特許第6792380号(P6792380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792380
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】建設機械の油圧駆動システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20201116BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20201116BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F15B11/00 V
   F15B11/08 A
   E02F9/20 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-171402(P2016-171402)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-35909(P2018-35909A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
(72)【発明者】
【氏名】梅川 淳
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−177085(JP,A)
【文献】 特開平09−235756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
F15B 11/08
E02F 9/20−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに対する作動油の供給および排出を制御する、一対のパイロットポートを有する制御弁と、
一対のパイロットラインにより前記一対のパイロットポートと接続された、操作レバーを含むパイロット操作弁と、
前記一対のパイロットラインの少なくとも一方に設けられた、一次圧ポート、二次圧ポートおよびタンクポートを有する電磁比例減圧弁と、
前記操作レバーの傾倒角に応じた操作量信号を出力する操作検出器と、
前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後から、前記二次圧ポートと前記タンクポートとの連通によって前記制御弁のパイロットポートの圧力が徐々にゼロまで低下するように、前記電磁比例減圧弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が前記閾値以上に低下した直後に前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流を所定値まで変更して前記二次圧ポートを前記タンクポートと連通させ、その後に前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流を徐々に増加または減少させる、建設機械の油圧駆動システム。
【請求項2】
作動油の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサで検出される作動油の温度が低いほど、指令電流を前記所定値から徐々に増加または減少させる速度を大きくする、請求項に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項3】
前記パイロット操作弁と前記電磁比例減圧弁との間で前記パイロットラインにチェック弁が設けられていない、請求項1または2に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項4】
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに対する作動油の供給および排出を制御する、一対のパイロットポートを有する制御弁と、
一対のパイロットラインにより前記一対のパイロットポートと接続された、操作レバーを含むパイロット操作弁と、
前記一対のパイロットラインの少なくとも一方に設けられた、一次圧ポート、二次圧ポートおよびタンクポートを有する電磁比例減圧弁と、
前記操作レバーの傾倒角に応じた操作量信号を出力する操作検出器と、
前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後から、前記二次圧ポートと前記タンクポートとの連通によって前記制御弁のパイロットポートの圧力が徐々にゼロまで低下するように、前記電磁比例減圧弁を制御する制御装置と、を備え、
前記電磁比例減圧弁は、二次圧と指令電流とが負の相関を示す逆比例型であり、
前記制御装置は、前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が前記閾値以上に低下した直後から所定時間経過するまでの期間以外は、前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流をゼロとする、建設機械の油圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルや油圧クレーンのような建設機械では、油圧駆動システムによって各種の動作が実行される。例えば、特許文献1には、図5に示すような油圧ショベルの油圧駆動システム100が開示されている。
