(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
添加剤を添加することにより流動性に変化を生じる材料を使用する場合に、前記ノズルの先端部付近において当該材料に添加剤を混入させる添加剤混入装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置。
温度により流動性に変化を生じる材料を使用する場合に、前記ノズルの先端部付近において当該材料の温度を調整する温度調整装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、開示されている3Dプリンターを用いた建設構造物の構築に関する技術の中には、既に実現されているものもあるが、未だ構想に止まっているものもあり、それぞれ以下に示す問題点が存在する。
【0006】
3Dプリンターを用いてセメント系材料(例えば、モルタル)を打設することで、モルタルが層をなした構造となることは確かであるが、各層間をつないで引っ張り力を負担する軸部材が存在しない。すなわち、セメント系材料で、構造物全体を造形する場合には、引張抵抗力を付加することが困難であるため、構造部材としての適用に課題がある。
【0007】
また、セメント系材料で型枠を造形する場合には、引張抵抗力を付加することが困難であるため、充填材料の圧力に耐えられない可能性があり、適用先が限定される。
【0008】
また、セメント系材料で、高さ方向に層をなすように造形する場合には、材料そのものが自立するような配合を選定する必要があり、施工性(圧送抵抗)への影響や品質低下(ひび割れ)等の課題がある。
【0009】
さらに、樹脂系材料による造形において、壁構造やスラブ構造の場合には、反りが発生する可能性が高く、設計通りの構造物とすることが難しい。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、建設構造物を構築する際に、造形物の構造を自由に設定して、品質の安定及び生産性向上を実現可能な3Dプリンターを用いた建設構造物の構築装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置は、ノズルから材料を吐出させて建設構造物を構築する構築装置であって、ノズルは、
外筒と、外筒の内部に設置する型部材と、外筒の内部に型部材を固定する固定バーとを備え、材料の送出側から吐出側へ向かって、外筒の中心軸に対する位相をずらして外筒と型部材の間に固定バーを設けることにより、外筒の内部に型部材を固定するとともに、ノズルの吐出口近傍では外筒と型部材との間に固定バーを設けないで、吐出する材料の断面が材料の吐出口において所望の形状となるように、材料の送出側から吐出側へ向かって内空形状を徐々に変化させた状態で形成されており、ノズルを材料の送出経路の先端側に取り付けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、上述した3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置において、ノズルは、材料の送出経路に対して着脱可能であることが好ましい。
【0013】
また、上述した3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置において、添加剤を添加することにより流動性に変化を生じる材料を使用する場合に、ノズルの先端部付近において当該材料に添加剤を混入させる添加剤混入装置を備えることが可能である。
【0014】
また、上述した3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置において、温度により流動性に変化を生じる材料を使用する場合に、ノズルの先端部付近において当該材料の温度を調整する温度調整装置を備えることが可能である。
【0015】
また、上述した3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置において、ノズルの材料吐出側に材料送出部を設けることが可能である。
【0016】
