(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記3組以上のリンク機構の全てに前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢である先端姿勢を任意に変更させる姿勢制御用のアクチュエータが設けられたリンク作動装置における診断装置であって、
前記各アクチュエータを駆動させて前記リンク作動装置に予圧を付与する予圧付与部と、前記各アクチュエータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、前記リンク作動装置が所定の条件で所定の動作を行ったときの前記各アクチュエータの駆動トルクが所定範囲内であるか否かを判断する判断部と、この判断部の判断結果を通知内容表示部に通知する通知部とを備え、
前記予圧付与部により前記リンク作動装置の前記予圧を付与する動作は、このリンク作動装置を初期姿勢に位置決めし、前記リンク作動装置を構成する要素のうち、前記アクチュエータの駆動で相対的に動く要素で構成される各対偶部につき、この対偶部の遊び内で片側へ寄せようとする力を付与する動作であるリンク作動装置の診断装置。
請求項1に記載のリンク作動装置の診断装置において、前記所定の条件が、前記予圧が付与されていること、前記リンク作動装置の先端側の端部リンク部材に作用する負荷が定められた範囲内であること、および同端部リンク部材の移動速度が定められた範囲内であることの少なくとも一つを含み、前記所定の動作が、前記リンク作動装置が所定の経路を移動することであるリンク作動装置の診断装置。
請求項1に記載のリンク作動装置の診断装置において、前記所定の条件が、前記予圧が付与されていることであり、前記所定の動作が、前記リンク作動装置が位置決め状態とすることであるリンク作動装置の診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のリンク作動装置において、その制御方法が種々提案されている。しかし、リンク作動装置の構成部品である歯車や軸受等が劣化した場合に、その劣化状態を使用者に通知することについては、提案されるに至っていない。歯車や軸受等が劣化した場合、破損してしまうと、リンク作動装置が動作せず、メンテナンスに必要な時間が長くなる。そのため、破損するなど、装置が使用不可となる前に部品の劣化を診断し、使用者に通知することが望まれる。
【0005】
この発明の目的は、上記課題を解消することであり、駆動伝達系にバックラッシ等の遊びがあっても、破損するなど、装置が使用不可となる前に、部品の劣化状態を精度良く診断して使用者に知らせることができ、メンテナンス性を向上させることができるリンク作動装置の診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のリンク作動装置1の診断装置51は、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が、3組以上のリンク機構11〜13を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構11〜13は、それぞれ前記基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cと、これら基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cの他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材11b,12b,13bとでなり、前記3組以上のリンク機構11〜13の全てに前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢である先端姿勢を任意に変更させる姿勢制御用のアクチュエータ30が設けられた構造になっている。
【0007】
この構造において、前記各アクチュエータ30を駆動させて前記リンク作動装置1に予圧を付与する予圧付与部52と、前記各アクチュエータ30の駆動トルクを検知するトルク検知部53と、前記リンク作動装置1が所定の条件で所定の動作を行ったときの前記各アクチュエータ30の駆動トルクが所定範囲内であるか否かを判断する判断部54と、この判断部54の判断結果を通知内容表示部58に通知する通知部56とを
備えることを基本構成とする。 なお、前記「姿勢」は、位置と方向とを含むが、以下の説明で「位置」と称する場合がある。
【0008】
上記構成のリンク作動装置1は、前記3組以上のリンク機構11〜13のアクチュエータ30が同期して動くことで位置決めするが、例えば正常時(構成部品が正常な時)にリンク作動装置1に所定の条件で所定の動作をさせて動作中の駆動トルクを予め測定して記憶しておき、同条件で同じ動作を実行中の駆動トルクと記憶した正常時トルクとを比較し、その差が前記所定範囲内であるか否かを判断部54で判断し、この判断部54の判断結果を通知内容表示部58に通知部56で通知する。通知部56は、前記所定範囲内でない場合のみ通知するようにしても良い。
【0009】
上記のような3組以上のリンク機構11〜13で構成されるリンク作動装置1にあっては、姿勢変更の範囲が広くて複雑な動作を行い、また歯車やその他の回転対偶、機構部等にはバックラッシやがたつき等があり、このバックラッシやがたつきのトルクへの影響は、検出時や検出前の各リンクの姿勢等によって大きく変動する。そのため、単にモータトルクを監視しても、部品の劣化状態を精度良く判定することが難しい。
【0010】
そこでこの発明では、リンク作動装置1に予圧を付与する予圧付与部52を設け、その上で前記リンク作動装置が所定の条件で所定の動作を行ったときの各アクチュエータ30の駆動トルクをトルク検知部53で検知する。これらの駆動トルクが所定範囲内であるか否かを判断部54で判断する。予圧を付与することでバックラッシやがたつきのトルクへの影響を低減できる。また、リンク作動装置1に異常発生部がある場合は、正常時と比較して複数の軸で同時にトルク差が発生する傾向が強い。このように判断し、その判断結果を通知内容表示部58へ通知するため、このリンク作動装置1を構成する部品の劣化状態を精度良く検知することができる。
【0011】
また、全てのリンク機構11〜13にアクチュエータ30を設けたリンク作動装置1において適用するため、より精度良く劣化状態の判断が行える。すなわち、この種のリンク作動装置1は、2つのアクチュエータ30によっても可能であるが、アクチュエータ30が2つであると、そのトルクを検出しても、どの部品に劣化が生じているのかを判断することが難しい。しかし、各リンク機構11〜13毎にアクチュエータ30が設けられた構成であると、そのアクチュエータ30が設けられたリンク機構11〜13の構成部品の劣化であると判断でき、より精度良く、簡単に劣化の判断状態が行える。
