特許第6792414号(P6792414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792414ウエハ形状物品の表面を処理するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792414
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ウエハ形状物品の表面を処理するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20201116BHJP
   B23Q 3/10 20060101ALI20201116BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20201116BHJP
   B23Q 1/52 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   B23Q3/10
   B23Q1/01 T
   B23Q1/52
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-213939(P2016-213939)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2017-108115(P2017-108115A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年10月31日
(31)【優先権主張番号】14/931,577
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510141648
【氏名又は名称】ラム・リサーチ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・グライスナー
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・ブラッガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ビーンズベルガー
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522391(JP,A)
【文献】 特表2013−526018(JP,A)
【文献】 特開2014−212338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/10
B23Q 1/01
B23Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ形状物品を処理するための回転チャックであって、
一連のグリップピンを有するチャック本体であって各グリップピンは、前記チャック本体内に規定されたそれぞれの斜めに向かって伸びるスロットによって受け入れられ、各グリップピンは、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体内に後退した第1位置から、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、前記チャック本体と協調的に移動可能であり、前記チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されている、チャック本体と
前記チャック本体と相対的に制限された回転をするように前記チャック本体内に同軸で取り付けられた駆動リングであって、前記駆動リングは、一連のカム面を備え、前記一連のカム面の各々は、前記駆動リングと前記チャック本体との相対回転中に前記一連のグリップピンのそれぞれと係合して、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させ、前記駆動リングは、前記駆動リングが前記チャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にして、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている、駆動リングと、
を備える、回転チャック。
【請求項2】
請求項1に記載の回転チャックであって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置および前記第2位置の間で移動する際に前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する、回転チャック。
【請求項3】
請求項2に記載の回転チャックであって、
前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に、前記チャック本体の中心に向かって前記それぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、回転チャック。
【請求項4】
請求項2に記載の回転チャックであって、
前記遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が前記回転チャックによって保持された時に前記ウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、前記遠位端は、前記一連のグリップピンの前記第1および第2位置で互いに向かい合う、回転チャック。
【請求項5】
請求項4に記載の回転チャックであって、
前記遠位端の各々は、水平ノッチを備える、回転チャック。
【請求項6】
請求項1に記載の回転チャックであって、
前記リング形状のチャック本体は、前記所定の直径以上の内径を有する、回転チャック。
【請求項7】
請求項1に記載の回転チャックであって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に前記回転中心軸に向かって前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、回転チャック。
【請求項8】
