【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第60回宇宙科学技術連合講演会講演集(DVD)平成28年9月6日一般社団法人 日本航空宇宙学会発行 2C12 月極域探査ミッション:機構系システム技術の検討状況の第3〜5頁(第4章着陸衝撃吸収機構)に発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の飛行体の着陸脚は、外筒、先端部分、ハニカムコアおよび接地部分を有し、かつ、先端部分が外筒に対してスライドするため、その構造が複雑である。
【0005】
また、着陸地点は、硬い岩盤で形成されている場合もあれば、レゴリスなどの軟らかい土壌で形成されている場合もあり、更に突起形状等がある場合も想定される。突起がある着陸地点に天体探査機が着陸すると、剛体の円盤形状での接地では、突起により天体探査機が傾き転倒するおそれがある。また、軟らかい土壌に対しては、天体探査機が土壌に沈降することを防止するために、着陸脚の長さを長く設定する必要があり、着陸脚の質量が増す。また、着陸脚を長くすると、岩盤などに着陸した場合、天体探査機の重心が高くなり、天体探査機が転倒しやすくなる。これに対し、接地部分を大きくすることにより、沈降を抑制することができる。しかしながら、円盤形状の接地部分の面積を大きくすると、それに応じて飛行体の着陸脚の重量が増加してしまい、また突起に着地する可能性も増加する。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、着陸地点の状態に関わらず、より確実に着陸できる簡単かつ軽量な構造の飛行体の着陸脚およびそれを備える飛行体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る飛行体の着陸脚は、セル壁および前記セル壁に囲まれたセル孔を複数有するハニカム状のコア部と、前記コア部を被覆する被覆部と、前記コア部に設けられ、前記セル孔より大径であって前記セル孔と同方向へ延びる衝撃吸収用の孔部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、コア部および被覆部により着陸脚が構成されているため、その構造が簡単である。また、コア部がハニカム状である上、コア部に孔部が設けられているため、衝突エネルギーを吸収すると共に、軽量かつ着地面積を大きくすることができる。また脚底部が突起形状を吸収することができる。これにより、硬い着陸地点に着陸した場合は、ハニカムコアのエネルギ吸収により、着地時の衝撃による着陸脚の破損を防止することができると共に、軟らかい着陸地点に着陸した場合は、沈降を抑制することができる。
【0009】
飛行体の着陸脚では、前記コア部は、前記孔部が設けられる本体と、前記孔部の底と前記コア部の底面との間に設けられるコア底部と、を有していてもよい。この構成によれば、突起が突き出した地点に着陸しても、突起に沿ってコア部が変形するため、着陸脚は安定して着陸地点に着陸することができる。
【0010】
飛行体の着陸脚では、前記コア部は、前記セル孔が延びる方向に対し直交する断面積が前記コア部の底面から天面に向かって大きくなる形状を有していてもよい。この構成によれば、セル孔が延びる方向に直交する方向のせん断力および曲げモーメントを、コア部の断面積が大きくなっている部分で支持するため、着陸脚の破損を防止することができる。
【0011】
飛行体の着陸脚では、前記コア部は第1コア部であり、前記第1コア部の天面上に重ねられる第2コア部と、前記第1コア部と前記第2コア部との間に挟まれる板部と、をさらに備えていてもよい。この構成によれば、第1コア部に第2コア部を積み重ねることにより、着陸脚の高さを高くすることができる。また、板部を介して第1コア部から第2コア部に伝搬する圧力を均一化し、着陸脚の破損を防止することができる。さらに、板部により第1セル壁および第2セル壁を支持し、せん断力および曲げモーメントによる第1セル壁および第2セル壁の変形を抑制することができる。
【0012】
