(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の類似曲線抽出装置では、例えば信号パターン(曲線)の上下幅範囲が異なる場合に、入力パターンと標準パターンの形状が類似していても、類似曲線を抽出することができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、類似曲線を精度よく抽出することが可能な類似曲線抽出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の類似曲線抽出装置は、標準曲線パターンを記憶する記憶部と、車両に関する連続した信号により構成される対象曲線パターンを取得する対象曲線パターン取得部と、前記標準曲線パターンにおける等間隔の点の数
が同数となるように複数のグループを設定するグループ設定部と、前記標準曲線パターンにおける等間隔の
点を、前記グループ設定部によって設定された複数のグループのいずれかに分類する標準グループ分類部と、前記対象曲線パターンにおける等間隔の
点を、前記グループ設定部によって設定された複数のグループのいずれかに分類する対象グループ分類部と、前記対象曲線パターンにおける各点のグループと、前記標準曲線パターンにおける各点のグループとの類似度に基づいて、動的計画法により、該標準曲線パターンにおける各点のグループに対する該対象曲線パターンにおける各点のグループのスコアを導出するスコア導出部と、前記スコアに基づいて前記標準曲線パターンに類似する類似曲線を前記対象曲線パターンから抽出する類似曲線抽出部と、を備える。
【0008】
また、前記グループ設定部は、最も高い範囲のグループよりも、さらに高い範囲のグループを設定するとともに、最も低い範囲のグループよりも、さらに低い範囲のグループを設定するとよい。
【0009】
また、前記グループ設定部は、前記標準曲線パターンにおける等間隔の点の微分値
が同数となるようにグループを設定し、前記標準グループ分類部は、前記標準曲線パターンにおける等間隔の点の微分
値を、前記グループ設定部によって設定されたいずれかのグループに分類し、前記対象グループ分類部は、前記対象曲線パターンにおける等間隔の点の微分
値を、前記グループ設定部によって設定されたいずれかのグループに分類するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、類似曲線を精度よく抽出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、類似曲線抽出装置1の構成を示す図である。類似曲線抽出装置1は、制御部10、記憶部12、車速センサ(対象曲線パターン取得部)14、ヨーレートセンサ16を含んで構成されている。
【0014】
制御部10は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成されている。また、制御部10には、記憶部12、車速センサ14、ヨーレートセンサ16が接続されている。
【0015】
車速センサ14は、車両の速度を検出し、検出した速度を示す速度信号を制御部10に送信する。ヨーレートセンサ16は、車両のヨーレート(回転角速度)を検出し、検出したヨーレートを示すヨーレート信号を制御部10に送信する。
【0016】
図2は、標準曲線パターンおよび対象曲線パターンを説明するための図である。例えば、記憶部12には、
図2(a)に示すような、変速時の速度の変化を示す標準的な曲線パターン(以下、これを標準曲線パターンと称する)が記憶されている。
【0017】
そして、制御部10は、
図2(b)に示すような、例えば車両の速度の変化を解析するために、車速センサ14によって検出された連続する速度(速度信号)により構成される曲線パターン(以下、これを対象曲線パターンと称する)から、標準曲線パターンと類似する部分を抽出する類似曲線抽出処理を実行する。
【0018】
制御部10は、類似曲線抽出処理を実行する際、平滑化部20、微分化部22、グループ設定部24、標準グループ分類部26、対象グループ分類部28、テーブル生成部30、スコア導出部32、類似曲線抽出部34として機能する。以下では、類似曲線抽出処理について詳述する。