このように、駆動伝達系にバックラッシ等の遊びがあっても、破損するなど、装置が使用不可となる前に、部品の劣化を精度良く診断して使用者に知らせることができる。これにより、装置が使用不可となる前に部品を交換することができるようになり、メンテナンス性が向上する。【0012】
上記基本構成において、前記予圧付与部52により前記リンク作動装置1の前記予圧を付与する動作は、このリンク作動装置1を初期姿勢に位置決めし、このリンク作動装置1を構成する要素のうち、前記アクチュエータ30の駆動で相対的に動く要素で構成される各対偶部につき、この対偶部の遊び内で片側へ寄せようとする力を付与する動作としても良い。 このように、リンク作動装置1を初期姿勢とし、各対偶部につき、その遊び内で片側へ寄せようとする力を付与し、駆動トルクを検知するようにすれば、常に同じ状態で駆動トルクを検知でき、劣化状態の診断をより精度良く行える。【0013】
この発明において、前記所定の条件および所定の動作は任意に定めた条件、動作であっても良いが、例えば前記所定の条件が、前記予圧が付与されていること、前記リンク作動装置の先端側の端部リンク部材に作用する負荷が定められた範囲内であること、および同端部リンク部材の移動速度が定められた範囲内であることの少なくとも一つを含み、前記所定の動作が、前記リンク作動装置1が所定の経路を移動すること、もしくは、所定の位置から位置へ移動することであっても良い。
前記リンク作動装置1が動作中であっても、上記のように構成部品が正常時にリンク作動装置1に所定の条件で所定の動作をさせて動作中の駆動トルクを予め測定して記憶しておき、同条件で同じ動作を実行中の駆動トルクと正常時トルクとを比較すれば、異常であるか否かの正しい判定が行える。
【0014】
この発明において、前記所定の条件が、前記予圧が付与されていることであり、前記所定の動作が、前記リンク作動装置1が位置決め状態とすることであっても良い。
この構成のリンク作動装置1は、前記3組以上のリンク機構11〜13のアクチュエータ30が同期して動くことで位置決めするが、予めリンク作動装置1に予圧を付与すると、構成部品である歯車や軸受などに摩耗等が発生した場合に、予圧量が低下してリンク機構11a〜11cを動かすアクチュエータ30のモータ30a等のトルクが低下してしまう。また、歯車部などに異物が入った際には位置決め時には前記とは逆にトルクが上昇する。
前記予圧が付与された位置決めの状態で各アクチュエータ30の駆動トルクをトルク検知部53で検知する。そのため、常に同じ条件でトルクを検知することができる。
この請求項の発明の診断装置は、このことを利用し、アクチュエータ30のモータ30a等の駆動トルクを監視し、位置決め時の所定範囲外のトルク低下やトルク増大を検出した場合に、例えばタッチパネルなどの通知内容表示部58にトルク低下またはトルク上昇等の警告等を通知する。
【0015】
この発明のリンク作動装置の診断装置において、前記各アクチュエータ30が、電動のサーボモータを含んでいても良い。例えば、前記各アクチュエータ30は、電動のサーボモータとこのサーボモータの出力する回転を減速する減速機構31とでなるロータリアクチュエータであっても良い。
各アクチュエータ30が電動のサーボモータを備えるロータリアクチュエータであると、駆動が制御性良く行えるだけでなく前記異常の判断も精度良く行える。
【0017】
この発明において、前記判断部54により前記所定範囲に対して所定範囲外と判断された回数を記憶する記憶部55を有し、前記通知部56は、前記所定範囲外と判断された回数が閾値を超えた場合に、前記通知とは別の通知を行うようにしても良い。
前記トルク検知部53で駆動トルクを検知しても、何らかの一時的な要因でトルクが大きくなっている場合がある。しかし、検出したトルクが頻繁に所定範囲外になる場合は、構成部品に摩耗等の劣化が生じている場合が多い。そのため、所定範囲外と判断された回数が閾値を超えた場合に前記通知とは別の通知、例えば部品交換時期であることを知らせる通知を行うようにすることで、単なる一時的な異常ではなく、部品交換の緊急性が高いことを、高い信頼性で認識させることができる。これにより、装置が使用不可となる前に部品を交換することができるようになり、メンテナンス性が向上する。
【0018】
この発明において、前記判断部54により前記所定範囲に対して所定範囲外と判断された周期を記憶する記憶部55を有し、前記通知部56は、前記所定範囲外と判断された周期が閾値よりも短くなった場合に前記通知とは別の通知を行うようにしても良い。
前述のように、前記トルク検知部53で駆動トルクを検知しても、何らかの一時的な要因でトルクが大きくなっている場合がある。しかし、検出したトルクが短い周期で所定範囲外になる場合は、構成部品に摩耗等の劣化が生じている場合が多い。そのため、所定範囲外と判断された周期が閾値未満となる場合に、前記通知は別の通知、例えば部品交換時期であることを知らせる通知を行うようにすることで、単なる一時的な異常ではなく、部品交換の緊急性があることを高い信頼性で認識させることができる。これにより、装置が使用不可となる前に部品を交換することができるようになり、メンテナンス性が向上する。
【0019】
この発明において、前記通知内容表示手段58は、前記リンク作動装置1を操作する操作盤59に備えられた操作パネル57であっても良い。
部品の劣化の通知が操作盤59の操作パネル57に示されると、このリンク作動装置1を使用する使用者が、部品劣化の通知に気づき易い。
【発明の効果】
【0020】
この発明のリンク作動装置の診断装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記3組以上のリンク機構の全てに前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢である先端姿勢を任意に変更させる姿勢制御用のアクチュエータが設けられたリンク作動装置における診断装置であって、前記各アクチュエータを駆動させて前記リンク作動装置に予圧を付与する予圧付与部と、前記各アクチュエータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、前記リンク作動装置が所定の条件で所定の動作を行ったときの前記各アクチュエータの駆動トルクが所定範囲内であるか否かを判断する判断部と、この判断部の判断結果を通知内容表示部に通知する通知部とを備える駆動伝達系にバックラッシ等の遊びがあっても、装置が使用不可となる前に、部品の劣化を精度良く診断して使用者に知らせることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の第1の実施形態を
図1〜