飛行体の着陸脚では、前記セル壁は第1セル壁であり、前記セル孔は第1セル孔であり、前記第2コア部は、第2セル壁および前記第2セル壁に囲まれた第2セル孔を有するハニカム状であってもよい。この構成によれば、ハニカム状の第2コア部により、着陸脚の軽量化が図られる。
【0013】
飛行体の着陸脚では、前記孔部は第1孔部であり、前記第2コア部は、前記第2コア部の天面と底面との間に延びる第2孔部を有していてもよい。この構成によれば、着陸脚のさらなる軽量化が図られる。
【0014】
飛行体の着陸脚では、前記第2コア部は、前記第2セル孔が延びる方向に対し直交する断面積が前記第2コア部の底面から天面に向かって大きくなる形状を有していてもよい。この構成によれば、第2セル孔が延びる方向に直交する方向のせん断力および曲げモーメントを、第2コア部の断面積が大きくなっている部分で支持するため、着陸脚の破損を防止することができる。
【0015】
本発明の別の態様に係る飛行体は、上記飛行体の着陸脚を備える。この構成によれば、簡単な構造かつ軽量であって、着陸地点の状態に関わらずより確実に飛行体は着陸することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様に係る飛行体は、上記飛行体の着陸脚と、前記第2コア部を前記板部との間に挟むブラケットと、を備え、前記板部、前記第2コア部および前記ブラケットによりハニカムサンドイッチ構造が形成される。この構成によれば、板部およびブラケットを介して第1コア部および第2コア部から飛行体に伝搬する圧力を均一化し、飛行体の破損を防止することができる。さらに、板部およびブラケットにより第1セル壁および第2セル壁を支持し、せん断力および曲げモーメントによる第1セル壁および第2セル壁の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上に説明した構成を有し、着陸地点の状態に関わらず、より確実に着陸できる簡単かつ軽量な構造の飛行体の着陸脚およびそれを備える飛行体を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る着陸脚10を備える飛行体11の構成について、
図1Aおよび
図1Bを参照して説明する。ここでは、着陸脚10を飛行体11に採用した場合について説明するが、飛行体11は、着陸機に限定されない。たとえば、飛行体11には、大気圏外の宇宙空間を飛行する宇宙機、および、大気圏を飛行する飛行船などの航空機などが挙げられる。
【0022】
飛行体11は、本体12および着陸脚10を備えている。本体12は、平らな底面(本体底面)12aを有し、たとえば、四角形である。本体底面12aには、1個または複数(この実施の形態では、4個)の着陸脚10が取り付けられている。たとえば、着陸脚10は、本体底面12aの角に配置されており、ブラケット13(
図3)を介して本体底面12aに固定されている。ブラケット13は、平板であって、軽量で高強度の材料、たとえば、炭素繊維強化プラスチックなどの樹脂で形成される。
【0023】
着陸脚10は、本体底面12aに対向する天面(脚天面)10a、脚天面10aに対向する底面(脚底面)10b、および、これらの間の側面(脚側面)10cを有している。着陸脚10は、円錐台の形状である。ただし、着陸脚10の形状は、円錐台に限定されず、角錐台などの切頭錐体であってもよい。
【0024】
着陸脚10において、本体底面12aの角側における脚側面10cは脚底面10bに対して上方向に延びる。一方、本体底面12aの角側以外における脚側面10cは、脚底面10bから脚天面10aに向かって着陸脚10の断面積が大きくなるように、脚底面10bに対して傾斜する。
【0025】
着陸脚10は、脚天面10aに平行な方向において、脚底面10bと脚天面10aとの間の円柱形状の部分(脚本体部分)10dと、脚側面10cと脚天面10aとの間の部分(脚支持部分)10eとを有する。脚支持部分10eは、本体底面12aの角側以外において、脚本体部分10dを取り囲み、脚本体部分10dから外側に突き出す。
【0026】
着陸脚10は第1コア部14および被覆部15を備えている。被覆部15は、第1コア部14の底面(第1底面)および側面(第1側面)を被覆し、第1コア部14の保護および第1コア部14への土壌などの侵入を防止する。被覆部15は、耐熱性、耐寒性、耐摩耗性、耐擦傷性および軽量などの特性を有している。たとえば、被覆部15は、ポリイミド樹脂などの樹脂が用いられ、フィルムで形成されている。
