(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側面の前記コモン領域の前記一端の縁部には、(n×2−1)又は(n×2)個の突出折れ曲がり部が前記略円筒形の内径方向に突出するように折り曲がって設けられており、前記突出折れ曲がり部の前記折れ曲がった部分が、前記コモン部において前記スリットによって分割されずに、隣接する前記コモン領域同士を導通可能に接続する、
請求項1に記載のスリップリング。
前記中央樹脂部は、前記金属の前記中央溝部において、前記長孔の周囲の部分で、前記中央溝部よりも外周側に樹脂が設けられることで、前記スリップリングの側面の一部を構成し、
前記中央樹脂部では、前記金属の前記中央溝部の前記長孔の周囲の部分が、外周側と内周側から樹脂によって挟み込まれている
請求項7に記載のスリップリングの製造方法。
前記段付け・外形抜きステップでは、前記略長方形の金属板の他方の長辺の縁部に対して、前記第1の面から窪んで厚みが薄い端部薄肉部を形成するように段付け加工をし、
前記検出側樹脂部では、前記段付け加工した端部薄肉部が、外周側と内周側から樹脂によって挟み込まれている
請求項7又は8のいずれか一項に記載のスリップリングの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0015】
<回転センサ装置>
まず、本発明の実施形態に係る回転センサ装置について
図1を用いて説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係る検出用回転体1をブラシホルダー3に取り付けた回転センサ装置100の全体図を示す。
【0016】
図1に示す回転センサ装置100は、スリップリングブラシ方式の回転センサ装置であって、検出用回転体1と、ブラシ41〜43(
図10参照)が設けられたブラシホルダー(ベース部材)3を備えている。
【0017】
回転センサ装置100では、軸を有する回転部材であるモータや、ギヤや、ローラや、回転開閉弁、あるいは、モータなどで回転部材を駆動させる回転駆動部材であるアクチエータなどの回転を検出するように、検出対象となる回転部材又はアクチエータの駆動軸7が検出用回転体1と接続されて設けられる。
【0018】
詳しくは、スリップリングである検出用回転体1の略円筒形の空洞部の内側には、検出用回転体1が連動回転させられる、何らかの回転部材と連結しているアクチエータ又は回転部材の駆動軸7が挿入されて(嵌めこまれて)いるものとする。
【0019】
回転センサ装置100では、回路基板(不図示)は、検出用回転体1が回転して、接触しているブラシ41〜43(
図10参照)が回転位置、回転量を検出することにより、駆動軸7に連結される検出用回転体1の回転位置、回転量情報を取得する。
【0020】
例えば、アクチエータが回転部材として、バルブ内に設けられた回転開閉弁を駆動回転させる場合、回路基板内で外部から入力される信号が所定の閾値になったら(回転位置の変更を指示されたら)、回転開閉弁を所定の角度、開閉させる。
【0021】
ブラシホルダー3は、通電状態の検出に関与しない、例えば樹脂などの絶縁素材で構成される。
【0022】
<検出用回転体の概略>
図2に検出用回転体の外形図を示す。
図2に示すように、検出用回転体1は、金属リング10と樹脂リング20とを備える。
【0023】
金属リング10はブラシと接触する部分であり、樹脂リング20は、金属リング10を支持して固定する部分である。
【0024】
検出用回転体1は、金属リング10と樹脂リング20の両方に渡って、軸方向(長さ方向、
図2、±X方向)に延伸するスリット2が、12本形成されている。
【0025】
金属リング10において、検出用回転体1の略円筒形の軸方向の、側面の一端側(−X側、
図2手前側)がコモン部11であり、側面の他端側(+X側、
図2奥側)が検出部12である。
【0026】
検出用回転体1の軸方向の側面の一端側(−X側)のコモン部11では、スリット2で分割された12個の金属領域(セグメント)は、隣接する金属領域(コモン領域14)同士が導通可能な12個のコモン領域14で構成されている。
【0027】
検出用回転体1の軸方向の側面の他端側(+X側)の検出部12では、スリット2で分割された12個の金属領域は、導通可能にコモン領域14と接続される6個の導通領域16と、コモン領域14から分離され導通不能な6個の孤立領域17とで構成されている。ここで、検出部12では、導通領域16と孤立領域17とが、スリット2を挟んで交互に設けられている。
