(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の内部ケーブルと、前記複数の内部ケーブルのうちの少なくとも一部の内部ケーブルの外周側を包囲する外部導体とを備えたケーブルの端部に取り付けられるコネクタであって、
前記複数の内部ケーブルとそれぞれ接続される複数の端子と、
軸方向がX方向である筒状の第1の収容部および軸方向がX方向と交差するZ方向である筒状の第2の収容部を有し、前記第1の収容部の一端部には前記ケーブルを挿入するケーブル挿入部が形成され、前記第1の収容部の他端部と前記第2の収容部の一端部とがそれぞれの内部の空間が連通するように互いに結合し、前記第2の収容部の他端部には前記複数の端子を配置する端子配置部が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、シールド部材本体と外部導体接触部とを備え、前記シールド部材本体は前記複数の端子の外周側の少なくとも一部または前記複数の内部ケーブルの外周側の少なくとも一部を覆い、前記外部導体接触部は前記ケーブル挿入部に挿入された前記ケーブルの外部導体に臨むシールド部材と、
前記ケーブル挿入部に挿入された前記ケーブルを押圧して前記ケーブルを前記外部導体接触部に向けて変位させることにより、前記外部導体接触部と前記外部導体とを互いに接触させる押圧機構とを備えていることを特徴とするコネクタ。
前記外部導体接触部は、前記ケーブル挿入部内において、前記ケーブル挿入部内に挿入された前記ケーブルの外部導体の外周側に配置され、前記押圧機構は前記ケーブルを前記外部導体接触部に向けて前記第1の収容部の径方向に変位させることにより前記ケーブルの外部導体を前記外部導体接触部に接触させることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの端部に取り付けられると共にシールド部材を備えた多極のL型コネクタは、その構造上、小型化が難しい。すなわち、
図13は、ケーブルの端部に取り付けられると共にシールド部材を備えた多極かつL型の従来のコネクタを示している。
図13(A)に示すように、コネクタ101は、基端側の開口部103と先端側の開口部104との開口方向が互いに90度異なるL字状のコネクタハウジング102を備え、基端側の開口部103には多芯ケーブル110が挿入され、先端側の開口部104付近には、複数の端子105が取り付けられた端子ハウジング106が配置されている。また、コネクタハウジング102内において、多芯ケーブル110の内部に設けられた複数の内部ケーブル111の端部が、多芯ケーブル110の外部導体112から露出し、これら内部ケーブル111の内部導体が端子105にそれぞれ接続されている。また、コネクタハウジング102内には、多芯ケーブル110の外部導体112から露出した複数の内部ケーブル111および複数の端子105をまとめて覆うシールド部材107が設けられている。シールド部材107は多芯ケーブル110の外部導体112に、例えばシールド部材107に形成されたバレル部108に多芯ケーブル110の外部導体112を圧着するといった手段により、接続されている。
【0005】
このようなコネクタ101は次のような方法により多芯ケーブル110に取り付けられる。すなわち、
図13(B)に示すように、まず、多芯ケーブル110をコネクタハウジング102の基端側の開口部103に挿入し、コネクタハウジング102内を通してコネクタハウジング102の先端側の開口部104から出し、その状態で、多芯ケーブル110の各内部ケーブル111の内部導体に端子105を接続した後、各端子105を端子ハウジング106に取り付ける。次に、コネクタハウジング102の先端側の開口部104から出た多芯ケーブル110の外部導体112にシールド部材107のバレル部108を圧着する。次に、多芯ケーブル110を引き戻しつつ、多芯ケーブル110の端部に一体化されたシールド部材107、各端子105および端子ハウジング106を、コネクタハウジング102の先端側の開口部104からコネクタハウジング102内に引き入れる。
【0006】
コネクタ101を多芯ケーブル110に取り付けるに当たり、コネクタハウジング102の先端側の開口部104から出た多芯ケーブル110の外部導体112に接続されたシールド部材107を開口部104から引き入れて、
図13(A)に示す位置に配置する際には、コネクタハウジング102内で、シールド部材107を多芯ケーブル110の外部導体112に接続された状態で90度回転させなければならない。このため、コネクタハウジング102内に大きな空間を形成する必要がある。この結果、コネクタハウジング102が大型化する。それゆえ、コネクタ101を小型化することは困難である。
【0007】
一方、特許文献1または2に記載されたコネクタでは、コネクタハウジングを2個以上の部材に分割することにより、シールド部材をコネクタハウジング内に組み付け、かつシールド部材と多芯ケーブルの外部導体との電気的接続を形成する構成を有している。このようなコネクタでは、コネクタハウジングを構成する2個以上の部材を結合するための構造が必要であるため、コネクタが大型化する。また、コネクタに防水機能を持たせる場合には、
図13に示すコネクタ101のように、コネクタハウジング102が1部材である場合には、コネクタハウジング102の各開口部103、104に防水構造を設ければよいが、コネクタハウジング102が2部材である場合には、部材同士の結合部分にも防水構造を設けなければならず、それゆえ、コネクタが一層大型化する。