【0027】
次に、第1コア部14について、
図2A〜
図2Eを参照して説明する。第1コア部14は、天面(第1コア天面)14a、第1コア天面14aに対向する第1コア底面14b、第1コア天面14aおよび第1コア天面14aの間に設けられる第1コア側面14cを有する。
【0028】
第1コア部14は、
図2Aに示すように、多数のセル壁(第1セル壁)16および多数のセル孔(第1セル孔)17を有し、ハニカム状に形成されている。
【0029】
第1セル壁16は、薄い板材であって、軽量で変形可能な材料で形成されている。たとえば、第1セル壁16には、金属、樹脂およびセラミックスなどが用いられる。この中でも、塑性変形可能な金属が好ましく、このうち軽量なアルミニウムがさらに好ましい。
【0030】
第1セル壁16は、第1コア底面14bに対して直交する方向に平らに延び、第1コア底面14bに対して平行な方向において屈曲または湾曲して、内部に空間を形成する筒形状を形成する。この空間が第1セル孔17として用いられる。
【0031】
第1セル孔17は、第1セル壁16に囲まれた空間であり、たとえば、六角柱である。第1セル孔17は、第1コア部14の第1コア天面14aと第1コア底面14bとの間に延び、第1コア部14を貫通し、第1コア天面14aおよび第1コア底面14bのそれぞれに開口する。複数の第1セル孔17は、互いに平行であって、第1セル孔17が延びる方向に直交する方向においてサイズおよび形状が均一である。なお、第1セル孔17は、六角柱に限定されず、他の多角柱および略円柱であってもよい。
【0032】
第1コア部14は、円錐台である。第1セル孔17が延びる方向に対し直交する断面は、たとえば、円形であって、その面積は、第1コア底面14bから第1コア天面14aに向かって第1セル孔17が延びる方向に沿って大きくなる。なお、第1コア部14の形状は、円錐台に限定されず、角錐台などの切頭錐体あってもよい。
【0033】
第1コア部14は、第1コア天面14aおよび第1コア底面14bを通る第1コア対称線14dに関し線対称であってもよい。
図2Cおよび
図2Dに示すように、第1コア対称線14dを通る第1コア側面14cの一方部分(第1部分)は第1コア底面14bに対して上方向に立ち上がり、それ以外の第1コア側面14cは第1コア底面14bに対して傾斜する。
【0034】
このように、第1コア部14は、第1コア天面14aに平行な方向において、第1コア底面14bと第1コア天面14aとの間の円柱形状の部分(第1コア本体部分)14eと、第1コア側面14cと第1コア天面14aとの間の部分(第1コア支持部分)14fとを有している。第1コア本体部分14eは着陸脚10の脚本体部分10dを形成する。第1コア支持部分14fは、第1部分以下の第1コア本体部分14eの周りに設けられ、着陸脚10の脚支持部分10eを形成する。
【0035】
また、第1コア部14は、
図2Eに示すように、第1コア天面14aに垂直な方向において、後述する孔部(第1孔部)18が設けられるコア本体141と、第1孔部18の底(第1孔底面)18aと第1コア底面14bとの間に設けられるコア底部142とを有している。
【0036】
第1孔部18は、第1セル孔17より大径である。つまり、第1セル孔17が延びる方向に対する断面において、第1孔部18の面積は第1セル孔17より大きい。
【0037】
1つまたは複数(この実施の形態では、16個)の第1孔部18が第1コア部14に設けられている。複数の第1孔部18は、第1コア対称線14dに対して線対称に配置されていてもよい。第1孔部18は、第1コア天面14aから第1コア底面14bに向かって延びる。たとえば、第1孔部18は、第1セル孔17が延びる方向に沿って、第1セル孔17に平行に延びる。
【0038】
第1コア側面14cと第1コア天面14aとの間(第1コア支持部分14f)に配置される第1孔部18は、第1コア側面14cと第1コア天面14aとの間を貫通する。
【0039】