【0028】
一方、樹脂リング20において、検出用回転体1の略円筒形の軸方向の、側面の一端側(−X側、
図2手前側)がコモン側樹脂部21であり、側面の他端側(+X側、
図2奥側)が検出側樹脂部22であり、軸方向の中央付近が中央樹脂部23である。さらに樹脂リング20は金属リング10の内周側(内側)に、内周リング樹脂部24を含んでいる。
【0029】
また、
図2手前側に示すコモン側樹脂部21には、コモン側モールド穴25が形成されている。
【0030】
<検出用回転体の製造工程>
下記、
図3を用いて検出用回転体1の製造方法について説明する。
図3は検出用回転体の製造工程を示すフローチャートである。
【0031】
まず、所定のサイズの略長方形の金属板M(
図3(a)参照)を用いてフローを開始する。
【0032】
ステップS1:段付け加工、外形抜き加工により、
図3(b)に示すように、中央溝部13と、一方の長辺の縁部にある突出部15xと、他方の長辺の縁部にある端部薄肉部12tを形成する。
【0033】
詳しくは、略長方形の金属板Mの短辺の中央部に、第1の面S1から凹んでいる一定の深さ及び一定の幅で長辺に平行に延伸する中央溝部13の、窪み部分である中央薄肉部18を、段付け加工により形成する。該中央溝部13内で、断続的に第1の面S1に対向する第2の面S2に貫通する6個の長孔である貫通孔19,19eを、外形抜き加工により形成する。
【0034】
なお、貫通孔19は、縁部に曲率を有した楕円形(長孔)である例を示しているが、長方形形状であってもよい。また、
図3(b)に示すように片方の長方形の長辺の端部にかかる貫通孔19eは、曲率を有していなくてもよい。
【0035】
また、一方の長辺の縁部に対して、11個の、先端が半円状の(先端が丸まっている)半楕円のリング状(環状)の突出部(舌片)15xが、連なって、所定領域から突出するように外形抜き加工する。
【0036】
なお、本例では、突出部15xとして、半楕円状のリングを11個形成する例を示しているが、11個形成した後、長辺方向の両端に、1/4の楕円状のリングを2個形成し、後段する丸め加工後に、接合部Jで隣接することでリング状になる構成にしてもよい。
【0037】
また、複数の突出部15xを形成しない、他方の長辺の縁部に対して、第1の面S1から窪んで厚みが薄い端部薄肉部12tを形成するように、段付け加工をする。
【0038】
ステップS2:折り曲げ加工
11個の半楕円状のリングの突出部15xを、
図3(c)に示すように、第2の面S2の方(図中、下向き)に折り曲げる(屈折させる)。突出部15xは途中から折り曲げられることで、略下向きに起立する折れ曲がり部15aと、折れ曲がり部15aの根元の部分である歪み緩和部15bとを有する突出折れ曲がり部15となる。
【0039】
なお、本例では、突出部15xは、後段のS3で、丸める際に折れ曲がり部15aの根元付近も含めて、外周がなるべく真円に近い形状になるように、内部が開口した半楕円状のリング(円環)の例を示しているが、S1〜S3までの段階で、突出部15xの内部に開口していなくてもよい。
【0040】
なお、突出部15xの外形形状は楕円形(長方形と半円を組み合わせた形)にしているが、他の形状であってもよい。ただし、S3の丸め加工の後でも、隣接する折れ曲がり部15a同士が重なり合わないように、例えば、隣り合う突出部15x同士が所定距離離間して配置するように設定すると好ましい。
【0041】
ステップS3:丸め加工
ステップS1,S2で外形抜き加工、段付け加工、折り曲げ加工された長方形の金属板の長辺を丸めて短辺同士を接合させて接合部Jとして、
図3(d)に示すように、略円筒形に丸める。
【0042】
なお、
図3では、STARTの時点で、所定サイズの金属板Mを用いて、外形抜き加工、段付加工、折り曲げ加工を行っているが、使用する金属板を、長手方向に連続したリール状のフープ材から端部を引き出して作業台上に延ばし、連続した金属板を一緒に加工してもよい。この場合、ステップS1の外形抜き、段付け加工、ステップS2の折り曲げ加工を行った後に、連続した金属板を所定のサイズ毎に裁断して、ステップS3でその金属板を略円筒形に丸める。
【0043】
ステップS4:モールド加工
モールド加工により、液状あるいは固体を溶融した、例えばエポキシ樹脂や、フェノール樹脂などの樹脂を、中央に円柱状の凸部(例えば、
