、上述したプロセッサ101の内部処理において、輝度変換手段1012により画像のRGB信号値から輝度値を求め、その輝度値から点像抽出手段1013により点像の輝度値、すなわち、点像の輝度値を求めるようにしたのは、次の理由による。
【0046】
例えば、光源となる太陽光は、ピンホールPHを通じてイメージセンサSに直接入射するだけでなく、地球など別の物体にも照射され、その反射光がピンホールPHを通じて入射する場合がある。そのため、イメージセンサSの出力データ(画像データ)には、太陽光由来ではない像が存在し得る。そのときの画像例を図11に示す。
【0047】
図11に示すように、画像データには、複数の像が存在する(ここでは3つの像)。この場合、どの像が太陽光由来の点像なのかを判断しなければならない。そのため、本実施形態では、点像抽出手段1013は、輝度変換手段1012から受け取った画像の輝度値データに関して、ヒストグラムを取り、各点像の輝度値に対して、所定の閾値を超えた像を太陽光の点像として抽出する(図11の「処理後1))。つまり、入射角算出のデータとする前に、太陽光以外の像はノイズ画像として除去する。なお、重心計算手段1014は、上記図11の「処理後2」に示すように、点像抽出手段1013が抽出した点像に対してその重心を求める。このとき、他の像はないため、重心は1つとなる。なお、太陽光の反射によって生じた像は、太陽光由来の点像からはある程度離れた領域に位置し、その像の強度分布に関しては拡がり、ピーク値が小さくなっていることが想定されるため、太陽光の点像として抽出した画像の中に太陽光以外の像が存在することは想定されない。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のプロセッサ101は輝度変換手段1012及び点像抽出手段103を備えたことで、太陽光由来ではない像を除外できるため、その後の処理において、太陽光の点像に基づく適切な処理を行うことができる。例えば、本実施形態の太陽光受光素子1を人工衛星の姿勢制御や太陽電池パドルの指向制御に用いる場合には、太陽光以外の入射光の影響を除外できるため、太陽方向を誤認識することなく、高精度な人工衛星の姿勢制御や、太陽電池パドルの指向制御を行うことが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態では、上述した通り、点像抽出手段1013は、所定の閾値に基づいて、太陽光の点像を抽出するようにしたが、例えば、複数の像のうち最も輝度値が高い像を太陽光として抽出するようにしてもよい。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本発明を実施形態1に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態1に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述した実施形態1では、イメージセンサSの出力データに基づいて入射角度を求めるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図12に示すように、入射角度を計算する際に、温度データを使うようにしてもよい。
【0052】
具体的には、太陽光受光素子は、構造体として周辺の温度環境(特に急激な温度変化)によって、例えば、ピンホールPHとイメージセンサSとの距離が変動することが想定される。そのため、太陽光受光素子の周辺環境において急激な温度変化があった場合に備えて、温度変化によるピンホールPHとイメージセンサSとの距離変動値を予め求めておく。例えば、温度と距離変動値とを対応付けた判断テーブルをROM103等に記憶させてRAM102に展開しておき、温度センサ106の温度データに基づくピンホールPHとイメージセンサSとの距離を判断テーブルにて決定して入射角を求めるようにしてもよい。このように、ピンホールPHとイメージセンサSとの間の基準距離について、温度変化に応じたキャリブレーションを行うことにより、温度変動に伴う入射角の検出精度を更に高めることができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した太陽光受光素子をサンセンサとして用いる場合の他、このような太陽光受光素子を使って人工衛星の軌道制御を行うシステム、あるいは太陽光受光素子を搭載した人工衛星、あるいはこれら太陽光受光素子や人工衛星に搭載されるプロセッサ(情報処理装置)についても広く適用されるものである。また、本発明の太陽光受光素子は、人工衛星やその輸送機などの宇宙機器として好適に用いられるものである。
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図12