第1コア底面14bと第1コア天面14aとの間(第1コア本体部分14e)に配置される第1孔部18は、第1コア天面14aから窪むが、第1コア底面14bと第1コア天面14aとの間を貫通せずに、第1孔底面18aと第1コア底面14bとの間にコア底部142が介在する。これにより、第1孔底面18aと第1コア底面14bとの間に第1セル壁16(コア底部142)が設けられる。この第1コア底面14bの全体において第1セル壁16が均一に配されていてもよい。この場合、着陸脚10の着陸時に第1コア底面14bにおいて第1セル壁16が受ける力が均一になり、各第1セル壁16を介して飛行体11に与えられる衝突荷重を全体的に抑え、飛行体11の破損を防止することができる。
【0040】
次に、飛行体11の着陸時における飛行体11の着陸脚10の作用について、
図3A〜
図3Dを参照して説明する。
図3Aに示すように、第1コア底面14bが着陸地点19に平行になるように、着陸地点19に飛行体11が着陸する。この着陸地点19は、硬く、平らで、第1セル孔17が延びる方向に直交する方向に拡がっている。
【0041】
この場合、着陸脚10の脚底面10bの全体が着陸地点19に均等に当たり、この際の衝突荷重が、第1セル孔17および第1セル壁16が延びる方向に第1コア部14に作用する。衝突荷重により第1コア底面14bに近い第1セル壁16が変形して座屈し、着陸脚10の衝突エネルギーを吸収する。これにより、第1セル壁16を介して飛行体11に伝搬する衝突荷重が低減され、飛行体11が破損することが防止される。
【0042】
この際、第1セル孔17および第1孔部18によって着陸脚10の断面積が小さくなり、第1コア天面14aを介して飛行体11に与えられる衝突時の圧力を小さく抑えられ、飛行体11が破損することが防止される。
【0043】
また、第1孔部18により第1セル壁16が変形し易いため、着陸脚10の変形荷重を小さく抑えることができる。これにより、第1セル壁16を介して飛行体11に伝搬する力が弱められるため、飛行体11が受ける衝突荷重を低減することができる。
【0044】
また、金属などで形成される第1セル壁16は塑性変形するため、着陸脚10は跳ね返ることがない。よって、衝突荷重により飛行体11が転倒することが抑えられる。また、被覆部15に弾性を有さない材料を用いることにより、衝突荷重に対する弾性力が生じないため、飛行体11の転倒がさらに防止される。
【0045】
さらに、第1コア部14は被覆部15により被覆されている。このため、衝突した際などの影響で岩石などの硬い物体がはじかれて着陸脚10の脚側面10cに突き当たっても、脚側面10cは被覆部15により保護される。よって、脚底面10b側に比べて脚側面10c側からの外力に対して弱い第1セル壁16であっても、第1セル壁16が破損することが防がれる。
【0046】
また、
図3Bに示すように、突起19aがある硬い着陸地点19に飛行体11が着陸する場合であっても、突起19aが着陸脚10の脚底面10bに当たり、突起19aに衝突した第1セル壁16は変形する。続いて、残る脚底面10bも着陸地点19に当たり、衝突荷重により第1コア底面14bに近い第1セル壁16が変形する。この第1セル壁16の座屈によって、着陸脚10の衝突エネルギーが吸収される。このように、変形しやすい第1コア部14のコア底部142が着陸脚10の全体に亘って設けられるため、着陸地点19の突起19aに沿って変形する。よって、着陸脚10および飛行体11が傾きを抑えることができるため、突起19aによる飛行体11の転倒を防止することができる。
【0047】
さらに、
図3Cに示すように、硬くて平らな着陸地点19に傾いて飛行体11が傾斜して着陸する。この場合、着陸地点19に衝突した第1セル壁16およびその近傍の第1セル壁16が変形し、この第1セル壁16の変形によって着陸脚10の衝突エネルギーが吸収される。よって、着陸地点19に対して第1セル壁16が延びる方向が傾いていても、これ以上に大きく着陸脚10および飛行体11が傾くことが抑えられるため、突起19aによる飛行体11の転倒を防止することができる。
【0048】