図4の中央突起82)を有する金型(例えば、
図4の金型80)に流し込んで固化することで所定形状を形成する。これにより、丸められた略円筒状の金属が樹脂によってモールドされ、
図3(e)のような構成となる。
【0044】
詳しくは、
図4に検出用回転体1の製造工程に含まれるモールド工程の説明図を示す。
図4において、(a)はステップS4のモールド工程で用いる金型の一例を示し、(b)は金型内に金属円筒が挿入されている状態を示す。
【0045】
図4(a)を参照して、モールド工程で用いる金型80は、金型固定側81と、金型可動側85によって構成される。金型固定側81には、中央突起82、位置決め用突起83、下部支持脚部84が設けられている。金型可動側85には、金型可動側支持部86が設けられている。なお、本例では、樹脂の中心に空洞部を形成するための中央突起82は金型固定側81と一体化した例を示しているが、中央突起82は金型可動側85と一体化していてもよい。
【0046】
図4(b)を参照して、丸められた略円筒状の金属の内径と、中心にある円柱である中央突起82との間にある樹脂によって、略円筒形の側面の内周面(金属板の第2の面に対応する面)の全面を覆うように内周リング樹脂部24が形成される。
【0047】
図4(b)の略円筒状の金属の下側と金型80の底面との間にある樹脂によって、中央突起82の部分を除いて、略円筒状の金属の下面を下側から所定の幅の円環状に覆うように形成される検出部12側の検出側樹脂部22が形成される。この際、検出側樹脂部22を所定の厚さで形成するために、下部支持脚部84が、丸められた略円筒状の金属の下面を支持する。その下部支持脚部84に対応する部分が、検出側樹脂部22における凹みである検出側モールド凹部27になる(
図6(d)参照)。また、略円筒状の金属の下側に位置する端部薄肉部12tと、金型固定側81の内周面との間に、下側から樹脂が入り込む。
【0048】
図4(b)の略円筒状の金属の上側にある樹脂によって、中央突起82の部分を除いて、略円筒状の金属の上面を上側から所定の幅の円環状に覆うように、コモン部11側のコモン側樹脂部21が形成される。この際、コモン側樹脂部21を所定の厚さで形成するために、金型可動側支持部86がフタ部材であり金型可動側85を支持している。その金型可動側支持部86に対応する部分が、コモン側樹脂部21において、金属である折れ曲がり部15aまで連通するコモン側モールド穴25になる(
図6(b)参照)。
【0049】
図4(b)のように溶解した樹脂を用いるため、内周リング樹脂部24が形成される際、
図3(d)の点線矢印に示すように、略円筒状の金属の貫通孔19から外側に向かって樹脂が入り込み、中央溝部13が埋まることで、中央樹脂部23が形成される。中央樹脂部23により、略円筒状の金属の中央溝部13(18,19)が埋まる。詳しくは、
図3(d)の点線矢印で示すように、樹脂は、貫通孔19を通って、薄肉部18の外側に広がり、中央溝部13は
図3(e)のように埋められて中央樹脂部23となる。なお、中央溝部13における樹脂の詳細については、
図7、
図8とともに後述する。
【0050】
このように、内周リング樹脂部24、検出側樹脂部22、コモン側樹脂部21、中央樹脂部23によって、略円筒状の金属を樹脂によって固定する。
【0051】
ステップS5:スリット加工
丸められた略円筒状の金属とモールドしている樹脂の外周面に、
図3(f)に示すように、12本のスリット2を形成する。
【0052】
検出用回転体1の外周にスリット2が刻まれることで、金属リング10の円筒形状の外周面の一端側(
図3(f)手前側)は、12個のコモン領域14を有するコモン部11となる。また、他端側(
図3(f)奥側)は、コモン部11と導通可能な導通領域16と、コモン部11と導通不能な孤立領域17が交互に配置されることになる。
【0053】
なお、上記、ステップS1〜S5の工程は、例えば一般的なモータのコンミュテータ(整流子)の製造方法を利用した方法であり、コンミュテータ製造用の設備を用いて、本発明の検出用回転体を製造することができる。
【0054】
(検出用回転体の構成)
ここで、検出用回転体1の構造の詳細について、
図5〜
図9を用いて説明する。
【0055】
図5は、検出用回転体1の金属部分のみを示す説明図である。
図5の金属リング10において、(a)は
