(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792383
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】終端装置
(51)【国際特許分類】
H01P 1/26 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
H01P1/26
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-173072(P2016-173072)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-42033(P2018-42033A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘昭
【審査官】
福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−372204(JP,A)
【文献】
特開2007−179939(JP,A)
【文献】
特表2004−523857(JP,A)
【文献】
実開昭52−056293(JP,U)
【文献】
特開2007−180392(JP,A)
【文献】
特開2005−051392(JP,A)
【文献】
特開平05−095206(JP,A)
【文献】
特開昭63−051008(JP,A)
【文献】
米国特許第07488210(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0159267(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0219838(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0026504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手同軸装置と接続される終端装置であって、
前記相手同軸装置の相手中心端子と電気的に接続される軸方向に延びる内部導体と、
前記相手同軸装置の相手外部導体と電気的に接続される前記軸方向に延びる外部導体であって、前記内部導体が中心に配置された筒状の外部導体と、
前記外部導体と電気的に接続された接地導体と、
前記内部導体と前記接地導体との間に前記軸方向に沿って設けられた抵抗素子と、
前記内部導体を貫通させ、且つ、前記内部導体と前記外部導体とを径方向において互いに離間させた状態で、前記内部導体と前記外部導体との間に設けられ、前記内部導体を保持し且つ前記外部導体の内周面によって外周面を取り囲まれた状態で保持された環状の誘電部材と、
を備え、
前記内部導体と前記外部導体とを前記径方向において互いに離間させることにより前記内部導体と前記外部導体との間に形成された空気層が、前記軸方向において前記誘電部材と隣り合って配置されており、前記空気層と前記誘電部材との間の前記軸方向における境界付近であって、少なくとも前記境界よりも前記軸方向において前記誘電部材側に位置する前記外部導体の内周面が、前記誘電部材の前記外周面の径よりも拡径されて空気層を形成していることを特徴とする終端装置。
【請求項2】
相手同軸装置と接続される終端装置であって、
前記相手同軸装置の相手中心端子と電気的に接続される軸方向に延びる内部導体と、
前記相手同軸装置の相手外部導体と電気的に接続される前記軸方向に延びる外部導体であって、前記内部導体が中心に配置された筒状の外部導体と、
前記外部導体と電気的に接続された接地導体と、
前記内部導体と前記接地導体との間に前記軸方向に沿って設けられた抵抗素子と、
前記内部導体を貫通させ、且つ、前記内部導体と前記外部導体とを径方向において互いに離間させた状態で、前記内部導体と前記外部導体との間に設けられた環状の誘電部材と、
を備え、
前記内部導体と前記外部導体とを前記径方向において互いに離間させることにより前記内部導体と前記外部導体との間に形成された空気層が、前記軸方向において前記抵抗素子と隣り合って配置されており、前記空気層と前記抵抗素子との間の前記軸方向における境界付近であって、少なくとも前記境界よりも前記軸方向において前記抵抗素子側に位置する前記外部導体の内周面が、前記境界よりも前記軸方向において前記抵抗素子の側とは反対側に位置している前記境界付近における前記外部導体の内周面の径よりも拡径されてより大きな空気層を形成していることを特徴とする終端装置。
【請求項3】
