特許第6792378号(P6792378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792378
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-167536(P2016-167536)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-35830(P2018-35830A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 正明
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−281052(JP,A)
【文献】 特許第5875859(JP,B2)
【文献】 特開2009−092086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低強度材料から成り、オイルが充填される油室の周面を有する周壁と前記油室の底面を有する端壁とを備えるシリンダ、
前記オイルを加圧するピストン、及び
高強度材料から成り、前記油室の開口部を閉塞する閉塞部を有するカバー
を備え、
前記カバーが、前記周壁を覆う被覆部、及び前記端壁に接する固定部をさらに有し、
前記閉塞部と前記被覆部が一体に成形されていることを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記シリンダが樹脂からなり、前記カバーが金属から成ることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記被覆部が前記周壁に密着していることを特徴とする請求項1に記載のロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するピストンでオイルを加圧することによって制動力を発生するロータリーダンパが知られている。所望の制動力を得るために、オイルが充填される油室の内周面を有する周壁と前記油室の底面を有する端壁とを備えるシリンダは、精密に加工されることが望ましい。樹脂は金属と比べて精密加工が容易であるため、シリンダの材料に適している。しかしながら、樹脂製のシリンダは、油圧の上昇によって周壁が膨張し易いという欠点がある。
【0003】
特許第5875859号公報は、ハウジングと称される樹脂製のシリンダと、隔壁又はベーンと称されるピストンと、プラグと称される金属製のカバーとを有するロータリーダンパを開示している。前記シリンダは、オイルが充填される油室の内周面を有する周壁を備え、前記カバーは、前記油室の開口部を閉塞する閉塞部を有している。しかしながら、このロータリーダンパでは、前記カバーを前記シリンダに取り付けるために前記カバーに設けられる固定部が、前記周壁の中途位置に形成された凹みに接しているため、油圧の上昇による周壁の膨張を効果的に抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5875859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、油圧の上昇による周壁の膨張を効果的に抑制することが可能なロータリーダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、低強度材料から成り、オイルが充填される油室の周面を有する周壁と前記油室の底面を有する端壁とを備えるシリンダ、前記オイルを加圧するピストン、及び高強度材料から成り、前記油室の開口部を閉塞する閉塞部を有するカバーを備え、前記カバーが、前記周壁を覆う被覆部、及び前記端壁に接する固定部をさらに有し、前記閉塞部と前記被覆部が一体に成形されていることを特徴とするロータリーダンパを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロータリーダンパによれば、高強度材料から成るカバーが、低強度材料から成るシリンダの周壁を覆う被覆部を有し、かつ前記シリンダの端壁に接する固定部を有するため、前記被覆部によって前記周壁の全部又は大部分を被覆することが可能である。したがって、油圧の上昇による前記周壁の膨張を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ロータリーダンパの平面図である。
図2図2は、ロータリーダンパの正面図である。
図3図3は、ロータリーダンパの右側面図である。
図4図4は、ロータリーダンパの底面図である。
図5図5は、図1におけるA−A部断面図である。
図6図6は、図2におけるB−B部断面図である。
図7図7は、治具の平面図である。
図8図8は、治具の凹部にカバー及びシリンダを装填した状態を示す断面図である。
図9図9は、カバーの端部を塑性変形させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明するが、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
図1図6は、本発明の実施例に係るロータリーダンパを示す図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、シリンダ10、ピストン及びカバー20を有して構成される。
【0011】