【0019】
図3は、標準曲線パターンに基づくグループの設定を説明する図である。平滑化部20は、記憶部12に記憶された標準曲線パターン、および、車速センサ14によって検出された対象曲線パターンを、ノイズ削除およびデータ量削減のため、それぞれ平滑化する。
【0020】
その後、微分化部22は、平滑化された標準曲線パターンから、
図3(a)に示すように、予め設定された時間間隔ごとに等間隔点A1〜A10を抽出する。また、微分化部22は、
図3(b)に示すように、平滑化された標準曲線パターンにおける等間隔点A1〜A10の微分値D1〜D10を導出する。
【0021】
その後、グループ設定部24は、
図3(c)に示すように、それぞれのグループに属する微分値D1〜D10の数が同数となるように、微分値の範囲を示す5つのグループ(第2グループ〜第6グループ)を設定する。つまり、本実施形態では、1つのグループに2つの微分値が属するようにグループを設定する。なお、各グループの境界は、上位のグループに属する微分値のうちの最も小さい微分値と、下位のグループに属する微分値のうちの最も大きい微分値との中間に設定される。また、第2グループの上側の境界は、第2グループに属する微分値のうちの最も大きい微分値とし、第6グループの下側の境界は、第6グループに属する微分値のうちの最も小さい微分値とする。
【0022】
また、グループ設定部24は、
図3(d)に示すように、第2グループよりも微分値が大きい範囲である第1グループ、および、第6グループよりも微分値が小さい範囲である第7グループを設定する。ここでは、第1グループの幅が、第2グループの幅と同一となるように第1グループが設定される。また、第7グループの幅が、第6グループの幅と同一となるように第7グループが設定される。
【0023】
さらに、グループ設定部24は、
図3(e)に示すように、第1グループよりも微分値が大きい範囲、および、第7グループよりも微分値が小さい範囲をグループ外に設定する。
【0024】
標準グループ分類部26は、標準曲線パターンの微分値D1〜D10がそれぞれ属するグループS1〜S10(
図5参照)を、第1グループ〜第7グループまたはグループ外のいずれかに分類する。
【0025】
図4は、対象曲線パターンのグループの分類を説明する図である。微分化部22は、平滑化された対象曲線パターンから、
図4(a)に示すように、標準曲線と同様に、予め設定された間隔ごとに等間隔点B1〜B20を抽出する。その後、微分化部22は、
図4(b)に示すように、平滑化された対象曲線パターンにおける等間隔点B1〜B20の微分値E1〜E20を導出する。
【0026】
対象グループ分類部28は、
図4(c)に示すように、対象曲線パターンの微分値E1〜E20がそれぞれ属するグループO1〜O20(
図5参照)を、グループ設定部24により設定された第1グループ〜第7グループまたはグループ外のいずれかに分類する。
【0027】
図5および
図6は、動的計画法に用いられるテーブルを説明する図である。テーブル生成部30は、
図5(a)に示すように、標準曲線パターンの等間隔点A1〜A10のグループS1〜S10を行とし、標準曲線の等間隔点B1〜B20のグループO1〜O20を列とする、(n+1)×(m+1)のテーブルを生成する。テーブルでは、1行目をとばして2行目からn+1行目のパラメータをグループS1〜S10とし、1列目をとばして2列目からm+1行目のパタメータをグループO1〜O20とする。
【0028】
また、テーブル生成部30は、テーブルの初期化処理を行う。具体的には、テーブル生成部40は、
図5(b)に示すように、テーブルの1行目および1列目の各セル(1,j)、(i,1)のスコアC
1,j、C
i,1に0を代入する。
【0029】
その後、スコア導出部32は、
図6(a)に示すように、下記式(1)および式(2)に基づいて、セル(i,j)のスコアC
i,jを左側の列から順に、上から下へ向かって順に導出する。
【数1】
…(1)
【数2】
…(2)
ここで、C
i,jは、i行j列のセルのスコアを示し、D