前記外部導体との間に生じるインピーダンスが前記軸方向において異なる前記抵抗素子の領域に応答して、前記外部導体の内周面の径が調整されている請求項1又は2に記載の終端装置。
【請求項4】
前記抵抗素子に設けたパッドの一部は少なくとも前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われており、
前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域と前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域との間で、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が調整されている請求項1乃至3のいずれかに記載の終端装置。
【請求項5】
前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅よりも小さい請求項4に記載の終端装置。
【請求項6】
前記抵抗素子は、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域と前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域とを含む前記パッドと、該パッドよりも前記軸方向において前記接地導体に近い側に配置された抵抗と、を有し、
前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が、前記軸方向と直交する方向における前記抵抗の幅に等しい請求項5に記載の終端装置。
【請求項7】
前記誘電部材は前記内部導体を前記外部導体に固定する固定部材として用いられる請求項1乃至6のいずれかに記載の終端装置。
【請求項8】
前記抵抗素子は板状の抵抗基板である請求項1乃至7のいずれかに記載の終端装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端装置、特に高周波帯に使用可能な同軸型の終端装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号の反射を抑制しノイズの発生を防止すること等を目的として終端装置が開発されている。例えば、特許4331529号に、従来の終端装置の一例が示されている。この終端装置は、相手同軸コネクタと軸方向にて接続されるものであって、相手同軸コネクタの相手側中心導体と電気的に接続される端子部と、相手同軸コネクタの相手側外部導体と電気的に接続される外部導体部と、を有する第1部品と、第1部品の外部導体部と電気的に接続される接地導体部と、第1部品の端子部と軸方向において弾性接続される中継部と、接地導体部と中継部に電気的に接続され接地導体部を相手同軸コネクタの相手側中心導体と電気的に接続する抵抗素子と、を有する第2部品と、を備える。
【0003】
終端装置の抵抗は軸方向において常に一定であることが望ましい。上記の終端装置を例に挙げれば、端子部と外部導体部の間に生じるインピーダンスや、抵抗素子と外部導体部との間に生じるインピーダンスと抵抗素子における抵抗との総和を、軸方向において、例えば50Ωといった一定の値に保つことが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来、この問題を解決するための技術は特に確立されておらず、装置に応じて様々な試行錯誤を繰り返すことによってのみ問題の解決が試みられていた。近年、高周波特性の向上がますます求められており、同時に、装置の小型化も求められており、これらの要求を満足しつつ、上記の問題を解決する技術を確立することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4331529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、終端装置の抵抗を軸方向において一定に保つための確立された技術を提供するものである。また、高周波特性の向上を図りつつ、装置の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、誘電率が急激に変化する場所でインピーダンスが変化しやすいといった新たな知見に基づき、終端装置においてそのような変化が生じやすい場所、例えば、端子部を外部導体部に固定等している樹脂でできた固定部と、端子部と外部導体部との間に形成された空気層と、の間の境界付近に着目し、シミュレーション装置を用いて試行錯誤を重ねることによって、上記の変化を抑制するために最適な技術、しかも、装置の小型化に適した、確立された技術を見出したものである。