図2の矢印P方向の矢視図であって側面図であり、(b)はコモン側の端面図であって矢印Q方向の矢視図であってコモン側の端面図であり、(c)は矢印R方向の矢視図であって接合部を含む側面図であり、(d)は矢印S方向の矢視図であって検出側の端面図である。
【0056】
図6は、検出用回転体1の樹脂部分のみを示す説明図である。
図6の樹脂リング20において、(a)は
図2の矢印P方向の矢視図であって側面図であり、(b)はコモン側の端面図であって矢印Q方向の矢視図であってコモン側の端面図であり、(c)は矢印R方向の矢視図であって接合部を含む側面図であり、(d)は矢印S方向の矢視図であって検出側の端面図である。
【0057】
図7は検出用回転体1の横断面図である。
図7において、(a)は
図2のA平面の横断面図、(b)は
図7(a)の○の部分の中央溝部の拡大図を示す。
【0058】
図8は検出用回転体の断面図である。
図8において、(a)は
図2のA平面の横断面図、(b)は
図8(a)のC―C面の縦断面図、(c)は
図8(a)のD―D面の縦断面図、(d)は
図8(a)のE―E面の縦断面図を示す。
【0059】
図5を参照して、金属リング10の−X側の、楕円状のリングである突出折れ曲がり部15が設けられる側が、12個の金属領域のコモン領域を含むコモン部11である。詳しくは、
図5(b)、
図5(d)に示すように、側面のコモン領域14の一端の縁部には、11個の突出折れ曲がり部15が略円筒形の内径方向に突出するように折り曲がって設けられている。折れ曲がった11個の突出部15が、コモン部11において、スリットで分割されずに隣接する金属領域同士を導通可能に接続する。
【0060】
突出折れ曲がり部15は、半楕円状のリングである突出部15xが略円筒形の内径方向に突出するように折り曲がって、折れ曲がり部15aを含んで形成されている(
図3(d)参照)。
【0061】
なお、突出折れ曲がり部15は、折れ曲がる際に平板状の金属板(
図3(b)参照)への影響を軽減するため、折れ曲がり部15aの根元には、円周方向に延伸する、先端のリング形状の折れ曲がり部15aと同じ太さの2本の棒状の歪み緩和部15bが設けられている。
【0062】
一方、突出折れ曲がり部15が形成されない側の金属部分の、貫通孔19が途切れた部分は、コモン部11と検出部12とが金属である溝接続部18cによって接続した部分となり、コモン領域14と導通可能な導通領域(電極領域)16となる。導通領域16で検出される信号は、コモン領域14と同じ電位となる。
【0063】
突出折れ曲がり部15が形成されない側の金属部分であって、貫通孔19が延伸している部分の金属部分は、コモン部11と検出部12とが金属によって接続されないため、コモン領域14と導通不能な孤立領域17となる。孤立領域17で検出される信号では、コモン領域14とは異なる電位となる。
【0064】
ここで、スリット2の切り込み深さDsよりも、コモン部11の突出部15の折れ曲がり部15aの突出長さ(高さ)Lpの方が長くなるように構成される。
【0065】
また、
図5(d)を参照して、コモン部11の折れ曲がり部15aの太さWpは、スリット2の切り込み幅Wsよりも、深くなるように構成されている。
【0066】
このように、折れ曲がり部15aの突出長さ及び太さの寸法を設定することで、折れ曲がり部15aが隣接するコモン領域14間の電気信号(電圧など)の橋渡しにより同じ電位の導通状態を維持することができ、折れ曲がり部15aは導通(導電)の橋渡しを行う領域架橋部として機能する。
【0067】
一方、
図5の金属リング10の+X側の、突出折れ曲がり部15が設けられない側は、コモン部11と導通可能な導通領域16と、コモン部11と導通不能な孤立領域17が交互に配置される、検出部12である。
【0068】
検出部12の+X側の端部は、他の筒部より外側から凹んで厚みが薄く段付け加工された端部薄肉部12t(
図3(b)参照)が、スリット2によって分割された端部薄肉部16t、17tが形成されている。
【0069】
(樹脂部)
図6を参照して、樹脂リング20は、内周リング樹脂部24、検出側樹脂部22、コモン側樹脂部21、及び中央樹脂部23が設けられている。
【0070】
図6(b)を参照して、コモン側樹脂部21には、モールドする際の金型可動側支持部86(
図4参照)が設けられていた部分に対応するコモン側モールド穴25が形成されている。
【0071】
図6(d)を参照して、検出側樹脂部22には、回転部材又はアクチエータの駆動軸7(