また、この衝突荷重は第1セル孔17および第1セル壁16が延びる方向に対して傾いて第1コア部14に作用する。この斜め荷重による曲げモーメントおよびせん断力は、衝突する第1コア底面14bから離れるほど大きくなる。これに対し、第1コア部14は、その断面積が第1コア底面14bから第1コア天面14aに向かって大きくなるため、第1コア支持部分14fによって曲げモーメントおよびせん断力による第1コア部14の破損が防がれる。
【0049】
特に、着陸脚10が機体外側から着陸地点19に衝突する。この着陸脚10は、その脚底面10bから脚天面10aに向かって着陸脚10の断面積が大きくなるように、隣り合う側(機体内側)の脚側面10cが機体内側に傾斜している。よって、機体外側から着陸脚10が受ける衝突荷重を機体内側の脚支持部分10eが支える。これにより、曲げモーメントおよびせん断力により着陸脚10の破損をさらに確実に防止することができる。
【0050】
さらに、
図3Dに示すように、軟らかいレゴリスの着陸地点19に飛行体11が着陸する。この場合、着陸脚10はレゴリスに沈み、着陸脚10の衝突エネルギーを吸収することができる。また、第1コア底面14bの面積を大きくすることができるため、レゴリスに対する着陸脚10の沈下を抑えることができる。この際、第1コア底面14bが被覆部15により覆われているため、レゴリスが第1セル孔17および第1孔部18に侵入しない。よって、着陸脚10の沈下をさらに確実に低減することができる。この結果、着陸脚10の長さを長く設定する必要がないため、着陸脚10の質量の増加を抑制できると共に、飛行体11の重心が高くならず、飛行体11の転倒を防止することができる。
【0051】
上記構成によれば、着陸脚10は第1コア部14および被覆部15により形成されているため、着陸脚10の構成が簡単である。また、第1コア部14はハニカム状に形成され、第1コア部14には第1孔部18が設けられていることにより、着陸脚10の軽量化が図られる。さらに、第1セル孔17より大径であって第1セル孔17と同方向へ延びる衝撃吸収用の第1孔部18が第1コア部14に設けられる。これにより、着陸地点19の状態によらず着陸地点19により確実に着地することができる。
【0052】
また、第1コア部14は、第1孔部18が設けられるコア本体141と、第1孔底面18aと第1コア部14の底面(第1コア底面)14bとの間に設けられるコア底部142と、を有する。硬い突起19aが突き出した着陸地点19であっても、コア底部142が地形に沿って変形することにより、着陸脚10はより安定に着陸することができる。
【0053】
さらに、第1コア部14は、第1セル孔17が延びる方向に対し直交する断面積が第1コア底面14bから第1コア天面14aに向かって大きくなる形状を有している。これにより、斜め荷重による曲げモーメントおよびせん断力が着陸脚10に作用しても、脚支持部分10eにより着陸脚10の破損を防止することができる。
【0054】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る飛行体11の着陸脚10を備える飛行体11の構成について、
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。飛行体11は、本体12および着陸脚10を備えている。着陸脚10は、第1コア部14、および、第1コア部14の第1コア天面14a上に載せられた第2コア部20を有している。第1コア部14の第1コア底面14bが着陸脚10の脚底面10bを構成し、第2コア部20の天面(第2コア天面)20aが着陸脚10の脚天面10aを構成している。着陸脚10は、第2コア天面20aと本体底面12aとの間にブラケット13などを介して飛行体11に取り付けられている。
【0055】
第1コア部14は円柱であり、第2コア部20は円錐台である。なお、第1コア部14の形状は、円柱に限定されず、角柱であってもよい。また、第2コア部20の形状は、円錐台に限定されず、角錐台などの切頭錐体であってもよい。
【0056】
第2コア部20において、本体底面12aの角側における側面(第2コア側面)20cは、第2コア底面20bに対して上方向に延びる。一方、本体底面12aの角側以外における第2コア側面20cは、第2コア底面20bから第2コア天面20aに向かって第2コア部20の断面積が大きくなるように、第2コア底面20bに対して傾斜する。