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による終端装置は、相手同軸装置と接続される終端装置であって、前記相手同軸装置の相手中心端子と電気的に接続される軸方向に延びる内部導体と、前記相手同軸装置の相手外部導体と電気的に接続される前記軸方向に延びる外部導体であって、前記内部導体が中心に配置された筒状の外部導体と、前記外部導体と電気的に接続された接地導体と、前記内部導体と前記接地導体との間に前記軸方向に沿って設けられた抵抗素子と、前記内部導体を貫通させ、且つ、前記内部導体と前記外部導体とを径方向において互いに離間させるように、前記内部導体と前記外部導体との間に設けられた環状の誘電部材と、を備え、前記内部導体と前記外部導体とを前記径方向において互いに離間させることによって前記内部導体と前記外部導体との間に形成された空気層が、前記軸方向において前記誘電部材と隣り合って配置されており、前記空気層と前記誘電部材との間の前記軸方向における境界付近であって、少なくとも前記境界よりも前記誘電部材側で、前記外部導体の内周面が拡径されていることを特徴として有する。
また、上記の課題を解決するため、本発明の他の態様による終端装置は、相手同軸装置と接続される終端装置であって、前記相手同軸装置の相手中心端子と電気的に接続される軸方向に延びる内部導体と、前記相手同軸装置の相手外部導体と電気的に接続される前記軸方向に延びる外部導体であって、前記内部導体が中心に配置された筒状の外部導体と、前記外部導体と電気的に接続された接地導体と、前記内部導体と前記接地導体との間に前記軸方向に沿って設けられた抵抗素子と、前記内部導体を貫通させ、且つ、前記内部導体と前記外部導体とを径方向において互いに離間させた状態で、前記内部導体と前記外部導体との間に設けられた環状の誘電部材と、を備え、前記内部導体と前記外部導体とを前記径方向において互いに離間させることにより前記内部導体と前記外部導体との間に形成された空気層が、前記軸方向において前記抵抗素子と隣り合って配置されており、前記空気層と前記抵抗素子との間の前記軸方向における境界付近であって、少なくとも前記境界よりも前記抵抗素子側で、前記外部導体の内周面が拡径されていることを特徴として有する。
尚、前記誘電部材は前記内部導体を前記外部導体に固定する固定部材として用いられてもよい。また、抵抗素子は板状の抵抗基板であってもよい。
この態様の終端装置によれば、前記径方向において誘電部材と空気層との間の境界付近で誘電率が急激に変化することによるインピーダンスの変化を抑制するため、それらの境界付近で外部導体の内周面を拡径することにより空気層を設け、これによって抵抗を一定に保つことができる。また、外部導体は金属で形成されているため、樹脂等に比べて加工が容易であり、装置の小型化にも適したものとなっている。
【0009】
上記態様の終端装置において、前記外部導体との間に生じるインピーダンスが前記軸方向において異なる前記抵抗素子の領域に応答して、前記外部導体の内周面の径を調整するのが好ましい。
この態様の終端装置によれば、抵抗素子等に起因するインピーダンスの変化を抑制して抵抗を一定に保つことが容易となる。
【0010】
また、上記態様の終端装置において、前記抵抗素子に設けたパッドの一部は少なくとも前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われており、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域と前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域との間で、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が調整されているのが好ましい。
この態様の終端装置によれば、パッドの幅を調整することにより、インピーダンスの変化を抑制して抵抗を一定に保つことができる。
【0011】
更に、上記態様の終端装置において、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅よりも小さくてもよい。
【0012】
