(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(b)ポリアニオンと前記(c)化学式(1)で表される化合物との反応生成物を含む請求項1または請求項2に記載の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物。
前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物。
前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)またはポリピロールであることを特徴とする請求項4に記載の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物。
前記(b)ポリアニオンのアニオン基が、スルホン酸基、リン酸基およびカルボキシ基から選択される1種若しくは2種以上から成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物。
前記(b)ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸アルキレンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物および帯電防止シリコーン皮膜の各実施の形態について説明する。
【0024】
<A 付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物の実施の形態>
1.付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物
本発明の実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、(a)π共役系導電性高分子と、(b)ポリアニオンと、(c)下記の化学式(1)で表される化合物と、(d)付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物と、を含む。本願において、(c)下記の化学式(1)で表される化合物は、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物中に単に溶解または、分散していても良く、また、(b)ポリアニオンと反応して反応生成物を形成していても良い。この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、水を主とする溶媒に溶解または、分散したものでも良く、また有機溶剤を主とする溶媒に溶解または、分散したものでも良い。
【0025】
【化3】
(Rは、不飽和結合を持つ官能基を表す)
【0026】
また、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物において、(c)化学式(1)で表される化合物を、下記の化学式(2)で表される化合物としても良い。
【0027】
【化4】
(R
1は、特に限定されない全ての官能基を表す)
【0028】
ポリアニオンがπ共役系導電性高分子にドープすることにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体が形成される。ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるから、複合体を水に可溶化させる役割を果たす。当該複合体を有機溶剤に可溶化させるためには、親水基としてのアニオン基に対して何らかの作用を及ぼし、その親水性を低下せしめる必要がある。前記化学式(1)で表される化合物は、上記親水性を低下させるのに寄与している。
【0029】
本願で用いられるポリアニオンをドーパントとしている導電性高分子は、おおよそ数十ナノメータの粒子径を持つ微粒子から形成される。かかる微粒子は、界面活性剤の作用をも持つポリアニオンの存在によって可視光領域において透明であって、溶媒中に微粒子が溶解しているように見える。実際には、当該微粒子は溶媒中に分散しているが、本願では、この状態を「分散可溶化」の状態と称している。溶媒は、有機溶剤を主とする溶媒である。ここで、「有機溶剤を主とする」とは、溶媒中に占める有機溶剤が50%を超えることを意味する。特に、溶媒は、重量比にて有機溶剤:水=90:10〜100:0の範囲であるのが好ましい。
【0030】
1.1 製造方法
この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に、前記化学式(1)で表される化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを添加し、少なくとも水分を除去する工程を含む製造方法にて得られる。また、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、前記化学式(1)で表される化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に添加し、水に不溶の有機溶媒への転相を行い、少なくとも水分を除去する工程を含む製造方法にて得ることもできる。さらに、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、前記化学式(1)で表される化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを、予め水分を低減したπ共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の乾燥固体に添加する工程を含む製造方法にて得ることもできる。
【0031】
この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、より詳しくは、一例ではあるが、以下の方法によって製造することができる。
(1)導電性高分子/ポリアニオン複合体を分散させた水分散体からの製造方法
導電性高分子/ポリアニオン複合体を分散させた水分散体は、導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行うことで得られる。ただし、このようなモノマーからの重合のみならず、市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体を用いても良い。市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体としては、例えば、Heraeus社のPEDOT/PSS複合体の水分散体(商品名: Clevios)、アグファ社のPEDOT/PSS複合体の水分散体(商品名: Orgacon)などを挙げることができる。
【0032】
付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、上記水分散体に、化学式(1)で表される化合物(以後、適宜、「エポキシ基含有不飽和化合物」という)と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを溶剤と共に添加後、好ましくはアニオンとエポキシ基含有不飽和化合物の基とを反応させて、その後に溶液を濃縮、濾別あるいは乾固して得られる。その後、好適には、得られた濃縮物あるいは固体を、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させて、塗料の形態で使用する。また、上記水分散体に、エポキシ基含有不飽和化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを溶剤と共に添加後、好ましくはアニオンとエポキシ基含有不飽和化合物の基を反応させている間若しくは反応後に、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相(有機相ともいう)に付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を、有機溶剤を主とする溶媒(例えば、量比にて有機溶剤:水=90:10〜100:0の範囲の溶媒)中に可溶若しくは分散させても良い。ただし、アニオンとエポキシ基含有不飽和化合物とは必ずしも反応していなくても良い。