【0003】
この油圧駆動システム100では、油圧アクチュエータ110用の制御弁120の一方のパイロットポート121をパイロット操作弁140と接続するパイロットライン130に、電磁比例減圧弁131が設けられている。また、パイロットライン130には、電磁比例減圧弁131とパイロット操作弁140の間にチェック弁132が設けられている。
【0004】
油圧駆動システム100は、パイロット操作弁140の操作レバーが急激に中立位置へ戻されたときの油圧アクチュエータ110の停止ショックを抑制できるように構成されている。具体的には、電磁比例減圧弁131が、パイロット操作弁140の操作レバーが急激に中立位置へ戻されてから無駄時間が経過するまでは制御弁120のパイロットポート121の圧力を保持し、その後にパイロットポート121の圧力が徐々に低下するように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−85974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているように電磁比例減圧弁131が制御された場合には、操作レバーを中立位置へ戻してから無駄時間が経過するまでは油圧アクチュエータの作動速度が維持される。従って、油圧アクチュエータの停止時の応答性が悪い。
【0007】
そこで、本発明は、油圧アクチュエータの停止時の応答性に優れ、かつ、油圧アクチュエータの停止ショックを抑制できる建設機械の油圧駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の建設機械の油圧駆動システムは、油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに対する作動油の供給および排出を制御する、一対のパイロットポートを有する制御弁と、一対のパイロットラインにより前記一対のパイロットポートと接続された、操作レバーを含むパイロット操作弁と、前記一対のパイロットラインの少なくとも一方に設けられた、一次圧ポート、二次圧ポートおよびタンクポートを有する電磁比例減圧弁と、前記操作レバーの傾倒角に応じた操作量信号を出力する操作検出器と、前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後から、前記二次圧ポートと前記タンクポートとの連通によって前記制御弁のパイロットポートの圧力が徐々にゼロまで低下するように、前記電磁比例減圧弁を制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下したとき、換言すればパイロット操作弁の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたときには制御弁のパイロットポートの圧力が徐々にゼロまで低下するので、油圧アクチュエータの停止ショックを抑制することができる。しかも、制御弁のパイロットポートの圧力が徐々に低下するように電磁比例減圧弁が制御されるのは、パイロット操作弁の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻された直後からであるので、応答性良く油圧アクチュエータを停止することができる。さらには、パイロット操作弁の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたときは、電磁比例減圧弁が制御装置により、二次圧ポートが一次圧ポートではなくタンクポートと連通するように制御されるので、減圧弁の逆流時のリリーフ動作(二次側の圧力を維持する動作)を利用して、制御弁のパイロットポートから排出される作動油を、適度に長く保持できると共に、パイロット操作弁を介さずにスムーズにタンクへ戻すことができる。
【0010】
前記制御装置は、前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が前記閾値以上に低下した直後に前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流を所定値まで変更して前記二次圧ポートを前記タンクポートと連通させ、その後に前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流を徐々に増加または減少させてもよい。この構成によれば、制御弁のパイロットポートの圧力が低下するのに応じて電磁比例減圧弁の二次圧ポートとタンクポートとが連通すると共に、その連通の開口度合を小さく保つことができる。従って、パイロットポートの圧力を滑らかにゼロまで低下させることができる。
【0011】
上記の油圧駆動システムは、作動油の温度を検出する温度センサをさらに備え、前記制御装置は、前記温度センサで検出される作動油の温度が低いほど、指令電流を前記所定値から徐々に増加または減少させる速度を大きくしてもよい。作動油の温度が低い場合には、作動油の粘性が高くなるために油圧アクチュエータの停止ショックが発生し難い。従って、作動油の温度が低いほど指令電流の増加速度または減少速度を大きくすれば、作動油の温度が低い場合の停止時の応答性を速めることができる。