また、上述した3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置において、ノズルは、吐出する材料の周面を均すための周面平滑部を有する構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置によれば、材料の送出経路の先端側にノズルを取り付けることにより、所望形状の建設構造物を容易に構築することができる。また、構築する建設構造物の形状に応じて複数のノズルを作製し、作業の進行状況に応じてノズルを取り替えることにより、様々な形状の建設構造物を容易に構築することができる。
【0018】
また、ノズルの先端付近において、添加剤を添加することにより流動性に変化を生じる材料(例えば、セメント系材料)に添加剤を加えたり、温度により流動性に変化を生じる材料(例えば、樹脂系材料)の温度を調整したりすることにより、材料の流動性を調整することができる。例えば、添加剤の添加や温度調節を行うことにより、材料の送出方向の上流側では材料の流動性を確保してワーカビリティを向上させ、材料の吐出部で材料を硬化させて自立性を確保することにより、圧送性と自立性とを両立させることができる。
【0019】
また、ノズルの材料吐出側に材料送出部を設けることにより、ノズルから吐出した材料を所望の構造とした状態で、その形状を乱すことなく送出することができる。また、所望の形状で吐出した材料の外周面に模様を施すことができる。
【0020】
また、吐出する材料の周面を均すための周面平滑部(例えば、ポリテトラフルオロエチレン材)を有するノズルとすることにより、ノズルから吐出した材料の周面を平滑化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る3Dプリント技術を用いた建設構造物の構築装置(以下、構築装置と略記することがある)を説明する。
図1〜14は本発明の実施形態に係る構築装置を説明するもので、
図1〜
図3はノズルの模式図、
図4〜
図6は構築手順を示す模式図、
図7及び
図8はノズルと建設構造物の関係を示す模式図、
図9及び
図10は材料圧送過程における流動性調整の模式図、
図11は材料送出部を設けたノズルの模式図、
図12は周面平滑部を有するノズルの模式図、
図13及び
図14は建設構造物の構築装置の具体的な模式図である。
【0023】
詳細には、
図1、
図2、
図3において、(a)及び(c)はノズルの吐出口側から見た斜視図、(b)はノズルの基端部側(材料圧送側)から見た斜視図である。
図4において、(a)は外筒、(b)〜(d)はノズルの基端部側(材料圧送側)から吐出口側へ向かって順に設けた型部材、(e)は建設構造物、(f)は鉄筋を挿入した建設構造物の断面図である。
図5において、(a)〜(d)はノズルの基端部側(材料圧送側)から吐出口側へ向かって順に設けた型部材、(e)は建設構造物、(f)は鉄筋を挿入した建設構造物の断面図である。
【0024】
図6において、(a)は建設構造物の一単位、(b)は集合状態の建設構造物、(c)は充填材及び鉄筋を挿入した集合状態の建設構造物の斜視図である。
図7において、(a)は角柱格子状の中空建設構造物、(b)は円柱格子状の中空構造物、(c)は円筒状の中空構造物の斜視図である。
図8において、(a)は角柱格子状の中実建設構造物、(b)は円柱格子状の中実構造物、(c)は円筒状の中実構造物の斜視図である。
【0025】
また、
図7及び
図8は、ノズル10の最終断面形状と建設構造物の関係をイメージした模式図であり、薄板状として表現した部分によりノズル10の最終断面形状を表現している。また、
図13及び
図14において、(a)は略水平方向に建設構造物を構築する場合の模式図、(b)は略鉛直方向に建設構造物を構築する場合の模式図である。
【0026】
<ノズル>
本発明の実施形態に係る構築装置で構築する建設構造物は、埋設型枠、鉄筋、FRP構造物、ジオポリマー構造物等であり、これらの構造物を構築するための材料をノズル10の吐出口から吐出させる。材料は、セメント系材料、樹脂系材料、金属材料等からなる。図示しないが、セメント系材料や樹脂系材料は、材料貯留部から材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)を介してノズル10に圧送され、材料の吐出口において所望の形状となって吐出される。
【0027】