請求項1に記載の回転チャックであって、
前記回転チャックは、所定の直径D2のウエハ形状物品を保持するように構成され、前記チャック本体は、直径D1を有する中央開口部を規定し、D1≧D2−10mmであることにより、直径D2のウエハ形状物品の周囲領域と前記回転チャックとの重なりが最大5mmである、回転チャック。
【請求項9】
請求項1に記載の回転チャックであって、
前記チャック本体は、周りの磁気ステータによって接触なしに回転駆動されるように適合された磁気リングロータである、回転チャック。
【請求項10】
ウエハ形状物品を処理するための装置であって、
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に配置された回転チャックであって、前記回転チャックは、一連のグリップピンを有するチャック本体を備え、各グリップピンは、前記チャック本体内に規定されたそれぞれの斜めに向かって延びるスロットによって受け入れられ、各グリップピンは、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体内に後退した第1位置から、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、前記チャック本体と協調的に移動可能であり、前記チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されている、回転チャックと、
前記チャック本体と相対的に制限された回転をするように前記チャック本体内に同軸で取り付けられた駆動リングであって、前記駆動リングは、一連のカム面を備え、前記一連のカム面の各々は、前記駆動リングと前記チャック本体との相対回転中に前記一連のグリップピンのそれぞれと係合して、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させ、前記駆動リングは、前記駆動リングが前記チャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にして、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている、駆動リングと、
を備える装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置および前記第2位置の間で移動する際に前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に、前記チャック本体の中心に向かって前記それぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置であって、
前記遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が前記回転チャックによって保持された時に前記ウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、前記遠位端は、前記一連のグリップピンの前記第1および第2位置で互いに向かい合う、装置。
【請求項14】
請求項10に記載の装置であって、
前記チャック本体は、磁気リングロータであり、前記処理チャンバは、前記処理チャンバの外面に取り付けられて前記磁気リングロータを取り囲む磁気ステータを備え、前記処理チャンバの円筒壁が前記磁気ステータと前記磁気リングロータとの間に配置される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、半導体ウエハなどのウエハ形状物品の表面を処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、エッチング、洗浄、研磨、および、材料蒸着などの様々な表面処理プロセスを受ける。かかるプロセスを行う際には、米国特許第4,903,717号および5,513,668号に例として記載されているように、単一のウエハが、回転可能なキャリアに関連するチャックによって1または複数の処理流体ノズルに対して支持されうる。
【0003】
あるいは、例えば、米国特許第8,490,634号に記載されているように、ウエハを支持するよう適合されたリングロータの形状のチャックが、閉じた処理チャンバ内に配置され、アクティブ磁気ベアリングを通して物理的接触なしに駆動されてもよい。
【0004】
米国特許第8,490,634号に記載されたタイプのチャックについては、チャック本体が、ウエハの周囲領域の上にあるので、その結果、一部のプロセスでは、この領域を十分に処理できない。米国特許第5,845,662号は、支持されたウエハに著しく重なることがないリング形状チャックを開示しているが、旋回可能または柔軟なフィンガのバスケット様の構成が必要であり、これは、リング形状チャックからウエハを軸方向に離間させ、装置のサイズおよび複雑さを増大させる。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本発明は、ウエハ形状物品を処理するための回転チャックであって、一連のグリップピンを有するチャック本体を備え、一連のグリップピンは、グリップピンが相対的にチャック本体内に後退した第1位置から、グリップピンが相対的にチャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、チャック本体と協調的に移動可能である、回転チャックに関する。
【0006】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、グリップピンの各々は、チャック本体内に取り付けられた近位部分と、チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、遠位部分は、第1位置および第2位置の間で移動する際にチャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する。
【0007】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、遠位部分は、第1位置から第2位置へ移動する際に、チャック本体の中心に向かってそれぞれの開口部を通して水平方向に摺動する。