図11と共に説明する。このリンク作動装置の診断装置51は、リンク作動装置1を構成する部品の劣化状態や損傷を診断する装置である。診断対象となるリンク作動装置1は、パラレルリンク機構1Aと、このパラレルリンク機構1Aを制御する制御装置50とを備え、前記パラレルリンク機構1Aが診断対象となる。
【0023】
パラレルリンク機構1Aは、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が、3組のリンク機構11,12,13を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構11,12,13は、それぞれ前記基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cと、これら基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cの他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材11b,12b,13bとでなる。前記3組のリンク機構11,12,13の全てに前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢である先端姿勢を任意に変更させる電動式のアクチュエータ30が設けられている。
【0024】
図1において、前記アクチュエータ30は、例えばロータリアクチュエータ、より詳しくはモータ30aと減速機30bとで構成されるサーボモータであって、モータ固定部材32により基台2に固定されている。減速機構31は、アクチュエータ30の前記減速機30bと、歯車式の減速部33とでなる。
【0025】
前記制御装置50は、上位制御手段(図示せず)からの位置指令等の指示により、または操作盤59からの位置指令等の入力操作に従ってパラレルリンク機構1Aの前記各アクチュエータ30のモータ30aを制御部50aで制御する装置である。前記位置指令は、例えば、先端側リンクハブ15の移動先の座標値等を示す指令である。前記制御部50aは、位置フィードバックの機能を備えた各軸(各アクチュエータ30)のサーボ機構を構 成する。
【0026】
前記診断装置51につき説明する。この診断装置51は前記制御装置50に設けられている。なお、パラレルリンク機構1Aのより具体的な構成は、後に説明する。前記診断装置51は、予圧付与部52、トルク検知部53、判断部54、および通知部56によって構成される。
【0027】
予圧付与部52は、前記各アクチュエータ30のモータ30aを駆動させて初期姿勢に位置決めし、前記リンク作動装置1に予圧を付与する手段である。この予圧付与の指令は前記制御部50aに与え、制御部50aが実行する。前記初期姿勢は任意に定めれば良く、リンク作動装置1の診断に適した姿勢、例えば前記予圧を与え易い姿勢等を選んで定められる。
前記予圧付与部52により前記予圧を付与する動作は、このリンク作動装置1を前記初期姿勢とし、前記リンク作動装置1を構成する要素のうち、前記アクチュエータ30の駆動で相対的に動く要素(例えば歯車や軸受)により構成される各回転対偶等の対偶部につき、この対偶部の遊び内で片側へ寄せようとする力を付与する動作である。
【0028】
前記トルク検知部53は、前記予圧が付与された前記位置決めの状態で前記各アクチュエータ30のモータ30aの駆動トルクを検知する手段である。駆動トルクの検知は、例えば各モータ30aの駆動回路に設けられた電流計(図示せず)で検知された電流値を検出すること等で行われる。
【0029】
前記判断部54は、前記リンク作動装置1が所定の条件で所定の動作を行ったときの前記各アクチュエータ30の駆動トルクを前記トルク検知部53で検出したトルクが所定範囲内であるか否かを判断する手段である。前記所定範囲は、試験や設計によって適宜定められる。前記所定範囲は、設計等により適宜定められる。この所定範囲は、上限を示す閾値だけで定めても良い。前記判断部54は、前記所定の動作、所定の条件、測定結果の組み合わせを、複数種、例えばこのリンク作動装置1が定まった形態で動作される場合はその動作の種類数だけ記憶していても良く、またトルク測定による異常判定を行う場合の動作が定められた一または複数である場合は、その数だけを記憶しても良い。判定時は、該当する動作の種類を適宜の方法で選定し、その動作の測定値を用いて判定に用いる。
前記所定の条件および所定の動作は任意に定めた条件、動作であっても良いが、例えば、前記所定の条件は、前記予圧が付与されていること、前記リンク作動装置1の先端側の端部リンク部材11c,12c,13cに作用する負荷が定められた範囲内であること、および同端部リンク部材の移動速度が定められた範囲内であることの少なくとも一つを含み、前記所定の動作が、前記リンク作動装置1が所定の経路を移動することであっても良い。
前記リンク作動装置1が動作中であっても、上記のように構成部品が正常時にリンク作動装置1に所定の条件で所定の動作をさせて動作中の駆動トルクを予め測定して記憶しておき、同条件で同じ動作を実行中の駆動トルクと正常時トルクとを比較すれば、異常であるか否かの正しい判定が行える。なお、ここで言う「所定の動作の動作中」は、位置決め動作を含む。
【0030】
また、前記所定の条件が、前記予圧が付与されていることであり、前記所定の動作が、前記リンク作動装置1が位置決め状態とすることであっても良い。
【0031】
前記通知部56は、前記判断部54の判断結果を通知内容表示部58に通知し、表示させる手段である。前記通知部56は、単に通知だけでなく、後に説明するように、条件に対応して通知を行うか否かの判断や、イニシャライズ等の指令を行う機能を備える。通知内容表示部58は、例えば前記制御装置50に付属する操作盤59における操作パネル57等で構成される。前記操作パネル57は、液晶表示装置等のタッチパネル等からなり、画像の表示と制御部50a等への入力操作とが行えるものであっても良い。
【0032】
この構成のリンク作動装置1の診断装置51において、
図2に示すように、記憶部55を設け、前記判断部54により前記所定範囲に対して所定範囲外と判断された回数を前記記憶部55に記憶し、前記通知部56は、前記所定範囲外と判断された回数が閾値を超えた場合に、前記通知とは異なる通知、例えば部品交換を促す通知を行うようにしても良い。
【0033】
また、上記のように回数による他に、周期を判断対象に用いても良い。すなわち、前記判断部54により前記所定範囲に対して所定範囲外と判断された周期を前記記憶部55に記憶し、前記通知部56は、前記所定範囲外と判断された周期が閾値よりも短くなった場合に、前記通知とは異なる通知、例えば部品交換を促す通知を行うようにしてもよい。換言すれば、前記通知部56は、前記所定範囲外と判断された周期が閾値未満である場合に、前記通知とは異なる通知を行うようにしてもよい。