【0008】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、ケーブルの端部に取り付けられると共にシールド部材を備えた多極かつL型の小型のコネクタおよびコネクタ取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタの一態様は、複数の内部ケーブルと、複数の内部ケーブルのうちの少なくとも一部の内部ケーブルの外周側を包囲する外部導体とを備えたケーブルの端部に取り付けられるコネクタであって、複数の内部ケーブルとそれぞれ接続される複数の端子と、軸方向がX方向である筒状の第1の収容部および軸方向がX方向と交差するZ方向である筒状の第2の収容部を有し、第1の収容部の一端部にはケーブルを挿入するケーブル挿入部が形成され、第1の収容部の他端部と第2の収容部の一端部とがそれぞれの内部の空間が連通するように互いに結合し、第2の収容部の他端部には複数の端子を配置する端子配置部が形成されたハウジングと、ハウジング内に配置され、シールド部材本体と外部導体接触部とを備え、シールド部材本体は複数の端子の外周側の少なくとも一部または複数の内部ケーブルの外周側の少なくとも一部を覆い、外部導体接触部はケーブル挿入部に挿入されたケーブルの外部導体に臨むシールド部材と
、ケーブル挿入部に挿入されたケーブルを押圧してケーブルを外部導体接触部に向けて変位させることにより、外部導体接触部と外部導体とを互いに接触させる押圧機構とを備えている。
【0010】
また、上述した本発明のコネクタの一態様において、外部導体接触部は、ケーブル挿入部内において、ケーブル挿入部内に挿入されたケーブルの外部導体の外周側に配置され、押圧機構は
、ケーブルを外部導体接触部に向けて第1の収容部の径方向に変位させ、かつ外部導体接触部を第1の収容部の径方向内向きに変位させることにより
、ケーブルの外部導体と外部導体接触部とを互いに接触させる構成としてもよい。この場合において、押圧機構は外部導体接触部をケーブル挿入部に挿入されたケーブルの外部導体へ押圧する押圧部材を備え、押圧部材は、リング状に形成され、内側にケーブルが挿通されるリング部と、リング部から第1の収容部のX方向他端側へ向かって伸長し、第1の収容部のX方向一端側に向かうに連れて第1の収容部の径方向内向きに傾斜する傾斜面を有する加圧部とを備え、押圧部材は、加圧部の傾斜面が外部導体接触部の端部に接触した状態で第1の収容部のX方向他端側へ移動することにより外部導体接触部を第1の収容部の径方向内向きに押圧する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、上述した本発明のコネクタの一態様において、外部導体接触部は、ケーブル挿入部内において、ケーブル挿入部内に挿入されたケーブルの外部導体の外周側に配置され、押圧機構はケーブルを外部導体接触部に向けて第1の収容部の径方向に変位させることによりケーブルの外部導体を外部導体接触部に接触させる構成としてもよい。この場合において、押圧機構はケーブル挿入部に挿入されたケーブルを外部導体接触部へ押圧する押圧部材を備え、押圧部材は、リング状に形成され、内側にケーブルが挿通されるリング部と、リング部から第1の収容部のX方向他端側へ向かって伸長し、ケーブルの外周面に臨む加圧部とを備え、ケーブル挿入部の内面には、第1の収容部のX方向他端側に向かうに連れて第1の収容部の径方向内向きに傾斜する傾斜部が形成され、押圧部材は、加圧部の端部が傾斜部に接触した状態で第1の収容部のX方向他端側へ移動することにより加圧部を変位させ、当該変位した加圧部によりケーブルを外部導体接触部へ向けて第1の収容部の径方向に押圧する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、上述した本発明のコネクタの一態様において、シールド部材本体に、端子配置部内に配置された接地端子と接触する端子接触部を形成してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のコネクタ取付方法の一態様は、
複数の内部ケーブルと、複数の内部ケーブルのうちの少なくとも一部の内部ケーブルの外周側を包囲する外部導体とを備えたケーブルの端部に取り付けられるコネクタであって、複数の内部ケーブルとそれぞれ接続される複数の端子と、軸方向がX方向である筒状の第1の収容部および軸方向がX方向と交差するZ方向である筒状の第2の収容部を有し、第1の収容部の一端部にはケーブルを挿入するケーブル挿入部が形成され、第1の収容部の他端部と第2の収容部の一端部とがそれぞれの内部の空間が連通するように互いに結合し、第2の収容部の他端部には複数の端子を配置する端子配置部が形成されたハウジングと、ハウジング内に配置され、シールド部材本体と外部導体接触部とを備え、シールド部材本体は複数の端子の外周側の少なくとも一部または複数の内部ケーブルの外周側の少なくとも一部を覆い、外部導体接触部はケーブル挿入部に挿入されたケーブルの外部導体に臨むシールド部材と、外部導体接触部を押圧して外部導体接触部をケーブル挿入部に挿入されたケーブルの外部導体に向けて変位させ、またはケーブル挿入部に挿入されたケーブルを押圧してケーブルを外部導体接触部に向けて変位させることにより、外部導体接触部と外部導体とを互いに接触させる押圧機構とを備えたコネクタをケーブルに取り付けるコネクタ取付方法であって、シールド部材をハウジングのL字状の空間内に取り付けるシールド部材取付工程と、シールド部材が取り付けられたハウジングのケーブル挿入部にケーブルを挿入するケーブル挿入工程と、押圧機構により、シールド部材の外部導体接触部と、ケーブル挿入部に挿入されたケーブルの外部導体とを互いに接触させる外部導体接触工程と、ケーブル挿入工程後かつ外部導体接触工程前、または、外部導体接触工程の後に、複数の内部ケーブルと複数の端子とをそれぞれ接続し、内部ケーブルが接続された各端子をハウジングの端子配置部内に配置する端子配置工程とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブルの端部に取り付けられると共にシールド部材を備えた多極のL型コネクタの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態のコネクタ1を相手コネクタ81と共に示している。