図5及び図6に示したように、シリンダ10は、周壁11、端壁12及び隔壁13を有する。周壁11は、油室30の周面30aを有し、端壁12は、油室30の底面30bを有し、隔壁13は、シリンダ10と一体に成形されている(図5及び図6参照)。図5及び図6に示したように、油室30は、シャフト40の外周面40a、周壁11の内周面11a、端壁12の一面12a、カバー20の閉塞部21の一面21a及び隔壁13の側面13aで囲まれた空間である。油室30の中にはオイルが充填される。
【0012】
シリンダ10は、低強度材料から成る。低強度材料とは、カバー20の材料よりも引張り強さが低い材料という意味である。シリンダ10の材料としては、樹脂のように精密な成形が容易な材料が選択されることが好ましく、例えば、ポリアセタール、ポリアミド等のように軽量な樹脂を採用することが好ましい。
【0013】
ピストンは、オイルを加圧する役割を果たすものである。本実施例では、シャフト40と一体に成形されたベーン50がピストンとして機能するようになっている(図6参照)。但し、シリンダ10がシャフト40を中心として回転する場合には、隔壁13がピストンとして機能し得る。
【0014】
本実施例に係るロータリーダンパは、油室30に配置されたベーン50がシャフト40と一緒に回転することによってオイルを加圧し、それにより油圧が発生するようになっている。そして、シャフト40の回転速度は、油圧抵抗によって減速される。所望の特性を得るために、ベーン50及び/又は隔壁13にバルブを設けても良いし、オリフィスを設けても良い。
【0015】
図5に示したように、カバー20は、閉塞部21、被覆部22及び固定部23を有して構成される。閉塞部21は、油室30の開口部を閉塞する部分である。油室30からのオイルの漏洩を防止するため、所定の位置にOリング60が設けられている(図5参照)。被覆部22は、周壁11を覆う部分である。油圧の上昇による周壁11の膨張を防ぐために、被覆部22は、周壁11に密着していることが好ましい。また、被覆部22の高さは、周壁11の高さと同じかそれよりも高いことが好ましい。固定部23は、カバー20をシリンダ10に固定するために設けられる部分であり、端壁12に接している。本実施例では、固定部23が端壁12に接しているため、周壁11の大部分が被覆部22で覆われるようになっている(図5及び図6参照)。
【0016】
カバー20は、高強度材料から成る。高強度材料とは、シリンダ10の材料よりも引張り強さが高い材料という意味である。カバー20の材料としては、金属のように樹脂と比較して引張り強さが高い材料が選択されることが好ましいが、ガラス繊維を含有する樹脂のように、強化材が複合された樹脂を採用しても良い。
【0017】
カバー20は、切削加工されたものであっても良いが、製造コストの低減を図るために、プレス加工されたものであることが好ましい。プレス加工で成形されるカバー20の材料としては、アルミニウム合金等のように加工性及び強度が高い金属材料を選択することが好ましい。
【0018】
本実施例に係るロータリーダンパは、油室30の周囲が低強度材料から成る周壁11と高強度材料から成る被覆部22で構成される二重構造となっているので、油圧の上昇による周壁11の膨張は、被覆部22で効果的に抑制される。したがって、この構成によれば、大きな制動力を発生するロータリーダンパを提供することが可能になる。
【0019】
次に、本実施例に係るロータリーダンパの好ましい製造方法について説明する。
【0020】
好ましい製造方法では、凹部71を有する治具70が用いられる(図7参照)。凹部71は、周壁11に被覆部22を密着させ得る内径d及び深さを有することが好ましい。好ましい形態では、凹部71の内径dは、カバー20の外径D(設計寸法)よりも0.05〜0.15mm大きい寸法に設定される(図6及び図7参照)。
【0021】
好ましい製造方法では、カバー20がプレス加工で成形される。この場合、カバー20の材料は、アルミニウム合金等の金属の薄板である。そのような材料を用いることによって、完成品の外径寸法の拡大を最小限に抑えることができる。
【0022】
一方、シリンダ10は、ポリアセタール、ポリアミド等の樹脂を材料として成形される。そのような材料を用いることによって、油室30等を精密に形成することができる。
【0023】
油室30にオイルを注入した後、油室30の開口部をカバー20の閉塞部21で閉塞する。次いで、シリンダ10及びカバー20を治具70の凹部71に装填する(図8参照)。プレス加工で成形されたカバー20は、被覆部22がテーパー状になっているが、凹部71に装填されることによりテーパー角度がほぼ0°に修正され、その結果、被覆部22が周壁11に密着する。
【0024】
次いで、カバー20の端部24に外力を加えて、端部24を塑性変形させる(図8及び図9参照)。それにより、端壁12に接する固定部23が形成され、それにより、カバー20がシリンダ10に固定され、ロータリーダンパが完成する。
【符号の説明】
【0025】
10 シリンダ
11 周壁
11a 周壁の内周面
12 端壁
12a 端壁の一面
13 隔壁
13a 隔壁の側面
20 カバー
21 閉塞部
21a 閉塞部の一面
22 被覆部
23 固定部
24 端部
30 油室
30a 油室の周面
30b 油室の底面
40 シャフト
40a シャフトの外周面
50 ベーン
60 Oリング
70 治具
71 凹部
D カバーの外径
d 凹部の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9