【0008】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が回転チャックによって保持された時にウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、遠位端は、一連のグリップピンの第1および第2位置で互いに向かい合う。
【0009】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、遠位端の各々は、水平ノッチを備える。
【0010】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されている。
【0011】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、リング形状のチャック本体は、所定の直径以上の内径を有する。
【0012】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、グリップピンの各々は、チャック本体内に取り付けられた近位部分と、チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、遠位部分は、第1位置から第2位置へ移動する際に回転中心軸に向かってチャック本体のそれぞれの開口部を通して水平方向に摺動する。
【0013】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、駆動リングが、チャック本体と相対的に制限された回転をするようにチャック本体内に同軸で取り付けられており、駆動リングは、一連のカム面を備え、一連のカム面の各々は、駆動リングとチャック本体との相対回転中に一連のグリップピンのそれぞれと係合して、一連のグリップピンを第2位置から第1位置へ移動させる。
【0014】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、一連のカム面の各々は、駆動リングに形成された対応するスロットに含まれ、各スロットは、回転中心軸に向かって斜めに伸びており、一連のグリップピンの各々の近位部分が、スロットの内の対応するスロット内に配置されている。
【0015】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、駆動リングは、駆動リングがチャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にすることにより、一連のグリップピンを第2位置から第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている。
【0016】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、回転チャックは、所定の直径D2のウエハ形状物品を保持するように構成され、チャック本体は、直径D1を有する中央開口部を規定し、D1≧D2−10mmであることにより、直径D2のウエハ形状物品の周囲領域と回転チャックとの重なりが最大5mmである。
【0017】
本発明に従った回転チャックの好ましい実施形態において、チャック本体は、周りの磁気ステータによって接触なしに回転駆動されるように適合された磁気リングロータである。
【0018】
別の態様において、本発明は、ウエハ形状物品を処理するための装置であって、処理チャンバと、処理チャンバ内に配置された回転チャックと、を備え、回転チャックは、一連のグリップピンを有するチャック本体を備え、一連のグリップピンは、グリップピンが相対的にチャック本体内に後退した第1位置から、グリップピンが相対的にチャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、チャック本体と協調的に移動可能である、装置に関する。
【0019】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、グリップピンの各々は、チャック本体内に取り付けられた近位部分と、チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、遠位部分は、第1位置および第2位置の間で移動する際にチャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する。
【0020】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、遠位部分は、第1位置から第2位置へ移動する際に、チャック本体の中心に向かってそれぞれの開口部を通して水平方向に摺動する。
【0021】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が回転チャックによって保持された時にウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、遠位端は、一連のグリップピンの第1および第2位置で互いに向かい合う。
【0022】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されており、装置は、さらに、チャック本体と相対的に制限された回転をするようにチャック本体内に同軸で取り付けられた駆動リングを備え、駆動リングは、一連のカム面を備え、一連のカム面の各々は、駆動リングとチャック本体との相対回転中に一連のグリップピンのそれぞれと係合して、一連のグリップピンを第2位置から第1位置へ移動させる。
【0023】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、一連のカム面の各々は、駆動リングに形成された対応するスロットに含まれ、各スロットは、回転中心軸に向かって斜めに伸びており、一連のグリップピンの各々の近位部分が、スロットの内の対応するスロット内に配置されている。