【0034】
前記通知内容表示部58は、
図3に示すように、制御装置50とは離れた位置に設けられていても良い。例えば、このリンク作動装置1が設置された部屋とは別の集中管理室等に設けられていても良く、さらに広域の通信ネットワークを介して接続されたコンピュータ等の画像表示装置であっても良い。
【0035】
上記の構成の診断装置51の作用の概要を説明する。リンク作動装置1において、予めリンク作動装置1に予圧を付与すると、構成部品である歯車や軸受などに摩耗等の劣化が発生した場合に、予圧量が低下してリンク機構11〜13を動かすアクチュエータ30のモータ30aのトルクが低下してしまう。すなわち、前記リンク作動装置1は3つのモータ30aが同期して動くことで位置決めを行っているため、構成部品が劣化すると、位置決め時にモータトルクが低下する。また、歯車部などに異物が入った際には位置決め時にトルクが上昇する。
【0036】
このことを利用し、このリンク作動装置の診断装置51は、トルク検知部53でモータ30aのトルクを監視し、位置決め時の所定範囲を超えるトルク低下やトルクの増大を判断部54で検出した場合、タッチパネルなどの通知内容表示部58にトルク低下警告またはトルク増大警告等の通知を行う。
トルク低下や増大が頻発した場合は、後述のように、前記通知内容表示部58に部品交換時期であることを通知する。
【0037】
このリンク作動装置1の診断装置51は、リンク作動装置1の組立後最初に動作させる前に、初期位置で基準となるトルクを設定するイニシャライズ処理を行う。例えばリンク作動装置1の先端側のリンクハブ15の姿勢が固定されるように、例えば器物への押し付け状態となるように、所定位置に位置決めする。その後の使用でモータ30aのトルクが前記所定範囲よりも上昇または低下した場合は、再度イニシャライズ処理を行うことで、新たに所定トルクを設定し直すことができる。
【0038】
所定の動作時間に対し、モータトルクの上昇/低下が頻発し、イニシャライズ処理を一定以上行った場合は、部品の劣化/異常と判断し、部品交換時であることの通知を行うことで、使用者に部品の交換を促す。
歯車などが破損する前に使用者に部品交換時期であることを通知することで、装置が使用不可となる前に部品を交換することができるようになり、メンテナンス性が向上する。
前記通知は、リンク作動装置1の操作盤59における操作パネル57に行うことで、使用者が気づきやすくなる。
【0039】
次に、上記構成の診断装置51の具体的な動作例を、
図9〜
図11と共に説明する。
図9において、
図1の予圧付与部52からの指令により、制御部50aのモータサーボをオンにし(ステップR1)、所定の動作を実施する(ステップR2)。所定の動作は、定められた区間をリンク作動装置1の先端側のリンクハブ15が移動する動作であっても良く、また所定位置に位置決めする動作であっても良い。
この所定の動作の完了、例えば前記定められた区間の終端まで移動したこと、または位置決めの完了が前記制御部50a等で検出されると、全モータ30aのトルクをトルク検知部53で測定する(ステップ3R)。
【0040】
判断部54は、全モータ30aにつき、トルクが所定範囲外であるかを判断し(ステップR4)、通知部56は、任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲外であると、トルク異常の検知回数を計数するカウンタ(図示せず)がカウント値を1だけインクリメントし(ステップR5)、トルク異常の通知を行って通知内容表示部58に表示させる(ステップR6)。この段階ではリンク作動装置1の正常な動作がまだ行える可能性が高いからである。
前記モータトルクの判定ステップR4で、所定範囲内のモータが任意の数以上あるときは、トルク異常の通知を行わない(R7)。
【0041】
図10は、
図2の記憶部55を備え、検知頻度で部品交換時期の通知を行う場合の流れを示す。
トルク異常通知の表示中(ステップS1)に、イニシャライズ処理を行う(ステップS2)。このイニシャライズ処理は、初期位置での基準となるトルクの再設定である。
全モータ30aのトルクを測定し(ステップS3)、任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲外かを判断する(ステップS4)。
任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲内であると判断された場合はトルク異常通知を消去する(ステップS8)。
【0042】
任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲外であると判断された場合は、トルク異常の検知回数を計数するカウンタ(図示せず)のカウント値を1だけインクリメントする(ステップS5)。このインクリメントされたトルク検知回数が規定数を超えたか否かを判断し(ステップS6)、超えていない場合はトルク異常通知を表示する(ステップS9)。
前記判断ステップS6で超えたと判断された場合は、部品交換時期通知を前記通知内容表示部58に表示する(ステップS7)。
【0043】
このような一連の処理により、リンク作動装置1を構成する部品(歯車や軸受など)が部品交換時期にあるか否かを判断し、部品交換時期通知を適切に行うことができる。
【0044】
図11は、部品交換時期通知を、トルク異常周期の長さによって判断する場合を示す。
まず、イニシャライズ処理(初期位置での基準となるトルクの再設定)を行う(ステップT1)。
この後、トルク異常周期の計測を開始し(ステップT2)、制御部50aによるモータサーボをオンにする(ステップT3)。
これにより所定の動作(所定区間の移動または位置決めなど)を実施し(ステップT4)、所定の動作が完了すると、全モータ30aのトルク測定を行う(ステップT5)。
【0045】
リンク作動装置1に異常発生部がある場合は、
図9に試験例の3軸のトルク変動を示すように、正常時と比較して複数軸同時にトルク差が発生することが多い。そこで、前記全モータ30aのうち、任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲外であるかを判断するようにしており(ステップT6)、任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲内である場合は、トルク異常周期の計測を継続し(ステップT11)、前記モータサーボオンのステップT3に戻る。
【0046】
なお、
図17は前記異常発生部がある場合のモータ30a(モータ1〜3)のトルクの変化の一例を、正常なトルク変化と共に示すグラフである。
【0047】
任意の数以上のモータ30aのトルクが所定範囲外である場合は、トルク異常通知を表示し(ステップT7)、トルク異常周期を記憶し(ステップT8)、その後にトルク異常周期が規定周期未満であるか否かを判断する(ステップT9)。前記規定周期は、設計により適宜の値に定めておく。