【0033】
(2)凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン複合体の固形物からの製造方法
(2−a)
凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン複合体の固形物を、エポキシ基含有不飽和化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを含む水溶液に入れて撹拌し、ろ過を行った後、ろ取したものを洗浄し、そこに有機溶剤を加えることにより、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を得る。
【0034】
(2−b)
有機溶剤中に、凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン複合体の固形物を入れ、さらに、そこにエポキシ基含有不飽和化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを入れ、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を得る。
【0035】
1.2 付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物用の原料
(a)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば、何らの限定もなく用いることができる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体を好適に挙げることができる。重合の容易性、空気中における安定性の観点では、特に、ポリピロール類、ポリチオフェン類あるいはポリアニリン類を好適に用いることができる。π共役系導電性高分子は、無置換のままでも、十分に高い導電性およびバインダへの相溶性を示すが、導電性、バインダへの分散性若しくは溶解性をより高めるためには、アルキル基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基などの官能基が導入されても良い。
【0036】
上記のπ共役系導電性高分子の好適な例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0037】
上記のπ共役系導電性高分子の例において、抵抗値あるいは反応性を考慮すると、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選択される1種若しくは2種以上からなる共重合体を、特に好適に用いることができる。高導電性および高耐熱性の面では、さらに、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を好適に用いることができる。また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は、有機溶剤を主とする溶媒への溶解性、疎水性樹脂を添加したときの相溶性および分散性を向上させるために、より好適に用いることができる。アルキル基の中でも、メチル基は、導電性に悪影響を与えることが少ないので、より好ましい。
【0038】
(b)ポリアニオン
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に制約無く用いることができる。アニオン性化合物とは、分子中に、(a)π共役系導電性高分子への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さおよび高い安定性の観点から、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、(a)π共役系導電性高分子へのドープ効果に優れる理由から、スルホ基あるいはカルボキシ基がより好ましい。
【0039】
ポリアニオンとしては、例えば、アニオン基を有さないポリマーをスルホン化剤によりスルホン化等を行ってポリマー内にアニオン基を導入したポリマーの他、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得られたポリマーを挙げることができる。通常、ポリアニオンは、製造の容易さの観点から、好ましくは、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得る。かかる製造方法としては、例えば、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤および/または重合触媒の存在下、酸化重合またはラジカル重合させて得る方法を例示できる。より具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保持し、そこに、予め溶媒に所定量の酸化剤および/または重合触媒を溶解しておいた溶液を添加して、所定時間で反応させる。当該反応により得られたポリマーは、触媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させることもできる。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤および/または酸化触媒、溶媒は、(a)π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0040】
アニオン基含有重合性モノマーは、分子内にアニオン基と重合可能な官能基を有するモノマーであり、具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸及びその塩類、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリロイルオキシエチルスルホン酸(CH
2CH−COO−(CH
2)
2−SO
3H)及びその塩類、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸(CH
2CH−COO−(CH
2)
3−SO
3H)及びその塩類、アクリロイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CH
2CH−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)及びその塩類、アクリロイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CH
2CH−COO−(CH
2)
4−SO
3H)及びその塩類、3−ブテノイルオキシエチルスルホン酸(CH
2CHCH
2−COO−(CH
2)
2−SO
3H)及びその塩類、3−ブテノイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CH
2CHCH
2−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシエチルスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
2−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシプロピルスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
3−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−(CH
2)
4−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシフェニレンスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−C
6H
4−SO
3H)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシナフタレンスルホン酸(CH
2CH(CH
2)
2−COO−C
10H