また、上記態様の終端装置において、前記抵抗素子は、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われている領域と前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域とを含む前記パッドであるパッドと、該パッドよりも前記軸方向において前記接地導体に近い側に配置された抵抗と、を有し、前記軸方向において前記内部導体の一部によって覆われていない領域での、前記軸方向と直交する方向における前記パッドの幅が、前記軸方向と直交する方向における前記抵抗の幅に等しくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一例としての終端装置の中心線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態について説明する。尚、便宜上、好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0015】
図1に、本発明の一例としての終端装置の中心線断面図を示す。終端装置1は、軸方向「α」に沿って延び、例えば、軸方向「α」に沿って比較的短い長さ部分を有する横断面が正六角形状の金属製の接続部10と、軸方向「α」に沿って比較的長い長さ部分を有する略円筒状の金属製のシェル20と、更に、シェル20の内部に挿通、設置された第一部品3と、第一部品3の内部に挿入、設置された第二部品5を含む。
【0016】
第一部品3は、軸方向「α」に沿って延びる略棒状の内部導体30と、軸方向「α」に沿って延びる略円筒状の金属製の円筒部材40と、円筒部材40の内部に配置された環状の誘電部材60を含む。一方、第二部品5は、軸方向「α」に沿って延びる略棒状の接続端子50と、略円筒状の、例えば、接続管70のような接地導体と、更に、接続端子50と接続管70との間に軸方向「α」に沿って設けられた、例えば、抵抗基板2のような抵抗素子を含む。
【0017】
シェル20は、前側に設けた小径の筒状部材21と、後側に設けた大径の本体23と、それらの間に設けた環状のフランジ22を含む。接続部10の内壁に設けた環状凹部14に抜け止め12を嵌め込み、この抜け止め12をフランジ22と衝突させるようにして、接続部10からのシェル20の抜けが防止されている。本体23の後端部には固定ネジ29が取り付けられ、第一部品3や第二部品5のシェル20から抜け落ちが防止される。
【0018】
シェル20は、軸方向「α」に貫通している円柱状の収容空間25を有する。収容空間25は、接続部10の貫通孔13と連通している。筒状部材21やフランジ22によって形成された収容空間25の前側の内周面20Aは、比較的小さな径に設定されている。これに対し、収容空間25の後側の内周面20Bは比較的大きな径に設定されている。収容空間25の末端には固定ネジ29を固定するためにネジが切られている。
【0019】
収容空間25の前側の内周面20Aによって形成された収容部には、その中心に内部導体30が軸方向「α」に沿って挿通されている。一方、収容空間25の後側の内周面20Bによって形成された収容部には、円筒部材40が内周面20Bと接触した状態で軸方向「α」に沿って挿通されている。シェル20や円筒部材40、更に、シェル20と接触している接続部10は、それら全体で、終端装置1の外部導体を形成し得る。
【0020】
誘電部材60は、例えば、フッ化炭素樹脂(PTFE)から成っていてもよい。円筒部材40に対する誘電部材60の挿入を容易にするため、誘電部材60の後面b1及び前面b2の縁にそれぞれ、テーパー61A、61Bが設けられている。同様の理由により、誘電部材60の挿入側における円筒部材40の挿入口に、テーパー62が設けられている。尚、テーパー61Bを設けた側は、誘電部材60に挿入される側とは反対側であるが、誘電部材60は非常に小さなもの、例えば、終端装置1の軸方向における長さは2mmにも満たないものであるため、誘電部材60の挿入向きを裸眼で確認することは困難である。このため、誘電部材60の後面b1及び前面b2の双方にテーパー61A、61Bを設けて、テーパーの有無を確認することなく、いずれの側からでも挿入できるようにされている。但し、テーパー61A、61B、62は、必須のものではない。
【0021】
誘電部材60は、内部導体30を貫通させ、且つ、内部導体30と外部導体40とを径方向「β」において互いに離間させた状態で、内部導体30と外部導体40との間に配置される。誘電部材60を利用して、内部導体30は円筒部材40の収容空間45の中心に軸方向「α」に沿って設けられ、また、誘電部材60を利用して、内部導体30と円筒部材40は電気的に切断される。内部導体30と誘電部材60を固定するため、内部導体30の側面の一部を、中心部に板状部分33が残るように対向側から切削し、この切削によってできた空間にエポキシ樹脂等の接着剤34を流し込んでもよい。
【0022】
図1に加えて、
図2、
図3をも参照して、第二部品5について更に詳細に説明する。
図2は、第二部品5の斜視図を、