図2ないし
図5はコネクタ1を示している。詳しくは、
図2はコネクタ1を上方から見た図であり、
図3は
図2中の矢示III−III方向から見たコネクタ1の断面図である。
図4は、コネクタ1において端子ハウジング29をコネクタハウジング2内に配置する前の状態を示す図であり、
図5はコネクタ1の分解図である。以下、コネクタ1等の各部の形状、位置、向き等を前、後、左、右、上または下といった方向を用いて説明する場合には、説明の便宜上、
図1等の右下に描かれている矢印が指し示すX1方向を前方向、X2方向を後ろ方向、Y1方向を左方向、Y2方向を右方向、Z1方向を上方向、およびZ2方向を下方向とする。
【0017】
図1において、コネクタ1は、ケーブルの端部に取り付けられるタイプであって、内部にシールド部材を備えた多極のL型コネクタである。コネクタ1は多芯ケーブル71の先端部に取り付けられる。
【0018】
多芯ケーブル71は、
図3に示すように、複数(例えば6本)の内部ケーブル72と、内部ケーブル72の外周側をまとめて包囲する外部導体75と、外部導体75の外周側を覆う絶縁被膜76とを備えている。外部導体75は例えば編組である。各内部ケーブル72は、内部導体73と、内部導体73の外周側を覆う絶縁体74とを備えている。多芯ケーブル71の先端部は端末処理が施されている。すなわち、絶縁被膜76の先端部が除去され、外部導体75の先端部が多芯ケーブル71の外周側へ折り返され、各内部ケーブル72の先端部が外部導体75から露出している。また、折り返された外部導体75の外周側には銅テープ77が巻かれている。
【0019】
相手コネクタ81は例えばモータ等の電気装置に取り付けられる。相手コネクタ81は、
図1に示すように、嵌合部83を備えたコネクタハウジング82、並びにコネクタハウジング82内に設けられた複数の信号端子85Aおよび1個の接地端子85Bを備えている。さらに、嵌合部83の外周側には、防水のためにコネクタ1と相手コネクタ81との間をシールするシールリング86が設けられている。また、コネクタハウジング82には、コネクタ1のロック部材19に設けられた係合部21と係合する金属製の係合爪87が設けられている。
【0020】
コネクタ1は、
図3に示すように、コネクタハウジング2と、コネクタ1を相手コネクタ81に抜け止めするロック部材19と、内部ケーブル72の内部導体73が接続されると共に相手コネクタ81の端子85A、85Bと接触する複数の端子25A、25Bと、各端子25A、25Bを支持する端子ハウジング29と、多芯ケーブル71の外部導体75から露出した各内部ケーブル72および各端子25A、25Bを電磁シールドするシールド部材33と、シールド部材33の一部と多芯ケーブル71の先端部とを互いに押し付けることによりシールド部材33と外部導体75とを電気的に接続する押圧機構43とを備えている。
【0021】
図6ないし
図8は、シールド部材33が取り付けられたコネクタハウジング2を示している。詳しくは、
図6は
図3と同じ方向から見たコネクタハウジング2およびシールド部材33の断面を示している。
図7および
図8は、下方および後方からコネクタハウジング2およびシールド部材33をそれぞれ示している。
【0022】
図6に示すように、コネクタハウジング2は樹脂等の非導電材料により形成されている。コネクタハウジング2は、軸方向が前後方向(X方向)である筒状の第1の収容部3と、軸方向が前後方向と交差する上下方向(Z方向)である筒状の第2の収容部4とを有し、第1の収容部3の前部と第2の収容部4の上部とが、それぞれ内部の空間が連通するように互いに結合したL字状に形成されている。また、第1の収容部3の後端部には、後方に向かって開口する後端開口部5が形成され、第2の収容部4の下端部には、下方に向かって開口する下端開口部6が形成されている。また、第1の収容部3の後部には、多芯ケーブル71の先端部を挿入するケーブル挿入部7が形成され、第2の収容部4の下部には複数の端子25A、25Bを配置する端子配置部8が形成されている。
【0023】
また、
図6および
図7に示すように、コネクタハウジング2において、第1の収容部3の前部と第2の収容部4の上部とが結合する部分の右壁内面および左壁内面には、端子ハウジング29を係止するための凸状の端子ハウジング係止部9がそれぞれ形成されている。また、コネクタハウジング2において、第1の収容部3の前部と第2の収容部4の上部とが結合する部分の上壁内面には、シールド部材33を固定するためのシールド部材固定部11が形成されている。
【0024】
また、第1の収容部3において、前後方向中間部よりもやや後方に位置する部分には、第1の収容部3の内面が全周に亘って径方向内向きに突出し、内径がその前後の部分よりも小さくなった縮径部12が形成されている。
図6中の二点鎖線で囲んだ部分が縮径部12である。さらに、
図8に示すように、縮径部12の後端側には4個の凹部13が形成されている。これら凹部13は、縮径部12の上部、下部、左部および右部にそれぞれ位置し、縮径部12の周方向において90度の間隔を持って配置されている。また、4個の凹部13のうち、下部に位置する凹部13の下面には、
図6に示すように、前方に向かうに連れて上方(第1の収容部3の径方向内向き)に傾斜する傾斜部14が形成されている。後述するように、縮径部12の上部、下部、左部および右部にそれぞれ位置する凹部13内には、押圧部材44のシールド部材加圧片46、ケーブル加圧片47、一方の位置決め片48および他方の位置決め片48がそれぞれ挿入される。
【0025】