【0012】
前記パイロット操作弁と前記電磁比例減圧弁との間で前記パイロットラインにチェック弁が設けられていなくてもよい。この構成によれば、チェック弁の分だけコストを低減することができる。
【0013】
前記電磁比例減圧弁は、二次圧と指令電流とが負の相関を示す逆比例型であり、前記制御装置は、前記操作検出器から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が前記閾値以上に低下した直後から所定時間経過するまでの期間以外は、前記電磁比例減圧弁へ送給する指令電流をゼロとしてもよい。この構成によれば、電気系統の不具合(例えば、ケーブルの断線)が生じた場合にも、制御弁を通常通り動作させることができ、フェールセーフを実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧アクチュエータの停止時の応答性に優れ、かつ、油圧アクチュエータの停止ショックを抑制できる建設機械の油圧駆動システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の油圧駆動システムの概略構成図である。
図2】電磁比例減圧弁の断面図である。
図3】電磁比例減圧弁のスプール位置と開口面積(ポート間の連通度合)を示すグラフである。
図4】(a)〜(c)は、それぞれパイロット操作弁の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたときのパイロット操作弁から出力されるパイロット圧、電磁比例減圧弁への指令電流、パイロットポートの圧力の経時的変化を示すグラフである。
図5】従来の油圧ショベルの油圧駆動システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る建設機械の油圧駆動システム1を示す。この油圧駆動システム1は、可変容量型の主ポンプ21と、主ポンプ21から制御弁4を介して作動油が供給される油圧アクチュエータ3を含む。ただし、主ポンプ21は、固定容量型であってもよい。
【0017】
例えば、建設機械が自走式の油圧ショベルである場合、油圧アクチュエータ3は、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータ、走行モータのいずれであってもよい。
【0018】
制御弁4は、供給ライン22により主ポンプ21と接続されているとともに、タンクライン23によりタンクと接続されている。また、制御弁4は、一対の給排ライン3a,3bにより油圧アクチュエータ3と接続されている。制御弁4は、油圧アクチュエータ3に対する作動油の供給および排出を制御する。
【0019】
制御弁4は、一対のパイロットポート41,42を有する。これらのパイロットポート41,42は、一対のパイロットラインである第1パイロットライン51および第2パイロットライン52によりパイロット操作弁6と接続されている。
【0020】
パイロット操作弁6は、一次圧ライン25により副ポンプ24と接続されているとともに、タンクライン26によりタンクと接続されている。パイロット操作弁6は、操作レバーを含み、操作レバーの傾倒角に応じたパイロット圧を出力する。
【0021】
本実施形態では、第1パイロットライン51に電磁比例減圧弁7が設けられている。つまり、第1パイロットライン51は、パイロット操作弁6と電磁比例減圧弁7の間の第1流路51aと、電磁比例減圧弁7と制御弁4のパイロットポート41の間の第2流路51bを含む。ただし、電磁比例減圧弁7は、第1パイロットライン51だけでなく第2パイロットライン52にも設けられてもよい。あるいは、電磁比例減圧弁7は、第2パイロットライン52のみに設けられてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、パイロット操作弁6と電磁比例減圧弁7との間で第1パイロットライン51(つまり、第1パイロットライン51の第1流路51a)にチェック弁が設けられていない。
【0023】
電磁比例減圧弁7は、一次圧ポートP、二次圧ポートAおよびタンクポートTを有する。具体的に、電磁比例減圧弁7は、図2に示すように、一次圧ポートP、二次圧ポートAおよびタンクポートTが形成されたハウジング71と、ハウジング71内に配置されたスリーブ72と、スリーブ72内に配置されたスプール73を含む。スリーブ72には、一次圧ポートP、二次圧ポートAおよびタンクポートTに対応する位置に、複数の貫通穴が形成されている。さらに、ハウジング71には、スプール73を押圧するためのソレノイド75が取り付けられている。タンクポートTは、二次圧ポートAから見てソレノイド75側に位置しており、一次圧ポートPは、二次圧ポートAから見てソレノイド75と反対側に位置している。
【0024】