規定周期以上である場合は、トルク異常周期の計測をリセットし(ステップT12)、イニシャライズ処理のステップT1に戻る。
規定周期未満である場合は、部品交換時期の通知を表示する(ステップT10)。
【0048】
これら
図10または
図11に示した処理を行うようにした場合は、歯車や歯車のような部品などが破損する前に使用者に部品交換時期であることを高い信頼度で通知でき、これにより、装置が使用不可となる前に部品を交換することができるようになり、メンテナンス性がより一層向上する。
【0049】
次に、前記リンク作動装置1の具体的な構成例を説明する。
図1および
図4に示すように、このリンク作動装置1は、基台2に対して、リンク機構部3を介して、医療用器具等が取付けられる先端取付部材4(
図4)を姿勢変更可能に連結したものである。リンク機構部3は、基台2にスペーサ5を介して固定された基端側のリンクハブ14と、先端取付部材4に固定された先端側のリンクハブ15と、これら基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とを連結する3組のリンク機構11,12,13(以下、「11〜13」と表記する場合がある)とを有する。なお、
図4では、1組のリンク機構11のみを表示している。
【0050】
図6は、リンク作動装置1のリンク機構部3の斜視図である。このリンク機構部3を構成する各リンク機構11,12,13は、基端側の端部リンク部材11a,12a,13a(以下、「11a〜13a」と表記する)、中央リンク部材11b,12b,13b(以下、「11b〜13b」と表記する)、および先端側の端部リンク部材11c,12c,13c(以下、「11c〜13c」と表記する)で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cはL字状をなし、基端がそれぞれの基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に回転自在に連結されている。中央リンク部材11b〜13bは、両端に基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの先端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0051】
基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cは球面リンク構造で、3組のリンク機構11〜13における球面リンク中心PA,PC(
図4、
図5)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PCからの距離も同じである。端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの連結部となる回転対偶軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0052】
つまり、3組のリンク機構11〜13は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材11a〜13a,11b〜13b,11c〜13cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材11b〜13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図7は、一つのリンク機構11を直線で模式的に表現した図である。
【0053】
この実施形態のリンク機構11〜13は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとの位置関係が、中央リンク部材11b〜13bの中心軸A(
図6)に対して回転対称となる位置構成になっている。
図4は、基端側のリンクハブ14の中心軸Bと先端側のリンクハブ15の中心軸Cとが同一線上にある状態を示し、
図5は、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構11〜13の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PC間の距離Dは変化しない。
【0054】
基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15は六角柱状で、外周面を構成する6つの側面16(
図6)のうちの1つ置きに離れた3つの側面16に、基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cがそれぞれ回転自在に連結されている。
【0055】
図1の下部は、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aの連結部を示す断面図、
図8はその部分拡大図である。基端側のリンクハブ14の側面16(
図6)から軸部18(
図8)が突出し、この軸部18に複列の軸受17(
図6)の内輪(図示せず)が外嵌し、基端側の端部リンク部材11a〜13aの基端側のリンクハブ側の端部に軸受17の外輪(図示せず)が内嵌している。つまり、内輪は基端側のリンクハブ14に固定され、外輪が基端側の端部リンク部材11a〜13aと共に回転する構造である。軸受17は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット19による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受17としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cの連結部も、同様の構造である。
【0056】
また、基端側の端部リンク部材11a〜13aと中央リンク部材11b〜13bの連結部も、複列の軸受20を介して互いに回転自在に連結されている。すなわち、基端側の端部リンク部材11a〜13aに軸受20の外輪(図示せず)が内嵌し、中央リンク部材11b〜13bに設けた軸部21に軸受20の内輪(図示せず)が外嵌している。なお、
図1および
図8では、基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの連結部についてのみ図示されている。軸受20は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット22による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受20としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側の端部リンク部材11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bの連結部も、同様の構造である。