8−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシエチルスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシプロピルスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−(CH
2)
3−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−C(CH
3)
2CH
2−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−(CH
2)
4−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシフェニレンスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−C
6H
4−SO
3H)及びその塩類、メタクロイルオキシナフタレンスルホン酸(CH
2C(CH
3)−COO−C
10H
8−SO
3H)及びその塩類等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0041】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0042】
こうして得られるポリアニオンの重合度は、特に限定されるものではないが、通常、モノマーの単位が10〜100,000程度であり、溶媒可溶化、分散性および導電性を良好にする観点から、50〜10,000程度とするのがより好ましい。
【0043】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリロイルオキシエチルスルホン酸、ポリアクリロイルオキシブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)を好適に挙げることができる。得られたアニオン性化合物がアニオン塩である場合には、アニオン酸に変質させるのが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法などを挙げることができる。これらの方法の中でも、作業容易性の観点から、限外ろ過法が好ましい。ただし、金属イオン濃度を低減することを要する場合には、イオン交換法を用いる。
【0044】
(a)π共役系導電性高分子と(b)ポリアニオンとの組み合わせとしては、(a)および(b)の各グループから選択されたものを使用できるが、化学的安定性、導電性、保存安定性、入手容易性などの観点から、(a)π共役系導電性高分子の一例であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、(b)ポリアニオンの一例であるポリスチレンスルホン酸との組み合わせが好ましい。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とは、前述のように、導電性高分子用のモノマーとドーパントが共存した水溶液または水分散液の状態で酸化剤の存在下にて重合を行い、合成しても良い。また、市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体を使用しても良い。
【0045】
ポリアニオンの含有量は、好ましくはπ共役系導電性高分子1gに対して0.1〜10gの範囲、より好ましくは1〜7gの範囲である。ポリアニオンの含有量を0.1g以上とすることにより、π共役系導電性高分子へのドーピング効果を高め、導電性を高めることができる。加えて、溶媒への溶解性が高くなり、均一分散形態の導電性高分子の溶液を得やすくなる。一方、ポリアニオンの含有量を10g以下にすると、π共役系導電性高分子の含有割合を相対的に多くすることができ、より高い導電性を発揮させることができる。
【0046】
(c)化学式(1)で表される化合物
化学式(1)で表される化合物(エポキシ基含有不飽和化合物)としては、エポキシ基と、不飽和結合、より好ましくは重合性炭素−炭素二重結合を有する官能基とを分子中に有していればどのような分子構造を持つ化合物でも良い。また、エポキシ基含有不飽和化合物は、ポリアニオンのアニオン基または電子吸引基に配位あるいは結合するものであれば、より好ましい。エポキシ基含有不飽和化合物の分子量は、有機溶剤への易溶解性を考慮すると、好ましくは50〜2,000の範囲である。エポキシ基含有不飽和化合物の量は、好ましくは、π共役系導電性高分子のポリアニオン中のアニオン基あるいは電子吸引基に対して、重量比で0.1〜50であり、より好ましくは1.0〜30.0である。エポキシ基含有不飽和化合物の量を上記重量比で0.1以上とすると、エポキシ基含有不飽和化合物を、ポリアニオンのアニオン基が溶剤に溶解する程度に変性することが出来る。一方、エポキシ基含有不飽和化合物の量を上記重量比で50以下とすると、余剰のエポキシ基含有不飽和化合物が導電性高分子溶液中に析出しにくいので、得られる塗膜の導電率および機械的物性の低下を防止しやすい。
【0047】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、化学式(1)の分子構造を持つものであれば、特に限定されず、その中でも、化学式(2)の分子構造を持つものを採用することもできる。ただし、極性の低い有機溶剤に可溶化するには、炭素数の多い化合物が有効である。好適には炭素数が6以上の化合物が使用される。化学式(1)中のRは、不飽和結合、好ましくは炭素間二重結合を有する基であって、置換基を含んでも良い炭化水素基あるいはアルコキシ基であるのがより好ましく、また、直鎖状、分岐状あるいは環状であっても良い。また、化学式(2)中のR
1は、特に限定されない全ての官能基であり、置換基を含んでも良い炭化水素基あるいはアルコキシ基であるのがより好ましく、また、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であっても良く、直鎖状、分岐状あるいは環状であっても良い。エポキシ基含有不飽和化合物としては、特に、Rが不飽和炭化水素基、特に直鎖の不飽和炭化水素基、さらには、炭素数3以上の直鎖の不飽和炭化水素基、その中でも炭素数3〜21の直鎖の不飽和炭化水素基であるのが好ましい。また、エポキシ基含有不飽和化合物としては、特に、R
1が飽和炭化水素基、特に直鎖の飽和炭化水素基、さらには、炭素数1以上の直鎖の飽和炭化水素基、その中でも炭素数1〜19の直鎖の飽和炭化水素基であるのが好ましい。
【0048】
ここで、好適なRとしては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐状のアルケニル基; シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基; シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基; あるいはエチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基が挙げられる。
【0049】
また、好適なR
1としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の直鎖又は分岐状のアルキレン基; 並びに、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
【0050】
本願発明の大きな特徴は、1)化学式(1)で表される化合物を含むこと、2)水分を除去若しくは低減していること、にある。これら1)および2)の要件を達成することによって、水分の少ない状態で有機溶剤への可溶化が達成され、有機樹脂との混合も可能であり、また、付加型シリコーンと一緒に使用する際に基体への密着性を向上できるという効果、さらには導電性の向上をも発現できる。
【0051】
以下、エポキシ基含有不飽和化合物を例示する。ただし、本願におけるエポキシ基含有不飽和化合物は、下記の例示に限定されるものではない。エポキシ基含有不飽和化合物としては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、2,3−エポキシ−5−ビニルノルボルナン、1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、2,6−ジメチル−2,3−エポキシ−7−オクテンが例示される。これらの中でも、1,2−エポキシ−5−ヘキセンおよび1,2−エポキシ−9−デセンがより好ましい。