図1参照)と位置決めするための位置決め凹部26が設けられる。また、モールドする際の下部支持脚部84(
図4参照)が設けられて部分に対応する検出側モールド凹部27が形成されている。
【0072】
上述のように、スリット2を入れた後の金属リングの孤立領域17は、金属の他の領域から分離されている。そこで、内周リング樹脂部24、検出側樹脂部22、中央樹脂部23で、孤立領域17を取り囲んでモールドすることで、一体化している。
【0073】
詳しくは、
図7(a)の横断面図及び
図7(b)の拡大図に示すように、樹脂は、中央溝部13において、T字状に埋まっている。
【0074】
別の角度から見ると、
図8(b)に示すように、C−C断面では、最外周から2つめの層において、溝接続部18c,18ceのみが金属が残っており、貫通孔19,19eの部分は連通樹脂部23bで埋まっている。
【0075】
一方、
図8(c)に示すD−D断面では、貫通孔19の周りの溝部はすべて中央薄肉部18のコモン側薄肉部18aがあり、最外周面では、中央外側樹脂部23aが設けられている。即ち、外周側と内周側から樹脂の部分が金属の部分を挟み込んでいる。
図8(c)はコモン側薄肉部18aの断面を示しているが、検出側薄肉部18bも同様の構成である。よって、中央樹脂部23において、貫通孔19,19eの周囲の部分であるコモン側薄肉部18a、検出側薄肉部18bの部分の上(外周外側)に中央外側樹脂部23aがオーバーハングして固定している。このように、中央部で樹脂(23a,23b)が金属部分(中央薄肉部18を構成するコモン側薄肉部18a、検出側薄肉部18b、溝接続部18c)を挟み込んでいる。
【0076】
また、
図8(d)に示す、E―E断面では、最外周面は金属の検出部12である。
図8(d)では検出部12の断面を示すが、コモン部11でも同様に、外周方向の最も外側は金属のコモン部11である。
【0077】
さらに、
図8(a)でも同様に、端部薄肉部16t,17tの外周方向外側を、端部方向外側から検出側樹脂部22が覆っているため、検出部12側の端部で、金属が樹脂によって挟み込まれている。
【0078】
また、
図8(a)でも、穴部を有する突出折れ曲がり部15の折れ曲がり部15aの外周方向外側を、端部方向外側からコモン側樹脂部21が覆っているため、コモン部11側の端部でも、金属が樹脂によって挟み込まれている。
【0079】
このように、検出用回転体1の回転軸方向の中央部及び両端部の3点で金属を樹脂で挟み込んでいるため、検出用回転体1の回転の際に遠心力がかかっても、樹脂の部分から金属の部分が剥離することを防止することができる。
【0080】
図8(b)のC−C断面及び
図8(d)のE−E断面を参照して、スリット2で分割された検出部12側は、最外周から2つ目の層で金属部分(溝接続部)18c,18ceが残る位置と軸線方向に対応する部分が導通領域16になり、金属部分18c,18ceが存在しない領域に対応する部分が孤立領域17になる。即ち、検出用回転体1の検出部12の外周面では、金属部分18c,18ceとの連結の有無により、性能の異なる導通領域16と孤立領域17とがスリット2によって分割されて交互に設けられている。
【0081】
なお、
図5、
図6は、夫々の素材ごとに分解して取り出した図だが、実際の駆動状態では、このように金属リング10と樹脂リング20とが分離することはない。
【0082】
図9は、検出用回転体の金属部分の導通状態を示す模式図である。
【0083】
上述のように、導通領域16はコモン領域14と導通しているため、検出信号をONさせるON領域となり、孤立領域17はコモン領域14から独立して不導通であるため、検出信号をOFFさせるOFF領域となる。
【0084】
本発明では、コモン領域14と同電位になる導通領域16の数、即ち、ONになる回数をカウントすることで、検出用回転体1の回転量(回転角度)を検出する。
【0085】
図9は模式図であり、導通する部分(コモン部11+導通領域16)は櫛歯形状であるが、実際には、
図12の従来例とは異なり、ブラシと接触する部分には、樹脂(内周リング樹脂部24)の上に金属領域(孤立領域17)が設けられているため、ブラシが樹脂に直接接触することがない。そのため、ブラシと樹脂との接触に起因するショート等の悪影響を防ぐことができる。
【0086】
<回転センサ装置>
図10に
図1の回転センサ装置の分解図を示す。