【0057】
図6に示す前記リンク機構11〜13において、基端側および先端側のリンクハブ14,15の軸部18(
図8)の角度、長さ、および端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの幾何学的形状が基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とで等しく、また、中央リンク部材11b〜13bについても基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とで形状が等しいとき、中央リンク部材11b〜13bの対称面に対して中央リンク部材11b〜13bと、基端側および先端側のリンクハブ14,15と連結される端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cとの角度位置関係を基端側と先端側で同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとは同じに動く。例えば、基端側および先端側のリンクハブ14,15にそれぞれ中心軸B,Cと同軸に回転軸を設け、基端側のリンクハブ14から先端側のリンクハブ15へ回転伝達を行う場合、基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とは同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手となる。この等速回転するときの中央リンク部材11b〜13bの対称面を等速二等分面という。
【0058】
このため、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15を共有する同じ幾何学形状のリンク機構11〜13を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構11〜13が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材11b〜13bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とは任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0059】
各リンク機構11〜13における4つの回転対偶の回転部、つまり、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aとの連結部分、先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cとの連結部分、および基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの2つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0060】
このリンク機構部3の構成によれば、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ14の中心軸B(
図6)と先端側のリンクハブ15の中心軸Cの折れ角θの最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の旋回角φを0°〜360°の範囲で設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが傾斜した水平角度のことである。
【0061】
前記3組のリンク機構11〜13の全てに、アクチュエータ30および減速機構31が設けられている。以下、
図1および
図8と共に、リンク機構11に設けられたアクチュエータ30および減速機構31について説明するが、リンク機構12,13に設けられたものについても同じ構成である。
【0062】
図1に示すように、アクチュエータ30はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機30b付きのサーボモータ30aであって、モータ固定部材32により基台2に固定されている。減速機構31は、アクチュエータ30の減速機30bと、歯車式の減速部33とでなる。
【0063】
図8に示すように、歯車式の減速部33は、アクチュエータ30の出力軸30cにカップリング35を介して回転伝達可能に連結された小歯車36と、基端側の端部リンク部材11aに固定され前記小歯車36と噛み合う大歯車37とで構成されている。図示例では、小歯車36および大歯車37は平歯車であり、大歯車37は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車37は小歯車36よりもピッチ円半径が大きく、アクチュエータ30の出力軸30cの回転が基端側の端部リンク部材11aへ、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。
【0064】
大歯車37のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材11aのアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの回転対偶軸O2の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車37のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0065】
小歯車36は、大歯車37と噛み合う歯部36aの両側に突出する軸部36bを有し、これら両軸部36bが、基台2に設置された回転支持部材39に設けられた複列の軸受40によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受40は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。複列の軸受40の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部36bに螺合したナット41を締め付けることにより、軸受40に予圧を付与する構成としてある。軸受40の外輪は、回転支持部材39に圧入されている。
【0066】
大歯車37は、基端側の端部リンク部材11aと別部材であり、基端側の端部リンク部材11aに対してボルト等の結合具42により着脱可能に取付けられている。
【0067】