【0024】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、駆動リングは、駆動リングがチャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にすることにより、一連のグリップピンを第2位置から第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている。
【0025】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、回転チャックは、所定の直径D2のウエハ形状物品を保持するように構成され、チャック本体は、直径D1を有する中央開口部を規定し、D1≧D2−10mmであることにより、直径D2のウエハ形状物品の周囲領域と回転チャックとの重なりが最大5mmである。
【0026】
本発明に従った装置の好ましい実施形態において、チャック本体は、磁気リングロータであり、処理チャンバは、処理チャンバの外面に取り付けられて磁気リングロータを取り囲む磁気ステータを備え、処理チャンバの円筒壁が磁気ステータと磁気リングロータとの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を読めば、本発明の他の課題、特徴、および、利点が明らかになる。
【0028】
図1a】本発明の好ましい実施形態に従って、ウエハ形状物品を処理するための回転チャックおよび装置を示す断面斜視図。
【0029】
図1b図1aの細部Ibの拡大図。
【0030】
図1c図1aのチャックの好ましい駆動構成を示す部分断面図。
【0031】
図2a図2bの線分IIa−IIaに沿った部分平面図。
【0032】
図2b図1aのチャックのグリップピン機構のための好ましい構成を示す部分断面図。
【0033】
図2c】ウエハWを回転チャックからアンロードまたは回転チャック上にロードできる第1位置すなわち後退位置にあるピンを示す図2bと同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1aの装置200は、チャンバと、ウエハ(ディスク状物品)を把持および回転させるための環状チャック220と、ステータハウジング290内に配置されたステータ280(図1b)と、を備える。
【0035】
チャンバは、円筒壁260と、底部プレート265と、上部プレート(図示せず)と、を備える。上側供給管263が上部プレートに通され、下側供給管267が底部プレート265に通されている。
【0036】
ステータ280は、円筒壁260と同心のステータベースプレート205に取り付けられている。ステータベースプレート205は、例えば、空気圧式ジャック(図示せず)で、円筒壁260の円筒軸に関して軸方向に移動できる。ステータベースプレート205およびそれに取り付けられたステータ280は、中央開口部を有しており、開口部の直径は、円筒壁260の外径よりも大きい。上部プレートも、チャンバを開くために軸方向に移動できる。閉位置で、上部プレートは、円筒壁に対して密閉される。
【0037】
ステータ280は、環状チャックの一部であるロータ285を軸方向および半径方向に支えて駆動するためのいくつかのコイルを備える。かかる構成は、アクティブベアリングと呼ばれており、米国特許第6,485,531号で詳述されている。
【0038】
環状チャック220の直径は、円筒壁260内で自由に浮上して回転できるように、円筒壁の内径より小さい。環状チャック220は、内側チャックベース本体221を備えており、環状の溝が、内側チャックベース本体221の外側周囲を取り巻き、駆動リング230のためのベアリングとして機能する。
【0039】
駆動リング230は、斜めに向けられたスロット232を備えたカムリング230として具体化される。スロット232は、グリップピン226の上方に突出した近位端部227を受け入れる(図2a)。
【0040】
この実施形態は、6本のグリップピン226を有しており、各グリップピンは、駆動リング230の対応するスロット232に受け入れられる近位端227を有する。ウエハWをしっかりと把持するために、各グリップピン226は、その遠位端228に水平ノッチを備える(図2bおよび図2c)。
【0041】
駆動リング230は、図2bの断面IIa−IIaで接合する2つの部分でチャックベース本体221を形成し、グリップピン226および駆動リング230をチャックベース本体221の下半分に配置し、次いで、チャックベース本体221の2つの部分を固定することによって、チャックベース本体221の環状溝に取り付けられてよい。したがって、駆動リング230は、ワンピースで形成されてよく、必要に応じて、チャックベース本体221の組み立てられた上側および下側の部分によって完全に包まれてよい。
【0042】
あるいは、駆動リング230は、2つの別個の部分で形成されてもよく、それらは、環状溝に挿入された時に一緒に固定される。チャックベース221および駆動リング230は、駆動リング230が、環状チャック220の中心に比較的近い位置に向かってピン226を付勢するように、らせんバネ240を介して接続される。
【0043】
2つの永久磁石233が、駆動リング230に取り付けられる。少なくとも24個の複数のロータ磁石285(永久磁石)が、チャックベース本体221の周囲に均等に配置される。これらのロータ磁石285は、駆動/ベアリングユニットの一部すなわちロータの一部(アクティブベアリングの要素)であり、チャックベース本体221に取り付けられる。
【0044】
複数のロータ磁石285と、永久磁石233を有する駆動リング230は、チャックベース本体221、外下側のチャックカバー222、および、ロータ磁石カバー229によって提供された空洞の環状空間に包含されている。かかるロータ磁石カバー229は、ステンレス鋼ジャケットであってよい。カバー222および229は、環状であり、チャックベース本体221と同心である。
【0045】
ステータベースプレート205には、円筒壁260に関して同心に配置されたステータ/アクティブベアリングユニット280が取り付けられている。ベアリングユニット280は、ロータ磁石285に対応しているため、チャック220を浮上させて支え回転させる。
【0046】