所望の形状とは、構築する建設構造物に対応した形状のことであり、例えば、外周形状を角柱状、円柱状、壁状等とし、断面形状を網目状、中実状、中空状等とすることができる。すなわち、本発明では、ノズル10の内部形状を変更することにより、3Dプリント技術を用いて所望形状の建設構造物を構築することができる。
【0028】
<材料送出部>
また、
図11に示すように、ノズル10の材料吐出側に材料送出部15を設けることが可能である。材料送出部15は、ノズル10から吐出した材料の形状を保ったままで、材料を送出するための部材であって、例えば、ノズル10から吐出した材料の外径と同等の内径、あるいは若干大きな内径を有する筒状の部材からなる。このような材料送出部15を設けることにより、ノズル10から吐出した材料を所望の構造とした状態で、その形状を乱すことなく送出することができる。また、材料送出部15に長さ方向のスリット等を設けることにより、所望の形状で吐出した材料の外周面に模様を施すことができる。
【0029】
<周面平滑部>
また、
図12に示すように、ノズル10は、吐出する材料の周面を均すための周面平滑部16を有する構成とすることが可能である。周面平滑部16は、例えば、低摩擦であるポリテトラフルオロエチレン材等でノズル10を形成したり、ノズル10の内面にポリテトラフルオロエチレン材等からなる平滑層を設けたりすることにより形成する。このような周面平滑部16を有するノズル10とすることにより、ノズル10から吐出した材料の周面を平滑化することができる。
【0030】
<材料>
圧送パイプを介してセメント系材料や樹脂系材料を圧送するには、圧送過程における圧送のし易さ(圧送性)が重要となる一方、材料の吐出口から材料を吐出する際には自立性が重要となる。このため、圧送過程では圧送に差し支えのない程度の柔らかさを有する一方、吐出後には自立できる程度の硬さを有している必要がある。
【0031】
材料の吐出口から吐出する材料を所望形状とするためには、材料の吐出口の形状を規定しなければならない。このため、材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)の先端側にノズル10を取り付け、ノズル10の形状を規定することにより、種々の形状の建設構造物を構築するようになっている。ノズル10は、材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)の先端側に着脱可能としてあり、これにより、ノズル10を交換するだけで、種々の形状の建設構造物を構築することができる。
【0032】
例えば、円筒状の建設構造物を構築する場合には、
図1(a)〜(c)、
図7(c)、
図8(c)に示すように、ノズル10の内部を通過する材料が、材料の吐出口において円筒状となる必要がある。この場合、円筒状の外筒11と、外筒11の内部にあって中実円柱状の型部材12とによりノズル10を形成し、ノズル10の内部で材料が円筒状となるようにする。外筒11の内部に型部材12を固定するには、外筒11の内周部と型部材12の外周部とを接続しなければならないが、先端部の吐出口付近でこのような接続を行うと、接続部となる接続部材(固定バー13)が障害物となって所望形状となった材料を吐出させることができない。
【0033】
そこで、本発明では、ノズル10から吐出した材料の断面が吐出口において所望の形状となるように、材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)の先端側に、材料の送出側から吐出側へ向かって内空形状を徐々に変化させた状態で形成したノズル10を取り付けてある。ノズル10は、外筒11と、型部材12と、固定バー13とを備えている。
【0034】
具体的には、
図1〜
図5に示すように、材料の送出側から吐出側へ向かって、中心軸に対する位相をずらした接続部材(固定バー13)を設けて外筒11の内部に型部材12を固定し、ノズル10の吐出口近傍では接続部材(固定バー13)を設けずに、吐出する材料が所望形状となるようにしている。
図1、
図7(c)、
図8(c)は円筒状の建設構造物を構築する場合のノズル10、
図2は四角筒状の建設構造物を構築する場合のノズル10、
図3及び
図4は6角筒状の建設構造物を構築する場合のノズル10である。また、同様にして、
図5に示す六角柱格子状の建設構造物、
図6に示すハニカム状の建設構造物、
図7(a)及び
図8(a)に示す四角柱格子状の建設構造物、