また、第1の収容部3の後部外周面には、ケーブル保持部材54を締着するためのねじ部15が形成されている。なお、
図5および
図7ではねじ部15の図示を省略している。また、第1の収容部3の後端部には、後方へ突出し、ケーブル締付部材50の一対のシール部材支持片52と嵌合する一対の嵌合片16が形成されている。
【0026】
また、
図2および
図7に示すように、コネクタハウジング2の第1の収容部3と第2の収容部4との結合部分には、外力によるコネクタハウジング2の変形を抑制する補強部17、18が第2の収容部4の外周部から後方へ延びる板状に形成されている。
【0027】
また、コネクタ1を相手コネクタ81に抜け止めするロック部材19は、
図1に示すように、コネクタハウジング2の前部の左側および右側に略上下方向に回動可能に支持されている。ロック部材19には、コネクタ1を相手コネクタ81にロックする際にロック部材19を押し下げる操作部20が設けられている。また、ロック部材19には、ロック部材19が押し下げられたときに、相手コネクタ81のコネクタハウジング82に形成された一対の係合爪87と係合する一対の係合部21(左側のみ図示)が設けられている。また、ロック部材19が押し下げられたときに、ロック部材19に形成された一対の引っ掛け爪部22が、コネクタハウジング2の前面に形成された一対の突起23に係合することにより、コネクタ1と相手コネクタ81とのロック状態が保持されるようになっている。
【0028】
また、ロック部材19の左部および右部において、回動軸61の周囲の一部が係合部21の伸長方向に沿って延び、その自由端に三角形のカム部62が形成されている。ロック部材19がロック状態から解除操作された際には、係合爪87の上縁とカム部62が当接して作用点となり、コネクタ1を相手コネクタ81から離脱させる。この構成によれば、ロック部19の解除操作によりコネクタ1を相手コネクタ81から円滑に離脱させることができる。なお、係合爪87の上縁にも頂点を設けることにより、コネクタ1を相手コネクタ81から離脱させる動作をより円滑にすることができる。
【0029】
コネクタ1は複数(例えば6個)の信号端子25Aおよび1個の接地端子25Bを有している。
図4に示すように、各信号端子25Aは導電材料により形成された圧着端子である。各信号端子25Aの下端側(先端側)には相手コネクタ81の信号端子85Aと接触する接触端部26が形成されている。また、各信号端子25Aの上端側(基端側)には内部ケーブル72の内部導体73がかしめ固定されて接続される接続端部27が形成されている。一方、接地端子25Bは、導電材料により形成され、接地端子25Bの下端側には相手コネクタ81の接地端子85Bと接触する接触端部26が形成されている。また、接地端子25Bの上端側にはシールド部材33に形成された端子接触部39が接触する面を有するシールド部材接触部28が形成されている。
【0030】
各端子25A、25Bを支持する端子ハウジング29は、
図5に示すように、樹脂等の非導電材料により形成されている。端子ハウジング29には、端子25A、25Bを支持するための複数の端子支持孔30が形成されている。端子25A、25Bは端子支持孔30にそれぞれ挿入され、抜け止め固定される。また、
図5に示すように、端子ハウジング29の左面および右面には、端子ハウジング29をコネクタハウジング2の端子配置部8に固定するための凹状係止部31がそれぞれ形成されている。各凹状係止部31は、コネクタハウジング2に形成された端子ハウジング係止部9と係合する。
【0031】
図9および
図10は上側方および下側方から見たシールド部材33をそれぞれ示している。
図9に示すように、シールド部材33は、導電材料により形成されている。シールド部材33は、シールド部材本体34と、外部導体接触部としての接触片41とを備えている。
【0032】
シールド部材本体34は、コネクタハウジング2内において、多芯ケーブル71の外部導体75から露出した各内部ケーブル72および各端子25A、25Bの上側および前側を覆い、これらを電磁シールドする部分である。シールド部材本体34は、各内部ケーブル72および各端子25A、25Bの上側を覆う上板部35を備えている。上板部35は、
図6に示すように、平板のいくつかの箇所を上下方向または前後方向に曲げることにより形成され、コネクタハウジング2の上壁内面の形状に沿うように上方に盛り上がった形状を有している。また、シールド部材本体34は、各内部ケーブル72および各端子25A、25Bの前側を覆う略平板状の前板部36を備えている。前板部36は、コネクタハウジング2の前壁内面の形状に沿った形状を有している。このようにシールド部材本体34をコネクタハウジング2の壁部内面に沿うように形成し、配置することにより、コネクタハウジング2が小型であるにもかかわらず、コネクタハウジング2内において、各内部ケーブル72および端子ハウジング29を収容する大きい空間を確保している。
【0033】
また、
図10に示すように、シールド部材本体34の上板部35の4隅の部分には、シールド部材33をコネクタハウジング2に固定するための固定片37A、37B、37C、37Dがそれぞれ設けられている。固定片37A、37Bは、シールド部材本体34の左前端部および右前端部から下向きにそれぞれ伸長し、これら固定片37A、37Bの下端部は左右上下に拡がる平板状にそれぞれ形成されている。一方、固定片37C、37Dは、シールド部材本体34の左後端部および右後端部から下向きにそれぞれ伸長し、これら固定片37C、37Dの下端部は前後上下に拡がる平板状にそれぞれ形成されている。
【0034】
シールド部材33は、各固定片37A、37B、37C、37Dがコネクタハウジング2の各シールド部材固定部11に形成された固定溝38A、38B、38C、38Dに挿入されることによりコネクタハウジング2に固定されている。すなわち、