スプール73は、スプリング74によってソレノイド75に向かって付勢されている。スプール73には、二次圧ポートAと一次圧ポートPの間の第1環状流路(スプール73とスリーブ72の間の隙間)を開閉する第1ランド73aと、二次圧ポートAとタンクポートTの間の第2環状流路(スプール73とスリーブ72の間の隙間)を開閉する第2ランド73bが形成されている。なお、スプール73の外周面には、各環状流路に面する位置(本実施形態では、図2に示すようにランド73a,73bの片側面)に、開口が急に大きくなることを防止するためのノッチが形成されている。第1ランド73aの外径は、第2ランド73bの外径よりも大きい。スプール73の位置によって、二次圧ポートAは、一次圧ポートPとタンクポートTの双方から遮断されたり、一次圧ポートPとタンクポートTのどちらかと連通したりする。
【0025】
本実施形態では、電磁比例減圧弁7が、当該電磁比例減圧弁7が出力する二次圧と指令電流とが負の相関を示す逆比例型である。ソレノイド75へ送給される指令電流がゼロのときは、電磁比例減圧弁7は、通常の減圧弁として機能する。具体的に、一次圧ポートPの圧力がゼロのときは、スプリング74によってスプール73が最後退位置に維持される。これにより、二次圧ポートAが一次圧ポートPと連通するとともに、第2ランド73bにより二次圧ポートAがタンクポートTから遮断される。一次圧ポートPの圧力が上昇して、一次圧ポートPに連通している二次圧ポートAの圧力が上昇すると、スプール73が、二次圧ポートAの圧力がスプール73の受圧部(図2の第1ランド73aと第2ランド73bの面積差)に作用する油圧力によって押圧され、最後退位置から調圧位置(図3のP−AとA−Tの開口がゼロ付近)に進出する。
【0026】
一方、ソレノイド75へ送給される指令電流が徐々に増加されると、スプリング74に対抗するように、ソレノイド75の推力が作用し、等価的にスプリング74の力が低下したように、スプール73に作用する。これにより、スプール73が調圧位置において、図3に示すように、第1ランド73aとスリーブ72間の開口面積(つまり、二次圧ポートAと一次圧ポートPの連通度合)が徐々に小さくなり、かつ、第2ランド73bとスリーブ72間の開口面積(つまり、二次圧ポートAとタンクポートTの連通度合)が徐々に大きくなることによって、等価スプリング力(スプリング74の付勢力とソレノイド75の推力の差)に釣り合うように、二次圧ポートAの圧力が徐々に低下する。
【0027】
図1に戻って、電磁比例減圧弁7は、制御装置8により制御される。具体的に、制御装置8は、電磁比例減圧弁7のソレノイド75と電気的に接続されている。また、制御装置8は、圧力センサ81とも電気的に接続されている。例えば、制御装置8は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有する。
【0028】
圧力センサ81は、第1パイロットライン51の第1流路51aの圧力(つまり、パイロット操作弁6から出力されるパイロット圧)を検出する。つまり、圧力センサ81は、パイロット操作弁6の操作レバーの傾倒角に応じた操作量信号を出力する操作検出器である。
【0029】
制御装置8は、圧力センサ81から出力される操作量信号に基づいて、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたか否か(例えば、シリンダ速度が減速されたか否か)を判定する。具体的に、制御装置8は、図4(a)に示すように、圧力センサ81から出力される操作量信号(検出された圧力)の単位時間当たりの変化量(図中のΔP/Δt)が閾値以上に低下したときに、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻された(例えば、シリンダ速度が減速された)と判定する。
【0030】
ただし、操作検出器は、操作レバーの傾倒角を検出する角度センサであってもよい。この場合、制御装置8は、角度センサから出力される操作量信号(検出された操作レバーの傾倒角)の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下したときに、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたと判定する。
【0031】
制御装置8は、図4(b)に示すように、圧力センサ81から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後から所定時間Tb経過するまでの期間以外は、電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流をゼロとする。
【0032】
一方、制御装置8は、圧力センサ81から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下したときには、その直後から、ある程度の時間Taをかけて、二次圧ポートAとタンクポートTとの連通によって制御弁4のパイロットポート41の圧力が徐々にゼロまで低下するように、電磁比例減圧弁7を制御する。ある程度の時間Taは、例えば0.1〜0.5秒である。二次圧ポートAとタンクポートTとの連通は、図3に二点鎖線で示す開口面積が狭い範囲で行われる。
【0033】