【0057】
第2コア部20は、第2コア底面20bと第2コア天面20aとの間の円柱形状の部分(第2コア本体部分)20eと、第2コア側面20cと第2コア天面20aとの間の部分(第2コア支持部分)20fとを有している。第2コア支持部分20fは、第2コア部20の隣り合う側(機体内側)に設けられる。
【0058】
次に、着陸脚10の各部について、
図5〜
図6Dを参照して説明する。
図5に示すように、着陸脚10は、第1コア部14、第2コア部20、板部24および被覆部15を備えている。
【0059】
第1コア部14は、多数の第1セル壁16および複数の第1セル孔17を有し、ハニカム状に形成されている。第1コア部14には、1つまたは複数(この実施の形態では、16個)の第1孔部18が設けられている。第1コア部14は、第1孔部18が設けられるコア本体141およびコア底部142を有している。このコア底部142は第1孔底面18aと第1コア底面14bとの間に設けられる。この第1コア底面14bの全体において第1セル壁16が均一に配されていてもよい。この場合、着陸脚10の着陸時に第1コア底面14bにおいて第1セル壁16が受ける力が均一になり、第1セル壁16を介して飛行体11に与えられる荷重を全体的に抑え、飛行体11の破損を防止することができる。
【0060】
第2コア部20は、多数のセル壁(第2セル壁)21および複数のセル孔(第2セル孔)22を有し、ハニカム状に形成されている。第2セル壁21は第1セル壁16と同様であり、第2セル孔22は第1セル孔17と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0061】
第2コア部20の第2コア天面20aおよび第2コア底面20bは、たとえば、円形状である。第2コア天面20aはブラケット13に接続され、着陸脚10はブラケット13を介して飛行体11の本体底面12aに固定される。第2コア底面20bの面積は第1コア天面14aの面積と等しく、第2コア天面20aの面積は第2コア底面20bより大きい。
【0062】
第2セル孔22が延びる方向に対し直交する方向の第2コア部20の断面は、たとえば、円形であって、その面積は、第2セル孔22が延びる方向に沿って大きくなる。第2コア対称線20dを通る第2コア側面20cの一方部分(第2部分)は第2コア底面20bに対して垂直またはほぼ垂直に立ち上がり、第2部分以外の第2コア側面20cは第2コア底面20bに対して傾斜する。このように、第2コア部20は、第2コア底面20bと第2コア天面20aとの間の部分(第2コア本体部分)20eと、第2コア側面20cと第2コア天面20aとの間の部分(第2コア支持部分)20fとを有している。第2コア本体部分20eは第1コア本体部分14eと共に着陸脚10の脚本体部分10dを形成する。第2コア支持部分20fは、第1部分以下の第2コア本体部分20eの周りに設けられ、着陸脚10の脚支持部分10eを形成する。
【0063】
孔部(第2孔部)23は、1つまたは複数(この実施の形態では、18個)あり、第2コア部20に設けられている。複数の第2孔部23は、第2コア対称線20dに対して線対称に配置されていてよい。第2孔部23は、第2コア天面20aから第2コア底面20bに向かって延びる。たとえば、第2孔部23は、第2セル孔22が延びる方向に沿って、第2セル孔22に平行に延びる。この第2孔部23は、第2コア側面20cと第2コア天面20aとの間、および、第2コア底面20bと第2コア天面20aとの間を貫通してもよい。
【0064】
板部24は、たとえば、平らな円盤形状であって、その径は、第1コア天面14aの径、および、第2コア底面20bの径に一致する。板部24は、第1コア部14と第2コア部20との間に配置され、第1コア部14の第1セル壁16および第2コア部20の第2セル壁21それぞれに固体されている。板部24は、軽量で高強度の材料、たとえば、炭素繊維強化プラスチックなどの樹脂で形成される。
【0065】
被覆部15は、第1コア部14および第2コア部20を被覆する。被覆部15は、第1コア側面14cおよび第2コア側面20cを覆い、第1コア部14および第2コア部20を保護する。また、被覆部15は、第2コア底面20bを覆い、第2コア部20への土壌などの侵入を防止する。