図7に示すように、コネクタハウジング2において、第1の収容部3の前部と第2の収容部4の上部とが結合する部分の上壁内面の四隅の部分にはシールド部材固定部11がそれぞれ形成されている。各シールド部材固定部11は、
図6に示すように、第1の収容部3の前部と第2の収容部4の上部とが結合する部分の上壁内面から下方に突出し、その突出端面には固定溝38A、38B、38C、38Dが形成されている。上記上壁内面の左前部に位置するシールド部材固定部11に形成された固定溝38Aは、深さ方向が上方向であり、長さ方向が左右方向であり、幅方向が前後方向であり、幅寸法に比して長さ寸法が大きく、下方および右方に開口している。上記上壁内面の左後部に位置するシールド部材固定部11に形成された固定溝38Cは、深さ方向が上方向であり、長さ方向が前後方向であり、幅方向が左右方向であり、幅寸法に比して長さ寸法が大きく、下方および前方に開口している。上記上壁内面の右前部および右後部に位置するシールド部材固定部11に形成された固定溝38B、38Dは、上記上壁内面の左前部および左後部に位置するシールド部材固定部11に形成された固定溝38A、38Cと左右対称の形状をそれぞれ有している。シールド部材本体34の固定片37A、37B、37C、37Dは、固定溝38A、38B、38C、38Dにそれぞれ圧入されている。これにより、シールド部材33はコネクタハウジング2に固定されている。
【0035】
また、シールド部材本体34の各固定片37A、37B、37C、37Dは、当該固定片の縁部が固定溝38A、38B、38C、38Dからはみ出ないように当該固定溝内に埋没している。これにより、コネクタハウジング2内の内部ケーブル72が固定片37A、37B、37C、37Dのいずれかの縁部に擦れ、内部ケーブル72の絶縁体74が切れることを防止することができる。
【0036】
また、
図9に示すように、シールド部材本体34の右前端部には、接地端子25Bのシールド部材接触部28と接触する端子接触部39が設けられている。
図3には、端子接触部39が接地端子25Bのシールド部材接触部28に接触した状態が図示されている。コネクタ1を多芯ケーブル71に取り付ける作業を行う際には、事前にシールド部材33が固定されたコネクタハウジング2に端子ハウジング29を取り付けることにより、シールド部材33の端子接触部39と接地端子25Bのシールド部材接触部28とを接触させることができ、シールド部材33の接地または多芯ケーブル71の外部導体75の接地を容易に形成することができる。
【0037】
また、シールド部材33の接触片41は、
図9に示すように、シールド部材本体34の後端部の左右方向中間部から後方へ伸長している。厳密には、
図6に示すように、接触片41は、コネクタハウジング2の上壁内面の形状に沿うように、シールド部材本体34の後端部から下方に傾斜しつつ後方へ伸長した後に曲がり、その後、第1の収容部3の軸方向と平行に伸長している。また、接触片41は、コネクタハウジング2の縮径部12内の空間の上部であって、縮径部12の上壁内面に接近した位置に配置されている。また、
図3に示すように、接触片41の後端部(先端部)は、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の外部導体75の上方(外周側)であり、かつ、縮径部12の上部に位置する凹部13の下方に配置されている。すなわち、接触片41の後端部の上面は、縮径部12の上部に位置する凹部13に臨み、接触片41の後端部の下面は、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の外部導体75に臨んでいる。また、
図9に示すように、接触片41の後端部の上部には、例えば接触片41の最後端部を上方に折り畳むことにより、上方に突出する上方突出部41Aが形成されている。また、
図10に示すように、接触片41の後端部の下部には、例えばプレス加工によって接触片41の後端部の一部を変形させることにより、下方に突出する下方突出部41Bが形成されている。
【0038】
また、接触片41は、前後左右方向に拡がる平板状であるが、シールド部材本体34に比して左右方向の寸法が小さく、前後方向に細長い形状を有している。また、接触片41はその後端部に力を加えることにより、上下方向に弾性変形することができる。
【0039】
シールド部材33と外部導体75とを電気的に接続する押圧機構43は、
図5に示すように、押圧部材44、ケーブル締付部材50およびケーブル保持部材54を備えている。押圧部材44は、シールド部材33の接触片41と多芯ケーブル71の先端部とを互いに押し付けることにより接触片41と外部導体75とを接触させる部材である。ケーブル締付部材50は、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の絶縁被膜76の外周面を締め付けてコネクタハウジング2に多芯ケーブル71を固定する部材である。ケーブル保持部材54は、押圧部材44、ケーブル締付部材50および多芯ケーブル71をコネクタハウジング2に保持する機能、およびコネクタ1の多芯ケーブル71への取付時に押圧部材44を前方へ移動させる機能を有する部材である。また、本実施形態のコネクタ1においては、押圧部材44とケーブル締付部材50との間に、防水のためにコネクタ1と多芯ケーブル71との間をシールするリング状のシール部材57が設けられており、シールド部材33も、ケーブル保持部材54によりコネクタハウジング2に保持される。
【0040】
図11は押圧部材44の構成を示している。
図12は押圧部材44の作用を示している。本実施形態における押圧部材44は、樹脂等により形成されているが、金属等により形成してもよい。
図11に示すように、押圧部材44は、リング部45、シールド部材加圧片46、ケーブル加圧片47および一対の位置決め片48を備えている。