【0052】
(d)付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物
付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、例えば、末端にビニル基を有するシリコーンゴム(生ゴムなど)と、Si−H基を有する架橋剤と、付加反応触媒とを含む。上述の(a)π共役系導電性高分子と(b)ポリアニオンと(c)化学式(1)で表される化合物とを含む導電性ポリマー複合体と、(d)付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物との重量比は、(d)付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物100質量部に対して、導電性ポリマー複合体0.01〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。架橋剤は、Si−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、直鎖状あるいは分岐状のいずれをも使用できる。付加反応触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体、ルテニウム錯体等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエン等の溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いることができる。付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、一例としては、a)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、b)分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン、c)主として白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属変性体若しくは錯体からなるヒドロシリル化触媒を含む。
【0053】
(e)その他
この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、上記(a)〜(d)の成分に加え、例えば、以下のような成分も含めることができる。
【0054】
(e.1)有機溶剤
有機溶剤は、上記(a)〜(d)の各成分と異なり、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物に含めても、あるいは含めなくても良い。付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を可溶化若しくは分散させる溶媒に用いられる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒; クレゾール、フェノール、キシレノール等に代表されるフェノール類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等に代表されるアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等に代表されるケトン類; 酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等に代表されるエステル類; ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される炭化水素類; ギ酸、酢酸等に代表されるカルボン酸; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表されるカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等に代表されるエーテル化合物; エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等に代表される鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等に代表されるニトリル化合物などを好適に例示できる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を混合して用いても良い。
【0055】
これらの有機溶剤の内、種々の有機物との易混合性の観点から、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類をより好適に用いることができる。付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を用いて塗膜を形成する場合、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤に分散可溶化させて塗料を製造し、それを基体に塗布して有機溶剤の一部若しくは全部を除去する。したがって、有機溶剤としては、沸点の低いものを好適に選択する。これにより、塗膜形成時の乾燥時間を短縮でき、もって塗膜の生産性を高めることができる。
【0056】
(e.2)導電性向上剤
付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物の製造の際、塗膜の導電性をさらに向上させるべく、下記(e.2.1)〜(e.2.7)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を添加するのが好ましい。
(e.2.1)窒素含有芳香族性環式化合物
(e.2.2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(e.2.3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(e.2.4)1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(e.2.5)アミド基を有する化合物
(e.2.6)イミド基を有する化合物
(e.2.7)ラクタム化合物
【0057】
(e.2.1)窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、好適には、一つの窒素原子を含有するピリジン類およびその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体、ピラジン類およびその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類およびその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類およびその誘導体、イミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体が好ましい。
【0058】
ピリジン類およびその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0059】
イミダゾール類およびその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0060】
ピリミジン類およびその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0061】
ピラジン類およびその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0062】
トリアジン類およびその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0063】