アクティブベアリングユニット280の下には、ステータベースプレート205に取り付けられた2つの空気圧シリンダ250がある。空気圧シリンダ250のロッドの遠位端上に、ロッキング磁石255(永久磁石)が配置されている。ロッキング磁石は、駆動リング230の永久磁石233に対応する。空気圧シリンダ250は、ロッキング磁石255を円筒壁260の軸に関して半径方向に動かせるように配置される。
【0047】
ピン226が、例えばウエハを解放するために開かれる時、以下の手順が実行される。永久磁石233およびそれと共に駆動リング230がロッキング磁石によって固定されるように、空気圧シリンダ250がチャック220の近くにロッキング磁石255を移動させ、チャックが回転される。ロボット移動送アームが、チャンバの側面開口部(図示せず)を通してチャンバに挿入され、移動アームのエンドエフェクタが、グリップピン226の遠位端228の間の領域にウエハWの周縁部を把持する位置まで上方に移動される。次に、チャックは、駆動リングが静止している状態で回転され、したがって、図2cに示すように、ピン226が開かれ、その結果、ウエハWは、ロボット移動アームのエンドエフェクタによって完全に支持され、その後、ロボット移動アームは、チャンバからウエハを取り出してよい。あるいは、チャックベース本体221は、ロッキング磁石255が接線方向に(チャックの外周に沿って)回転することにより、駆動リング230が回転されるように、空気圧シリンダ250が移動される間に静止していてもよい。
【0048】
特に、チャック220が駆動リング230に対して回転される時、グリップ226の近位端227は、駆動リング230に形成されたスロット232によって半径方向内向きに移動され、その結果、図2cに示すように、グリップピン226の遠位端228をチャックベース本体221内へ相対的に後退した位置へ水平に摺動させる。グリップピン226の移動を容易にするために、さらなるスリーブが、チャックベース本体221に挿入されてもよい。かかるスリーブは、液体および/または気体がチャックベース本体に漏れることを防ぐために、ベアリングをさらに備えてよい。
【0049】
ウエハWが、チャックへのロードに向けて配置されると、ロッキング磁石が引き抜かれ、バネ240が駆動リング230およびチャックベース本体221を反対方向へ互いに回転させることを可能にする。それにより、スロット232は、それによって、グリップピン226の近位端227をチャックベース本体の半径方向内向きに駆動し、その結果、グリップピン226の遠位端228は、チャックの半径方向内向きに移動して、図2bに示す相対的に突き出した位置を取り、そこで、ピン226はウエハWの周縁部に接触して支持する。
【0050】
グリップピン226の新規な構成、および、それらがチャックベース本体221に取り付けられる方法は、米国特許第8,490,634号に示された構成を超える改善を示す。特に、ピン226の遠位端228が水平方向に向いていることと、駆動リング230が、チャックベース本体221に対する遠位端の水平摺動によって、図2bおよび図2cに示した相対的に後退した位置および相対的に突き出した位置の間で遠位端を移動できることにより、ウエハWのより大きい部分を処理中に露出できるようにチャックを設計することが可能になる。
【0051】
ピンの遠位端が垂直または略垂直に向けられた米国特許第8,490,634号のチャックにおいて、チャックベース本体は、必然的に、本明細書に記載の新規のチャック設計で必要なよりも大きい程度でウエハWと重なる。特に、米国特許第8,490,634号に記載されたチャックでは、チャックベース本体は、しばしば、約10mmの幅のウエハWの環状周囲領域の上にあり、その領域は、直径が300mmであるウエハの場合、ウエハ面積の約13%である。
【0052】
対照的に、本明細書に記載の新規のグリップピン/駆動構成は、ウエハおよびチャックベース本体の間のかかる重なりを必要としない。半導体ウエハを処理するためのチャックは、所定の直径のウエハを保持するように設計される。その直径をD2として、本発明の好ましい実施形態のチャックベース本体の中央開口部をD1とすると、チャックは、D1≧D2−10mmとなるようなサイズであってよく、つまり、直径D2のウエハの周囲領域と回転チャックとの間の重なりが、最大5mmであることが好ましい。しかしながら、D2との関連で直径D1、および、グリップピンの遠位端の長さを適切に選択することにより、より小さい重なり(例えば、2mm)が選択されてもよいし、全く重複がなくてもよい。
【0053】
本明細書に示された上述の説明および具体的な実施形態は、単に本発明およびその原理の例示であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって変形および追加が容易になさうるため、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。本発明は以下の適用例としても実現できる。
[適用例1]
ウエハ形状物品を処理するための回転チャックであって、
一連のグリップピンを有するチャック本体を備え、前記一連のグリップピンは、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体内に後退した第1位置から、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、前記チャック本体と協調的に移動可能である、
回転チャック。
[適用例2]
適用例1に記載の回転チャックであって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置および前記第2位置の間で移動する際に前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する、回転チャック。
[適用例3]
適用例2に記載の回転チャックであって、
前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に、前記チャック本体の中心に向かって前記それぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、回転チャック。