i,jは、グループSiとグループOjとの類似度に基づく加算値を示す。また、式(2)における、Case1は、グループSiとグループOjとが同じグループに属する場合である。Case2は、グループSiとグループOjとが隣接するグループに属する場合である。Case3は、グループSiとグループOjとが同じグループおよび隣接するグループに属していない、または、グループOjがグループ外に属している場合である。
【0030】
したがって、式(1)では、計算対象のセル(i,j)に対して左斜め上のセル(i−1、j−1)のスコア(Ci−1、j−1)からD
i,jが加算される。また、計算対象のセル(i,j)に対して上のセル(i、j−1)のスコア(Ci、j−1)から2が減算される。また、計算対象のセル(i,j)に対して左のセル(i−1、j)のスコア(Ci−1、j)から2が減算される。そして、これらの3つの値と0とが比較され、最も高い値が計算対象のセル(i,j)のスコアC
i,jとなる。
【0031】
また、式(2)では、グループSiとグループOjとの類似度が高い場合(Case1)には「3」が決定され、また、グループSiとグループOjとの類似度がCase1よりも低いが、Case3よりも高い場合には「1」が決定され、グループSiとグループOjとの類似度が最も低い場合(Case3)には「0」が決定される。
【0032】
したがって、式(1)、式(2)では、グループS1〜S10に対して、連続してグループO1〜O20の類似度が高くなるに連れてスコアが高くなっていく。そして、グループS1〜S10に対して、グループO1〜O20の類似度が低くなると、スコアが減算されていき、最終的には0になる。つまり、連続するグループS1〜S10に対して、類似度が高いグループO1〜O20の部分を抽出することができる。なお、式(1)、式(2)において、加算または減算される値は、一例に過ぎず、グループS1〜S10に対して、連続してグループO1〜O20の類似度が高くなるに連れてスコアが高くなっていき、グループS1〜S10に対してグループO1〜O20の類似度が低くなるとスコアが減算されていくのであれば、他の値であってもよい。
【0033】
その後、類似曲線抽出部34は、
図6(b)に示すように、全てのセルのうち、最も値が高いスコアのセルを抽出する。
図6(b)においては、スコアが22のセル(10,12)が最もスコアの高いセルとして抽出される。なお、隣接するセルのなかに、最も値の高いセルが複数ある場合には、テーブル上最も右下側のセルが抽出される。
【0034】
そして、類似曲線抽出部34は、
図6(b)における太線で示すように、抽出したセルから、左上、上、左に隣接するセルのうち、最も値が高いセルを順に抽出するトレースバック処理を行う。トレースバック処理では、セルの値が0になるまで繰り返し行われる。
【0035】
このようにしてトレースバック処理を行った後、類似曲線抽出部34は、対象曲線パターンから、抽出したセルに対応する等間隔点(ここでは、O1〜O12に対応する等間隔点B1〜B12)を結ぶ曲線部分を、標準曲線パターンと類似する類似曲線として抽出する。
【0036】
このように、類似曲線抽出装置1では、標準曲線パターンの微分値D1〜D10の数が同数となるようにグループを設定するようにした。これにより、標準曲線パターンの微分値D1〜D10を等間隔のグループで分類する場合と比較して、微分値がほとんど変化しない場合であっても、微分値の数が偏らずにグループを設定することができる。
【0037】
これにより、類似曲線抽出装置1は、標準曲線パターンの微分値D1〜D10がほとんど変化しない場合であっても、精度よくグループを設定することができ、精度よく類似曲線を抽出することができる。
【0038】
また、式(2)では、グループSiとグループOjとの類似度に応じて加算値を変えるようにした。既知の動的計画法では、グループSiとグループOjとが一致する場合に1を加算し、グループSiとグループOjとが一致しない場合に−1を加算するようにしている。しかしながら、本実施形態では、グループSiとグループOjとが一致する場合には、類似度が非常に高いとして3を加算し、グループSiとグループOjとが隣接するグループに属する場合には、類似度が高いとして1を加算する。このようにすることで、グループSiとグループOjとの類似度をより反映した加算値を導出することができ、類似曲線を抽出する際の精度を向上することができる。