図7(b)及び
図8(b)に示す円柱格子状の建設構造物、
図13及び
図14に示す壁状の建設構造物を構築することができる。
【0035】
<8角筒状の建設構造物に対応したノズル>
図4を参照して、8角筒状の建設構造物を構築するためのノズル10について、詳細に説明する。
図4に示す例では、8角筒状の外筒11の内部に複数段の型部材12を固定してノズル10を形成する。
図4では、材料の送出側から吐出側に向かって、1段目(a)、2段目(b)、3段目(c)、4段目及び5段目(d)としている。
【0036】
型部材12は、8角形状の鋼材板からなり、1段目では型部材12を設置せず、2段目では外筒11と型部材12との間のすべての角部において、合計8本の固定バー13を用いて外筒11と型部材12とを接続し、3段目では外筒11と型部材12との間の1つ置きの角部において、合計4本の固定バー13を用いて外筒11と型部材12とを接続し、4段目及び5段目では外筒11と型部材12との間に固定バー13を設置しない。また、2段目〜5段目の型部材12の中心部には上下に連通する上下連結用ボルト貫通孔(図示せず)を設けてあり、この上下連結用ボルト貫通孔にボルト14を挿通して、各段の型部材12を上下方向に接続する。
【0037】
このようなノズル10を用いると、
図4(e)に示すような8角筒状の建設構造物100を構築することができる。また、
図4(f)に示すように、8角筒状の建設構造物の中心部に後挿入鉄筋110を配設してもよい。なお、型部材12の枚数を増減することにより、ノズル10の内部形状を変更して、材料の性状に適応することができる。
【0038】
<8角筒状の集合体からなる建設構造物に対応したノズル>
図5を参照して、8角筒状の集合体からなる建設構造物を構築するためのノズル10について、詳細に説明する。
図5に示す例では、8角筒状の外筒11の内部に複数段の型部材(中心型部材12a、外縁型部材12b、中間型部材12c)を固定してノズル10を形成する。
図5では、材料の送出側から吐出側に向かって、1段目(a)、2段目及び3段目(b)、4段目(c)、5段目及び6段目(d)としている。
【0039】
型部材(中心型部材12a、外縁型部材12b、中間型部材12c)は、鋼材板からなり、1段目では中心型部材12a及び外縁型部材12bを設置し、2段目〜6段目では、中心型部材12a、外縁型部材12b及び8個の8角形の中間型部材12cを円環状に並べてある。また、1段目では固定バー13を用いて外筒11と中心型部材12aとを接続し、2段目〜4段目にかけて、固定バー13の数を減らしながら、外筒11、中心型部材12a、外縁型部材12b、中間型部材12cを相互に接続する。
【0040】
また、1段目〜6段目の中心型部材12aの中心部と、2段目〜6段目の中間型部材12cの中心部には、上下に連通する上下連結用ボルト貫通孔(図示せず)を設けてあり、この上下連結用ボルト貫通孔にボルト14を挿通して、各段の中心型部材12a及び中間型部材12cを上下方向に接続する。
【0041】
このようなノズル10を用いると、
図5(e)に示すような8角筒状の集合体からなる建設構造物を構築することができる。また、
図5(f)に示すように、8角筒状の集合体からなる建設構造物の中心部及び各8角筒状の中心部に後挿入鉄筋110を配設してもよい。なお、中心型部材12a、外縁型部材12b、中間型部材12cの枚数を増減することにより、ノズル10の内部形状を変更して、材料の性状に適応することができる。
【0042】
<ノズル先端付近における材料の流動性と自立性>
ノズル10から吐出させる材料が添加剤を添加することにより流動性に変化を生じる場合には、
図9に示すように、ノズル10の先端部付近において当該材料に添加剤を混入させる添加剤混入装置20を備えることが好ましい。詳細には図示しないが、添加剤混入装置20は、ノズル10の先端部付近においてノズル10の側面に設けた添加剤混入口に添加剤を送出するための送出パイプと送出ポンプとを備えている。
【0043】
圧送パイプを介してノズル10まで圧送する材料は、材料の送出方向の上流側では材料の流動性を確保してワーカビリティを向上させ、材料の吐出部で添加剤を加えて材料を硬化させることにより自立性を確保する。これにより、材料の圧送性と自立性とを両立させることができる。
【0044】