アクチュエータ30の回転軸心O3および小歯車36の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1と平行で、かつ基台2からの高さが同じとされている。
【0068】
図1において、制御装置50は、コンピュータによる数値制御式のものであり、前記制御装置50における制御部50aは、例えば折れ角θ(
図6)および旋回角φのリンクハブ14を規定することで、先端側のリンクハブ15の姿勢を設定する。また、例えばエンコーダ(図示せず)等により基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βn(
図6におけるβ1,β2)を検出する。
あるいはアクチュエータ30のエンコーダ(図示せず)を先端側のリンクハブ15の姿勢検出に用いても良い。折れ角θおよび旋回角φと、各回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0069】
基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15を姿勢変更する場合、制御部50aに設定された先端側のリンクハブ15の姿勢(または座標位置)に応じて、基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、アクチュエータ30の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、下記の式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、折れ角θおよび旋回角φから基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βnを算出する変換のことである。
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0
…(式1)
ここで、γ(
図6)は、基端側の端部リンク部材11a〜13aと中央リンク部材11b〜13bの回転対偶軸O2と、先端側の端部リンク部材11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bの回転対偶軸O5とが成す角度である。δn(
図6におけるδ1,δ2,δ3)は、基準となる基端側の端部リンク部材11aに対する各基端側の端部リンク部材11a〜13aの円周方向の離間角である。
【0070】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、姿勢検出手段(図示せず)の信号を利用したフィードバック制御により、実際の回転角βnが制御目標値となるように各アクチュエータ30の出力を制御する。それにより、全てのリンク機構11〜13の基端側の端部リンク部材11a〜13aが定められた回転角βnだけ回転し、先端側のリンクハブ15が姿勢設定手段51により設定された姿勢に変更される。
【0071】
図12〜
図14は、前記診断装置51の診断対象となるパラレルリンク機構1A(
図1)の別の具体例を示す。同図のパラレルリンク機構1Bは、
図1〜
図8と共に説明した前記パラレルリンク機構1Aとは、基本的な構成な構成は同じである。すなわち、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が、3組以上のリンク機構11〜13を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構11〜13は、それぞれ前記基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材11a,11c,12a,12c,13a,13cと、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材11b,12b,13bとでなり、前記3組以上のリンク機構11〜13の全てに前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢である先端姿勢を任意に変更させる電動式のアクチュエータ30が設けられたという構成、および前記リンク機構11,12,13を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材11b,12b,13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であると言う構成については同じである。
なお、特に説明した事項の他は、
図1〜
図8に示したパラレルリンク機構1Aと同様である。
【0072】
図14に示すように、先端側のリンクハブ15は、中央部に円形の貫通孔60aを有する平板状の先端部材60と、この先端部材60の貫通孔60aの周囲に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材64とで構成される。貫通孔60aの中心は、先端側のリンクハブ中心軸QB上に位置する。各回転軸連結部材64は、軸心がリンクハブ中心軸QBと交差する回転軸72が回転自在に連結されている。このリンクハブ15の回転軸72に、先端側の端部リンク部材11c,12c,13cの一端が連結される。先端側の端部リンク部材11c,12c,13cの他端には、中央リンク部材11bの他端に回転自在に連結された回転軸75が連結される。リンクハブ15の回転軸72および中央リンク部材11bの回転軸75は、2個の軸受(図示せず)を介して回転軸連結部材64および中央リンク部材11b,12b,13bの他端にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0073】
図12〜
図14と共に、端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cの構成について説明する。基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cは同じ構成であるので、ここでは例示として基端側の端部リンク部材11aについて説明する。
図12に示すように、パラレルリンク機構1Bは、端部リンク部材11aが、1つの湾曲部材61と、この湾曲部材61の両端の外径側の側面と内径側の側面にそれぞれ固定された計4つの回転軸支持部材62とで構成される。4つの回転軸支持部材62は同一形状である。
【0074】
端部リンク部材11aの一端の2つの回転軸支持部材62に支持された回転軸75に中央リンク部材11bが回転自在に連結され、他端の2つの回転軸支持部材62に支持された回転軸72に、基端側のリンクハブ14が回転自在に連結される。これら各回転自在な連結部位には、それぞれ転がり軸受等の軸受が介在している。
【0075】