図10に示すように、回転センサ装置100は、回転部材又はアクチエータの駆動軸7(
図1参照)と連結されているスリップリング1と、ブラシ41,42,43と、ブラシスプリング51,52,53と、端子61,62,63と、ブラシホルダー3等を備える。
【0087】
スリップリングブラシ方式の検出では、ブラシ41,42,53が、スリップリングと接触しながら回転を検出する。
図10に示す構成では、ブラシホルダー3の内部には、ブラシ41〜43と、バネ(ブラシスプリング)51〜53と端子61〜63とが、3セット設けられている。
【0088】
ブラシ41,42,43が下側から検出用回転体1に接触するように、バネ51,52,53が、ブラシ41,42,43を検出用回転体1側に押圧する。
【0089】
端子61,62,63は、一端がバネ51,52,53と接触すると共に、他端は外部の回路基板等に接続される。
【0090】
このような、端子61,62,63は、ブラシホルダー3の上板である回転体対向面34をはめ込む前に、ブラシホルダー3内に設置される。そしてブラシホルダー3を完成させた後、回転体対向面34に設けられた、小穴31,32,33からバネ51,52,53と、ブラシ41,42,43を順に挿入する。
【0091】
詳しくは、端子62において、上側(ブラシホルダー3の内部側)の62aは、上側は、バネ52と接触するバネ接触部であり、62bはブラシホルダー3から突出する外部接続端子部であり、62cは端子押し込み部である。
【0092】
端子63も同様に、バネ接触部63aと、外部接続端子部63bと、端子押し込み部63bを備える。
【0093】
一方、端子61には端子押し込み部が無く、バネ接触部61aと外部接続端子部61bを含む。
【0094】
図10を参照して、回転体対向面34に形成された小穴31,32,33のうち、中央の31は真下に開口しているが、小穴32,33は真下とは異なる方向に傾斜して開口している。これに対して、
図10、
図11を参照して、ブラシホルダー3から突出する外部接続端子部61b,62b,63bは、全て同じ方向である直下方向に延伸している。そのため、傾斜した角度でブラシホルダー3へ嵌めこまれる端子62,63には、嵌めこみの際の押し込みに利用される端子押し込み部62c,63cが設けられている。
【0095】
図11は、回転センサ装置での、検出用回転体とブラシとの接触状態を示す説明図である。
【0096】
図10及び
図11に示すブラシ41は、第1のブラシとして機能し、検出用回転体(スリップリング)1のコモン部11と対向して配置される。また、ブラシ42,43は、第2のブラシとして機能し、検出部12の導通領域16及び孤立領域17と対向して配置される。
【0097】
スリップリングである検出用回転体1が回転して、接触しているブラシ41〜43が回転位置を検出することにより、固定されている端子61,62,63と接続される回路は、回転を指示するアクチエータと、回転部材又はアクチエータの駆動軸7に連結される検出用回転体の回転位置、回転量情報を取得する。
【0098】
上述のように、スリット2が刻まれることで、外周面は
図10奥側のコモン部11はセグメント毎に12個のコモン領域14に分割され、
図10手前側の検出部12は、導通領域16と孤立領域17とが交互に6個のセグメントずつ分割されている。
【0099】
ここで、ブラシ42,43が、導通領域16に接触すると、検出部12に接触しているブラシ42,43で検出する電位が、コモン部11に接触しているブラシ41で検出する電位と同じとなり、ON信号が出力される。
【0100】
一方、ブラシ42,43が、孤立領域17に接触すると、検出部12に接触しているブラシ42,43で検出する電位が、コモン部11に接触しているブラシ41で検出する電位と異なり、OFF信号が出力される。
【0101】
よって、このような構成の回転センサ装置100で、ブラシによって、検出用回転体を擦動しながら接触して検出すると、検出用回転体が1回転する際に、6回、ON、OFFの信号を検出する。ブラシ41はコモン部11のコモン領域14に断続的に接触し、ブラシ42、43は、導通領域16,17と孤立領域に交互に接触する。
【0102】
