(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792407
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】紙容器の成形方法および成形装置
(51)【国際特許分類】
B31B 50/59 20170101AFI20201116BHJP
B65B 47/04 20060101ALI20201116BHJP
B31D 5/00 20170101ALI20201116BHJP
【FI】
B31B50/59
B65B47/04
B31D5/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-207528(P2016-207528)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-69448(P2018-69448A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 剛
【審査官】
米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−235757(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04038023(DE,A1)
【文献】
特開平11−138663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/59
B31D 5/00
B65B 47/00−47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有した底面と、前記底面から立ち上がった筒状の壁部とを有した紙容器を成形するものであり、
紙容器の外面を成形するキャビティと前記紙容器の内面を成形するコアとの間に置いた平板状の原紙の周囲をおさえ、前記キャビティと前記コアとを接近する方向に相対的に移動させて前記原紙を周囲から変形させつつ引き込んだ後、前記コアと前記キャビティとで変形した前記原紙を挟み、さらに圧縮成形する紙容器の成形方法であって、
前記コアには、内底面形成部と、内壁面形成部とが設けられ、
前記内底面形成部は、前記キャビティ方向へ前記内壁面形成部と相対的に駆動可能に構成され、
前記原紙をおさえた後に、前記内底面形成部によって、前記原紙を前記キャビティ方向へ押し出し、
前記内底面形成部と前記キャビティとで前記原紙を挟みながら、紙容器の前記底面の凹凸成形を伴う圧縮成形直前に前記内底面形成部を前記キャビティから離脱する方向へ移動することを特徴とする、紙容器を成形する成形方法。
【請求項2】
前記キャビティには、外底面形成部と、外壁面形成部とが設けられ、
前記外底面形成部が前記外壁面形成部から前記コア方向へ突出したまま前記原紙を引き込みつつ、前記原紙を前記外底面形成部と前記内底面形成部とで挟み、
前記内底面形成部を前記キャビティから離脱する方向へ移動する直前、直後、あるいは同時に、前記外底面形成部が前記コアから離脱する方向に相対的に移動することを特徴とする、請求項1に記載の紙容器を成形する成形方法。
【請求項3】
凹凸を有した底面と、前記底面から立ち上がった筒状の壁部とを有した紙容器を成形する成形装置であって、
該成形装置は、平板状の原紙を押圧して紙容器の内面を形成するコアと、前記原紙を押圧して紙容器の外面を形成するキャビティと、前記原紙の周囲をおさえる原紙ホルダーとを有し、
前記コアは、内底面形成部と、内壁面形成部とを有し、
前記内底面形成部は、前記底面の凹凸を形成可能に構成され、前記内壁面形成部から離脱して前記キャビティ方向へ相対的に前後駆動可能且つ原紙への押圧力を解除可能に構成されており、
前記キャビティは、前記コア方向へ相対的に前後駆動可能に構成されていることを特徴とする、紙容器を成形する成形装置。
【請求項4】
前記キャビティは、外底面形成部と、外壁面形成部とを有し、
前記外底面形成部は、前記外壁面形成部から離脱して前記コア方向へ相対的に前後駆動可能に構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の紙容器を成形する成形装置。
【請求項5】