添加剤を添加することにより流動性が変化する材料としては、セメント系材料、ジオポリマー、ウレタン等を例示することができる。セメント系材料の場合には、急結剤を添加することにより、短時間で硬化させることができる。また、高炉スラグとフライアッシュからなるジオポリマーの場合には、ジオポリマーにケイ酸アルカリ溶液を添加することにより、短時間で硬化させることができる。また、材料がウレタンの場合には、原材料の2液を混合することにより、発泡・硬化させることができる。
【0045】
ノズル10から吐出させる材料が温度により流動性に変化を生じる場合には、
図10に示すように、ノズル10の適宜箇所に、材料の温度を調整する温度調整装置30を備えることが好ましい。詳細には図示しないが、温度調整装置30は、例えば、ノズル10の先端部付近においてノズルの周面を冷却するための冷却装置からなる。
【0046】
圧送パイプを介してノズル10まで圧送する材料は、材料の送出方向の上流側では材料の温度を高めて流動性を確保することによりワーカビリティを向上させ、材料の吐出部で温度を低下させて硬化させることにより自立性を確保する。これにより、材料の圧送性と自立性とを両立させることができる。
【0047】
温度により流動性が変化する材料としては、樹脂系材料、無機材料であるジオポリマー等を例示することができる。樹脂系材料は所定温度以上で流動性を有し、冷却することにより硬化させることができる。また,無機材料であるジオポリマーは、所定温度を保つことで流動性を保持することができ、所定温度を超えて加熱することにより短時間で硬化させることができる。
【0048】
<建設構造物の構造>
上述した態様の構築装置を用いて、種々の形状の建設構造物を構築することができる。この際、構築した建設構造物に中空部が存在する場合には、
図6(b)、
図7(a)〜(c)に示すように、中空部をそのままにして中空構造としてもよいし、
図6(c)、
図8(a)〜(c)に示すように、中空部内にコンクリート等の充填材120を充填して中実構造としてもよい。また、
図6(c)に示すように、中空部に後挿入鉄筋を挿入するとともに、コンクリート等の充填材120を充填することにより、構造的に安定させることができる。
【0049】
また、図示しないが、建設構造物の中空部内に軽量コンクリート(発泡ビーズ等)を充填することにより、断熱壁を構築することができる。さらに、図示しないが、透光性を有する樹脂系材料を用いて構築した建設構造物の中空部内にカラービーズ等を充填することにより、採光性を有する壁を構築することができる。
【0050】
このように、本発明の実施形態に係る構築装置を用いることにより、機械化、自動化による建設構造物を構築することができるため、品質の安定および生産性向上を実現できる。また、3Dプリント技術を適用しているので、複雑な形状の型枠を容易に造形することができる。また、材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)の先端側に、種々のパターンのノズル10を取り付けて材料を吐出することにより、造形物の内部構造(造形物の構造特性)を自由に制御することができる。また、ノズル10のパターンを変更して構造物形状や吐出量を制御しているため、付帯設備としてのポンプ等の変更はほとんど必要がない。また、ノズル10を使用することで、閉構造の造形が可能となり、樹脂系材料を使用しても建設構造物の反りを防止することができる。
【0051】
<建設構造物の複合構造>
また、本発明の実施形態に係る構築装置を用いることにより、挿入鉄筋(鉄筋、ステンレス鉄筋、プラスチック鉄筋、鋼材、アルミニウム材)によるRC構造や引張材としてのメッシュ材や繊維補強(無機繊維(金属繊維(鋼繊維,ステンレス繊維)、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維)、合成繊維(アラミド繊維、ナイロン繊維、PVA繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、半合成繊維、再生繊維、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維)等を使用した複合構造物を構築することができる。
【0052】
<構築装置の概要>