(e.2.2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸およびその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸およびその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸およびその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸およびその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸およびその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸およびその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0064】
(e.2.3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物; ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
【0065】
(e.2.4)1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0066】
(e.2.5)アミド基を有する化合物
アミド基を有する化合物(アミド化合物という)は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素および尿素誘導体などが挙げられる。アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0067】
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
【0068】
(e.2.6)イミド基を有する化合物
イミド基を有する化合物(イミド化合物という)としては、その骨格より、フタルイミドおよびフタルイミド誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体、ベンズイミドおよびベンズイミド誘導体、マレイミドおよびマレイミド誘導体、ナフタルイミドおよびナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0069】
また、イミド化合物は、両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。飽和脂肪族イミド化合物は、R
3−CO−NH−CO−R
4で表される化合物であり、R
3,R
4の両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。不飽和脂肪族イミド化合物は、R
3−CO−NH−CO−R
4で表される化合物であり、R
3,R
4の一方または両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。その具体例としては、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0070】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0071】
(e.2.7)ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR
5−(R
5は水素または任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0072】
導電性向上剤の含有量は、導電性成分100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、30〜5,000質量部であることがより好ましい。導電性向上剤の含有量が前記下限値以上上限値以下であれば、帯電防止性をより向上させることができる。
【0073】
<B 帯電防止シリコーン皮膜の実施の形態>
本発明の実施の形態に係る帯電防止シリコーン皮膜は、上述の付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物(有機溶剤を含む形態)から有機溶剤を低減せしめ硬化して成る膜である。付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物が固形の場合には、それを、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させた溶液から帯電防止シリコーン組成物の塗料を用意する。また、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物が既に有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させた状態の溶液である場合にはそのまま若しくは有機溶剤でさらに希釈して帯電防止シリコーン組成物の塗料を用意する。塗料は、紙、プラスチック、鉄、セラミックス、ガラスに代表される基体上に供給される。供給方法としては、刷毛やバーコーターを使う塗布法、塗料中に基体を浸漬するディップ法、塗料を基体上に滴下して基体を回転させて塗料を拡げるスピンコート法などの種々の手法を例示できる。基体上の塗料の硬化法は、加熱により有機溶剤を除去する方法の他、紫外線などの光や電子線を照射して硬化する方法などを例示できる。
【0074】
以上のように、この実施の形態に係る付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、化学式(1)で表される化合物と付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物とを含み、より好ましくはポリアニオンと化学式(1)で表される化合物との反応生成物を含むため、種々な有機溶剤を主とする溶媒中に分散、可溶なものである。また、付加硬化性帯電防止オルガノポリシロキサン組成物は、従来から知られているアミン系化合物を用いた導電性高分子水分散液におけるポリアニオン残渣との反応によって溶剤置換する方法に比べて、保存安定性、電気抵抗値の安定性に優れると共に、アミンなどが反応の障害になる分野にも適用可能である。
【実施例】
【0075】
次に、本発明の製造例および実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
<製造例>
(製造例1)・・・ポリスチレンスルホン酸の製造
1,000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1,000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1,000ml溶液を除去し、残液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。得られたポリスチレンスルホン酸についてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工株式会社製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。
【0077】
(製造例2)・・・PEDOT−PSS水溶液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2,000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2,000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去し、これに2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPEDOT−PSSの水溶液を得た。
【0078】
(製造例3)
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとメタノール100gと1,2−エポキシ−5−ヘキセン25gを混合し、スターラーを用いて60℃にて4時間攪拌し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、高圧分散して0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
【0079】
(製造例4)