前記内底面形成部には、駆動部としてエアシリンダが設けられていることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の紙容器を成形する成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器の成形方法および成形装置に関するものであって、特に、プレス成形による紙容器の成形方法および成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より紙容器は、包装容器の分野で汎用され、冷凍食品等の収納や、レンジ調理時の容器や調理後に配膳するための皿等の用途に使用されている紙容器が公知である。
また、製造品質が安定する紙容器の成形方法として、以下のようなコアとキャビティとで原紙をプレス成形して紙容器を成形する製造方法及び製造装置が公知である。
【0003】
特許文献1には、帯状の原紙を供給する工程と、原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成し、移送する工程と、罫線が形成されて移送された原紙から、罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを連続的に打ち抜く工程と、打ち抜かれたブランクシートの各々を、その位置でプレス成形する工程とを備えたことを特徴とする紙容器の製造方法及び製造装置が開示されている。
また、この紙容器の製造装置は、帯状の原紙を供給する原紙供給手段と、供給された原紙の対応する位置に、成形時の皺を吸収するための罫線を形成した後、移送する罫線形成手段と、移送された原紙から、罫線の少なくとも一部を含む所望の形状のブランクシートを打ち抜くブランクシート打抜手段と、打ち抜かれたブランクシートを、その位置でプレス成形するプレス手段とで構成されたものである。
このように構成したことにより、帯状の原紙からブランクシートを打ち抜いた位置でそのままプレス成形されるため、ブランクシートを打ち抜き後にプレス位置まで移載する場合に比べて位置ずれを抑制でき、製造品質が安定するようになる。
また、ブランクシートには罫線が形成されるため、プレス成形時に圧縮されたブランクシートの表面に無秩序に発生する皺を、罫線に沿って形成された凹凸に吸収することができ、さらに紙容器の製造品質を安定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−111391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の帯状の原紙から打ち抜いたブランクシートをプレス成形して製造する紙容器の従来の製造方法及び製造装置は、プレス成形するための成形型であるコア及びキャビティによって、プレス成形後の紙容器の底部に相当するブランクシートの中心付近方向へブランクシートの外周部を引き込むことで、材料を集めながら形成しているが、プレス成形前のブランクシートと成形型との接触箇所が多いため、ブランクシートの中心付近に十分に材料が集まらず、プレス成形後の紙容器の底面や壁部が局所的に薄くなったり、破れるなどの成形不良が発生する虞があった。
また、紙容器の使用時に底面の変形を抑制するために、紙容器の底面に凹凸を設けることが有効であるが、特許文献1の紙容器の製造方法及び製造装置では、ブランクシートに大きな引張力を与えながらブランクシートの中心方向へブランクシートの外周部を引き込んでプレス成形するため、紙容器の底部に凹凸を設けるための材料を十分に集めることが困難であり、成形不良が発生する虞があった。
また、紙容器の底面と壁部との接続位置であり、筒状の壁部が立ち上がり始める外周縁部の円弧を小さく形成すると、プレス成形前に外周縁部から底面側へ集められる材料が減り、成形不良が発生する虞があった。
【0006】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、紙容器の底部に相当するブランクシートの中心付近へ材料を十分に集めることができ、破れや成形不良が発生することがない紙容器の成形方法及び成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙容器の成形方法は、
凹凸を有した底面と、前記底面から立ち上がった筒状の壁部とを有した紙容器を成形するものであり、紙容器の外面を成形するキャビティと前記紙容器の内面を成形するコアとの間に置いた平板状の原紙の周囲をおさえ、前記キャビティと前記コアとを接近する方向に相対的に移動させて前記原紙を周囲から変形させつつ引き込んだ後、前記コアと前記キャビティとで変形した前記原紙を挟み、さらに圧縮成形する紙容器の成形方法であって、前記コアには、内底面形成部と、内壁面形成部とが設けられ、前記内底面形成部は、前記キャビティ方向へ前記内壁面形成部と相対的に駆動可能に構成され、前記原紙をおさえた後に、前記内底面形成部によって、前記原紙を前記キャビティ方向へ押し出