本発明の実施形態に係る構築装置は、材料の送出経路(例えば、圧送パイプ)の先端側に、上述したノズル10を着脱可能に取り付けてある。この構築装置の本体部分は、建設構造物を構築する際に、ほぼすべての部材を総合的に構築することができるようにした装置であり、埋設型枠、鉄筋、FRP、コンクリート、ジオポリマー等の部材を施工するようになっている。
【0053】
例えば、
図13(a)、
図13(b)に示すように、構築材料のタンク、圧送装置、動力源等を搭載した重機40を用い、アーム41の先端にノズル10を取り付けた構築装置を用いることができる。また、
図14(a)、
図14(b)に示すように、門型クレーン50のホイスト51にノズル10を取り付け、別途設置した構築材料のタンク、圧送装置、動力源等により門型クレーン50及びホイスト51を駆動するとともに、ノズル10に材料を供給してもよい。このとき、材料の送出方向は
図13(a)、
図14(a)のような水平方向および
図13(b)、
図14(b)のような垂直方向など、上下左右のいずれの向きから材料を送出してもよい。
【0054】
さらに、図示しないが、複数のロボットアームと、ロボットアーム走行用レールと、ロボットアーム移動装置と、架台と、架台移動装置とを主要な構成要素として構築装置を構成することができる。
【0055】
<ロボットアーム>
ロボットアームは、構造物構築用の部材を施工するための装置であり、先端部に材料施工部であるノズルを備えている。また、複数(例えば3カ所、4カ所等)の関節を備えることにより、三次元で材料の施工を行うことができる。なお、関節数(自由度)や、アームの長さは、施工対象となる建設構造物の形状や大きさ、施工場所の環境等に応じて、適宜変更して実施することができる。本発明では、関節を有しないアームもロボットアームに含まれる。この場合、ロボットアーム移動装置及び架台移動装置の機能を用いてロボットアームを所望の位置に移動させることにより、建設構造物を構築する。
【0056】
また、ロボットアームは、施工する材料に合わせて複数設置することが好ましい。例えば、埋設型枠施工用、鉄筋施工用、FRP施工用、ジオポリマー施工用等である。なお、施工する材料が同様の部材、例えば流動体である場合には、一つのロボットアームを使い分けて二つ以上の材料を施工してもよい。さらに、同一の材料に対して複数のロボットアームを使用してもよい。
【0057】
各ロボットアームには、材料施工部へ材料を圧送するための圧送装置(例えば、圧送パイプ)が取り付けられており、送出装置には材料供給装置(例えば、ポンプ)が連通接続されている。また、各ロボットアームは、ロボットアーム走行用レールに支持されており、ロボットアーム移動装置の機能により、ロボットアーム走行用レールに沿って移動することができる。
【0058】
<ロボットアーム走行用レール>
ロボットアーム走行用レールは、複数のロボットアームを移動可能に支持するためのレールである。このロボットアーム走行用レールは、構築する建設構造物に合わせて、種々の形状とすることができる。例えば、水平方向であってもよいし、鉛直方向であってもよいし、斜めに傾いていてもよい。すなわち、ロボットアーム走行用レールは架台に支持されているが、架台は架台移動装置により構造物の構築方向に沿って移動するため、構造物の形状に応じて向きが異なることになる。
【0059】
<ロボットアーム移動装置>
ロボットアーム移動装置は、各ロボットアームに設けられ、各ロボットアームをロボットアーム走行用レールに沿って移動させるための装置である。ロボットアーム走行用レールは、例えば、パイプ状または中実状のレールの隅部が湾曲した方形の環状、または長円形の環状としたものであり、ロボットアーム移動装置は、このロボットアーム走行用レールに取り付けられたロボットアームを所望の位置に移動させるための装置である。
【0060】
ロボットアーム移動装置は、例えば、ロボットアーム走行用レールを挟み込む一対のローラ及び当該ローラを回転駆動させるためのモータ等の駆動源により構成することができる。また、ロボットアーム走行用レールの表面にラックギヤを形成し、このラックギヤに噛み合うピニオンギアをロボットアームの基端部に取り付け、ピニオンギアをモータ等の駆動源により駆動する機構としてもよい。すなわち、ロボットアーム移動装置は、各ロボットアームをロボットアーム走行用レールに沿って移動させることができれば、どのような機構を用いてもよい。