【0041】
リング部45はリング状に形成され、その内側には多芯ケーブル71が挿通される。シールド部材加圧片46は、リング部45の上部から、前方へ向かって伸長している。シールド部材加圧片46の左右方向の寸法(幅寸法)は、コネクタハウジング2の縮径部12の上部に位置する凹部13の左右方向の寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。また、シールド部材加圧片46の前端部においてその下面または前端面には、
図12(A)に示すように、後方に向かうに連れて下方(第1の収容部3の径方向内向き)に傾斜する傾斜面49が形成されている。一方、ケーブル加圧片47は、リング部45の下部から、前方へ向かって伸長している。ケーブル加圧片47の左右方向の寸法(幅寸法)は、コネクタハウジング2の縮径部12の下部に位置する凹部13の左右方向の寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。また、一対の位置決め片48は、リング部45の左部および右部から、前方へ向かってそれぞれ伸長している。位置決め片48の上下方向の寸法(幅寸法)は、コネクタハウジング2の縮径部12の左部および右部にそれぞれ位置する凹部13の上下方向の寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0042】
図12(A)に示すように、押圧部材44は、コネクタハウジング2の後端開口部5からコネクタハウジング2の第1の収容部3の後部(ケーブル挿入部7)に挿入される。押圧部材44が第1の収容部3の中間部に近づくように前方に移動すると、
図12(B)に示すように、押圧部材44のシールド部材加圧片46が、コネクタハウジング2の縮径部12の上部に位置する凹部13に挿入される。このとき、シールド部材加圧片46の前端部に形成された傾斜面49が、シールド部材33の接触片41の後端部(先端部)に当たり(具体的には上方突出部41Aに当たり)、接触片41の後端部を押圧する。傾斜面49は後方に向かうに連れて下方に傾斜しているので、押圧部材44の前方への移動に伴って接触片41の後端部が傾斜面49に押されることにより、接触片41の後端部には下向きの力が加わる。この力により、接触片41が弾性変形し、接触片41の後端部が下方に変位する。この結果、
図4に示すように、接触片41が、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の外部導体75の上面に強く接触する(具体的には下方突出部41Bが外部導体75の上面に強く接触する)。
【0043】
また、押圧部材44が第1の収容部3の後部に挿入され、第1の収容部3の中間部に近づくように前方に移動すると、
図12(B)に示すように、押圧部材44のケーブル加圧片47が、コネクタハウジング2の縮径部12の下部に位置する凹部13に挿入される。このとき、ケーブル加圧片47の前端側(先端側)の下面が当該凹部13の下面に形成された傾斜部14に当たる。傾斜部14は、前方に向かうに連れて上方に傾斜しているので、押圧部材44が前方へ移動している間にケーブル加圧片47の前端側が傾斜部14に当たることにより、ケーブル加圧片47が弾性変形し、ケーブル加圧片47の前端部が傾斜部14に押圧されて上方へ変位する。この結果、
図4に示すように、ケーブル加圧片47の前端部が、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の下面に接触し、当該多芯ケーブル71の先端部を上方へ押し、外部導体75の上面をシールド部材33の接触片41の後端部へ押し付ける。
【0044】
また、押圧部材44が第1の収容部3の後部に挿入され、第1の収容部3の中間部に近づくように前方に移動すると、押圧部材44の一対の位置決め片48が、コネクタハウジング2の縮径部12の左部および右部にそれぞれ位置する凹部13に挿入される。これにより、コネクタハウジング2内において押圧部材44がコネクタハウジング2の径方向において位置決めされる。
【0045】
ケーブル締付部材50は、
図5に示すように、樹脂または金属等により形成されおり、リング状に形成され、内側に多芯ケーブル71が挿通される基部51と、基部51から前方へ突出する一対のシール部材支持片52と、基部51から後方へ突出する複数のケーブル締付片53とを備えている。一対のシール部材支持片52は、主に、両者間にシール部材57を挟持し、シール部材57を支持する機能を有している。また、一対のシール部材支持片52は、コネクタハウジング2の第1の収容部3の後端部に形成された一対の嵌合片16と嵌合する。また、各ケーブル締付片53は、
図4に示すように、ケーブル保持部材54の締付部56に押されることにより、第1の収容部3の径方向内向きに変形し、多芯ケーブル71を締め付けて固定する機能を有している。
【0046】
ケーブル保持部材54は、
図5に示すように、樹脂または金属等により筒状に形成され、ケーブル保持部材54の前端部の内面には、コネクタハウジング2の第1の収容部3の後部外周面に形成されたねじ部15に螺合するねじ部55が形成されている。また、ケーブル保持部材54の後端部には、各ケーブル締付片53を押圧して多芯ケーブル71を締め付ける締付部56が形成されている。
【0047】
コネクタ1は次のような方法により多芯ケーブル71に取り付けることができる。
(1)まず、
図6に示すように、シールド部材33をコネクタハウジング2の下端開口部6からコネクタハウジング2のL字状の空間内に入れ、
図7に示すように、シールド部材33の各固定片37A、37B、37C、37Dをコネクタハウジング2の各固定溝38A、38B、38C、38Dに圧入して、シールド部材33をコネクタハウジング2に固定する(シールド部材取付工程)。なお、この工程は、事前に実施しておいてもよい。