し、前記内底面形成部と前記キャビティとで前記原紙を挟みながら、紙容器の前記底面の凹凸成形を伴う圧縮成形直前に前記内底面形成部を前記キャビティから離脱する方向へ移動することにより、前記課題を解決するものである。
本発明の紙容器を成形する成形装置は、
凹凸を有した底面と、前記底面から立ち上がった筒状の壁部とを有した紙容器を成形する成形装置であって、該成形装置は、平板状の原紙を押圧して紙容器の内面を形成するコアと、前記原紙を押圧して紙容器の外面を形成するキャビティと、前記原紙の周囲をおさえる原紙ホルダーとを有し、前記コアは、内底面形成部と、内壁面形成部とを有し、前記内底面形成部は、
前記底面の凹凸を形成可能に構成され、前記内壁面形成部から離脱して前記キャビティ方向へ相対的に前後駆動可能
且つ原紙への押圧力を解除可能に構成されており、前記キャビティは、前記コア方向へ相対的に前後駆動可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る紙容器の成形方法によれば、コアの内底面形成部は、キャビティ方向へ内壁面形成部と相対的に駆動可能に構成され、原紙をおさえた後に、内底面形成部によって、原紙をキャビティ方向へ押し出すことで、原紙を余分に引き出した状態で工程が進むため、紙容器の底部に相当するブランクシートの中心付近へ材料を十分に集めることができる。
また、原紙が内壁面形成部と密着しないため、原紙を内壁面形成部と密着させている場合に比べて、原紙に大きな引張力を与えることなくキャビティ側へ引き込むことができ、紙容器の底面の形成に必要な材料を供給できる。
また、プレス成形した紙容器がコアに張り付いた場合、内底面形成部をキャビティ方向へ移動させることで、コアからの紙容器の取り外しを容易にできる。
また、キャビティと内底面形成部とで原紙を挟みながら、紙容器の底面の凹凸成形を伴う圧縮成形直前に内底面形成部を内壁面形成部方向へ移動するため、内底面形成部側からの原紙への引張力を弱めた状態で紙容器の底面のプレス成形を行うことができ、成形不良を防止できるとともに、原紙への引張力が弱まっているので、紙容器の底面の形成に必要な材料をより引き込むことができ、複雑な底形状の紙容器でも破れや成形不良の発生を防止できる。
【0009】
請求項
2に記載の構成によれば、外底面形成部が外壁面形成部からコア方向へ突出したまま原紙を引き込みつつ、原紙を外底面形成部と内底面形成部とで挟むため、原紙とコア及びキャビティとの接触箇所が少ない状態で原紙を外底面形成部と内底面形成部とで挟むことで、原紙の位置ずれを抑制できる。
また、内底面形成部を
キャビティから離脱するへ移動する直前、直後、あるいは同時に、外底面形成部が
コアから離脱する方向に相対的に移動するため、コア及びキャビティ全体がほぼ同時に原紙を挟み込むことができ、原紙に大きな引張力を与えることがなく、紙容器全体の形成に必要な材料を供給でき、紙容器の成形不良を防止できる。
さらに、プレス成形した紙容器がキャビティに張り付いた場合、外底面形成部をコア方向へ移動させることで、キャビティからの紙容器の取り外しを容易にできる。
【0010】
請求項
3に係る紙容器を成形する成形装置によれば、コアと、キャビティと、原紙ホルダーとを有し、コアは、内底面形成部と内壁面形成部とを有し、内底面形成部は、内壁面形成部から離脱してキャビティ方向へ相対的に前後駆動可能
且つ原紙への押圧力を解除可能に構成されて
いるため、底面形成の直前に原紙にかかる引張力を弱めた状態で紙容器の底面のプレス成形を行うことができ、成形不良を防止できるとともに、原紙への引張力が弱まっているので、紙容器の底面の形成に必要な材料をより引き込むことができ、複雑な底形状の紙容器でも破れや成形不良の発生を防止できる。
また、キャビティは、コア方向へ相対的に前後駆動可能に構成されているため、原紙を内底面形成部でキャビティ方向へ押し出すことで原紙を余分に引き出した状態で工程を進めることができる。
このため、原紙に大きな引張力を与えることなく紙容器の底面の形成に必要な材料を供給でき、紙容器の成形不良を防止できる。
また、プレス成形した紙容器がコアに張り付いた場合、内底面形成部をキャビティ方向へ移動させることで、コアからの紙容器の取り外しを容易にできる。
【0011】
請求項