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとメタノール100gと1,2−エポキシ−9−デセン25gを混合し、スターラーを用いて60℃にて4時間攪拌し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、高圧分散して0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
【0080】
(製造例5)
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとメタノール100gとC12、C13混合高級アルコールグリシジルエーテル25gを混合し、スターラーを用いて60℃で4時間攪拌し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
【0081】
<評価方法>
(剥離強度)
厚さ38μmのPETフィルムに、得られた塗料(剥離剤とも称する)を、バーコーター(No.4によって塗布し、120℃の熱風式乾燥機中で1分間加熱して剥離剤層を形成した。次に、剥離剤層の表面に2.5cm×15cmのポリエステル粘着テープ(商品名:ニットーNo.31B、日東電工(株)製)を載せ、次いで、その粘着テープ上で2kgのローラーを用いて圧着し、剥離剤層にポリエステル粘着テープを貼り合せた。その後、室温で20時間放置し、又は85℃で20時間加熱処理して試験片を作成した。そして、引張試験機を用いて、剥離剤層からポリエステル粘着テープを180°の角度で剥離(剥離速度0.3m/分)し、剥離強度を測定した。剥離強度が小さい程、剥離剤層に粘着シートを貼り合わせた後に、粘着シートを容易に剥離できる(すなわち、軽剥離となる)。
(表面抵抗率)
三菱化学社製ハイレスタMCP−HT450を用い、プローブMCP−HTP12、印加電圧10Vで測定した。なお、表中の「OVER」とは、表面抵抗率が高すぎて、測定できないことを意味している。
(密着性)
得られたフィルムを指で強くこすり、表面状態を確認した。塗膜に変化がない場合を、○、白い筋が残った場合を△、すべて塗膜が剥がれ落ちた場合を×とした。ここで、○、△、×の順に密着性が強いことを意味する。
【0082】
<実施例>
(実施例1)
製造例3で得られた導電性高分子溶液6.0gにKS−778(信越化学工業社製、固形分30%、トルエン溶液)を1.0gと、メチルエチルケトン36.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50T(信越化学工業社製、白金触媒)0.02gとを加えて、塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例2)
実施例1においてKS−778をKS−3703T(信越化学工業社製、固形分30%、トルエン溶液)に変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例3)
実施例1においてKS−778をKS−847H(信越化学工業社製、固形分30%、トルエン溶液)に変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例4)
製造例3で得られた導電性高分子溶液3.0gにKS−778を1.0gと、メチルエチルケトン39.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50Tを0.02gとを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例5)
実施例4においてKS−778をKS−3703Tに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例6)
実施例4においてKS−778をKS−847Hに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例7)
製造例4で得られた導電性高分子溶液6.0gにKS−778を1.0gと、メチルエチルケトン36.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50Tを0.02gとを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例8)
実施例7においてKS−778をKS−3703Tに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例9)
実施例7においてKS−778をKS−847Hに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例10)
製造例4で得られた導電性高分子溶液3.0gにKS−778を1.0gと、メチルエチルケトン39.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50Tを0.02gとを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例11)
実施例10においてKS−778をKS−3703Tに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(実施例12)
実施例10においてKS−778をKS−847Hに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
【0083】
<比較例>
(比較例1)
実施例1において導電性高分子溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例2)
実施例2において導電性高分子溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例3)
実施例3において導電性高分子溶液をメチルエチルケトンに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例4)
製造例5で得られた導電性高分子溶液6.0gにKS−778を1.0gと、メチルエチルケトン36.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50Tを0.02gとを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例5)
比較例4においてKS−778をKS−3703Tに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例6)
比較例4においてKS−778をKS−847Hに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例7)
製造例5で得られた導電性高分子溶液3.0gにKS−778を1.0gと、メチルエチルケトン39.0gと、トルエン17.0gと、CAT−PL−50Tを0.02gとを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いて未処理PETフィルム(東レ ルミラー T60)上に塗布して150℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例8)
比較例7においてKS−778をKS−3703Tに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
(比較例9)
比較例7においてKS−778をKS−847Hに変えたこと以外は同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜の表面抵抗率、密着性および剥離強度を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
上記のように、実施例1〜12の塗膜は、比較例1〜3の導電性高分子溶液を含まない塗膜と比較し表面抵抗率が低く、密着性が高く、同等の剥離力を有していた。また、実施例1〜12の塗膜は、比較例4〜9のビニル基を有しないエポキシ化合物を用いて作製した塗料を用いた塗膜と比較し、表面抵抗率が低く、密着性が高く、同等の剥離力を有しており、特に密着性に優れていた。