【0066】
上記構成によれば、第1コア部14と前記第2コア部20との間に挟まれる板部24が設けられている。このため、硬い着陸地点19に飛行体11が着陸した際、衝突荷重が第1コア部14に作用し、第1セル壁16を介して飛行体11に向かって伝搬し板部24に達する。この板部24においてその拡がり方向に、伝搬した力が分散する。これにより、飛行体11に向かう力が板部24の拡がり方向に均一化して、第2コア部20に伝わり、第2セル板を介して飛行体11に達する。このため、飛行体11に作用する圧力が均一化されて小さくなるため、飛行体11が破損することが防止される。
【0067】
また、硬い着陸地点19に飛行体11が傾いて着陸した際、第1セル孔17が延びる方向に対して傾いた衝突荷重が第1コア部14に作用する。このせん断力および曲げモーメントに対し、第1コア部14および第2コア部20に結合した板部24は、第1セル壁16および第2セル壁21を支持し補強する。このため、着陸脚10の破損を抑制することができる。
【0068】
さらに、板部24およびブラケット13の間に第2コア部20が挟まれ、これらによりハニカムサンドイッチ構造が形成される。このため、引っ張りおよび圧縮に強く、曲げ剛性が高く、軽量な着陸脚10が実現できる。
【0069】
また、着陸脚10は第1コア部14に加えて第2コア部20を備えている。これにより、着陸脚10の脚底面10bと脚天面10aとの間の高さを高くすることができる。
【0070】
さらに、第2コア部20は、第2セル孔22が延びる方向に対し直交する断面積が第2コア底面20bから第2コア天面20aに向かって大きくなる形状を有している。これにより、斜め荷重による曲げモーメントおよびせん断力が着陸脚10に作用しても、第2コア支持部分20fにより着陸脚10の破損を防止することができる。
【0071】
また、第1コア部14、板部24および第2コア部20が被覆部15により形成されているため、着陸脚10の構成が簡単である。また、第1コア部14および第2コア部20はハニカム状に形成され、第1コア部14には第1孔部18が設けられ、第2コア部20には第2孔部23が設けられていることにより、着陸脚10の軽量化が図られる。さらに、第1孔部18が第1コア部14に設けられることにより、着陸地点19の状態によらず着陸地点19により確実に着地することができる。
【0072】
(その他の実施の形態)
なお、上記実施の形態2では、第2コア部20は第2セル壁21および第2セル孔22を有するハニカム状に形成されていた。しかしながら、第2コア部20は、軽量で、第2コア天面20aまたは第2コア底面20bに平行な方向のせん断力および曲げモーメント、ならびに、第2コア天面20aまたは第2コア底面20bに垂直な方向の圧縮力が高いものであれば、これに限定されない。たとえば、第2コア部20は箱体または棒材であってもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態2では、
図5に示すように、第1コア部14にはその中心に位置する1個の第1孔部18と、その周りに囲むように配列された8個の第1孔部18と、さらにその周りを囲むように配列された8個の第1孔部18が設けられている。ただし、第1コア部14における第1孔部18の数および配置はこれに限定されない。たとえば、
図7Aに示すように、第1コア部14の中心に1個の第1孔部18が設けられ、さらにその周りを囲むように8個の第1孔部18が配列されていてもよい。また、
図7Bに示すように、第1コア部14の中心に関して6個の扇形の第1孔部18が円を形成するように配列されていてもよい。
【0074】
また、上記全実施の形態では、第1コア部14は、コア本体141およびコア底部142を有していた。しかしながら、第1コア部14は、コア底部142が設けられず、コア本体141だけであってもよい。この場合、第1孔部18は、第1コア底面14bと第1コア天面14aとの間を貫通する。
【0075】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。