4に記載の構成によれば、外底面形成部は、外壁面形成部から離脱してコア方向へ相対的に前後駆動可能に構成されているため、外底面形成部が外壁面形成部からコア方向へ突出したまま原紙を引き込みつつ、原紙を外底面形成部と内底面形成部とで挟むことで、原紙とコア及びキャビティとの接触箇所が少ないうちに原紙を外底面形成部と内底面形成部とで挟むことができ、原紙の位置ずれを抑制できる。
また、内底面形成部が
キャビティから離脱する方向へ移動する直前、直後、あるいは同時に、外底面形成部が
コアから離脱する方向に相対的に移動することで、コア及びキャビティ全体が同時に原紙を挟み込むことができ、原紙に大きな引張力を与えることがなく、紙容器全体の形成に必要な材料を十分に供給でき、紙容器の成形不良を防止できる。
さらに、プレス成形した紙容器がキャビティに張り付いた場合、外底面形成部をコア方向へ移動させることで、キャビティからの紙容器の取り外しを容易にできる。
請求項
5に記載の構成によれば、内底面形成部には、駆動部としてエアシリンダが設けられているため、エアシリンダの設定を変更することで、タイミングや圧力、速度を容易に調整可能であり、内底面形成部の移動距離や、内底面形成部と外底面形成部とで原紙を挟む際の圧力調整等を行うことで、様々な形状の容器に最適に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る紙容器成形装置100でプレス成形した紙容器200の上面図及び側面断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る紙容器成形装置100の断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る紙容器の成形方法の手順1乃至手順4を示す断面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る紙容器の成形方法の手順5乃至手順8を示す断面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る紙容器の成形方法の手順9乃至手順12を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る紙容器成形装置100について、図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係る紙容器成形装置100によって成形される紙容器200は、
図1に示すように、円形の底面201と、底面201から立ち上がった筒状の壁面203とを有しており、底面201には、紙容器200に重量物を載せた際に底面201の変形を抑制する変形防止溝202が底面201の中心から半径方向外方に向かって放射状に設けられている。
また、壁面203の上端には、半径方向外方に向かって円筒状に丸められたカール部204が全周に渡って形成されている。
【0014】
紙容器成形装置100は、
図2に示すように、上部ユニット110と、下部ユニット120とを有している。
上部ユニット110には、上部フレーム111と、平板状の原紙Pを押圧して紙容器200の外面を形成するキャビティ112とが設けられ、下部ユニット120には、下部フレーム121と、原紙Pを押圧して紙容器200の内面を形成するコア122と、下部移動部材127とが設けられている。
上部フレーム111と下部移動部材127は上下方向に移動可能に構成され、上部フレーム111の下端と下部移動部材127の上端とには、互いに接近し原紙Pの周囲を挟んでおさえる原紙ホルダー130が設けられている。
【0015】
キャビティ112は、紙容器200の底面201の外面形状を形成する外底面形成部113と、紙容器200の壁面203の外面形状を形成する外壁面形成部116とを有している。
外底面形成部113は、変形防止溝202の外面形状を形成する凹部114を有しているとともに、外底面駆動エアシリンダ115を介して上部フレーム111に接続され、コア122方向へ前後移動可能に構成されている。
また、外壁面形成部116は、スプリング117によってコア122方向へ付勢されている。
【0016】
コア122は、紙容器200の底面201の内面形状を形成する内底面形成部123と、紙容器200の壁面203の内面形状を形成する内壁面形成部126とを有している。
内底面形成部123は、変形防止溝202の内面形状を形成する凸部124を有しているとともに、内底面駆動エアシリンダ125を介して下部フレーム121に接続され、キャビティ112方向へ前後移動可能に構成されている。
原紙ホルダー130には、紙容器200のカール部204を形成するカーリング部材131が設けられている。