図3は、その正面図を、それぞれ示す。第二部品5を構成する接続端子50は、内部導体30と同様に、円筒部材40の収容空間45の中心に軸方向「α」に沿って延びている。
接続部材50は、基体51と、この基体51に取り付けられたスリ割部材53から成る。基体51は、大径の円柱状の本体51Aと、この本体51Aの前方に延びる細径の棒状部51Bと、本体51Aの後端に設けた2枚の略蒲鉾状の挟み込み部51Cを含む。棒状部51Bの先端51aは、テーパーを設けることにより先細に形成されている。スリ割部材53には、複数のスリットを設けることによって複数のスリ割部53aが形成されており、これらスリ割部53aの中心に棒状部51Bを挿通させた状態で基体51に設置される。スリ割部材53の先端から露出した棒状部51Bの先細の先端51aは、該先端51aの後方周囲に配置されたスリ割部53aとともに、内部導体30の後端に設けた穴32(
図1参照)に、固定ネジ29の働きによって軸方向「α」にねじ込まれ、そこに挿入される。この結果、内部導体30と接続端子50は物理的且つ電気的に接続され、それらの全体で終端装置1の内部導体を形成し得る。一方、接続端子50の後端は、挟み込み部51Cによって軸方向「α」に沿って抵抗基板2に固定される。接続端子50は、挟み込み部51Cにおいて抵抗基板2の前側を上下方向から挟み込むようにして、言い換えれば、抵抗基板2の前端の少なくとも一部を覆った状態で、抵抗基板2に固定される。抵抗基板2の後端は、接続管70の窪み78に挿入、設置され、グランドに接続される。
【0023】
接続管70は、その側面を円筒部材40の後側の内周面40Aに接触させた状態で配置される。この結果、接続管70は、円筒部材40と、更に、円筒部材40を通じて接続部10やシェル20と電気的に接続される。接続管70には、前方から後方に向うにつれて中心窪み78に向うテーパー71が形成されている。接続管70と抵抗基板2の間には主に径方向「β」に沿ってインピーダンスが生じるが、テーパー71を設けることにより、インピーダンスを調整して抵抗を常に一定に保つことができる。
【0024】
相手同軸装置、例えば、相手同軸コネクタ(図示されていない)は、接続部10の側から軸方向「α」に沿って接続される。このとき、相手同軸コネクタの相手外部導体は、終端装置1の接続部10や筒状部材21と物理的に接続され、この結果、外部導体を構成する接続部10、シェル20、及び円筒部材40と電気的に接続される。また、このとき、相手同軸コネクタの相手中心端子は、終端装置1の接続部材30、特に、その先端31付近において物理的に接続され、この結果、内部導体を構成する接続部材30及び接続端子50と電気的に接続される。
【0025】
内部導体30、50と、外部導体、特に、シェル20や円筒部材40は、径方向「β」において互いに離間されている。この結果、円筒部材40の中間付近の内周面40Bと、接続端子30、50や抵抗基板2との間に空気層43Aが、また、接続端子30と、シェル20の筒状部材21の内周面20Aとの間に空気層43Bが、それぞれ形成される。これらの空気層43A、43Bは共に、軸方向「α」において誘電部材60と隣り合って配置されている。誘電部材60の誘電率は空気層43A、43Bのそれとは大きく異なり(例えば、誘電部材60を形成するPTFEの比誘電率は2程度)、この結果、誘電部材60と空気層43A、43Bとの境界付近で誘電率が急激に変化する。本発明者は誘電率が急激に変化する場所でインピーダンスが変化しやすい点に着目し、誘電部材60と空気層43A、43Bとの間の境界付近を中心にシミュレーションを行い、実験結果を積み重ねることで、誘電部材60と空気層43A、43Bとの間の軸方向「α」における境界付近、本例で言えば、円筒部材40の後面b1や前面b2付近であって、少なくとも境界b1、b2よりも誘電部材60側で、円筒部材40の内周面40Cを拡径することにより、インピーダンスの変化を抑制できることを突き止めた。メカニズムの詳細は明らかではないものの、円筒部材40の内周面40Cを拡径したことにより、空気層43A、43Bに至る手前で拡径部分によって空気層41A、41Bが形成され、これらの空気層41A、41Bを利用して内部導体30、50と円筒部材40との間のインピーダンスを大きくしたことにより抵抗を一定に保つことができたと推察される。尚、円筒部材40は金属で形成されているため、樹脂等に比べて加工が容易であり、寸法取りも容易であるから、この構成によれば、終端装置が小型であっても容易に径の調整を行うことができる。
【0026】
次いで、
図1乃至
図3に加え、
図4をも参照して、抵抗基板2の構成について詳細に説明する。
図4は、抵抗基板2の概略平面図を示す。
【0027】