具体的に、制御装置8は、圧力センサ81から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後に電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流をゼロから所定値αまで変更(増加)して、電磁比例減圧弁7の二次圧ポートAをタンクポートTと連通させる。その後、制御装置8は、電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流を所定時間Tbをかけて徐々に増加させ、所定時間Tbが経過したときに指令電流を再びゼロとする。所定時間Tbは、例えば0.1〜5秒である。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の油圧駆動システム1では、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたときには制御弁4のパイロットポート41の圧力が徐々にゼロまで低下するので、油圧アクチュエータ3の停止ショックを抑制することができる。しかも、制御弁4のパイロットポート41の圧力が徐々に低下するように電磁比例減圧弁7が制御されるのは、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻された直後からであるので、無駄時間がほとんどなく、応答性良く油圧アクチュエータ3を停止することができる。さらには、パイロット操作弁6の操作レバーが急激に中立位置へ向かう方向に戻されたときは、電磁比例減圧弁7が制御装置8により、二次圧ポートAが一次圧ポートPではなくタンクポートTと連通するように制御されるので、減圧弁の逆流時のリリーフ動作(二次側の圧力を維持する動作)を利用して、制御弁4のパイロットポート41から排出される作動油を、適度に長く保持できると共に、パイロット操作弁6を介さずにスムーズにタンクへ戻すことができる。
【0035】
また、本実施形態では、制御弁4のパイロットポート41の圧力を徐々に低下させるときに制御装置8が電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流が一定値ではなく徐々に増加するので、制御弁4のパイロットポート41の圧力が低下するのに応じて電磁比例減圧弁7の二次圧ポートAとタンクポートTとが連通すると共に、その連通の開口度合を小さく保つことができる。従って、パイロットポート41の圧力を滑らかで、かつ適度な時間でゼロまで低下させることができる。
【0036】
ところで、作動油の温度が低い場合には、作動油の粘性が高くなるために油圧アクチュエータ3の停止ショックが発生し難い。従って、作動油の温度を温度センサで検出することによって、作動油の温度に応じて、パイロットポート41の圧力をゼロまで低下させる時間を調整してもよい。具体的には、制御装置8が、温度センサで検出される作動油の温度が低いほど、指令電流を所定値αから徐々に増加させる速度を大きくする。このようにすれば、作動油の温度が低い場合に、制御弁4のパイロットポート41の圧力をゼロまで低下させる時間を短くすることができ、停止時の応答性を速めることができる。
【0037】
ところで、第1パイロットライン51の第1流路51aにはチェック弁が設けられてもよい。ただし、本実施形態のように第1流路51aにチェック弁が設けられていなければ、チェック弁の分だけコストを低減することができる。
【0038】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、電磁比例減圧弁7は、当該電磁比例減圧弁7が出力する二次圧と指令電流とが正の相関を示す正比例型であってもよい。この場合、制御装置8は、圧力センサ81から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後に電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流を最大値から所定値βまで変更(減少)して電磁比例減圧弁7の二次圧ポートAをタンクポートTと連通させ、その後に電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流を徐々に減少させる。また、この場合、制御装置8は、圧力センサ81から出力される操作量信号の単位時間当たりの変化量が閾値以上に低下した直後から所定時間経過するまでの期間以外は、電磁比例減圧弁7へ送給する指令電流を最大とする。ただし、前記実施形態のように電磁比例減圧弁7が逆比例型であれば、電気系統の不具合(例えば、ケーブルの断線)が生じた場合にも、制御弁4を通常通り動作させることができ、フェールセーフを実現できる。
【0040】
さらに、上記の場合には、前記実施形態と同様に、作動油の温度を温度センサで検出し、制御装置8が、温度センサで検出される作動油の温度が低いほど、指令電流を所定値βから徐々に減少させる速度を大きくしてもよい。これにより、作動油の温度が低い場合の停止時の応答性を速めることができる。
【0041】
また、電磁比例減圧弁7としては、図2に示す構造のものに限られず、種々の構造のものを使用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 建設機械の油圧駆動システム
3 油圧アクチュエータ
4 制御弁
41,42 パイロットポート
51,52 パイロットライン
6 パイロット操作弁
7 電磁比例減圧弁
P 一次圧ポート
A 二次圧ポート
T タンクポート
8 制御装置
81 圧力センサ(操作検出器)
図1
図2
図3
図4
図5