【0017】
次に、上記紙容器成形装置100を用いた本発明の一実施形態に係る紙容器200の成形方法について、
図3乃至
図5を用いて説明する。
まず、
図3の手順1に示すように、プレス成形用の所定のサイズにカットされた原紙Pをコア122の位置に合わせて下部ユニット120の上に載せる。このとき、外底面駆動エアシリンダ115は外底面形成部113をコア122方向へ付勢しており、外底面形成部113は外壁面形成部116との隣接部分よりもコア122側へ張り出している。
次に、
図3の手順2に示すように、上部ユニット110を下降して下部ユニット120と当接させ、原紙ホルダー130によって原紙Pをおさえた後、
図3の手順3に示すように、内底面駆動エアシリンダ125によって内底面形成部123を上方へ付勢し、内底面形成部123とともに原紙Pを上方へ押し出す。
このとき、原紙ホルダー130が原紙Pを挟み込む力よりも、内底面形成部123が原紙Pを上方へ押し出す力が強いため、原紙Pは内底面形成部123に押し出された分、原紙ホルダー130側からキャビティ112内へ材料が引き込まれていく。
【0018】
さらに、
図3の手順4に示すように、上部ユニット110を押し下げると、下部移動部材127も下方へ下がるため、相対的にコア122がキャビティ112方向へ移動する。そのため、原紙Pは内底面形成部123によってさらにキャビティ112方向へ押し出される力を受ける。このとき、内壁面形成部126から内底面形成部123が離脱するように移動して原紙Pを押し出しているため、原紙Pは内底面形成部123以外にコア122及びキャビティ112との接触箇所を少なくできるため、原紙Pは余計な摩擦抵抗を受けることがなく、キャビティ112内へ、特に外底面形成部113側へより多くの材料を引き込むことができる。
【0019】
さらに上部ユニット110を押し下げると、
図4の手順5に示すように、外底面形成部113と内底面形成部123とで原紙Pを挟む。なお、予め外底面駆動エアシリンダ115よりも内底面駆動エアシリンダ125の方が強い力で内底面形成部123を押し出すように設定、あるいは、タイミングを合わせて外底面駆動エアシリンダ115の付勢力を低下させることで、外底面形成部113は上方へ押し戻されて、内底面形成部123は外壁面形成部116が内底面形成部123と原紙Pを挟む位置まで移動する。
【0020】
その後、内底面駆動エアシリンダ125を下方に付勢し、内底面形成部123を
キャビティ112から離脱する方向へ引き戻すことで、原紙Pにかかっていた引張力を一度取り除く。
次に、キャビティ112を下げることで、
図4の手順6に示すように、キャビティ112と内底面形成部123とで原紙Pを挟み込み、容器の底面201が成型されはじめる。 このように、容器の底面201を成型する直前に原紙Pにかかっていた引張力を一度取り除いてから原紙Pをキャビティ112と内底面形成部123とで挟み込むことによって、原紙Pの底面201形成部付近へ材料が集まりやすくなるため、底面201に凹凸を有した変形防止溝202が設けられている場合であっても、原紙Pが破れることなく成型できる。
【0021】
この状態で上部ユニット110をさらに押し下げると、
図4の手順7に示すように、上部フレーム111によってキャビティ112全体が下方へ押し下げられ、原紙Pのコア122とキャビティ112とに挟み込まれた箇所がほぼ同時にプレス成形されるとともに、原紙Pが原紙ホルダー130から抜け、内壁面形成部126の側面へ完全に引き込まれる。このとき、外底面駆動エアシリンダ115と内底面駆動エアシリンダ125はどちらも力を発生していない。
このように、原紙Pを容器形状に挟み込む直前に、外底面形成部113及び内底面形成部123が移動することで、コア122及びキャビティ112全体がほぼ同時に原紙Pを挟み込むことができ、原紙Pに大きな引張力を与えることがなく、紙容器200全体の形成に必要な材料を供給でき、その後のプレス成形の際に紙容器200の底面や壁部が局所的に薄くなったり、破れるなどの成形不良を防止できる。
プレス成形後、下部移動部材127を上方へ移動させる。これによって、上部フレーム111及びカーリング部材131を下部移動部材127に押し上げられるように上方へ移動させると、カーリング部材131に原紙Pの外周端が入り込み、
図4の手順8に示すように、上部ユニット110の移動に合わせてカール部204を形成していく。
【0022】