(2)次に、
図5に示すような端末処理を施した多芯ケーブル71をケーブル保持部材54、ケーブル締付部材50、シール部材57および押圧部材44に通した後、多芯ケーブル71をコネクタハウジング2の後端開口部5からケーブル挿入部7内に挿入する(ケーブル挿入工程)。このとき、多芯ケーブル71は、端末処理により折り返された外部導体75がコネクタハウジング2の第1の収容部3の前後方向中間部に到達する位置まで挿入すればよく、多芯ケーブル71の先端部の全体を、コネクタハウジング2内を通して下端開口部6からコネクタハウジング2の外部へ出す必要はない。もっとも、端末処理により外部導体75から露出した各内部ケーブル72の先端部は下端開口部6からコネクタハウジング2の外部へ出す。
(3)次に、
図12に示すように、押圧部材44を、後端開口部5からコネクタハウジング2内へ入れる。続いて、シール部材57およびケーブル締付部材50を後端開口部5からコネクタハウジング2内へ順次入れる。続いて、ケーブル保持部材54をコネクタハウジング2の後端部に螺着する(外部導体接触工程)。これにより、ケーブル保持部材54によってケーブル締付部材50およびシール部材57を介して押圧部材44が前方に押され、押圧部材44がコネクタハウジング2の第1の収容部3内において前方に移動する。押圧部材44が前方に移動すると、シールド部材加圧片46、ケーブル加圧片47および一対の位置決め片48がコネクタハウジング2の縮径部12に形成された4個の凹部13にそれぞれ入る。そして、シールド部材加圧片46の前端部に形成された傾斜面49がシールド部材33の接触片41の後端部を下方へ押圧し、これと同時に、縮径部12の下部に位置する凹部13に形成された傾斜部14がケーブル加圧片47の前端部を上方へ変位させ、ケーブル加圧片47の前端部が多芯ケーブル71の先端部の下面を上方へ押圧する。これにより、シールド部材33の接触片41の後端部が多芯ケーブル71の外部導体75の上面に強く接触し、シールド部材33と外部導体75とが電気的に接続される。
(4)次に、
図4に示すように、コネクタハウジング2の下端開口部6から出ている各内部ケーブル72の内部導体73に信号端子25Aを接続した後、各信号端子25Aを端子ハウジング29に取り付ける。また、接地端子25Bを端子ハウジング29に取り付ける。続いて、
図3に示すように、端子ハウジング29をコネクタハウジング2の端子配置部8へ挿入し、端子ハウジング29に形成された一対の凹状係止部31と、コネクタハウジング2に形成された一対の端子ハウジング係止部9と係合させる(端子配置工程)。これにより、コネクタハウジング2内において端子ハウジング29が位置決めされると共に、シールド部材33の端子接触部39が、端子ハウジング29に取り付けられた接地端子25Bのシールド部材接触部28に接触し、両者が電気的に接続される。以上、コネクタ1の多芯ケーブル71への取付は完了する。このような方法によれば、多極かつL型の小型のコネクタ1を多芯ケーブル71に容易に取り付けることができる。
【0048】
なお、コネクタ1の多芯ケーブル71への取付は次の方法でもよい。すなわち、シールド部材33が固定されたコネクタハウジング2の後端開口部5から多芯ケーブル71を挿入し、多芯ケーブル71の先端部を、コネクタハウジング2内を通して下端開口部6から外部へ出し、その状態で、各内部ケーブル72の内部導体73に信号端子25Aを接続し、各信号端子25Aおよび接地端子25Bを端子ハウジング29に取り付ける。続いて、多芯ケーブル71の先端部をコネクタハウジング2内に戻すように多芯ケーブル71を後退させつつ、端子ハウジング29をコネクタハウジング2の端子配置部8へ挿入して係止する。その後、押圧部材44、シール部材57、ケーブル締付部材50を後端開口部5からコネクタハウジング2内へ入れて、ケーブル保持部材54をコネクタハウジング2に螺着する。
【0049】
本発明の実施形態のコネクタ1によれば、コネクタ1を多芯ケーブル71に取り付けるに当たり、シールド部材33をコネクタハウジング2に取り付けた後に、押圧機構43によりシールド部材33と多芯ケーブル71の外部導体75とを電気的に接続することができる。これにより、従来のL型コネクタのように、コネクタを多芯ケーブルに取り付けるに当たり、多芯ケーブルの先端部の全体をコネクタハウジングの後端開口部から内部を通して下端開口部から出し、その多芯ケーブルの外部導体にシールド部材を接続してから、多芯ケーブルの外部導体に接続されたシールド部材をコネクタハウジング内に引き入れつつ、コネクタハウジング内で回転させる必要がない。それゆえ、多芯ケーブルの外部導体に接続されたシールド部材をコネクタハウジング内で回転させるための大きな空間をコネクタハウジング2内に形成する必要がなく、よって、コネクタ1を小型化することができる。また、本発明の実施形態のコネクタ1によれば、シールド部材をコネクタハウジング内に組み付け、かつシールド部材と多芯ケーブルの外部導体との電気的接続を形成するためにコネクタハウジングを2個以上の部材に分割する必要がない。それゆえ、コネクタハウジングを構成する部材同士を結合するための構造や、コネクタハウジングを構成する部材同士の結合部分を防止するための構造が不要になり、よって、コネクタ1を小型化することができる。また、コネクタハウジングを1部材で構成することができるので、防止・防塵性能の高い防止・防塵コネクタを形成することも可能である。
【0050】
また、本発明の実施形態のコネクタ1によれば、シールド部材33の接触片41を、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71の外部導体75の外周側に配置し、接触片41を第1の収容部3の径方向内向きに変位させて外部導体75に接触させる構成としたから、簡単な構造により、シールド部材33と外部導体75との電気的接続を確実に行うことができる。また、外部導体75と接触片41とが接触した状態で互いに摺動することがないので、コネクタ1を多芯ケーブル71へ取り付ける際に、外部導体75に巻かれた銅テープ77が接触片41に引っ掛かってめくれたり、位置ずれしたりすることを防止することができる。