【0039】
また、式(1)では、計算対象のセル(i,j)に対して上のセル(i、j−1)のスコア(Ci、j−1)から2が減算され、計算対象のセル(i,j)に対して左のセル(i−1、j)のスコア(Ci−1、j)から2が減算されるようにした。上記したように、式(2)では、類似度が非常に高い場合3を加算するようにしているので、これに合わせて、式(1)では、上および左のセルのスコアから2を減算するようにしている。
【0040】
図7は、類似曲線抽出処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、平滑化部20は、記憶部12に記憶された標準曲線パターン、および、車速センサ14によって検出された対象曲線パターンを、ノイズ削除およびデータ量削減のため、それぞれ平滑化する(S100)。その後、微分化部22は、平滑化された標準曲線パターンから、予め設定された間隔ごとに等間隔点A1〜A10を抽出し、等間隔点A1〜A10の微分値D1〜D10を導出する。同様に、微分化部22は、平滑化された対象曲線パターンから、予め設定された間隔ごとに等間隔点B1〜B20を抽出し、等間隔点B1〜B20の微分値E1〜E20を導出する(S102)。
【0041】
その後、グループ設定部24は、それぞれのグループに属する微分値D1〜D10の数が同数となるように、微分値の範囲を示す5つのグループ(第2グループ〜第6グループ)を設定する。また、グループ設定部24は、第2グループよりも微分値が大きい範囲である第1グループ、および、第6グループよりも微分値が小さい範囲である第7グループを設定する。さらに、グループ設定部24は、第1グループよりも微分値が大きい範囲、および、第7グループよりも微分値が小さい範囲をグループ外に設定する(S104)。
【0042】
標準グループ分類部26は、標準曲線パターンの微分値D1〜D10がそれぞれ属するグループS1〜S10を、第1グループ〜第7グループまたはグループ外のいずれかに特定する。また、対象グループ分類部28は、対象曲線パターンの微分値E1〜E20がそれぞれ属するグループO1〜O20を、グループ設定部24により設定された第1グループ〜第7グループまたはグループ外のいずれかに特定する(S106)。
【0043】
テーブル生成部30は、標準曲線パターンの等間隔点A1〜A10のグループS1〜S10を行とし、標準曲線の等間隔点B1〜B20のグループO1〜O20を列とするテーブルを生成する。また、テーブル生成部30は、テーブルの初期化処理を行う(S108)。
【0044】
スコア導出部32は、上記式(1)および式(2)に基づいて、セル(i,j)のスコアC
i,jを左側の列から順に、上から下へ向かって順に導出する(S110)。
【0045】
その後、類似曲線抽出部34は、全てのセルのうち、最も値が高いスコアのセルを抽出した後、抽出したセルから、左上、上、左に隣接するセルのうち、最も値が高いセルを順に抽出するトレースバック処理を行う。そして、類似曲線抽出部34は、抽出したセルに対応する等間隔点を結ぶ曲線部分を、標準曲線パターンと最も類似する類似曲線として抽出し(S112)、当該類似曲線抽出処理を終了する。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
なお、上記実施形態において、対象曲線パターンおよび標準曲線パターンが、速度(速度信号)の曲線パターンである場合について説明したが、これに限らず、ヨーレート(ヨーレート信号)等の車両に関する信号の曲線パターンに適用することができる。
【0048】
また、上記実施形態において、対象曲線パターンおよび標準曲線パターンに対して平滑化した場合について説明したが、平滑化は必須ではない。
【0049】
また、上記実施形態において、対象曲線パターンおよび標準曲線パターンの微分値を用いるようにしたが、これに限らず、2回微分した値を用いてもよく、また、微分する前の値(速度)を用いてもよい。ただし、曲線パターンの形状をより反映した微分値を用いることで、対象曲線パターンおよび標準曲線パターンの上下幅や時間軸方向の幅が異なる場合であっても、類似曲線の抽出精度を向上することができる。