このとき、外底面駆動エアシリンダ115は外底面形成部113を付勢しておらず、外壁面形成部116のみスプリング117によって下方へ付勢されるため、上部ユニット110が上方へ移動するに従って、
図5の手順9に示すように、プレス成形された原紙P(紙容器200)から外底面形成部113が離脱する。
上部ユニット110が十分に上方へ移動し、上部ユニット110と下部ユニット120とが離れた状態で、
図5の手順10に示すように、外底面駆動エアシリンダ115によって外底面形成部113を下方へ付勢すると、
図5の手順11に示すように、外底面形成部113がプレス成形された原紙P(紙容器200)を外壁面形成部116から離脱させることによって、
図5の手順12に示すように、キャビティ112からプレス成形された原紙P(紙容器200)を簡単に取り出すことができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
なお、上述した実施形態では、紙容器は円形の底面及び外周面を有しているものとして説明したが、紙容器の形状はこれに限定されず、例えば、底面の外周の一部が直線状に形成されていてもよく、外周面の一部が半径方向外方に鍔状に張り出して形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、底面の外面側に張り出した変形防止溝が底面の中心から半径方向外方に向かって放射状に設けられているものとして説明したが、変形防止溝の形状はこれに限定されず、例えば、底面の内面側に張り出す渦巻き型の溝状に設けられていてもよく、変形防止溝がなくてもよい。
【0024】
また、上述した実施形態では、原紙ホルダーからキャビティ内へ原紙を引き込む際、内底面駆動エアシリンダによって内底面形成部を上方へ付勢し、内底面形成部とともに原紙を上方へ押し出すものとして説明したが、原紙をキャビティ内へ引き込む手順はこれに限定されず、例えば、予めキャビティ方向へ付勢された内底面形成部と同じ高さで原紙を原紙ホルダーでおさえてから、原紙ホルダーとともにキャビティを内底面形成部方向へ移動させることで、原紙を内底面形成部に押し付けながら相対的にキャビティ内へ引き込んでもよく、さらに、内底面駆動エアシリンダによって内底面形成部をキャビティ側へ移動させるとともにキャビティを内底面形成部側へ移動させることで、原紙をキャビティ内へ引き込んでもよい。
また、上述した実施形態では、プレス成形用の所定のサイズにカットされた原紙を供給しているものとして説明したが、原紙の供給時の状態はこれに限定されず、例えば、原紙ホルダーの外周面にカッターを設け、紙容器成形装置に連続して供給される帯状の原紙を原紙ホルダーでおさえながらカッターでプレス成形用の所定のサイズにカットしてもよい。
また、上述した実施形態では、外底面形成部及び内底面形成部はエアシリンダによって付勢され、外壁面形成部はスプリングによって付勢されるものとして説明したが、付勢する方法はこれに限定されず、例えば、油圧シリンダを用いて付勢してもよく、サーボモータとスライダを用いて位置決め制御を行って各部を移動させてもよい。
【0025】
また、上述した実施形態では、キャビティは別体として設けられた外底面形成部と外壁面形成部とによって構成されているものとして説明したが、キャビティの構成はこれに限定されず、例えば、外底面形成部と外壁面形成部とが一体に形成されていてもよく、外底面形成部と外壁面形成部との間に、別体として外周縁形成部を設けて構成してもよい。
また、上述した実施形態では、下部移動部材が上下方向移動可能に構成されているものとして説明したが、下部ユニットの構成はこれに限定されず、例えば、下部移動部材が位置固定され、コア全体が下部移動部材に対して相対的に上下方向移動可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
100 ・・・ 紙容器成形装置
110 ・・・ 上部ユニット
111 ・・・ 上部フレーム
112 ・・・ キャビティ
113 ・・・ 外底面形成部
114 ・・・ 凹部
115 ・・・ 外底面駆動エアシリンダ
116 ・・・ 外壁面形成部
117 ・・・ スプリング
120 ・・・ 下部ユニット
121 ・・・ 下部フレーム
122 ・・・ コア
123 ・・・ 内底面形成部
124 ・・・ 凸部
125 ・・・ 内底面駆動エアシリンダ
126 ・・・ 内壁面形成部
127 ・・・ 下部移動部材
130 ・・・ 原紙ホルダー
131 ・・・ カーリング部材
200 ・・・ 紙容器
201 ・・・ 底面
202 ・・・ 変形防止溝
203 ・・・ 壁面
204 ・・・ カール部