ここで、ブラシ42とブラシ43とは検出部12内で、所定の角度離れて配置されている。詳しくは、上述の回転体では、12本のスリットが入り、各領域は360°÷12で分割された各領域16、17はそれぞれ30°弱である。したがって、検出部12では、導通領域16と、孤立領域17とがスリットを挟んで30°毎に並んでいるため、導通領域16は、約60°毎に現れる。したがって、ブラシ42と43は、60°×n(n=1〜5)とは異なる角度の間隔で配置することで、回転体の回転が、正転か、反転かを検出することができる。
【0103】
例えば、
図11の例では、ブラシ42と43とは75°ずれて配置する例を示している。本例では、1回転で6回、30°毎にONとOFFとを繰り返して検出するため、75°検出位置が異なって配置されると、ON/OFFは1/4位相分、タイミングがずれて検出される。
【0104】
例えば、検出用回転体1が、
図11の矢印Fに示す時計回りに回転する場合、ブラシ42によるONの検出周期が、ブラシ43によるONの検出周期よりも先行して検出される。反対に、検出用回転体1が、
図11の矢印Gに示す反時計回りに回転する場合、ブラシ43によるONの検出周期が、ブラシ42によるONの検出周期よりも先行して検出される。
【0105】
このように、導通状態と非導通状態の検出のタイミングをずらして検出するため、検出用回転体の正転と逆転を判別して検出することができる。
【0106】
例えば、アクチエータが回転させる回転部材(接続先)が、車載用の配管(バルブ)内を回転することで開閉させる回転弁である場合、アクチエータの指示に応じて、回転弁を回転させる。例えば、外部から入力される信号が所定の閾値になったら開閉する。
【0107】
停止期間中から回転状態に復帰する際、即ち、アクチエータが駆動することで、回転弁を閉じる又は開ける方向に駆動するため、正転、逆転は自動的に決定される。
【0108】
一方、途中の回転位置で停止させている場合、動力を掛けなくても、外部からの振動などにより、意図せず状態が変化してしまう場合がある。この場合、回転部材が、正転方向に回転していのか、逆転方向に回転しているのか、回転方向を正確に検出する必要がある。
【0109】
図11に示すように、導通領域16と、非導通領域である孤立領域17とを交互に繰り返して配置される検出部12で、異なる位相に対応するようにブラシを配置することで、回転体と連動される検出用回転体の正転、逆転を検出することができる。
【0110】
したがって、この回転センサ装置自体で検出用回転体の正転、逆転を検出できるため、追加の正転、逆転、判別装置が不要になる。また、端子の接続先である後段の回路基板での配線を簡略化することができる。
【0111】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0112】
例えば、上述の実施形態では、12本のスリットによって、円周方向に12分割した例を示したが、分割の数は上記に限られない。
【0113】
例えば、検出用回転体によって、1回転につきn回検出する場合、各要素は下記の数に設定する。ここで、nは2以上の正数であるとする。軸方向に延伸するスリットが、2×n本、金属リング10及び樹脂リング20の外周の側面に形成されている。
【0114】
金属リング10において、略円筒形の軸方向の側面の一端側はコモン部11であって、該コモン部11は、スリット2で2×n個に分割され、隣接する同士が導通可能なコモン領域14を含む。
【0115】
軸方向の側面の他端側は検出部12であって、該検出部は、スリット2で2×n個に分割され、導通可能にコモン領域14と接続されるn個の導通領域16と、コモン領域14から分離され導通不能なn個の孤立領域17とを有している。ここで、導通領域16と孤立領域17とはスリット2を挟んで交互に設けられている。この際、貫通孔19はn個形成される。
【0116】
そして、コモン部11においてスリット2で分割されても隣接する金属領域(コモン領域14)同士を導通可能に接続するように、側面のコモン部11の一端の縁部には、(n×2−1)個の突出折れ曲がり部15が略円筒形の内径方向に突出するように折り曲がって設けられている。
【0117】
上記の変更した数の要素を有する構成でも、上述の実施形態と同様に、ブラシの接触する部分は金属であって、樹脂とは非接触なので、ブラシと樹脂とが接触することに起因する検出品質の劣化を防ぐことができる。また、
図3、
図4と同様に、分割の数が変化する場合でも金属リングが樹脂によってモールドされて製造されるため、遠心力がかかっても金属の剥離を予防することが出来る。このように、本発明に係る回転センサ装置では、スリップリングの長寿命化を図ることができる。