[適用例4]
適用例2に記載の回転チャックであって、
前記遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が前記回転チャックによって保持された時に前記ウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、前記遠位端は、前記一連のグリップピンの前記第1および第2位置で互いに向かい合う、回転チャック。
[適用例5]
適用例4に記載の回転チャックであって、
前記遠位端の各々は、水平ノッチを備える、回転チャック。
[適用例6]
適用例1に記載の回転チャックであって、
前記チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されている、回転チャック。
[適用例7]
適用例6に記載の回転チャックであって、
前記リング形状のチャック本体は、前記所定の直径以上の内径を有する、回転チャック。
[適用例8]
適用例6に記載の回転チャックであって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に前記回転中心軸に向かって前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、回転チャック。
[適用例9]
適用例6に記載の回転チャックであって、
さらに、前記チャック本体と相対的に制限された回転をするように前記チャック本体内に同軸で取り付けられた駆動リングを備え、前記駆動リングは、一連のカム面を備え、前記一連のカム面の各々は、前記駆動リングと前記チャック本体との相対回転中に前記一連のグリップピンのそれぞれと係合して、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させる、回転チャック。
[適用例10]
適用例9に記載の回転チャックであって、
前記一連のカム面の各々は、前記駆動リングに形成された対応するスロットに含まれ、各前記スロットは、前記回転中心軸に向かって斜めに伸びており、前記一連のグリップピンの各々の近位部分が、前記スロットの内の対応するスロット内に配置されている、回転チャック。
[適用例11]
適用例9に記載の回転チャックであって、
前記駆動リングは、前記駆動リングが前記チャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にすることにより、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている、回転チャック。
[適用例12]
適用例1に記載の回転チャックであって、
前記回転チャックは、所定の直径D2のウエハ形状物品を保持するように構成され、前記チャック本体は、直径D1を有する中央開口部を規定し、D1≧D2−10mmであることにより、直径D2のウエハ形状物品の周囲領域と前記回転チャックとの重なりが最大5mmである、回転チャック。
[適用例13]
適用例1に記載の回転チャックであって、
前記チャック本体は、周りの磁気ステータによって接触なしに回転駆動されるように適合された磁気リングロータである、回転チャック。
[適用例14]
ウエハ形状物品を処理するための装置であって、
処理チャンバと、前記処理チャンバ内に配置された回転チャックと、を備え、前記回転チャックは、一連のグリップピンを有するチャック本体を備え、前記一連のグリップピンは、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体内に後退した第1位置から、前記グリップピンが相対的に前記チャック本体から突き出して、所定の直径のウエハ形状物品を支持するように配置される第2位置へ、水平方向に、前記チャック本体と協調的に移動可能である、
装置。
[適用例15]
適用例14に記載の装置であって、
前記グリップピンの各々は、前記チャック本体内に取り付けられた近位部分と、前記チャック本体から外向きに突出した遠位部分とを備え、前記遠位部分は、前記第1位置および前記第2位置の間で移動する際に前記チャック本体のそれぞれの開口部を通して摺動する、装置。
[適用例16]
適用例15に記載の装置であって、
前記遠位部分は、前記第1位置から前記第2位置へ移動する際に、前記チャック本体の中心に向かって前記それぞれの開口部を通して水平方向に摺動する、装置。
[適用例17]
適用例15に記載の装置であって、
前記遠位部分の各々は、ウエハ形状物品が前記回転チャックによって保持された時に前記ウエハ形状物品の周縁部に接触して支持するように構成されたそれぞれの遠位端を備え、前記遠位端は、前記一連のグリップピンの前記第1および第2位置で互いに向かい合う、装置。
[適用例18]
適用例14に記載の装置であって、
前記チャック本体は、リング形状であり、回転中心軸に関して回転されるように適合されており、前記装置は、さらに、前記チャック本体と相対的に制限された回転をするように前記チャック本体内に同軸で取り付けられた駆動リングを備え、前記駆動リングは、一連のカム面を備え、前記一連のカム面の各々は、前記駆動リングと前記チャック本体との相対回転中に前記一連のグリップピンのそれぞれと係合して、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させる、装置。
[適用例19]
適用例18に記載の装置であって、
前記駆動リングは、前記駆動リングが前記チャック本体の回転に関して静止して保持されることを可能にすることにより、前記一連のグリップピンを前記第2位置から前記第1位置へ移動させるために、少なくとも1つの永久磁石を取り付けられている、装置。
[適用例20]
適用例14に記載の装置であって、
前記チャック本体は、磁気リングロータであり、前記処理チャンバは、前記処理チャンバの外面に取り付けられて前記磁気リングロータを取り囲む磁気ステータを備え、前記処理チャンバの円筒壁が前記磁気ステータと前記磁気リングロータとの間に配置される、装置。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c