抵抗基板2の一方の端部領域2Cは、接続管70の窪み78に挿入、設置され、グランドに接続される。抵抗基板2の他方の端部領域にはパッド2Bが設けられ、更に、パッド2Bよりも軸方向「α」において接続管70に近い側に抵抗2Aが設けられている。抵抗2Aは、抵抗基板2の一端側2Cで抵抗がゼロになるようにインピーダンスを調整するためのものであって、接続管70のテーパー71の直下の領域42Aに軸方向「α」に沿って設けられている。
【0028】
パッド2Bの一部は、接続端子の挟み込み部51Cによって上下方向から挟み込まれる、言い換えれば、接続端子の挟み込み部51Cによって覆われる。挟み込み部51Cによって覆われた後も、パッド2Bの一部2B’は、軸方向「α」、及び、軸方向「α」と直交する方向「γ」において、挟み込み部51Cから多少はみ出ている。このはみ出し部2B’と挟み込み部51Cの外面とに半田を付けることによって、接続部材50を抵抗基板2に固定することができる。
【0029】
軸方向「α」において、パッド2Bは、挟み込み部51Cによって覆われている領域(以下、「覆領域」という)42Bと、挟み込み部51Cによって覆われていない領域(以下、「非覆領域」という)42B’とを含む。覆領域42Bと非覆領域42B’の抵抗値は相違し、この結果、抵抗基板2と、外部導体、特に、シェル20や円筒部材40との間に生じるインピーダンスは、覆領域42Bと非覆領域42B’とで相違する。終端装置1の抵抗を軸方向「α」において一定に保つため、本構成では、この相違に応答して、軸方向「α」において外部導体40の内周面40Bの径を調整してインピーダンスの調整を図っている。境界b1、b2と同様に、本発明者は、誘電率が急激に変化するであろう、覆領域42Bと空気層43Aとの間の境界b3付近、及び、覆領域42Bと非覆領域42B’との間の境界b4付近を中心にシミュレーションを行い、実験結果を積み重ねることで、軸方向「α」における境界b3付近であって、少なくとも境界b3よりも覆領域42B側で、また、軸方向「α」における境界b4付近であって、少なくとも境界b4よりも非覆領域42B’側で、円筒部材40の内周面40Baや内周面40Bbをそれぞれ拡径することにより、インピーダンスの変化を抑制できることを突き止めた。メカニズムの詳細は明らかではないものの、上述した境界b1、b2と同様に、覆領域42Bにおける内周面40Baや非覆領域42B’における内周面40Bbを拡径したことによって空気層が大きくなり、言い換えれば、誘電率が小さくなり、これによって覆領域42Bや非覆領域42B’と円筒部材40との間のインピーダンスが大きくなったことにより、抵抗を一定に保つことができたと推察される。例えば、本例では、覆領域42Bにおける外部導体40の内周面40Baの径は、通常の内周面40Bの径より若干大きく、また、非覆領域42B’における外部導体40の内周面40Bbの径は、覆領域42Bにおける外部導体40の内周面40Baの径より若干大きく設定されている。
【0030】
外部導体40の内周面の径を変更することに代えて、或いは、これに加えて、覆領域42Bと非覆領域42B’との間で、直交方向「γ」におけるパッド2Bの幅を調整することによりインピーダンスの調整を図ってもよい。
図4に示す例では、非覆領域42B’での直交方向「γ」におけるパッド2Bの幅「e」が、覆領域42Bでの同方向「γ」におけるパッド2Bの幅「d」より若干大きく設定されている。これに対し、
図5に示す抵抗基板2’では、例えば、非覆領域42B’での直交方向「γ」におけるパッド2Dの幅「f」を、覆領域42Bでの直交方向「γ」におけるパッド2Bの幅「e」より小さくすることによって、インピーダンスの調整を図っている。この場合、非覆領域42B’での直交方向「γ」におけるパッド2Bの幅「f」は、同方向「γ」における抵抗2Aの幅「f」と等しい幅まで小さくすることができる。どの程度の幅が必要であるかは、計算によって容易に求めることができるだろう。
【0031】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。って、図面及び説明は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 終端装置
2 抵抗基板(抵抗素子)
2A パッド
2B 抵抗
2C 端部領域
3 第一部品
5 第二部品
10 接続部(外部導体)
20 シェル(外部導体)
21 筒状部
30 接続端子(内部導体)
34 固定部
40 円筒体(外部導体)
42A 抵抗領域
42B 覆領域
42B’ 非覆領域
43A 空気層
43B 空気層
50 接続端子(内部導体)
51C 挟み込み部
60 誘電部材(絶縁座)
70 接続管