姿勢変更用のアクチュエータ30は、前記実施形態と同様に、モータ30aと減速機30bとでなり、その減速機30bの出力軸30cは、この出力軸30cの中心軸と直交する平面状のフランジ面63を有している。出力軸30cは、スペーサ65を介して、前記フランジ面で基端側の端部リンク部材11aの外径側の回転軸支持部材62にボルトで接続されている。
【0076】
図15および
図16は、前記診断装置51の診断対象となるパラレルリンク機構1A(
図1)のさらに別の具体例を示す。同図のパラレルリンク機構1Cは、
図1〜
図8と共に説明した前記パラレルリンク機構1Aとは、基本的な構成な構成は同じである。すなわち、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が、3組以上のリンク機構11〜13を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構11〜13は、それぞれ前記基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材11a,11c,12a,12c,13a,13cと、これら基端側および先端側の端部リンク部材11a,12a,13a,11c,12c,13cの他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材11b,12b,13bとでなり、前記3組以上のリンク機構11〜13の全てに前記基端側のリンクハブ14に対する前記先端側のリンクハブ15の姿勢である先端姿勢を任意に変更させる電動式のアクチュエータ30が設けられたという構成、および前記リンク機構11,12,13を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材11b,12b,13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であると言う構成については同じである。
なお、特に説明した事項の他は、
図1〜
図8に示したパラレルリンク機構1Aと同様である。
【0077】
図16は、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a,12a,13aの回転対偶部、および基端側の端部リンク部材11a,12a,13aと中央リンク部材11b,12b,13bの回転対偶部を示す断面図である。基端側のリンクハブ14は、前記軸方向の貫通孔95と外周側とを連通する半径方向の連通孔81が円周方向3箇所に形成され、各連通孔81内に設けた二つの軸受82により軸部材83がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材83の外側端部は基端側のリンクハブ14から突出し、その突出ねじ部83aに基端側の端部リンク部材11aが結合され、ナット84によって締付け固定されている。
【0078】
前記軸受82は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔81の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材83の外周に嵌合している。外輪は止め輪85によって抜け止めされている。また、内輪と基端側の端部リンク部材11aの間には間座86が介在し、ナット84の締付力が基端側の端部リンク部材11aおよび間座86を介して内輪に伝達されて、軸受82に所定の予圧を付与している。
【0079】
基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの回転対偶部は、中央リンク部材11bの両端に形成された連通孔88に二つの軸受89が設けられ、これら軸受89により、基端側の端部リンク部材11aの先端の軸部90が回転自在に支持されている。軸受89は、間座91を介して、ナット92によって締付け固定されている。
【0080】
前記軸受89は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔88の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部90の外周に嵌合している。外輪は止め輪93によって抜け止めされている。軸部90の先端ねじ部90aに螺着したナット92の締付力が間座91を介して内輪に伝達されて、軸受89に所定の予圧を付与している。
【0081】
以上、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶部、および基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの回転対偶部について説明したが、先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11cの回転対偶部、および先端側の端部リンク部材11cと中央リンク部材11bの回転対偶部も同じ構成である(図示省略)。
【0082】
このように、各リンク機構11,12,13における4つの回転対偶部、つまり、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a,12a,13aの回転対偶部、先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c,12c,13cの回転対偶部、基端側の端部リンク部材11a,12a,13aと中央リンク部材11b,12b,13bと回転対偶部、および先端側の端部リンク部材11c,12c,13cと中央リンク部材11b、12b,13bの回転対偶部に、軸受82,89を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0083】
アクチュエータ30は、回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車96,97(
図15)を介して軸部材83に伝達されて、基端側のリンクハブ14に対する基端側の端部リンク部材11a,12a,13aの角度が変更する。それにより、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢(以下、「先端姿勢」とする)が決まる。
【0084】
前記各実施形態で示したパラレルリンク機構1A〜1Cは、いずれも、アクチュエータ30の駆動を伝達する経路でバックラッシやその他の遊びが生じる。そのため、前記実施形態の診断装置51で診断することにより、破損するなど、装置が使用不可となる前に、部品の劣化を精度良く診断して使用者に知らせることができ、メンテナンス性を向上させることができると言う利点が効果的に発揮される。
【0085】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。