【0051】
また、押圧部材44を前方(多芯ケーブル71のコネクタハウジング2への挿入方向)へ移動させることにより、シールド部材33の接触片41を第1の収容部3の径方向内向きに変位させて外部導体75に接触させる構成としたから、コネクタ1を多芯ケーブル71に取り付けるに当たり、コネクタハウジング2に対するシール部材57の装着や多芯ケーブル71の締付固定と同時に、または連続的にシールド部材33と外部導体75との電気的接続を行うことができ、シールド部材33と外部導体75とを電気的に接続する作業を簡単化することができる。
【0052】
また、ケーブル挿入部7に挿入された多芯ケーブル71を第1の収容部3の径方向内向き押圧し、多芯ケーブル71の外部導体75をシールド部材33の接触片41に押し当てる構成としたから、シールド部材33と外部導体75との電気的接続の確実性を高めることができる。
【0053】
また、押圧部材44を前方へ移動させることにより、多芯ケーブル71を第1の収容部3の径方向内向き押圧する構成としたから、シールド部材33と外部導体75との確実な電気的接続を簡単な作業により行うことができる。
【0054】
また、シールド部材33の接触片41を下方に変位させて多芯ケーブル71の外部導体75の上面に押し付けると同時に、ケーブル加圧片47を上方に変位させて多芯ケーブル71の先端部の下面を上方に押圧する構成としたから、シールド部材33を外部導体75に接続するために多芯ケーブル71に加えられる力によって、ケーブル挿入部7内において、多芯ケーブル71の軸線がケーブル挿入部7の軸線に対して大きく位置ずれすることを防止することができ、コネクタ1の各部材の組付の安定性、およびシール部材57のシールの確実性を高めることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、シールド部材33の接触片41を下方に変位させて多芯ケーブル71の外部導体75に押し付けると同時に、ケーブル加圧片47を上方に変位させて多芯ケーブル71の先端部を上方に押圧する構成としたが、シールド部材33の接触片41を下方に変位させて多芯ケーブル71の外部導体75に押し付ける構成のみを設けてもよく、またはケーブル加圧片47を上方に変位させて多芯ケーブル71の先端部を上方に押圧する構成のみを設けてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、押圧部材44の一対の位置決め片48をコネクタハウジング2の縮径部12の左部および右部にそれぞれ位置する凹部13に挿入することにより、押圧部材44をコネクタハウジング2の径方向において位置決めする構成を例にあげたが、押圧部材44の位置決め片48に、多芯ケーブル71がケーブル挿入部7の中心に位置するように多芯ケーブル7を左右方向に位置決めする機能を持たせてもよい。具体的には、コネクタハウジング2の縮径部12の左部に位置する凹部13の左面に、前方に向かうに連れて右方(第1の収容部3の径方向内向き)に傾斜する傾斜部を形成する。同様に、縮径部12の右部に位置する凹部13の右面に、前方に向かうに連れて左方に傾斜する傾斜部を形成する。このような傾斜部が形成された左右の凹部13に押圧部材44の左右の位置決め片48がそれぞれ挿入されたときには、左側の位置決め片48が左側の凹部13に形成された傾斜部に押されて右方へ変位し、多芯ケーブル71の左面に押し当たり、同時に、右側の位置決め片48が右側の凹部13に形成された傾斜部に押されて左方へ変位し、多芯ケーブル71の右面に押し当たる。これにより、多芯ケーブル71がケーブル挿入部7の中心に位置するように位置決めされる。
【0057】
また、上述した実施形態では、ケーブル保持部材54をコネクタハウジング2に締着することにより、押圧部材44を前方に移動させる構成としたが、押圧部材44を前方に移動させてから固定する構造を別途設けてもよい。
【0058】
また、シールド部材の一部と多芯ケーブルの外部導体の一部とを前後方向に対向させ、両者を前後方向に互いに押し付けてシールド部材と外部導体とを電気的に接続する構成としてもよい。
【0059】
また、シールド部材33に左側板または右側板を追加してもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、シールド部材33を接地端子25Bに電気的に接続する構成としたが、シールド部材を相手コネクタのシールド部材または接地端子に直接接続する構成とすることもできる。
【0061】
また、上述した実施形態では、複数の内部ケーブル72と、これらすべての内部ケーブル72の外周側をまとめて包囲する外部導体75とを備えた多芯ケーブル71にコネクタ1を取り付ける場合を例にあげたが、コネクタ1は、例えば、複数の内部ケーブルのうちの一部の内部ケーブルのみが外部導体で包囲されている多芯ケーブル、外部導体で包囲されていない内部ケーブルと外部導体で包囲されている内部ケーブルとを別の外部導体でまとめて包囲した多芯ケーブル、または複数の内部ケーブルを外部導体で包囲することにより形成されたシールドケーブルを複数束ねた多芯ケーブル等にも取り付けることができる。
【0062】
また、本発明は防止・防塵コネクタに適用することができるが、防止・防塵構造を特に有しないコネクタにも適用することができる。
【0063】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うコネクタおよびコネクタ取付方法もまた本発明の技術思想に含まれる。